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  • 特開-医療用カテーテル 図1
  • 特開-医療用カテーテル 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034592
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】医療用カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/14 20060101AFI20220225BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
A61M25/14 512
A61M25/00 534
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020138349
(22)【出願日】2020-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】517439708
【氏名又は名称】河原田 修身
(74)【代理人】
【識別番号】100090181
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 義人
(72)【発明者】
【氏名】河原田 修身
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA05
4C267AA11
4C267BB08
4C267BB09
(57)【要約】
【課題】 ピッキングテクニックを効果的に実施できる医療用カテーテルを提供する。
【解決手段】 医療用カテーテル(10)は、カテーテル本体(12)内に並行して長軸方向に延びる第1ルーメン(20)および第2ルーメン(22)を備え、第1ルーメンの先端部は、先端に行くほどカテーテル本体の軸から短軸方向に遠ざかるように曲成された曲成部(14)として形成される。第1ルーメンの先端に形成されて第1ガイドワイヤを入れるための第1開口(16)、さらにカテーテル本体の長軸方向の一部に形成されて第1ルーメンから第1ガイドワイヤ(24)を出すためのワイヤポート(18)、および第2ルーメンの先端に形成されて第2ルーメンを通る第2ガイドワイヤを繰り出すための第2開口(30)を備える。第2開口は第1開口より長軸方向において基端側に設けられる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテル本体、
前記カテーテル本体内に並行して長軸方向に延びる第1ルーメンおよび第2ルーメン、
前記第1ルーメンの先端部に形成され、先端に行くほど前記カテーテル本体の軸から遠ざかるように曲成された先細りの曲成部、
前記第1ルーメンの先端に形成されて第1ガイドワイヤを入れるための第1開口、
前記カテーテル本体の前記長軸方向の一部に形成され、前記第1開口から前記第1ルーメンを通って前記第1ガイドワイヤを繰り出すためのワイヤポート、および
前記第2ルーメンの先端に形成されて前記第2ルーメンを通る第2ガイドワイヤを繰り出すための第2開口を備え、
前記第2開口は前記第1開口より前記長軸方向において基端側に設けられる、医療用カテーテル。
【請求項2】
第1開口と第2開口の長軸方向における距離は、対象の血管の直径の2倍以内の距離に設定される、請求項1記載の医療用カテーテル。
【請求項3】
前記第1開口と前記第2開口との間の前記長軸方向と直交する短軸方向の距離は、対象の血管の直径の2倍以内の距離に設定される、請求項1または2記載の医療用カテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、医療用カテーテルに関し、特にたとえば、末梢血管内の硬い石灰化を伴う閉塞性病変を砕いて割を入れ軟らかくするための、ダブルルーメンを有する医療用カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、経皮的血管形成術は末梢血管内の閉塞性病変をバルーンカテーテルやステントを用いて拡張し、下肢の血流改善を目的とした治療として広く行われている。特許文献1に記載のような血管形成術は、まずガイドワイヤが閉塞性病変を超えて前進し、次にガイドワイヤに沿ってバルーンカテーテルを閉塞性病変内まで進める。バルーンを拡張することで閉塞性病変の内腔が開大され閉塞が解除され、ステント治療も可能になる。
【0003】
しかし、石灰化を伴う閉塞性病変は非常に硬いことがあり、バルーンカテーテルが閉塞性病変内に進まないことや、閉塞性病変内に進んでも拡張できず治療を行えない場合がある。そのような場合には、硬い石灰化病変を血管内から砕いて割を入れ軟らかくするPICKING(ピッキング)テクニックという方法を用いることがある。
【0004】
ピッキングテクニックでは、1本目のガイドワイヤで閉塞性病変を通過した後、そのガイドワイヤに沿わせるように市販の3F‐5FサイズのJRカテーテルやマルチパーパスカテーテルなどを病変部直上まで進める。1本目のガイドワイヤを残したまま、先端が硬い2本目のガイドワイヤをカテーテル内に進めて閉塞性病変内を押すことで、石灰化病変を砕き割を入れることができる。
【0005】
ピッキングテクニックを用いることで硬い石灰化病変が軟らかくなりその後のバルーンカテーテルの通過や拡張を可能にする。しかし、市販のカテーテルはシングルルーメンであるために、方向性を定めて砕くことは困難である。
【0006】
これまで、複雑な血管病変に対するカテーテル治療においては特許文献2に記載のように、モノレールルーメンとオーバーザ―ワイヤルーメンのダブルルーメン構造を有するカテーテルがあり、モノレールルーメンを用いて血管内病変を越えた末梢まで導入した上で、オーバーザ―ワイヤルーメンを用いてガイドワイヤの導入、病変部への薬剤注入などの操作を行うことを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-291900号公報[A61M 25/00]
【特許文献2】WO2006/126642
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来市販されてきたダブルルーメンの形態をもつカテーテルは、冠動脈治療を想定していることからルーメンに通過できるガイドワイヤの径は0.014インチ(≒0.356mm)以下に限定され、カテーテルの形状も直線状である。下肢動脈は冠動脈よりも血管径が太く、石灰化の程度も極めて高度であり、さらにしばしば屈曲部に閉塞性病変を伴うことから市販のカテーテルは使用できない。
【0009】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、医療用カテーテルを提供することである。
【0010】
この発明の他の目的は、ピッキングテクニックを効果的に処置し得る、医療用カテーテルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明等は、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0012】
第1の発明は、カテーテル本体、カテーテル本体内に並行して長軸方向に延びる第1ルーメンおよび第2ルーメン、第1ルーメンの先端部に形成され、先端に行くほどカテーテル本体の軸から遠ざかるように曲成された先細りの曲成部、第1ルーメンの先端に形成されて第1ガイドワイヤを入れるための第1開口、カテーテル本体の長軸方向の一部に形成され、第1開口から第1ルーメンを通って第1ガイドワイヤを繰り出すためのワイヤポート、および第2ルーメンの先端に形成されて第2ルーメンを通る第2ガイドワイヤを繰り出すための第2開口を備え、第2開口は第1開口より長軸方向において基端側に設けられる、医療用カテーテルである。
【0013】
第1の発明では、医療用カテーテル(10:実施例において相当する部分を示す参照符号。以下、同様。)は、カテーテル本体(12)を含み、このカテーテル本体には、並行して長軸方向に延びる第1ルーメン(20)および第2ルーメン(22)が形成される。曲成部(14)は、第1ルーメンの先端部に先細りの形状に形成され、先端に行くほどカテーテル本体の軸から遠ざかるように曲成される。第1ガイドワイヤを第1ルーメン(20)内に挿入するために、第1ルーメンの先端に第1開口(16)が形成される。ワイヤポート(18)がカテーテル本体の長軸方向の一部に形成され、第1開口から第1ルーメンを通った第1ガイドワイヤがそこから繰り出される。さらに、第2ルーメンの先端に形成されて前記第2ルーメンを通る第2ガイドワイヤを繰り出すための第2開口(30)を備え、第2開口は第1開口より長軸方向において基端側に設けられる。
【0014】
たとえば、医療用カテーテルを患者の下肢動脈血管内に挿入する際には、すでに閉塞性病変を通過した第1ガイドワイヤを体外で第1開口から第1ルーメンに挿入することで血管内に医療用カテーテルを進め、第2ルーメンの第2開口(30)を、血管中の石灰化病変部直上に位置させる。そして、第2ガイドワイヤをカテーテル本体の体外に出ている基端から第2ルーメン内に挿入して第2ガイドワイヤの先端が第2開口から出た状態にし、基端において第2ガイドワイヤを前後方向に繰り返し押すことで、第2ガイドワイヤの先端が石灰化病変部内に押し当たり、血管の長軸方向に沿って石灰化病変部を砕き割を入れることができる。血管内でカテーテル本体の進め具合や回転具合を調整することによって、石灰化病変部に対する第2ガイドワイヤの先端の位置を適宜変えることができる。つまり、複数の異なる短軸方向の位置で第2ガイドワイヤ先端が石灰化病変部を砕くことになり、石灰化病変部に効率的に長軸方向に割を入れることができる。
【0015】
第1の発明によれば、先端の曲がったカテーテルを適時回転させながら硬いガイドワイヤを押すことによって、血管内に充満する石灰化病変を長軸方向に万遍なく割を入れることができるので、ピッキングテクニックを効果的に処置し得る医療用カテーテルが得られる。
【0016】
第2の発明は、第1の発明に従属し、第1開口と第2開口の長軸方向における距離は、対象の血管の直径の2倍以内の距離に設定される、医療用カテーテルである。
【0017】
第2の発明では、血管の蛇行とカテーテルの追従性を考慮して、第1開口と第2開口の長軸方向における距離を、対象の血管の直径の2倍であるたとえば20mm以下とした。
【0018】
第3の発明は、第1または第2の発明に従属し、第1開口と第2開口との間の長軸方向と直交する短軸方向の距離は、対象の血管の直径の2倍以内の距離に設定される、医療用カテーテルである。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、たとえば下肢動脈血管内に充満する石灰化病変を長軸方向に万遍なく割を入れることができるので、ピッキングテクニックを効果的に処置し得る医療用カテーテルが得られる。
【0020】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1はこの発明の一実施例のカテーテルを示す図解図である。
図2図2図1実施例のカテーテルを用いて血管内の石灰化病変部を砕き割を入れる様子を示す図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1を参照して、この実施例の医療用カテーテル(単に、「カテーテル」ということがある。)10は、血管に挿入可能な全体として細長い筒状の本体(カテーテルシャフト)12を含む。本体12は弾性的に撓み変形可能な樹脂チューブからなる。そのような樹脂材料としては、特に限定されるものではないが、人体に無害で耐蝕性を有することや適度な弾性および強度を有すること、加工が容易であること等を考慮して、たとえば、ウレタン樹脂やポリオレフィン、フッ素樹脂、ポリアミドなどが採用される。
【0023】
なお、本体12の長さや太さは、血管中の治療部位の位置などの条件を考慮して、適宜に設定される。たとえば、この実施例のカテーテル10が下肢動脈の石灰化病変部の破砕に用いられる場合、内径は1.0mm程度とされ、長さは500mm‐1500mm程度に設定される。ただし、混みあった図解を回避する目的で、このようなサイズに拘らず、図1では、本体12の特にその径が誇張して描かれていることを予め指摘しておく。
【0024】
本体12の先端は、図1に示すように、「J」字状に曲がる曲成部14として形成され、その曲成部14の先端は第1ルーメン20の第1開口16である。つまり、第1ルーメン20の先端部は、先端に行くほどカテーテル本体12の軸から(つまり、径方向すなわち短軸方向に)遠ざかるように曲成された先細りの曲成部14として形成される。そして、本体12の長軸方向(短軸方向と直交する方向)の一部が切り欠かれてワイヤポート18が形成される。このワイヤポート18より先端側において、本体12の内部には並行する2つのルーメン(デュアルルーメン)20および22が形成される。
【0025】
曲成部14が形成された第1ルーメン20の中には、実施例では0.018インチ(≒0.457mm)径までのガイドワイヤ24を第1開口16から挿入可能である。そして、第1開口16から挿入され第1ルーメン20を通るガイドワイヤ24はガイドワイヤポート18から出される。
【0026】
第2ルーメン22の中には、実施例では0.025インチ(≒0.635mm)径以下のガイドワイヤ26を本体12のハブ28基端から挿入可能である。基端から挿入され第2ルーメン22を通るガイドワイヤ26は、第2開口30から繰り出される。すなわち、術者によって本体12を進退あるいは回転させながら、ハブ28基端外にあるガイドワイヤ26を押すことで第2開口30から先にでているガイドワイヤ26が進む。
【0027】
ここで、第1開口16と第2開口30との短軸方向の距離Aは、実施例の医療用カテーテル10が対象とする大腿膝窩下腿動脈においては、その蛇行しうる血管径が一般的に10mm以下であることを考慮して、血管径の2倍に相当する20mm以下とした。
【0028】
さらに、第2開口30の長軸方向の位置は、第1開口16に比べて基端側にある。実施例では、1本目のガイドワイヤ(図2ではガイドワイヤ24)を通した状態でカテーテルを血管内で回転させることができ、かつ2本目のガイドワイヤ(図2ではガイドワイヤ26)を押し込む際の伝達力を維持するために、第1開口16と第2開口30との長軸方向における距離Bは、血管の蛇行とカテーテルの追従性を考慮して、血管径の2倍である20mm以下とした。
【0029】
図2は、図1実施例のカテーテル10を用いて、下肢動脈100内の石灰化病変部102を破砕するときのカテーテル10の先端部の状態を示す。患者の下肢の適宜の位置から下肢動脈100中にカテーテル10を挿入する。このとき、図2(A)に示すように、体外でガイドワイヤ24を第1開口16から第1ルーメン20に挿入し、カテーテル10を血管100内に進めかつ回転させることで、第2ルーメン22の先端である第2開口30が石灰化病変部102の直上に位置するようにする。
【0030】
次に、図2(B)に示すように、ガイドワイヤ26を本体12の体外にある基端から第2ルーメン22内に挿入してガイドワイヤ26の先端が第2開口30から出た状態にし、基端外のガイドワイヤ26を前後方向に繰り返し押すことで、ガイドワイヤ26の先端が石灰化病変部102を押し砕き、血管100の長軸方向に沿って石灰化病変部102に割を入れることになる。血管100の中でカテーテル10の進め具合や回転具合を調整することによって、石灰化病変部102に対するガイドワイヤ26の先端の位置を適宜変えることができる。したがって、蛇行している血管100の走行に沿いながら複数の異なる短軸方向の位置でガイドワイヤ26先端が石灰化病変部102を砕くことになり、そのため、効率的に石灰化病変部102に長軸方向に割を入れることができる。
【0031】
なお、この実施例で示した具体的数値は単なる例示であり、限定されるべきでなく、実際の製品の仕様に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0032】
10 …カテーテル
12 …本体
14 …曲成部
16 …第1開口
18 …ワイヤポート
20 …第1ルーメン
22 …第2ルーメン
24、26 …ガイドワイヤ
28 …ハブ
30 …第2開口
図1
図2