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  • 特開-抵抗溶接用電極 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034489
(43)【公開日】2022-03-03
(54)【発明の名称】抵抗溶接用電極
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/30 20060101AFI20220224BHJP
   B23K 35/04 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
B23K11/30
B23K35/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020149443
(22)【出願日】2020-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】392014760
【氏名又は名称】新光機器株式会社
(72)【発明者】
【氏名】蕗澤 武夫
(72)【発明者】
【氏名】浅井 直樹
(57)【要約】
【課題】揺動電極を常に電極面が水平になるように付勢する付勢装置を設けたことにより、揺動電極の揺動が阻止されることによる溶接不良を防止した抵抗溶接用電極を提供する。
【解決手段】揺動電極1を先端方向に付勢する付勢装置を設けた。また、付勢装置が、揺動電極1の冷却通路の基端に形成した大径部8と支持部材43の冷却通路先端に形成した大径部18に介装したコイルバネ23である。さらに、付勢装置として揺動電極40の冷却通路を支持部材43の冷却通路より細径として揺動電極40の基端面を冷却通路に垂直に露出し、冷却通路48に供給される冷却水を揺動電極40の基端面47に衝突するようにした
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
揺動電極の基端部と支持部材の先端部の一方に球状突起を、他方に円錐形孔を形成し、円錐形孔に球状突起を嵌め込み、支持部材から揺動電極の電極面近傍に冷却通路を設け、支持部材に揺動電極を揺動可能に装着した抵抗溶接用電極において、揺動電極を先端方向に付勢する付勢装置を設けたことを特徴とした抵抗溶接用電極。
【請求項2】
前記付勢装置が、揺動電極の前記冷却通路の基端に形成した大径部と支持部材の前記冷却通路先端に形成した大径部に介装したコイルバネであることを特徴とした請求項1記載の抵抗溶接用電極。
【請求項3】
前記付勢装置として揺動電極の前記冷却通路を支持部材の前記冷却通路より細径として揺動電極の基端面を冷却通路に垂直に露出し、冷却通路に供給される冷却水を揺動電極の基端面に衝突するようにしたことを特徴とした請求項1記載の抵抗溶接用電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抵抗溶接に用いられる電極、特にスイベルチップと呼ばれている電極部が揺動可能な抵抗溶接用電極に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電極として、従来、図6に示すように、上部電極71の導電性の支持部材72に円弧状先端部73を形成し、導電性の揺動電極74の基端に、円弧状先端部73に対応した円弧状凹部75を形成し、支持部材72の円弧状先端部73を揺動電極74の円弧状凹部75に嵌め込んで支持部材72に揺動電極74を揺動可能に装着し、ワーク76の傾斜面にワーク77を溶接する場合、揺動電極74の電極面78がワーク77に当接するように支持部材72に対して揺動し、揺動電極74によってワーク76、77を加圧通電するようになっていた。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭58-019029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のものでは、溶接後に上部電極71が上昇したとき、揺動電極74の電極面78が元の水平状態に戻らないことがあり、電極面78が傾斜した状態で、上部電極71が溶接のため下降し、傾斜した電極面78の下端部がワーク77に当接したとき、ワーク77が波打ち、歪み等により変形していると、ワーク77の変形により、揺動電極74の揺動が阻止され溶接不良となるという問題があった。
【0005】
本発明は、前記の問題を解決し、揺動電極を常に電極面が水平になるように付勢する付勢装置を設けたことにより、揺動電極の揺動が阻止されることによる溶接不良を防止した抵抗溶接用電極を提供することを目的になされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明の抵抗溶接用抵抗溶接用電極は、揺動電極の基端部と支持部材の先端部の一方に球状突起を、他方に円錐形孔を形成し、円錐形孔に球状突起を嵌め込み、支持部材から揺動電極の電極面近傍に冷却通路を設け、支持部材に揺動電極を揺動可能に装着した抵抗溶接用電極において、揺動電極を先端方向に付勢する付勢装置を設けたことを特徴とするものである。
【0007】
前記付勢装置が、揺動電極の冷却通路の基端に形成した大径部と支持部材の冷却通路先端に形成した大径部に介装したコイルバネであることが好ましく、これを請求項2の発明とする。
【0008】
前記付勢装置として揺動電極の冷却通路を支持部材の冷却通路より細径として揺動電極の基端面を冷却通路に垂直に露出し、冷却通路に供給される冷却水を揺動電極の基端面に衝突するようにしたことが好ましく、これを請求項3の発明とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明では、揺動電極を先端方向に付勢する付勢装置を設けたので、上部電極が上昇すると、揺動電極は常に電極面が水平になるので、溶接不良を防止できる。
【0010】
請求項2の発明では、前記付勢装置が、揺動電極の冷却通路の基端に形成した大径部と支持部材の冷却通路先端に形成した大径部に介装したコイルバネであるので簡単な構成で安価に製作できる。
【0011】
請求項3の発明では、前記付勢装置として揺動電極の冷却通路を支持部材の冷却通路より細径として揺動電極の基端面を冷却通路に垂直に露出し、冷却通路に供給される冷却水を揺動電極の基端面に衝突するようにしたので、部品点数を増加させることなく簡単な構成で安価に製作できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施の形態を示す断面図である。
図2図1の揺動電極が揺動した状態を示す断面図である。
図3図1の揺動電極と支持部材の分解図である。
図4】本発明の第2の実施形態を示す断面図である。
図5図4の揺動電極が揺動した状態を示す断面図である。
図6】従来例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明の第1の実施形態について図1から図3に基づいて説明すると、1は本体2と本体2の先端に取付けられたキャップチップ3とからなる導電性の揺動電極であり、揺動電極1の本体2は筒状胴部4の基端に球状突起5が形成され、球状突起5の先端には全周渡って係止突起6が形成されるとともに、軸方向中心には基端に段差部7を設けて大径部8を形成した冷却通路9が形成されており、また、キャップチップ3は。その先端に円形の平面電極面10が形成されるとともに、本体2の先端が嵌入される、基端を開口した嵌合凹部11が形成されている。
【0014】
12は2段の段差13、14を設け、基端を細径とした、導電性の円柱状支持部材であり、支持部材12の中間部には、前記揺動電極1の本体2の球状突起5が嵌合されて、揺動電極1を揺動可能に保持する、基端が細径の円錐形孔16形成され、円錐形孔16の基端側には、先端には前記揺動電極1の本体2の冷却通路9の大径部8と略同径の段差17を設けた大径部18を形成した冷却通路19が形成され、円錐形孔16の先端側には係止用段部20が形成されるとともに係止用段部20から先端に掛けて本体2が球状突起5側から嵌入される嵌入穴21が形成され、冷却通路19と揺動電極1の本体2の冷却通路9とで、冷却水をキャップチップ3の嵌合凹部11に供給する冷却通路22を形成している。
【0015】
23は揺動電極1の本体2の大径部8と支持部材12の大径部18に介装されるコイルバネであり、コイルバネ23は揺動電極1を常に先端方向に付勢しており、誘導電極1が揺動したとき揺動電極1が垂直、即ちキャップチップ3の平面電極10が水平になるように付勢している。
【0016】
24は揺動電極1と支持部材12との間を密封するパッキンであり、25は誘導電極1の本体2を支持部材12の嵌入穴21嵌入し、基端の球状突起を円錐形孔に嵌合した揺動電極の抜け止めのための抜け止め具であり、26は抜け止め具25を取付けるC形止め輪である。
【0017】
次に、組立方法について説明すると、支持部材12の嵌入穴21に、揺動電極1の本体2を、基端の大径部8にコイルバネ23を装着して球状突起16側から嵌入し支持部材12の円錐形孔16に球状突起16を嵌合した後、抜け留め具25を本体2の先端側から嵌め込み、C形止め輪26にて抜け止め具を取付け、その後キャップチップ3を本体2の先端に嵌め込み取付けて電極27を製作する。
【0018】
さらに、溶接時の電極27の動作を説明すると、図1に示す、揺動電極1の電極面10が水平、即ち揺動電極1が垂直の状態より、支持部材と揺動電極からなる電極27が下降し、揺動電極1の一部がワーク28に当接し、揺動電極1の本体2の球状突起が円錐形孔に接触し、揺動電極1が揺動し、係止突起6の一部が支持部材12の係止用段部に係止し、図2に示すように、揺動電極1の平面状電極面がワーク28に当接し、支持部材12、揺動電極1、ワーク28、29、下部電極30に電流が流れ、ワーク28、29を溶接する。
【0019】
その後、溶接終了後、電極27が上昇すると、付勢装置であるコイルバネ23の付勢力によって本体の球状突起5が支持部材の円錐形孔16から離れるとともに揺動し揺動電極1が垂直、即ち平面状電極面10が水平になり、本体2の係止突起6の下面が抜け止め具25に当接して停止し、図1の状態に戻る。
【0020】
次に図3図4に基づいて第2の実施形態について第1の実施形態と異なる点について説明すると、揺動電極40の本体41に、軸方向の中心に段差のない冷却通路42を形成するとともに、支持部材43の円錐形孔44の基端から支持部材43の基端に、前記冷却通路42より太径の冷却通路45を形成し、本体41の球状突起46の基端面47が支持部材43の冷却通路44と揺動電極40の冷却通路42により形成される冷却通路48に垂直に露出しており、図3に示す、揺動電極40が揺動した状態で、冷却通路48に冷却水が流れると、冷却水は揺動電極40の基端面46に衝突し、揺動電極40を先端に向けて付勢し、図3に示すように、揺動電極40が垂直になる。
【0021】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、例えば、揺動電極1の基端に形成した球状突起5は支持部材12の先端に形成し、支持部材12の先端に形成した円錐形孔16を揺動電極1の基端に形成してもよく、また、円錐形孔16は球状突起5に対応する球形孔でもよい。
【0022】
第1の実施形態では付勢装置としてコイルバネ23を用いているのに対して、第2の実施形態では冷却水を付勢装置として使用している点が異なるのみであるので、組立方法、溶接時の電極の動作については省略する。
【0023】
以上のように揺動電極1を先端方向に付勢する付勢装置を設けたので、上部電極が上昇すると、揺動電極1は常に平面電極面10が水平になるので、溶接不良を防止できる。
【0024】
また、前記付勢装置が、揺動電極1の冷却通路の基端に形成した大径部8と支持部材43の冷却通路先端に形成した大径部18に介装したコイルバネ23であるので簡単な構成で安価に製作できる。
【0025】
さらに、前記付勢装置として揺動電極40の冷却通路を支持部材43の冷却通路より細径として揺動電極40の基端面を冷却通路に垂直に露出し、冷却通路48に供給される冷却水を揺動電極40の基端面47に衝突するようにしたので、部品点数を増加させることなく簡単な構成で安価に製作できる。
【符号の説明】
【0026】
1 揺動電極
2 本体
3 キャップチップ
5 球状突起
8 大径部
9 冷却通路
10 平面電極面
11 嵌合凹部
12 支持部材
16 円錐形孔
18 大径部
19 冷却通路
20 係止用段部
21 嵌入穴
22 冷却通路
23 コイルバネ
40 揺動電極
41 本体
42 冷却通路
43 支持部材
44 円錐形孔
45 冷却通路
46 球状突起
47 基端面
48 冷却通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6