(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034572
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】金属張積層板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/24 20060101AFI20220225BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20220225BHJP
B32B 15/01 20060101ALI20220225BHJP
B32B 37/02 20060101ALI20220225BHJP
C23C 28/02 20060101ALI20220225BHJP
C25D 5/56 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
H05K3/24 A
B32B5/18
B32B15/01 K
B32B37/02
C23C28/02
C25D5/56 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020138305
(22)【出願日】2020-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐太郎
【テーマコード(参考)】
4F100
4K024
4K044
5E343
【Fターム(参考)】
4F100AB01B
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4F100AB17B
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5E343AA02
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5E343GG02
(57)【要約】
【課題】基材に対する金属層の密着性が抑制された金属張積層板を製造できる金属張積層板の製造方法を提供すること。
【解決手段】基材上に金属層を形成して金属張積層板を製造する金属層形成工程を含む金属張積層板の製造方法であって、金属層形成工程が、基材上に、空隙を有する多孔質の第1金属層を形成する第1金属層形成工程と、第1金属層上に非多孔質の第2金属層を形成する第2金属層形成工程と、第2金属層の上に第3金属層をめっきで形成する第3金属層形成工程とを含む、金属張積層板の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に金属層を形成して金属張積層板を製造する金属層形成工程を含む金属張積層板の製造方法であって、
前記金属層形成工程が、
前記基材上に、空隙を有する多孔質の第1金属層を形成する第1金属層形成工程と、
前記第1金属層上に非多孔質の第2金属層を形成する第2金属層形成工程と、
前記第2金属層の上に第3金属層をめっきで形成する第3金属層形成工程とを含む、金属張積層板の製造方法。
【請求項2】
前記第2金属層形成工程において、前記第2金属層の十点平均表面粗さが前記第1金属層の十点平均表面粗さよりも小さくなるように前記第2金属層を形成する、請求項1に記載の金属張積層板の製造方法。
【請求項3】
前記第2金属層形成工程において、前記第2金属層が前記第1金属層と同一金属で構成される、請求項1又は2に記載の金属張積層板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属張積層板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板などの製造に際しては、基材の上に銅などの金属からなる金属層が積層された金属張積層板が使用される。
【0003】
このような金属張積層板の製造方法として、例えば下記特許文献1には、基材上に銅微粒子を焼成した皮膜を形成する工程と、皮膜にめっきを施して導電膜を形成する工程とを有する導電膜形成方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献1に記載の導電膜形成方法は、基材に対する導電膜の密着性の点で改善の余地を有していた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、基材に対する金属層の密着性の低下が抑制された金属張積層板を製造できる金属張積層板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記特許文献1に記載の導電膜形成方法において、基材に対する導電膜の密着性が不十分である原因について検討した。その結果、基材に対する導電膜の密着性が不十分である原因について以下の理由によるものではないかと本発明者は考えた。すなわち、上記特許文献1に記載の導電膜形成方法では、皮膜が複数の空隙を有する多孔質構造を有しており、この皮膜を構成する金属粒子が基材に引っかかった状態で埋没していると考えられる。すなわち、皮膜は、それを構成する金属粒子によるアンカー効果により基材に密着していると考えられる。そして、この多孔質構造の皮膜にめっきが施されるため、めっきを行う際、めっきにより成長する金属が皮膜の空隙に入り込んで成長すると、やがて金属が基材と皮膜との間の隙間にまで入り込み、基材と皮膜との間にこれらを離間させるだけの応力を加える。あるいは、めっきにより成長する金属が、皮膜を構成する金属粒子に応力を加える。その結果、基材から金属層が剥離しやすくなるのではないかと本発明者は考えた。そこで、本発明者は、さらに鋭意検討を重ねた結果、以下の発明により上記課題を解決し得ることを見出した。
【0008】
即ち本発明は、基材上に金属層を形成して金属張積層板を製造する金属層形成工程を含む金属張積層板の製造方法であって、前記金属層形成工程が、前記基材上に、空隙を有する多孔質の第1金属層を形成する第1金属層形成工程と、前記第1金属層上に非多孔質の第2金属層を形成する第2金属層形成工程と、前記第2金属層の上に第3金属層をめっきで形成する第3金属層形成工程とを含む、金属張積層板の製造方法である。
【0009】
この金属張積層板の製造方法によれば、基材の上に多孔質の第1金属層が形成され、その第1金属層の上に非多孔質の第2金属層が形成され、第2金属層の上に第3金属層がめっきで形成される。こうして、基材上に、第1金属層、第2金属層及び第3金属層を有する金属層が形成される。このとき、第2金属層の上に第3金属層をめっきで形成する際に、第2金属層によって、めっきが第1金属層の空隙に入り込むことが抑制される。従って、めっきにより金属が成長しても、その金属が基材と第1金属層との間の隙間にまで入り込むことが抑制され、基材と第1金属層との間にこれらを離間させる応力が加えられることが抑制される。従って、本発明の金属張積層板の製造方法によれば、基材に対する金属層の密着性の低下が抑制された金属張積層板を製造できる。
【0010】
上記金属張積層板の製造方法においては、前記第2金属層形成工程において、前記第2金属層の十点平均表面粗さが前記第1金属層の十点平均表面粗さよりも小さくなるように前記第2金属層を形成することが好ましい。
【0011】
この場合、第2金属層の十点平均表面粗さが第1金属層の十点平均表面粗さ以上となるように第2金属層が形成される場合に比べて、第2金属層の表面の凹凸が小さくなり、高周波の電流が流れる場合に電流経路が短くなる。このため、第2金属層の電気抵抗をより低下させることができる。
【0012】
上記金属張積層板の製造方法においては、前記第2金属層形成工程において、前記第2金属層が前記第1金属層と同一の金属で構成されることが好ましい。
【0013】
この場合、第1金属層と第2金属層とが異なる金属で構成される場合に比べて、多孔質の第1金属層中に侵入する水分等により、第2金属層から金属が溶け出されにくくなる。すなわち、第2金属層の腐食が十分に抑制される。その結果、第2金属層の抵抗の増加が抑制されるとともに、第2金属層が割れたり、第1金属層から剥がれたりすることが十分に抑制される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、基材に対する金属層の密着性の低下が抑制された金属張積層板を製造できる金属張積層板の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の金属張積層板の製造方法によって製造される金属張積層板を示す断面図である。
【
図2】
図1の二点鎖線Aで囲まれる領域の拡大図である。
【
図3】本発明の金属張積層板の製造方法における第1金属層形成工程を示す断面図である。
【
図4】本発明の金属張積層板の製造方法における第2金属層形成工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の金属張積層板の製造方法の実施形態について詳細に説明する。
【0017】
まず、本発明の金属張積層板の製造方法によって製造される金属張積層板について
図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明の金属張積層板の製造方法によって製造される金属張積層板を示す断面図、
図2は、
図1の二点鎖線Aで囲まれる領域の拡大図である。
【0018】
図1及び
図2に示すように、金属張積層板100は、基材10と、基材10の主面10a上に設けられる金属層20とを備えている。金属層20は、基材10の上に設けられ、空隙Vを有する多孔質の第1金属層21と、第1金属層21の上に設けられる非多孔質の第2金属層22と、第2金属層22の上に設けられる第3金属層23とを有する。
【0019】
次に、金属張積層板100の製造方法について
図1~
図4を参照しながら説明する。
図3は、本発明の金属張積層板の製造方法における第1金属層形成工程を示す断面図、
図4は、本発明の金属張積層板の製造方法における第2金属層形成工程を示す断面図である。
【0020】
図1~
図4に示すように、金属張積層板100の製造方法は、基材10上に金属層20を形成して金属張積層板100を製造する金属層形成工程を含む。金属層形成工程は、基材10上に、空隙Vを有する多孔質の第1金属層21を形成する第1金属層形成工程と、第1金属層21上に非多孔質の第2金属層22を形成する第2金属層形成工程と、第2金属層22の上に第3金属層33をめっきで形成する第3金属層形成工程とを含む。
【0021】
この金属張積層板100の製造方法によれば、基材10の上に多孔質の第1金属層21が形成され、その第1金属層21の上に非多孔質の第2金属層22が形成され、第2金属層22の上に第3金属層23がめっきで形成される。こうして、基材10上に、第1金属層21、第2金属層22及び第3金属層23を有する金属層20が形成される。このとき、第2金属層22の上に第3金属層23をめっきで形成する際に、第2金属層22によって、めっきによって成長する金属が第1金属層21の空隙Vに入り込むことが抑制される。従って、めっきによって金属が成長しても、その金属が基材10と第1金属層21との間の隙間にまで入り込むことが抑制され、基材10と第1金属層21との間にこれらを離間させる応力が加えられることが抑制される。従って、基材10から金属層20が剥離することが十分に抑制された金属張積層板100を製造できる。
【0022】
以下、上述した第1金属層形成工程、第2金属層形成工程及び第3金属層形成工程につて詳細に説明する。
【0023】
<第1金属層形成工程>
第1金属層形成工程は、基材10上に、空隙Vを有する多孔質の第1金属層21を形成する工程である(
図3参照)。
【0024】
(基材)
基材10を構成する材料は、特に制限されるものではないが、基材10を構成する材料としては、例えば非熱可塑性のポリイミド樹脂;熱可塑性のポリエチレンテレフタレート(PET)、液晶ポリマー(LCP)、シクロオレフィンポリマー(COP);及び、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、四フッ化エチレン-パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)などのフッ素系樹脂などが挙げられる。
【0025】
金属張積層体100を高周波用途に使用する場合には、誘電率が小さい樹脂が好ましい。この場合、電気エネルギーの一部が熱になりにくく失われにくくなる。このような誘電率が小さい樹脂としては、LCP、COP及びフッ素系樹脂が挙げられる。
【0026】
はんだリフロー時を特に重視する場合、基材10を構成する材料としては、連続使用温度が200℃以上である樹脂が好ましい。このような樹脂としては、例えばLCP、COP及びフッ素系樹脂などが挙げられる。
【0027】
また、温度変化による反りの抑制を重視する場合には、基材10を構成する材料としては、第1金属層21の線膨張係数に近い線膨張係数を有する樹脂が好ましい。例えば第1金属層が銅で構成される場合には、銅の線膨張係数(16ppm/K)に近い線膨張係数を有するLCP又はポリイミド樹脂などが好ましく用いられる。
【0028】
基材10の平均厚さは用途によるため一概には言えないが、通常は25~100μmである。基材10の平均厚さは例えばJISK7130:1999「プラスチック-フィルム及びシート-厚さ測定方法」に記載された方法により測定できる。
【0029】
(第1金属層)
第1金属層21は、基材10の主面10a上に、例えば金属粒子及び溶媒を含む第1金属層形成用ペーストを塗工し、光焼成することによって得ることができる。
【0030】
ここで、金属粒子は、平均粒径が1~100nmのナノ粒子を含むことが好ましい。金属粒子はナノ粒子のみで構成されてもよく、ナノ粒子と粗大粒子との混合物で構成されてもよい。粗大粒子としては、例えば直径が1μm、厚さが200nmの円盤粒子を用いることができる。なお、光照射によって溶解するのは、ナノ粒子のみであり、粗大粒子は溶解しない。
【0031】
金属粒子はナノ粒子のみで構成されることが好ましい。この場合、第1金属層21の体積抵抗率をより小さくすることができる。これは、金属粒子がナノ粒子のみで構成されると、すべての金属粒子が光焼成によって溶解して互いに溶着するため、金属粒子同士の接触面積が大きくなるためであると考えられる。
【0032】
但し、金属粒子は、ナノ粒子と粗大粒子との混合物で構成されてもよい。この場合、粗大粒子が光焼成によって溶解しないため、光焼成時の金属膜の収縮を小さくすることができ、基材10が反ったり、基材10から第1金属層21が剥離したりすることを抑制することができる。
【0033】
金属粒子を構成する金属としては、例えば金、銀および銅が挙げられる。中でも、安価であることから銅が好ましい。
【0034】
溶媒としては、例えば3-メトキシ-3-メチルブタノール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレンカーボネート、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなどを用いることができる。
【0035】
第1金属層形成用ペーストはさらに分散剤を含んでいてもよい。分散剤としては、例えばポリエチレングリコール及びポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0036】
第1金属層形成用ペーストの塗工は、例えばマイクログラビア方式の塗工機やスピンコータを用いて行うことができる。
【0037】
第1金属層形成用ペーストは、光焼成の前に、乾燥処理を行うことが好ましい。また第1金属層形成用ペーストがバインダ等の有機成分を多く含む場合には、有機成分を除去する処理をさらに行うことが好ましい。この場合、光焼成時に有機成分が分解することで発生するガスに起因して空隙が大きくなることを抑制することができる。
【0038】
乾燥処理方法としては50~100℃程度で熱処理する方法が挙げられる。また、有機成分を除去する処理方法としては、例えば150℃程度で第1金属層形成用ペーストを熱処理した後、希硫酸に浸漬して酸化膜を除去し、水洗した後、イソプロピルアルコールに浸漬する方法が挙げられる。
【0039】
光焼成を行う装置としては、例えばNovacentrix社製の「Pulsforge1300」を使用することができる。この装置に使用する光源としては、例えばキセノンランプなどを使用することができる。
【0040】
光の照射エネルギーは、例えば0.1~100J/cm2とすればよい。光の照射時間は、0.1~100msとすればよい。照射回数は1回でも複数回の多段照射でもよい。
【0041】
第1金属層21の平均厚さは、第1金属層21を構成する金属粒子の平均粒径をxとすると、2x以上であることが好ましい。この場合、計算上では、基材10上に金属粒子が2個以上存在することになり、基材10に直接密着している金属粒子上に第2金属層22が直接形成されなくなる。このため、基材10に直接密着している金属粒子に第2金属層22による応力が加わりにくくなり、基材10に対する第1金属層21の密着性の低下が十分に抑制される。
【0042】
第1金属層21の平均厚さは5μm以下であることが好ましい。この場合、第1金属層21の平均厚さが5μmを超える場合に比べて、第1金属層形成用ペーストを光焼成した際に第1金属層形成用ペーストにおいて発生するガスによって空隙Vが大きくなることが十分に抑制される。第1金属層21の平均厚さは1μm以下であることがより好ましい。
【0043】
第1金属層21の平均厚さは、例えば第1金属層21の断面を走査電子顕微鏡で観察することで測定することができる。第1金属層21の断面を出す方法としては、金属張積層板100を樹脂に埋め込んでから研磨する方法などがある。
【0044】
<第2金属層形成工程>
第2金属層形成工程は、第1金属層21上に非多孔質の第2金属層22を形成する工程である(
図4参照)。別言すると、第2金属層形成工程は、第1金属層21上に、第2金属層の上に第3金属層23をめっきで形成する場合にめっきが通過しないように第2金属層22を形成する工程である。
【0045】
第2金属層形成工程においては、第2金属層22の十点平均表面粗さ(R2)は特に制限されるものではないが、第1金属層21の十点平均表面粗さ(R1)よりも小さくなるように第2金属層22を形成することが好ましい。
【0046】
この場合、R2がR1以上となるように第2金属層22が形成される場合に比べて、第2金属層22の表面の凹凸が小さくなり、高周波の電流が流れる場合に電流経路が短くなるため、第2金属層22の電気抵抗をより低下させることができる。
【0047】
R1-R2は特に制限されるものではないが、0.03μm以上であることが好ましい。この場合、第2金属層22の電気抵抗をより一層低下させることができる。但し、R1-R2は、0.1μm以下であることが好ましい。
【0048】
R2は、具体的には、0.01μm以上であることが好ましい。但し、R2は、0.2μm以下であることが好ましい。
【0049】
また、第2金属層22は、第1金属層21のうち基材10と反対側の主面(以下、「反対側主面」と呼ぶ)のみを覆うように形成されてもよいが、反対側主面のみならず、反対側主面と、基材10及び第1金属層21の間の界面とを結ぶ側面をも覆うように形成されることが好ましい。この場合、第2金属層22によって第1金属層21の空隙が塞がれるため、第3金属層23を第2金属層22の上に形成する際に、めっきにより成長する金属が第1金属層21の空隙内に入り込むことを防止することができる。
【0050】
第2金属層22を構成する金属は特に制限されるものではないが、金属張積層板100を高周波用途に使用する場合には、非磁性金属であることが好ましい。この場合、表皮効果により第2金属層22のうち電流が流れる部分の厚さが小さくなることが防止されるため、第2金属層22の電気抵抗を低下させることができる。非磁性金属としては、例えば金、銀および銅が挙げられる。中でも、安価であることから銅が好ましい。
【0051】
第2金属層22は第1金属層21と同一金属で構成されることが好ましい。
【0052】
この場合、第1金属層21と第2金属層22とが異なる金属で構成される場合に比べて、多孔質の第1金属層中に侵入する水分等により、第2金属層22から金属が溶け出されにくくなる。すなわち、第2金属層22の腐食が十分に抑制される。その結果、第2金属層22の抵抗の増加が抑制されるとともに、第2金属層22が割れたり、第1金属層21から剥がれたりすることが十分に抑制される。
【0053】
非多孔質の第2金属層22は、スパッタリングによって形成することが好ましい。この場合、スパッタリングによって第2金属層22を形成する場合、めっきによって第2金属層22を形成する場合と異なり、スパッタリングによって形成される金属が多孔質の第1金属層21の空隙に入り込むことを十分に抑制することができる。
【0054】
第2金属層22の平均厚さは、特に限定されるものではないが、第1金属層21を構成する金属粒子の平均粒径の1倍以上であることが好ましい。
【0055】
第2金属層22の平均厚さは具体的には1~20μmとすればよい。
【0056】
なお、第2金属層22の平均厚さはスパッタリングの時間によって調整することができる。
【0057】
第2金属層22の平均厚さは第1金属層21と同様の方法で測定できる。
【0058】
<第3金属層形成工程>
第3金属層形成工程は、第2金属層22の上に第3金属層33をめっきで形成する工程である(
図1参照)。
【0059】
第3金属層23を構成する金属は特に制限されるものではない。このような金属としては、例えば金、銀および銅が挙げられる。中でも、安価であることから銅が好ましい。
【0060】
めっきに使用するめっき液は、特に制限されるものではないが、硫酸銅溶液であることが好ましい。この場合、表面が平滑な第3金属層23が第2金属層22の表面に均一に付着される。めっき液には、光沢剤を添加してもよい。
【0061】
めっきとしては、電気めっき及び無電解めっきが挙げられる。中でも、短時間で第3金属層23の厚さを増大させる観点からは、電気めっきが好ましい。
【0062】
めっきが電気めっきである場合、電流密度は特に制限されないが、通常は、1~4A/dm2である。
【0063】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、基材10の主面10aにのみ金属層20が形成されているが、基材10の主面10aと反対側の反対側主面に金属層20が形成されてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、第1金属層21が、第1金属層形成用ペーストの光焼成によって形成されているが、第1金属層21は、必ずしも第1金属層形成用ペーストの光焼成によって形成されていなくてもよい。例えば第1金属層21は、熱焼成によって形成することも可能である。
【実施例0065】
以下、本発明の内容を、実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0066】
(実施例1)
まず、平均厚さ25μmの基材を用意した。基材としては、ポリイミドフィルム(商品名「アピカル25NPI」、株式会社カネカ製)を用いた。
【0067】
次に、平均粒径70nmの銅ナノ粒子のみからなる金属粒子、ヘキシレングリコールからなる溶媒、ポリエチレングリコールからなる分散剤を含むペーストを用意し、スピンコータで基材の主面上にペーストを塗工し、50℃で10分間乾燥させた。
【0068】
次に、キセノンフラッシュランプを光源とした光焼成装置(製品名「PulsForge1300」、Novacentrix社製)でペーストの光焼成を行い、銅からなる第1金属層を得た。光焼成後に得られた第1金属層の平均厚さは1μmであった。
【0069】
次に、真空蒸着装置(製品名「JEOL JFC-1200」、日本電子株式会社製)を用い、第1金属層の表面を覆うように銅のスパッタリングを行い、第2金属層を形成して構造体を得た。第2金属層の平均厚さは0.1μmであった。
【0070】
次に、上記のようにして得られた構造体を10質量%硫酸及び蒸留水で順次前処理した後、構造体の第2金属層に対して銅めっきを行った。銅めっきは、上記構造体をめっき液に浸漬し、電気めっきにて行った。このとき、めっき液の組成は、硫酸銅五水和物100g/L、硫酸180g/L、塩酸0.12mL/L、蒸留水(残余)とした。また、めっき液の液温は25℃とし、電流密度は4.0A/dm2とした。こうして第2金属層の上に第3金属層を形成し、金属張積層板を作製した。
【0071】
(比較例1)
第1金属層の上に第2金属層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして金属張積層板を作製した。
【0072】
[基材に対する金属層の密着性評価]
実施例1及び比較例1で得られた金属張積層板について、クロスカット法(JIS-5600-5-6)により、基材に対する金属層の密着性の試験を行った。具体的には、金属層に碁盤目の切れ目を入れ、1mm×1mm四方のマスを100マス形成し、金属層に粘着テープを貼った後に引き剥がして金属層の表面を観察した。そして、粘着テープにおける剥離したマスの数を求めた。結果を表1に示す。
【表1】
【0073】
表1に示す結果より、実施例1で得られた金属張積層板については、密着性試験で剥離したマスの数が0個であったのに対し、比較例1で得られた金属張積層板については、密着性試験で剥離したマスの数が100個(すべて)であった。
【0074】
以上のことから、本発明の金属張積層板の製造方法によれば、基材に対する金属層の密着性の低下が抑制された金属張積層板を製造できることが確認された。