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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034729
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20220225BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A41D13/11 B
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020138566
(22)【出願日】2020-08-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】304013238
【氏名又は名称】株式会社いづみドレス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】田川 茂昭
(57)【要約】
【課題】ウイルスの捕捉性能と装着時における不快感の低減との両立を図ることのできるマスクを提供する。
【解決手段】使用者の顔面の対象部位を覆うマスク本体10Aと、マスク本体10Aから延びる一対の耳掛け部と、を備えるマスク10であって、マスク本体10Aは、最外面を構成する不織布製の第1シート11と、第1シート11よりも小さい繊維間隙であってウイルスを捕捉可能な大きさの繊維間隙を有する不織布製の第2シート12と、熱可塑性合成樹脂製の第3シート13と、最内面を構成する編み物製の第4シート14とを備える。マスク本体10Aは、第1シート11、第2シート12、第3シート13、及び第4シート14が順に重ね合わされており、第1シート11及び第2シート12は、第3シート13をバインダとして第4シート14に対して溶着されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の顔面の対象部位を覆うマスク本体と、前記マスク本体から延びる一対の耳掛け部と、を備えるマスクであって、
前記マスク本体は、
最外面を構成する不織布製の第1シートと、
前記第1シートよりも小さい繊維間隙であってウイルスを捕捉可能な大きさの繊維間隙を有する不織布製の第2シートと、
熱可塑性合成樹脂製の第3シートと、
最内面を構成する編み物製の第4シートと、を備え、
前記第1シート、前記第2シート、前記第3シート、及び前記第4シートが順に重ね合わされており、
前記第1シート及び前記第2シートは、前記第3シートをバインダとして前記第4シートに対して溶着されている、
マスク。
【請求項2】
前記編み物を構成する繊維が、ナイロン及びポリエステルの少なくとも1つにより形成されている、
請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記第4シートは、折り返されて前記第1シートの外面の縁部を覆う折り返し部を有する、
請求項1または請求項2に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基材シートを有するマスク本体と、一対の耳掛け部とを備えるマスクが記載されている。このマスクの基材シートは、肌対向面側に位置する内層シートと、外層シートと、内層シートと外層シートとの間に介在する中間シートとを有している。内層シート、外層シート、及び中間シートは、繊維不織布から形成されている。中間シートは、内層シート及び外層シートの繊維不織布の繊維よりも繊度が小さい極細繊維によって構成された繊維不織布から形成されている。内層シート及び外層シートは、スパンボンド繊維不織布から形成されている。中間シートは、上記極細繊維を使用したメルトブローン繊維不織布から形成されている。平面視において、単位面積当たりにおける中間シートの繊維間隙の総面積が、単位面積当たりにおける内層シート及び外層シートの繊維間隙の総面積よりも小さい。こうしたマスクにおいては、中間シートによってウイルスを捕捉可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-204169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の含む従来のマスクにおいては、使用者の肌に接触する内側シートが繊維不織布から構成されている。しかし、繊維不織布は毛羽立ちやすいため、マスクの装着時に使用者に対して不快感を与えやすい。
【0005】
本発明の目的は、ウイルスの捕捉性能と装着時における不快感の低減との両立を図ることのできるマスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するためのマスクは、使用者の顔面の対象部位を覆うマスク本体と、前記マスク本体から延びる一対の耳掛け部と、を備えるマスクであって、前記マスク本体は、最外面を構成する不織布製の第1シートと、前記第1シートよりも小さい繊維間隙であってウイルスを捕捉可能な大きさの繊維間隙を有する不織布製の第2シートと、熱可塑性合成樹脂製の第3シートと、最内面を構成する編み物製の第4シートと、を備え、前記第1シート、前記第2シート、前記第3シート、及び前記第4シートが順に重ね合わされており、前記第1シート及び前記第2シートは、前記第3シートをバインダとして前記第4シートに対して溶着されている。
【0007】
同構成によれば、マスク本体に流入する空気に含まれるウイルスが第2シートによって捕捉される。
また、ウイルスを捕捉可能な第2シートよりも外側に第1シートが設けられているため、第2シートがマスク本体の最外面を構成する場合に比べて、最外面にウイルスが付着しにくい。また、使用者の肌に接触する第4シートが編み物製であるため、不織布製のシートのような毛羽立ちが生じにくく、肌触りが向上する。
【0008】
特に、上記構成によれば、第1シート及び第2シートが、第3シートをバインダとして第4シートに対して溶着されているため、第1シート及び第2シートと第4シートとを容易に接合することができる。これにより、マスク本体の厚さを薄くできる。したがって、ウイルスの捕捉性能と装着時における不快感の低減との両立を図ることができる。
【0009】
上記マスクにおいて、前記編み物を構成する繊維が、ナイロン及びポリエステルの少なくとも1つにより形成されていることが好ましい。
ナイロンやポリエステルにより構成される編み物は、吸湿性が低いことから、乾きやすい。また、ナイロンやポリエステルにより構成される編み物は皺になりにくい。このため、上記構成によれば、マスクを洗濯した際に第4シート、ひいてはマスク全体を早期に乾燥させることができる。また、第4シートに皺が生じることを抑制できる。
【0010】
上記マスクにおいて、前記第4シートは、折り返されて前記第1シートの外面の縁部を覆う折り返し部を有することが好ましい。
同構成によれば、編み物製の第4シートの折り返し部によって第1シートの外面の縁部が覆われている。このため、第1シート、第2シート、及び第3シートの縁部が外部に露出しなくなる。したがって、マスク本体の縁部が毛羽立つことを抑制できる。したがって、肌触りが一層向上する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ウイルスの捕捉性能と装着時における不快感の低減との両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態のマスクの内面側を示す背面図。
図2】一実施形態のマスクの外面側を示す正面図。
図3図2の3-3線に沿った断面図。
図4】マスク本体を構成する複数のシートを分解して示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1図4を参照して、一実施形態のマスク10について説明する。
図1及び図2に示すように、マスク10は、使用者の顔面の対象部位を覆うマスク本体10Aと、マスク本体10Aから延びる一対の耳掛け部25とを備える。
【0014】
耳掛け部25は、伸縮可能な紐である。耳掛け部25は、例えばポリエステル等の熱可塑性樹脂製の編み物または不織布により形成されている。
マスク本体10Aは、長方形のシート状である。マスク本体10Aは、使用者の顔面の鼻及び口を含む部分を覆うことができる大きさを有する。なお、以降において、マスク本体10Aの短辺方向及び長辺方向を単に幅方向W及び長さ方向Lと称することがある。
【0015】
図4に示すように、マスク本体10Aは、最外面を構成する第1シート11と、第2シート12と、第3シート13と、最内面を構成する第4シート14とを備える。第1シート11、第2シート12、第3シート13、及び第4シート14が順に重ね合わされている。
【0016】
図2図4に示すように、第1シート11は、長方形である。本実施形態の第1シート11は、例えば、スパンボンド不織布製であり、ポリプロピレン繊維により形成されている。
【0017】
図3及び図4に示すように、第2シート12は、正面視において第1シート11と略同一の外形を有する長方形である。本実施形態の第2シート12は、例えばメルトブローン不織布製であり、ポリプロピレン繊維により形成されている。第2シート12は、第1シート11よりも小さい繊維間隙であってウイルスを捕捉可能な大きさの繊維間隙を有する。具体的には、平面視において、単位面積当たりにおける第2シート12の繊維間隙の総面積は、単位面積当たりにおける第1シート11の繊維間隙の総面積よりも大きい。
【0018】
なお、第1シート11及び第2シート12は、従来一般の不織布製のマスクの最外面を構成する不織布製のシート及び不織布製のフィルタとそれぞれ同様な構成である。
第3シート13は、正面視において第1シート11と略同一の外形を有する長方形である。第3シート13は、熱可塑性合成樹脂製であり、通気性を有する。本実施形態の第3シート13は、例えばポリエステルである。第3シート13は、例えば、不織布製である。第3シート13は、例えば、スパンボンド不織布製であり、第1シート11と同様の大きさの繊維間隙を有する。
【0019】
第3シート13の目付量(単位面積あたりの質量)は、10~15g/mが好ましい。本実施形態の第3シート13の目付量は、13g/mである。
図1図4に示すように、第4シート14は、編み物製であり、いわゆるカットソー生地により形成されている。本実施形態では、上記編み物を構成する繊維が、例えばナイロンにより形成されている。
【0020】
第4シート14の目付量は、100~150g/mが好ましい。本実施形態では、第4シート14の目付量は、120g/mとされている。
図1図3に示すように、第4シート14は、マスク本体10Aの最内面を構成する長方形状のシート本体15と、シート本体15の幅方向の両側にそれぞれ連なるとともに第1シート11側に折り返された一対の折り返し部16とを備える。
【0021】
シート本体15は、正面視において第1シート11と略同一の外形を有する長方形である。
図2に示すように、折り返し部16は、長さ方向においてシート本体15の全体にわたって形成されている。
【0022】
図2及び図3に示すように、折り返し部16は、第1シート11の外面において幅方向の両側の縁部を覆っている。折り返し部16は、一定の幅寸法を有しており、長さ方向に延びる端縁16Aを有する。
【0023】
本実施形態では、第4シート14に対して周知のキシリトール加工が施されている。これにより、第4シート14の編み物を構成する繊維の表面には、キシリトール成分が設けられている。
【0024】
図1及び図2に示すように、マスク本体10Aを構成する各シート11,12,13,14には、長さ方向に沿って延びる複数のプリーツ18が幅方向に互いに間隔をおいて形成されている。複数のプリーツ18は、重ね合わされた状態のシート11,12,13,14を襞折りすることにより形成されている。本実施形態では、3つのプリーツ18が設けられている。
【0025】
第3シート13は、第1シート11及び第2シート12に対するバインダとして第4シート14に対して溶着されている。
マスク本体10Aの周縁部には、溶着部群20が全周に亘って形成されている。溶着部群20は、互いに間隔をおいて形成された複数の溶着部20Aにより構成されている。溶着部20Aは、超音波溶着により形成される溶着痕である。
【0026】
本実施形態では、溶着部20Aは、マスク本体10Aの長さ方向の両端部については、長さ方向に4列並んで形成されている。溶着部20Aは、マスク本体10Aの幅方向の両端部については、折り返し部16において幅方向に3列並んで形成されている。
【0027】
図1及び図2に示すように、第1シート11と、第4シート14の一方の折り返し部16との間には、長さ方向に沿って延びるとともに使用者の鼻の形に合わせて変形可能な合成樹脂製の芯材19、いわゆるノーズフィットが収容されている。芯材19は、上記折り返し部16において幅方向に隣り合う溶着部20A同士の間に位置している。
【0028】
耳掛け部25の端部は、マスク本体10Aの最外面の四隅、詳しくは、折り返し部16の端部に溶着されている。本実施形態では、耳掛け部25の端部は、超音波溶着にて折り返し部16に溶着されている。
【0029】
次に、本実施形態のマスク10の作用効果について説明する。
(1)マスク本体10Aは、最外面を構成する不織布製の第1シート11と、第1シート11よりも小さい繊維間隙であってウイルスを捕捉可能な大きさの繊維間隙を有する不織布製の第2シート12と、熱可塑性合成樹脂製の第3シート13と、最内面を構成する編み物製の第4シート14とを備える。第1シート11、第2シート12、第3シート13、及び第4シート14が順に重ね合わされている。第1シート11及び第2シート12は、第3シート13をバインダとして第4シート14に対して溶着されている。
【0030】
こうした構成によれば、マスク本体10Aに流入する空気に含まれるウイルスが第2シート12によって捕捉される。また、ウイルスを捕捉可能な第2シート12よりも外側に第1シート11が設けられているため、第2シート12がマスク本体10Aの最外面を構成する場合に比べて、最外面にウイルスが付着しにくい。また、使用者の肌に接触する第4シート14が編み物製であるため、不織布製のシートのような毛羽立ちが生じにくく、肌触りが向上する。
【0031】
特に、上記構成によれば、第1シート11及び第2シート12が、第3シート13をバインダとして第4シート14に対して溶着されているため、第1シート11及び第2シート12と第4シート14とを容易に接合することができる。これにより、マスク本体10Aの厚さを薄くできる。したがって、ウイルスの捕捉性能と装着時における不快感の低減との両立を図ることができる。
【0032】
(2)第4シート14の編み物を構成する繊維が、ナイロンにより形成されている。
ナイロンにより構成される編み物は、吸湿性が低いことから、乾きやすい。また、ナイロンにより構成される編み物は皺になりにくい。このため、上記構成によれば、マスク10を洗濯した際に第4シート14、ひいてはマスク10全体を早期に乾燥させることができる。また、第4シート14に皺が生じることを抑制できる。また、使用者に対して第4シート14による接触冷感を付与することができる。
【0033】
(3)第4シート14に対してキシリトール加工が施されている。
こうした構成によれば、第4シート14により使用者に付与される接触冷感効果を一層高めることができる。
【0034】
(4)第4シート14は、折り返されて第1シート11の外面の縁部を覆う折り返し部16を有する。
同構成によれば、編み物製の第4シート14の折り返し部16によって第1シート11の外面の縁部が覆われている。このため、第1シート11、第2シート12、及び第3シート13の縁部が外部に露出しなくなる。したがって、マスク本体10Aの縁部が毛羽立つことを抑制できる。したがって、肌触りが一層向上する。
【0035】
<変更例>
上記実施形態は、例えば以下のように変更して実施することもできる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0036】
・第3シート13は、ポリエステルなどのポリエステル系樹脂に限られず、例えばポリアミド系樹脂や、ポリウレタン系樹脂であってもよい。
・第3シート13は、第2シート12と同様の大きさの繊維間隙を有するものとしたり、第1シート11及び第2シート12とは異なる大きさの繊維間隙を有するものとしてもよい。
【0037】
・第4シート14に対するキシリトール加工を省略してもよい。
・第4シート14に折り返し部16を設けることとしたが、折り返し部16を設けなくてもよい。すなわち、第4シート14をシート本体15のみによって構成することもできる。
【0038】
・第4シート14の編み物を構成する繊維は、ナイロンに限られない。例えば、ポリエステルやレーヨンなどの繊維により第4シート14の編み物を構成するようにしてもよい。また、複数の繊維によって第4シート14の編み物を構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
10…マスク
10A…マスク本体
11…第1シート
12…第2シート
13…第3シート
14…第4シート
15…シート本体
16…折り返し部
16A…端縁
18…プリーツ
19…芯材
20…溶着部群
20A…溶着部
25…耳掛け部
図1
図2
図3
図4