(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034557
(43)【公開日】2022-03-03
(54)【発明の名称】反射防止用偏光板及びこれを含む画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20220224BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220224BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20220224BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20220224BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20220224BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20220224BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220224BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20220224BHJP
【FI】
G02B5/30
H05B33/14 A
H01L27/32
H05B33/02
G09F9/30 365
G09F9/30 349E
B32B7/023
B32B27/00 M
B32B27/00 L
B32B7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133436
(22)【出願日】2021-08-18
(31)【優先権主張番号】10-2020-0103555
(32)【優先日】2020-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】514217912
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE-CHEM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】132,Yakchon-ro,Iksan-si Jeollabuk-do 570-977,Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ドンドク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョン ウク
(72)【発明者】
【氏名】パク,スファン
【テーマコード(参考)】
2H149
3K107
4F100
5C094
【Fターム(参考)】
2H149AA18
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(57)【要約】 (修正有)
【課題】高透過率を示しつつも耐熱及び耐湿熱条件下における放置後でもブラック色感を保持することができ、且つ薄型化が可能な反射防止用偏光板を提供する。
【解決手段】本発明は、偏光子110、及び前記偏光子110の少なくとも一方の面に形成された保護層を含む反射防止用偏光板であって、前記偏光板は、単体透過率が44.6%以上であり、偏光度が98%以上であり、470nm波長における吸光度が1.5以上であり、700nm波長における吸光度が1.6以上である、反射防止用偏光板及びこれを含む画像表示装置を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子、及び前記偏光子の少なくとも一方の面に形成された保護層を含む反射防止用偏光板であって、
前記偏光板は、単体透過率が44.6%以上であり、偏光度が98%以上であり、470nm波長における吸光度が1.5以上であり、700nm波長における吸光度が1.6以上である、反射防止用偏光板。
【請求項2】
前記偏光子の厚さは、8μm以下である、請求項1に記載の反射防止用偏光板。
【請求項3】
前記偏光子は、水洗段階で水洗槽の温度を10~20℃に調節して製造されたものである、請求項1に記載の反射防止用偏光板。
【請求項4】
前記少なくとも一方の面に保護層を備えた偏光子の視認側とは反対側の面に位相差層が更に積層されている、請求項1に記載の反射防止用偏光板。
【請求項5】
前記位相差層は、λ/4位相差層を含む、請求項4に記載の反射防止用偏光板。
【請求項6】
前記位相差層は、λ/4位相差層であるか、視認側からλ/2位相差層とλ/4位相差層とが順次積層された位相差層であるか、又は視認側からλ/4位相差層と正のCプレート層とが順次積層された位相差層である、請求項5に記載の反射防止用偏光板。
【請求項7】
前記位相差層の視認側とは反対側の面に粘着剤層が更に積層されている、請求項4に記載の反射防止用偏光板。
【請求項8】
前記少なくとも一方の面に保護層を備えた偏光子の視認側の面に剥離可能な保護フィルムが更に積層されている、請求項1に記載の反射防止用偏光板。
【請求項9】
前記粘着剤層の視認側とは反対側の面に剥離フィルムが更に積層されている、請求項7に記載の反射防止用偏光板。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の反射防止用偏光板;及び
前記反射防止用偏光板の視認側とは反対側の面に積層されたOLEDパネルを含む、画像表示装置。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか一項に記載の反射防止用偏光板;
前記反射防止用偏光板の視認側とは反対側の面に積層されたOLEDパネル;及び
前記反射防止用偏光板の視認側の面に透明接着剤層を介して貼り付けられているカバーウィンドウを含む、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止用偏光板及びこれを含む画像表示装置に係り、より詳しくは、高透過率を示しつつも耐熱及び耐湿熱条件下における放置後でもブラック色感を保持することができ、且つ薄型化が可能な反射防止用偏光板及びこれを含む画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード(OLED)パネルは電極の露出によって太陽光、照明などのような外光を反射させ得る。これによって有機発光ダイオード(OLED)パネルは反射された外光によって視認性やコントラスト比が低下して表示品質が劣化することがある。
【0003】
そこで、大韓民国特許公開第2009-0122138号に開示されているように、電源オフの状態で表面の外光反射を遮断しブラック視感をもつために、線偏光子とλ/4位相差層とを組み合わせた円偏光板を反射防止用偏光板としてOLEDパネルの視認側に貼り付けて使用する方案が提示されたことがある。
【0004】
しかし、このように反射防止用偏光板を適用する場合、OLEDパネルの輝度低下の問題が生じる。そこで、反射防止用偏光板固有の性能保全のために偏光度の低下がなく且つ輝度の低下を最小化するために反射防止用偏光板の透過率を高める必要がある。
【0005】
しかし、反射防止用偏光板の透過率が高くなると、耐熱及び耐湿熱条件下で放置させたときに反射色相がブラック色感を保持し難いという不具合があった。
また、ディスプレイ装置の薄型化に伴い偏光板の薄型化も要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一目的は、高透過率を示しつつも耐熱及び耐湿熱条件下における放置後でもブラック色感を保持することができ、且つ薄型化が可能な反射防止用偏光板を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、前記反射防止用偏光板を含む画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一方で、本発明は、偏光子、及び前記偏光子の少なくとも一方の面に形成された保護層を含む反射防止用偏光板であって、
前記偏光板は、単体透過率が44.6%以上であり、偏光度が98%以上であり、470nm波長における吸光度が1.5以上であり、700nm波長における吸光度が1.6以上である、反射防止用偏光板を提供する。
【0009】
本発明の一実施形態において、前記偏光子の厚さは、8μm以下であってよい。
【0010】
本発明の一実施形態において、前記偏光子は、水洗段階で水洗槽の温度を10~20℃に調節して製造されたものであってよい。
【0011】
本発明の一実施形態において、前記少なくとも一方の面に保護層を備えた偏光子の視認側とは反対側の面に位相差層が更に積層されていてよい。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記位相差層は、λ/4位相差層を含んでよい。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記位相差層は、λ/4位相差層であるか、視認側からλ/2位相差層とλ/4位相差層とが順次積層された位相差層であるか、又は視認側からλ/4位相差層と正のCプレート層とが順次積層された位相差層であってよい。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記位相差層の視認側とは反対側の面に粘着剤層が更に積層されていてよい。
【0015】
本発明の一実施形態において、前記少なくとも一方の面に保護層を備えた偏光子の視認側の面に剥離可能な保護フィルムが更に積層されていてよい。
【0016】
本発明の一実施形態において、前記粘着剤層の視認側とは反対側の面に剥離フィルムが更に積層されていてよい。
【0017】
他の一方で、本発明は、前記反射防止用偏光板;及び
前記反射防止用偏光板の視認側とは反対側の面に積層されたOLEDパネルを含む、画像表示装置を提供する。
【0018】
また他の一方で、本発明は、前記反射防止用偏光板;
前記反射防止用偏光板の視認側とは反対側の面に積層されたOLEDパネル;及び
前記反射防止用偏光板の視認側の面に透明接着剤層を介して貼り付けられているカバーウィンドウを含む、画像表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る反射防止用偏光板は、高透過率を示しつつも耐熱及び耐湿熱条件下における放置後でもブラック色感を保持することができる。また、本発明に係る反射防止用偏光板は薄型化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る反射防止用偏光板の概略的な断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る反射防止用偏光板の概略的な断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る反射防止用偏光板の概略的な断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る画像表示装置の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0022】
本発明は、偏光子、及び前記偏光子の少なくとも一方の面に形成された保護層を含む反射防止用偏光板であって、
前記偏光板は、単体透過率が44.6%以上であり、偏光度が98%以上であり、470nm波長における吸光度が1.5以上であり、700nm波長における吸光度が1.6以上である、反射防止用偏光板に関する。
【0023】
前記偏光板の単体透過率及び偏光度は、紫外可視分光光度計を用いて測定する。この場合、単体透過率及び偏光度は、下記の数学式1及び2で定義される。
〔数学式1〕
単体透過率(Ty)=(T1+T2)/2
前記式中、T1は、一対の偏光板を吸収軸が平行な状態で配置したときに得られる平行透過率であり、T2は、一対の偏光板を吸収軸が直交する状態で配置したときに得られる直交透過率である。
〔数学式2〕
偏光度(P)=[(T1-T2)/(T1+T2)]1/2×100
前記式中、T1は、一対の偏光板を吸収軸が平行な状態で配置したときに得られる平行透過率であり、T2は、一対の偏光板を吸収軸が直交する状態で配置したときに得られる直交透過率である。
【0024】
前記偏光板の単体透過率は、上述したように44.6%以上、好ましくは、44.6%~45.4%、より好ましくは、44.6%~45.2%である。前記偏光板の単体透過率が44.6%未満であると、ディスプレイの輝度が低下することがあり、また45.4%を超えると、初期偏光度が低くてパネル状態の反射率が高くなったり偏光板のしみ視認性が増加することがある。
【0025】
前記偏光板の偏光度は、上述したように98%以上、好ましくは、98.2%以上、より好ましくは、98.4%以上、例えば、98.4%~99.9%である。前記偏光板の偏光度が98%未満であると、反射防止性能が低下することがある。
【0026】
前記470nm波長における吸光度(A470)及び700nm波長における吸光度(A700)は、それぞれ下記の数学式3及び4で定義される。
〔数学式3〕
A470=-log10{(TMD,470×TTD,470)/10000}
〔数学式4〕
A700=-log10{(TMD,700×TTD,700)/10000}
前記式中、TMD,470は、一対の偏光板を吸収軸が平行な状態で配置したときに得られる470nm波長における平行透過率であり、TTD,470は、一対の偏光板を吸収軸が直交する状態で配置したときに得られる470nm波長における直交透過率であり、
TMD,700は、一対の偏光板を吸収軸が平行な状態で配置したときに得られる700nm波長における平行透過率であり、TTD,700は、一対の偏光板を吸収軸が直交する状態で配置したときに得られる700nm波長における直交透過率である。
【0027】
前記偏光板の470nm波長における吸光度は、上述したように1.5以上、好ましくは、1.6以上、例えば、1.6~2.5である。前記偏光板の470nm波長における吸光度が1.5未満であると、偏光板の反射色相が耐湿熱条件下において青みに変わることがある。
【0028】
前記偏光板の700nm波長における吸光度は、上述したように1.6以上、例えば、1.6~2.0である。前記偏光板の700nm波長における吸光度が1.6未満であると、偏光板の反射色相が耐熱条件下において赤みに変わることがある。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態に係る反射防止用偏光板の構造断面図である。
【0030】
図1を参照すると、本発明の一実施形態に係る反射防止用偏光板100は、偏光子110と、前記偏光子の一方の面に形成された第1保護層120、及び前記偏光子の他方の面に形成された第2保護層130とを含む。
図1では、偏光子の両面に保護層が積層された構造を示しているが、前記保護層は偏光子の一方の面にのみ積層されてもよい。
【0031】
前記偏光子110は、親水性高分子フィルムをヨウ素又は二色性染料で染色し配向させて製造され、親水性高分子フィルムとしては、ポリビニルアルコール系フィルム、部分的にケン化されたポリビニルアルコール系フィルムなどが用いられる。
【0032】
ポリビニルアルコール系フィルムは、重合度が通常500~10,000であり、好ましくは、1,000~6,000であり、より好ましくは、1,400~4,000であるものが用いられてよい。ケン化されたポリビニルアルコール系フィルムの場合、ケン化度は、溶解性の面から、好ましくは、95.0モル%以上、より好ましくは、99.0モル%以上、さらに好ましくは、99.9モル%以上のものが用いられてよい。
【0033】
親水性高分子フィルムとしては、ポリビニルアルコール系フィルムの他にも、ヨウ素又は二色性染料にて染色され得るフィルムであればその種類が特に制限されるものではない。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム、セルロースフィルム、及びこれらの部分的にケン化されたフィルムなどのような親水性高分子フィルムと、脱水処理されたポリビニルアルコール系フィルム、及び脱塩酸処理されたポリ塩化ビニルなどのようなポリエン配向フィルムが用いられてよい。
【0034】
前記偏光子110の厚さは、8μm以下、例えば、3~8μmの範囲であり、好ましくは、5~8μmの範囲である。前記偏光子110の厚さが8μmを超えると、偏光板の薄膜化が難しく且つ高透過領域において偏光度が低下することがある。前記偏光子110の厚さが前記範囲であると、偏光板の薄膜化及び乾燥/調湿環境下での偏光子の収縮/膨張による収縮力を減少させてカール(curl)発生の最小化が可能であり、且つ高透過領域において一定レベル以上の偏光度を有する偏光板の確保が可能である。
【0035】
本発明の一実施形態において、前記偏光子は、空中延伸段階、膨潤段階、染色段階、及び架橋段階を経た後、水洗し乾燥させて製造される。
【0036】
前記空中延伸段階は、湿式工程に入る前に未延伸のポリビニルアルコール系フィルムを乾式延伸する工程である。
【0037】
前記空中延伸段階を行なう方法としては、フィルムに張力を与えて加圧ロールにて圧延する方法、フィルムに張力を与えて加熱ロールに接触させる方法、加熱オーブンの内部又は外部に設置されたロールの間で引張力を加えながら延伸する方法、二つの加熱ロールの間を通過させて圧縮延伸させる方法などが挙げられる。
【0038】
前記空中延伸温度は、120~140℃であってよい。前記空中延伸温度が前記範囲を満たすと、原反フィルムの幅方向の延伸程度を均一にすることができ、且つ表面に生じ得るしみを最小化することができる。前記空中延伸温度は、延伸時のロールや、オーブンの温度を調節することで調節することができる。
【0039】
前記空中延伸段階における延伸比、すなわち、空中延伸比は2.0~5.5倍、好ましくは、3.0~4.5倍であってよい。空中延伸比が前記範囲を満たすと、幅方向別に均一な延伸度を得ることができる共に、収縮応力を最小化することができ、且つ一定の透過率で偏光度を上昇させることができる。
【0040】
膨潤段階は、ポリビニルアルコール系フィルムを染色する前に膨潤用水溶液で満たされた膨潤槽に浸漬して、ポリビニルアルコール系フィルムの表面上に堆積されたほこりやブロッキング防止剤のような不純物を除去すると共に、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させて延伸効率を向上させ且つ染色ムラも防止して偏光子の物性を向上させるための段階である。
【0041】
膨潤用水溶液としては、通常、水(純水、脱イオン水)を単独で用いてよく、これに少量のグリセリン又はヨウ化カリウムを添加する場合、ポリビニルアルコール系フィルムの膨潤と共に加工性も向上させることができる。膨潤用水溶液100重量%に対してグリセリンの含量は5重量%以下であり、ヨウ化カリウムの含量は、10重量%以下であることが好ましい。
【0042】
膨潤槽の温度は、0~45℃であることが好ましく、10~40℃であることがよい好ましい。膨潤段階の実施時間(膨潤槽への浸漬時間)は、180秒以下であることが好ましく、90秒以下であることがよい好ましい。浸漬時間が前記範囲の場合は、膨潤し過ぎて飽和状態になることを抑えることができ、ポリビニルアルコール系フィルムの軟化による破断を防止し且つ染色段階でヨウ素の吸着が均一になって偏光度を向上させることができる。
【0043】
膨潤段階と共に延伸段階が行われてよく、このとき、延伸段階は水中延伸段階に該当する。
【0044】
膨潤段階は省略されてよく、染色段階で膨潤が同時に行われてもよい。
【0045】
染色段階は、ポリビニルアルコール系フィルムを二色性色素、例えば、ヨウ素を含む染色用水溶液で満たされた染色槽に浸漬させてポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させる段階である。
【0046】
染色用水溶液は、水、水溶性有機溶媒、又はこれらの混合溶媒とヨウ素を含むものであってよい。ヨウ素の含量は、0.4~400mmol/Lであることが好ましく、0.8~275mmol/Lであることがより好ましく、1~200mmol/Lであることが更に好ましい。
【0047】
染色効率をより向上させるために、溶解補助剤としてヨウ化物が更に含まれてよい。ヨウ化物としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化スズ、ヨウ化チタンなどを単独又は2種以上組み合わせて用いてよく、これらのうちヨウ化カリウムが水に対する溶解度が大きいという点から好ましい。ヨウ化物の含量は、染色用水溶液100重量%に対して0.01~10重量%であることが好ましく、0.1~5重量%であることがより好ましい。
【0048】
染色槽の温度は、5~42℃であることが好ましく、10~38℃であることがより好ましい。染色槽内でのポリビニルアルコール系フィルムの浸漬時間は特に制限されず、好ましくは、0.5~20分、より好ましくは、2~10分である。
【0049】
染色段階と共に延伸段階が行われてよく、このとき、延伸段階は水中延伸段階に該当する。
【0050】
架橋段階は、物理的に吸着されているヨウ素分子又は二色性染料による染色性が外部環境によって低下しないように染色されたポリビニルアルコール系フィルムを架橋用水溶液に浸漬させて吸着されたヨウ素分子又は染料を固定させる段階である。二色性染料は耐湿環境で溶出する場合が多くはないが、ヨウ素は架橋反応が不安定な場合に環境によってヨウ素分子が溶解又は昇華する場合が多く、十分な架橋反応が要求される。また、すべてのポリビニルアルコール分子と分子との間に位置したヨウ素分子を配向させて光学特性を向上させるためには一般的に架橋段階で最大の延伸比で延伸される必要があることから架橋段階が重要である。
【0051】
架橋用水溶液は、溶媒である水と、ホウ酸、ホウ酸ナトリウムなどのホウ素化合物及びヨウ化物を含み、水と共に相互溶解可能な有機溶媒を更に含んでよい。
【0052】
ホウ素化合物は、短い架橋結合と硬直性を与えて工程中のしわ発生を抑えることで取り扱い性を向上させ且つヨウ素配向を形成する役割をする。
【0053】
ホウ素化合物の含量は、架橋用水溶液100重量%に対して1~10重量%であることが好ましく、2~6重量%であることがより好ましい。含量が1重量%未満であると、ホウ素化合物の架橋効果が低減して硬直性を与え難く、また10重量%を超えると、無機系架橋剤の架橋反応が活性化し過ぎて有機系架橋剤の架橋反応が効果的に進められ難い。
【0054】
ヨウ化物は、偏光子の面内での偏光度の均一性と染着されたヨウ素の脱着を防止するために用いられる。前記ヨウ化物は、染色段階で用いられたものと同じものを用いてよく、その含量は、架橋用水溶液100重量%に対して0.05~15重量%であってよく、0.5~11重量%であることが好ましい。前記含量が0.05重量%未満であると、フィルム中のヨウ素イオンが抜け出して透過率が増加し偏光子の色相値が変わるため、これを調節するための追加の工程が必要となり、また15重量%を超えると、水溶液中のヨウ素イオンがフィルムに浸透して透過率が低減するという問題がある。
【0055】
架橋槽の温度は、20~70℃であり、架橋槽でのポリビニルアルコール系フィルムの浸漬時間は、1秒~15分であってよく、5秒~10分であることが好ましい。
【0056】
架橋段階と共に延伸段階が行われてよく、このとき、延伸段階は水中延伸段階に該当する。
【0057】
前記したように、延伸段階は、膨潤段階、染色段階及び/又は架橋段階と共に行われてよく、架橋段階の後に延伸用水溶液で満たされた別途の延伸槽を用いた独立した延伸段階として行われてもよい。このとき、延伸段階は、水中延伸段階に該当する。
【0058】
前記偏光子は、延伸段階で水中延伸率/空中延伸率を0.15~0.3に調節して製造されたものであってよい。前記水中延伸率/空中延伸率が0.15未満であると、空中延伸時に切断の発生が増加することがあり、また0.3を超えると、光特性散布及び吸収軸散布が増加することがある。
【0059】
前記延伸率は、下記の数学式5で定義される。
〔数学式5〕
延伸率(%)=[(A2-A1)/A1]×100
前記式中、A1は、延伸前の偏光子の長さであり、A2は、延伸後の偏光子の長さである。
【0060】
前記水中延伸率は、すべての水中延伸の累積延伸率を意味する。
【0061】
水洗段階は、架橋と延伸が完了したポリビニルアルコール系フィルムを水洗用水溶液で満たされた水洗槽に浸漬させ、以前の段階でポリビニルアルコール系フィルムに付着されていたホウ酸のような不必要な残留物を除去する段階である。
【0062】
水洗用水溶液は、水であってよく、これにヨウ化物が更に添加されてもよい。
【0063】
前記偏光子は、470nm波長における吸光度を1.5以上に制御し、700nm波長における吸光度を1.6以上に制御するように、水洗段階における水洗槽の温度を10~20℃に調節して製造されてよい。
【0064】
前記水洗槽の温度が10℃未満であると、700nm波長における吸光度が1.6未満になることがあり、また20℃を超えると、470nm波長における吸光度が1.5未満になることがある。
【0065】
水洗段階の実施時間は、通常1~60秒であり、好ましくは、3~30秒であり、より好ましくは、5~20秒である。
【0066】
水洗段階は、染色段階、架橋段階又は延伸段階のような以前の段階が完了する度に行われてもよい。また、1回以上繰り返し行われてもよく、その繰り返し回数は特に制限されない。
【0067】
乾燥段階は、水洗されたポリビニルアルコール系フィルムを乾燥させ、乾燥によるネックインで染着されたヨウ素分子の配向をより向上させて光学特性に優れる偏光子を得る段階である。
【0068】
乾燥方法としては、自然乾燥、エア乾燥、加熱乾燥、遠赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、熱風乾燥などの方法を用いてよく、最近は、フィルム中にある水だけを活性化させて乾燥させるマイクロ波乾燥が新たに用いられており、通常、熱風乾燥が主に用いられている。
【0069】
前記偏光子は、40℃以上80℃未満の範囲で1次乾燥させ、80℃以上105℃以下の範囲で2次乾燥させて製造されてよい。すなわち、前記偏光子の乾燥温度は、低温から高温への温度勾配を有してよい。
【0070】
前記偏光子の1次乾燥温度が40℃未満であると、偏光子の切断が発生したり、水しみの発生などの品質低下が発生したりすることがあり、また80℃以上であると、湿熱劣化現象によって偏光子が青みに変わったり、偏光度が低下したり、しみが発生したりすることがある。
【0071】
前記偏光子の2次乾燥温度が80℃未満であると、保護層との貼り合わせの後にカールが悪化したり、偏光子が青みに変わったりすることがあり、また105℃を超えると、保護層との貼り合わせの後にカールが悪化したり、偏光子が黄色みに変わったりすることがある。
【0072】
前記偏光子の1次乾燥時間は、5秒~30秒であってよい。前記偏光子の1次乾燥時間が5秒未満であると、偏光子の切断が発生したり、水しみの発生などの品質低下が発生したりすることがあり、また30秒を超えると、保護層との貼り合わせの後にカールが悪化したり、偏光子の色相異常が発生したりすることがある。
【0073】
前記偏光子の2次乾燥時間は、30秒~180秒であってよい。前記偏光子の2次乾燥時間が30秒未満であると、保護層との貼り合わせの後にカールが悪化したり、偏光子の色相異常が発生したりすることがあり、また180秒を超えると、保護層との貼り合わせの後にカールが悪化したり、偏光子の色相異常が発生したりすることがある。
【0074】
前記偏光子は、前記2次乾燥の後にカール制御のために3次乾燥を更に経てよい。前記3次乾燥は、40℃以上105℃以下の範囲で行われてよい。前記3次乾燥温度が40℃未満であると、保護層との貼り合わせの後にカール制御が難しくなることがあり、また105℃を超えると、偏光子の色相異常が発生することがある。
【0075】
前記偏光子の3次乾燥時間は、5秒~30秒であってよい。前記偏光子の3次乾燥時間が5秒未満であると、乾燥時間が短すぎて3次乾燥で偏光子の水分率を制御し難いことがあり、また30秒を超えると、水分率が過度に低くなって却って保護層の貼り合わせの後にカールが悪化することがある。
【0076】
前記第1保護層120及び第2保護層130は、偏光子の両面に貼り付けられて偏光子110を保護する役割をする。
【0077】
前記第1保護層120及び第2保護層130としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるフィルムであれば特に制限されることなく用いられてよい。具体的に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体などのスチレン系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系又はノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレンプロピレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂;塩化ビニル系樹脂;ナイロン、芳香族ポリアミドなどのポリアミド系樹脂;イミド系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;スルホン系樹脂;ポリエーテルケトン系樹脂;硫化ポリフェニレン系樹脂;ビニルアルコール系樹脂;塩化ビニリデン系樹脂;ピニルブチラル系樹脂;アリレート系樹脂;ポリオキシメチレン系樹脂;エポキシ系樹脂などのような熱可塑性樹脂からなるフィルムが挙げられ、前記熱可塑性樹脂のブレンド物からなるフィルムも用いられてよい。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、シリコン系などの熱硬化性樹脂又は紫外線硬化型樹脂からなるフィルムを用いてもよい。これらのうち特にアルカリなどによってせっけん化(ケン化)された表面を有するセルロース系フィルム又はアクリル系フィルムが偏光特性又は耐久性を考慮したうえで好ましい。
【0078】
前記第1保護層120及び第2保護層130のそれぞれの厚さは、10~60μm、好ましくは、13~25μmであってよい。また、前記第1保護層120及び第2保護層130の厚さは、互いに同一であっても異なってもよい。前記第1保護層120及び第2保護層130の厚さが10μm未満であると、外部衝撃によって偏光板の品質が低下することがあり、また60μmを超えると、薄膜化の具現が困難となり、且つ保護層自体の収縮/膨張によって偏光板のカールが悪化することがある。
【0079】
前記第1保護層120及び第2保護層130の偏光子と貼り合わされる面には、易貼り合わせ処理を行ってよい。易貼り合わせ処理としては、プライマー処理、プラズマ処理、コロナ処理などのドライ処理、アルカリ処理(せっけん化処理)などの化学処理、容易な接着剤層を形成するコーティング処理などが挙げられる。
【0080】
前記第1保護層120及び第2保護層130は、接着剤を用いて貼り合わされてよい。
【0081】
前記接着剤としては、任意の適切な接着剤が用いられてよく、透明性、熱安定性、低複屈折性などに優れた材料が好ましい。具体的な例は、水性接着剤、熱可塑性接着剤、ホットメルト(hot-melt)接着剤、ゴム系接着剤、熱硬化性接着剤、モノマー反応型接着剤、無機接着剤、及び天然接着剤を含む。好適な例は、優れた光学的透明性、耐候性、及び耐熱性の観点から、脂肪族イソシアネートを主成分として含有するモノマー反応型接着剤「Takenate 631」(商品名、三井武田ケミカル社製);及びアセトアセチル基を有する変性声ポリビニルアルコールを主成分として含有する水性接着剤「GOHSEFIMER Zシリーズ」(商品名、日本合成化学工業株式会社製)を含む。
【0082】
接着剤層の厚さは、接着剤の役割をする樹脂の種類、接着強度、接着剤が用いられる環境などに応じて適宜決められてもよい。接着剤層は、好ましくは、0.01μm~50μm、より好ましくは、0.05μm~20μm、更に好ましくは、0.1μm~10μmの厚さを有する。
【0083】
貼合方法は、当該分野における通常の方法を用いてよく、例えば、流延法、メイヤーバーコーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、ディップコーティング法、スプレーコーティング法などを用いて偏光子又は保護層の貼合面に接着剤組成物を塗布した後、これらを貼り合わせる方法などが挙げられる。流延法は、偏光子又は保護層を略垂直方向、水平方向又はこの両方向の間の斜め方向に移動させながら貼合面に接着剤組成物を流下して塗布する方法である。接着剤組成物を塗布した後、偏光子及び保護層をニップロールなどで挟んで貼り合わせる。
【0084】
貼合後は乾燥処理が行われてよい。前記貼合後の乾燥処理は、例えば、熱風を加えることで行われてよい。
【0085】
貼合後に収得される前記第1保護層120及び第2保護層130を備えた偏光子、すなわち、偏光板は、40℃以上80℃未満の範囲で1次乾燥させ、80℃以上105℃以下の範囲で2次乾燥させて製造されてよい。すなわち、前記第1保護層120及び第2保護層130を備えた偏光子の乾燥温度は、低温から高温への温度勾配を有してよい。
【0086】
前記第1保護層120及び第2保護層130を備えた偏光子の1次乾燥温度が40℃未満であると、保護層と偏光子との間の接着剤が十分な密着力を発揮することができず気泡が発生することがあり、また80℃以上であると、保護層と偏光子との間の接着剤が湿熱劣化を生じさせて偏光度が低下したり、偏光板の色相が青みに変わったりすることがある。
【0087】
前記第1保護層120及び第2保護層130を備えた偏光子の2次乾燥温度が80℃未満であると、カールが悪化したり、偏光板の色相が青みに変わったりすることがあり、また105℃を超えると、カールが悪化したり、偏光板の色相が赤みに変わったりすることがある。
【0088】
前記第1保護層120及び第2保護層130を備えた偏光子の1次乾燥時間は、5秒~30秒であってよい。前記第1保護層120及び第2保護層130を備えた偏光子の1次乾燥時間が5秒未満であると、保護層と偏光子との間の密着力不足によってガイドロールへの通過の際に気泡や浮き上がりが発生することがあり、また30秒を超えると、接着剤が十分に硬化していない状態で低温にとどまる時間が長くなるため、偏光性能が低下したり、しみが発生したりする不具合が生じることがある。
【0089】
前記第1保護層120及び第2保護層130を備えた偏光子の2次乾燥時間は、30秒~180秒であってよい。前記第1保護層120及び第2保護層130を備えた偏光子の2次乾燥時間が30秒未満であると、保護層と偏光子との間の密着力が低下することがあり、また180秒を超えると、偏光板の水分率が不足してカールが悪化することがある。
【0090】
前記第1保護層120及び第2保護層130を備えた偏光子は、前記2次乾燥の後にカール制御のために3次乾燥を更に経てよい。前記3次乾燥は、40℃以上105℃以下の範囲で行われてよい。前記3次乾燥温度が40℃未満であると、偏光板の水分率調整が難しくてカールを調整し難いことがあり、また105℃を超えると、偏光板の水分率が過度に低くなってカールが悪化したり、高い乾燥温度によって偏光板の色相が赤みに変わったりすることがある。
【0091】
前記第1保護層120及び第2保護層130を備えた偏光子の3次乾燥時間は、5秒~30秒であってよい。前記第1保護層120及び第2保護層130を備えた偏光子の3次乾燥時間が5秒未満であると、水分率を制御し難くてカール調整が困難になることがあり、また30秒を超えると、カールが悪化することがある。
【0092】
乾燥後は、常温又はそれより若干高い温度、例えば、20~50℃の温度で12~600時間程度養生させることが好ましい。
【0093】
本発明の一実施形態に係る反射防止用偏光板は、
図2に示すように前記第1保護層120及び第2保護層130を備えた偏光子110の視認側とは反対側の面に位相差層140が更に積層されていてよい。
【0094】
前記位相差層140は、例えば、延伸され又は延伸されていない高分子フィルムであってもよく、反応性液晶化合物を硬化させた液晶層であってもよい。
【0095】
例えば、前記位相差層140が液晶層から製造される場合は、光学異方性を有し、且つ光又は熱による架橋性をもつ液晶化合物である反応性液晶化合物(RM)を用いてよい。
【0096】
前記位相差層140は、λ/4位相差層を含む。
【0097】
λ/4位相差層は、入射された線偏光を楕円偏光又は円偏光に変換させ、逆に入射された楕円偏光又は円偏光を線偏光に変換させることができる。これにより、λ/4位相差層をOLEDパネルに適用して外光の反射を防止することができるため、電源オフの状態でブラック視感を具現することができる。
【0098】
前記位相差層140は、単一層構造であるか又は2つ以上の層が積層された多層構造を有してよい。前記位相差層140が単一層構造である場合、前記位相差層140は、λ/4位相差層からなるものであってよい。前記位相差層140が多層構造を有する場合、前記位相差層140はλ/4位相差層を必須として含み、λ/2位相差層と正のCプレート層のうちの一方以上を更に含んでよい。前記λ/2位相差層と正のCプレート層は、反射色相のブラック視感を改善するために用いられてよい。
【0099】
例えば、本発明の一実施形態に係る反射防止用偏光板は、視認側から第2保護層、偏光子、第1保護層、及びλ/4位相差層が順次積層された構造を有するか、視認側から第2保護層、偏光子、第1保護層、λ/2位相差層、及びλ/4位相差層が順次積層された構造を有するか、又は視認側から第2保護層、偏光子、第1保護層、λ/4位相差層、及び正のCプレート層が順次積層された構造を有してよい。
【0100】
このとき、位相差層を構成する各層は、粘接着剤を介して貼り合わされているか、又は直接コーティングによって互いに積層されていてよい。
【0101】
また、前記第1保護層120及び第2保護層130を備えた偏光子110と位相差層130とは、粘接着剤を用いて貼り合わせてよい。
【0102】
前記粘接着剤は、当該技術分野において周知の種々の粘着剤又は接着剤を用いてなるものであってよく、その種類が特に制限されるものではない。
【0103】
例えば、前記粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤などを例に挙げられる。
【0104】
また、前記接着剤としては、光硬化性接着剤を例に挙げられ、その種類が特に制限されるものではない。
【0105】
前記光硬化性接着剤は、紫外線(Ultraviolet、UV)、電子線(Electron Beam、EB)などの活性エネルギー線を受けて架橋及び硬化して強い接着力を示すものであって、反応性オリゴマー、反応性モノマー、光重合開始剤などから構成されるものであってよい。
【0106】
前記反応性オリゴマーは、接着剤の特性を決める重要な成分であって、光重合反応によって高分子結合を形成して硬化被膜を形成する。使用可能な反応性オリゴマーは、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアクリル系樹脂、シリコン系樹脂などが挙げられる。
【0107】
前記反応性モノマーは、前述した反応性オリゴマーの架橋剤、希釈剤としての役割をし、接着特性に影響を及ぼす。使用可能な反応性モノマーは、単官能性モノマー、多官能性モノマー、エポキシ系モノマー、ビニルエーテル類、環状エーテル類などが挙げられる。
【0108】
前記光重合開始剤は、光エネルギーを吸収してラジカル或いは陽イオンを生成させて光重合を開始する役割をするものであって、光重合樹脂に応じて適合したものを選択して用いてよい。
【0109】
図3に示すように、前記位相差層140の視認側とは反対側の面には、粘着剤層150が更に積層されていてよい。前記粘着剤層150は、反射防止用偏光板100をOLEDパネル10に貼り付ける役割をする。又は、前記粘着剤層150をタッチパネル(図示せず)に貼り付けてもよい。
【0110】
前記粘着剤層150は、当該技術分野において周知の種々の粘着剤を用いてなるものであってよく、その種類が特に制限されるものではない。
【0111】
例えば、前記粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤などを例に挙げられる。
【0112】
前記粘着剤層150の厚さは、5~30μmであることが好ましいが、加工性や耐久性の特性を損なわない範囲で薄く塗るのが好ましく、より好ましくは、10~25μmである。前記粘着剤層150の厚さが5μm未満であると、パネルにできた窪みや傷などを埋めることができず、欠陥が視認されることがあり、また30μmを超えると、偏光板の薄型化の具現が困難になることがある。
【0113】
本発明の一実施形態に係る反射防止用偏光板は、前記第1保護層120及び第2保護層130を備えた偏光子110の視認側の面に剥離可能な保護フィルム(図示せず)が積層されてよい。
【0114】
前記剥離可能な保護フィルムは、基材、及び前記基材の一方の面に形成された粘着剤層を含む。前記粘着剤層は、保護層を備えた偏光子に貼り付けられ、カバーウィンドウに偏光板を貼り付ける際に前記粘着剤層が保護層を備えた偏光子から剥離されて保護フィルムを容易に除去することができる。前記粘着剤層の材料としては、前記で例示した粘着剤を用いてよい。
【0115】
前記保護フィルムの基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム;又はポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィンフィルムなどが挙げられる。
【0116】
前記保護フィルムの厚さは、10~150μm、好ましくは、25~130μmであってよい。前記保護フィルムの厚さが10μm未満であると、保護フィルムの剥離が容易にならないことがあり、また150μmを超えると、保護層を備えた偏光子との密着性が低下することがある。
【0117】
また、本発明の一実施形態に係る反射防止用偏光板は、前記粘着剤層150の視認側とは反対側の面に剥離フィルム(図示せず)が更に積層されてよい。
【0118】
前記剥離フィルムは、反射防止用偏光板をOLEDパネルに貼り付ける際に除去される。
【0119】
前記剥離フィルムの基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム;又はポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィンフィルムなどが挙げられる。
【0120】
前記剥離フィルムの基材は、粘着剤層150と接する表面が離型処理されてよい。前記離型処理は、シリコン系離型剤、フッ素系離型剤、長鎖アルキルグラフトポリマー系離型剤などの離型剤やプラズマ処理によって表面処理する方法などを用いてよい。
【0121】
前記剥離フィルムの厚さは、10~150μm、好ましくは、25~130μmであってよい。前記剥離フィルムの厚さが10μm未満であると、剥離フィルムの剥離が容易にならないことがあり、また150μmを超えると、前記粘着剤層150との密着性が低下することがある。
【0122】
本発明の一実施形態に係る反射防止用偏光板の全体厚さは、100μm以下、例えば、20~100μm、好ましくは、30~80μmであってよい。このとき、反射防止用偏光板の全体厚さは、剥離可能な保護フィルムと剥離フィルムの厚さを除いた厚さである。
【0123】
本発明の一実施形態は、前記反射防止用偏光板100を含む画像表示装置に関する。
【0124】
図4を参照すると、本発明の一実施形態に係る画像表示装置は、前記反射防止用偏光板100;及び
前記反射防止用偏光板100の視認側とは反対側の面に積層されたOLEDパネル10を含む。
【0125】
また、本発明の一実施形態に係る画像表示装置は、
図4に示すように、前記反射防止用偏光板100の視認側の面に透明接着剤層20を介して貼り付けられているカバーウィンドウ30を含んでよい。
【0126】
前記透明接着剤層20は、例えば、光学透明粘着剤(optically clear adhesive、OCA)、光学透明レジン(optically clear resin、OCR)などのような粘接着剤を含んでよい。
【0127】
前記カバーウィンドウ30は、外部衝撃に対する耐久性と、ユーザが視認し得る透明性をもつ材質であってよい。例えば、前記カバーウィンドウ30は、ガラス又は柔軟性をもつ高分子フィルムであってよい。前記ガラスは、フレキシブル特性が具現されたガラス素材を含んでもよい。例えば、前記柔軟性をもつ高分子フィルムは、ポリイミド(polyimide、PI)、ポリエーテルスルホン(polyethersulphone、PES)、ポリアクリレート(polyacrylate、PAR)、ポリエーテルイミド(polyetherimide、PEI)、ポリエチレンナフタレート(polyethylene napthalate、PEN)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)、ポリフェニレンスルファイド(polyphenylene sulfide、PPS)、ポリアリレート(polyarylate)、ポリカーボネート(polycarbonate、PC)、セルローストリアセテート(cellulose triacetate、TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(cellulose acetate propionate、CAP)などを含んでよい。前記柔軟性をもつ高分子フィルムは、少なくとも一方の面上にハードコーティング層が形成されたものであってもよい。前記ハードコーティング層は、当該技術分野において周知のハードコーティング組成物を用いて形成されてよい。
【0128】
本発明の一実施形態に係る画像表示装置は、有機EL表示装置であってよく、通常のフラットパネルディスプレイ、フレキシブルディスプレイ又は折り畳み式ディスプレイの形態であってよい。
【0129】
以下、実施例及び実験例によって本発明をより具体的に説明することにする。なお、これらの実施例及び実験例は、単に本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらに限定されるものではないことは当業者にとって自明である。
【0130】
製造実施例1~7及び製造比較例1~8:偏光子の製造
平均重合度約2,400、加水分解度99.9モル%以上の厚さ20μmのポリビニルアルコール樹脂フィルム(Kuraray社製)を130℃の熱ロールにて4.0倍空中一軸延伸した後、蒸留水に浸漬させて膨潤させてから、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水を重量比15/5/100で混合した水溶液に30℃で30秒間浸漬、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水を重量比10/5/100で混合した水溶液に53℃で1分間浸漬しながら水中延伸率/空中延伸率が0.2になるように水中一軸延伸した。しかる後、下記の表1に表したようにそれぞれの水洗槽温度の純水で1.5秒間洗浄してから、40℃で10秒間1次乾燥させ、85℃で120秒間2次乾燥させて、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向された厚さ8μmの偏光子を製造した。
【0131】
実施例1~7及び比較例1~8:偏光板の製作
下記方法に従い
図1の実施形態と同じ構造で偏光板を製作した。
【0132】
前記製造実施例及び製造比較例で製造した偏光子110の視認側とは反対側の面に、水系接着剤を用いて第1保護層120として厚さ25μmのTACフィルムを貼り合わせた。次いで、前記偏光子110の視認側の面に、水系接着剤を用いて第2保護層130として厚さ32μmのハードコーティング層を有するTACフィルムを貼り合わせた。このとき、前記水系接着剤としては、熱硬化性水系PVA接着剤を用いた。
【0133】
その後、前記保護層を備えた偏光子を50℃で20秒間1次乾燥させ、80℃で120秒間2次乾燥させて、偏光板を製作した。
【0134】
実験例:
前記実施例及び比較例で製造された偏光板の物性を、下記の方法にて測定し、その結果を下記表1に表した。
【0135】
(1)単体透過率及び偏光度
実施例及び比較例の偏光板を4cm×4cmの大きさに切断した後、紫外可視分光光度計(V-7100、JASCO社製)を用いて透過率を測定した。このとき、単体透過率及び偏光度は、下記の数学式1及び2で定義される。
〔数学式1〕
単体透過率(Ty)=(T1+T2)/2
前記式中、T1は、一対の偏光板を吸収軸が平行な状態で配置したときに得られる平行透過率であり、T2は、一対の偏光板を吸収軸が直交する状態で配置したときに得られる直交透過率である。
〔数学式2〕
偏光度(P)=[(T1-T2)/(T1+T2)]1/2×100
前記式中、T1は、一対の偏光板を吸収軸が平行な状態で配置したときに得られる平行透過率であり、T2は、一対の偏光板を吸収軸が直交する状態で配置したときに得られる直交透過率である。
【0136】
(2)A470及びA700
分光光度計(V-7100、JASCO社製)を用いて偏光板の分光透過率τ(λ)を測定した。測定された分光透過率τ(λ)から分光透過スペクトルを求め、分光透過スペクトルから470nm波長における吸光度(A470)及び700nm波長における吸光度(A700)を求めた。このとき、A470及びA700は、それぞれ下記の数学式3及び4で定義される。
〔数学式3〕
A470=-log10{(TMD,470×TTD,470)/10000}
〔数学式4〕
A700=-log10{(TMD,700×TTD,700)/10000}
前記式中、TMD,470は、一対の偏光板を吸収軸が平行な状態で配置したときに得られる470nm波長における平行透過率であり、TTD,470は、一対の偏光板を吸収軸が直交する状態で配置したときに得られる470nm波長における直交透過率であり、
TMD,700は、一対の偏光板を吸収軸が平行な状態で配置したときに得られる700nm波長における平行透過率であり、TTD,700は、一対の偏光板を吸収軸が直交する状態で配置したときに得られる700nm波長における直交透過率である。
【0137】
(3)耐久性(耐熱、耐湿熱)
実施例及び比較例の偏光板の視認側とは反対側の面に、位相差層及び粘着剤層を順次積層した後、耐熱及び耐湿熱条件下においてそれぞれ放置してから、前記粘着剤層の面に全体反射率が96%以上のアルミニウム材質の反射板を貼り付け、3波長ランプ下において偏光板の反射色相を目視にて確認した。このとき、前記位相差層としては、視認側から厚さ2μmのλ/2位相差層(ディスコチック液晶層)と厚さ1μmのλ/4位相差層(ネマチック液晶層)を紫外線硬化型接着剤(ADEKA社製、OX-154D)を用いて順次貼り合わせてなるもの(Fuji社製)を用い、粘着剤層としては、厚さ15μmのアクリル系粘着剤(Lintec社製)を用いた。
【0138】
耐熱後の反射色相は、85℃の温度で500時間放置してから測定し、また耐湿熱後の反射色相は、60℃の温度及び95%RHの条件下において500時間放置してから測定した。
【0139】
【0140】
前記表1に表したように、本発明に係る、470nm波長における吸光度が1.5以上であり、700nm波長における吸光度が1.6以上である実施例1~7の偏光板は、高透過率を示しつつも耐熱及び耐湿熱条件下における放置後でもブラック色感を保持することができることを確認することができる。
【0141】
一方、470nm波長における吸光度が1.5未満であるか、700nm波長における吸光度が1.6未満である比較例1~8の偏光板は、高透過率を示すものの、耐熱又は耐湿熱条件下における放置後はブラック色感を保持することができないことを確認することができる。
【0142】
以上、本発明の特定の部分について詳しく記述したが、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、このような具体的な記述は単に好適な具現例であるに過ぎず、これらによって本発明の範囲が制限されるものではないことは明らかである。本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、前記内容を基に本発明の範疇内で種々の応用および変形を行うことが可能であろう。
したがって、本発明の実質的な範囲は、特許請求の範囲とその等価物によって定義されると言えよう。
【符号の説明】
【0143】
10:OLEDパネル
20:透明接着剤層
30:カバーウィンドウ
100:反射防止用偏光板
110:偏光子
120:第1保護層
130:第2保護層
140:位相差層
150:粘着剤層