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特開2022-34660移動する流体の移動エネルギーを回転エネルギーに変換する装置ならびに発電装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034660
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】移動する流体の移動エネルギーを回転エネルギーに変換する装置ならびに発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03D 3/04 20060101AFI20220225BHJP
   F03B 17/06 20060101ALI20220225BHJP
   F03B 3/14 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
F03D3/04 Z
F03B17/06
F03B3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020138466
(22)【出願日】2020-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】316018030
【氏名又は名称】久米 英廣
(72)【発明者】
【氏名】久米 英廣
【テーマコード(参考)】
3H072
3H074
3H178
【Fターム(参考)】
3H072AA12
3H072AA26
3H072BB31
3H072CC28
3H072CC44
3H072CC54
3H074AA12
3H074BB11
3H074CC10
3H178AA18
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB31
3H178CC02
(57)【要約】
【課題】移動する流体の移動方向が変動しても移動流体の移動エネルギーを高効率で安定的に回転エネルギーに変換することがが可能な、エネルギー変換装置を提供するとともに、環境による制限の少ない設置自由度の高い発電装置を実現する。
【解決手段】外部空間を移動する流体の移動経路中に設けられた回転可能な境界部で区画された内部空間を有する回転体において、移動する流体の内部空間への流入および外部空間への流出に応じて取り付け角度或いは形状が変化する流体の移動エネルギーを回転エネルギーに変換する変換部を境界部の境界面に配置することで、流体の移動方向あるいは移動速度が頻繁に変化する場合でも変換効率を安定させることが可能な流体エネルギー変換装置を実現する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間的に移動する流体の運動エネルギーを回転エネルギーに変換する装置において、
少なくとも前記流体の移動する経路に設けられた、前記流体の移動する方向の少なくとも一つの成分に対し略直交する回転軸と、 前記回転軸を中心に回転するとともに前記移動する流体が外部空間から流入して前記外部空間に流出する内部空間を形成する境界部と、
前記境界部において前記移動する流体が前記外部空間から前記内部空間に流入およびまたは内部空間から流出することによって少なくともその取り付け角度もしくはその形状が変化可能であるとともに、前記移動する流体の運動エネルギーを前記境界部の回転エネルギーに変換する少なくとも一つ以上のエネルギー変換部を有する回転体と、
前記エネルギー変換部が前記移動する流体が前記外部空間から前記内部空間に流入およびまたは内部空間から流出する際に、前記回転体に略同一の回転方向に回転エネルギーを発生させるよう前記角度もしくは前記形状が変化することに応じて、前記移動する流体の運動エネルギーが前記回転体の同一の回転方向への前記回転エネルギーに変換されることを特徴とする流体エネルギー変換装置。

【請求項2】
請求項1において、
前記境界部を前記回転軸と略平行に設けたことを特徴とする流体エネルギー変換装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記境界部を前記回転軸と略垂直に設けたことを特徴とする流体エネルギー変換装置。
【請求項4】
請求項1乃至3において
前記境界部に近接する前記外部空間に、前記境界部に対して前記移動する流体の少なくとも一部が略垂直に流入するよう前記移動する流体を導く流体導入部を設けたことを特徴とする流体エネルギー変換装置。
【請求項5】
請求項4において
前記移動する流体の前記導入部を、前記移動する流体の少なくとも一部が前記境界部に対して30度乃至150度の角度範囲で流入するように設けたことを特徴とする流体エネルギー変換装置。
【請求項6】
請求項1乃至5において
前記エネルギー変換部が前記移動する流体の前記外部空間からの流入若しくは前記内部空間からの流出に応じてその取り付け角度が変化するように回動するとともに、前記流入ないし流出が停止または減少する場合には回動の基準とする位置に向けて前記取り付け角度を復帰させるための復元力を付与する構成を有することを特徴とする流体エネルギー変換装置。
【請求項7】
請求項6において
前記エネルギー変換部の取り付け角度の変化量が前記移動する流体の前記外部空間からの流入量あるいは流入速度もしくは前記内部空間からの流出量あるいは流出速度に応じて変化することを特徴とする流体エネルギー変換装置。
【請求項8】
前記エネルギー変換部が前記移動する流体の前記外部空間からの流入若しくは前記内部空間からの流出に応じてその形状が変化するように構成されたことを特徴とする流体エネルギー変換装置。
【請求項9】
請求項8において
前記エネルギー変換部の形状の変化量が前記移動する流体の前記外部空間からの流入量あるいは流入速度もしくは前記内部空間からの流出量あるいは流出速度に応じて変化することを特徴とする流体エネルギー変換装置
【請求項10】
請求項6乃至9において
前記エネルギー変換部が前記移動する流体の前記外部空間からの流入若しくは前記内部空間からの流出に応じてその形状が変化するように撓むことが可能な弾性材料から成ることを特徴とする流体エネルギー変換装置。
【請求項11】
請求項6乃至10において
前記エネルギー変換部が前記移動する流体の前記外部空間からの流入若しくは前記内部空間からの流出に応じてその形状が変化するとともに、前記エネルギー変換部の前記外部空間と前記内部空間に対向するそれぞれの表面積が単独若しくは連動して変化する構造を有することを特徴とする流体エネルギー変換装置。
【請求項12】
請求項1乃至11において
前記移動する流体が気体であることを特徴とする流体エネルギー変換装置。
【請求項13】
請求項1乃至12において
前記移動する流体が液体であることを特徴とする流体エネルギー変換装置。
【請求項14】
請求項1乃至13の流体エネルギー変換装置によって
前記移動する流体エネルギーから変換した回転エネルギーを電気エネルギーに変換することを特徴とする発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動する方向が一定でない流体の移動エネルギーを回転力エネルギーに変換する装置、及び、その装置を用いた風力発電機および水力発電機等の発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、空気や水のような流体の移動する運動エネルギーを回転力エネルギーに変換し、例えば風力による揚水や発電、波力や潮力による機械動力源や発電、などに用いることが広く行われている。特に地球温暖化に対する社会的な対策も踏まえ、環境低負荷エネルギーを生成できる風力発電あるいは波力発電や潮力発電は、さまざまに研究開発がなされ実用化も進められている。
【0003】
また、風力発電や波力発電や潮力発電は風や波や潮流があればエネルギー源として用いることができるので、電力消費地に隣接して発電設備を分散して設けることにより低損失遠距離送電の為の高電圧送電に伴う設備を用いる必要がなくなり、設備コストの削減と送電ロスの抑制が可能となる。
【0004】
ここで、自然現象である風や潮流は一般的に移動する流体の移動速度や移動方向が常に一定とはならず、必要とする十分な流速が得られかつ流速変動が少ないことが求められる回転エネルギー変換装置においては、その設置場所に多くの制約が課されることになっている。
【0005】
この流体の移動速度や移動方向変動による制約に対応するために、例えば特開平6-137258、特開2015-21491、US2013/0309062A1において、異なる方向からの風に対しても回転力を発生可能な風力発電装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6-137258
【特許文献2】特開2015-21491
【特許文献3】US2013/0309062A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、特開平6-137258においては、外部導入翼と内部導入翼を用いて異なる方向からの風でも回転翼に対して常に同一方向の回転力が生じるように風を導く風力発電装置が開示されているが、導入され回転翼に当たった風がどの様に風力発電装置の外部に出てゆくかは示されておらず、例えば方向が一定しない風の流出などが発生して回転翼に当たることで回転力を相殺してしまう可能性が高い。
【0008】
また、特開2015-21491においては、複数の可動羽板と複数の固定羽板を組み合わせることにより異なる方向からの風でも常に同一方向の回転力が生じるようにした風力発電装置が開示されているが、羽板に当たる方向が限定されず高いエネルギー変換効率を得ることは困難である。
【0009】
また、US2013/0309062A1においては、中央空間を取り囲む回転エネルギー発生用ローターベーンを有する環状ローターアセンブリで、角度変えることが可能な内側ガイドアレイと外側ガイドベーンを用いて異なる方向で外部から流入した風が環状ローターアセンブリの中央空間内で同じ方向に循環するように案内する風力タービンが開示されているが、内側ガイドアレイと外側ガイドベーンの角度を流入方向が変化する風にタイミングよく適合させるには極めて複雑な構造が必要となる。
【0010】
このように従来開示された流体の移動エネルギーを回転エネルギに変換して利用する風力発電装置等では、流体の移動方向の変化に対して簡便に効率よく安定した同一方向への回転エネルギーを発生させることが困難な構造となっていることに対し、本発明は移動する流体の移動方向が変動しても高効率で安定した移動流体移動エネルギーの回転エネルギーへの変換が可能な、エネルギー変換機構ならびに発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、外部空間を移動する流体の移動経路中に設けられた回転可能な境界部で区画された内部空間を有する回転体において、移動する流体の内部空間への流入および外部空間への流出に応じて取り付け角度或いは形状が変化する流体の移動エネルギーを回転エネルギーに変換する変換部を境界部の境界面に配置することで、流体の移動方向あるいは移動速度が頻繁に変化する場合でも変換効率を安定させることが可能な流体エネルギー変換装置を実現する。また。回転エネルギー変換部への流体の流入が安定するように導入部を設けることで、安定したエネルギーの変換と効率の向上を図ることが出来る。さらに移動する流体の外部空間からの流入若しくは内部空間からの流出に応じて、境界部に設けられた回転エネルギー変換部の取り付け角度あるいはその形状が適宜変化することによってより安定かつ効率的にエネルギーを変換することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の流体エネルギー変換装置を用いることにより以下のような効果を得ることが出来る。
外部領域から流入する流体の移動方向が変化しても内部領域への流入および外部領域への流出において流体の移動エネルギーを常に同一方向への回転エネルギーに変換することが出来る。さらに、導入部を適宜配置することでエネルギー変換効率の向上と安定化が容易となる。さらに、移動流体の変化する移動方向や移動流量に対し受動的な構造で対応が可能であり能動的な部材を用いる必要が無いため安価な設備が実現される。さらに、移動流体の変化する移動方向や移動流量に対し装置形状に対する制約が少ないため装置の設置場所や設置間隔あるいは設置する方向に対して高い自由度が得られる。さらに、可動するエネルギー変換部を環境に直接的に露出させない構成が可能なため周辺の環境や景観の維持が容易であるとともに周辺の動植物に対する悪影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施例の斜視外形図である。
図2図1の流体エネルギー変換装置部分の一部断面斜視図である。
図3図1の部分断面図
図4図3のA-A’断面図である。
図5】第1実施形態に係るエネルギー変換部の斜視図
図6】第1実施形態のエネルギー変換部を用いた流体エネルギー変換装置の作用
図7図6で外部空間から内部空間に移動流体が流入する場合のエネルギー変換部の状態
図8図6で内部空間から外部空間に移動流体が流出する場合のエネルギー変換部の状態
図9】第2実施形態に係るエネルギー変換部の斜視図
図10】第2実施形態のエネルギー変換部を用いた流体エネルギー変換装置の作用
図11図10で外部空間から内部空間に移動流体が流入する場合のエネルギー変換部の状態
図12図10で内部空間から外部空間に移動流体が流出する場合のエネルギー変換部の状態
図13】第3実施形態のエネルギー変換部
図14】第4実施形態のエネルギー変換部
図15図14の部分拡大図
図16】第5実施形態のエネルギー変換部
図17】第5実施形態のエネルギー変換部を用いた流体エネルギー変換装置の作用
図18図17で外部空間から内部空間に移動流体が流入する場合のエネルギー変換部の状態
図19図17で内部空間から外部空間に移動流体が流出する場合のエネルギー変換部の状態
図20】本発明の第2実施例の一部断面斜視外形図である。
図21図20の一部を分離した断面斜視図
図22図20の第2実施例の断面図
図23】第2実施例で用いる第6実施形態に係るエネルギー変換部の斜視図
図24】第6実施形態のエネルギー変換部を用いた流体エネルギー変換装置の作用
図25図24で外部空間から内部空間に移動流体が流入する場合のエネルギー変換部の状態
図26図24で内部空間から外部空間に移動流体が流出する場合のエネルギー変換部の状態
図27】本発明に係る複数の発電装置を海岸に密接させて配置した実用化例
図28】本発明に係る発電装置を渓谷内に配置した実用化例
図29】本発明に係る発電装置を従来からある構造物の上に配置した実用化例
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、空間的に移動する流体の運動エネルギーを回転エネルギーに変換する装置において、少なくとも流体の移動する経路に設けられた、流体の移動する方向の少なくとも一つの成分に対し略直交する回転軸と、回転軸を中心に回転するとともに移動する流体が外部空間から流入して外部空間に流出する内部空間を形成する境界部と、境界部において移動する流体が外部空間から内部空間に流入および内部空間から流出することによって少なくともその取り付け角度もしくはその形状が変化可能であるとともに、移動する流体の運動エネルギーを境界部の回転エネルギーに変換する少なくとも一つ以上のエネルギー変換部を有する回転体と、エネルギー変換部が移動する流体が外部空間から内部空間に流入およびまたは内部空間から流出する際に、回転体に略同一の回転方向に回転エネルギーを発生させるよう角度もしくは形状が変化することに応じて、移動する流体の運動エネルギーが回転体の同一の回転方向への回転エネルギーに変換される流体エネルギー変換装置である。
【0015】
設定された境界部は回転軸と略平行もしくは略垂直に設けることができ、境界部に近接する外部空間に、境界部に対して移動する流体の少なくとも一部が略垂直に流入するよう移動する流体を導く流体導入部が設けられている。この導入部を、移動する流体の少なくとも一部が境界部に対して30度乃至150度の角度範囲で流入するように設けることもできる。
【0016】
エネルギー変換部は移動流体の外部空間からの流入若しくは内部空間からの流出に応じてその取り付け角度が変化するように回動し、流入ないし流出が停止または減少する場合には回動の基準とする位置に向けて取り付け角度を復帰させるための復元力を付与する構成を有し、エネルギー変換部の取り付け角度の変化量は移動流体の外部空間からの流入量あるいは流入速度もしくは内部空間からの流出量あるいは流出速度に応じて変化する。
【0017】
エネルギー変換部は動する流体の外部空間からの流入若しくは内部空間からの流出に応じてその形状が変化するように構成され、エネルギー変換部の形状の変化量が移動する流体の外部空間からの流入量あるいは流入速度もしくは内部空間からの流出量あるいは流出速度に応じて変化する。
【0018】
エネルギー変換部は移動する流体の外部空間からの流入若しくは内部空間からの流出に応じてその形状が変化するように撓むことが可能な弾性材料から成り、エネルギー変換部が移動する流体の外部空間からの流入若しくは内部空間からの流出に応じてその形状が変化するとともに、エネルギー変換部の外部空間と内部空間に対向するそれぞれの表面積が単独若しくは連動して変化する。
【0019】
移動する流体は気体若しくは液体であり、移動する流体エネルギーから変換した回転エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。
【実施例0020】
図1から図4を用いて本発明に係るエネルギー変換装置と発電装置の第1実施例の構成を説明する。
図1は本発明の第1実施例の斜視外形図であり、例えば空気の移動エネルギーすなわち風エネルギーを用いて回転エネルギーを発生しさらにその回転エネルギーによって電気エネルギーに変換する発電機を備えている。図1において、1は流体エネルギー変換装置、6は移動流体を導く流体導入部、7は6の要素である流体導入板、20は回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機である。
【0021】
図2図1の流体エネルギー変換装置1の一部を破断した一部断面斜視図であり、複数のエネルギー変換部5で構成され回転可能な境界部4によって外部空間2と隔てられた内部空間3が形成されている。
【0022】
図3図1の部分断面図であり、複数のエネルギー変換部5で構成され回転可能な境界部4は軸受9に保持された回転軸8によって回転可能に支持されている。内部空間3は複数のエネルギー変換部5からなる境界部4と上下の端板12によって円筒形の密閉空間を形成している。
ここで、本発明の第1実施例においては複数のエネルギー変換部5からなる境界部4は、回転軸8と略平行となるように配置されている。
【0023】
図4図3のA-A’断面図であり、移動流体19(本実施例においては風)が外部空間2から流体導入板7によって導かれエネルギー変換部5を通り内部空間3へと流入する。内部空間3に流入した移動流体は任意のエネルギー変換部5を通って外部空間2へと流出する。
【0024】
図5は第1の実施形態に係るエネルギー変換部5の斜視図であり、回動軸部10を軸として例えば翼形状の回動型流体受け部11が回動するように円筒状に配列され境界部4を形成している。回動型流体受け部11は例えばトーションバーや捩じりばね、鶴巻ばね或いは捻じれ弾性体の支持部によって移動流体による外力がない場合は基準とする状態に復帰するように復元力が与えられている。さらに、この復元力は移動流体の移動速度や流量に応じて線形若しくは非線形に発生するように設定されていてもよい。
【0025】
図6は第1実施形態のエネルギー変換部5を用いた第1実施例の流体エネルギー変換装置1の作用を説明する図であり、外部空間2から内部空間3に流入する移動流体19あるいは内部空間3から外部空間2に流出する移動流体によってエネルギー変換部5がそれぞれ回動して取り付け角度が変わる状態を示している。
【0026】
さらに取り付け角度が変更されたエネルギー変換部5によって移動流体19の移動エネルギーが回転エネルギーに変換される詳細を図7及び図8で説明する。
図7は外部空間2から内部空間3に移動流体19が流入する場合のエネルギー変換部5の状態であり、流入する移動流体19の流量及び流速は外部空間2側の表面のほうが内部空間側の表面(流体の移動に対して裏面)よりも大きくなる。このため、エネルギー変換部5には揚力FLが発生しその一部が回転軸8に対する回転力FRとなる。この時、移動流体19が任意のエネルギー変換部5の外部空間側表面に与える抗力は、隣接するエネルギー変換部5の内部空間側表面(流体の移動に対して裏面)に加わる逆方向の抗力によってその多くが相殺されるため、揚力による回転力すなわち回転エネルギーが発生することになる。
図8は内部空間3から外部空間2に移動流体19が流出する場合のエネルギー変換部5の状態であり、流出する移動流体19の流量及び流速は内部空間2側の表面のほうが外部空間側の表面(流体の移動に対して裏面)よりも大きくなる。このため、流入時と同様にエネルギー変換部5には揚力FLが発生しその一部が回転軸8に対する回転力FRとなる。
これらのことから移動流体の外部空間2から内部空間3への流入時および内部空間3から外部空間2への流出時において常に同じ回転方向、本実施例においては反時計回り方向に揚力FLに応じた回転力FRすなわち回転エネルギーを発生することになる。さらに本発明においては移動流体19の流入方向あるいは流出方向がどのように変化しても発生する回転エネルギーの方向は常に一定であり安定に動作する。
【0027】
図9は第2の実施形態に係るエネルギー変換部13の斜視図であり、移動流体19の流入あるいは流出によって変形する屈曲変形部15と一体に形成された取付固定部14によって円筒状に配列され境界部4を形成している。屈曲変形部15は例えば弾性を有するプラスチック、エラストマー、金属もしくはガラス繊維や炭素繊維を含有する複合材料などで形成され、取付固定部14は屈曲変形部15と同一材料で一体とするか異種材料に屈曲変形部15を固着することが出来る。屈曲変形部15はその弾性により移動流体による外力がない場合は基準とする状態に復帰するように復元力が与えられている。さらに、この復元力は移動流体の移動速度や流量に応じて線形若しくは非線形に発生するように設定されていてもよい。
【0028】
図10は第2実施形態のエネルギー変換部13を用いた第1実施例の流体エネルギー変換装置1の作用を説明する図であり、外部空間2から内部空間3に流入する移動流体19あるいは内部空間3から外部空間2に流出する移動流体によってエネルギー変換部13のそれぞれが変形して屈曲角度が変わる状態を示している。
【0029】
さらに変形して屈曲角度が変わったエネルギー変換部13によって移動流体19の移動エネルギーが回転エネルギーに変換される詳細を図11及び図12で説明する。
図11は外部空間2から内部空間3に移動流体19が流入する場合のエネルギー変換部13の状態であり、流入する移動流体19の流量及び流速は外部空間2側の表面のほうが内部空間側の表面(流体の移動に対して裏面)よりも大きくなる。このため、エネルギー変換部13には揚力FLが発生しその一部が回転軸8に対する回転力FRとなる。この時、移動流体19が任意のエネルギー変換部13の外部空間側表面に与える抗力は、隣接するエネルギー変換部13の内部空間側表面(流体の移動に対して裏面)に加わる逆方向の抗力によってその多くが相殺されるため、揚力による回転力すなわち回転エネルギーが発生することになる。
図12は内部空間3から外部空間2に移動流体19が流出する場合のエネルギー変換部13の状態であり、流出する移動流体19の流量及び流速は内部空間2側の表面のほうが外部空間側の表面(流体の移動に対して裏面)よりも大きくなる。このため、流入時と同様にエネルギー変換部13には揚力FLが発生しその一部が回転軸8に対する回転力FRとなる。
これらのことから移動流体の外部空間2から内部空間3への流入時および内部空間3から外部空間2への流出時において常に同じ回転方向、本実施例においては反時計回り方向に揚力に応じた回転力すなわち回転エネルギーを発生することになる。さらに本発明においては移動流体19の流入方向あるいは流出方向がどのように変化しても発生する回転エネルギーの方向は常に一定であり安定に動作する。
【0030】
図13は第3実施形態のエネルギー変換部16であり、第2実施形態のエネルギー変換部13と同様に移動流体19の流入あるいは流出によって変形する屈曲変形部15と一体に形成された取付固定部14によって形成されている。ここで屈曲変形部15は移動流体19の流入あるいは流出によって変形することに応じて移動流体19の流入側の面の表面積が反対側の面(裏面)の表面積よりも大きくなるように変形する。これは、例えば屈曲変形部15の中央に材質の異なる高剛性の弾性体を埋め込むことなどで容易に実現できる。表面側の表面積を裏面側の表面積より大きくすることによって回転エネルギーとなる揚力の発生を増加させることができる。
【0031】
図14は第4実施形態のエネルギー変換部17であり、第2実施形態のエネルギー変換部13と同様に移動流体19の流入あるいは流出によって変形する屈曲変形部15と一体に形成された取付固定部14によって形成されている。ここで屈曲変形部15は移動流体19の流入あるいは流出によって変形することに応じて移動流体19の流入側の面の表面積が反対側の面(裏面)の表面積よりも大きくなるように例えば図15に示すように屈曲により表面積が変化する例えば鳥類の羽根に類似した分割された表面がスライドする構造とすることが考えられる。この構成でも表面側の表面積を裏面側の表面積より大きくすることで回転エネルギーとなる揚力の発生を増加させることができる。
【0032】
図16は第5実施形態のエネルギー変換部18であり、第1実施形態のエネルギー変換部5と同様に移動流体19の流入あるいは流出によって回動軸部10を軸として回動型流体受け部11が回動する形成されている。さらにこの実施形態においては回動型流体受け部11の表面が移動流体19の移動エネルギーを抗力として受けるように変形する。
【0033】
図17は第5実施形態のエネルギー変換部5を用いた第1実施例の流体エネルギー変換装置1の作用を説明する図であり、外部空間2から内部空間3に流入する移動流体19あるいは内部空間3から外部空間2に流出する移動流体によってエネルギー変換部5がそれぞれ回動すると同時に変形する状態を示している。
【0034】
さらに取り付け角度が変更されるとともに表面が変形したエネルギー変換部18によって移動エネルギーが回転エネルギーに変換される詳細を図18及び図19で説明する。
図18は外部空間2から内部空間3に移動流体19が流入する場合のエネルギー変換部18の状態であり、流入する移動流体19によってエネルギー変換部18の流入側すなわち外部空間2側の表面が凹状に変形するように例えば中空の可撓性材料などによって構成されている。このため、エネルギー変換部18に生じた凹部には移動流体19が収束して抗力FDが発生しその一部が回転軸8に対する回転力FRとなる。この実施例の場合、移動流体19の抗力FDによって生ずる回転エネルギーの方向は揚力FLによって生じる方向とは反対の方向になる。
【0035】
図19は内部空間3から外部空間2に移動流体19が流出する場合のエネルギー変換部18の状態であり、流出する移動流体19によってエネルギー変換部18の流出側すなわち内部空間3側の表面が凹状に変形するように例えば中空の可撓性材料などによって構成されている。このため、エネルギー変換部18に生じた凹部には移動流体19が収束して抗力FDが発生しその一部が回転軸8に対する回転力FRとなる。この実施例の場合、移動流体19の抗力FDによって生ずる回転エネルギーの方向は揚力FLによって生じる方向とは反対の方向になる。
これらのことから移動流体の外部空間2から内部空間3への流入時および内部空間3から外部空間2への流出時において常に同じ回転方向、本実施例においては時計回り方向に抗力FDに応じた回転力FRすなわち回転エネルギーを発生することになる。さらに本発明においては移動流体19の流入方向あるいは流出方向がどのように変化しても発生する回転エネルギーの方向は常に一定であり安定に動作する。
なお、本実施例のエネルギー変換部18は中空の可撓性材料に限られず、例えば中心付近の内部に弾性構造体を有するゲル状物質あるいは液状物質の外表面を可撓性の膜材料で覆う構成も考えられる。
【0036】
図20は本発明の第2実施例の一部断面斜視外形図であり、例えば空気の移動エネルギーすなわち風エネルギーを用いて回転エネルギーを発生しさらにその回転エネルギーによって電気エネルギーに変換する発電機を備えている。図13において、6は移動流体を導く流体導入部、7は6の要素である流体導入板、20は回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機である。
図21図20の第2実施例の一部を分離した断面斜視図であり、複数のエネルギー変換部22で構成され回転可能な境界部4及び側壁23と底板24によって外部空間2と隔てられた内部空間3が形成されている。
【0037】
図22図20の第2実施例の断面図であり、複数のエネルギー変換部22で構成され回転可能な境界部4は軸受9に保持された回転軸8によって回転可能に支持されている。内部空間3は複数のエネルギー変換部22からなる境界部4に及び側壁23と底板24よって円筒形の密閉空間を形成している。25は密閉円筒空間における流体の移動を円滑にするための整流部材であり、内部空間3の形状は円筒形状以外に球状体の一部あるいは回転楕円体の一部を用いる形状であっても良い。
ここで、本発明の第2実施例においては複数のエネルギー変換部22からなる境界部4は、回転軸8と略垂直となるように配置されている。
【0038】
図23は第2実施例で用いる第6の実施形態に係るエネルギー変換部22の斜視図であり、回動軸部10を軸として例えば翼形状の回動型流体受け部11が回動するように円筒状に配列され境界部4を形成している。エネルギー変換部22の基本的な構造は図5で示したエネルギー変換部5と同様であるが、境界部4の形状に対応してそれぞれが扇形状に成形されている。回動型流体受け部11は例えばトーションバーや捩じりばね、鶴巻ばね或いは捻じれ弾性体の支持部によって移動流体による外力がない場合は基準とする状態に復帰するように復元力が与えられている。さらに、この復元力は移動流体の移動速度や流量に応じて線形若しくは非線形に発生するように設定されていてもよい。
【0039】
図24は第6実施形態のエネルギー変換部22を用いた第2実施例の流体エネルギー変換装置21の作用を説明する図であり、外部空間2から内部空間3に流入する移動流体19(本実施例においては風)あるいは内部空間3から外部空間2に流出する移動流体によってエネルギー変換部22がそれぞれ回動して取り付け角度が変わる状態を示している。
【0040】
さらに取り付け角度が変更されたエネルギー変換部22によって移動流体19の移動エネルギーが回転エネルギーに変換される詳細を図25及び図26で説明する。
図25は外部空間2から内部空間3に移動流体19が流入する場合のエネルギー変換部22の状態であり、流入する移動流体19の流量及び流速は外部空間2側の表面のほうが内部空間側の表面(流体の移動に対して裏面)よりも大きくなる。このため、エネルギー変換部22には揚力FLが発生しその一部が回転軸8に対する回転力FRとなる。この時、移動流体19が任意のエネルギー変換部22の外部空間側表面に与える抗力は、隣接するエネルギー変換部22の内部空間側表面(流体の移動に対して裏面)に加わる逆方向の抗力によってその多くが相殺されるため、揚力による回転力すなわち回転エネルギーが発生することになる。
図26は内部空間3から外部空間2に移動流体19が流出する場合のエネルギー変換部22の状態であり、流出する移動流体19の流量及び流速は内部空間2側の表面のほうが外部空間側の表面(流体の移動に対して裏面)よりも大きくなる。このため、流入時と同様にエネルギー変換部5には揚力FLが発生しその一部が回転軸8に対する回転力FRとなる。
【0041】
これらのことから移動流体の外部空間2から内部空間3への流入時および内部空間3から外部空間2への流出時において常に同じ回転方向、本実施例においては反時計回り方向に揚力FLに応じた回転力FRすなわち回転エネルギーを発生することになる。さらに本発明においては移動流体19の流入方向あるいは流出方向がどのように変化しても発生する回転エネルギーの方向は常に一定であり安定に動作する。
【0042】
なお、図示及び詳細な説明は省略するが、第2実施例においても第1実施例の第2実施形態から第5実施形態と同様に作用するエネルギー変換部を採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は移動流体の移動エネルギーを用いて回転エネルギーに変換する装置のおいて移動流体の移動方向が異なっても安定したエネルギー変換が可能であるため、特に風向きが頻繁に変わる場所における風力発電機において有効である。また、複数のエネルギー変換装置を隣接して設置した場合に装置間で生じる移動流体の移動方向変化があってもエネルギー変換への影響が抑制されるため、配置スペースの効率化が実現できる。さらにエネルギー変換装置として様々な形状が可能なため今まで困難であった場所への設置も可能となる。
【0044】
例えば図27に示すように、例えば海岸線などに複数の風力発電機26を配置する場合に問題となる他のエネルギー発生装置により生じる風向きの変化に対し、本発明のエネルギー変換装置ではその動作が風向きに依存しないため各々のエネルギー変換装置の間隔を広げる必要がなく配置効率を高くすることができる。
また図28に示すように、例えば山岳部の峡谷などで頻繁に風向きが変わる場所においても本発明のエネルギー変換装置27ではその動作が風向きに依存しないため設置して運用することが可能となると同時に、設置による自然環境の破壊や景観の劣化を抑制することが可能となる。
【0045】
さらに図29に示すように、例えば既存の建造物を用いて本発明のエネルギー変換装置28を設置する場合でもそれぞれのエネルギー変換装置の間隔を必要以上に広げる必要がないため効率的な配置が可能となる。
なお、実施例として風力発電への応用を説明してきたが、波力発電や潮力発電などの水力発電機への応用は同様の構成によって実現できることは明らかであり、さらに移動流体の移動エネルギーから変換された回転エネルギーを例えば揚水機や推進器などの動力源として直接利用することも可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 第1実施例に係る流体エネルギー変換装置
2 外部空間
3 内部空間
4 境界部
5 第1実施形態に係るエネルギー変換部
6 流体導入部
7 流体導入板
8 回転軸
9 軸受
10 回動軸部
11 回動型流体受け部
12 端板
13 第2実施形態に係るエネルギー変換部
14 取付固定部
15 屈曲変形部
16 第3実施形態に係るエネルギー変換部
17 第4実施形態に係るエネルギー変換部
18 第5実施形態に係るエネルギー変換部
19 移動流体
20 発電機
21 第2実施例に係る流体エネルギー変換装置
22 第6実施形態に係るエネルギー変換部
23 側壁
24 底板
25 整流部材
26 海岸に配置した発電装置
27 渓谷に配置した発電装置
28 既存の建造物上に配置した発電装置
図1
図2
図3
図4
図5
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