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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034712
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】並列運転電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20220225BHJP
【FI】
H02M3/28 W
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020138546
(22)【出願日】2020-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000144393
【氏名又は名称】株式会社三社電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 正蔵
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS01
5H730BB21
5H730CC02
5H730CC04
5H730DD04
5H730EE04
5H730EE07
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD31
5H730FF02
5H730FG05
5H730XC04
5H730XX18
(57)【要約】
【課題】電源の入力電圧の大きさに応じて、電力制御装置をその運転開始前に正しい結線状態に設定し、各電力制御装置の制御モードを自動的に確実に設定する。
【解決手段】3台の電力制御装置の入力側と電源のR、S、T端子間に接続され、前記3台の電力制御装置の結線状態をΔ結線またはY結線のいずれかに切替えるΔ・Y切替回路部と、電源のR、S、T端子が入力側に接続され、これらの端子間の電源電圧が第1電圧(400V)かこれより低い第2電圧(200V)かを検出する電源電圧検出部と、を備える。前記電源電圧検出部は、検出した電源電圧が前記第1電圧(400V)である場合に、前記3台の電力制御装置にY結線用制御モードをオンにする信号を出力し、検出した電源電圧が前記第2電圧(200V)である場合に、前記3台の電力制御装置にY結線用制御モードをオンにする信号を出力しない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列接続した3台の電力制御装置を備え、前記3台の電力制御装置の出力電流を合流させて負荷に供給する並列運転電源装置において、
前記3台の電力制御装置の入力側と電源のR、S、T端子間に接続され、前記3台の電力制御装置の結線状態をΔ結線またはY結線のいずれかに切替えるΔ・Y切替回路部と、
電源のR、S、T端子が入力側に接続され、これらの端子間の電源電圧が第1電圧かこれより低い第2電圧かを検出する電源電圧検出部と、を備え、
前記Δ・Y切替回路部は、3回路双投形の第1リレーを含み、第1リレーの常開接点は電源のR、S、T端子に、常閉接点はY接続され、共通接点は3台の電力制御装置の入力端子に接続され、
前記電源電圧検出部は、
検出した電源電圧が前記第1電圧である場合に、前記第1リレーを駆動せずに前記3台の電力制御装置にY結線用制御モードをオンにする信号を出力し、
検出した電源電圧が前記第2電圧である場合に、前記第1リレーを駆動し、前記3台の電力制御装置にY結線用制御モードをオンにする信号を出力しない、
並列運転電源装置。
【請求項2】
前記Δ・Y切替回路部は、前記第1リレーと電源間に直列接続された常開接点3回路単投形の第2リレーを含み、
前記電源電圧検出部は、
検出した電源電圧が前記第1電圧である場合に、前記第1リレーを駆動せずに前記3台の電力制御装置にY結線用制御モードをオンにする信号を出力してから前記第2リレーをオン駆動し、
検出した電源電圧が前記第2電圧である場合に前記第1リレーを駆動してから前記第2リレーを駆動する、
請求項1記載の並列運転電源装置。
【請求項3】
前記3台の電力制御装置は、それぞれ、電源開閉のメインリレーを備えるリレー回路と、前記リレー回路の出力側に接続される整流回路を含む力率改善コンバータ部と、前記力率改善コンバータ部の出力側に接続されるコンデンサと、前記コンデンサの充電電圧を電源として駆動するDC-DCコンバータ部と、を備え、
前記3台の電力制御装置は、それぞれ、電源投入後に前記コンデンサを所定時間徐々に充電する予備充電を行い、
前記リレー回路は、前記所定時間の経過後に前記DC-DCコンバータ部をオンする、請求項1または2記載の並列運転電源装置。
【請求項4】
前記リレー回路は、前記電源開閉のメインリレーに並列接続され、電流制限抵抗が直列接続された予備充電リレーを備え、
前記予備充電は、前記力率改善コンバータ部をオフして前記予備充電リレーを介して行う、請求項3記載の並列運転電源装置。
【請求項5】
前記力率改善コンバータ部は、前記所定時間の予備充電を行った後にオンして出力電流を徐々に大きくするソフトスタート動作を行い、前記DC-DCコンバータ部は前記力率改善コンバータ部のソフトスタート動作後にオンする、請求項4記載の並列運転電源装置。
【請求項6】
前記Y結線用制御モードをオンに設定されたときに、電源の各相の入力電圧の平均と大小を求め、その結果に基づいて入力電圧のバランスを保持する入力電圧バランス部を設けた、請求項1~5のいずれかに記載の並列運転電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、特に3相電源と直流負荷の間に3台の電力制御装置を並列接続して並列運転を行う並列運転電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
3相電源に単相用の3台の電力制御装置を並列接続した並列運転電源装置では、電源の種類によって各電力制御装置の結線状態を変更する必要が生じてくる。例えば、電源がΔ結線の場合とY結線の場合とでは、電源電圧が異なる。そこで、これに対応するために、電源の種類に応じて3台の電力制御装置の結線状態を変更可能にする。すなわち、電源がΔ結線であれば、3台の電力制御装置もΔ結線にし、電源がY結線であれば、3台の電力制御装置もY結線となるようにする。また、電源が中性点付きのY結線であれば、3台の電力制御装置を中性点端子付きのY結線とし、電源の中性点を電力制御装置の中性点端子に接続する。このような結線状態を切り替えるために、電源と3台の電力制御装置との間に切替回路が設けられる。
【0003】
例えば、特許文献1では、電源と電力制御装置間に入力切替部と入力電源電圧を監視する入力監視部とを設け、入力監視部で検出した電源電圧が低下すると、入力切替部をY結線とし、電力制御装置への入力電圧を上げる。また、入力監視部で検出した電源電圧が上昇すると、入力切替部をΔ結線とし、電力制御装置への入力電圧を低下させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-197687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の装置では、入力監視部が電源電圧を監視し、監視している電源電圧の大きさに応じて入力切替部をΔ結線かY結線に切り替えているだけである。このため、電源の種類によっては、適切な制御を行えない場合がある。例えば、単相用の3台の電力制御装置を並列接続した並列運転電源装置に、中性点なしのY結線電源を接続した場合にこのような問題生じる。中性点なしのY結線電源では、各電力制御装置の電気的な特性の微妙な相違に起因して、電力制御装置の入力電圧が不安定となることがある。この場合、各電力制御装置には入力電圧をバランスさせる手段を設けるなど制御モードの変更対応が必要であるが、上記の装置では、電源電圧を監視して入力切替部を切り替える構成であるために、このような対応はできない。また、制御モードの変更が可能であるとしてもこの変更作業を手動で行わなければならず、誤操作が起きる可能性があった。
【0006】
また、監視している電源電圧の大きさによっては、電力制御装置の運転開始前に、入力切替部の結線状態を正しい結線にしておくことが必要である。例えば、電源電圧が200Vのときに入力切替部がY結線であると、電力制御装置の入力電圧が200V/√3となり、電圧が低すぎて電力制御装置が起動しない。また、電源電圧が400Vのときに入力切替部がΔ結線であると、電力制御装置の入力電圧が過大となってしまう。しかし、上記の装置では、電力制御装置の運転開始前に、電源電圧の大きさに応じて入力切替部の切替を行っていないため、電力制御装置が起動しなかったり、電力制御装置に過大な入力電圧が印加される可能性がある。
【0007】
そこで、この発明は、電源の入力電圧の大きさに応じて、電力制御装置の運転開始前に正しい結線状態に設定する並列運転電源装置を提供することを目的とする。また、この発明は、電源の入力電圧の大きさに応じて、各電力制御装置の制御モードを自動的に確実に設定できる並列運転電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の並列運転電源装置は、並列接続した3台の電力制御装置を備え、前記3台の電力制御装置の出力電流を合流させて負荷に供給する並列運転電源装置において、
前記3台の電力制御装置の入力側と電源のR、S、T端子間に接続され、前記3台の電力制御装置の結線状態をΔ結線またはY結線のいずれかに切替えるΔ・Y切替回路部と、
電源のR、S、T端子が入力側に接続され、これらの端子間の電源電圧が第1電圧(実施形態では400V)か前記第1電圧よりも低電圧の第2電圧(実施形態では200V)かを判定する電源電圧判定部と、を備えている。
【0009】
前記Δ・Y切替回路部は、3回路双投形の第1リレー(実施形態ではMC1。以下、MC1)を含み、第1リレーの常開接点(A接点)は電源のR、S、T端子に、常閉接点(B接点)はY接続され、共通接点(C接点)は3台の電力制御装置の入力端子に接続されている。
【0010】
前記電源電圧判定部は、
検出した電源電圧が前記第1電圧(400V)である場合に、前記第1リレー(MC1)を駆動せずに前記3台の電力制御装置にY結線用制御モードをオンにする信号を出力し、
検出した電源電圧が前記第2電圧(200V)である場合に、前記第1リレー(MC1)を駆動し、前記3台の電力制御装置にY結線用制御モードをオンにする信号を出力しない。
【0011】
第1電圧は400V、第2電圧は200Vとすると、検出した電源電圧が400Vである場合は、前記第1リレー(MC1)を駆動せずに前記3台の電力制御装置にY結線用制御モードをオンにする信号を出力する。前記第1リレー(MC1)は、常閉接点(B接点)が共通接点(C接点)に接続されている。前記第1リレー(MC1)の常閉接点(B接点)はY接続されているため、前記3台の電力制御装置はY接続となっている。前記3台の電力制御装置がY接続で、且つ電源との間で中性点接続がないと、動作が不安定となる。このため、前記3台の電力制御装置にY結線用制御モードをオンにする信号が出力される。Y結線用制御モードでは、不安定な動作とならない制御が行われる。したがって、Y接続された前記3台の電力制御装置は400Vの入力電圧で安全に且つ正常に運転開始される。
【0012】
検出した電源電圧が200Vである場合は、前記第1リレー(MC1)を駆動し、前記3台の電力制御装置にY結線用制御モードをオンにする信号を出力しない。前記第1リレー(MC1)は、常開接点(A接点)が閉じて共通接点(C接点)に接続される。これにより、前記3台の電力制御装置はΔ接続となる。前記3台の電力制御装置がΔ接続であると、中性点がないので各相の入力電圧が安定し、各電力制御装動作の動作も安定する。したがって、Δ接続された前記3台の電力制御装置は200Vの入力電圧で安全に且つ正常に運転開始される。
【0013】
なお、停電時は、前記第1リレー(MC1)は、常閉接点(B接点)が共通接点(C接点)に接続されているため、前記3台の電力制御装置はY接続となっている。このため、この停電状態から200Vの電源電圧が入力されると、3台の電力制御装置の各々には200V/√3の入力電圧しか印加されなくなり運転開始できない。しかし、この場合は、上記のように前記第1リレー(MC1)が駆動することで、Δ接続された前記3台の電力制御装置は200Vの入力電圧で問題なく運転開始される。
【0014】
この発明の並列運転電源装置の他の例では、
前記Δ・Y切替回路部は、前記第1リレーと電源間に直列接続された常開接点3回路単投形の第2リレー(実施形態ではMC2。以下同じ)を含み、
前記電源電圧判定部は、
検出した電源電圧が前記第1電圧(400V)である場合に前記第1リレー(MC1)を駆動せずに前記3台の電力制御装置にY結線用制御モードをオンにする信号を出力してから前記第2リレー(MC2)を駆動し、
検出した電源電圧が前記第2電圧(200V)である場合に前記第1リレー(MC1)を駆動してから前記第2リレー(MC2)を駆動する。
【0015】
第1電圧は400V、第2電圧は200Vとすると、検出した電源電圧が400Vである場合は、前記3台の電力制御装置にY結線用制御モードをオンにする信号を出力してから前記第2リレー(MC2)を駆動する。前記3台の電力制御装置にY結線用制御モードをオンにする信号を出力してから、第2リレー(MC2)を駆動して運転開始となるため、3台の電力制御装置の動作が確実となる。
【0016】
また、検出した電源電圧が200Vである場合は、第1リレー(MC1)を駆動してΔ接続にしてから、第2リレー(MC2)を駆動して運転開始となるため3台の電力制御装置は安全に且つ正常に運転開始される。
【0017】
3台の電力制御装置は、それぞれ、電源開閉のメインリレーと電流制限抵抗が直列接続された予備充電リレーとを備えるリレー回路と、前記リレー回路の出力側に接続される整流回路を含む力率改善コンバータ部と、前記力率改善コンバータ部の出力側に接続されるコンデンサと、前記コンデンサの充電電圧を電源として駆動するDC-DCコンバータ部と、を備えている。
【0018】
前記3台の電力制御装置は、それぞれ、電源投入後に前記コンデンサを所定時間徐々に充電する予備充電を行い、
前記リレー回路は、前記所定時間の経過後に前記DC-DCコンバータ部をオンする。
【0019】
予備充電は、リレー回路の予備充電リレーを介して行われる。予備充電期間は力率改善コンバータ部をオフする。このため、電源から流れる電流は電流制限抵抗で電流制限されて力率改善コンバータ部をそのまま通過し、コンデンサの充電電流となる。
【0020】
前記力率改善コンバータ部は、前記所定時間の予備充電を行った後にオンして出力電流を徐々に大きくするソフトスタート動作を行う。コンデンサは予備充電によってある程度充電されているが、その後に前記力率改善コンバータ部からの出力電流を徐々に上昇させることで、コンデンサに対する突入電流を一層防止する。
【0021】
前記DC-DCコンバータ部は、予備充電と前記力率改善コンバータ部のソフトスタート動作が終わるとオンする。このとき、前記DC-DCコンバータ部は、前記結線状態がY結線と判定されたときにY結線用制御モードに設定されている。したがって、もし、前記DC-DCコンバータ部の制御モードがY結線用制御モードに設定されていなければ、前記判定結果を受信したときにY結線用制御モードに切り替えられる。このような制御のため、前記DC-DCコンバータ部は、オンする前に、正しい制御モードに設定される。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、入力電圧判定部により、電源電圧の大きさが判定され、電源電圧の大きさに基づいてΔ・Y切替回路部がΔ接続またはY接続のいずれかの正しい接続状態に設定される。そして、3台の電力制御装置は、その制御モードを正しく設定してから運転開始される。これにより、3台の電力制御装置は、安全に且つ正常に運転開始される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】(A)(B)は、それぞれ、本発明の第1の実施形態の3相並列運転電源装置が200Vの電源に接続されているときの結線図と、動作シーケンスを示す。
図2】(A)(B)は、それぞれ、本発明の第1の実施形態の3相並列運転電源装置が400Vの電源に接続されているときの結線図と、動作シーケンスを示す。
図3】電源電圧検出部の回路図を示す。
図4】(A)(B)は、それぞれ、本発明の第2の実施形態の3相並列運転電源装置が200Vの電源に接続されているときの結線図と、動作シーケンスを示す。
図5】(A)(B)は、それぞれ、本発明の第2の実施形態の3相並列運転電源装置が400Vの電源に接続されているときの結線図と、動作シーケンスを示す。
図6】モジュール1R、1S、1Tの構成図を示す。
図7】フィードバック制御回路の構成図を示す。
図8】入力電圧バランス部のブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1図2は、本発明の第1の実施形態の3相並列運転電源装置を示す。
【0025】
図1(A)は、200Vの電源が接続されているときの結線図である。図1(B)は、200Vの電源が接続されているときの動作シーケンスを示す。
【0026】
また、図2(A)は、400Vの電源が接続されているときの結線図である。図2(B)は、400Vの電源が接続されているときの動作シーケンスを示す。
【0027】
図1図2において、3相並列運転電源装置は、単相で動作する3台の電力制御装置(以下、モジュールと称する)1R、1S、1Tを備え、これらのモジュール1R、1S、1Tを並列運転して負荷6に対して電力を供給する。3相並列運転電源装置は、モジュール1R、1S、1Tの入力側と電源間に接続され、モジュール1R、1S、1Tの結線状態をΔ結線またはY結線のいずれかに切替えるΔ・Y切替回路部2を備える。Δ・Y切替回路部2は、3回路双投形の第1リレーMC1を備えている。第1リレーMC1は、接点2R、2S、2Tを備え、接点2R、2S、2Tは、それぞれ、常開接点(A接点)、常閉接点(B接点)、共通接点(C接点)で構成される。接点2R、2S、2Tの各常閉接点(B接点)は、それらが接続されることでY接続され、中性点端子N´とされる。なお、図1では、第1リレーMC1が駆動されて常開接点(A接点)と共通接点(C接点)が接続されている。
【0028】
3相並列運転電源装置は、さらに、電源電圧検出部3を備えている。
【0029】
電源電圧検出部3は、電源のR、S、T端子が入力側に接続され、これらの端子間の電源電圧が第1電圧の400Vか第2電圧の200Vかを検出する。出力OUT1~3と出力OUT4とを備え、出力OUT1~3はモジュール1R、1S、1Tに、出力OUT4はΔ・Y切替回路部2の第1リレーMC1にそれぞれ出力する。
【0030】
出力OUT1~3は、Y結線用制御モードのオン/オフを示す信号を出力する。電源電圧が400Vであると検出したときは、出力OUT1~3が「H」となる。出力OUT1~3が「H」であるときは、Y結線用制御モードがオンである。電源電圧が200Vであると検出したときは、出力OUT1~3が「L」となる。出力OUT1~3が「L」であるときは、Y結線用制御モードがオフである。
【0031】
出力OUT4は、第1リレーMC1の駆動信号を出力する。電源電圧が400Vであると検出したときは、出力OUT4が「L」となる。出力OUT4が「L」であるときは、駆動信号はオフである。電源電圧が200Vであると検出したときは、出力OUT4が「H」となる。出力OUT4が「H」であるときは、駆動信号はオンである。
【0032】
図3は、電源電圧検出部3の回路図である。
【0033】
入力端子には電源のR、S、T端子が接続され、電源電圧が整流後、適切なレベルにDC変換されて論理部(LOGIC BLOCK)で、電圧検出される。検出結果に基づいて、出力OUT1~4が出力される。
【0034】
図1(A)において、電源電圧検出部3において電源電圧が200Vであることが検出されると、出力OUT1~3が「L」、出力OUT4が「H」となる。第1リレーMC1は、出力OUT4が「H」であることにより駆動され、常開接点(A接点)と共通接点(C接点)が接続される。また、出力OUT1~3が「L」であることにより、モジュール1R、1S、1Tは制御モードがY結線用制御モードに設定されない。後述のように、モジュール1R、1S、1Tは、Y結線用制御モードが設定されていない場合に、入力電圧のバランスを保持するための回路を動作させない。
【0035】
図1(B)において、電源が投入されると、モジュール1R、1S、1Tは後述の予備充電を行う。また、電源電圧検出部3は、電源電圧が200Vであることを判定し、出力OUT4を「H」とする。このとき、第1リレーMC1が駆動されて、常開接点(A接点)が切り替わり、共通接点(C接点)に接続される(図1(A))。その後、予備充電が終了すると、後述の力率改善コンバータ部(PFC)がソフトスタートし、続いて、モジュール1R、1S、1Tが運転開始する。出力OUT1~3は「L」であるため、モジュール1R、1S、1TにはY結線用制御モードが設定されない。
【0036】
図2(A)において、電源電圧検出部3において電源電圧が400Vであることが検出されると、出力OUT1~3が「H」、出力OUT4が「L」となる。第1リレーMC1は、出力OUT4が「L」であることにより駆動されることがなく、常閉接点(B接点)と共通接点(C接点)は接続されたままである。また、出力OUT1~3が「H」であることにより、モジュール1R、1S、1Tは制御モードがY結線用制御モードに設定される。後述のように、モジュール1R、1S、1Tは、Y結線用制御モードが設定されている場合に、入力電圧のバランスを保持するための回路が動作する。
【0037】
図2(B)において、電源が投入されると、モジュール1R、1S、1Tは後述の予備充電を行う。また、電源電圧検出部3は、電源電圧が400Vであることを判定し、出力OUT4の「L」を維持する。第1リレーMC1は駆動されることはなく、常閉接点(B接点)は共通接点(C接点)に接続されたままである(図2(A))。また、出力OUT1~3は「H」となる。その後、予備充電が終了すると、後述の力率改善コンバータ部(PFC)がソフトスタートし、続いて、モジュール1R、1S、1Tが運転開始する。出力OUT1~3は「H」であるため、モジュール1R、1S、1TにはY結線用制御モードが設定される。なお、停電状態で200Vの電源が投入されると、第1リレーMC1は図2(A)→図1(A)となり、停電状態で400Vの電源が投入されると、第1リレーMC1は図2(A)の状態が維持される。前者の場合、停電時に200Vの電源が投入された直後の図2(A)の状態ではモジュール1R、1S、1Tへの入力電圧が200V/√3となり、モジュール1R、1S、1Tに過電圧が印加されることがなく安全である。後者の場合は、停電時のモジュール1R、1S、1TはY接続であるため、停電時に400Vの電源が投入された直後でも問題はなく安全である。
【0038】
以上の第1の実施形態では、モジュール1R、1S、1Tの運転開始前に、それらの結線状態をΔ結線またはY結線のいずれかに正しく設定することができる。また、モジュール1R、1S、1Tの運転開始前に、電源電圧が400Vであることを判定すると、モジュール1R、1S、1TにおいてY結線用制御モードを設定し、200Vであることを判定するとY結線用制御モードを設定しない。
【0039】
また、停電状態で200V、400Vのいずれの電源が投入されてもモジュール1R、1S、1Tの入力側に過電圧が印加されることがない。さらに、いずれの場合でも、モジュール1R、1S、1Tの運転開始前に、それらの結線状態をΔ結線またはY結線のいずれかに正しく設定することができる。
【0040】
図4図5は、本発明の第2の実施形態の3相並列運転電源装置を示す。
【0041】
図4(A)は、200Vの電源が接続されているときの結線図である。図4(B)は、200Vの電源が接続されているときの動作シーケンスを示す。
【0042】
また、図5(A)は、400Vの電源が接続されているときの結線図である。図5(B)は、400Vの電源が接続されているときの動作シーケンスを示す。
【0043】
図4(A),図5(A)において、第1の実施形態と相違する点は、Δ・Y切替回路部2が、第1リレーMC1と第2リレーMC2とで構成されている点である。
【0044】
第2リレーMC2は、常開接点3回路単投形のリレーであり、第1リレーMC1と電源間に直列接続されている。この第2リレーMC2は、電源電圧検出部3からの出力OUT5によって駆動される。
【0045】
図4(A)(B)において、電源電圧検出部3において電源電圧が200Vであることが検出されると、出力OUT4が「H」となり、第1リレーMC1が駆動される。このタイミングで、モジュール1R、1S、1Tの結線状態がΔ接続となる。所定のMC遅延T1が経過して出力OUT5が「H」となり、第2リレーMC2が駆動される。出力OUT1~3は「L」のままであるため、モジュール1R、1S、1Tは制御モードがY結線用制御モードに設定されない。200Vの電源電圧がΔ・Y切替回路部2を経てモジュール1R、1S、1Tに印加される。
【0046】
図5(A)(B)において、電源電圧検出部3において電源電圧が400Vであることが検出されると、出力OUT4が「L」を維持し、第1リレーMC1が駆動されない。モジュール1R、1S、1Tの結線状態はY接続を維持する。続いて、出力OUT1~3が「H」となる。モジュール1R、1S、1Tは制御モードがY結線用制御モードに設定される。所定のMC遅延T2が経過して出力OUT5が「H」となり、第2リレーMC2が駆動される。400Vの電源電圧がΔ・Y切替回路部2を経てモジュール1R、1S、1Tに印加される。
【0047】
第2の実施形態では、電源電圧の大きさ(200Vが400V)が検出されてから、第1リレーMC1の状態とモジュール1R、1S、1Tの制御モードが設定され、その後に第2リレーMC2が駆動される。第2リレーMC2は、第1リレーMC1の状態と制御モードが設定された後に駆動されるため、モジュール1R、1S、1Tはより安全に且つ確実に運転開始される。
【0048】
次に、モジュール1R、1S、1Tについて説明する。
【0049】
モジュール1R、1S、1Tは、出力OUT1~3の「H」または「L」の論理値を受ける事で、以下のように制御モードを設定する。
【0050】
「H」・・・Y結線用制御モードをオン
「L」・・・Y結線用制御モードをオフ
Y結線用制御モードについては後述する。
【0051】
図6は、モジュール1R、1S、1Tの構成図である。
【0052】
3台のモジュール1R、1S、1Tは、その入力端子が、Δ・Y切替回路部2に接続される。モジュール1Rの入力端子TB1、TB3、TB5は、それぞれ、Δ・Y切替回路部2のR出力端子、S出力端子、T出力端子に接続される。また、3台のモジュール1R、1S、1Tの入力端子TB2、TB4、TB6は、それぞれ、Δ・Y切替回路部2の接点2Sの端子c2、接点2Tの端子c3、接点2Rの端子c1に接続される。図1(A)に示すΔ接続状態のときは、入力端子TB2、TB4、TB6は、それぞれ、S入力端子、T入力端子、R入力端子となる。図2(A)に示すY接続状態のときは、入力端子TB2、TB4、TB6は、それぞれ、中性点入力端子Nとなる。
【0053】
モジュール1R、1S、1Tの出力は並列接続して出力電流を合流し、負荷6に供給する。すなわち、モジュール1Rの出力側の端子TB7と、モジュール1Sの出力側の端子TB9と、モジュール1Tの出力側の端子TB11とが出力電流端子PPに接続される。また、モジュール1Rの出力側の端子TB8と、モジュール1Sの出力側の端子TB10と、モジュール1Tの出力側の端子TB12とが出力電流端子NNに接続される。負荷6は、出力電流端子PP、NN間に接続される。
【0054】
モジュール1R、1S、1Tのそれぞれは同じ構成であるため、以下、モジュール1Rの構成を説明する。
【0055】
モジュール1Rは、電源開閉のメインリレーRY1と予備充電リレーRY2の各リレー接点を有するRY部10R(リレー回路)と、整流回路を含む力率改善コンバータ部(PFC)11Rとを備える。また、モジュール1Rは、力率改善コンバータ部(PFC)11Rの出力側に接続されるコンデンサ12Rと、DC-DCコンバータ部13Rと、フィードバック制御回路14Rと、入力電圧バランス部15Rとを備える。
【0056】
RY部10Rは、電源投入(起動)後から予備充電リレーRY2をオンし、所定時間T経過後にメインリレーRY1をオンする、予備充電リレーRY2には電流制限抵抗R10が直列に接続され、予備充電時に電流を制限する。
【0057】
力率改善コンバータ部(PFC)11Rは、メインリレーRY1がオンしたときからソフトスタートをする。ソフトスタートは、力率改善コンバータ部(PFC)11Rの出力電流を徐々に増やしていく制御動作である。ソフトスタートにより、コンデンサ12Rへの充電電流が急峻に増大しないようにする。力率改善コンバータ部(PFC)11Rは、通常の動作時では、入力電流をスイッチングすることで入力電流と入力電圧の位相を同位相として力率を良くする。
【0058】
コンデンサ12Rは、力率改善コンバータ部(PFC)11Rの出力を充電し、このコンデンサ12Rの充電電圧により、後段に接続されるDC-DCコンバータ部13Rを駆動する。
【0059】
DC-DCコンバータ部13Rは、コンデンサ12Rの電圧をDC-DC変換して出力する。DC-DCコンバータ部13Rの出力側には、出力電流Ioを検出する出力電流検出器3Rと、出力電圧Voを検出する出力電圧検出器4Rとが設けられている。
【0060】
フィードバック制御回路14Rは、DC-DCコンバータ部13Rに接続され、出力電流Ioと出力電圧Voが入力される。フィードバック制御回路14Rは、出力電流Ioと出力電圧Voに基づいて、出力電圧Voが予め設定した基準電圧となるように電流制御指令値を生成する。この電流制御指令値は、フィードバック制御回路14R内の出力電流バランス部(後述)によって補正される。また、制御モードがY結線用制御モードの場合に、電流制御指令値は入力電圧バランス部15Rによっても補正される。DC-DCコンバータ部13Rのスイッチング素子は、この補正された電流制御指令値と出力電流Ioとの誤差がなくなるように制御される。
【0061】
次に、フィードバック制御回路14R、14S、14Tについて説明する。図7は、フィードバック制御回路14R、14S、14Tの構成図である。フィードバック制御回路14R、14S、14Tのそれぞれは同じ構成であるため、以下、フィードバック制御回路14Rについて説明する。
【0062】
フィードバック制御回路14Rは、出力端子aを備え、接続ライン5がこの出力端子aに接続されている。同様に、モジュール1Sのフィードバック制御回路14Sは、出力端子bを備え、接続ライン5がこの出力端子bに接続されている。同様に、モジュール1Tのフィードバック制御回路14Tは、出力端子cを備え、接続ライン5がこの出力端子cに接続されている。
【0063】
この接続ライン5は、モジュール1R、1S、1Tの各出力電流をバランスさせる出力電流バランス部に相当し、出力電流バランスが崩れそうになると電流制御指令値を補正する。
【0064】
フィードバック制御回路14Rは、3相並列運転電源装置の出力電圧Voが予め設定した基準電圧VREFとなるようにフィードバック制御を行う。フィードバック制御回路14Rは、電流制御指令値回路120RとPWM制御回路130Rとを備える。なお、フィードバック制御回路14Sは、電流制御指令値回路120SとPWM制御回路130Sとを備え、フィードバック制御回路14Tは、電流制御指令値回路120TとPWM制御回路130Tとを備えている。
【0065】
電流制御指令値回路120Rは、前記基準電圧VREFと前記出力電圧Voとの差に対応する電圧を前記出力電流Ioに対する電流制御指令値として出力する。この電流制御指令値は、出力電流バランス部を構成する接続ライン5によって補正され、また、後述するように、Y結線用制御モードがオンのときは入力電圧バランス部15Rによっても補正される。
【0066】
PWM制御回路130Rは、補正された電流制御指令値と出力電流Ioの差から電流制御値を演算し、これに基づいてスイッチング素子を駆動するPWM信号を生成する。
【0067】
電流制御指令値回路120Rは、基準電圧VREF設定部120と、第1エラー検出部121と、第1ゲイン制御部122と、抵抗分圧回路123と、第2エラー検出部124とを備える。
【0068】
PWM制御回路130Rは、第3エラー検出部130と、第2ゲイン制御部131と、PWM制御部132と、鋸歯状波発生回路133と、スイッチング制御部134とを備える。
【0069】
電流制御指令値回路120Rにおいて、第1エラー検出部121は、出力電圧検出器4Rで検出した出力電圧Voに対応する電圧と基準電圧VREFとを比較し、その差電圧を検出する。第1ゲイン制御部122は、前記差電圧を適切なゲインで増幅し、Vi_REF_1として出力する。
【0070】
抵抗分圧回路123は、前記Vi_REF_1を抵抗RaとRbで分圧する。この分圧した電圧は補正前の電流制御指令値に対応したものとなる。モジュール1S、1Tのフィードバック制御回路14S、14Tにおいても同様にVi_REF_2、Vi_REF_3が抵抗RaとRbで分圧される。この分圧した電圧は、モジュール1R、1S、1Tそれぞれにおいて出力され、これらが接続ライン5によって、アナログ的に平均化される(補正される)。すなわち、モジュール1R、1S、1Tの第1エラー検出部121から出力される電流制御指令値(に対応する電圧)は、平均化されて(補正されて)Vi_REF_AVEとして出力される。
【0071】
このように、モジュール1R、1S、1Tの抵抗分圧回路123で分圧された電圧は接続ライン5で同一電圧にされるため、各モジュール1R、1S、1Tの電流制御指令値は同一の値に制御される。すると、モジュール1R、1S、1Tのいずれかのモジュールの出力電流が増大して不平衡になろうとしても、元の状態に戻りバランスが保持される。
【0072】
第2エラー検出部124は、Vi_REF_AVEと入力電圧バランス部15Rからの出力電流補正値Vi_CORとの差電圧を検出し、接続ライン5で平均化された(補正された)電圧(電流制御指令値)Vi_REF_AVEを出力電流補正値Vi_CORによってさらに補正する。出力電流補正値Vi_CORは、入力電圧バランス部15Sの出力である。入力電圧バランス部15Sは、Y結線用制御モードがオンのときに作動する。
【0073】
図8は、入力電圧バランス部15Sのブロック図である。
【0074】
入力電圧バランス部15Rは、電源電圧検出部3の出力OUT1~3から「H」の論理値を受けたときに、すなわち、電源電圧が400Vであることを検出されたときにY結線用制御モードとなって作動する。
【0075】
入力電圧バランス部15Rは、R相の入力電圧VIN1_DETと、S相の入力電圧VIN2_DETと、T相の入力電圧VIN3_DETとの平均を求め、R相の入力電圧VIN1_DETが平均よりも大きいか小さいかを判定する。その大きさに応じた出力電流補正値Vi_CORがフィードバック制御回路14Rに出力される。なお、モジュール1S内の入力電圧バランス部15Sと、モジュール1T内の入力電圧バランス部15Tも同様に、Y結線用制御モードとなった時に、R相の入力電圧VIN1_DETと、S相の入力電圧VIN2_DETと、T相の入力電圧VIN3_DETとの平均と大小を判定し、出力電流補正値Vi_CORをフィードバック制御回路14S、フィードバック制御回路14Tに出力する。
【0076】
PWM制御回路130Rにおいて、第3エラー検出部130は、電流制御指令値回路120Rから出力される電流制御指令値と、出力電流検出器3Rで検出した出力電流Ioに対応する電圧Vi_DETとを比較し、その差電圧を検出する。第2ゲイン制御部131は、前記差電圧を適切なゲインで増幅し、電流制御値Vi_Cとして出力する。
【0077】
電流制御値Vi_Cは、PWM制御部132に出力される。PWM制御部132には、鋸歯状波発生回路133から鋸歯状波が入力する。PWM制御部132は、前記電流制御値Vi_Cと前記鋸歯状波とを比較してPWM制御信号を出力する。スイッチング制御部134は、前記PWM制御信号に応じてDC-DCコンバータ部13Rのスイッチング素子のオン時間を変動させる。
【0078】
以上のように、Y結線用制御モードがオンに設定されると入力電圧バランス部15Rによってフィードバック制御回路14Rの電流制御指令値が補正される。このため、中性点なしY結線電源の場合に、Y結線用制御モードが自動的に確実にオンに設定されるため、入力電圧が不平衡状態に移行することを防止できる。
【0079】
なお、本実施形態では、出力電流バランス部を構成する接続ライン5を設けることで、モジュール1R、1S、1Tの各出力電流が不平衡になることも防止しているから、装置の動作をより一層安定化できる。
【符号の説明】
【0080】
1R、1S、1T・・・電力制御装置
2・・・Δ・Y切替回路部
MC1・・・第1リレー
MC2・・・第2リレー
3・・・電源電圧検出部
12R、12S、12T・・・フィードバック制御回路
120R、120S、120T・・・電流制御指令値回路
15R、15S、15T・・・入力電圧バランス部
5・・・接続ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8