(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034470
(43)【公開日】2022-03-03
(54)【発明の名称】電動弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20220224BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020138267
(22)【出願日】2020-08-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000204033
【氏名又は名称】太平洋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】林 久雄
(72)【発明者】
【氏名】藤本 聡
【テーマコード(参考)】
3H062
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062BB30
3H062BB31
3H062CC02
3H062EE06
3H062FF38
3H062GG04
(57)【要約】
【課題】従来よりも製造コストを抑えられる電動弁の提供。
【解決手段】電動弁10は、モータのロータ30を収容するロータ収容部屋13と、弁体72を収容しかつ弁口と連通する弁体収容部屋14とを有する金属製のボディ12の内部にロータ収容部屋13と弁体収容部屋14を仕切る樹脂製のインナーパーツ60を備え、インナーパーツ60を貫通する貫通孔60Hをロータ30と共に回転するシャフト70が貫通して、シャフト70の先端部に弁体72が配置され、貫通孔60Hとシャフト70に形成された螺子部同士の螺合によりロータ30の回転が弁体72の直線移動に変換される。インナーパーツ60は、ボディ12の内部のうちロータ収容部屋13と弁体収容部屋14の間の被圧入部41に圧入されて固定され、インナーパーツ60の外面にはボディ12の内面との間にロータ収容部屋13と弁体収容部屋14を連絡する隙間を形成する凹凸部60Aが形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体(72)の駆動源であるモータ(19)のロータ(30)を収容するロータ収容部屋(13)と、前記弁体(72)を収容しかつ弁口(51K)と連通する弁体収容部屋(14)とを有する金属製のボディ(12)の内部に前記ロータ収容部屋(13)と前記弁体収容部屋(14)とを仕切る樹脂製のインナーパーツ(60)を備え、
前記インナーパーツ(60)を貫通する貫通孔(60H)を、前記ロータ(30)と共に回転するシャフト(70)が貫通して、そのシャフト(70)の先端部に前記弁体(72)が配置され、前記貫通孔(60H)と前記シャフト(70)とに形成された螺子部(60N,70N)同士の螺合により前記ロータ(30)の回転が前記弁体(72)の直線移動に変換される電動弁(10)であって、
前記インナーパーツ(60)は、前記ボディ(12)の内部のうち前記ロータ収容部屋(13)と前記弁体収容部屋(14)との間の被圧入部(41)に圧入されて固定され、
前記インナーパーツ(60)の外面には、前記ボディ(12)の内面との間に前記ロータ収容部屋(13)と前記弁体収容部屋(14)とを連絡する隙間(S)を形成する凹凸部(60A)が形成されている電動弁(10)。
【請求項2】
前記ボディ(12)の内部には、前記インナーパーツ(60)を前記ロータ(30)の回転軸方向で位置決めする位置決め段差面(40D,50D)が備えられている、請求項1に記載の電動弁(10)。
【請求項3】
前記凹凸部(60A)は、前記インナーパーツ(60)の外面の周方向の複数箇所に形成されて前記ボディ(12)の前記被圧入部(41)の内面に押圧される複数の凸部(65)を備える、請求項1又は2に記載の電動弁(10)。
【請求項4】
前記インナーパーツ(60)は、前記被圧入部(41)の内周形状と相似の外周形状を有した筒状部(61)を備え、
前記複数の凸部(65)は、前記筒状部(61)の外周面から突出し、前記筒状部(61)の周方向で等間隔に配置されている、請求項3に記載の電動弁(10)。
【請求項5】
前記複数の凸部(65)は、前記インナーパーツ(60)の前記貫通孔(60H)の軸方向に延びた凸条になっている、請求項3又は4に記載の電動弁(10)。
【請求項6】
前記インナーパーツ(60)の外面と前記ボディ(12)の内面とにそれぞれ形成されて、前記ボディ(12)に対して前記インナーパーツ(60)を回り止めするように凹凸係合する凹凸係合部(66,48)を備える請求項1から5の何れか1の請求項に記載の電動弁(10)。
【請求項7】
前記凹凸係合部(66,48)は、前記インナーパーツ(60)の外面と前記ボディ(12)の内面との一方に形成された係合凸部(66)と他方に形成された係合凹部(48)とからなり、前記係合凸部(66)の先端部と前記係合凹部(48)の内面との間に前記ロータ収容部屋(13)と前記弁体収容部屋(14)とを連絡する隙間(S)が形成されている、請求項6に記載の電動弁(10)。
【請求項8】
前記ボディ(12)には、前記被圧入部(41)を含むベース部(22)と、前記ロータ収容部屋(13)が内側に設けられて前記ベース部(22)に溶接固定されるロータ収容部(21)と、が備えられ、
前記ベース部(22)は、前記インナーパーツ(60)が前記被圧入部(41)に前記ロータ収容部屋(13)とは反対側から圧入可能に構成されている、請求項1から7の何れか1の請求項に記載の電動弁(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータにより駆動される電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電動弁として、モータによって回転駆動される弁体付きシャフトを、インサート成形により金属部品と一体になった樹脂成形品で支持しているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-206998号公報(段落[0008]~[0020]、
図1及び
図2等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の電動弁に対し、製造コストを抑えられる技術開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1の電動弁は、弁体(72)の駆動源であるモータ(19)のロータ(30)を収容するロータ収容部屋(13)と、前記弁体(72)を収容しかつ弁口(51K)と連通する弁体収容部屋(14)とを有する金属製のボディ(12)の内部に前記ロータ収容部屋(13)と前記弁体収容部屋(14)とを仕切る樹脂製のインナーパーツ(60)を備え、前記インナーパーツ(60)を貫通する貫通孔(60H)を、前記ロータ(30)と共に回転するシャフト(70)が貫通して、そのシャフト(70)の先端部に前記弁体(72)が配置され、前記貫通孔(60H)と前記シャフト(70)とに形成された螺子部(60N,70N)同士の螺合により前記ロータ(30)の回転が前記弁体(72)の直線移動に変換される電動弁(10)であって、前記インナーパーツ(60)は、前記ボディ(12)の内部のうち前記ロータ収容部屋(13)と前記弁体収容部屋(14)との間の被圧入部(41)に圧入されて固定され、前記インナーパーツ(60)の外面には、前記ボディ(12)の内面との間に前記ロータ収容部屋(13)と前記弁体収容部屋(14)とを連絡する隙間(S)を形成する凹凸部(60A)が形成されている電動弁(10)である。
【0006】
請求項2の電動弁は、前記ボディ(12)の内部には、前記インナーパーツ(60)を前記ロータ(30)の回転軸方向で位置決めする位置決め段差面(40D,50D)が備えられている、請求項1に記載の電動弁(10)である。
【0007】
請求項3の電動弁は、前記凹凸部(60A)は、前記インナーパーツ(60)の外面の周方向の複数箇所に形成されて前記ボディ(12)の前記被圧入部(41)の内面に押圧される複数の凸部(65)を備える、請求項1又は2に記載の電動弁(10)である。
【0008】
請求項4の電動弁は、前記インナーパーツ(60)は、前記被圧入部(41)の内周形状と相似の外周形状を有した筒状部(61)を備え、前記複数の凸部(65)は、前記筒状部(61)の外周面から突出し、前記筒状部(61)の周方向で等間隔に配置されている、請求項3に記載の電動弁(10)である。
【0009】
請求項5の電動弁は、前記複数の凸部(65)は、前記インナーパーツ(60)の前記貫通孔(60H)の軸方向に延びた凸条になっている、請求項3又は4に記載の電動弁(10)である。
【0010】
請求項6の電動弁は、前記インナーパーツ(60)の外面と前記ボディ(12)の内面とにそれぞれ形成されて、前記ボディ(12)に対して前記インナーパーツ(60)を回り止めするように凹凸係合する凹凸係合部(66,48)を備える請求項1から5の何れか1の請求項に記載の電動弁(10)である。
【0011】
請求項7の電動弁は、前記凹凸係合部(66,48)は、前記インナーパーツ(60)の外面と前記ボディ(12)の内面との一方に形成された係合凸部(66)と他方に形成された係合凹部(48)とからなり、前記係合凸部(66)の先端部と前記係合凹部(48)の内面との間に前記ロータ収容部屋(13)と前記弁体収容部屋(14)とを連絡する隙間(S)が形成されている、請求項6に記載の電動弁(10)である。
【0012】
請求項8の電動弁は、前記ボディ(12)には、前記被圧入部(41)を含むベース部(22)と、前記ロータ収容部屋(13)が内側に設けられて前記ベース部(22)に溶接固定されるロータ収容部(21)と、が備えられ、前記ベース部(22)は、前記インナーパーツ(60)が前記被圧入部(41)に前記ロータ収容部屋(13)とは反対側から圧入可能に構成されている、請求項1から7の何れか1の請求項に記載の電動弁(10)である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の電動弁では、インナーパーツが圧入によりボディに固定されるので、インナーパーツをボディとインサート成形により一体成形する場合に比べて、インナーパーツに不良品が発生したときにボディごと交換する必要がなくなり、製造コストを抑えることが可能となる。また、請求項1の電動弁では、インナーパーツの外面の凹凸部により、ボディの内面とインナーパーツとの間に、ロータ収容部屋と弁体収容部屋とを連絡する隙間が形成されるので、ロータ収容部屋と弁体収容部屋との圧力差を生じ難くすることができる。ここで、インナーパーツをインサート成形でボディと一体成形する場合、このような隙間を形成するためには、成形金型が複雑な構造となるため、電動弁の製造コストが高くなる。これに対し、請求項1の電動弁では、上述のように凹凸部をインナーパーツの外面に形成し、インナーパーツをボディに圧入することで上記隙間を形成できるので、上記隙間を有する電動弁の製造コストを抑えることが可能となる。
【0014】
請求項2の電動弁では、ボディの内部に、インナーパーツをロータの回転軸方向で位置決めする位置決め段差面が備えられているので、インナーパーツの固定をより安定化させることができる。
【0015】
請求項3の電動弁のように、インナーパーツの凹凸部は、インナーパーツの外面の周方向の複数個所に形成されてボディの内面に押圧される複数の凸部を備える構成であってもよい。この構成によれば、複数の凸部の先端部を押しつぶすようにインナーパーツをボディ内に圧入することで、容易に複数の凸部の間に隙間を形成することが可能となる。
【0016】
請求項4の電動弁では、複数の凸部が、インナーパーツの周方向で等間隔に配置されるので、インナーパーツの外面とボディの内面との隙間をインナーパーツの周方向で等間隔に形成することが可能となる。また、インナーパーツの筒状部が、ボディの被圧入部の内周形状と相似の外周形状を有しているので、複数の凸部の突出高さをそろえることで、インナーパーツをロータの回転軸と同軸に配置し易くすることが可能となる。
【0017】
請求項5の電動弁では、複数の凸部が、インナーパーツの貫通孔の軸方向に延びた凸条となっているので、軸方向でのインナーパーツの固定の安定化が図られる。また、複数の凸部の間に形成される、インナーパーツの外面とボディの内面との間の隙間が、軸方向に延びる形状となるので、ロータ収容部屋と弁体収容部屋との間を流体が流通し易くなり、ロータ収容部屋と弁体収容部屋との圧力差をより生じ難くすることが可能となる。
【0018】
請求項6の電動弁では、凹凸係合部により、インナーパーツをボディに対して回り止めすることができる。これにより、インナーパーツの固定を安定化させることができ、シャフトの直線移動の安定化が図られる。
【0019】
請求項7の電動弁では、凹凸係合部を構成する係合凸部の先端部と係合凹部の内面との間に、ロータ収容部屋と弁体収容部屋とを連絡する隙間が形成されるので、ロータ収容部屋と弁体収容部屋との圧力差をより生じ難くすることが可能となる。
【0020】
請求項8の電動弁では、ベース部が、インナーパーツをロータ収容部とは反対側から圧入可能となっているので、ロータ収容部をベース部に溶接固定した後に、インナーパーツをベース部に固定することができる。これにより、樹脂製のインナーパーツが溶接の熱で変形することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図4】ボディの内面とインナーパーツの間の隙間の拡大側面図
【
図5】(A)筒形ベース部及びインナーパーツの
図3におけるA-A端面図、(B)筒形ベース部及びインナーパーツの拡大A-A端面図
【
図6】筒形ベース部及びインナーパーツの
図3におけるB-B端面図
【
図9】(A)インナーパーツの平面図、(B)インナーパーツの底面図
【
図10】大径ベース部に溶接固定されるスリーブの側断面図
【
図11】大径ベース部に圧入されるインナーパーツの側断面図
【
図12】大径ベース部に圧入されるインナーパーツの斜視図
【
図13】大径ベース部に圧入される小径ベース部の側断面図
【
図14】筒形本体部内に収容されたインナーパーツの側断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
図1には、第1実施形態に係る電動弁10が示されている。電動弁10は、ステータ11と、ステータ11の内側に回転可能に配置されたロータ30と、ロータ30の回転によりステータ11内を直線移動するシャフト70と、を備えている。そして、電動弁10は、流体流路の途中に配置される弁口51Kを備え、その弁口51Kをシャフト70の先端部の弁体72により開閉する(
図1及び
図2参照)。
【0023】
ステータ11は、ボディ12の外側にステータ側界磁部33を固定してなる。ボディ12は、略円筒状の筒形本体部20の一端を蓋体23で閉塞した中空構造をなし、上述のロータ30及びシャフト70を収容する。ステータ側界磁部33は、円環状をなし、電磁コイル34を並べて備えている。なお、以下では、ボディ12の蓋体23が配置される一端側を上側、他端側を下側、と適宜いうこととする。
【0024】
ボディ12の内部のうち上側には、ロータ30を収容するロータ収容部屋13が設けられ、ボディ12の内部のうち下側には、弁体72を収容する弁体収容部屋14が設けられている。弁体収容部屋14は、下方で弁口51Kと連通している。また、ボディ12の内面のうち軸の途中部分には、ロータ収容部屋13と弁体収容部屋14を仕切るインナーパーツ60が固定されている。
【0025】
ボディ12は、金属からなる。ボディ12の筒形本体部20は、上側に配置されるスリーブ21と、下側に配置される筒形ベース部22とが、例えば溶接により固定されてなり、スリーブ21と筒形ベース部22とは同軸上に配置されている。
【0026】
スリーブ21は、内部に上述のロータ30を収容する。スリーブ21の外周面の下端寄り位置には、上述のステータ側界磁部33が固定される。なお、スリーブ21の下端部は、垂直に折り曲げられて径方向内側に張り出す環状張出部21Eを形成している。本実施形態では、スリーブ21が、特許請求の範囲に記載の「ロータ収容部」に相当する。
【0027】
筒形ベース部22は、シャフト70の下端部(先端部)の弁体72を収容する。筒形ベース部22を軸方向に貫通する貫通孔51は、途中部分が下側に縮径されて、上述の弁口51Kを形成している。なお、筒形ベース部22の内部の弁体収容部屋14(即ち、弁口51Kより上側の部分)には、側方に貫通する側方孔52が形成されている。筒形ベース部22の貫通孔51の下端開口は、電動弁10が取り付けられる外部ボディ100の流路91と連絡し、側方孔52は、外部ボディ100の流路92と連絡する。そして、弁体72により弁口51Kの開度が変更されることで、弁口51Kを通過して流路91と流路92の間で流通する流体の流量が変更される(
図1及び
図2参照)。
【0028】
上述のインナーパーツ60は、樹脂製であり、略円筒状をなしている。インナーパーツ60を軸方向に貫通する貫通孔60H(
図3参照)は、上述のシャフト70に貫通される。インナーパーツ60の貫通孔60Hの内面には、雌螺子部60Nが形成されている。そして、この雌螺子部60Nが、シャフト70の外周面に形成された雄螺子部70Nと螺合することで、ロータ30の回転がシャフト70の弁体72の直線移動に変換される。なお、インナーパーツ60は、金属製のシャフト70を 滑らかに移動させるため、例えば、機械的強度が高い樹脂(ポリフェニレンサルファイド等)にポリテトラフルオロエチレンや炭素繊維等を配合した樹脂で構成される。インナーパーツ60については、後に詳説する。
【0029】
なお、シャフト70を移動させる機構は、例えば以下のようになっている。
図1に示すように、ロータ30は、両端開放の円筒状の回転筒31の外側に、磁性を有するロータ側界磁部32を固定してなる。このロータ側界磁部32とステータ側界磁部33とを主要部としてモータ19(例えばステッピングモータ)が構成され、ステータ側界磁部33の電磁コイル34の励磁パターンが変更されることで、ロータ側界磁部32が所定の回転位置に位置決めされる。なお、電動弁10には、ロータ30の回転数を一定範囲に規制するための図示しないストッパも備えられている。
【0030】
ロータ30の上端部と蓋体23との間、及び、ロータ30の下端部とスリーブ21との間には、それぞれボールベアリング35,35が配されている。上側のボールベアリング35のうちボールを挟むアウターレースとインナーレースは、それぞれロータ30の回転筒31の上端部と、蓋体23とに固定されている。下側のボールベアリング35のうちボールを挟むアウターレースとインナーレースは、それぞれボディ12のスリーブ21の下端部と、ロータ30の回転筒31の下端部と、に固定されている。
【0031】
ロータ30の回転筒31の中心孔の下端部には、ロータ30の軸方向に見たときに非円形となった嵌合孔部31Aが形成されていて、この嵌合孔部31Aに、シャフト70が嵌合している。シャフト70は、上端寄り部分にロータ30の嵌合孔部31Aに嵌合する非円形の嵌合部71を有する。これにより、シャフト70は、ロータ30と共に回転可能となっていると共に、ロータ30に対して直線移動可能となっている。そして、上述のように、ロータ30が回転すると、ボディ12に固定されたインナーパーツ60の雌螺子部60Nにシャフト70の雄螺子部70Nが螺合しながら回転することで、シャフト70がロータ30の回転軸方向に移動する。
【0032】
ここで、インナーパーツ60は、筒形ベース部22に圧入されて固定されている。具体的には、
図1に示すように、筒形ベース部22は、上側に配置される大径ベース部40と、下側に配置される小径ベース部50と、が連結されてなり、インナーパーツ60は、大径ベース部40に、下側から圧入されている。大径ベース部40には、上側からスリーブ21が固定される。小径ベース部50は、上述の弁口51Kと側方孔52を有する。小径ベース部50は、大径ベース部40の内側に圧入されて固定されている。
【0033】
図3及び
図5(A)に示すように、大径ベース部40は、内側にインナーパーツ60が圧入される被圧入部を備える。この被圧入部は、大径ベース部40の中心孔のうち軸方向で最も内径が小さくなった小径孔部41で構成される。
【0034】
大径ベース部40の中心孔のうち小径孔部41より上側には、小径孔部41よりも大径となった上側大径孔部42が設けられ、この上側大径孔部42には、スリーブ21の下端部が嵌合し、環状張出部21Eが上側から大径ベース部40に突き当てられる。大径ベース部40の中心孔のうち小径孔部41よりも下側には、小径孔部41よりも大径となった中径孔部43が設けられ、中径孔部43の下側には、中径孔部43よりも大径となった下側大径孔部44が設けられている。中径孔部43は、インナーパーツ60の後述のフランジ部60Fを受容し、下側大径孔部44の内面には、下側から小径ベース部50が圧入されている。また、中径孔部4の下端から小径孔部41の途中位置までには、大径ベース部40の軸方向に延びる係合凹部48が形成されている。係合凹部48は、大径ベース部40の周方向で180度離れた2箇所に配置されている(
図12参照)。
【0035】
次に、インナーパーツ60について詳説する。
図7及び
図8に示すように、インナーパーツ60は、軸方向の途中位置で下側に向かって2段階に拡径して中径部61とフランジ部60Fとを形成している。中径部61は、大径ベース部40の小径孔部41の内周形状に対して一回り小さい相似の外周形状を有している。フランジ部60Fの上端面の外縁には、環状凸部60Tが形成されている。そして、
図3に示すように、フランジ部60Fが、ボディ12の大径ベース部40と小径ベース部50とに挟み付けられることで、インナーパーツ60がロータ30の回転軸方向に位置決めされる。具体的には、インナーパーツ60のフランジ部60Fは、大径ベース部40のうち小径孔部41と中径孔部43との間の段差面40Dと、ボディ12内の段差面を構成する小径ベース部50の上端面50Dとの間に、挟み付けられる。詳細には、大径ベース部40の段差面40Dとは、フランジ部60Fの環状凸部60Tが当接する。なお、
図3は、
図6に示すD-D断面を表している。本実施形態では、段差面40Dと上端面50Dとが、特許請求の範囲に記載の「位置決め段差面」に相当する。また、中径部61が、特許請求の範囲に記載の「筒状部」に相当する。
【0036】
なお、
図8及び
図9(B)に示すように、フランジ部60Fの下面には、周方向で180度離れた2箇所に径方向に延びる直線溝60Uが形成されていると共に、周方向の複数位置に円形凹部69が形成されている。 これら直線溝60Uや円形凹部69は、インナーパーツ60を成形したときに、成形金型のねじ部を回転させて雌螺子部60Nから抜く際、インナーパーツ60がつられて回転することを防止できる。
【0037】
ここで、ボディ12の内部が、シャフト70が挿通されるインナーパーツ60によりロータ収容部屋13と弁体収容部屋14とに仕切られる構成では、ロータ収容部屋13と弁体収容部屋14との間に圧力差が生じると、インナーパーツ60の雌螺子部60Nの内面とシャフト70の雄螺子部70Nの外面との間から圧力が徐々に抜け得るため、弁口51Kの周辺の圧力が安定し難くなるという問題が生じ得る。これに対し、従来の電動弁のように、ボディ12にインサート成形で一体化されるインナーパーツを用いる場合、例えば、インナーパーツにシャフト70が挿通される孔とは別の連通孔を軸方向に貫通形成して、ロータ収容部屋13と弁体収容部屋14とを連絡させる構成が考えられる。しかしながら、この構成では、インナーパーツに上記連通孔を形成するために、インナーパーツの成形金型に細いピン等を設ける必要があるため、成形金型が複雑になり、成形金型の製造コストが高くなるという問題がある。また、例えば、インナーパーツの上記連通孔の周辺にバリが発生する等してインナーパーツの不良品が発生し易くなり、生産性が悪いという問題がある。また、この場合、従来のようにインナーパーツがインサート成形されていると、ボディ12ごと交換する必要が生じる。
【0038】
これに対し、本実施形態では、インナーパーツ60の外周面に、大径ベース部40(即ち、ボディ12)の内面との間に隙間Sを形成する凹凸部60Aが形成されている。そして、この隙間Sにより、ロータ収容部屋13と弁体収容部屋14との間を連通できるようになっている(
図4参照)。
【0039】
具体的には、
図7及び
図9(A)に示すように、インナーパーツ60の上記凹凸部60Aは、インナーパーツ60の中径部61の外周面から突出した複数(例えば8つ)の凸部65を有している。本実施形態では、複数の凸部65は、インナーパーツ60の軸方向に延びる凸条になっていると共に、インナーパーツ60の周方向で等間隔に配置され、互いに同じ構成(即ち、同じ形状で同じ突出量)となっている。複数の凸部65は、インナーパーツ60の軸方向から見ると、外側に膨出し、円弧状の膨出面を有している。そして、インナーパーツ60が大径ベース部40内に圧入されると、複数の凸部65が、大径ベース部40の小径孔部41の内面に押圧されて、複数の凸部65の先端部が押しつぶされる(
図5(A)及び
図5(B)参照)。このとき、インナーパーツ60の周方向で複数の凸部65同士の間に、軸方向に延びる隙間Sが形成される。なお、圧入により複数の凸部65を押しつぶすために、圧入前のインナーパーツ60では、インナーパーツ60の中心軸と凸部65の先端との距離(複数の凸部65の先端の外接円の半径)は、大径ベース部40の小径孔部41の半径よりも大きくなっている。
【0040】
また、インナーパーツ60の中径部61のうち周方向で180度離れた2箇所からは、係合凸部66が突出し、フランジ部60Fと連絡している。
図6に示すように、係合凸部66は、ボディ12の大径ベース部40の上述の係合凹部48(
図12参照)と係合する。これにより、インナーパーツ60が大径ベース部40(即ち、ボディ12)に対して回り止される。なお、係合凸部66は、周方向で複数の凸部65とは異なる位置に配置される。即ち、各係合凸部66は、隣り合う1対の凸部65同士の間に配置される。本実施形態では、係合凸部66と係合凹部48とが、特許請求の範囲に記載の「凹凸係合部」に相当する。
【0041】
ここで、
図6に示すように、係合凸部66の先端部は、インナーパーツ60の軸方向から見ると、外側に膨出した半円の先端が略平坦に切除された形状をなしている。従って、インナーパーツ60が固定されたときには、大径ベース部40のうち軸方向からみて丸溝状に形成された係合凹部48の内面と、係合凸部66の先端部との間に、隙間Sが形成されることとなる。そして、
図4に示すように、この隙間Sは、上述の隣り合う1対の凸部65同士の間を通って、また直線溝60U内を通って、ロータ収容部屋13と弁体収容部屋14とを連絡している。なお、
図4は、
図6に示すC-C断面を表している。
【0042】
本実施形態の電動弁10は、例えば以下のようにして製造される。まず、
図10に示すように、大径ベース部40の上端部に、スリーブ21が溶接固定される。詳細には、スリーブ21の下端部が、大径ベース部40の上側大径孔部42に嵌合する。
【0043】
次に、
図11及び
図12に示すように、インナーパーツ60が、大径ベース部40に下方から(即ち、スリーブ21と反対側から)圧入される。このとき、インナーパーツ60の複数の凸部65が大径ベース部40の小径孔部41の内面に押圧されると共に、インナーパーツ60の係合凸部66が大径ベース部40の係合凹部48に係合する。そして、上述のように、インナーパーツ60の外面と大径ベース部40の内面との間に、隙間Sが形成される。なお、このとき、インナーパーツ60の上端部は、スリーブ21の下端開口に挿通されて、スリーブ21内に突入する。インナーパーツ60の下端部は、大径ベース部40よりも下方に突き出る。
【0044】
次に、
図13に示すように、インナーパーツ60が圧入された大径ベース部40の内側に、下方から小径ベース部50が圧入される。具体的には、小径ベース部50は、大径ベース部40の下端部の下側大径孔部44に圧入される。このとき、インナーパーツ60の下端部は、小径ベース部50の内側に配置される。そして、大径ベース部40の段差面40Dと、小径ベース部50の上端面50Dとにより挟み付けられて、インナーパーツ60が軸方向に位置決めされる。
【0045】
図14に示すように、小径ベース部50が大径ベース部40に圧入されて固定されると、これらから筒形ベース部22が形成される。そして、筒形ベース部22の内部のうちインナーパーツ60と弁口51Kとの間の領域により弁体収容部屋14が形成される。
【0046】
次いで、スリーブ21内に上方からシャフト70及びロータ30等が収容され、蓋体23でスリーブ21の上端開口が閉塞される(
図1参照)。これにより、ボディ12が形成され、ボディ12の内部のうちインナーパーツ60よりも上側の領域により、ロータ収容部屋13が形成される。また、ステータ側界磁部33(
図1参照)が、スリーブ21の外周面に固定されると共に、筒形ベース部22(大径ベース部40)の上端面に当接する。なお、大径ベース部40と小径ベース部50の外周面の環状溝には、外部ボディ100の電動弁装着孔99の内面とボディ12の外面との間をシールするためのOリングが嵌着される。以上により、本実施形態の電動弁10が完成する。
【0047】
次に、本実施形態の電動弁10の作用効果について説明する。本実施形態の電動弁10では、インナーパーツ60が圧入によりボディ12に固定されるので、インナーパーツ60をボディ12とインサート成形により一体成形する場合に比べて、インナーパーツ60に不良品が発生したときにボディ12ごと交換する必要がなくなり、製造コストを抑えることが可能となる。また、電動弁10では、インナーパーツ60の外面の凹凸部60Aにより、ボディ12の内面とインナーパーツ60との間に、ロータ収容部屋13と弁体収容部屋14とを連絡する隙間Sが形成されるので、ロータ収容部屋13と弁体収容部屋14との圧力差を生じ難くすることができる。ここで、インナーパーツをインサート成形でボディ12と一体成形する場合、このような隙間を形成するためには、成形金型が複雑な構造となるため、電動弁の製造コストが高くなる。これに対し、電動弁10では、凹凸部60Aをインナーパーツ60の外面に形成し、インナーパーツ60をボディ12に圧入することで隙間Sを形成できるので、隙間Sを有する電動弁の製造コストを抑えることが可能となる。また、従来のようにインサート成形によりインナーパーツを成形する場合、インナーパーツを構成する樹脂を、ボディ12と接着し易いもの等、インサート成形に適した樹脂を用いる必要があるが、本実施形態のインナーパーツ60であれば、樹脂の選択の自由度が高くなる。
【0048】
また、電動弁10では、インナーパーツ60の凹凸部60Aが、インナーパーツ60の外面の周方向の複数個所に形成されてボディ12の内面に押圧される複数の凸部65を備える。この構成によれば、複数の凸部65の先端部を押しつぶすようにインナーパーツ60をボディ12内に圧入することで、容易に複数の凸部65の間に隙間を形成することが可能となる。また、このようにインナーパーツ60の外面に隙間Sを形成する構成とすることで、インナーパーツ60にロータ収容部屋13と弁体収容部屋14を連絡する貫通孔を形成する場合に比べて、インナーパーツ60の圧入に対する剛性の低下を抑えることが可能となる。
【0049】
また、複数の凸部65が、インナーパーツ60の周方向で等間隔に配置されるので、インナーパーツ60の外面とボディ12の内面との隙間をインナーパーツ60の周方向で等間隔に形成することが可能となる。また、インナーパーツ60の中径部61が、ボディ12の小径孔部41の内周形状と相似の外周形状を有しているので、複数の凸部65の突出高さをそろえることで、インナーパーツ60をロータの回転軸と同軸に配置し易くすることが可能となる。
【0050】
電動弁10では、複数の凸部65が、インナーパーツ60の貫通孔60Hの軸方向に延びた凸条となっているので、軸方向でのインナーパーツ60の固定の安定化が図られる。また、複数の凸部65の間に形成される、インナーパーツ60の外面とボディ12の内面との間の隙間Sが、軸方向に延びる形状となるので、ロータ収容部屋13と弁体収容部屋14との間を流体が流通し易くなり、ロータ収容部屋13と弁体収容部屋14との圧力差をより生じ難くすることが可能となる。
【0051】
また、電動弁10では、係合凸部66及び係合凹部48により、インナーパーツ60をボディ12に対して回り止めすることができる。これにより、インナーパーツ60の固定を安定化させることができ、シャフト70の直線移動の安定化が図られる。
【0052】
さらに、電動弁10では、係合凸部66の先端部と係合凹部48の内面との間に、ロータ収容部屋13と弁体収容部屋14とを連絡する隙間Sが形成されるので、ロータ収容部屋13と弁体収容部屋14との圧力差をより生じ難くすることが可能となる。
【0053】
また、電動弁10では、ボディ12の内部にインナーパーツ60をロータ30の回転軸方向で位置決めする段差面40D,50Dが備えられているので、インナーパーツ60の固定をより安定化させることができる。
【0054】
電動弁10では、筒形ベース部22が、インナーパーツ60をスリーブ21とは反対側から圧入可能となっているので、スリーブ21を筒形ベース部22に溶接固定した後に、インナーパーツ60を筒形ベース部22に固定することができる。これにより、樹脂製のインナーパーツ60が溶接の熱で変形することを防ぐことができる。特に、スリーブ21の溶接部位とインナーパーツ60が近接する場合では、インナーパーツ60が大径ベース部40に固定された状態でスリーブ21が溶接されると、インナーパーツ60が熱で変形し易いが、本実施形態の構成によれば、インナーパーツ60の熱による変形を防ぐことができる。
【0055】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態では、ロータ収容部屋13と弁体収容部屋14とを連絡する隙間Sを形成する凹凸部60Aが、インナーパーツ60の外周面に複数の凸部65を備えた構成であったが、インナーパーツ60の外周面に軸方向に延びる溝が形成された構成であってもよい。なお、インナーパーツ60が圧入される大径ベース部40の小径孔部41の内周面に、凸部を設けたり、軸方向に延びる溝を設けたりして、隙間Sを形成することも可能である。
【0056】
(2)上記実施形態では、凸部65が、凸条になっていたが、これに限定されるものではなく、例えば、半球状や錐台形状等であってもよい。
【0057】
(3)上記実施形態では、複数の凸部65がインナーパーツ60の周方向で等間隔に配置されていたが、等間隔に配置されていなくてもよい。
【0058】
(4)筒形ベース部22を、インナーパーツ60が筒形ベース部22に上側(スリーブ21側)から圧入される構成としてもよい。この場合、インナーパーツ60を、筒形ベース部22の内部の段差面と、スリーブ21の下端部(環状張出部21E)とで挟み付けて、ボディ12の軸方向(ロータ30の回転軸方向)に位置決めしてもよい。また、この場合、筒形ベース部22が大径ベース部40と小径ベース部50とから構成されずに1部品で構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10 電動弁
12 ボディ
13 ロータ収容部屋
14 弁体収容部屋
19 モータ
30 ロータ
60 インナーパーツ
70 シャフト
72 弁体
S 隙間
【手続補正書】
【提出日】2020-11-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体(72)の駆動源であるモータ(19)のロータ(30)を収容するロータ収容部屋(13)と、前記弁体(72)を収容しかつ弁口(51K)と連通する弁体収容部屋(14)とを有する金属製のボディ(12)の内部に前記ロータ収容部屋(13)と前記弁体収容部屋(14)とを仕切る樹脂製のインナーパーツ(60)を備え、
前記インナーパーツ(60)を貫通する貫通孔(60H)を、前記ロータ(30)と共に回転するシャフト(70)が貫通して、そのシャフト(70)の先端部に前記弁体(72)が配置され、前記貫通孔(60H)と前記シャフト(70)とに形成された螺子部(60N,70N)同士の螺合により前記ロータ(30)の回転が前記弁体(72)の直線移動に変換される電動弁(10)であって、
前記インナーパーツ(60)は、前記ボディ(12)の内部のうち前記ロータ収容部屋(13)と前記弁体収容部屋(14)との間の被圧入部(41)に圧入されて固定され、
前記インナーパーツ(60)の外面には、前記ボディ(12)の内面との間に前記ロータ収容部屋(13)と前記弁体収容部屋(14)とを連絡する隙間(S)を形成する凹凸部(60A)が形成され、
前記ボディ(12)の内部には、前記インナーパーツ(60)を前記ロータ(30)の回転軸方向で位置決めする位置決め段差面(40D,50D)が備えられている電動弁(10)。
【請求項2】
弁体(72)の駆動源であるモータ(19)のロータ(30)を収容するロータ収容部屋(13)と、前記弁体(72)を収容しかつ弁口(51K)と連通する弁体収容部屋(14)とを有する金属製のボディ(12)の内部に前記ロータ収容部屋(13)と前記弁体収容部屋(14)とを仕切る樹脂製のインナーパーツ(60)を備え、
前記インナーパーツ(60)を貫通する貫通孔(60H)を、前記ロータ(30)と共に回転するシャフト(70)が貫通して、そのシャフト(70)の先端部に前記弁体(72)が配置され、前記貫通孔(60H)と前記シャフト(70)とに形成された螺子部(60N,70N)同士の螺合により前記ロータ(30)の回転が前記弁体(72)の直線移動に変換される電動弁(10)であって、
前記インナーパーツ(60)は、前記ボディ(12)の内部のうち前記ロータ収容部屋(13)と前記弁体収容部屋(14)との間の被圧入部(41)に圧入されて固定され、
前記インナーパーツ(60)の外面には、前記ボディ(12)の内面との間に前記ロータ収容部屋(13)と前記弁体収容部屋(14)とを連絡する隙間(S)を形成する凹凸部(60A)が形成され、
前記凹凸部(60A)は、前記インナーパーツ(60)の外面の周方向の複数箇所に形成されて前記ボディ(12)の前記被圧入部(41)の内面に押圧される複数の凸部(65)を備える電動弁(10)。
【請求項3】
前記インナーパーツ(60)は、前記被圧入部(41)の内周形状と相似の外周形状を有した筒状部(61)を備え、
前記複数の凸部(65)は、前記筒状部(61)の外周面から突出し、前記筒状部(61)の周方向で等間隔に配置されている、請求項2に記載の電動弁(10)。
【請求項4】
前記複数の凸部(65)は、前記インナーパーツ(60)の前記貫通孔(60H)の軸方向に延びた凸条になっている、請求項2又は3に記載の電動弁(10)。
【請求項5】
弁体(72)の駆動源であるモータ(19)のロータ(30)を収容するロータ収容部屋(13)と、前記弁体(72)を収容しかつ弁口(51K)と連通する弁体収容部屋(14)とを有する金属製のボディ(12)の内部に前記ロータ収容部屋(13)と前記弁体収容部屋(14)とを仕切る樹脂製のインナーパーツ(60)を備え、
前記インナーパーツ(60)を貫通する貫通孔(60H)を、前記ロータ(30)と共に回転するシャフト(70)が貫通して、そのシャフト(70)の先端部に前記弁体(72)が配置され、前記貫通孔(60H)と前記シャフト(70)とに形成された螺子部(60N,70N)同士の螺合により前記ロータ(30)の回転が前記弁体(72)の直線移動に変換される電動弁(10)であって、
前記インナーパーツ(60)は、前記ボディ(12)の内部のうち前記ロータ収容部屋(13)と前記弁体収容部屋(14)との間の被圧入部(41)に圧入されて固定され、
前記インナーパーツ(60)の外面には、前記ボディ(12)の内面との間に前記ロータ収容部屋(13)と前記弁体収容部屋(14)とを連絡する隙間(S)を形成する凹凸部(60A)が形成され、
前記インナーパーツ(60)の外面と前記ボディ(12)の内面とにそれぞれ形成されて、前記ボディ(12)に対して前記インナーパーツ(60)を回り止めするように凹凸係合する凹凸係合部(66,48)を備える電動弁(10)。
【請求項6】
前記凹凸係合部(66,48)は、前記インナーパーツ(60)の外面と前記ボディ(12)の内面との一方に形成された係合凸部(66)と他方に形成された係合凹部(48)とからなり、前記係合凸部(66)の先端部と前記係合凹部(48)の内面との間に前記ロータ収容部屋(13)と前記弁体収容部屋(14)とを連絡する隙間(S)が形成されている、請求項5に記載の電動弁(10)。
【請求項7】
弁体(72)の駆動源であるモータ(19)のロータ(30)を収容するロータ収容部屋(13)と、前記弁体(72)を収容しかつ弁口(51K)と連通する弁体収容部屋(14)とを有する金属製のボディ(12)の内部に前記ロータ収容部屋(13)と前記弁体収容部屋(14)とを仕切る樹脂製のインナーパーツ(60)を備え、
前記インナーパーツ(60)を貫通する貫通孔(60H)を、前記ロータ(30)と共に回転するシャフト(70)が貫通して、そのシャフト(70)の先端部に前記弁体(72)が配置され、前記貫通孔(60H)と前記シャフト(70)とに形成された螺子部(60N,70N)同士の螺合により前記ロータ(30)の回転が前記弁体(72)の直線移動に変換される電動弁(10)であって、
前記インナーパーツ(60)は、前記ボディ(12)の内部のうち前記ロータ収容部屋(13)と前記弁体収容部屋(14)との間の被圧入部(41)に圧入されて固定され、
前記インナーパーツ(60)の外面には、前記ボディ(12)の内面との間に前記ロータ収容部屋(13)と前記弁体収容部屋(14)とを連絡する隙間(S)を形成する凹凸部(60A)が形成され、
前記ボディ(12)には、
前記ロータ収容部屋(13)が内側に配置されるロータ収容部(21)と、
前記ロータ収容部(21)に溶接され、前記ロータ収容部屋(13)とは反対側から前記インナーパーツ(60)が圧入される前記被圧入部(41)を有する第1ベース部(40)と、
前記第1ベース部(40)に前記ロータ収容部屋(13)とは反対側から連結され、前記弁体収容部屋(14)が内側に配置される第2ベース部(50)と、が備えられている電動弁(10)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1の電動弁は、弁体(72)の駆動源であるモータ(19)のロータ(30)を収容するロータ収容部屋(13)と、前記弁体(72)を収容しかつ弁口(51K)と連通する弁体収容部屋(14)とを有する金属製のボディ(12)の内部に前記ロータ収容部屋(13)と前記弁体収容部屋(14)とを仕切る樹脂製のインナーパーツ(60)を備え、前記インナーパーツ(60)を貫通する貫通孔(60H)を、前記ロータ(30)と共に回転するシャフト(70)が貫通して、そのシャフト(70)の先端部に前記弁体(72)が配置され、前記貫通孔(60H)と前記シャフト(70)とに形成された螺子部(60N,70N)同士の螺合により前記ロータ(30)の回転が前記弁体(72)の直線移動に変換される電動弁(10)であって、前記インナーパーツ(60)は、前記ボディ(12)の内部のうち前記ロータ収容部屋(13)と前記弁体収容部屋(14)との間の被圧入部(41)に圧入されて固定され、前記インナーパーツ(60)の外面には、前記ボディ(12)の内面との間に前記ロータ収容部屋(13)と前記弁体収容部屋(14)とを連絡する隙間(S)を形成する凹凸部(60A)が形成され、前記ボディ(12)の内部には、前記インナーパーツ(60)を前記ロータ(30)の回転軸方向で位置決めする位置決め段差面(40D,50D)が備えられている電動弁(10)である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
請求項2の電動弁は、弁体(72)の駆動源であるモータ(19)のロータ(30)を収容するロータ収容部屋(13)と、前記弁体(72)を収容しかつ弁口(51K)と連通する弁体収容部屋(14)とを有する金属製のボディ(12)の内部に前記ロータ収容部屋(13)と前記弁体収容部屋(14)とを仕切る樹脂製のインナーパーツ(60)を備え、前記インナーパーツ(60)を貫通する貫通孔(60H)を、前記ロータ(30)と共に回転するシャフト(70)が貫通して、そのシャフト(70)の先端部に前記弁体(72)が配置され、前記貫通孔(60H)と前記シャフト(70)とに形成された螺子部(60N,70N)同士の螺合により前記ロータ(30)の回転が前記弁体(72)の直線移動に変換される電動弁(10)であって、前記インナーパーツ(60)は、前記ボディ(12)の内部のうち前記ロータ収容部屋(13)と前記弁体収容部屋(14)との間の被圧入部(41)に圧入されて固定され、前記インナーパーツ(60)の外面には、前記ボディ(12)の内面との間に前記ロータ収容部屋(13)と前記弁体収容部屋(14)とを連絡する隙間(S)を形成する凹凸部(60A)が形成され、前記凹凸部(60A)は、前記インナーパーツ(60)の外面の周方向の複数箇所に形成されて前記ボディ(12)の前記被圧入部(41)の内面に押圧される複数の凸部(65)を備える電動弁(10)である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
請求項3の電動弁は、前記インナーパーツ(60)は、前記被圧入部(41)の内周形状と相似の外周形状を有した筒状部(61)を備え、前記複数の凸部(65)は、前記筒状部(61)の外周面から突出し、前記筒状部(61)の周方向で等間隔に配置されている、請求項2に記載の電動弁(10)である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
請求項4の電動弁は、前記複数の凸部(65)は、前記インナーパーツ(60)の前記貫通孔(60H)の軸方向に延びた凸条になっている、請求項2又は3に記載の電動弁(10)である。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
請求項5の電動弁は、弁体(72)の駆動源であるモータ(19)のロータ(30)を収容するロータ収容部屋(13)と、前記弁体(72)を収容しかつ弁口(51K)と連通する弁体収容部屋(14)とを有する金属製のボディ(12)の内部に前記ロータ収容部屋(13)と前記弁体収容部屋(14)とを仕切る樹脂製のインナーパーツ(60)を備え、前記インナーパーツ(60)を貫通する貫通孔(60H)を、前記ロータ(30)と共に回転するシャフト(70)が貫通して、そのシャフト(70)の先端部に前記弁体(72)が配置され、前記貫通孔(60H)と前記シャフト(70)とに形成された螺子部(60N,70N)同士の螺合により前記ロータ(30)の回転が前記弁体(72)の直線移動に変換される電動弁(10)であって、前記インナーパーツ(60)は、前記ボディ(12)の内部のうち前記ロータ収容部屋(13)と前記弁体収容部屋(14)との間の被圧入部(41)に圧入されて固定され、前記インナーパーツ(60)の外面には、前記ボディ(12)の内面との間に前記ロータ収容部屋(13)と前記弁体収容部屋(14)とを連絡する隙間(S)を形成する凹凸部(60A)が形成され、前記インナーパーツ(60)の外面と前記ボディ(12)の内面とにそれぞれ形成されて、前記ボディ(12)に対して前記インナーパーツ(60)を回り止めするように凹凸係合する凹凸係合部(66,48)を備える電動弁(10)である。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
請求項6の電動弁は、前記凹凸係合部(66,48)は、前記インナーパーツ(60)の外面と前記ボディ(12)の内面との一方に形成された係合凸部(66)と他方に形成された係合凹部(48)とからなり、前記係合凸部(66)の先端部と前記係合凹部(48)の内面との間に前記ロータ収容部屋(13)と前記弁体収容部屋(14)とを連絡する隙間(S)が形成されている、請求項5に記載の電動弁(10)である。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
請求項7の電動弁は、弁体(72)の駆動源であるモータ(19)のロータ(30)を収容するロータ収容部屋(13)と、前記弁体(72)を収容しかつ弁口(51K)と連通する弁体収容部屋(14)とを有する金属製のボディ(12)の内部に前記ロータ収容部屋(13)と前記弁体収容部屋(14)とを仕切る樹脂製のインナーパーツ(60)を備え、前記インナーパーツ(60)を貫通する貫通孔(60H)を、前記ロータ(30)と共に回転するシャフト(70)が貫通して、そのシャフト(70)の先端部に前記弁体(72)が配置され、前記貫通孔(60H)と前記シャフト(70)とに形成された螺子部(60N,70N)同士の螺合により前記ロータ(30)の回転が前記弁体(72)の直線移動に変換される電動弁(10)であって、前記インナーパーツ(60)は、前記ボディ(12)の内部のうち前記ロータ収容部屋(13)と前記弁体収容部屋(14)との間の被圧入部(41)に圧入されて固定され、前記インナーパーツ(60)の外面には、前記ボディ(12)の内面との間に前記ロータ収容部屋(13)と前記弁体収容部屋(14)とを連絡する隙間(S)を形成する凹凸部(60A)が形成され、前記ボディ(12)には、前記ロータ収容部屋(13)が内側に配置されるロータ収容部(21)と、前記ロータ収容部(21)に溶接され、前記ロータ収容部屋(13)とは反対側から前記インナーパーツ(60)が圧入される前記被圧入部(41)を有する第1ベース部(40)と、前記第1ベース部(40)に前記ロータ収容部屋(13)とは反対側から連結され、前記弁体収容部屋(14)が内側に配置される第2ベース部(50)と、が備えられている電動弁(10)である。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
請求項1,2,5,7の電動弁では、インナーパーツが圧入によりボディに固定されるので、インナーパーツをボディとインサート成形により一体成形する場合に比べて、インナーパーツに不良品が発生したときにボディごと交換する必要がなくなり、製造コストを抑えることが可能となる。また、請求項1,2,5,7の電動弁では、インナーパーツの外面の凹凸部により、ボディの内面とインナーパーツとの間に、ロータ収容部屋と弁体収容部屋とを連絡する隙間が形成されるので、ロータ収容部屋と弁体収容部屋との圧力差を生じ難くすることができる。ここで、インナーパーツをインサート成形でボディと一体成形する場合、このような隙間を形成するためには、成形金型が複雑な構造となるため、電動弁の製造コストが高くなる。これに対し、請求項1,2,5,7の電動弁では、上述のように凹凸部をインナーパーツの外面に形成し、インナーパーツをボディに圧入することで上記隙間を形成できるので、上記隙間を有する電動弁の製造コストを抑えることが可能となる。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
請求項1の電動弁では、ボディの内部に、インナーパーツをロータの回転軸方向で位置決めする位置決め段差面が備えられているので、インナーパーツの固定をより安定化させることができる。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
請求項2の電動弁のように、インナーパーツの凹凸部は、インナーパーツの外面の周方向の複数個所に形成されてボディの内面に押圧される複数の凸部を備える構成であってもよい。この構成によれば、複数の凸部の先端部を押しつぶすようにインナーパーツをボディ内に圧入することで、容易に複数の凸部の間に隙間を形成することが可能となる。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
請求項3の電動弁では、複数の凸部が、インナーパーツの周方向で等間隔に配置されるので、インナーパーツの外面とボディの内面との隙間をインナーパーツの周方向で等間隔に形成することが可能となる。また、インナーパーツの筒状部が、ボディの被圧入部の内周形状と相似の外周形状を有しているので、複数の凸部の突出高さをそろえることで、インナーパーツをロータの回転軸と同軸に配置し易くすることが可能となる。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
請求項4の電動弁では、複数の凸部が、インナーパーツの貫通孔の軸方向に延びた凸条となっているので、軸方向でのインナーパーツの固定の安定化が図られる。また、複数の凸部の間に形成される、インナーパーツの外面とボディの内面との間の隙間が、軸方向に延びる形状となるので、ロータ収容部屋と弁体収容部屋との間を流体が流通し易くなり、ロータ収容部屋と弁体収容部屋との圧力差をより生じ難くすることが可能となる。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
請求項5の電動弁では、凹凸係合部により、インナーパーツをボディに対して回り止めすることができる。これにより、インナーパーツの固定を安定化させることができ、シャフトの直線移動の安定化が図られる。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
請求項6の電動弁では、凹凸係合部を構成する係合凸部の先端部と係合凹部の内面との間に、ロータ収容部屋と弁体収容部屋とを連絡する隙間が形成されるので、ロータ収容部屋と弁体収容部屋との圧力差をより生じ難くすることが可能となる。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
請求項7の電動弁では、第1ベース部が、インナーパーツをロータ収容部とは反対側から圧入可能となっているので、ロータ収容部を第1ベース部に溶接固定した後に、インナーパーツを第1ベース部に固定することができる。これにより、樹脂製のインナーパーツが溶接の熱で変形することを防ぐことができる。