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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034600
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】鍛造部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21J 5/00 20060101AFI20220225BHJP
   B24C 1/00 20060101ALI20220225BHJP
   B24C 1/08 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
B21J5/00 Z
B24C1/00 Z
B24C1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020138357
(22)【出願日】2020-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】593166462
【氏名又は名称】サムテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143085
【弁理士】
【氏名又は名称】藤飯 章弘
(72)【発明者】
【氏名】阪口 直樹
(72)【発明者】
【氏名】高木 志文
(72)【発明者】
【氏名】西脇 秀晃
(72)【発明者】
【氏名】北浦 智大
【テーマコード(参考)】
4E087
【Fターム(参考)】
4E087AA05
4E087CA02
4E087DB03
4E087DB18
4E087DB19
4E087DB22
4E087DB24
4E087EC11
(57)【要約】
【課題】鍛造部材の表面傷やささくれ等を確実に除去することができる鍛造部材の製造方法を提供する。
【解決手段】鍛造部材の製造方法であって、長尺状の金属部材を所定長さに切断して切断材を得る切断工程と、前記切断材を鍛造して所定形状の鍛造部材を形成する鍛造工程と、前記鍛造部材の表面処理工程とを備えており、前記表面処理工程は、前記鍛造部材の表面に残存する表面傷を除去するショットブラスト工程と、前記ショットブラスト工程によって表面傷が除去された前記鍛造部材の表面を微粒子衝突処理法によって平滑化する平滑化工程とを備える鍛造部材の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍛造部材の製造方法であって、
長尺状の金属部材を所定長さに切断して切断材を得る切断工程と、
前記切断材を鍛造して所定形状の鍛造部材を形成する鍛造工程と、
前記鍛造部材の表面処理工程とを備えており、
前記表面処理工程は、前記鍛造部材の表面に残存する表面傷を除去するショットブラスト工程と、前記ショットブラスト工程によって表面傷が除去された前記鍛造部材の表面を微粒子衝突処理法によって平滑化する平滑化工程とを備える鍛造部材の製造方法。
【請求項2】
鍛造部材の製造方法であって、
長尺状の金属部材を所定長さに切断して切断材を得る切断工程と、
前記切断材を鍛造して所定形状の鍛造部材を形成する鍛造工程と、
前記鍛造部材の表面処理工程と、
前記表面処理工程を施した前記鍛造部材の表面に塗膜を形成する塗膜形成工程とを備えており、
前記表面処理工程は、前記鍛造部材の表面におけるスケールを除去するショットブラスト工程と、前記ショットブラスト工程によって前記鍛造部材の表面に形成されるささくれを微粒子衝突処理法によって除去するささくれ除去工程とを備える鍛造部材の製造方法。
【請求項3】
鍛造部材の製造方法であって、
長尺状の金属部材を所定長さに切断して切断材を得る切断工程と、
前記切断材を鍛造して所定形状の鍛造部材を形成する鍛造工程と、
前記鍛造部材の表面処理工程とを備えており、
前記表面処理工程は、前記鍛造部材の表面におけるスケールを除去するショットブラスト工程と、前記ショットブラスト工程によってスケールが除去された前記鍛造部材の表面に対して微粒子衝突処理法を行うことにより前記鍛造部材の表面に残存する表面傷を目立たせる表面傷明確化工程とを備える鍛造部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍛造部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属材料の塑性を利用し、該金属材料を塑性流動させて押出し成形することで所定形状の機械部品等の鍛造部品を成形する鍛造方法が知られている。
【0003】
鍛造によって成形される鍛造部品には、鍛造過程や、鍛造後の熱処理過程等において表面傷や肌荒れ、スケールが生じるため、ショットブラストによってこれら表面傷やスケール等を除去する表面処理が一般的に行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ショットブラストによる表面処理を行った場合、ショットブラストの際に使用されるショット材の鍛造部材表面への衝突によって、大きな表面傷が除去されるものの、ショット材の衝突によって鍛造部材の表面が変形する(ささくれ状に変形する)ことにより小さな表面傷が隠れてしまい、鍛造部材の疲労破壊の起点となり得る表面傷を確実に除去することが困難であるという問題があった。また、鍛造部材の表面にささくれが生じることにより、鍛造部材の表面に塗装を行った場合に塗膜の付着性が悪いという問題もあり、鍛造部材の表面傷やささくれ等を確実に除去することが求められている。
【0005】
本発明は上記要望に鑑みなされたものであり、鍛造部材の表面傷やささくれ等を確実に除去することができる鍛造部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、鍛造部材の製造方法であって、長尺状の金属部材を所定長さに切断して切断材を得る切断工程と、前記切断材を鍛造して所定形状の鍛造部材を形成する鍛造工程と、前記鍛造部材の表面処理工程とを備えており、前記表面処理工程は、前記鍛造部材の表面に残存する表面傷を除去するショットブラスト工程と、前記ショットブラスト工程によって表面傷が除去された前記鍛造部材の表面を微粒子衝突処理法によって平滑化する平滑化工程とを備える鍛造部材の製造方法により達成される。
【0007】
また、本発明の前記目的は、鍛造部材の製造方法であって、長尺状の金属部材を所定長さに切断して切断材を得る切断工程と、前記切断材を鍛造して所定形状の鍛造部材を形成する鍛造工程と、前記鍛造部材の表面処理工程と、前記表面処理工程を施した前記鍛造部材の表面に塗膜を形成する塗膜形成工程とを備えており、前記表面処理工程は、前記鍛造部材の表面におけるスケールを除去するショットブラスト工程と、前記ショットブラスト工程によって前記鍛造部材の表面に形成されるささくれを微粒子衝突処理法によって除去するささくれ除去工程とを備える鍛造部材の製造方法により達成される。
【0008】
また、本発明の前記目的は、鍛造部材の製造方法であって、長尺状の金属部材を所定長さに切断して切断材を得る切断工程と、前記切断材を鍛造して所定形状の鍛造部材を形成する鍛造工程と、前記鍛造部材の表面処理工程とを備えており、前記表面処理工程は、前記鍛造部材の表面におけるスケールを除去するショットブラスト工程と、前記ショットブラスト工程によってスケールが除去された前記鍛造部材の表面に対して微粒子衝突処理法を行うことにより前記鍛造部材の表面に残存する表面傷を目立たせる表面傷明確化工程とを備える鍛造部材の製造方法により達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、鍛造部材の表面傷やささくれ等を確実に除去することができる鍛造部材の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る鍛造部材の製造方法の第1実施形態に関するブロック図である。
図2】本発明に係る鍛造部材の製造方法が有する切断工程において形成される切断材を説明するための説明図である。
図3】本発明に係る鍛造部材の製造方法の第2実施形態に関するブロック図である。
図4】本発明に係る鍛造部材の製造方法の第3実施形態に関するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の第1実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態にかかる鍛造部材の製造方法に関するブロック図である。
【0012】
この図1のブロック図に示すように、第1実施形態にかかる鍛造部材の製造方法は、切断工程S1と、鍛造工程S2と、表面処理工程S3とを備えている。
【0013】
切断工程S1は、長尺状の金属部材を所定長さに切断し、鍛造される素材としての切断材を得る工程であり、例えば、加熱装置により加熱された長尺状の金属部材を、固定刃及び移動刃を用いて所定長さに切断する工程を例示することができる。なお、切断工程S1においては、必ずしも加熱した長尺状の金属部材を切断する場合に限定されず、加熱を行わず常温状態の金属部材を切断する場合もある。
【0014】
鍛造工程S2は、例えば、相対的に近接離間方向に移動可能に対向配設される上型としてのパンチ及び下型としてのダイスを備える鍛造装置を用い、パンチとダイスとを近接させることにより、パンチ及びダイス間にセットされる切断材(切断工程S1において切断された切断材)を、これらパンチ及びダイスにより構成される成形空間内に圧縮して所定形状に鍛造成形し、鍛造部材を形成する工程である。なお、鍛造工程S2において用いられる鍛造装置としては、一般的に用いられる装置を用いられ、通常、下型であるダイスは、固定状態で配置される固定型に構成され、上型であるパンチは、上下移動可能に配置される可動型に構成されている。パンチ及びダイスは、それぞれの圧縮面が対向した状態で配設され、パンチが下降することによりダイスとともに成形空間を構成し、該成形空間内にて、ダイス上にセットされる切断材が圧縮され所定形状に成形される。
【0015】
ここで、鍛造工程S2において鍛造に供される切断材は、切断工程S1において固定刃及び移動刃によって切断されるが、図2に示すように、固定刃1から突出する金属部材2に対して、移動刃3が固定刃1の表面に沿って一方向に移動することにより金属部材2が切断されるため、金属部材2に対して切断応力がはたらき、切断面21の端部(周縁部)には切断跡としてバリ22が残る。このように、切断面21にバリ22を有する切断材4に対して鍛造を行う場合、切断工程S1において発生したバリ22が、パンチ及びダイスによる圧縮過程で素材の表面近傍あるいは素材内部に巻き込まれ、成形後にバリ跡としての表面傷が鍛造部材に残ることになる。
【0016】
表面処理工程S3は、上記鍛造工程S2を経て得られる鍛造部材の表面に残存する上記のような表面傷を除去し、鍛造部材の表面を平滑化するための工程であり、本第1実施形態においては、鍛造部材の表面に残存する表面傷を除去するショットブラスト工程S31と、該ショットブラスト工程S31によって表面傷が除去された鍛造部材の表面を微粒子衝突処理法によって平滑化する平滑化工程S32とを備えている。
【0017】
ショットブラスト工程S31は、例えばショットブラスト装置を用いて、上述のように鍛造部材の表面に残存する表面傷を除去する工程であり、具体的には、ショットブラスト装置が有する射出ノズルから鍛造部材の表面に向けてショット材21を噴射することにより行われる。このショットブラスト工程S31においては、平均粒径0.3mm~3.0mm,好ましくは1.0mm~2.0mmのショット材を,噴射速度30m/s~80m/s、好ましくは50m/s~75m/sで噴射して鍛造部材の表面に衝突させ,ショット材の衝突により,鍛造部材の表面傷を除去する。なお、ショット材の材質としては、鋼、鋳鉄などの従来から用いられている金属を例示することができる。また、ショット材は、そのビッカース硬さが、例えば、400HV~500HVのものを好適に使用することができる。また、ショットブラスト工程S31を経た鍛造部材の表面粗さが、Ra=20.0以下、より好ましくはRa=5.0以下の範囲となるように、ショット材の平均粒径、噴射速度、噴射時間等が設定されることが好ましい。
【0018】
本実施形態においては、表面処理工程S3が、上記ショットブラスト工程S31の他に、該ショットブラスト工程S31に引き続いて実施される微粒子衝突処理法による平滑化工程S32を備えている。つまり、ショットブラスト工程S31によって表面傷が除去された鍛造部材の表面を微粒子衝突処理法によって平滑化する工程を備えている。微粒子衝突処理法は、上述のショットブラスト工程S31において用いられるショット材よりも格段に微細な粒子を噴射することにより行われる処理法であり、例えば、重力式または重力吸引式あるいは直圧式投射装置により微粒子を圧縮空気で加速し、高速度で鍛造部材の表面に衝突させる方法である。平滑化工程S32において、微粒子衝突処理法に用いられる微粒子の平均粒径は、0.01mm~0.3mm,好ましくは0.05mm~0.25mmである。また、噴射速度は、150m/s~200m/s、好ましくは150m/s~175m/sに設定することが好ましい。また、平滑化工程S32を経た鍛造部材の表面粗さが、Ra=3.0以下、より好ましくはRa=1.0以下の範囲となるように、微粒子衝突処理法において用いられる微粒子の平均粒径、噴射速度、噴射時間等が設定されることが好ましい。なお、微粒子衝突処理法に用いられる微粒子の材質としては、高速度鋼、セラミックなどの従来から用いられているものを例示することができる。また、微粒子衝突処理法に用いられる微粒子は、そのビッカース硬さが、例えば、700HV~1000HVのものを好適に使用することができる。
【0019】
ここで、上記表面処理工程S3は、鍛造工程S2の後工程として実施されればよく、例えば、鍛造工程S2と表面処理工程S3との間に、鍛造部材の熱処理工程や、鍛造部材の運搬工程(車両による運搬や、コンベアによる運搬等)が介在していてもよい。また、表面処理工程S3の後工程として、例えば、鍛造部材に対して行われる切削加工工程や研磨加工工程を備えるように構成してもよく、鍛造部材の表面に塗膜を形成する塗膜形成工程S4を備えるように構成してもよい。また、表面処理工程S3における除去対象である表面傷は、上述のように、切断材の端部に形成される切断跡であるバリに起因する傷の他、鍛造工程S2において形成され得るうち傷やまくれ傷を含むものであり、また、上記熱処理工程において形成され得る肌荒れや運搬工程において形成され得る傷も含む。
【0020】
このような第1実施形態に係る発明は、ショットブラスト工程S31と、微粒子衝突処理法を用いた平滑化工程S32とを組み合わせた表面処理工程S3を備えているため、ショットブラスト工程S31によって効果的に鍛造部材の表面傷を除去しつつ、ショットブラスト工程S31によって除去しきれなかった微細な表面傷を平滑化工程S32によって除去しつつ、鍛造部材の表面を平滑化することができる。これにより、鍛造部材の損傷の起点となり得る傷を確実になくし、鍛造部材の機械的強度を高め、その長寿命化を図ることが可能となる。
【0021】
次に、本発明の第2実施形態について添付図面を参照して説明する。図3は、本発明の第2実施形態にかかる鍛造部材の製造方法に関するブロック図である。
【0022】
この図3のブロック図に示すように、第2実施形態にかかる鍛造部材の製造方法は、切断工程S1と、鍛造工程S2と、表面処理工程S3と、塗膜形成工程S4を備えている。
【0023】
第2実施形態に係る切断工程S1及び鍛造工程S2は、上述の第1実施形態における内容と同一であるため、詳細な説明を省略する。
【0024】
表面処理工程S3は、鍛造部材の表面におけるスケールを除去するショットブラスト工程S31と、ショットブラスト工程S31によって鍛造部材の表面に形成されるささくれを微粒子衝突処理法によって除去するささくれ除去工程S33とを備えている。
【0025】
表面処理工程S3の後工程として実施される塗膜形成工程S4は、例えば、従来から用いられている塗装装置等を用いて鍛造部材の表面に塗膜を形成する工程である。ここで、塗膜形成工程S4において形成される塗膜は、鍛造部材の表面を彩色する所謂塗料によって形成される膜の他、防錆用の潤滑剤によって形成される膜等を含む概念である。
【0026】
ここで、第2実施形態におけるショットブラスト工程S31は、例えばショットブラスト装置を用いて、鍛造部材の表面におけるスケールを除去する工程であり、具体的には、ショットブラスト装置が有する射出ノズルから鍛造部材の表面に向けてショット材を噴射することにより行われる。このショットブラスト工程S31においては、平均粒径0.3mm~3.0mm,好ましくは1.0mm~2.0mmのショット材を,噴射速度30m/s~80m/s、好ましくは50m/s~75m/sで噴射して鍛造部材の表面に衝突させ,ショット材の衝突により,鍛造部材の表面におけるスケールを除去する。なお、ショット材の材質としては、鋼、鋳鉄などの従来から用いられている金属を例示することができる。また、ショット材は、そのビッカース硬さが、例えば、400HV~500HVのものを好適に使用することができる。また、ショットブラスト工程S31を経た鍛造部材の表面粗さが、Ra=20.0以下、より好ましくはRa=5.0以下の範囲となるように、ショット材の平均粒径、噴射速度、噴射時間等が設定されることが好ましい。
【0027】
ショットブラスト工程S31において鍛造部材の表面におけるスケールを除去する場合、鍛造部材の表面に対するショット材の衝突によって、鍛造部材の表面に凹凸が形成され、これら凹凸の境界部分が、ささくれとなって鍛造部材の表面に残存する場合があるが、表面処理工程S3が、この鍛造部材の表面に形成されるささくれを微粒子衝突処理法によって除去するささくれ除去工程S33を備えることにより、鍛造部材の表面が、ショットブラスト工程S31実施後の表面と比べて平滑化される状態となる。これにより、表面処理工程S3の後工程として行われる塗膜形成工程S4において鍛造部材の表面に形成される塗膜の鍛造部材の表面に対する付着性が大幅に向上することとなる。この結果、鍛造部材に傷が形成されることや酸化してしまうことを効果的に抑制することが可能となり、鍛造部材の機械的強度を高め、その長寿命化を図ることが可能となる。
【0028】
なお、第2実施形態における表面処理工程S3が備えるささくれ除去工程S33で用いられる微粒子衝突処理法は、上述のショットブラスト工程S31において用いられるショット材よりも格段に微細な粒子を噴射することにより行われる処理法であり、例えば、重力式または重力吸引式あるいは直圧式投射装置により微粒子を圧縮空気で加速し、高速度で鍛造部材の表面に衝突させる方法である。ささくれ除去工程S33において、微粒子衝突処理法に用いられる微粒子の平均粒径は、0.01mm~0.3mm,好ましくは0.05mm~0.25mmである。また、噴射速度は、150m/s~200m/s、好ましくは150m/s~175m/sに設定することが好ましい。また、ささくれ除去工程S33を経た鍛造部材の表面粗さが、Ra=3.0以下、より好ましくはRa=1.0以下の範囲となるように、微粒子衝突処理法において用いられる微粒子の平均粒径、噴射速度、噴射時間等が設定されることが好ましい。なお、微粒子衝突処理法に用いられる微粒子の材質としては、高速度鋼、セラミックなどの従来から用いられているものを例示することができる。また、微粒子衝突処理法に用いられる微粒子は、そのビッカース硬さが、例えば、700HV~1000HVのものを好適に使用することができる。
【0029】
ここで、上述の第1実施形態と同様に、上記表面処理工程S3は、鍛造工程S2の後工程として実施されればよく、例えば、鍛造工程S2と表面処理工程S3との間に、鍛造部材の熱処理工程や、鍛造部材の運搬工程(車両による運搬や、コンベアによる運搬等)が介在していてもよい。また、塗膜形成工程S4は、表面処理工程S3の後工程として実施されればよく、例えば、表面処理工程S3と塗膜形成工程S4との間に、鍛造部材に対して行われる切削加工工程や研磨加工工程が介在してもよい。
【0030】
次に、本発明の第3実施形態について添付図面を参照して説明する。図4は、本発明の第3実施形態にかかる鍛造部材の製造方法に関するブロック図である。
【0031】
この図4のブロック図に示すように、第3実施形態にかかる鍛造部材の製造方法は、切断工程S1と、鍛造工程S2と、表面処理工程S3とを備えている。
【0032】
第3実施形態に係る切断工程S1及び鍛造工程S2は、上述の第1実施形態及び第2実施形態における内容と同一であるため、詳細な説明を省略する。
【0033】
表面処理工程S3は、鍛造部材の表面におけるスケールを除去するショットブラスト工程S31と、ショットブラスト工程S31によってスケールが除去された鍛造部材の表面に対して微粒子衝突処理法を行うことにより鍛造部材の表面に残存する表面傷を目立たせる表面傷明確化工程S34とを備えている。
【0034】
ここで、第3実施形態におけるショットブラスト工程S31は、例えばショットブラスト装置を用いて、鍛造部材の表面におけるスケールを除去する工程であり、具体的には、ショットブラスト装置が有する射出ノズルから鍛造部材の表面に向けてショット材を噴射することにより行われる。第3実施形態に係る表面処理工程S3は、鍛造部材の表面傷を目立たせて、後の検査工程において該表面傷を判別することを容易とすることを目的とするものであることから、第3実施形態におけるショットブラスト工程S31においては、平均粒径0.3mm~3.0mm,好ましくは1.0mm~2.0mmのショット材を,噴射速度30m/s~80m/s、好ましくは50m/s~75m/sで噴射して鍛造部材の表面に衝突させて鍛造部材の表面におけるスケールを除去し、表面傷がショット材の衝突によって潰れてしまわないようにする。なお、ショット材の材質としては、鋼、鋳鉄などの従来から用いられている金属を例示することができる。また、ショット材は、そのビッカース硬さが、例えば、400HV~500HVのものを好適に使用することができる。また、ショットブラスト工程S31を経た鍛造部材の表面粗さが、Ra=20.0以下、より好ましくはRa=5.0以下の範囲となるように、ショット材の平均粒径、噴射速度、噴射時間等が設定されることが好ましい。
【0035】
また、第3実施形態における表面処理工程S3が備える表面傷明確化工程S34で用いられる微粒子衝突処理法は、上述のショットブラスト工程S31において用いられるショット材よりも格段に微細な粒子を噴射することにより行われる処理法であり、例えば、重力式または重力吸引式あるいは直圧式投射装置により微粒子を圧縮空気で加速し、高速度で鍛造部材の表面に衝突させる方法である。ささくれ除去工程S33において、微粒子衝突処理法に用いられる微粒子の平均粒径は、0.01mm~0.3mm,好ましくは0.05mm~0.25mmである。また、噴射速度は、150m/s~200m/s、好ましくは150m/s~175m/sに設定することが好ましい。また、表面傷明確化工程S34を経た鍛造部材の表面粗さが、Ra=3.0以下、より好ましくはRa=2.2以下の範囲となるように、微粒子衝突処理法において用いられる微粒子の平均粒径、噴射速度、噴射時間等が設定されることが好ましい。なお、微粒子衝突処理法に用いられる微粒子の材質としては、高速度鋼、セラミックなどの従来から用いられているものを例示することができる。また、微粒子衝突処理法に用いられる微粒子は、そのビッカース硬さが、例えば、700HV~1000HVのものを好適に使用することができる。
【0036】
ここで、上記表面処理工程S3は、鍛造工程S2の後工程として実施されればよく、例えば、鍛造工程S2と表面処理工程S3との間に、鍛造部材の熱処理工程や、鍛造部材の運搬工程(車両による運搬や、コンベアによる運搬等)が介在していてもよい。また、表面処理工程S3の後工程として、例えば、鍛造部材に対して行われる切削加工工程や研磨加工工程を備えるように構成してもよく、鍛造部材の表面に塗膜を形成する塗膜形成工程S4を備えるように構成してもよい。また、表面処理工程S3において目立たたせる対象である表面傷は、上述のように、切断材の端部に形成される切断跡であるバリに起因する傷の他、鍛造工程S2において形成され得るうち傷やまくれ傷を含むものであり、また、上記熱処理工程や運搬工程において形成され得る傷も含む。
【0037】
このような第3実施形態に係る発明は、上述のようなショットブラスト工程S31と、微粒子衝突処理法を用いた表面傷明確化工程S34とを組み合わせた表面処理工程S3を備えているため、鍛造部材の表面に存在する表面傷が潰れてしまうことを効果的に抑制することが可能となる。これにより、表面処理工程S3の後工程として行われる検査工程において、鍛造部材の表面傷の有無をより一層確実に判別することができ、表面傷が確認された場合には、その除去を確実に行うことが可能となり鍛造部材の機械的強度を高め、その長寿命化を図ることが可能となる。なお、検査工程において行われる検査方法は、特に限定されず、蛍光探傷検査、浸透探傷検査、X線検査、超音波検査、磁粉検査、目視検査等種々の検査方法を挙げることができる。
【符号の説明】
【0038】
S1 切断工程
S2 鍛造工程
S3 表面処理工程
S31 ショットブラスト工程
S32 平滑化工程
S33 ささくれ除去工程
S34 表面傷明確化工程
S4 塗膜形成工程
図1
図2
図3
図4