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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034657
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01D 69/00 20060101AFI20220225BHJP
【FI】
A01D69/00 302C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020138463
(22)【出願日】2020-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 生吾
(74)【代理人】
【識別番号】100166659
【弁理士】
【氏名又は名称】楠 和也
(72)【発明者】
【氏名】石田 健之
【テーマコード(参考)】
2B076
【Fターム(参考)】
2B076AA03
2B076EA01
2B076EB01
2B076EB03
2B076EC04
2B076ED01
2B076ED21
(57)【要約】
【課題】収穫作業中に負荷が大きくなったことをより専用のセンサを用いることなく検出して前記走行機体の車速を自動制御することで、より低コスト且つ簡易な構成で安定した収穫作業を実行できるコンバインを提供することを課題とする。
【解決手段】走行機体と、エンジンと、前記走行機体の前方側に設けられて圃場の穀稈の刈取作業を行う刈取部と、前記刈取部によって刈取られた刈取穀稈の脱穀処理と選別処理とを行う脱穀装置と、前記脱穀装置によって脱穀処理された穀粒を貯留するグレンタンクと、走行変速を行う走行変速装置を変速操作する操作手段と、単位時間当たりに収穫される穀粒の量である収穫流量を検出する収量センサと、制御部とを備え、前記制御部は、前記収量センサによって検出される収穫流量が、予め設定された目標収量の範囲内に収まるように前記走行機体の車速を制御する車速制御が実行可能に構成された。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体と、
前記走行機体に搭載されたエンジンと、
前記走行機体の前方側に設けられて圃場の穀稈の刈取作業を行う刈取部と、
前記刈取部によって刈取られた刈取穀稈の脱穀処理と選別処理とを行う脱穀装置と、
前記脱穀装置によって脱穀処理された穀粒を貯留するグレンタンクと、
走行変速を行う走行変速装置を変速操作する操作手段と、
単位時間当たりに収穫される穀粒の量である収穫流量を検出する収量センサと、
制御部とを備え、
前記制御部は、前記収量センサによって検出される収穫流量が、予め設定された目標収量の範囲内に収まるように前記走行機体の車速を制御する車速制御が実行可能に構成された
コンバイン。
【請求項2】
前記目標収量を設定操作することができる設定手段を設けた
請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記走行機体の車速を検出する車速センサを設け、
前記制御部は、車速が予め設定された所定車速以上であることが検出された場合に、前記車速制御が実行されるように構成された
請求項1又は2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記脱穀装置により脱穀・選別処理された穀粒を前記グレンタンクの上部側に向けて上方搬送し、上方搬送された穀粒を回転駆動する跳出体によって前記グレンタンク内に跳ね出す搬送装置を備え、
前記収量センサは、前記跳出体によって所定の周期で前記グレンタンクに向けて跳ね出された穀粒と衝突する位置に設けられた荷重センサであり、
前記制御部は、前記荷重センサによって検出される荷重の出力周期に異常が検出された場合には、前記走行機体を減速制御するように構成された
請求項1乃至3の何れかに記載のコンバイン。
【請求項5】
作業者への報知を実行する報知手段を設け、
前記脱穀装置は、開度を調整することにより脱穀処理された処理物を選別する選別量を調整することができるチャフシーブを備えた揺動選別体を有し、
前記制御部は、前記チャフシーブの開度から予測される収穫流量と、前記収量センサによって検出された収穫流量との差が、予め設定された所定値以上となったことが検出された場合には、前記報知手段による報知を実行するように構成された
請求項1乃至4の何れかに記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収穫流量に応じて車速を制御する制御部を備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
走行機体と、前記走行機体に搭載されたエンジンと、前記走行機体の前方側に設けられて圃場の穀稈の刈取作業を行う刈取部と、前記刈取部によって刈取られた刈取穀稈の脱穀処理と選別処理とを行う脱穀装置と、前記脱穀装置によって脱穀処理された穀粒を貯留するグレンタンクと、前記エンジンから出力される動力を変速することにより走行変速を行う走行変速装置と、制御部とを備え、前記制御部は、前記エンジンに掛かる負荷が所定以上に高くなったことが検出された場合に、前記走行機体の車速を自動的に減速する車速制御が実行可能に構成された特許文献1に記載のコンバインが従来公知である。
【0003】
上記文献によれば、穀稈の刈取作業と脱穀作業とを実行している最中に前記脱穀装置に脱穀性能以上の刈取穀稈が供給されて過負荷が掛かった場合に、前記走行機体の車速を自動的に減速することができるため、より安定した収穫作業を行うことができるものであるが、前記脱穀装置に掛かる負荷を検出する専用のセンサを別途に設ける必要があるため、コストが高くなるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-108529号公報
【特許文献2】特開平10-115367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、収穫作業中に負荷が大きくなったことをより専用のセンサを用いることなく検出して前記走行機体の車速を自動制御することで、より低コスト且つ簡易な構成で安定した収穫作業を実行できるコンバインを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、走行機体と、前記走行機体に搭載されたエンジンと、前記走行機体の前方側に設けられて圃場の穀稈の刈取作業を行う刈取部と、前記刈取部によって刈取られた刈取穀稈の脱穀処理と選別処理とを行う脱穀装置と、前記脱穀装置によって脱穀処理された穀粒を貯留するグレンタンクと、走行変速を行う走行変速装置を変速操作する操作手段と、単位時間当たりに収穫される穀粒の量である収穫流量を検出する収量センサと、制御部とを備え、前記制御部は、前記収量センサによって検出される収穫流量が、予め設定された目標収量の範囲内に収まるように前記走行機体の車速を制御する車速制御が実行可能に構成されたことを特徴としている。
【0007】
第2に、前記目標収量を設定操作することができる設定手段を設けたことを特徴としている。
【0008】
第3に、前記走行機体の車速を検出する車速センサを設け、前記制御部は、車速が予め設定された所定車速以上であることが検出された場合に、前記車速制御が実行されるように構成されたことを特徴としている。
【0009】
第4に、前記脱穀装置により脱穀・選別処理された穀粒を前記グレンタンクの上部側に向けて上方搬送し、上方搬送された穀粒を回転駆動する跳出体によって前記グレンタンク内に跳ね出す搬送装置を備え、前記収量センサは、前記跳出体によって所定の周期で前記グレンタンクに向けて跳ね出された穀粒と衝突する位置に設けられた荷重センサであり、前記制御部は、前記荷重センサによって検出される荷重の出力周期に異常が検出された場合には、前記走行機体を減速制御するように構成されたことを特徴としている。
【0010】
第5に、作業者への報知を実行する報知手段を設け、前記脱穀装置は、開度を調整することにより脱穀処理された処理物を選別する選別量を調整することができるチャフシーブを備えた揺動選別体を有し、前記制御部は、前記チャフシーブの開度から予測される収穫流量と、前記収量センサによって検出された収穫流量との差が、予め設定された所定値以上となったことが検出された場合には、前記報知手段による報知を実行するように構成されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
前記制御部は、前記収量センサを用いて前記車速制御を実行するように構成したことにより、前記脱穀装置に脱穀作業の負荷を検出するセンサを別途に設けることなく、前記収穫流量が適切な範囲に維持されるように前記走行機体の車速を自動制御することができるため、低コスト且つ簡易な構成でより安定した収穫作業を行うことが可能となる。
【0012】
また、前記目標収量を設定操作することができる設定手段を設けたものによれば、収穫物や圃場の状態等の状況に応じて適切な目標収量を設定することができるため、前記エンジンの回転数を落とすことなくより安定した収穫作業を行うことができる。
【0013】
また、前記走行機体の車速を検出する車速センサを設け、前記制御部は、車速が予め設定された所定車速以上であることが検出された場合に、前記車速制御が実行されるように構成されたものによれば、収穫量の安定しない刈取作業の開始直後の状態では車速制御が実行されないため、意図しないタイミングで車速制御される事態を効率的に防止することができる。
【0014】
また、前記脱穀装置により脱穀・選別処理された穀粒を前記グレンタンクの上部側に向けて上方搬送し、上方搬送された穀粒を回転駆動する跳出体によって前記グレンタンク内に跳ね出す搬送装置を備え、前記収量センサは、前記跳出体によって所定の周期で前記グレンタンクに向けて跳ね出された穀粒と衝突する位置に設けられた荷重センサであり、前記制御部は、前記荷重センサによって検出される荷重の出力周期に異常が検出された場合には、前記走行機体を減速制御するように構成されたものによれば、通常設けられている前記荷重センサの検出結果を利用して前記車速制御を実行することができるため、穀粒の搬送詰まりを低コストな構成で効率的に防止することができる。
【0015】
なお、作業者への報知を実行する報知手段を設け、前記脱穀装置は、開度を調整することにより脱穀処理された処理物を選別する選別量を調整することができるチャフシーブを備えた揺動選別体を有し、前記制御部は、前記チャフシーブの開度から予測される収穫流量と、前記収量センサによって検出された収穫流量との差が、予め設定された所定値以上となったことが検出された場合には、前記報知手段による報知を実行するように構成されたものによれば、前記収量センサの検出結果を利用することにより脱穀装置や搬送装置等に掛かる負荷をより正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明を適用した自脱式コンバインの側面図である。
図2】本発明を適用した自脱式コンバインの平面図である。
図3】脱穀装置の内部構造を示した要部側面図である。
図4】搬送装置の配置を示した要部正断面図である。
図5】投入部を示した要部側断面図である。
図6】(A)は、投入部を示した平面図であり、(B)は、投入部内の構成を示した要部平面図である。
図7】(A)乃至(D)は、穀粒量検出装置を示した平面図、底面図、側面図、側断面図である
図8】制御部のブロック図である。
図9】タッチパネルの表示例を示した図である。
図10】車速制御を示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1及び図2は、本発明を適用した自脱式コンバインの側面図及び平面図であり、図3は、脱穀装置の内部構造を示した要部側面図であり、図4は、搬送装置の配置を示した要部正断面図である。図示するコンバインでは、走行部である左右一対のクローラ式走行装置1,1に支持された走行機体2と、該走行機体2の前方に昇降可能に連結された刈取部3とを備えている。
【0018】
前記刈取部3は、圃場の穀稈を引起す引起装置4と、引起された穀稈を掻込む掻込装置6と、前記刈取部3側に掻込まれた穀稈を刈取る刈刃とを有し、前記刈取部3側に掻込まれた圃場の穀稈を刈取る刈取作業を行うとともに、刈取った刈取穀稈を穀稈搬送装置7によって前記走行機体2側に向けて後方搬送する。
【0019】
該穀稈搬送装置7には、後方搬送されている刈取穀稈と当接することにより揺動するアームの揺動位置を検出することにより、刈取穀稈の搬送量を検出することができる穀稈センサ10が設けられている。
【0020】
前記走行機体2は、オペレータが操向操作を行う操縦部が設けられたキャビン11と、該キャビン11の後方斜め左側に配置されて前記刈取部3で刈取られた穀稈の脱穀作業が行われる脱穀装置12と、該脱穀装置12の後方に配置されて脱穀処理後の藁屑等が排出される後処理部13と、前記キャビン11の後方で且つ前記脱穀装置12の右側に配置されて処理物である穀粒が収容されるグレンタンク14と、該グレンタンク14内に収容された穀粒を機外に排出する排出オーガ16とが設けられている(図1及び図2等参照)。
【0021】
また、該走行機体2には、エンジンと、該エンジンから伝動された動力を変速して前記クローラ式走行装置1,1へと伝動する走行変速装置(図示しない)が設けられている。このとき、該走行変速装置は、HST等の無段階変速装置であっても、機械的にギヤ変速する装置であっても良い。
【0022】
該走行変速装置は、後述する制御部50を介して制御される変速用アクチュエータ(操作手段)20によって変速操作できるように構成されている。該操作手段は、直接的に前記走行変速装置を変速操作するものの他、オペレータによって操作される後述の主変速レバー19を操作することにより間接的に変速操作を制御する構成であっても良い。
【0023】
前記キャビン11は、オペレータが着座する座席17と、前記座席17の前方右側に配置されて走行機体2の操向操作や前記刈取部の昇降操作を行うことができるマルチステアリングレバー18と、前記座席17の左側に配置されて前後揺動操作によって前記走行機体の走行変速操作を行うことができる前記主変速レバー(変速手段)19と、作業走行を行う際の各種設定を操作する操作パネル21とが設けられている(図2等参照)。
【0024】
該キャビン11内の前記座席17の前方には、前記操作パネル21の他に、前記走行機体2の各種状況や、前記脱穀装置12の各種状況をモニタしたり、モードの切換操作や設定操作を行ったりすることができるタッチパネル式の液晶モニタ(設定手段)22が設けられている。なお、前記キャビン11内に設置される該液晶モニタ22とは別に、タッチパネル式の情報端末(図示しない)を設けた構成としても良い。
【0025】
上記液晶モニタ22や操作パネル21には、穀稈の刈取作業を行う際の車速を自動制御する車速自動モードへの切換操作を行う車速制御実行スイッチ23と、詳しくは後述する目標収量設定ボタン(目標収量設定ダイヤル、設定手段)24と、上限車速設定ボタン(上限車速設定ダイヤル)26とが設けられている。これにより、前記制御部50は、単位時間当たりに収穫された穀粒の量(収穫流量)に応じて、前記走行機体2の車速を自動的に制御する車速制御(車速自動モード)が実行可能に構成されている。車速制御の具体的な内容については後述する。
【0026】
前記脱穀装置12は、前記刈取部3側から搬送される刈取穀稈の脱穀作業を行う脱穀部31と、該脱穀部31の真下側に配置されて脱穀処理された処理物を穀粒と藁屑等の排塵物とに選別する選別部32と、前記刈取部3の穀稈搬送装置7から受け渡された刈取穀稈の株元側を挟持して後方搬送するフィードチェーン33と、脱穀処理された後の排藁を前記後処理部13側に後方搬送する排藁搬送装置34とを備えている。
【0027】
前記脱穀部31は、前記刈取穀稈の穂先側の脱穀処理が行われる扱室36と、該扱室36の前後方向に亘って延設された回転軸回りに回転駆動する扱胴37と、該扱胴37の下方に配置されて前記扱胴の形状に沿って正面視で中央が窪んだ円弧状に形成された受網38とを備えている。
【0028】
該構成により、前記扱室36に投入された刈取穀稈は、回転駆動される前記扱胴36によって扱降し処理(脱穀処理)されて排藁となり、該排藁は、前記扱室36の後方の前記後処理部13側から機外へと排出される。その一方で、前記扱胴37によって脱穀処理された処理物は、籾等の穀粒と藁屑等とを含んでおり、該処理物が前記受網38に受け止められるとともに、下方に漏下することで前記選別部32側に導入される。
【0029】
前記選別部32は、前記受網38から漏下した処理物を揺動選別する揺動選別体39と、該揺動選別体39の前方下側に配置されて後方上側に向けて選別風を送風する唐箕ファン41と、該唐箕ファン41の後方に配置されて選別後の排塵物を機外へ排出する二番選別ファン42と、該唐箕ファン41によって選別された1番物である穀粒を回収する1番ラセン43と、2番物を回収する2番ラセン44とを備え、脱穀処理された処理物の選別作業を行うように構成されている。
【0030】
上記揺動選別体39は、前側に配置されたグレンパン46と、該グレンパン46の後方及び後方下側に配置されたチャフシーブ47と、該チャフシーブ47の後方に配置されたストローラック48とから構成されている。また、該チャフシーブ47の下方側には、グレンシーブ45が設けられている(図3参照)。
【0031】
該チャフシーブ47は、前後方向に並べて配置されたフィン47aによって構成されており、該フィン47aの開度を調整することによりチャフシーブ47の下方に漏下する処理物の量を調整することができるように構成されている。前記フィン47aの開度は、駆動モータ等によって調整されるように構成しても良いし、手動によって調整可能に構成しても良い。
【0032】
また、該チャフシーブ47は、前記フィン47aの開度を検出するポテンショメータ等であるフィン開度検出センサ(フィン開度検出手段)49が設けられており、前記揺動選別体3の選別能力を調整・把握することができるように構成されている。
【0033】
さらに、該チャフシーブ47の上方側には、チャフシーブ47上の処理物量を検出する層厚センサ51が設けられている。該層厚センサ51は、例えば、チャフシーブ上の処理物の層厚に応じて上下揺動するように支持される揺動アームの揺動位置を検出するポテンショメータであって、該ポテンショメータにより検出された前記揺動アーム51Bの揺動位置によって、前記チャフシーブ47上の処理物量を検出するように構成されている(図3等参照)。
【0034】
これにより、前記制御部50は、前記フィン開度検出センサ49により検出される前記フィン47aの開度と、前記層厚センサ51により検出されるチャフシーブ47上の処理物の層厚とに基づいて、単位時間当たりの穀粒の収穫量を示す収穫流量(収量)を予測することができる。
【0035】
該構成によれば、前記揺動選別体39で揺動選別されて前記チャフシーブ47や前記グレンシーブ45から漏下した処理物は、唐箕ファン41によって起風された選別風の影響を殆ど受けずに選別部の前後方向中央(1番ラセン43)よりも若干前方側に落下することで前記1番ラセン43に回収される1番物に選別され、藁屑等は後方に飛ばされる。また、前記チャフシーブ47や前記グレンシーブ45から漏下されなかった穂切れ粒や枝梗付きの処理物は、前記1番ラセン43よりも後方の前記2番ラセン44によって2番物として回収され、藁屑等は上記選別風によって前記後処理部13側から機外へと飛ばされる。
【0036】
上記2番ラセン44によって回収された2番物は、前記2番ラセン44によって左右方向右側に搬送される。該2番ラセン44によって搬送された2番物は、該2番ラセン44の右端側から上方に延設された上下方向の還元搬送装置によって、前記揺動選別体上に還元搬送されるように構成されている。これにより、該2番物を再び選別作業することができるため、より精度の良い選別作業を行うことができる。
【0037】
上記1番ラセン43によって回収された1番物(穀粒)は、前記1番ラセン43によって左右方向右側に搬送される。該1番ラセン43によって搬送された1番物は、該1番ラセン43の右端側から上方に向けて延設された上下方向の穀粒搬送装置(搬送装置)52によって前記グレンタンク14の上部側に向けて上方搬送され、該穀粒搬送装置52の上端側に設けられた投入部53を介して、前記グレンタンク14内に投入されるように構成されている(図4等参照)。
【0038】
該穀粒搬送装置52は、前記1番ラセン43の下端側から上方に向けて延設された搬送軸54と、該搬送軸回りに形成された上方搬送ラセン56と、該上方搬送ラセン56を囲繞する上下方向に延設された搬送ケース57とから構成されており、該穀粒搬送装置52の上端側に前記投入部53が設けられている(図5等参照)。該投入部53の具体的な構成については、以下説明する。
【0039】
次に、図5乃至図7に基づき、前記投入部の構成について説明する。図5は、投入部を示した要部側断面図であり、図6(A)は、投入部を示した平面図であり、図6(B)は、投入部内の構成を示した要部平面図であり、図7(A)乃至(D)は、穀粒量検出装置を示した平面図、底面図、側面図、側断面図である。
【0040】
前記投入部53は、前記搬送軸54から上方に延設された同一軸心上の駆動軸61と、該駆動軸61を軸に回転駆動することにより前記穀粒搬送装置52によって上方搬送された穀粒を前記グレンタンク14内に投入する跳出体62と、該跳出体62を収容するとともに前記グレンタンク14側と接続される収容ケース63とを有し、該収容ケース63には、該跳出体62によって前記グレンタンク14内に投入される穀粒量(収穫流量)を飛ばされた穀粒による衝撃力によって検出する穀粒量検出装置64が設けられている(図5及び図6等参照)。
【0041】
上記収容ケース63は、その左右内(右)側は前記グレンタンク14上部側で前後方向に幅広な矩形状に形成された開口部と連接するように形成され、左右外(左)側は、その前部側が回転駆動する前記跳出体62の回転軌跡に沿って湾曲形成され、その後部側は前記グレンタンク14側の開口部後端に向かって平面視で後方左右内(右)側に向けて斜め方向に延設されている。これにより、該収容ケース63は平面視で半分にしたハート状に形成されている。
【0042】
上記跳出体62は、前記駆動軸61側に固着された基端側から水平方向に向けて延設される板状部材であって、前記駆動軸61に沿って上下方向に延設される立上部62aと、該立上部62aの下端側から前記駆動軸61の回転方向に向けて略水平に延設される延設部62bとが形成されるようにL字状に屈曲形成されている。
【0043】
また、該跳出体62の延設端側は、前記開口部から前記グレンタンク14側に若干突出する長さまで延設されている(図6(B)参照)。さらに、前記立上部62aの上端側には前記駆動軸に挿通されるワッシャ部材66が設けられている(図5参照)。
【0044】
該構成によれば、前記跳出体62が(平面視で反時計回りに)回転駆動されることにより、前記上方搬送ラセン56によって前記穀粒搬送装置52の上端(投入部)側まで上方搬送された穀粒を、掻集めるようにして回収するとともに、収容ケース63の後方に向けて跳出すことができる。該跳出体62により後方に向けて跳出された穀粒は、開口部を介して前記グレンタンク14内へと投入される。
【0045】
前記穀粒検出装置64は、前記跳出体62により跳出された穀粒と衝突する位置に配置されて、跳出された穀粒による衝突力を検出する検出するロードセンサ(収量センサ、荷重センサ、ロードセル)67と、該ロードセンサ67を前記収容ケース63の前後方向中途部の内周側面側に設置するための取付ケース68とから構成されている。
【0046】
前記取付ケース68は、前記穀粒検出装置64を前記収容ケース63側面の外面側に着脱可能に取付ける取付部71と、円板状に形成された前記ロードセンサ67(と該ロードセンサに連結される伝送部70と)が収容されるように凹設された支持部72とが形成されている。
【0047】
これに伴い、前記投入部53(収容ケース63)の側面側には、前記取付ケース68を着脱可能に取付固定するための固定孔63aと、収容ケース63内に前記ロードセンサ67を露出した状態で配置するための設置孔63bとが穿設されている(図5乃至7参照)。ちなみに、該設置孔63aは、前記収容ケース63後部側面のうち、後方左右内側に向けて直線状に延設された箇所に形成されている。
【0048】
上記取付部71は、前記固定孔63aに挿通される固定ボルト75Aと、該固定ボルト75Aにより前記取付ケース68を収容ケース68側に固定する固定ナット75Bとを用いることにより、前記取付ケース68を収容ケース63側に着脱可能な構成で取付固定することができる。
【0049】
上記支持部72は、その開放端側で前記ロードセンサ67の検出面が露出した状態で支持されるように構成されている。
【0050】
また、該支持部72には、前記ロードセンサ67(伝送部70)と前記走行機体2側の電源や制御部50等との間を接続する接続コード73を通すための切欠部74が形成されている。図示する例では、該切欠部74が前記支持部の左右(前後)の側方側と下方側の計3カ所に形成されており、前記接続コード73は、左右一方側の切欠部74を介して前記ロードセンサ67側に接続されている(図7参照)。該構成によれば、雨等が降った際に、雨水等が支持部72内に溜まることを防止することができる。
【0051】
該構成の穀粒検出装置64によれば、回転駆動する前記跳出体62によって所定間隔毎に前記グレンタンク14内に投入される穀粒を前記投入部53(収容ケース63)内に設置したロードセンサ67に衝突させ、衝突した穀粒による衝撃力を検出することにより、単位時間当たりの穀粒の収穫量(収穫流量)を検出することができる。
【0052】
具体的に説明すると、単位時間あたりの収穫量が増減すると、これに応じて前記跳出体62が1回転する間に前記投入部53側にまで上方搬送される穀粒の量も増減する。これにより、前記跳出体62によって前記グレンタンク(ロードセンサ)に向けて跳出す穀粒の量(重さ)が変わることにより、前記ロードセンサ67によって検出される衝突力(荷重)も増減する。これにより、前記ロードセンサ67によって、単位時間当たりの穀粒の収穫流量を検出することができる。
【0053】
ちなみに、前記穀粒搬送装置52は、前記搬送軸54回りに駆動する前記上方搬送ラセン56に代えて、1番ラセン43から穀粒を掬い取るバケット状の跳出体(図示しない)を上下方向の搬送コンベアに並べて複数設け、該跳出体を介して前記グレンタンク14内に穀粒を投入する構成のものであっても良い。
【0054】
次に、図8乃至10に基づき、前記車速制御について説明する。図8は、制御部のブロック図である。前記制御部50の入力側には、前記車速制御実行スイッチ23と、前記走行機体の車速を検出する車速センサ(車速検出手段)81と、前記穀稈センサ10と、前記エンジンの回転数等によって該エンジンに掛かる負荷を検出するエンジン負荷センサ82と、前記収量センサ(ロードセンサ)67と、前記フィン開度検出手段48と、前記目標収量設定操作具24と、前記上限車速設定操作具26と、前記層厚センサ51とが接続されている。
【0055】
その一方で、前記制御部50の出力側には、前記走行変速装置の変速制御を行う変速モータ等からなる車速変速用アクチュエータ20と、前記液晶モニタ22と、作業者への警報音を発生する警報ブザー(報知手段)83とが接続されている。
【0056】
前記制御部50は、前記車速制御実行スイッチ23により前記車速自動モードに切換えられた場合には、前記穀粒検出装置64(ロードセンサ67)によって検出された収穫流量が、前記目標収量設定操作具24によって設定された目標収量よりも少ない場合には、車速を段階的に増速し、検出された収穫流量が前記目標収量よりも多い場合には、車速を段階的に減速し、検出された収穫流量が前記目標収量の範囲内であった場合には、車速を維持し、車速の制御状態をオペレータに報知する前記車速制御が実行されるように構成されている。
【0057】
該構成によれば、単位時間当たりの穀粒の収穫量である収穫流量に応じて、前記車速を制御することにより、オペレータの熟練の経験がない場合であっても、作業走行中の車速を適切に保ち、エンジンに過負荷を防止したり、脱穀能力を無駄にすることを防止したりすることができる。
【0058】
このとき、前記制御部50は、前記上限車速操作具26によって、車速制御によって車速が自動制御されている際の車速上限を作業状況に応じて任意に設定操作できるように構成されている。また、該制御部50は、前記目標収量設定操作具24によって、前記目標収量の値を任意に設定変更可能に構成されている。
【0059】
さらに、前記制御部50は、車速自動モードに切換えられた場合に、前記穀粒検出装置64によって検出された収穫流量が、前記フィン開度検出手段49と、前記層厚センサ51とによって予測される収穫流量よりも大幅に少ない場合には、その旨をオペレータに報知するように構成されている。
【0060】
図9は、タッチパネルの表示例を示した図である。図示されるように、タッチパネル式の前記液晶モニタ22には、その左半部に車速や、燃料残量、エンジン負荷センサ82により検出されたエンジン負荷の状況、方向指示器、前照灯のON・OFF等の前記走行機体の情報を表示する走行情報表示部71が設けられ、その右半部に前記グレンタンク内の穀粒の貯留量や、前記チャフシーブ47を構成するフィン47aの開度や、選別風の強さ等の前記脱穀装置の作業状況等の情報を表示する脱穀情報表示部72が設けられている。特に、前記脱穀情報表示部72には、前記穀粒検出装置64によって検出された前記収穫流量を表示する収穫流量表示部72aと、該収穫流量に応じて車速を制御する前記車速制御による車速の制御状況を表示する車速制御表示部72bと、前記上限車速設定操作具26により設定された上限車速を表示する上限車速表示部72cとが設けられている(図9参照)。
【0061】
また、該タッチパネル式のモニタ(設定手段)には、タッチ操作による入力ボタンが配置されており、前記モニタに表示される情報を切換える表示切替ボタンの他(図9参照)、前記車速自動モードへの切替操作を行う車速制御実行ボタン23や、前記目標収量の設定操作を行う目標収量設定ボタン24や、前記車速上限の設定操作を行う上限車速設定ボタン26を配置して、各操作を実行可能に構成しても良い。
【0062】
図10は、車速制御を示したフロー図である。前記制御部は、車速制御のフロー図が開始されると、ステップS1に進む。ステップS1では、前記車速制御実行スイッチ23により、前記車速自動モードへに切換えられているか否かが確認され、前記車速自動モードに切換えられている(車速制御が実行中の)場合には、ステップS2に進む。なお、ステップS1において、前記車速自動モードに切換えられていなかった場合には、その後、リターンする。
【0063】
ステップS2では、前記車速検出手段によって検出された車速が、前記車速自動モードに切換えられた時点に検出された車速以上となっているか否か(又は、検出された車速が予め設定された所定速度以上であるか否か)が確認され、検出された車速(作業走行速度)が、車速制御の実行開始時の車速(予め設定された所定車速)以上であることが検出された場合には、ステップS3に進む。なお、ステップS2において、検出された車速が、車速制御の実行開始時の車速より遅かった場合には、その後、リターンする。
【0064】
該構成によれば、穀稈の刈取作業の開始直後や、回り刈り作業時等、意図して刈取作業時の車速を遅くしている場合には、車速制御が実行されないように構成されるため、安全性がより向上する。
【0065】
ステップS3では、前記穀稈センサ10によって前記刈取部3によって刈取られた刈取穀稈の搬送作業が行われているか否かが確認され、前記穀稈搬送装置7による刈取穀稈の後方搬送が検出された場合には、ステップS4に進む。なお、ステップS3において、前記穀稈搬送装置7による刈取穀稈の後方搬送が検出されなかった場合には、その後、リターンする。
【0066】
ステップS4では、前記エンジン負荷センサ82により、前記エンジンに予め設定した所定以上の過負荷が掛かっているか否かが確認され、刈取作業をする穀稈の量や、脱穀作業する処理物の量が多すぎる等の原因でエンジンに所定以上の過負荷が掛かっていることが検出されなかった場合には、ステップS5に進む。
【0067】
ステップS5では、前記ロードセンサ67によって検出される前記投入部から前記グレンタンク14内に投入される穀粒の投入周期と、予め記憶された投入周期とを比較し、ステップS6に進む。
【0068】
ステップS6では、前記ロードセンサ67によって検出される前記投入部から前記グレンタンク14内に投入される穀粒の投入周期が、予め記憶された投入周期と比較して正常の範囲内であるか否かが確認され、前記グレンタンク内に投入される穀粒の投入周期に異常が発見されなかった場合には、ステップS7に進む。
【0069】
ステップS7では、前記フィン開度検出手段49と、前記層厚センサ51とによって予測される収穫収量の予測値(予測収量)と比較して、前記ロードセンサ67によって検出された収穫流量が所定以上小さくなっていないか否かを確認し、ステップS8に進む。
【0070】
ステップS8では、前記ロードセンサ67によって検出された収穫流量が、前記予測収量と比較して所定以上小さくなっておらず、正常な範囲内であることが検出された場合には、ステップS9に進む。
【0071】
ステップS9では、前記目標収量設定操作具24によって設定された目標収量と、前記ロードセンサ67によって検出された収穫流量とを検出し、ステップS10に進む。
【0072】
ステップS10では、前記ロードセンサ67によって検出された収穫流量が、前記目標収量設定操作具24で設定された目標収量の適正な範囲内であることが検出された場合には、ステップS11に進む。
【0073】
ステップS11では、前記車速変速用アクチュエータ20により、前記車速(作業走行速度)を維持し、ステップS12に進む。ステップS12では、前記警報ブザー83や前記モニタ22等の報知手段を用いて車速維持状態であることを報知し、その後、リターンする。
【0074】
なお、ステップS10において、前記ロードセンサ67によって検出された収穫流量が、前記目標収量の適正な範囲よりも少ないことが検出された場合には、ステップS13に進む。
【0075】
ステップS13では、前記車速変速用アクチュエータ20により、前記車速を段階的に増速し、ステップS14に進む。ステップS14では、前記警報ブザー83や前記モニタ22等の報知手段を用いて車速増速状態であることを報知し、その後、リターンする。
【0076】
なお、ステップS10において、前記ロードセンサ67によって検出された収穫流量が、前記目標収量の適正な範囲よりも多いことが検出された場合には、ステップS15に進む。
【0077】
ステップS15では、前記車速変速用アクチュエータ20により、前記車速を段階的に減速し、ステップS16に進む。ステップS16では、前記警報ブザー83や前記モニタ22等の報知手段を用いて車速減速状態であることを報知し、その後、リターンする。
【0078】
なお、ステップS8において、前記ロードセンサ67によって検出された収穫流量が、前記予測収量と比較して所定以上に小さくなっていることが検出された場合には、ステップS17に進む。
【0079】
ステップS17では、脱穀、選別処理される処理物の多くが前記脱穀装置12内でロストしている状態であることを、前記警報ブザー83や前記モニタ22等の報知手段を用いて報知し、その後、リターンする。
【0080】
該構成によれば、オペレータは、前記脱穀装置12内の前記フィン開度検出手段49と前記層厚センサ51とに基づいて算出された予測収量と比較して、前記投入部53を介して前記グレンタンク14内に投入される穀粒量が大幅に少ない状態、言い換えると、前記脱穀装置12内で選別処理中の処理物が機外へ飛散する等の異常が発生していることをいち早く察知することができる。
【0081】
ちなみに、上記構成では、前記脱穀装置12内の前記フィン開度検出手段49と前記層厚センサ51とに基づいて前記予測収量を算出していたが、回収した2番物を前記揺動選別体39に還元搬送する還元搬送装置に、還元搬送される2番物の量を検出する2番物還元量センサ(図示しない)を設け、還元搬送される2番物の量と、前記ロードセンサ67により検出される収穫流量とを比較して、異常の有無を判断するように構成しても良い。
【0082】
なお、ステップS6において、前記グレンタンク内に投入される穀粒の投入周期に異常が発見された場合と、ステップS4において、エンジンに所定以上の過負荷が掛かっていることが検出された場合には、ステップS15に進む。
【0083】
ステップS15では、前記車速変速用アクチュエータ20により、前記車速を段階的に減速し、ステップS16に進む。ステップS16では、前記警報ブザー83や前記モニタ22等の報知手段を用いて車速減速状態であることを報知し、その後、リターンする。
【0084】
該構成によれば、脱穀負荷の状態をエンジン音や、脱穀作業時の音で判断することなく、前記エンジンの過負荷状態を検出して、車速を自動的に減速制御することができるため、オペレータの熟練度が高くない場合でも、前記脱穀装置12内や、穀粒搬送装置52内に穀粒が過剰に詰まることを効率的に防止することができる。
【符号の説明】
【0085】
2 走行機体
3 刈取部
12 脱穀装置
14 グレンタンク
20 車速変速用アクチュエータ(変速手段)
24 目標収量設定ボタン(設定手段)
39 揺動選別体
47 チャフシーブ
50 制御部
52 穀粒搬送装置(搬送装置)
62 跳出体
67 ロードセンサ(収量センサ、荷重センサ)
81 車速センサ
83 警報ブザー(報知手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10