(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034568
(43)【公開日】2022-03-03
(54)【発明の名称】動物患者用診断提案システム、動物患者用診断提案端末、動物患者用診断提案プログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 50/20 20180101AFI20220224BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20220224BHJP
【FI】
G16H50/20
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204492
(22)【出願日】2021-12-16
(62)【分割の表示】P 2021533751の分割
【原出願日】2020-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】515158272
【氏名又は名称】株式会社PECO
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 純
(57)【要約】
【課題】より簡易で精度が高く合わせて獣医療という分野特有の課題を解決することのできる提案システムを提供すること。
【解決手段】本発明による動物患者用提案システムは、検査結果情報を少なくとも含む動物患者データベースと、少なくとも前記検査結果情報に関連付けられた診断候補を含む診断データベースとが格納されている記憶手段、前記診断データベースを参照し、前記検査結果情報に基づいて前記診断候補を抽出する抽出手段、抽出された前記診断候補をユーザに対して表示する表示手段、を備えている。特に動物を患者とする診療の場合、人間の診療とは異なり、動物種や個体差によって適応できる検査、診断、処置、投薬及び処方が根本的に異なることから、それらを反映した提案システムを提供することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査結果情報を少なくとも含む動物患者データベースと、少なくとも前記検査結果情報に関連付けられた診断候補を含む診断データベースとが格納されている記憶手段、
前記診断データベースを参照し、前記検査結果情報に基づいて前記診断候補を抽出する抽出手段、
抽出された前記診断候補をユーザに対して表示する表示手段、を備える
動物患者用診断提案システム。
【請求項2】
請求項1に記載の動物患者用診断提案システムであって、
前記動物患者データベースは、問診情報、身体所見情報、現病歴情報、診断履歴情報、処置履歴情報、投薬歴情報又は処方履歴情報の少なくともいずれかを含んでおり、
前記診断データベースは、前記検査結果情報を含む前記動物患者データベースから選択される二以上の情報に関連付けられた前記診断候補を含んでおり、
前記抽出手段は、前記診断データベースを参照し、これらの情報に基づいて前記診断候補を抽出する、
動物患者用診断提案システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の動物患者用診断提案システムであって、
前記診断候補は、少なくとも前記検査結果情報に評価値と共に関連付けられており、
前記抽出手段は、前記評価値に基づいて前記診断候補を抽出する、
動物患者用診断提案システム。
【請求項4】
請求項3に記載の動物患者用診断提案システムであって、
表示した前記診断候補の前記ユーザによる選択操作に基づいて前記評価値を更新する評価値更新手段を更に備える、
動物患者用診断提案システム。
【請求項5】
請求項4に記載の動物患者用診断提案システムであって、
前記評価更新手段は、他の端末における他のユーザによる前記選択操作に基づいても前記評価値を更新する、
動物患者用診断提案システム。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の動物患者用診断提案システムであって、
前記記憶手段は、前記ユーザの属性情報を記憶しており、
前記評価値に対する前記更新の度合いは、前記ユーザの前記属性情報に基づいて定められる、
動物患者用診断提案システム。
【請求項7】
携行可能な動物患者用診断提案端末であって、
検査結果情報を少なくとも含む動物患者データベースと、少なくとも前記検査結果情報に関連付けられた診断候補を含む診断データベースとが格納されている記憶手段、
前記診断データベースを参照し、前記検査結果情報に基づいて前記診断候補を抽出する抽出手段、
抽出された前記診断候補をユーザに対して表示する表示手段、を備える
動物患者用診断提案端末。
【請求項8】
検査結果情報を少なくとも含む動物患者データベースと、少なくとも前記検査結果情報に関連付けられた診断候補を含む診断データベースとが格納されている記憶手段、
前記診断データベースを参照し、前記検査結果情報に基づいて前記診断候補を抽出する抽出手段、としてタッチディスプレイデバイスを有し携行可能な動物患者用診断提案端末を機能させる、
動物患者用診断提案プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物患者固有の情報を含む診断提案システムの提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人間患者の診察を電子化処理するソリューションは様々なものが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、病院や診療所等の医療機関及び介護施設並びに患者自宅等における受付、予診、診察、診療報酬計算、及び会計までの一連の業務を支援する方法が開示されている。
【0004】
しかし、このような提案システムは、不慣れな者にとっては余計に時間がかかる場合がある。そこで、このような電子カルテの入力作業を軽減する技術が提案されている。
【0005】
特許文献2及び特許分文献3に記載の技術は、いずれも入力しようとしている内容を予め予測して表示することにより入力作業の負荷を低減するための技術である。
【0006】
また、特許文献4には、複数の患者の中から特定の疾患に対して比較的高い発症リスクを有する患者群を抽出して推定する技術が開示され、特許文献5には、既往歴とバイタルデータから異常(診断)を推定する技術が開示されている。いずれの技術も、入力された情報に基づいて何らかの推定を表示するという点で、作業者の入力不可を図ろうとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-191389号公報
【特許文献2】特開2004-213678号公報
【特許文献3】特開2017-162037号公報
【特許文献4】特開2019-86839号公報
【特許文献5】特許6558700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特に動物を患者とする診療の場合、人間の診療とは異なり、動物種や個体差によって適応できる検査、診断、処置、投薬及び処方が根本的に異なることから、それらを反映した新規な提案システムの提供が期待される。
【0009】
そこで、本発明では、より簡易で精度が高く合わせて獣医療という分野特有の課題を解決することのできる提案システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、
動物患者情報と;検査結果情報と;診断情報と;を記憶する記憶手段、
前記動物患者情報と前記検査結果情報とに基づいて、前記診断情報から少なくとも一の診断候補を抽出する抽出手段、及び
抽出された前記診断候補を提案する提案手段を備える、
動物患者用提案システム
が得られる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、より簡易で精度が高く合わせて獣医療という分野特有の課題を解決することのできる提案システムを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態によるシステムが実行される動物病院端末の機能ブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態によるシステムの構成例を示す図である。
【
図4】
図2のシステムに用いられる診断データベースのデータセット(テーブル)の例である。
【
図5】
図4のデータセットの構成概念を示す図である。
【
図6】
図4のデータセットの他の構成例を示す図である。
【
図7】
図2のシステムにおける処理フローを示す図である。
【
図8】本発明の第2の実施の形態による、評価値の更新機能を含むシステムの他の構成例を示す図である。
【
図9】
図6のシステムに用いられる診断データベースのデータセット(テーブル)の例である。
【
図10】
図6のシステムにおける処理フローを示す図である。
【
図11】本実施の形態によるシステムの表示例である。
【
図12】診断候補がレコメンドされている表示例である。
【
図14】検査結果の取り込み方法の選択画面を示す図である。
【
図15】検査結果を手動入力により取り込む例を示す図である。
【
図16】検査結果を手動入力により取り込む例を示す図である。
【
図17】検査結果を画像入力により取り込む例を示す図である。
【
図18】検査結果を画像入力により取り込む例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、実施形態に示される構成要素のすべてが、本発明の必須の構成要素であるとは限らない。
【0014】
[項目1]
検査結果情報を少なくとも含む動物患者データベースと、少なくとも前記検査結果情報に関連付けられた診断候補を含む診断データベースとが格納されている記憶手段、
前記診断データベースを参照し、前記検査結果情報に基づいて前記診断候補を抽出する抽出手段、
抽出された前記診断候補をユーザに対して表示する表示手段、を備える
動物患者用診断提案システム。
[項目1]
項目1に記載の動物患者用診断提案システムであって、
前記動物患者データベースは、問診情報、身体所見情報、現病歴情報、診断履歴情報、処置履歴情報、投薬歴情報又は処方履歴情報の少なくともいずれかを含んでおり、
前記診断データベースは、前記検査結果情報を含む前記動物患者データベースから選択される二以上の情報に関連付けられた前記診断候補を含んでおり、
前記抽出手段は、前記診断データベースを参照し、これらの情報に基づいて前記診断候補を抽出する、
動物患者用診断提案システム。
[項目1]
項目1又は項目2に記載の動物患者用診断提案システムであって、
前記診断候補は、少なくとも前記検査結果情報に評価値と共に関連付けられており、
前記抽出手段は、前記評価値に基づいて前記診断候補を抽出する、
動物患者用診断提案システム。
[項目1]
項目3に記載の動物患者用診断提案システムであって、
表示した前記診断候補の前記ユーザによる選択操作に基づいて前記評価値を更新する評価値更新手段を更に備える、
動物患者用診断提案システム。
[項目1]
項目4に記載の動物患者用診断提案システムであって、
前記評価更新手段は、他の端末における他のユーザによる前記選択操作に基づいても前記評価値を更新する、
動物患者用診断提案システム。
[項目1]
項目3又は項目4に記載の動物患者用診断提案システムであって、
前記記憶手段は、前記ユーザの属性情報を記憶しており、
前記評価値に対する前記更新の度合いは、前記ユーザの前記属性情報に基づいて定められる、
動物患者用診断提案システム。
[項目1]
携行可能な動物患者用診断提案端末であって、
検査結果情報を少なくとも含む動物患者データベースと、少なくとも前記検査結果情報に関連付けられた診断候補を含む診断データベースとが格納されている記憶手段、
前記診断データベースを参照し、前記検査結果情報に基づいて前記診断候補を抽出する抽出手段、
抽出された前記診断候補をユーザに対して表示する表示手段、を備える
動物患者用診断提案端末。
[項目1]
検査結果情報を少なくとも含む動物患者データベースと、少なくとも前記検査結果情報に関連付けられた診断候補を含む診断データベースとが格納されている記憶手段、
前記診断データベースを参照し、前記検査結果情報に基づいて前記診断候補を抽出する抽出手段、としてタッチディスプレイデバイスを有し携行可能な動物患者用診断提案端末を機能させる、
動物患者用診断提案プログラム。
【0015】
<概略>
本発明の実施の形態による動物患者用診断提案システム(以下「提案システム」という。)は、特に、動物病院内において獣医療従事者その他の作業者又は動物患者の飼い主等(以下「ユーザ」という。)によって操作可能な携帯端末による操作を受け付けることができるものである。
【0016】
提案システムは、主として、動物病院において行われる検査、診断、対応(処置、投薬、処方)の大きく3つのステップを同一システム上で処理することを可能とするための者であり、本実施の形態においては、特に適切な診断候補をレコメンドする機能を説明する。
【0017】
提案システムは、特に、基礎的な動物患者自身の情報と、来院した後に取得・入力される検査結果情報と、診断候補とに基づいて、後述する診断データベースを参照し、当該動物患者の診断として適切な少なくとも一の診断候補を抽出してユーザに提供する。
【0018】
<構成>
図1は、本発明の実施形態に係る提案システムが実行される動物病院端末300の機能ブロック図である。この提案システムは、一又は複数の動物病院端末のディスプレイ等を介して表示される。
【0019】
動物病院端末300は、動物病院が管理し、上述したユーザが利用する、例えば、パーソナルコンピュータやタブレット端末等の情報処理装置であるが、スマートフォンや携帯電話、PDA等により構成しても良い。特に、院内において携行可能に構成されていることが好ましい。
【0020】
また、音声認識機能によって入力操作が可能とされていることがなお好ましい。この場合、当該音声認識機能にあっては、特に獣医療分野における専門用語や略語等の認識に特化されていることが好ましい。
【0021】
なお、本実施の形態による提案システムは、動物病院端末300のみで完結するものを説明するが、一部の機能をサーバ装置又は飼い主の端末において実行することとしてもよい。この場合、動物病院端末において実行されるプログラムの一部を、サーバ端末又は飼い主の端末にインストールすることで、提案システム全体を論理的に構成及び実行することとしてもよい。
【0022】
<動物病院端末300のハードウェア構成>
図1に示されるように、動物病院端末300は、通信部310と、表示操作部320と、記憶部330と、制御部340とを備えている。なお、当該構成は一例であり、その他の構成を備えていてもよい。
【0023】
通信部310は、ネットワークを介して他の端末と通信を行うための通信インタフェースであり、種々の通信プロトコルを採用することが可能である。
【0024】
表示操作部320は、ユーザが指示を入力し、制御部340からの入力データに応じてテキスト、画像等を表示するために用いられるユーザインターフェースであり、動物病院端末300がタブレット端末で構成されている場合はタッチパネル等から構成される。この表示操作部320は、記憶部330に記憶されている制御プログラムにより起動されてコンピュータ(電子計算機)である動物病院端末300により実行される。
【0025】
記憶部330は、各種制御処理や制御部340内の各機能を実行するためのプログラム、入力データ等を記憶するものであり、RAMやROM、その他ストレージ等から構成される。また、記憶部330は、他の端末との通信内容を一時的に記憶する。
【0026】
制御部340は、記憶部330に記憶されているプログラムを実行することにより、動物病院端末300の全体の動作を制御するものであり、CPUやGPU等から構成される。
【0027】
<診断レコメンドモジュールの機能ブロック>
図2は、本実施の形態による提案システムにおける診断レコメンドモジュール200を示す機能ブロック図である。診断レコメンドモジュール200は、入力又は取得された検査結果情報506(
図3参照)等を含む動物患者データベース204に基づいて、当該動物患者の診断として検討すべき診断候補をレコメンドする機能を構成する。具体的には、
図2における記憶手段202、抽出手段208及び表示手段210が一体となって機能するモジュールである。
【0028】
図示されるように、診断レコメンドモジュール200は、動物患者データベース204と、診断データベース206を含む記憶手段202を有している。なお、記憶手段202には、提案システムを構成する他の情報が格納されていてもよい。
【0029】
動物患者データベース204は、本実施の形態による提案システムが管理している動物患者情報の現在及び過去の情報を格納している。動物患者データベース204に格納されている動物患者の情報には、当該動物病院のみならずグループ経営やグループ管理がされている他の動物病院の動物患者の情報が含まれていてもよい。
【0030】
一方、診断データベース206は、動物患者に対して検討すべき診断候補(疾患名)が含まれている。
【0031】
抽出手段208は、動物患者データベース204に基づいて前記診断データベース206を参照し、対応する診断候補を抽出する。抽出された診断候補は、例えば、タッチパネル等の表示手段を介してユーザに表示され、選択操作等を受ける。
【0032】
表示手段210は、
図1における表示操作部320の一部を構成するものであり、本実施の形態においてはタッチパネルが採用されている。表示手段210は、抽出された診断候補をユーザに対して表示する。なお、本実施の形態におけるシステムは、例えば、動物病院内における手術室や検査室等様々な場所において利用される可能性があることから、ユーザに対するレコメンド情報やその他の通知の提供方法としては視覚的な表示ではなく音声や警告音等の聴覚的な提供方法としてもよい。この場合、音声等の提示は、視覚的な提示と同時にはまたは別に行うこととしてもよい。
【0033】
<動物患者データベースの詳細>
動物患者データベース204に含まれる各動物患者情報は、例えば、
図3に示されるような情報が含まれている。本実施の形態における動物患者データベース204は、動物患者に動物患者IDと飼い主IDとが関連付けて管理される。ここで同一の飼い主IDに対して複数の動物患者IDが関連付けられることも起こり得る。
【0034】
動物患者毎のカルテデータは、受診日毎に管理される。例えば、動物患者ID1000で識別されるユーザの電子カルテデータとして、名前、性別、種別、サイズ等の動物患者基本情報502、問診情報503、身体所見情報504、現病歴情報505、検査結果情報506、診断履歴情報507、処置履歴情報508、投薬履歴情報509、処方履歴情報510、メモ512、動物患者の動画/画像等の情報513及び会計情報514が含まれる。ここで、動物患者基本情報502、問診情報503及びペットの動画/画像等の情報513の入力内容は、携帯端末から受信されたデータで構成されていてもよい。一方、身体所見情報504等それ以外の動物患者情報は動物病院端末300から受信されたデータで構成することができ、また、獣医師等の担当者が、動物患者の飼い主から取得した情報に基づいて動物病院端末300に入力することで受信されたデータで構成することができる。
【0035】
特に、上述した動物患者基本情報502には、当該動物患者が該当する動物種情報を含んでいる。動物種情報の例としては、イヌ、キツネ、タヌキ、フェネック、ネコ、ハムスター、モルモット、ハツカネズミ、シマリス、タイワンリス、プレーリードッグ、モモンガ、ウサギ、サル、ミニブタ、フェレット、スカンク、ロバ、ウマ(ミニチュアホース、ファラベラ)、九官鳥、ジュウシマツ、セキセイインコ、オカメインコ、ワカケホンセイインコ、文鳥、鳩、ミズガメ、リクガメ、ヤモリ、トカゲ、ヘビ、ワニ、カエル、サンショウウオ、金魚、錦鯉、熱帯魚、エビ、カブトムシ、クワガタムシ、スズムシ、水生昆虫、カマキリ、クモ、サソリ、サソリモドキ、ウデムシ、ヒヨケムシ、ムカデ、ヤスデなどが例示されるがこの限りではない。更に、イヌにおいても、犬種(犬の品種)等の下位概念が存在し得る。
【0036】
問診情報503は、飼い主から取得する主観的な情報(主訴)である。例えば、「ご飯をあまり食べていない」「足に擦り傷ができている」「太ってきた」「元気がない」「鼻水が出ている」等であり、飼い主が所有する動物を見たときに観察される症状である。問診情報503は、動物病院に来院した際に問診表や問診用端末等を利用して飼い主から取得することとしてもよいし、飼い主が所有する携帯端末等で事前に入力してもらい取得することとしてもよい。
【0037】
身体所見情報504は、動物病院等において獣医師等が調べることができ、客観的な数値で表せる身体情報である。例えば「体重」「体温」「心拍」「呼吸数」等であり、以下に説明する現病歴情報505とともに必要な検査を抽出するために必要な情報である。
【0038】
現病歴情報505は、獣医師等が聴取した主観的な情報である。現病歴情報505は、上述した問診情報503と同一になる場合も多いが、例えば「喉が赤い」というように飼い主だけでは実際に確認するのが困難な項目も含まれている。また、問診情報503では「血尿が出ている」という情報が取得されたとしても、獣医師等によって診察したところ「肛門から出血している」という現病歴が聴取されることもある。
【0039】
検査結果情報506は、当該動物患者が来院して受けた検査の結果を含んでいる。検査結果には、過去の通院において受けたことのある検査結果や、検診において受けたことのある検査結果などを含めることができる。また、その際に、検査に対する反応(嫌がったかどうか等、検査自体の受容性・許容性に関する情報)を関連付けて記憶することとしてもよい。当該情報は、検査をレコメンドする際の重要な指標になり得るからである。検査項目は、炎症検査、生化学検査、心機能検査、内分泌機能検査、アレルギー検査、感染症検査、微生物検査、形態学的検査と言ったように目的別にカテゴリ化されていてもよいし、血液検査、レントゲン検査、超音波検査、細胞診検査、内視鏡検査(胃カメラ、直腸鏡)、CT検査(画像検査)、病理検査のように検査の特性に応じてカテゴリ化されていることとしてもよい。
【0040】
診断履歴情報507は、少なくとも当該動物患者が過去に受けた診断の履歴を含んでいる。過去に罹患した具体的な疾患名や怪我等の情報を含めることができる。診断履歴には、過去の通院において疑われた診断に関する情報を含めてもよい。
【0041】
処置履歴情報508及び投薬履歴情報509は、当該動物患者が過去に受けた処置履歴/投薬履歴情報を含んでいる。この場合においても、当該対応に対する反応(嫌がったかどうか、体調に影響を来たしたか等、処置又は投薬自体の受容性・許容性に関する情報)を関連付けて記憶することとしてもよい。項目としては、肛門腺処置、爪切処置、足裏処置、耳処置、毛抜き、眼科処置、歯科処置、エリザベスカラー・腹帯など、鍼灸処置、留置、便出し、抜糸、消毒、酸素処置、催吐処置、緊急蘇生処置、水抜き、強制給餌、洗浄、圧排、マッサージ、マイクロチップ、トリミング、カテーテル、リハビリ、手術、麻酔、入院、注射、輸血、点滴、検査、放射線治療、各種ドック、介護、衛生処置、シャンプー、しつけ、サプリメント、おやつ、避妊、去勢、ノミダニ駆除、狂犬病薬、ワクチン、フード、内用薬、点耳薬、点鼻薬、点眼薬、外用薬(軟膏・クリーム)、外用薬(消毒薬・スプレー)、外用薬、フィラリア予防などが例示できるがこの限りではない。
【0042】
処方履歴情報510は、当該動物患者が過去に処方された薬剤等の情報を含んでいる。この場合、自宅にて処方された薬剤を服用できたか否か、嫌がったかどうか、体調に影響を来たしたか等、処置又は投薬自体の受容性・許容性に関する情報をユーザの携帯端末を介して取得することとしてもよい。
【0043】
<診断データベースの詳細>
図4乃至
図5に示されるように、診断データベース206は、
図6に例示されるようなデータセット(テーブル)を持っている。データセットは、検査結果情報506等に関連付けられた一以上の診断候補との対が含まれている。
【0044】
図4に示されるように、本システムで使用するデータセットは、少なくとも動物患者の検査結果情報を利用する。検査結果情報は、動物患者のデータベース内に格納され、動物患者のカルテデータと関連付けられる。本実施の形態によるシステムで利用される検査結果情報自体は、来院当日に受けた検査の結果であってもよいし、別の日に受けた検査結果であってもよいし、他の動物病院で受けた検査結果であってもよい。診断データベースには、検査結果に関する条件と、当該条件を満たす場合に想定される診断候補とが関連づけられている。検査結果条件は複数の条件であってもよいし、診断候補も複数あってもよい。
【0045】
図5を参照してさらに詳しく説明する。本実施の形態によるシステムは、検査結果情報と、その他の情報(例えば、動物種情報、問診情報、身体所見情報、現病歴情報、診断履歴情報、処置履歴情報、投薬歴情報、処方履歴情報)との2以上の情報を利用して診断候補をレコメンドするものであってもよい。この場合、診断データベースには、検査結果条件を必ず含み、動物種条件、問診条件、身体所見条件、現病歴条件、診断履歴条件、処置履歴条件、投薬歴条件、処方履歴条件の少なくともいずれかを含む条件との組み合わせに対して、所定の診断候補が関連付けられている。例えば、図示される診断候補1には、検査結果条件(採血の結果等)と、動物種条件(犬又は猫等)と、問診条件(主訴に関する情報等)が関連付けられている、このように、複数の条件に診断候補を関連付けることによって、より精度の高いレコメンドが可能となる。
【0046】
図6に示されるように、具体的なデータセット(テーブル)には、情報種と、その内容(=条件)、診断候補、疾患候補に関する情報が記憶されている。例えば、図示される全身性炎症反応症候群(SIRS)という診断候補がレコメンドされる条件としては、動物種と、身体所見情報と、検査結果情報との3つの情報が関連付けられている。即ち、動物種として犬、身体所見情報504として体温に関する条件(XXX℃以下、又はYYY℃以上)、心拍数に関する条件(ZZdog回/分以上)呼吸数に関する条件(WW回以上)、また、検査結果情報506として白血球数(AAAA/μL以上、又はBBBB/μL以下)という条件が設定されており、動物患者情報から得られた数値や結果がこの条件をすべて満たした場合には、全身性炎症反応症候群(SIRS)という診断候補がレコメンドされる。この際に関連付けられている疾患名(例えば、敗血症等)が更に提案されることとしてもよい。この場合、診断候補に疾患名を関連付けて記憶しておけばよい。
【0047】
<処理のフロー>
図7は、診断レコメンドモジュール200の処理の流れを説明するフローチャートの一例である。診断レコメンドモジュール200は、動物患者の検査結果情報を含む動物患者情報を読み込む(S101)。少なくとも検査結果情報を含む取得した情報に基づいて診断データベースを参照して(S102)、対応する関連付けられた診断候補を抽出する(S103)。抽出した診断候補はタッチディスプレイ等の表示部に表示された後(S104)、獣医師等から診断候補の選択装置を受け付ける(S105)。
【0048】
以上説明したシステムは、検査結果情報を含む動物患者情報に基づいて診断データベースから診断候補を抽出してレコメンドすることとしていたが、例えば、
図8乃至
図10に示されるように、複数の診断候補を何らかの評価値によって評価し、より確からしい診断候補としてレコメンドすることとしてもよい。
【0049】
図8に示されるように、提案システムにおける診断レコメンドモジュール200’のような構成としてもよい。診断レコメンドモジュール200’は、入力又は取得された検査結果情報506(
図3参照)等を含む動物患者データベース204に基づいて、当該動物患者の診断として検討すべき診断候補を評価値に基づいてレコメンドする機能を構成する。また、本実施の形態においては、レコメンドされた診断候補のいずれの候補が選択されたかという事実に基づいて当該評価値を更新する評価値更新手段212を更に備えている。
【0050】
図9に示されるように、本実施の形態による具体的なデータセット(テーブル)には、情報種と、その内容(=条件)、診断候補、疾患候補、評価値に関する情報が記憶されている。例えば、図示されるABC(具体的な診断候補名は省略)という診断候補がレコメンドされる条件としては、動物種と、身体所見情報と、検査結果情報との3つの情報が関連付けられている。動物患者情報から得られた数値や結果がこの条件をすべて満たした場合には、全身性炎症反応症候群(SIRS)という診断候補が評価値87という確からしさによってレコメンドされる。一方で、図示されるように、診断候補XYZには評価値32が関連付けられており、また診断候補PQRには評価値11が関連付けられている。
【0051】
図10に示されるように、システムのフローとして、診断レコメンドモジュール200’は、動物患者の検査結果情報を含む動物患者情報を読み込む(S201)。少なくとも検査結果情報を含む取得した情報に基づいて診断データベースを参照して(S202)、対応する関連付けられた診断候補の評価値を特定して(S203)、評価値に基づいて診断候補を表示する(S204)。表示した診断候補に対して、獣医師等から診断候補の選択装置を受け付ける(S105)。
【0052】
図示される評価値は、レコメンドすべき診断候補の確からしさを評価値として表現し記憶するものであったが、例えば、情報項目のそれぞれに評価値を関連付けておき情報項目に関連付けられた評価値を合算したものを図示される評価値の列(右端の列)に設定することとしてもよい。例えば、動物種と、身体所見情報と、検査結果情報とに評価値を関連づけておき、全て満たした場合にそれぞれの評価値を合算したものが図の「87」と算出されることとしてもよい。この場合、更に、情報項目の内容に評価値の重みづけをすることとしてもよい(たとえば、ある特定の検査結果が陽性であればほぼ確実にある診断候補であるという場合には当該検査結果の条件の評価値を高めておけばよい)。即ち、
図5及び
図9を参照して、診断候補毎に、各情報項目のそれぞれから得られる評価値にそれぞれ適切な係数を乗じることとすればよい。例えば、以下のようにα~γが任意の係数として乗じられた数式として表現することができる。
診断候補ABCの評価値=動物種×α+身体所見情報×β+検査履歴情報×γ
【0053】
このように、複数の診断候補毎に評価値を算出する式を重みづけすることにより精度を高めることができる。
【0054】
以上説明したように、このような客観的な診断候補のレコメンドを行うこととすれば、診断候補の入力作業を省力化できると共に、検討すべき診断候補から漏れを防止できる。特に、経験年数が多い者や実績が高いと評価された者(「ベテラン獣医師等」と呼ぶ)と、経験年数が少ない者や実績が高くないと評価された者(「新人獣医師等」と呼ぶ)の間における、判断スキルの偏りを是正し、標準化することができる。
【0055】
<評価値の更新>
図8に示されるように、評価値更新手段212は、上述した診断データベース206に含まれる評価値を、診断候補のユーザによる選択操作の事実に基づいて変更・更新することとしてもよい。これによりレコメンド機能の正確性を向上させることができる。
【0056】
また、評価値更新手段212は、他の端末(同一病院内の別の端末であるか、同一システムに接続された他の病院内の端末であるかを問わない)における他のユーザによる選択操作に基づいても評価値を変更・更新することとしてもよい。
【0057】
評価値の更新方法は、種々の方法により行うことができる。もっとも簡便な考え方としては、本システムを利用して同一事例において実際に選択され実施された診断候補について評価値を増加させる方法が考えられる。一方、提案されたものの選択されず実施もされなかった診断候補については評価値を変動させない又は減少させればよい。
【0058】
上述したベテラン獣医師等や新人獣医師等に所定の指標(経験年数等)を関連付けて利用して記憶しておき、ベテラン獣医師等による選択操作による評価値の増減に当該指標に応じた重みづけをすることとしてもよい。
【0059】
本実施の形態における評価値更新手段212は、評価値自体の更新のみならず、上述した診断候補の抽出の際に評価値に付与する重みづけ(α~δ)や、選択操作の主体を示す指標(経験年数)もまた更新の対象とする。
【0060】
<表示例>
続いて、提案システムの表示例を説明する。
図11に示されるように、動物病院端末の画面は、対象とする動物患者毎に、少なくとも、受診日毎に生成された診療データを表示する診療データ表示領域400と、受診日を示す情報を表示する日付表示領域410、412とで構成される。また、領域410には、動物患者の画像、動物患者の診療ステータス例えば、診療中、検査中、診療終了、検査完了等の情報を表示することができる。領域412には、過去の通院情報を表示するためのタブが表示される。
【0061】
診療データ表示領域400には、状況、出血、期間、食欲、体調、嘔吐の有無、下痢の有無等の問診情報503)、身体所見、病歴、検査、診断、処理&投薬、処方、メモ等の診療データ(504~514)がそれぞれ入力可能に表示される。また、診療データに含まれる各々の項目について、情報を入力可能な領域が設けられ、動物病院端末300の担当者による入力によって診療データが更新される。
【0062】
図12に示されるように、問診、身体所見、病歴の入力が終わり、所定の検査を受け終わると、診断の領域に「胃炎、胃捻転、胃拡張、犬伝染性肝炎」と言った診断候補がレコメンドされ表示される。表示のタイミングとしては、問診、身体所見、病歴の入力が終わる前に適宜レコメンド機能が実行されていてもよい。
【0063】
図13に示されるように、診断を入力することも可能である。この場合、「い」と入力すると「胃炎、胃捻転、胃拡張、イヌ伝染性肝炎」というように診断の予測がされていてもよい。診断を確定すると、検査領域に選択した診断名が表示される(図示せず)。
【0064】
図14乃至
図18に示されるように、診断レコメンドモジュールに入力される検査結果情報は、例えば、自動入力又は手動入力によって入力可能である。以下、血液検査を例に説明する。
【0065】
検査結果情報の入力を選択すると(図示せず)、
図14に示されるように「手入力」及び「画像入力」の選択ボタンが表示される。「手入力」を選択すると、例えば
図15に示されるように数値入力の画面が表示される。ここで、ユーザは、
図16に示されるように、検査結果として数値を入力する。
【0066】
一方、動物病院端末300にカメラ機能が備わっている場合には、
図14に示される画面において「画像入力」を選択することとすればよい。この場合
図17に示されるように血液検査結果の結果票をカメラで撮影し、
図18に示されるように登録することによってOCR認識等の機能によって数値を自動で取り込むことが可能である。
【0067】
以上のようなユーザインターフェースを含む提案システムを提供することにより、動物病院の医師等の担当者は、診療データの入力とともに一元的な作業を行うことができる。特に動物を患者とする診療の場合、人間の診療とは異なり、動物種や個体差によって適応できる検査、診断、処置、投薬及び処方が根本的に異なることから、それらを反映した提案システムを提供することができる。これにより、より簡易で精度が高く合わせて獣医療という分野特有の課題を解決することのできる提案システムを提供することができる。
【0068】
以上、開示に係る実施形態について説明したが、これらはその他の様々な形態で実施することが可能であり、種々の省略、置換および変更を行なって実施することが出来る。これらの実施形態および変形例ならびに省略、置換および変更を行なったものは、特許請求の範囲の技術的範囲とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
200 診断レコメンドモジュール
202 記憶手段
204 動物患者データベース
206 検査データベース
208 抽出手段
210 表示手段
300 動物病院端末