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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034638
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】チェーン並びにチェーンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16G 13/06 20060101AFI20220225BHJP
   B21L 9/04 20060101ALI20220225BHJP
   B21D 28/14 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
F16G13/06 B
F16G13/06 A
B21L9/04
B21D28/14 B
B21D28/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020138428
(22)【出願日】2020-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】502210954
【氏名又は名称】加賀工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(72)【発明者】
【氏名】土黒 康範
【テーマコード(参考)】
4E048
【Fターム(参考)】
4E048FA09
(57)【要約】
【課題】カシメ止め機に間欠搬送して次々とこの間欠搬送方向と直交する対向位置の連結ピンのピン端部を押圧してカシメ止めし一対のアウターリンクプレートを連結するが、この押圧される孔縁に内部応力の蓄積が抑制され亀裂や脆性破壊などが生じにくいステンレス製のローラーチェーンを提供すること。
【解決手段】アウターリンクプレート5の連結ピン挿通用連結孔6の外側孔縁の複数か所に、ストレート孔により形成される直角角縁が面とられた形状のテーパ状面8を設け、このテーパ状面8は、アウターリンクプレート5の長手方向と直交する短手方向の対向二か所のカシメ止め位置に設けたチェーン。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のアウターリンクプレートの連結ピン挿通用連結孔に連結ピンが挿通配設されこのピン端部が前記連結ピン挿通用連結孔の外側でカシメ止めされて前記一対のアウターリンクプレートが連結されている構成であるとともに、前記一対のアウターリンクプレートの内側に重合配設されるインナーリンクプレートとが回動自在に連結されていて、前記一対のアウターリンクプレートが前記インナーリンクプレートを介して多数連結されている構成のチェーンであって、
前記アウターリンクプレートの前記連結ピン挿通用連結孔は、外側孔縁の複数か所に、ストレート孔により形成される直角角縁が面とられた形状のテーパ状面が設けられている構成とされ、この複数か所に設けられているテーパ状面は、少なくともチェーン長さ方向となる前記アウターリンクプレートの長手方向と直交する短手方向の対向二か所に設けられている構成とされて、カシメ止め機に対してチェーン長さ方向に間欠搬送されて少なくともこのカシメ止め機により、前記アウターリンクプレートの前記連結ピン用連結孔から外側に挿通突出されている前記連結ピンのピン端部が、この間欠搬送方向と直交する方向の対向二か所を押圧されて、前記テーパ状面形成位置でカシメ止めされている構成であることを特徴とするチェーン。
【請求項2】
一対のインナーリンクプレートと、この各インナーリンクプレートのブッシュ挿通用連結孔2にブッシュ端部が挿入連結されこのインナーリンクプレートが間隔をおいて対向連結されるブッシュと、前記各インナーリンクプレートの端部外側に重合配置される前記一対のアウターリンクプレートと、前記ブッシュ内に挿通配設され且つ前記アウターリンクプレートの前記連結ピン挿通用連結孔にピン端部が挿通配設されこのピン端部がこの連結ピン挿通用連結孔の外側でカシメ止めされて前記一対のアウターリンクプレートが連結される前記連結ピンとから構成されていて、
前記インナーリンクプレートと前記アウターリンクプレートとが前記ブッシュおよび前記連結ピンで交互に多数連結されている構成とされ、前記各ブッシュまたは前記ブッシュの外側に回動自在に被嵌されている各ローラーの外周面にスプロケットの各歯をかみ合せることで動力が伝達される構成とされているチェーンであって、
前記アウターリンクプレートの前記連結ピン挿通用連結孔の外側孔縁の複数か所に、ストレート孔により形成される直角角縁が面とられた形状の前記テーパ状面が設けられている構成とされていることを特徴とする請求項1記載のチェーン。
【請求項3】
前記アウターリンクプレートの前記連結ピン挿通用連結孔の外側孔縁の複数か所に設けられている前記テーパ状面は、穴あけ加工機で前記アウターリンクプレートに前記連結ピン挿通用連結孔が貫通形成される際に、片側孔縁に生じる破断面を用いて設けられている構成であることを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載のチェーン。
【請求項4】
前記テーパ状面は、前記穴あけ加工機のダイに設けられているパンチ受孔のこのパンチ受孔に挿入されるパンチに対するクリアランスの設定により、所定位置に前記破断面が形成されてこの破断面を用いて所定か所に設けられている構成であることを特徴とする請求項3記載のチェーン
【請求項5】
一対のアウターリンクプレートの連結ピン挿通用連結孔に連結ピンが挿通配設されこのピン端部が前記連結ピン挿通用連結孔の外側でカシメ止めされて前記一対のアウターリンクプレートが連結されている構成であるとともに、前記一対のアウターリンクプレートの内側に重合配設されるインナーリンクプレートとが回動自在に連結されていて、前記一対のアウターリンクプレートが前記インナーリンクプレートを介して多数連結されている構成のチェーンの製造方法であって、
前記アウターリンクプレートの前記連結ピン挿通用連結孔の外側孔縁の複数か所に、ストレート孔により形成される直角角縁が面とられた形状のテーパ状面を設け、この複数か所に設けるテーパ状面は、少なくともチェーン長さ方向となる前記アウターリンクプレートの長手方向と直交する短手方向の対向二か所に設け、カシメ止め機に対してチェーン長さ方向に間欠搬送して少なくともこのカシメ止め機により、前記アウターリンクプレートの前記連結ピン用連結孔から外側に挿通突出されている前記連結ピンのピン端部を、この間欠搬送方向と直交する方向の対向二か所を押圧して、前記テーパ状面形成位置でカシメ止めし一対の前記アウターリンクプレートを連結するとともに前記インナーリンクプレートを回動自在に連結することを特徴とするチェーンの製造方法。
【請求項6】
一対のインナーリンクプレートと、この各インナーリンクプレートのブッシュ挿通用連結孔にブッシュ端部が挿入連結されこのインナーリンクプレートが間隔をおいて対向連結されるブッシュと、前記各インナーリンクプレートの端部外側に重合配置される前記一対のアウターリンクプレートと、前記ブッシュ内に挿通配設され且つ前記アウターリンクプレートの連結ピン挿通用連結孔にピン端部が挿通配設されこのピン端部がこの連結ピン挿通用連結孔の外側でカシメ止めされて前記一対のアウターリンクプレートが連結される前記連結ピンとから構成されていて、
前記インナーリンクプレートと前記アウターリンクプレートとが前記ブッシュおよび前記連結ピンで交互に多数連結されている構成とされ、前記各ブッシュまたは前記ブッシュの外側に回動自在に被嵌されている各ローラーの外周面にスプロケットの各歯をかみ合せることで動力が伝達される構成とされているチェーンの製造方法であって、
前記アウターリンクプレートの前記連結ピン挿通用連結孔の外側孔縁の複数か所に、ストレート孔により形成される直角角縁が面とられた形状の前記テーパ状面を設けることを特徴とする請求項5記載のチェーンの製造方法。
【請求項7】
前記アウターリンクプレートの前記連結ピン挿通用連結孔の外側孔縁の複数か所に設ける前記テーパ状面は、穴あけ加工機で前記アウターリンクプレートに前記連結ピン挿通用連結孔を貫通形成する際に、片側孔縁に生じる破断面を用いて設けることを特徴とする請求項5,6のいずれか1項に記載のチェーンの製造方法。
【請求項8】
前記テーパ状面は、前記穴あけ加工機のダイに設けられているパンチ受孔のこのパンチ受孔に挿入されるパンチに対するクリアランスを調整設定し、この設定により所定位置に前記破断面を形成してこの破断面を用いて所定か所に設けることを特徴とする請求項7記載のチェーンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インナーリンクプレートの外側に一対のアウターリンクプレートを重合配設し、連結ピンでカシメ止めして連結するブッシュチェーンやローラーチェーンやリーフチェーンなどの金属製のチェーン並びにチェーンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、各ブッシュやこのブッシュの外側に遊嵌した各ローラーの外周面にスプロケットの各歯をかみ合せることで動力を伝達させるブッシュチェーンやローラーチェーンなどの金属製チェーンは、以下のような構成である。
【0003】
後述する本発明の実施例を示す図面に付した符号を付してローラーチェーンを例に説明すると、一対のインナーリンクプレート1と、この各インナーリンクプレート1のブッシュ挿通用連結孔2にブッシュ端部を圧入連結してこのインナーリンクプレート1を間隔をおいて対向連結した中空円管状のブッシュ3と、前記インナーリンクプレート1間の前記ブッシュ3の外側に回動自在に被嵌した中空円管状のローラー4と、前記各インナーリンクプレート1の端部外側に重合配置した一対のアウターリンクプレート5と、前記ブッシュ3内に挿通配設し且つ前記各アウターリンクプレート5の連結ピン挿通用連結孔6にピン端部を挿通配設しこの外側にやや突出したピン端部をこの連結ピン挿通用連結孔6の外側でカシメ止めして前記アウターリンクプレート5を連結した連結ピン7とからなる構成で、前記インナーリンクプレート1と前記アウターリンクプレート5とを前記ブッシュ3および前記連結ピン7で交互に多数連結して長尺環状に構成し、たとえば、一対のスプロケットに掛け回して前記各ローラー4の外周面にこのスプロケットの各歯をかみ合せることで一方のスプロケットから他方のスプロケットに動力が伝達される構成である。
【0004】
すなわち、このようなチェーンは、前述したように、たとえばブッシュチェーンやローラーチェーンにおいてはブッシュ3で一対のインナーリンクプレート1を連結するとともに、連結ピン7で一対のアウターリンクプレート5を連結して、このそれぞれ端部で重合する一対のインナーリンクプレート1と一対のアウターリンクプレート2とをその端部で順次交互に多数連結して長尺状に構成し、たとえば、この端部同士も連結して長尺環状とした構成であるが、ブッシュ3内に挿通した連結ピン7のピン端部を外端でカシメ止めして一対のアウターリンクプレート5を連結するとともにこのアウターリンクプレート5の端部にインナーリンクプレート1を重合連結していく構成としている。
【0005】
したがって、このようなチェーンは、前記アウターリンクプレート5の連結ピン挿通用連結孔6にピン端部が挿通配設されこの外側にやや突出したピン端部をカシメ止めして前記一対のアウターリンクプレート5を連結するとともに端部同士を重合させるインナーリンクプレートを回動自在に連結する構成であるため、このカシメ止めにより前記連結ピン挿通用連結孔6の孔縁の直角角縁にカシメ止めによる強大な押圧力が加わることになるから、このカシメ止め側となる外側の孔縁の角縁部分に内部応力が生じて偏りや歪が生じこれが要因となり脆性破壊が生じるおそれがある。またそのためこの内部応力が許容できないほど蓄積されるおそれがある場合は、これを解決する対策を施さなければならないなどの問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題を見出しこれを解決したもので、たとえば、カシメ止め機に間欠搬送して次々とこの間欠搬送方向と直交する対向位置の連結ピンのピン端部を押圧してカシメ止めし一対のアウターリンクプレートを連結するとともにインナーリンクプレートを連結するに際し、この押圧される孔縁に内部応力の蓄積が抑制され亀裂や脆性破壊などが生じにくく耐久性に優れた金属製のチェーン並びにチェーンの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0008】
一対のアウターリンクプレート5の連結ピン挿通用連結孔6に連結ピン7が挿通配設されこのピン端部が前記連結ピン挿通用連結孔6の外側でカシメ止めされて前記一対のアウターリンクプレート5が連結されている構成であるとともに、前記一対のアウターリンクプレート5の内側に重合配設されるインナーリンクプレート1とが回動自在に連結されていて、前記一対のアウターリンクプレート5が前記インナーリンクプレート1を介して多数連結されている構成のチェーンであって、前記アウターリンクプレート5の前記連結ピン挿通用連結孔6は、外側孔縁の複数か所に、ストレート孔により形成される直角角縁が面とられた形状のテーパ状面8が設けられている構成とされ、この複数か所に設けられているテーパ状面8は、少なくともチェーン長さ方向となる前記アウターリンクプレート5の長手方向と直交する短手方向の対向二か所に設けられている構成とされて、カシメ止め機に対してチェーン長さ方向に間欠搬送されて少なくともこのカシメ止め機により、前記アウターリンクプレート5の前記連結ピン用連結孔6から外側に挿通突出されている前記連結ピン7のピン端部が、この間欠搬送方向と直交する方向の対向二か所を押圧されて、前記テーパ状面8形成位置でカシメ止めされている構成であることを特徴とするチェーンに係るものである。
【0009】
またに一対のインナーリンクプレート1と、この各インナーリンクプレート1のブッシュ挿通用連結孔2にブッシュ端部が挿入連結されこのインナーリンクプレート1が間隔をおいて対向連結されるブッシュ3と、前記各インナーリンクプレート1の端部外側に重合配置される前記一対のアウターリンクプレート5と、前記ブッシュ3内に挿通配設され且つ前記アウターリンクプレート5の前記連結ピン挿通用連結孔6にピン端部が挿通配設されこのピン端部がこの連結ピン挿通用連結孔6の外側でカシメ止めされて前記一対のアウターリンクプレート5が連結される前記連結ピン7とから構成されていて、前記インナーリンクプレート1と前記アウターリンクプレート5とが前記ブッシュ3および前記連結ピン7で交互に多数連結されている構成とされ、前記各ブッシュ3または前記ブッシュ3の外側に回動自在に被嵌されている各ローラー4の外周面にスプロケットの各歯をかみ合せることで動力が伝達される構成とされているチェーンであって、前記アウターリンクプレート5の前記連結ピン挿通用連結孔6の外側孔縁の複数か所に、ストレート孔により形成される直角角縁が面とられた形状の前記テーパ状面8が設けられている構成とされていることを特徴とする請求項1記載のチェーン係るものである。
【0010】
また前記アウターリンクプレート5の前記連結ピン挿通用連結孔6の外側孔縁の複数か所に設けられている前記テーパ状面8は、穴あけ加工機で前記アウターリンクプレート5に前記連結ピン挿通用連結孔6が貫通形成される際に、片側孔縁に生じる破断面を用いて設けられている構成であることを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載のチェーン係るものである。
【0011】
また前記テーパ状面8は、前記穴あけ加工機のダイ9に設けられているパンチ受孔10のこのパンチ受孔10に挿入されるパンチ11に対するクリアランスの設定により、所定位置に前記破断面が形成されてこの破断面を用いて所定か所に設けられている構成であることを特徴とする請求項3記載のチェーンに係るものである。
【0012】
また一対のアウターリンクプレート5の連結ピン挿通用連結孔6に連結ピン7が挿通配設されこのピン端部が前記連結ピン挿通用連結孔6の外側でカシメ止めされて前記一対のアウターリンクプレート5が連結されている構成であるとともに、前記一対のアウターリンクプレート5の内側に重合配設されるインナーリンクプレート1とが回動自在に連結されていて、前記一対のアウターリンクプレート5が前記インナーリンクプレート1を介して多数連結されている構成のチェーンの製造方法であって、前記アウターリンクプレート5の前記連結ピン挿通用連結孔6の外側孔縁の複数か所に、ストレート孔により形成される直角角縁が面とられた形状のテーパ状面8を設け、この複数か所に設けるテーパ状面8は、少なくともチェーン長さ方向となる前記アウターリンクプレート5の長手方向と直交する短手方向の対向二か所に設け、カシメ止め機に対してチェーン長さ方向に間欠搬送して少なくともこのカシメ止め機により、前記アウターリンクプレート5の前記連結ピン用連結孔6から外側に挿通突出されている前記連結ピン7のピン端部を、この間欠搬送方向と直交する方向の対向二か所を押圧して、前記テーパ状面8形成位置でカシメ止めし一対の前記アウターリンクプレート5を連結するとともに前記インナーリンクプレート1を回動自在に連結することを特徴とするチェーンの製造方法に係るものである。
【0013】
また一対のインナーリンクプレート1と、この各インナーリンクプレート1のブッシュ挿通用連結孔2にブッシュ端部が挿入連結されこのインナーリンクプレート1が間隔をおいて対向連結されるブッシュ3と、前記各インナーリンクプレート1の端部外側に重合配置される前記一対のアウターリンクプレート5と、前記ブッシュ3内に挿通配設され且つ前記アウターリンクプレート5の連結ピン挿通用連結孔6にピン端部が挿通配設されこのピン端部がこの連結ピン挿通用連結孔6の外側でカシメ止めされて前記一対のアウターリンクプレート5が連結される前記連結ピン7とから構成されていて、前記インナーリンクプレート1と前記アウターリンクプレート5とが前記ブッシュ3および前記連結ピン7で交互に多数連結されている構成とされ、前記各ブッシュ3または前記ブッシュ3の外側に回動自在に被嵌されている各ローラー4の外周面にスプロケットの各歯をかみ合せることで動力が伝達される構成とされているチェーンの製造方法であって、前記アウターリンクプレート5の前記連結ピン挿通用連結孔6の外側孔縁の複数か所に、ストレート孔により形成される直角角縁が面とられた形状の前記テーパ状面8を設けることを特徴とする請求項5記載のチェーンの製造方法に係るものである。
【0014】
また前記アウターリンクプレート5の前記連結ピン挿通用連結孔6の外側孔縁の複数か所に設ける前記テーパ状面8は、穴あけ加工機で前記アウターリンクプレート5に前記連結ピン挿通用連結孔6を貫通形成する際に、片側孔縁に生じる破断面を用いて設けることを特徴とする請求項5,6のいずれか1項に記載のチェーンの製造方法に係るものである。
【0015】
前記テーパ状面8は、前記穴あけ加工機のダイ9に設けられているパンチ受孔10のこのパンチ受孔10に挿入されるパンチ11に対するクリアランスを調整設定し、この設定により所定位置に前記破断面を形成してこの破断面を用いて所定か所に設けることを特徴とする請求項7記載のチェーンの製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上述のように構成したから、たとえば、カシメ止め機に間欠搬送して次々とこの間欠搬送方向と直交する対向位置の連結ピンのピン端部を押圧してカシメ止めし一対のアウターリンクプレートを連結するとともにインナーリンクプレートを連結するに際し、この押圧される孔縁に内部応力の蓄積が抑制され亀裂や脆性破壊などが生じにくく耐久性に優れた金属製のチェーン並びにチェーンの製造方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1の説明斜視図である。
図2】実施例1の説明正面図である。
図3】実施例1の説明正断面図である。
図4】実施例1のカシメ止め機によるカシメ止め時の要部の説明正面図である。
図5】実施例1の穴あけ加工機による穴あけ加工前の説明側断面図である。
図6】実施例1の穴あけ加工機による穴あけ加工時の説明側断面図である。
図7】実施例1のアウターリンクプレートの説明平面図である。
図8】実施例1の穴あけ加工機のダイのパンチ受孔の寸法設定を示す説明平面図である。
図9】実施例2のリーフチェーンの説明正面図である。
図10】実施例2のリーフチェーンの説明平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の最適な実施形態を図面に基づいて本発明の作用を示し簡単に説明する。
【0019】
アウターリンクプレート5の連結ピン挿通用連結孔6に挿通配設されこの外側にやや突出したピン端部を、カシメ止めして前記一対のアウターリンクプレート5を連結するとともにこの内側のインナーリンクプレート1を回動自在に重合連結する。
【0020】
たとえば、カシメ止め機に間欠搬送して次々とこの間欠搬送方向と直交する対向位置の連結ピン7のピン端部を押圧してカシメ止めし一対のアウターリンクプレート5を連結するとともにインナーリンクプレート1を重合連結する。
【0021】
この際、このカシメ止めにより前記連結ピン挿通用連結孔6の孔縁に強大な押圧力が加わることになるが、この押圧される位置の孔縁には角縁が面とられた形状のテーパ状面8が設けられているため、単にストレート孔に形成されていて孔縁の直角角縁に強力な押圧力が加わる従来構成に比して内部応力の蓄積が抑制され亀裂や脆性破壊などが生じにくくなり耐久性に優れたチェーンとなる。
【0022】
またたとえば、前述したようにカシメ止め機に間欠搬送して次々とカシメ止めして行く場合、たとえば下面の断面がへ字状の押型12で押圧してこの搬送方向と直交する方向の対向二か所をカシメ止めする二点カシメを採用することで、間欠搬送の搬送精度が高くなくても不良なく効率良くカシメ止めできることとなる。すなわち、全周をカシメ止めすることは厄介であるし、四点カシメなども搬送精度が要求されるため、効率が悪く量産性に劣るおそれがあるが、搬送方向と直交する方向の対向二か所をカシメ止めする二点カシメとすることで、製造効率が向上することとなる。
【0023】
したがって、強力な押圧力が加わる位置は、カシメ止め方向、たとえば前述したようにこの搬送方向と直交する対向二か所であることから、連結ピン挿通用連結孔6の孔縁のこの所定の対向二か所には直角な角縁を設けずテーパ状面8に形成しておくことで、カシメ止めはこのテーパ状面8への押圧となり内部応力の蓄積が抑制され亀裂や脆性破壊などが生じにくくなる。
【実施例0024】
本発明の具体的な実施例1について図面に基づいて説明する。
【0025】
チェーンには、ブッシュチェーンや各ブッシュにローラーを遊嵌したローラーチェーンやブッシュやローラーを有さず外側のプレート(アウターリンクプレート5)間に複数枚のプレート(インナーリンクプレート1)を回動自在に連結したリーフチェーンなど様々なタイプのものがあるが、本実施例はステンレス製のローラーチェーンに発明を適用したもので、一対のインナーリンクプレート1と、この各インナーリンクプレート1のブッシュ挿通用連結孔2にブッシュ端部を圧入連結してこのインナーリンクプレート1を間隔をおいて対向連結した中空円管状のブッシュ3と、前記インナーリンクプレート1間の前記ブッシュ3の外側に回動自在に被嵌した中空円管状のローラー4と、前記各インナーリンクプレート1の端部外側に重合配置した一対のアウターリンクプレート5と、前記ブッシュ3内に挿通配設し且つ前記各アウターリンクプレート5の連結ピン挿通用連結孔6にピン端部を挿通配設しこの外側にやや突出したピン端部をこの連結ピン挿通用連結孔6の外側でカシメ止めして前記アウターリンクプレート5を連結した連結ピン7とからなる構成で、前記インナーリンクプレート1と前記アウターリンクプレート5とを前記ブッシュ3および前記連結ピン7で交互に多数連結して長尺環状に構成し、たとえば、一対のスプロケットに掛け回して前記各ローラー4の外周面にこのスプロケットの各歯をかみ合せることで一方のスプロケットから他方のスプロケットに動力が伝達される構成としている。
【0026】
すなわち、ブッシュ3で一対のインナーリンクプレート1を連結するとともに、連結ピン7で一対のアウターリンクプレート5を連結し、この一対のインナーリンクプレート1と一対のアウターリンクプレート2とを順次交互にこのブッシュ3と連結ピン7で端部同士を重合連結して多数連結することで長尺状に構成し、たとえば、端部同士も連結して長尺環状とした構成としている。
【0027】
すなわち、本実施例では、外側にローラー4を遊嵌したブッシュ3内に挿通した連結ピン7のピン端部をアウターリンクプレート5の外側からカシメ止めして一対のアウターリンクプレート5を連結するとともにこのアウターリンクプレート5の端部にインナーリンクプレート1の端部を重合連結していく構成としている。
【0028】
たとえば、本実施例では、カシメ止め機に間欠搬送して次々とカシメ止めして行く場合、この搬送方向と直交する方向の対向二か所を押圧してカシメ止めする二点カシメを採用することで、間欠搬送の搬送精度が高くなくても不良なくカシメ止めでき製造効率を上げることができる。すなわち、全周をカシメ止めすることは厄介であるし、四点カシメなども搬送精度が要求されるため、効率が悪く量産性に劣るおそれがあるため、本実施例では、搬送方向と直交する方向を対向方向とする二点カシメを採用している。
【0029】
したがって、強力な押圧力が加わる位置は、この搬送方向と直交する対向二か所であることから、連結ピン挿通用連結孔6の孔縁のこの所定の対向二か所には直角な角縁を設けずテーパ状面8に形成している。
【0030】
したがって、この二点カシメ止めはこのテーパ状面8への押圧となり内部応力の蓄積が抑制され亀裂や脆性破壊などが生じにくくなる。
【0031】
言い換えると、この複数か所に設けられているテーパ状面8は、チェーン長さ方向となる前記アウターリンクプレート5の長手方向と直交する短手方向の対向二か所に設けられている構成とし、カシメ止め機に対してチェーン長さ方向に間欠搬送されて少なくともこのカシメ止め機により、前記アウターリンクプレート5の前記連結ピン用連結孔6から外側に挿通突出されている前記連結ピン7のピン端部が、この間欠搬送方向と直交する方向の対向二か所が押圧されて二点カシメされるが、テーパ状面8形成位置でカシメ止めされる構成であるため、直角角縁が強力に押圧される従来構成に比してこの孔縁に内部応力が生じにくく、耐久性に優れたチェーンとなる。
【0032】
また本実施例では、前記アウターリンクプレート5の前記連結ピン挿通用連結孔6の外側孔縁の二か所に設けられている前記テーパ状面8は、穴あけ加工機で前記アウターリンクプレート5に前記連結ピン挿通用連結孔6を貫通形成した際に、片側孔縁(パンチ11が抜け出る口の孔縁)に生じるテーパ状面に形成される破断面を用いた構成としている。
【0033】
すなわち、穴あけ加工機のダイ9のパンチ受孔10のパンチ11に対するクリアランスによりダイ9上のアウターリンクプレート5の下側の孔縁にテーパ状面となる破断面が形成されてしまうことに着眼し、これを積極的に利用することとし、このクリアランスを調整設定してこの破断面の形状が所望するテーパ状面となるようにしている。
【0034】
ステンレスチェーンの場合は耐食性に優れるが、硬度が高いため前述のように内部応力による脆性破壊のおそれがあり、カシメ止めの位置に内部応力が発生し蓄積するおそれがあることを見出し、この孔縁の直角角縁をテーパ状面8に形成した構成としている。
【0035】
また、一方、このテーパ状面8を孔形成時に生じる破断面を用いて形成しているが、この破断面は隙間腐食の要因となるためパンチの摩耗によるクリアランスの増大により大きくは生じないようにしていたが、本発明のステンレス製チェーンの場合は、あえてカシメ止めにより大きな押圧力が加わる孔縁にはあえて所望の大きさの破断面を生じさせてこれをテーパ状面8とし、機械加工を要さずして所定のカシメ止め位置にテーパ状面8を設けた構成としている。
【0036】
さらに説明すると、本実施例では、前記穴あけ加工機のダイ9に設けられているパンチ受孔10のこのパンチ受孔10に挿入されるパンチ11に対するクリアランスの設定により、前述した二点カシメ止め位置に所定大きさのテーパ状面8となる前記破断面が形成されるようにしている。
【0037】
すなわち、穴あけ加工機のダイ9のパンチ受孔10のパンチ11に対するクリアランスによりダイ9上のアウターリンクプレート5の下側の孔縁にテーパ状面8となる破断面が形成されてしまうがこれを積極的に利用する発想だけでなく、このクリアランスの調整設定により所定か所にのみ所望の破断面を形成することができることも見出し、孔縁の所定か所にこのクリアランスの大小の設定により破断面によるテーパ状面8を所定か所に形成した構成としている。
【0038】
さらに具体的に説明すると、パンチ受孔10に対してパンチ11が摩耗してクリアランスが大きくなると、破断面が顕著になることに着眼しこれを用いたもので、パンチ受孔10の径を、アウターリンクプレート5の長手方向の孔径bより短手方向の孔径aをたとえば1~2%大きくなるようにして、たとえばおよそこのような寸法となるような楕円状のパンチ受孔10として、クリアランスが方向により異なるように設定することで、この下側孔口の短手方向の対向二か所に孔縁の直角角縁が面とられた形状の破断面をあえて形成し、このアウターリンクプレート5を上下逆にしてこの破断面が形成された側を上側の孔口とし、これに貫通させた連結ピン7の突出上端をカシメ止め機で二点カシメし、このカシメ止め位置に前記テーパ状面8である破断面が位置するように構成としている。
【実施例0039】
図面に示すように、ステンレス製のブッシュチェーンやローラーチェーンに限らずリーフチェーンの外側のプレート(アウターリンクプレート5)のカシメ止め構造に本発明を適用してもよい。
【0040】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0041】
1 インナーリンクプレート
2 ブッシュ挿通用連結孔
3 ブッシュ
4 ローラー
5 アウターリンクプレート
6 連結ピン挿通用連結孔
7 連結ピン
8 テーパ状面
9 ダイ
10 パンチ受孔
11 パンチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10