(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034467
(43)【公開日】2022-03-03
(54)【発明の名称】案内軌条式車両および案内軌条式車両用ガイド装置
(51)【国際特許分類】
B61B 13/00 20060101AFI20220224BHJP
【FI】
B61B13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020138262
(22)【出願日】2020-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】特許業務法人しんめいセンチュリー
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】栗田 圭祐
【テーマコード(参考)】
3D101
【Fターム(参考)】
3D101BA08
3D101BC03
3D101BC08
(57)【要約】
【課題】案内軌条の施工コストを低減すること。
【解決手段】案内車輪20よりも下方に突出して配設される接地車輪30を備えるので、案内軌条101の底面101aには接地車輪30が接地する。即ち、案内軌条101の底面101aに接地させた状態で接地車輪30を転動させることにより、車両1の走行時における案内軌条101の底面101aと案内車輪20との隔たりを常に最小限に抑えることができる。よって、その分、案内軌条101の側壁101bを低く形成することができる。よって、案内軌条101の施工コストを低減できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、その車体を支持すると共に前記車体を走行させる複数の走行車輪と、前記車体の上下方向に車軸を向けると共に案内軌条の側壁に当接される案内車輪と、を備える案内軌条式車両において、
前記案内車輪の車軸と直交する方向であって前記車体の走行方向と直交する方向に車軸を向けると共に前記案内車輪よりも下方に突出して配設される接地車輪を備え、
前記接地車輪は、前記案内車輪の内周側に配設されることを特徴とする案内軌条式車両。
【請求項2】
車体と、その車体を支持すると共に前記車体を走行させる複数の走行車輪と、前記車体の上下方向に車軸を向けると共に案内軌条の側壁に当接される案内車輪と、を備える案内軌条式車両において、
前記案内車輪の車軸と直交する方向であって前記車体の走行方向と直交する方向に車軸を向ける接地車輪と、その接地車輪および前記案内車輪を保持する保持部材と、その保持部材および前記車体を連結する駆動手段として構成される複動形の油圧シリンダと、その油圧シリンダのロッド側室に作動油を供給する第1油路と、前記油圧シリンダのヘッド側室に前記作動油を供給する第2油路と、その第2油路および前記第1油路を連通する連通油路と、その連通油路の連通状態を開閉する開閉弁と、を備えることを特徴とする案内軌条式車両。
【請求項3】
前記接地車輪および前記案内車輪を保持する保持部材と、その保持部材を前記車体に連結する連結部材と、を備え、
前記連結部材は、前記車体の上下方向において、前記車体から離間する方向、及び、前記車体に近接する方向に前記保持部材を変位させることを特徴とする請求項1又は2に記載の案内軌条式車両。
【請求項4】
前記連通油路よりも前記油圧シリンダ側の前記第2油路に配設される蓄圧器を備えることを特徴とする請求項2記載の案内軌条式車両。
【請求項5】
前記接地車輪は、前記車体の前後方向に複数配設されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の案内軌条式車両。
【請求項6】
前記複数の接地車輪は、第1接地車輪と、下端が前記第1接地車輪の下端よりも上方に位置する第2接地車輪と、から構成されることを特徴とする請求項5記載の案内軌条式車両。
【請求項7】
車体と、その車体を支持すると共に前記車体を走行させる複数の走行車輪と、を備える案内軌条式車両に用いられるものであり、前記車体の上下方向に車軸を向けると共に案内軌条の側壁に当接される案内車輪を備える案内軌条式車両用ガイド装置において、
前記案内車輪の車軸と直交する方向であって前記車体の走行方向と直交する方向に車軸を向けると共に前記案内車輪よりも下方に突出して配設される接地車輪とを備え、
前記接地車輪は、前記案内車輪の内周側に配設されることを特徴とする案内軌条式車両用ガイド装置。
【請求項8】
車体と、その車体を支持すると共に前記車体を走行させる複数の走行車輪と、を備える案内軌条式車両に用いられるものであり、前記車体の上下方向に車軸を向けると共に案内軌条の側壁に当接される案内車輪を備える案内軌条式車両用ガイド装置において、
前記案内車輪の車軸と直交する方向であって前記車体の走行方向と直交する方向に車軸を向ける接地車輪と、その接地車輪および前記案内車輪を保持する保持部材と、その保持部材および前記車体を連結する駆動手段として構成される複動形の油圧シリンダと、その油圧シリンダのロッド側室に作動油を供給する第1油路と、前記油圧シリンダのヘッド側室に前記作動油を供給する第2油路と、その第2油路および前記第1油路を連通する連通油路と、その連通油路の連通状態を開閉する開閉弁と、を備えることを特徴とする案内軌条式車両用ガイド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、案内軌条式車両および案内軌条式車両用ガイド装置に関し、特に、案内車輪が案内軌条の底面と接触することを抑制すると共に、案内軌条の施工コストを低減できる案内軌条式車両および案内軌条式車両用ガイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溝やレールとして構成される案内軌条によって走行軌道が案内される案内軌条式車両が知られている。例えば、特許文献1には、路面に凹設される溝状の保護軌道の側面(案内軌条の側壁)や、路面に立設するレール状の保護軌道の側面に水平方向から保護輪(案内車輪)を当接させることで走行軌道が案内される案内軌条式車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006―306334号公報(例えば、段落0041、
図1,2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述した従来の技術では、案内車輪が案内軌条から脱輪することを防止するために、案内軌条の側壁の上端を、案内車輪よりも上方に位置させる必要がある。また、案内車輪と案内軌条の底面との接触を避けるために、案内軌条の底面と所定間隔を隔てた上方に案内車輪を配設する必要があるため、かかる隔たりの分、案内軌条の側壁を高く形成しなければならない。よって、案内軌条の施工コストが増大するという問題点があった。
【0005】
また、何らかの要因により案内車輪が上述した隔たりよりも大きく振動した場合、案内車輪が案内軌条の底面と接触する恐れがあるという問題点があった。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、案内車輪が案内軌条の底面と接触することを抑制すると共に、案内軌条の施工コストを低減できる案内軌条式車両および案内軌条式車両用ガイド装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明の案内軌条式車両は、車体と、その車体を支持すると共に前記車体を走行させる複数の走行車輪と、前記車体の上下方向に車軸を向けると共に案内軌条の側壁に当接される案内車輪と、を備えるものであり、前記案内車輪の車軸と直交する方向であって前記車体の走行方向と直交する方向に車軸を向けると共に前記案内車輪よりも下方に突出して配設される接地車輪を備え、前記接地車輪は、前記案内車輪の内周側に配設される。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の案内軌条式車両および請求項7記載の案内軌条式車両用ガイド装置によれば、案内車輪の車軸と直交する方向であって車体の走行方向と直交する方向に車軸を向けると共に案内車輪よりも下方に突出して配設される接地車輪を備える。よって、案内軌条の底面と案内車輪との隔たりよりも案内車輪が大きく振動しても、案内軌条の底面に接地車輪を接地させることができるので、案内車輪が案内軌条の底面に接触することを抑制できるという効果がある。
【0009】
また、案内軌条の底面に接地させた状態で接地車輪を転動させることで、車両走行時における案内軌条の底面と案内車輪との隔たりを最小限に抑えることができるので、その分、案内軌条の側壁を低く形成することができる。よって、案内軌条の施工コストを低減できるという効果がある。
【0010】
また、接地車輪が案内車輪の内周側に配設されるので、接地車輪を配設するためのスペースを案内車輪の周囲に設けることを不要にできる。よって、例えば、案内車輪の周囲に他の部材を配置することや、車両の小型化を図ることができるという効果がある。
【0011】
請求項2記載の案内軌条式車両および請求項8記載の案内軌条式車両用ガイド装置によれば、案内車輪の車軸と直交する方向であって車体の走行方向と直交する方向に車軸を向ける接地車輪を備える。よって、案内軌条の底面と案内車輪との隔たりよりも案内車輪が大きく振動しても、案内軌条の底面(若しくは、走行車輪が転動する路面)に接地車輪を接地させることができるので、案内車輪が案内軌条の底面に接触することを抑制できるという効果がある。
【0012】
また、案内軌条の底面(路面)に接地させた状態で接地車輪を転動させることで、車両走行時における案内軌条の底面と案内車輪との隔たりを最小限に抑えることができるので、その分、案内軌条の側壁を低く形成することができる。よって、案内軌条の施工コストを低減できるという効果がある。
【0013】
また、車体および保持部材を連結する駆動手段として構成される複動形の油圧シリンダと、その油圧シリンダのロッド側室に作動油を供給する第1油路と、油圧シリンダのヘッド側室に作動油を供給する第2油路と、その第2油路および第1油路を連通する連通油路と、その連通油路の連通状態を開閉する開閉弁と、を備える。よって、開閉弁を閉じた状態でロッド側室またはヘッド側室に作動油を供給することで油圧シリンダが伸縮する。
【0014】
即ち、開閉弁を閉じた状態でヘッド側室に作動油を供給することで油圧シリンダが伸長し、案内軌条の底面(路面)に接地車輪が接地する。この状態で開閉弁を開放すると、第1油路、第2油路および連通油路を介してロッド側室およびヘッド側室が連通されるが、ピストンロッドの断面積の分、ヘッド側室よりもロッド側室側の受圧面積が小さいため、ヘッド側室の内圧によってピストンロッドを伸長させる力を生じさせることができる。これにより、接地車輪を案内軌条の底面(路面)に押圧する方向の力を常に生じさせることができるので、案内軌条の底面(路面)に接地車輪を確実に追従させることができる。よって、案内軌条の側壁から案内車輪が脱輪することをより効果的に防止できるという効果がある。
【0015】
請求項3記載の案内軌条式車両によれば、請求項1又は2に記載の案内軌条式車両の奏する効果に加え、接地車輪および案内車輪を保持する保持部材と、その保持部材を車体に連結する連結部材と、を備え、連結部材は、車体の上下方向において、車体から離間する方向、及び、車体に近接する方向に保持部材を変位させるので、案内軌条の底面に接地車輪を常に接地させた状態で転動させることができる。よって、接地車輪を案内軌条の底面に確実に追従させることができるので、案内軌条の側壁から案内車輪が脱輪することを防止できるという効果がある。
【0016】
請求項4記載の案内軌条式車両によれば、請求項2記載の案内軌条式車両の奏する効果に加え、連通油路よりも油圧シリンダ側の第2油路に配設される蓄圧器を備えるので、開閉弁を閉じた状態でヘッド側室に作動油を供給する(油圧シリンダを伸長させて接地車輪を案内軌条の底面に押圧させる)ことにより、第2油路を通過する作動油が蓄圧器に蓄積(蓄圧)される。
【0017】
これにより、例えば、案内軌条の底面の凹凸によって接地車輪を上方に突き上げる力が作用してピストンロッドが短縮した場合、ヘッド側室の作動油が蓄圧器に蓄積(蓄圧)される。一方、かかる突き上げ力が緩和されると、蓄圧器に蓄積された作動油がヘッド側室に供給されてピストンロッドが伸長し、案内軌条の底面に接地車輪が押圧される。よって、案内軌条の底面に凹凸が形成される場合であっても、蓄圧器に蓄圧される圧力により、案内軌条の底面に接地車輪をより確実に追従させることができる。従って、案内軌条の側壁から案内車輪が脱輪することをより効果的に防止できるという効果がある。
【0018】
請求項5記載の案内軌条式車両によれば、請求項1から4のいずれかに記載の案内軌条式車両の奏する効果に加え、接地車輪が車体の前後方向に複数配設されるので、例えば、車体左右方向に延びる凹部が案内軌条の底面に形成され、その凹部に前方側の接地車輪が嵌まり込もうとしても、それよりも後方側の接地車輪が案内軌条の底面に接地することで保持部材の下方への変位が規制される。よって、車体左右方向に延びる凹部が案内軌条の底面に形成される場合であっても、その凹部に接地車輪が落下することや、案内軌条の底面に案内車輪が接触することを抑制できるという効果がある。
【0019】
請求項6記載の案内軌条式車両によれば、請求項5記載の案内軌条式車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。複数の接地車輪は、第1接地車輪と、下端が第1接地車輪の下端よりも上方に位置する第2接地車輪と、から構成されるので、案内軌条の底面が平坦である場合には、第1接地車輪を案内軌条の底面に接地させ、第2接地車輪を案内軌条の底面から離間させることができる。即ち、第2接地車輪は、案内軌条の底面に凹部や凸部が形成される場合に、案内車輪が案内軌条の底面や凸部に接触することを防止するための補助的な車輪として構成される。よって、案内軌条の底面に第2接地車輪が常に接地することを抑制できるので、第2接地車輪の摩耗を抑制し、第2接地車輪の劣化を抑制することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】(a)は、本発明の一実施の形態における車両の側面図であり、(b)は、
図1(a)の矢印Ib方向視における車両の部分拡大図である。
【
図2】(a)は、
図1(b)の矢印IIa方向視における車両の部分拡大図であり、(b)は、
図2(a)のIIb-IIb線における部分拡大断面図である。
【
図3】(a)は、
図2(a)のIIIa-IIIa線における断面図であり、(b)は、湾曲面からなる側壁に沿ってガイド装置が追従する状態を示す模式図である。
【
図5】油圧シリンダを伸長させる場合の油圧回路を示した概略図である。
【
図6】蓄圧器の内圧により接地車輪を案内軌条の底面に押圧させる場合の油圧回路を示した概略図である。
【
図7】
図6の状態から接地車輪を上方に突き上げる力が作用して油圧シリンダが短縮した場合の油圧回路を示した概略図である。
【
図8】油圧シリンダの内圧を開放させる場合の油圧回路を示した概略図である。
【
図9】内圧が開放された状態で油圧シリンダが短縮した場合の油圧回路を示した概略図である。
【
図10】油圧シリンダを短縮させる場合の油圧回路を示した概略図である。
【
図11】油圧シリンダを短縮させた状態を維持する場合の油圧回路を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、
図1を参照して、車両1の全体構成について説明する。
図1(a)は、本発明の一実施の形態における車両1の側面図であり、
図1(b)は、
図1(a)の矢印Ib方向視における車両1の部分拡大図である。なお、
図1では、図面を簡素化するために、車両1の一部を省略し、模式的に図示している。また、
図1の矢印U-D,L-R,F-Bは、車両1(ガイド装置10)の上下方向、左右方向、前後方向をそれぞれ示している。
【0022】
図1に示すように、車両1は、車体2と、その車体2を支持すると共に車体2を走行させる複数の走行車輪3と、車体2の下方に突出して形成されると共に案内軌条101に沿って車両1の走行をガイドするガイド装置10と、を備え、乗客や貨物を輸送する案内軌条式車両として構成される。
【0023】
車両1は、走行車輪3を転動させる駆動装置(図示せず)を備え、走行車輪3の転動によって路面100を走行する。路面100には、車両1の走行を案内するための案内軌条101が形成される。案内軌条101は、底面101aと、その底面101aから立設する側壁101bとを備え、路面100に凹設される断面矩形の溝として形成される。
【0024】
ガイド装置10は、車体2の上下方向に車軸を向ける案内車輪20と、その案内車輪20の車軸と直交する方向であって車体2(車両1)の走行方向と直交する方向に車軸を向ける接地車輪30と、それら案内車輪20及び接地車輪30を保持する保持部材40と、その保持部材40を車体2に連結する連結部材50と、を備え、車体2の前後方向に一対が配設される。
【0025】
案内車輪20は、側壁101bに沿って転動する車輪であり、この案内車輪20を側壁101bに当接させつつ車両1が前進または後進することにより、走行車輪3を操舵することなく、案内軌条101の延設方向に沿った車両1の走行が可能となる。
【0026】
接地車輪30は、底面101aに沿って転動する車輪であり、その少なくとも一部が案内車輪20の下端よりも下方に突出して配設される。これにより、車両1の走行時には、底面101aに接地車輪30が接地するので、案内車輪20が底面101aに接触することを抑制できる。
【0027】
次いで、
図2及び
図3を参照して、ガイド装置10の詳細構成について説明する。
図2(a)は、
図1(b)の矢印IIa方向視における車両1の部分拡大図であり、
図2(b)は、
図2(a)のIIb-IIb線における部分拡大断面図である。
図3(a)は、
図2(a)のIIIa-IIIa線における断面図であり、
図3(b)は、湾曲面からなる側壁101bに沿ってガイド装置10が追従する状態を示す模式図である。
【0028】
なお、
図2及び
図3では、理解を容易にするために、車両1(ガイド装置10)が模式的に図示される。また、
図2では、案内軌条101の側壁101bの図示を省略し、
図2(a)では、連結部材50の一部が破断され、内部構造が図示される。また、
図2及び
図3の矢印U-D,L-R,F-Bは、車両1(ガイド装置10)の上下方向、左右方向、前後方向をそれぞれ示している。
【0029】
図2に示すように、案内車輪20は、車体2の前後方向に沿って複数(本実施の形態では、4個が)並設され、車体2の前後方向に沿う複数の案内車輪20を1列とすると、車体2の左右方向中央を挟んで2列が設けられ(
図3参照)、それら複数(合計8個)の案内車輪20は、それぞれ同径の車輪から構成される。
【0030】
複数の案内車輪20は、後述する保持部材40の第2保持部44に固定される円環状の軸受21をそれぞれ備え、この軸受21の内周側に接地車輪30が配設される(
図2(b)参照)。即ち、接地車輪30も案内車輪20と同様に車体2の前後方向に沿う複数(本実施の形態では、4個)の接地車輪30を1列とすると、車体2の左右方向中央を挟んで2列に(即ち、合計8個が)配設される。
【0031】
また、接地車輪30は、保持部材40(第2保持部44)に対して揺動不能に(車軸の高さ位置が)固定されている。よって、接地車輪30が案内車輪20に対して上方に相対変位することを抑制できるので、案内車輪20が底面101aに接触することを抑制できる。
【0032】
複数の案内車輪20及び接地車輪30を保持する保持部材40は、連結部材50を介して車体2に連結される。連結部材50は、車体2に対して保持部材40(案内車輪20及び接地車輪30)を上下に相対変位させるための部材である。
【0033】
連結部材50は、車体2の下部に連結されると共に角筒状に形成される固定部51と、その固定部51の内周側に下方から挿入される角筒状の摺動部52と、その摺動部52の固定部51に対する摺動を案内するガイドレール53と、固定部51及び摺動部52の内周側に配設されると共に車体2及び保持部材40を連結する油圧シリンダ54と、を備え、テレスコピック機構によって伸縮可能に構成される。
【0034】
ガイドレール53は、固定部51の内周面および摺動部52の外周面の対向間において、車体2の上下方向に沿って延設される。ガイドレール53は、摺動部52の正面及び背面に各1基、摺動部52の左右両側の面に各2基の合計6基が配設される。これら複数のガイドレール53を介して摺動部52が固定部51の内周側で摺動し、摺動部52は、固定部51(車体2)に対して上下に相対変位可能に構成される。
【0035】
油圧シリンダ54は、複動形の油圧シリンダであり、その伸縮方向を車体2の上下方向に向けた姿勢で配設される。よって、この油圧シリンダ54の下端に連結される保持部材40は、油圧シリンダ54の伸縮によって車体2に対する相対変位が可能となり、かかる相対変位が連結部材50(固定部51及び摺動部52)によって案内される。
【0036】
これにより、油圧シリンダ54を短縮させることで案内車輪20及び接地車輪30を車体2側に格納することができると共に、油圧シリンダ54を伸長させることで接地車輪30を底面101aに接地させることができる。
【0037】
また、詳細は後述するが、油圧シリンダ54の内圧を開放することにより、油圧シリンダ54の自由な伸縮が可能となる。よって、油圧シリンダ54の内圧が開放されている場合には、摺動部52の摺動によって保持部材40の車体2に対する相対変位(上下動)が可能となり、車両1の走行時に接地車輪30が底面101aの凹凸に追従して転動する。即ち、案内車輪20、接地車輪30及び保持部材40の自重により、底面101aに接地車輪30を常に接地させた状態で車両1を走行させることができるので、走行時における底面101aと案内車輪20との隔たりを常に最小限に抑えることができる。よって、その分、側壁101bを低く形成することができるので、案内軌条101の施工コストを低減できる。
【0038】
また、油圧シリンダ54の内圧によって保持部材40(接地車輪30)を底面101a側に押圧しつつ車両1を走行させることによっても、底面101aに接地車輪30を常に接地させた状態で車両1を走行させることができる。更に、底面101a側への押圧力により、接地車輪30が底面101aから浮き上がることを抑制し、底面101aに接地車輪30をより確実に追従させることができるので、案内軌条101の側壁101bから案内車輪20が脱輪することを防止できる。
【0039】
また、車体2の前後方向に沿って複数の接地車輪30が配設されるので、例えば、車体2の左右方向に延びる凹部が底面101aに形成され、その凹部に前方側の接地車輪30が嵌まり込もうとしても、それよりも後方側に位置する接地車輪30が底面101aに接地し、保持部材40(案内車輪20)の下方への変位が規制される。よって、底面101aに形成される凹部に接地車輪30が落下することや、底面101aに案内車輪20が接触することを抑制できる。また、底面101aに凸部が形成される場合においても、接地車輪30がその凸部を乗り越えることにより、凸部と案内車輪20とが接触することを抑制できる。
【0040】
さて、案内軌条101(底面101aや側壁101b)に対してガイド装置10を安定して案内し、案内車輪20の底面101aへの接触を防止するためには、接地車輪30を互いに離間させて配置することが好ましい。
【0041】
ここで、案内車輪20と接地車輪30とを別々に設ける構造の場合、案内車輪20と接地車輪30とを配設するためのスペースも別々に設ける必要があり、ガイド装置10が大型化する。
【0042】
これに対して、本実施の形態の車両1によれば、案内車輪20の軸受21の内周側に接地車輪30が配設されることにより(
図2(b)参照)、接地車輪30を配設するためのスペースを案内車輪20の周囲に設けることを不要にしつつ、ガイド装置10の中心から極力離間させた位置に接地車輪30を配設することができる。よって、例えば、ガイド装置10を小型化しつつ、案内軌条101に対してガイド装置10を安定して案内させることができる。
【0043】
ここで、複数の接地車輪30の全てを同一(同径)の車輪として構成することも可能であるが、本実施の形態では、複数の接地車輪30は、ガイド装置10の最も前方側および最も後方側に一対に配設される第1接地車輪31と、それら一対の第1接地車輪31の間(車体2の前後方向における対向間)に配設されると共に第1接地車輪31よりも小径の車輪から構成される第2接地車輪32と、から構成される。
【0044】
第2接地車輪32の下端は、第1接地車輪31の下端よりも上方に位置し、車両1の走行時には、主に第1接地車輪31が底面101aに接地して転動する。即ち、第2接地車輪32は、底面101aに凹部や凸部が形成される場合に、案内車輪20が底面101aや凸部に接触することを防止するための補助的な車輪として構成される。
【0045】
よって、底面101aが平坦である場合には、第1接地車輪31を底面101aに接地させると共に、第2接地車輪32を底面101aから離間させた状態で車両1を走行させることができる。即ち、底面101aに第2接地車輪32が常に接地することを抑制できるので、第2接地車輪32の摩耗を抑制し、第2接地車輪32の劣化を抑制することができる。
【0046】
また、第1接地車輪31がガイド装置10の最も前方側および最も後方側のそれぞれに配設されるので、ガイド装置10の中心から最も離間した位置に第1接地車輪31を配設することができる。よって、底面101aに対して保持部材40が長さ方向に傾くことを抑制することができるので、底面101aに案内車輪20が接触することをより確実に抑制できる。
【0047】
図3に示すように、保持部材40は、連結部材50の下端に接続される第1軸41と、その第1軸41に支持される第1保持部42と、その第1保持部42に配設される一対の第2軸43と、それら一対の第2軸43にそれぞれ支持される一対の第2保持部44と、を備える。
【0048】
第1軸41は、連結部材50に対して保持部材40(第1保持部42)を回転可能に軸支するための軸受であり、その軸を車体2の上下方向に向けた姿勢で配設される。これにより、案内軌条101に沿ってカーブを車両1が走行する場合に、側壁101bに沿って案内車輪20が接触することで、保持部材40が連結部材50に対して第1軸41周りに回転する。よって、接地車輪30を案内軌条101に沿って転動させることができる(接地車輪30が横滑りすることを抑制できる)ので、接地車輪30の摩耗を抑制し、接地車輪30の劣化を抑制することができる。
【0049】
第1保持部42は、第1軸41を挟んで車体2の前後方向に張り出して形成され、その張り出しの先端側に(車体2の前後方向で離間して)一対の第2軸43が配設される。第2保持部44は、第2軸43によって第1保持部42の下方に支持される。
【0050】
第2軸43は、第1保持部42に対して第2保持部44を回転可能に軸支するための軸受であり、その軸を車体2の上下方向に向けた姿勢で配設される。これにより、保持部材40(第1保持部42及び第2保持部44)が第1軸41のみで軸支される場合に比べ、湾曲面からなる側壁101bに沿って複数の案内車輪20を接触させやすくすることができる。よって、車両1がカーブを走行する場合に、車両1をより確実に案内軌条101に沿って走行させることができる(
図3(b)参照)。
【0051】
第2保持部44は、車体2の前後方向に一対が配設される。第2保持部44には案内車輪20及び接地車輪30がそれぞれ4個ずつ保持される(一対の第2保持部44には合計8個の案内車輪20及び8個の接地車輪30が保持される)ので、1の第2保持部44において複数(本実施形態では、2個)の案内車輪20を側壁101bに当接させることができる。これにより、車両1(ガイド装置10)をより確実に案内軌条101に沿って走行させることができる。
【0052】
次いで、
図4を参照して、車両1(ガイド装置10)の油圧回路について説明する。
図4は、車両1の油圧回路を示した概略図である。なお、
図4では、図面を簡素化するために、第1接地車輪31及び第2接地車輪32がそれぞれ同径の車輪として図示される。
【0053】
図4に示すように、車両1(ガイド装置10)の油圧回路は、油圧シリンダ54に供給するための作動油が貯留されるタンク60と、そのタンク60に接続される供給油路61及び返送油路62と、それら供給油路61及び返送油路62に接続される第1切換弁63と、その第1切換弁63に接続される第1油路64及び第2油路65と、それら第1油路64及び第2油路65のそれぞれに配設されるオペレートチェック弁66,76及び流量制御弁67,77と、それらオペレートチェック弁66,76及び流量制御弁67,77よりも油圧シリンダ54側に配設される内圧開放回路68と、その内圧開放回路68よりも油圧シリンダ54側で第1油路64及び第2油路65を連通する連通油路69と、その連通油路69よりも油圧シリンダ54側の第2油路65に配設される蓄圧器70と、を備える。なお、「油路」とは、車両1の油圧回路の各部を接続する配管である。
【0054】
第1切換弁63のタンク60側の一方のポートに供給油路61が接続され、タンク60側の他方のポートに返送油路62が接続される。供給油路61にはポンプ80が配設され、このポンプ80がモータ81の回転によって駆動することにより、タンク60に貯留される作動油が第1切換弁63に圧送される。
【0055】
また、第1切換弁63の油圧シリンダ54側の一方のポートには第1油路64が接続され、他方のポートには第2油路65が接続される。第1切換弁63は、供給油路61を第2油路65に連通させると共に返送油路62を第1油路64に連通させる第1位置63aと、第1油路64及び第2油路65を共に返送油路62に連通させる第2位置63bと、供給油路61を第1油路64に連通させると共に返送油路62を第2油路65に連通させる第3位置63cと、にそれぞれ切換え可能な電磁弁として構成される。
【0056】
第1油路64は、第1切換弁63と油圧シリンダ54のロッド側室54aとを接続する油路であり、第2油路65は、第1切換弁63と油圧シリンダ54のヘッド側室54bとを接続する油路である。
【0057】
第1切換弁63の油圧シリンダ54側における第1油路64には、オペレートチェック弁66が配設される。オペレートチェック弁66は、油圧シリンダ54側からタンク60側への作動油の返送を遮断する逆止弁66aと、その逆止弁66aに接続されるパイロット油路66bと、から構成される。オペレートチェック弁66には、パイロット油路66bを介して第2油路65のパイロット圧が付与される。
【0058】
オペレートチェック弁66よりも油圧シリンダ54側における第1油路64には、流量制御弁67が配設され、流量制御弁67は、油圧シリンダ54側からタンク60側への作動油の返送を遮断する逆止弁67aと、絞り弁67bと、から構成される。
【0059】
第1切換弁63の油圧シリンダ54側における第2油路65には、オペレートチェック弁76が配設される。オペレートチェック弁76は、油圧シリンダ54側からタンク60側への作動油の返送を遮断する逆止弁76aと、その逆止弁76aに接続されるパイロット油路76bと、から構成される。オペレートチェック弁76には、パイロット油路76bを介して第1油路64のパイロット圧が付与される。
【0060】
オペレートチェック弁76よりも油圧シリンダ54側における第2油路65には、流量制御弁77が配設され、流量制御弁77は、油圧シリンダ54側からタンク60側への作動油の返送を遮断する逆止弁77aと、絞り弁77bと、から構成される。
【0061】
内圧開放回路68は、流量制御弁67,77よりも油圧シリンダ54側で第1油路64及び第2油路65を接続する第3油路68aと、その第3油路68aに配設される一対の逆止弁68b,68cと、第3油路68aよりも油圧シリンダ54側における第1油路64及び第2油路65を接続する第4油路68dと、その第4油路68dに配設される一対の逆止弁68e,68fと、第3油路68a及び第4油路68dを接続する第5油路68g及び第6油路68hと、その第5油路68gに配設されるリリーフ弁68iと、第6油路68hに配設される第2切換弁68jと、第3油路68a及び返送油路62を接続する第7油路68kと、を備える。
【0062】
逆止弁68bは、第1油路64から第3油路68aへの作動油の流入を遮断する逆止弁であり、逆止弁68cは、第2油路65から第3油路68aへの作動油の流入を遮断する逆止弁である。第3油路68aのうちの逆止弁68bと逆止弁68cとの間に位置する第3油路68aに、第5油路68g及び第6油路68hの一端が接続される。第5油路68g及び第6油路68hの他端は、第4油路68dのうちの逆止弁68eと逆止弁68fとの間に位置する第4油路68dに接続される。逆止弁68eは、第4油路68dから第1油路64への作動油の流出を遮断する逆止弁であり、逆止弁68fは、第4油路68dから第2油路65への作動油の流出を遮断する逆止弁である。
【0063】
リリーフ弁68iは、所定の圧力を超えた場合に第4油路68dから第3油路68aに作動油をリリーフする弁として構成され、第2切換弁68jは、第6油路68hの内部の連通状態を開閉する電磁弁として構成される。
【0064】
連通油路69には、その内部の連通状態を開閉する開閉弁69aが配設される。蓄圧器70は、気体が封入される容器70aと、その容器70a及び第2油路65の連通状態を開閉する開閉弁70bとから構成されるアキュムレータである。
【0065】
油圧シリンダ54は、ロッド側室54a及びヘッド側室54bを区画するピストン54cと、そのピストン54cに接続されると共にロッド側室54aに配設されるピストンロッド54dと、を備える油圧シリンダであり、この油圧シリンダ54のピストンロッド54dが保持部材40に接続される。
【0066】
次いで、
図5~
図11を参照して、油圧シリンダ54の伸縮動作について説明する。
図5は、油圧シリンダ54を伸長させる場合の油圧回路を示した概略図である。
図6は、蓄圧器70の内圧により接地車輪30を案内軌条101の底面101aに押圧させる場合の油圧回路を示した概略図である。
図7は、
図6の状態から接地車輪30を上方に突き上げる力が作用して油圧シリンダ54が短縮した場合の油圧回路を示した概略図である。
図8は、油圧シリンダ54の内圧を開放させる場合の油圧回路を示した概略図である。
図9は、内圧が開放された状態で油圧シリンダ54が短縮した場合の油圧回路を示した概略図である。
図10は、油圧シリンダ54を短縮させる場合の油圧回路を示した概略図である。
図11は、油圧シリンダ54を短縮させた状態を維持する場合の油圧回路を示した概略図である。
【0067】
なお、
図5~
図11では、図面を簡素化するために、第1接地車輪31及び第2接地車輪32がそれぞれ同径の車輪として図示される。また、
図5~
図11において、太線の矢印で示す部分は作動油が移動する主要な経路を、太線の破線で示す部分は作動油の移動が遮断される主要な経路をそれぞれ示しており、それらの経路にA~Wの符号を付している。また、開閉弁69a及び開閉弁70bの開閉状態を白抜き又は黒塗りで図示しており、白抜きが開状態であり、黒塗りが閉状態である。
【0068】
図5に示すように、油圧シリンダ54を伸長させる場合には、第1切換弁63を第1位置63aに切換えた状態でポンプ80を駆動する。これにより、第1切換弁63、オペレートチェック弁76、流量制御弁77(逆止弁77a)を介して(第2油路65を通って)作動油が油圧シリンダ54のヘッド側室54bに圧送される(経路A)。この時、第2切換弁68j及び開閉弁69aは閉状態であり、第4油路68d及び第6油路68hを介した第2油路65からタンク60への作動油の返送が第2切換弁68jによって遮断され(経路B)、連通油路69を介した第2油路65から第1油路64への作動油の流入が開閉弁69aによって遮断される(経路C)。
【0069】
この場合に、蓄圧器70の開閉弁70bを開状態とすることにより、油圧シリンダ54のヘッド側室54bに供給される作動油の一部が蓄圧器70の容器70aにも供給され(経路D)、蓄圧器70に所定の圧力が蓄圧される。
【0070】
一方、ヘッド側室54bへの作動油の供給時に第2油路65の内圧が所定値に達すると、パイロット油路66bを介してパイロット圧が付与され(経路E)、第1油路64に配設される逆止弁66aが開状態となる。よって、油圧シリンダ54の伸長に伴ってロッド側室54aから押し出される作動油は、流量制御弁67(絞り弁67b)、オペレートチェック弁66(逆止弁66a)、第1切換弁63(第1位置63a)、及び、返送油路62を介してタンク60に返送される(経路F)。これにより、油圧シリンダ54の伸長が可能となり、接地車輪30が底面101aに接地される。
【0071】
図6に示すように、
図5の状態からポンプ80の駆動を停止させて第1切換弁63を第2位置63bに切換えた場合、第2油路65の逆止弁76aよりもタンク60側の第2油路65の圧力が低下する(作動油がタンク60に返送される)ことにより、パイロット油路66bを介したパイロット圧が低下し、第1油路64に配設される逆止弁66aが閉状態となる。よって、第1油路64及び第2油路65の双方において、油圧シリンダ54側からタンク60側への作動油の返送が逆止弁66a,76aによって遮断される(経路G)。
【0072】
この時、第2切換弁68jが閉状態であるので、第1油路64及び第2油路65から第2切換弁68jを介したタンク60への作動油の返送も遮断されている(経路H)。即ち、タンク60は、オペレートチェック弁66,76の逆止弁66a,76aや、閉状態にある第2切換弁68j等によってロッド側室54a及びヘッド側室54bから遮断される。
【0073】
かかる遮断状態において開閉弁69aを開状態とすることにより、ヘッド側室54bが第2油路65、連通油路69及び第1油路64を介してロッド側室54aに連通され、蓄圧器70に蓄圧された圧力(容器70aから第2油路65への作動油の供給)によってロッド側室54a及びヘッド側室54bが加圧される(経路I)。この場合、ロッド側室54aにピストンロッド54dが配設されることにより、そのピストンロッド54dの断面積の分、ヘッド側室54b側よりもロッド側室54a側のピストン54cの受圧面積が小さくなる。
【0074】
よって、ヘッド側室54bの内圧によって油圧シリンダ54を伸長させる力が生じるため、かかる油圧シリンダ54の伸長によってロッド側室54a内の作動油の一部がヘッド側室54bに供給される(経路J)。これにより、接地車輪30を底面101aに押圧する方向の力を常に生じさせることができるので、この状態で車両1を走行させることにより、底面101aに接地車輪30を確実に追従させることができる。従って、案内軌条101の側壁101bから案内車輪20が脱輪することを防止できる。
【0075】
図7に示すように、接地車輪30を底面101aに押圧した状態(
図6参照)から、底面101aの凹凸によって接地車輪30を上方に突き上げる力が作用して油圧シリンダ54が短縮した場合、ロッド側室54a及びヘッド側室54bがタンク60から遮断されているので(経路G,H)、油圧シリンダ54が短縮された分の作動油がヘッド側室54bからロッド側室54aに供給される(経路K)。この場合、ピストンロッド54dの体積の分、ロッド側室54aよりもヘッド側室54bの体積が大きいため、その体積の差の分、ヘッド側室54bからロッド側室54aに供給される作動油の一部が蓄圧器70の容器70aに蓄積(蓄圧)される(経路L)。
【0076】
かかる突き上げ力が緩和されると、蓄圧器70に蓄圧された圧力(容器70aから第2油路65への作動油の供給)によってロッド側室54a及びヘッド側室54bが加圧される。即ち、
図6の場合と同様に、ピストン54cの受圧面積の差の分、ヘッド側室54bの内圧によって油圧シリンダ54を伸長させる力が生じるため、底面101aに接地車輪を押圧させることができる。よって、底面101aに凹凸が形成される場合であっても、蓄圧器70(容器70a)に蓄圧される圧力により、底面101aに接地車輪30を確実に追従させることができる。従って、案内軌条101の側壁101bから案内車輪20が脱輪することを防止できる。
【0077】
図8に示すように、油圧シリンダ54の内圧を開放する場合、開閉弁70bを閉状態にすると共に、第2切換弁68jを開状態に切換えることにより、ロッド側室54a及びヘッド側室54bを、第1油路64及び第2油路65、第4油路68d、第6油路68h、第3油路68a、第7油路68k並びに返送油路62を介してタンク60に連通させる。
【0078】
これにより、ロッド側室54a及びヘッド側室54bと、タンク60との間での作動油の往来が可能となり、油圧シリンダ54の自由な伸縮が可能となる。即ち、例えば、油圧シリンダ54の内圧が開放された状態で底面101aの凹凸によって油圧シリンダ54が伸長した場合、その伸長によってロッド側室54aから押し出される作動油は、第1油路64、第4油路68d、第6油路68h、第3油路68a並びに第2油路65を介してヘッド側室54bに供給される(経路M)。この場合、ピストンロッド54dの体積の分、ロッド側室54aよりもヘッド側室54bの体積が大きいが、その体積の差分の作動油はタンク60から返送油路62、第7油路68k、第3油路68a並びに第2油路65を介してヘッド側室54bに供給される(経路N)。
【0079】
一方、
図9に示すように、油圧シリンダ54の内圧が開放された状態で(
図8の状態から)油圧シリンダ54が短縮した場合、その短縮によってヘッド側室54bから押し出される作動油は、第2油路65、第4油路68d、第6油路68h、第3油路68a並びに第1油路64を介してロッド側室54aに供給される(経路O)。この場合、ロッド側室54aとヘッド側室54bとの体積の差分の作動油は、第7油路68k及び返送油路62を介してタンク60に返送される(経路P)。
【0080】
即ち、ロッド側室54a及びヘッド側室54bをタンク60に連通することにより、ロッド側室54a及びヘッド側室54bの内圧を開放し、油圧シリンダ54を自由に伸縮させることができる。これにより、保持部材40(案内車輪20および接地車輪30)の自重によって接地車輪30を底面101aに追従させることができる。よって、例えば、車両1が徐行する場合や、底面101aに形成される凹凸が少ない場合には、保持部材40の自重によって接地車輪30を底面101aに追従させて車両1を走行させることが好ましい。これにより、常に接地車輪30を底面101aに押圧させた状態で走行する場合に比べ、接地車輪30の摩耗を抑制し、接地車輪30の劣化を抑制することができる。
【0081】
図10に示すように、油圧シリンダ54を短縮させる場合には、第1切換弁63を第3位置63cに切換えた状態でポンプ80を駆動する。これにより、第1切換弁63、オペレートチェック弁66、流量制御弁67(逆止弁67a)を介して(第1油路64を通って)作動油が油圧シリンダ54のロッド側室54aに圧送される(経路Q)。この時、第2切換弁68j及び開閉弁69aは閉状態であり、第4油路68d及び第6油路68hを介した第1油路64からタンク60への作動油の返送が第2切換弁68jによって遮断され(経路R)、連通油路69を介した第1油路64から第2油路65への作動油の流入が開閉弁69aによって遮断される(経路S)。これにより、第1油路64に圧送される作動油は、油圧シリンダ54のロッド側室54aに供給される。
【0082】
一方、ロッド側室54aへの作動油の供給時に第1油路64の内圧が所定値に達すると、パイロット油路66bを介してパイロット圧が付与され(経路T)、第2油路65に配設される逆止弁76aが開状態となる。よって、油圧シリンダ54の短縮に伴ってヘッド側室54bから押し出される作動油は、流量制御弁77(絞り弁77b)、オペレートチェック弁76(逆止弁76a)、第1切換弁63(第3位置63c)、及び、返送油路62を介してタンク60に返送される(経路U)。これにより、油圧シリンダ54の短縮が可能となり、案内車輪20及び接地車輪30を車体2(
図1参照)側に格納することができる。
【0083】
図11に示すように、油圧シリンダ54を短縮させた状態(
図10参照)からポンプ80の駆動を停止させて第1切換弁63を第2位置63bに切換えた場合、第1油路64の逆止弁66aよりもタンク60側の第1油路64の圧力が低下する(作動油がタンク60に返送される)ことにより、パイロット油路76bを介したパイロット圧が低下し、第2油路65に配設される逆止弁76aが閉状態となる。よって、第1油路64及び第2油路65の双方において、油圧シリンダ54側からタンク60側への作動油の返送が逆止弁66a,76aによって遮断される(経路V)。
【0084】
この時、第2切換弁68jが閉状態であるので、第1油路64及び第2油路65から第2切換弁68jを介したタンク60への作動油の返送も遮断されている(経路W)。即ち、タンク60は、オペレートチェック弁66,76の逆止弁66a,76aや、閉状態にある第2切換弁68j等によってロッド側室54a及びヘッド側室54bから遮断される。これにより、油圧シリンダ54が短縮した状態を維持することができるので、例えば、案内車輪20や接地車輪30のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0085】
以上、本実施の形態の車両1によれば、接地車輪30を底面101aに押圧させて走行することと、保持部材40の自重によって接地車輪30を底面101aに追従させて走行することとを選択可能に構成される。よって、かかる選択を案内軌条101の状態(カーブや凹凸の有無)に応じて行うことにより、案内軌条101に沿って車両1を安定して案内することと、接地車輪30の摩耗を抑制して車両1(ガイド装置10)の劣化を抑制することとを両立させることができる。
【0086】
以上、上記実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
【0087】
上記実施の形態では、車両1が乗客や貨物を輸送する交通機関として構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、車両1が、工場等の構内において大型の鋼材や製品等の重量物の荷物を搬送する大型の搬送車両や無人搬送車両として構成されても良い。即ち、かかる搬送車両や無人搬送車両にガイド装置10を適用する構成でも良い。
【0088】
上記実施の形態では、案内軌条101が路面100に凹設される凹溝として構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、路面に延設されるレール状の案内軌条や、路面の左右方向における端部に側壁が設けられる案内軌条に対しても、上記実施の形態の車両1(ガイド装置10)の技術思想は採用可能である。いずれの案内軌条の形態においても、案内軌条の底面や路面に接地させる接地車輪を設けることにより、案内軌条の底面や路面に案内車輪が接触することを抑制できる。なお、レール状の案内軌条の場合には、そのレールの側面が請求項1の「側壁」に相当する。
【0089】
上記実施の形態では、1のガイド装置10において、案内車輪20及び接地車輪30がそれぞれ8個ずつ配設される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、案内車輪20及び接地車輪30の数は適宜設定できる。よって、案内車輪20及び接地車輪30は、8個未満であっても良いし、9個以上であっても良い。また、例えば、車体2の前後方向に沿って複数の案内車輪20や接地車輪30を1列に設ける構成でも良く、案内車輪20と接地車輪30とを異なる個数で設ける構成でも良い。
【0090】
上記実施形態では、案内車輪20の軸受21の内周側に接地車輪30が配設される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、案内車輪20の外周側に接地車輪30を配設する構成でも良い。よって、例えば、左右一対の案内車輪20の対向間に接地車輪30を配設し、案内軌条101の底面101aに沿って接地車輪30を転動させる構成でも良い。また、案内車輪20よりも左右方向外方側に接地車輪30を配設し、路面100(走行車輪3が転動する面)に沿って接地車輪30を転動させる構成でも良い。即ち、保持部材40(第2保持部44)によって接地車輪30を転動可能に保持し、路面100や案内軌条101の底面101aに沿って接地車輪30を転動させる構成であれば、接地車輪30の配設位置は適宜設定できる。
【0091】
上記実施の形態では、接地車輪30が車輪の直径が異なる第1接地車輪31と第2接地車輪32とから構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、接地車輪30を全て同一の直径の車輪から構成しても良い。これにより、直径の異なる車輪を用いる場合に比べ、部品点数が低減するので、車両1の製品コストを低減できる。また、接地車輪30を全て同一の直径の車輪から構成する場合であっても、一部の接地車輪30の車軸の位置を高くすることにより、第2接地車輪32と同様に、底面101aから離間させることができる。
【0092】
上記実施の形態では、接地車輪30の車軸が保持部材40に揺動不能に固定される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、保持部材40に対して接地車輪30をサスペンション(緩衝装置)によって支持する構成でも良い。
【0093】
上記実施の形態では、車体2に対する保持部材40の相対変位の一例として、テレスコピック機構を備える連結部材50による上下動を例示したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、保持部材40をスイングアームによって上下動させても良く、車体2に対して保持部材40をサスペンションで支持する(緩衝装置によって保持部材40を上下動させる)構成でも良い。
【0094】
上記実施の形態では、駆動手段の一例として、油圧シリンダ54を例示したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、電動のアクチュエータ、エアシリンダ、又は、ボールねじタイプのシリンダ等で連結部材50を伸縮させても良く、駆動源を省略する(保持部材40を単に上下に摺動自在に支持する)構成でも良い。
【0095】
上記実施の形態では、第1保持部42が第1軸41を介して連結部材50に接続され、一対の第2保持部44が第2軸43を介して第1保持部42にそれぞれ接続される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、案内車輪20の数や配置に合わせて第1軸41を省略することや、第2軸43を増加または減少させることは当然可能である。
【0096】
上記実施の形態では、第1保持部42に対して第2保持部44が第2軸43の軸周りに回転する場合を説明したが、例えば、第1保持部42に対する第2保持部44の回転の範囲を制限するストッパを設けても良い。この場合には、例えば、第2軸43の軸周りに沿って所定の長さで形成される貫通孔(溝)を第1保持部42(第2保持部44)に設けると共に、その貫通孔(溝)に嵌合する突起を第2保持部44(第1保持部42)に設ければ良い。これにより、案内車輪20及び接地車輪30を車体2側に格納した場合に、第2保持部44が第1保持部42に対して過剰に回転することを抑制できる。
【0097】
上記実施の形態では、油圧シリンダ54が複動形の油圧シリンダとして構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、油圧シリンダ54を単動形の油圧シリンダとして構成しても良い。この場合には、油圧シリンダ54のロッド側室54aのみに作動油を供給することで案内車輪20及び接地車輪30が車体2側に格納することができる。また、その状態からロッド側室54aの内圧を開放(ロッド側室54aをタンク60に接続)することにより、保持部材40の自重によって底面101aに接地車輪30を追従させることができる。
【符号の説明】
【0098】
1 車両(案内軌条式車両)
2 車体
3 走行車輪
10 ガイド装置(案内軌条式車両用ガイド装置)
20 案内車輪
30 接地車輪
31 第1接地車輪
32 第2接地車輪
40 保持部材
50 連結部材
54 油圧シリンダ
54a ロッド側室
54b ヘッド側室
64 第1油路
65 第2油路
69 連通油路
69a 開閉弁
70 蓄圧器
101 案内軌条
101b 側壁