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特開2022-34730ガラス繊維の製造方法、及びブッシング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034730
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】ガラス繊維の製造方法、及びブッシング
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/083 20060101AFI20220225BHJP
【FI】
C03B37/083
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020138567
(22)【出願日】2020-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松浦 禅
【テーマコード(参考)】
4G021
【Fターム(参考)】
4G021MA02
(57)【要約】
【課題】ブッシングの寿命を延ばすことで、ガラス繊維の生産性を高めることを可能にしたガラス繊維の製造方法、及びブッシングを提供する。
【解決手段】ガラス繊維の製造方法は、ブッシング11を用いてガラス繊維を紡糸する紡糸工程を備える。ブッシング11は、ベースプレート11bとベースプレート11bの底面に設けられるノズル群とを有する。ブッシング11のノズル群のノズルNは、白金又は白金合金から構成される。ガラス繊維の製造方法は、ノズル群の周囲に、白金の粉末又は揮発物を噴射した状態で紡糸工程を行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートと前記ベースプレートの底面に設けられるノズル群とを有するブッシングを用いてガラス繊維を紡糸する紡糸工程を備えるガラス繊維の製造方法であって、
前記ノズル群のノズルは、白金又は白金合金から構成され、
前記ノズル群の周囲に、白金の粉末又は揮発物を噴射した状態で前記紡糸工程を行う、ガラス繊維の製造方法。
【請求項2】
ベースプレートと前記ベースプレートの底面に設けられるノズル群とを有するブッシングを用いてガラス繊維を紡糸する紡糸工程を備えるガラス繊維の製造方法であって、
前記ノズル群のノズルは、白金又は白金合金から構成され、
前記ノズル群の周囲に、酸素との反応性が白金よりも高い金属を含む金属部材を配置した状態、又は酸素との反応性が白金よりも高い金属の粉末又は揮発物を噴射した状態で前記紡糸工程を行う、ガラス繊維の製造方法。
【請求項3】
前記金属部材は、前記ベースプレートの底面に沿って延びる長尺状の金属部材である、請求項2に記載のガラス繊維の製造方法。
【請求項4】
前記金属部材は、前記ノズル群の外周の少なくとも一部に沿って配置される前記長尺状の金属部材を含む、請求項3に記載のガラス繊維の製造方法。
【請求項5】
前記金属部材は、前記ノズル群の隣り合うノズルの間に配置される前記長尺状の金属部材を含む、請求項3又は請求項4に記載のガラス繊維の製造方法。
【請求項6】
前記ベースプレートは、長四角形状の底面を有し、前記長尺状の金属部材は、前記ベースプレートの長手方向に沿って配置される、請求項3から請求項5のいずれか一項に記載のガラス繊維の製造方法。
【請求項7】
前記ブッシングは、前記ノズル群の下方位置に気体を噴射する噴射部を備え、
前記噴射部から気体を噴射した状態で前記紡糸工程を行う、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のガラス繊維の製造方法。
【請求項8】
前記噴射部から噴射する気体は、空気中の酸素濃度よりも低い酸素濃度を有する、請求項7に記載のガラス繊維の製造方法。
【請求項9】
前記ベースプレートは、対向する第1辺及び第2辺を有する形状の底面を有し、
前記噴射部は、前記ベースプレートの前記第1辺側に配置され、前記第2辺側に向けて前記気体を噴射する噴射部と、
前記ベースプレートの前記第2辺側に配置され、前記第1辺側に向けて前記気体を噴射する噴射部と、を備える、請求項7又は請求項8に記載のガラス繊維の製造方法。
【請求項10】
前記噴射部は、前記第1辺に沿って配列される複数の噴射口と、前記第2辺に沿って配列される複数の噴射口とを有する、請求項9に記載のガラス繊維の製造方法。
【請求項11】
前記噴射部は、前記ベースプレートの前記第1辺側から噴射される気体と、前記ベースプレートの前記第2辺側から噴射される気体とが衝突するように対向して配置される噴射口を有する、請求項9又は請求項10に記載のガラス繊維の製造方法。
【請求項12】
ベースプレートと前記ベースプレートの底面に設けられるノズル群とを備えるブッシングであって、
前記ノズル群のノズルは、白金又は白金合金から構成され、
前記ブッシングは、前記ノズル群の周囲に配置される金属部材を備え、
前記金属部材は、酸素との反応性が白金よりも高い金属を含む、ブッシング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維の製造方法、及びブッシングに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、ガラスフィラメントの紡糸には、溶融ガラスを流出させる複数のノズルを備えるブッシングが用いられている。特許文献1には、ブッシングの最外層のノズル列を目封止する構成が開示されている。目封止したノズル列は、ノズル群の防風壁となるため、ノズル群に向かって流入する気流、すなわち随伴気流を要因としたノズル群の摩耗を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-231926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のブッシングでは、ブッシングの寿命を延ばすことが可能であるものの、目封止されたノズルが摩耗することにより、ノズル群に向かって流入する随伴気流が増える。このように、ブッシングの寿命を延ばすという観点で未だ改善の余地がある。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ブッシングの寿命を延ばすことで、ガラス繊維の生産性を高めることを可能にしたガラス繊維の製造方法、及びブッシングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するガラス繊維の製造方法は、ベースプレートと前記ベースプレートの底面に設けられるノズル群とを有するブッシングを用いてガラス繊維を紡糸する紡糸工程を備えるガラス繊維の製造方法であって、前記ノズル群のノズルは、白金又は白金合金から構成され、前記ノズル群の周囲に、白金の粉末又は揮発物を噴射した状態で前記紡糸工程を行う。
【0007】
ブッシングのノズルは、ノズル中の白金が空気中の酸素により酸化されることで白金酸化物が生成され、その白金酸化物が揮発することにより摩耗する。上記方法によれば、ノズル群の周囲の雰囲気中には、白金の粉末又は揮発物の噴射により供給された白金の粉末又は白金の揮発物が存在するため、白金と雰囲気中の酸素とから白金酸化物が生成する酸化反応は、速やかに平衡状態となる。このため、ノズルと酸素との酸化反応が遅くなり、ノズル中の白金の酸化反応を要因としたノズル群の摩耗を抑えることができる。
【0008】
上記課題を解決するガラス繊維の製造方法は、ベースプレートと前記ベースプレートの底面に設けられるノズル群とを有するブッシングを用いてガラス繊維を紡糸する紡糸工程を備えるガラス繊維の製造方法であって、前記ノズル群のノズルは、白金又は白金合金から構成され、前記ノズル群の周囲に、酸素との反応性が白金よりも高い金属を含む金属部材を配置した状態、又は酸素との反応性が白金よりも高い金属の粉末又は揮発物を噴射した状態で前記紡糸工程を行う。
【0009】
この方法によれば、ノズル群の周囲では、酸素との反応性が白金よりも高い金属と雰囲気中の酸素とから酸化物が生成する。すなわち、この金属が優先的に酸素と反応し、ノズル群の周囲の雰囲気中の酸素が消費されるため、ノズル群の周囲の雰囲気中の酸素濃度を低下させることができる。これにより、ノズル中の白金の酸化反応が抑えられることで、ノズル中の白金の酸化反応を要因としたノズル群の摩耗を抑えることができる。
【0010】
上記ガラス繊維の製造方法において、前記金属部材は、前記ベースプレートの底面に沿って延びる長尺状の金属部材であることが好ましい。この方法によれば、ノズルの周囲の酸素濃度を容易に低下させることができる。また、金属部材を容易に交換することができる。
【0011】
上記ガラス繊維の製造方法において、前記金属部材は、前記ノズル群の外周の少なくとも一部に沿って配置される前記長尺状の金属部材を含むことが好ましい。この方法によれば、ノズル群の外周からノズル間に侵入する酸素を容易に低減することができる。
【0012】
上記ガラス繊維の製造方法において、前記金属部材は、前記ノズル群の隣り合うノズルの間に配置される前記長尺状の金属部材を含むことが好ましい。この方法によれば、ノズルの周囲の酸素濃度を容易に低下させることができる。
【0013】
上記ガラス繊維の製造方法において、前記ベースプレートは、長四角形状の底面を有し、前記長尺状の金属部材は、前記ベースプレートの長手方向に沿って配置されることが好ましい。この方法によれば、ノズルの周囲の酸素濃度を容易に低下させることができる。
【0014】
上記ガラス繊維の製造方法において、前記ブッシングは、前記ノズル群の下方位置に気体を噴射する噴射部を備え、前記噴射部から気体を噴射した状態で前記紡糸工程を行うことが好ましい。この方法によれば、ノズル群の下方位置に気体を噴射することで、気体の噴射位置よりも上方の空間に存在する気体を滞留させることができる。これにより、ノズル群の周囲の雰囲気を安定させることができる。
【0015】
上記ガラス繊維の製造方法において、前記噴射部から噴射する気体は、空気中の酸素濃度よりも低い酸素濃度を有することが好ましい。この方法によれば、ノズル群の下方位置からノズル群の周囲の雰囲気中に酸素が混入することを抑えることができる。
【0016】
上記ガラス繊維の製造方法において、前記ベースプレートは、対向する第1辺及び第2辺を有する形状の底面を有し、前記噴射部は、前記ベースプレートの前記第1辺側に配置され、前記第2辺側に向けて前記気体を噴射する噴射部と、前記ベースプレートの前記第2辺側に配置され、前記第1辺側に向けて前記気体を噴射する噴射部と、を備えることが好ましい。
【0017】
この方法によれば、ベースプレートの第1辺側に配置される噴射部、及びベースプレートの第2辺側に配置される噴射部の各噴射部から噴射される気体により、ノズル群の下方を好適に覆うことができるため、気体の噴射位置よりも上方の空間に存在する気体をより滞留させることができる。
【0018】
上記ガラス繊維の製造方法において、前記噴射部は、前記第1辺に沿って配列される複数の噴射口と、前記第2辺に沿って配列される複数の噴射口とを有することが好ましい。この方法によれば、ベースプレートの第1辺に沿って配置される複数の噴射口と、ベースプレートの第2辺に沿って配置される複数の噴射口とから気体を噴射することで、気体の噴射量を抑えつつ、ベースプレートの中央部分まで気体を到達させることができる。
【0019】
上記ガラス繊維の製造方法において、前記噴射部は、前記ベースプレートの前記第1辺側から噴射される気体と、前記ベースプレートの前記第2辺側から噴射される気体とが衝突するように対向して配置される噴射口を有することが好ましい。この方法によれば、上記気体がベースプレートの底面に沿ってベースプレートを通過することを抑えることができる。これにより、上記気体をノズル群の下方に滞留させることで、気体の噴射位置よりも上方の空間に存在する気体をさらに滞留させることができる。
【0020】
上記課題を解決するブッシングは、ベースプレートと前記ベースプレートの底面に設けられるノズル群とを備えるブッシングであって、前記ノズル群のノズルは、白金又は白金合金から構成され、前記ブッシングは、前記ノズル群の周囲に配置される金属部材を備え、前記金属部材は、酸素との反応性が白金よりも高い金属を含む。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ブッシングの寿命を延ばすことで、ガラス繊維の生産性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態におけるガラス繊維の製造を説明する説明図である。
図2】ブッシングを示す部分断面図である。
図3】ブッシングの一部を切り欠いて示す底面図である。
図4】第2実施形態のブッシングを示す部分断面図である。
図5】ブッシングを示す底面図である。
図6】第3実施形態のブッシングを示す部分断面図である。
図7】ブッシングを示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
以下、ガラス繊維の製造方法の第1実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、ブッシング11は、ガラス繊維(ガラスストランドGS)の製造に用いられる。ガラス繊維の製造装置は、ブッシング11と、ブッシング11から引き出された多数のガラスフィラメントGFに液体状の集束剤を塗布するアプリケータ12と、集束剤が塗布された多数のガラスフィラメントGFを集束させるギャザリングシュー13とを備えている。多数のガラスフィラメントGFは、ギャザリングシュー13により集束されることで、ガラスストランドGSが得られる。なお、図示を省略するが、ガラス繊維の製造装置は、ガラスストランドGSを往復移動させるトラバースと、トラバースを通過したガラスストランドGSを巻き取るコレットとを備えている。
【0024】
<ブッシング11>
図2に示すように、ブッシング11は、溶融ガラスMGが供給されるブッシング本体11aと、ブッシング本体11aの底部に設けられたベースプレート11bとを備えている。なお、図示を省略するが、ブッシング本体11aは、溶融ガラスMGが供給される供給口、ベースプレート11b上に異物が堆積するのを抑制するスクリーン、抵抗加熱用のターミナル等を有している。
【0025】
図3に示すように、ベースプレート11bは、対向する第1辺S1及び第2辺S2を有する形状の底面を有している。第1実施形態のベースプレート11bは、4辺形状の底面を有している。第1実施形態のベースプレート11bは、長方形状の底面を有しているが、例えば、正方形状の底面を有していてもよい。第1実施形態のベースプレート11bは、対向する一対の長辺である第1辺S1及び第2辺S2と、対向する一対の短辺である第3辺S3及び第4辺S4とを有している。図面では、ベースプレート11bの長手方向をX方向、ベースプレート11bの短手方向をY方向、上方向をZ方向として示している。
【0026】
図2及び図3に示すように、ブッシング11は、ベースプレート11bの底面に設けられるノズル群を備えている。各ノズルNには、溶融ガラスMGが供給され、ガラスフィラメントGFが引き出される。図面では、ブッシング11のノズル群を簡略化して示しているが、ノズル数は、800~10000本であることが好ましく、2000~8000本であることがより好ましい。
【0027】
ノズルNは、白金又は白金合金から構成されている。ブッシング本体11a、及びベースプレート11bの材料としては、例えば、貴金属又は貴金属合金が挙げられる。貴金属は、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、又はオスミウムである。ブッシング本体11a、及びベースプレート11bの材料は、耐久性を高めるという観点から、白金又は白金合金であることが好ましい。白金合金としては、例えば、白金ロジウム合金が挙げられる。
【0028】
ブッシング11は、白金の粉末又は揮発物を含有する流体11Gを噴射する第1噴射部14を備えている。白金の揮発物は、酸素を含む雰囲気下で白金又は白金合金を加熱することにより得ることができる。白金の揮発物は、実質的には、PtO、Pt、及びPtOから選ばれる少なくとも一種の状態で揮発している。
【0029】
流体11Gには、噴射媒体を含有させることができる。噴射媒体としては、例えば、空気、希ガス(ヘリウム、アルゴン等)、窒素、二酸化炭素、水素等が挙げられる。
第1噴射部14は、ベースプレート11bの第1辺S1側に配置されている。第1噴射部14は、ベースプレート11bの第1辺S1側から第2辺S2側に向けて流体11Gを噴射する。そして、第1噴射部14は、ベースプレート11bの底面と、ノズルNの先端との間の領域に流体11Gを噴射する。
【0030】
第1実施形態の第1噴射部14は、流体11Gを噴射する複数の第1噴射口H1を有している。複数の第1噴射口H1は、ベースプレート11bの第1辺S1に沿って配列されている。第1実施形態の複数の第1噴射口H1は、ベースプレート11bの第1辺S1に沿って一列となるように配置されているが、これに限定されず、例えば複数列となるように配置されてもよい。なお、図面では、流体11Gの流れを白抜き矢印で示している。
【0031】
第1噴射部14は、複数の第1噴射口H1を有する第1筒状部材15を備えている。第1筒状部材15は、ベースプレート11bの第1辺S1に沿って延びるように配置されている。第1筒状部材15は、ベースプレート11bの第1辺S1に沿って延びる第1流路15aを有し、この第1流路15aに複数の第1噴射口H1が連通している。第1筒状部材15は、長さ方向の両端部から流体11Gが流入されるように構成されているが、例えば、長さ方向の両端部のうち一端部又は長さ方向の中央部から流体11Gが流入されるように構成されていてもよい。
【0032】
ブッシング11は、上記流体11Gを噴射する第2噴射部16を備えている。第2噴射部16は、ベースプレート11bの第2辺S2側に配置されている。第2噴射部16は、ベースプレート11bの第2辺S2側から第1辺S1側に向けて流体11Gを噴射する。また、第2噴射部16は、ベースプレート11bの底面と、ノズルNの先端との間の領域に流体11Gを噴射する。
【0033】
第2噴射部16は、流体11Gを噴射する複数の第2噴射口H2を有している。複数の第2噴射口H2は、ベースプレート11bの第2辺S2に沿って配列されている。第1実施形態の複数の第2噴射口H2は、ベースプレート11bの第2辺S2に沿って一列となるように配置されているが、これに限定されず、例えば複数列となるように配置されてもよい。
【0034】
第2噴射部16は、複数の第2噴射口H2を有する第2筒状部材17を備えている。第2筒状部材17は、ベースプレート11bの第2辺S2に沿って延びるように配置されている。第2筒状部材17は、ベースプレート11bの第2辺S2に沿って延びる第2流路17aを有し、この第2流路17aに複数の第2噴射口H2が連通している。第2筒状部材17は、長さ方向の両端部から流体11Gが流入されるように構成されているが、例えば、長さ方向の両端部のうち一端部又は長さ方向の中央部から流体11Gが流入されるように構成されていてもよい。
【0035】
第1噴射部14及び第2噴射部16は、ベースプレート11bに支持されているが、例えば、ブッシング本体11a等のベースプレート11b以外の部分に支持されてもよい。
第1噴射部14及び第2噴射部16は、第1辺S1及び第2辺S2に沿った方向で隣り合う複数のノズルNの間に向けて流体11Gを噴射するように配置される噴射口を有している。第1噴射部14及び第2噴射部16は、第1噴射部14から噴射される流体11Gと、第2噴射部16から噴射される流体11Gとが衝突するように対向して配置される噴射口を有している。
【0036】
ブッシング11は、ノズル群の下方位置に気体12Gを噴射する第3噴射部18を備えている。気体12Gは、白金の粉末や揮発物を含有していてもよいし、含有していなくてもよい。気体12Gは、空気であってもよい。気体12Gは、空気中の酸素濃度よりも低い酸素濃度を有する気体であることが好ましい。空気中の酸素濃度よりも低い酸素濃度の気体としては、例えば、ヘリウム、アルゴン等の希ガス、窒素、二酸化炭素、水素等を含む気体が挙げられる。空気中の酸素濃度よりも低い酸素濃度の気体は、酸素を含まない気体であってもよいし、例えば、上述した酸素以外の気体と、空気とを混合した気体であってもよい。気体12Gの酸素濃度は、20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは、15質量%以下であり、さらに好ましくは、10質量%以下である。
【0037】
第3噴射部18は、ベースプレート11bの第1辺S1側に配置されている。第3噴射部18は、ベースプレート11bの第1辺S1側から第2辺S2側に向けて気体12Gを噴射する。第1実施形態の第3噴射部18は、第1噴射部14の下面に支持されているが、ベースプレート11b、ブッシング本体11a等に支持されてもよい。
【0038】
第1実施形態の第3噴射部18は、気体12Gを噴射する複数の第3噴射口H3を有している。複数の第3噴射口H3は、ベースプレート11bの第1辺S1に沿って配列されている。第1実施形態の複数の第3噴射口H3は、ベースプレート11bの第1辺S1に沿って一列となるように配置されているが、これに限定されず、例えば複数列となるように配置されてもよい。なお、図面では、気体12Gの流れを破線の白抜き矢印で示している。
【0039】
第3噴射部18は、複数の第3噴射口H3を有する第3筒状部材19を備えている。第3筒状部材19は、ベースプレート11bの第1辺S1に沿って延びるように配置されている。第3筒状部材19は、ベースプレート11bの第1辺S1に沿って延びる第3流路19aを有し、この第3流路19aに複数の第3噴射口H3が連通している。第3筒状部材19は、長さ方向の両端部から気体12Gが流入されるように構成されているが、例えば、長さ方向の両端部のうち一端部又は長さ方向の中央部から気体12Gが流入されるように構成されていてもよい。
【0040】
ブッシング11は、ノズル群の下方位置に気体12Gを噴射する第4噴射部20を備えている。第4噴射部20は、ベースプレート11bの第2辺S2側に配置されている。第4噴射部20は、ベースプレート11bの第2辺S2側から第1辺S1側に向けて気体12Gを噴射する。第1実施形態の第4噴射部20は、第2噴射部16の下面に支持されているが、ベースプレート11b、ブッシング本体11a等に支持されてもよい。
【0041】
第1実施形態の第4噴射部20は、気体12Gを噴射する複数の第4噴射口H4を有している。複数の第4噴射口H4は、ベースプレート11bの第2辺S2に沿って配列されている。第1実施形態の複数の第4噴射口H4は、ベースプレート11bの第2辺S2に沿って一列となるように配置されているが、これに限定されず、例えば複数列となるように配置されてもよい。
【0042】
第4噴射部20は、複数の第4噴射口H4を有する第4筒状部材21を備えている。第4筒状部材21は、ベースプレート11bの第2辺S2に沿って延びるように配置されている。第4筒状部材21は、ベースプレート11bの第2辺S2に沿って延びる第4流路21aを有し、この第4流路21aに複数の第4噴射口H4が連通している。第4筒状部材21は、長さ方向の両端部から気体12Gが流入されるように構成されているが、例えば、長さ方向の両端部のうち一端部又は長さ方向の中央部から気体12Gが流入されるように構成されていてもよい。
【0043】
ブッシング11の第1噴射部14、第2噴射部16、第3噴射部18、及び第4噴射部20の材料としては、例えば、金属材料、セラミックス等が挙げられる。金属材料としては、ブッシング本体11a等の材料と同様に、貴金属又は貴金属合金が挙げられる。
【0044】
<ガラス繊維の製造装置>
以上のブッシング11を備えるガラス繊維の製造装置は、ブッシング11の第1噴射部14及び第2噴射部16に上記流体11Gを供給する流体供給装置と、ブッシング11の第3噴射部18及び第4噴射部20に上記気体12Gを供給する気体供給装置とをさらに備えている。流体供給装置は、図示を省略するが、流体11Gが充填される耐圧容器、耐圧容器から第1筒状部材15及び第2筒状部材17に流体11Gを送る第1の配管、流体11Gの流量を調整する第1のバルブ等を備えている。気体供給装置は、図示を省略するが、気体12Gが充填される耐圧容器、耐圧容器から第3筒状部材19及び第4筒状部材21に気体12Gを送る第2の配管、気体12Gの流量を調整する第2のバルブ等を備えている。
【0045】
<ガラス繊維の製造方法>
次に、ガラス繊維の製造方法について、主な作用とともに説明する。
ガラス繊維の製造方法は、ブッシング11を用いてガラス繊維を紡糸する紡糸工程を備えている。紡糸工程では、ブッシング11に溶融ガラスMGを供給し、ノズル群から複数のガラスフィラメントGFを引き出した後、複数のガラスフィラメントGFを集束することで、ガラス繊維(ガラスストランドGS)を製造する。ガラス繊維の製造方法では、ノズル群の周囲に、白金の粉末又は揮発物を噴射した状態で紡糸工程を行う。詳述すると、紡糸工程では、ブッシング11の第1噴射部14及び第2噴射部16から流体11Gを噴射した状態で、複数のガラスフィラメントGFを引き出す。
【0046】
ここで、ブッシング11のノズルNは、ノズルN中の白金が空気中の酸素により酸化されることで白金酸化物が生成され、その白金酸化物が揮発することにより摩耗する。第1実施形態のガラス繊維の製造方法における紡糸工程において、ノズル群の周囲の雰囲気中には、白金の粉末又は揮発物の噴射により供給された白金の粉末又は白金の揮発物が存在するため、白金と雰囲気中の酸素とから白金酸化物が生成する酸化反応は、速やかに平衡状態となる。このため、ノズルNと酸素との酸化反応が遅くなり、ノズルN中の白金の酸化反応を要因としたノズル群の摩耗を抑えることができる。
【0047】
より具体的に説明すると、白金の粉末はノズルNと比較して比表面積が大きいため、酸素との反応が起こりやすい。そのため、白金の粉末が酸素と反応し、そして揮発することにより、雰囲気中の白金酸化物の濃度が高まる。また、白金酸化物の揮発物を噴射することにより、雰囲気中の白金酸化物の濃度が高まる。このように白金酸化物の濃度が高まることにより、白金と白金酸化物の化学平衡状態となる。そして、この化学平衡状態を保つために、白金の酸化速度が遅くなる。
【0048】
第1実施形態のガラス繊維の製造方法では、ブッシング11の第3噴射部18及び第4噴射部20から気体12Gを噴射した状態で紡糸工程を行う。この方法によれば、ノズル群の下方位置に気体12Gを噴射することで、気体12Gの噴射位置よりも上方の空間に存在する流体11Gを滞留させることができる。これにより、ノズル群の周囲の雰囲気を安定させることができる。このため、ノズル群の周囲の雰囲気中の白金の粉末又は揮発物の濃度の低下を容易に抑えることができる。これにより、ノズルN中の白金の酸化反応を要因としたノズル群の摩耗をより抑えることが可能となる。
【0049】
ガラス繊維の形態としては、例えば、ガラスストランドGSを巻回したケーキが挙げられる。ガラスストランドGSは、例えば、所定長さにカットされたチョップドストランド、ミルドファイバ、ロービング、ヤーン、マット、クロス、テープ、又は組布等として利用することができる。ガラス繊維の用途としては、例えば、車両用途、電子材料用途、建材用途、土木用途、航空機関連用途、造船用途、物流用途、産業機械用途、及び日用品用途が挙げられる。
【0050】
次に、第1実施形態の作用及び効果について説明する。
(1-1)ブッシング11のノズル群のノズルNは、白金又は白金合金から構成されている。ガラス繊維の製造方法では、ノズル群の周囲に、白金の粉末又は揮発物を噴射した状態で紡糸工程を行う。この方法によれば、上述したように、ノズルN中の白金の酸化反応を要因としたノズル群の摩耗を抑えることができる。従って、ブッシング11の寿命を延ばすことで、ガラス繊維の生産性を高めることが可能となる。
【0051】
(1-2)ブッシング11は、ノズル群の下方位置に気体12Gを噴射する噴射部として、例えば、第3噴射部18を備えている。ガラス繊維の製造方法では、第3噴射部18から気体12Gを噴射した状態で紡糸工程を行う。この場合、上述したように、ノズル群の周囲の雰囲気中の白金の粉末又は揮発物の濃度の低下を容易に抑えることができる。これにより、ノズルN中の白金の酸化反応を要因としたノズル群の摩耗をより抑えることが可能となる。従って、ブッシング11の寿命をより延ばすことで、ガラス繊維の生産性をより高めることが可能となる。
【0052】
(1-3)ガラス繊維の製造方法において、例えば、第3噴射部18から噴射する気体12Gは、空気中の酸素濃度よりも低い酸素濃度を有することが好ましい。この場合、ノズル群の下方位置からノズル群の周囲の雰囲気中に酸素が混入することを抑えることができる。これにより、ノズルN中の白金の酸化反応を要因としたノズル群の摩耗をより抑えることができる。従って、ブッシング11の寿命をより延ばすことで、ガラス繊維の生産性をより高めることが可能となる。
【0053】
(1-4)ブッシング11のベースプレート11bは、対向する第1辺S1及び第2辺S2を有する形状の底面を有している。ブッシング11において、気体12Gを噴射する噴射部は、ベースプレート11bの第1辺S1側に配置され、第2辺S2側に向けて気体12Gを噴射する第3噴射部18と、ベースプレート11bの第2辺S2側に配置され、第1辺S1側に向けて気体12Gを噴射する第4噴射部20とを備えている。
【0054】
この場合、第3噴射部18及び第4噴射部20の各噴射部から噴射される気体12Gにより、ノズル群の下方を好適に覆うことができるため、気体12Gの噴射位置よりも上方の空間に存在する流体11Gをより滞留させることができる。これにより、ノズル群の周囲の雰囲気をより安定させることができる。このため、ノズル群の周囲の雰囲気中の白金の粉末又は揮発物の濃度の低下をさらに容易に抑えることができる。これにより、ノズルN中の白金の酸化反応を要因としたノズル群の摩耗をさらに抑えることが可能となる。
【0055】
(1-5)ガラス繊維の製造方法において、第3噴射部18は、ベースプレート11bの第1辺S1に沿って配列される複数の第3噴射口H3を有している。また、第4噴射部20は、ベースプレート11bの第2辺S2に沿って配列される複数の第4噴射口H4を有している。この場合、複数の第3噴射口H3と、複数の第4噴射口H4とから気体12Gを噴射することで、気体12Gの噴射量を抑えつつ、ベースプレート11bの中央部分まで気体12Gを到達させることができる。
【0056】
(1-6)ガラス繊維の製造方法において、第3噴射部18及び第4噴射部20は、ベースプレート11bの第1辺S1側から噴射される気体12Gと、ベースプレート11bの第2辺S2側から噴射される気体12Gとが衝突するように対向して配置される第3噴射口H3及び第4噴射口H4を有することが好ましい。この場合、気体12Gがベースプレート11bの底面に沿ってベースプレート11bを通過することを抑えることができる。これにより、気体12Gをノズル群の下方に滞留させることで、気体12Gの噴射位置よりも上方の空間に存在する流体11Gをさらに滞留させることができる。これにより、ノズルN中の白金の酸化反応を要因としたノズル群の摩耗をさらに抑えることが可能となる。
【0057】
(第2実施形態)
ガラス繊維の製造方法の第2実施形態について第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0058】
図4及び図5に示すように、ガラス繊維の製造方法に用いるブッシング11は、ノズル群の周囲に配置される金属部材22を備えている。金属部材22は、酸素との反応性が白金よりも高い金属を含む。金属部材22は、酸素との酸化反応により酸化物を生成する。金属部材22は、例えば、1.188V未満の標準電極電位を有する金属を含む。金属部材22は、単独の金属から構成されてもよいし、複数種の金属から構成された合金であってもよい。合金としては、例えば、ステンレス鋼等が挙げられる。
【0059】
金属部材22は、例えば、ベースプレート11bの底面に沿って延びる長尺状の金属部材22である。長尺状の金属部材22は、例えば、ノズル群よりもベースプレート11bの第1辺S1側となる位置においてノズル群の外周に沿って配置される第1金属部材22aと、ノズル群よりも第2辺S2側となる位置においてノズル群の外周に沿って配置される第2金属部材22bとを含む。第1金属部材22a及び第2金属部材22bは、ベースプレート11bの長手方向に沿って配置されている。
【0060】
長尺状の金属部材22は、中実の棒状部材であってもよいし、管状部材であってもよい。また、長尺状の金属部材22は、板状の金属部材であってもよいし、曲部を有する金属部材であってもよい。
【0061】
ブッシング11は、ノズル群の下方位置に気体12Gを噴射する第3噴射部18及び第4噴射部20を備えている。上記第1実施形態のブッシング11では、流体11Gを噴射する第1噴射部14及び第2噴射部16を備えているが、第2実施形態のブッシング11では、第1噴射部14及び第2噴射部16を省略することができる。
【0062】
ガラス繊維の製造方法では、ノズル群の周囲に、酸素との反応性が白金よりも高い金属を含む金属部材22を配置した状態で紡糸工程を行う。この方法によれば、ノズル群の周囲では、酸素との反応性が白金よりも高い金属と雰囲気中の酸素とから酸化物が生成する。すなわち、この金属が優先的に酸素と反応し、ノズル群の周囲の雰囲気中の酸素が消費されるため、ノズル群の周囲の雰囲気中の酸素濃度を低下させることができる。これにより、ノズルN中の白金の酸化反応が抑えられることで、ノズルN中の白金の酸化反応を要因としたノズル群の摩耗を抑えることができる。
【0063】
次に、第2実施形態の作用及び効果について説明する。
(2-1)ガラス繊維の製造方法では、ノズル群の周囲に、酸素との反応性が白金よりも高い金属を含む金属部材22を配置した状態で紡糸工程を行うことにより、ノズルN中の白金の酸化反応を要因としたノズル群の摩耗を抑えることができる。従って、ブッシング11の寿命を延ばすことで、ガラス繊維の生産性を高めることが可能となる。
【0064】
(2-2)ガラス繊維の製造方法において、金属部材22は、ベースプレート11bの底面に沿って延びる長尺状の金属部材22であることが好ましい。この場合、ノズルNの周囲の酸素濃度を容易に低下させることができる。また、金属部材22を容易に交換することができる。
【0065】
(2-3)ガラス繊維の製造方法において、金属部材22は、ノズル群の外周の少なくとも一部に沿って配置される長尺状の金属部材22を含むことが好ましい。この場合、ノズル群の外周からノズルN間に侵入する酸素を容易に低減することができる。
【0066】
(2-4)ガラス繊維の製造方法において、長尺状の金属部材22は、ベースプレート11bの長手方向に沿って配置されることが好ましい。この方法によれば、ノズルNの周囲の酸素濃度を容易に低下させることができる。
【0067】
(2-5)ガラス繊維の製造方法では、第3噴射部18及び第4噴射部20から気体12Gを噴射した状態で紡糸工程を行う。この方法によれば、ノズル群の下方位置に気体12Gを噴射することで、気体12Gの噴射位置よりも上方の空間に存在する気体を滞留させることができる。これにより、ノズル群の周囲の雰囲気を安定させることができる。このため、ノズル群の周囲の雰囲気中の酸素濃度の上昇を容易に抑えることができる。これにより、ノズルN中の白金の酸化反応を要因としたノズル群の摩耗をより抑えることが可能となる。
【0068】
(2-6)第2実施形態のガラス繊維の製造方法では、第1実施形態の(1-3)~(1-6)欄で説明した効果と同様の効果が得られる。
(第3実施形態)
ガラス繊維の製造方法の第3実施形態について第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0069】
第3実施形態のガラス繊維の製造方法では、金属の粉末又は揮発物を噴射した状態で紡糸工程を行う。第3実施形態では、第1実施形態の流体11Gに金属の粉末又は揮発物を含有させればよい。第3実施形態の流体11Gには、白金の粉末又は揮発物を含有させてもよいし、含有させなくてもよい。
【0070】
金属は、酸素との反応性が白金よりも高い金属である。金属は、例えば、1.188V未満の標準電極電位を有する。金属は、単独の金属から構成されてもよいし、複数種の金属から構成された合金であってもよい。合金としては、例えば、ステンレス鋼等が挙げられる。第3実施形態の流体11Gには、噴射剤を含有させることができる。噴射剤としては、例えば、空気、希ガス(ヘリウム、アルゴン等)、窒素、二酸化炭素、水素等が挙げられる。噴射剤は、空気、又は空気中の酸素濃度よりも低い酸素濃度の気体であることが好ましい。
【0071】
流体11G中における金属の濃度は、1ppm以上であることが好ましく、より好ましくは、3ppm以上であり、さらに好ましくは、10ppm以上である。
次に、第3実施形態の作用及び効果について説明する。
【0072】
(3-1)ガラス繊維の製造方法では、ノズル群の周囲に、酸素との反応性が白金よりも高い金属の粉末又は揮発物を噴射した状態で紡糸工程を行う。この方法によれば、ノズル群の周囲では、酸素との反応性が白金よりも高い金属と雰囲気中の酸素とから酸化物が生成する。すなわち、この金属が優先的に酸素と反応し、ノズル群の周囲の雰囲気中の酸素が消費されるため、ノズル群の周囲の雰囲気中の酸素濃度を低下させることができる。これにより、ノズルN中の白金の酸化反応が抑えられることで、ノズルN中の白金の酸化反応を要因としたノズル群の摩耗を抑えることができる。従って、ブッシング11の寿命を延ばすことで、ガラス繊維の生産性を高めることが可能となる。
【0073】
(3-2)第3実施形態のガラス繊維の製造方法においても、第2実施形態の(2-5)欄で説明した効果と同様の効果を得ることができる。第3実施形態のガラス繊維の製造方法においても、第1実施形態の(1-3)~(1-6)欄で説明した効果と同様の効果が得られる。
【0074】
(変更例)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0075】
・上記第1及び第3実施形態では、ベースプレート11bの4辺のうち、一対の長辺を第1辺S1及び第2辺S2として第1噴射部14及び第2噴射部16を配置しているが、ベースプレート11bの4辺のうち、一対の短辺を第1辺S1及び第2辺S2として第1噴射部14及び第2噴射部16を配置してもよい。
【0076】
・上記第1及び第3実施形態において、上記第1噴射部14及び第2噴射部16のいずれか一方を省略してもよい。また、第1及び第3実施形態において、流体11Gを噴射する噴射部を、ベースプレート11bの第3辺S3側及び第4辺S4側のうち、少なくとも一辺側に配置してもよい。
【0077】
・上記第1~第3実施形態では、ベースプレート11bの4辺のうち、一対の長辺を第1辺S1及び第2辺S2として第3噴射部18及び第4噴射部20を配置しているが、ベースプレート11bの4辺のうち、一対の短辺を第1辺S1及び第2辺S2として第3噴射部18及び第4噴射部20を配置してもよい。
【0078】
・上記第1~第3実施形態において、上記第3噴射部18及び第4噴射部20のいずれか一方を省略してもよい。また、気体12Gを噴射する噴射部を、ベースプレート11bの第3辺S3側及び第4辺S4側のうち、少なくとも一辺側に配置してもよい。
【0079】
・第1及び第3実施形態のブッシング11において、第1噴射部14における複数の第1噴射口H1は、いずれも第2噴射口H2に対して流体11Gが衝突する対向位置に配置されているが、第2噴射口H2に対して流体11Gが衝突しない非対向位置に配置される噴射口を含んでいてもよい。また、複数の第2噴射口H2についても、第1噴射口H1に対して流体11Gが衝突しない非対向位置に配置される噴射口を含んでいてもよい。また、複数の第1噴射口H1のいずれも、複数の第2噴射口H2に対して流体11Gが衝突しない非対向位置に配置されていてもよい。
【0080】
・第1~第3実施形態のブッシング11において、第3噴射部18における複数の第3噴射口H3は、いずれも第4噴射口H4に対して気体12Gが衝突する対向位置に配置されているが、第4噴射口H4に対して気体12Gが衝突しない非対向位置に配置される噴射口を含んでいてもよい。また、複数の第4噴射口H4についても、第3噴射口H3に対して気体12Gが衝突しない非対向位置に配置される噴射口を含んでいてもよい。また、複数の第3噴射口H3のいずれも、複数の第4噴射口H4に対して気体12Gが衝突しない非対向位置に配置されていてもよい。
【0081】
・第1及び第3実施形態のブッシング11において、第1噴射口H1又は第2噴射口H2の数は、複数に限定されず単数であってもよい。第1~第3実施形態のブッシング11において、第3噴射口H3又は第4噴射口H4の数は、複数に限定されず単数であってもよい。
【0082】
・第1及び第3実施形態のブッシング11において、第1噴射口H1の形状又は第2噴射口H2の形状は、円形以外の形状であってもよい。第1噴射口H1の形状又は第2噴射口H2の形状としては、例えば、楕円、多角形状、スリット形状等が挙げられる。第1~第3実施形態のブッシング11において、第3噴射口H3の形状又は第4噴射口H4の形状は、円形以外の形状であってもよい。第3噴射口H3の形状又は第4噴射口H4の形状としては、例えば、楕円、多角形状、スリット形状等が挙げられる。
【0083】
・複数の第1噴射口H1の開口面積は、互いに同じであってもよいし、異なってもよい。また、複数の第2噴射口H2の開口面積、複数の第3噴射口H3の開口面積、及び複数の第4噴射口H4の開口面積の各々についても、互いに同じであってもよいし、異なってもよい。
【0084】
図6及び図7に示すように、第2実施形態のブッシング11の金属部材22は、ノズル群の隣り合うノズルの間に配置される長尺状の第3金属部材22cを含んでもよい。この場合であっても、ノズルの周囲の酸素濃度を容易に低下させることができる。なお、ブッシング11において、第2実施形態の第1金属部材22a及び第2金属部材22bの少なくとも一方と、第3金属部材22cとを組み合わせて配置することもできる。
【0085】
・第2実施形態のブッシング11において、金属部材22の形状は、例えば、塊状等の形状であってもよい。また、突起形状の金属部材をベースプレート11bの底面から下方に突出するように配置してもよい。
【0086】
・第1及び第3実施形態において、ブッシング11の第1噴射部14は、ベースプレート11bの第1辺S1に沿って延びる第1筒状部材15を有しているが、例えば、ベースプレート11bの第1辺S1と交差する方向に延びる配管とその先端に設けられたガスノズルとにより構成することもできる。第2噴射部16、第1~第3実施形態の第3噴射部18及び第4噴射部20の各々についても、例えば、ベースプレート11bの第1辺S1又は第2辺S2と交差する方向に延びる配管とその先端に設けられたガスノズルとにより構成することもできる。
【0087】
・第1及び第3実施形態において、ブッシング11の第1噴射口H1及び第2噴射口H2は、ベースプレート11bの第1辺S1及び第2辺S2に沿った方向で隣り合う複数のノズルの間に向けて流体11Gを噴射するように配置されているが、ノズルに向けて流体11Gを噴射するように配置することもできる。また、ブッシング11の第1噴射口H1及び第2噴射口H2は、ベースプレート11bの下方からベースプレート11bの底面に向かうようにベースプレート11bの底面に対して傾斜する方向から流体11Gを噴射するように配置されてもよい。
【0088】
・ブッシング11のベースプレート11bは、4辺形状の底面以外にも、6辺形状、8辺形状のような2N(但し、Nは、3以上の整数)辺形状であってもよい。
【符号の説明】
【0089】
11…ブッシング
11b…ベースプレート
12G…気体
18…第3噴射部
20…第4噴射部
22…金属部材
GF…ガラスフィラメント
GS…ガラスストランド
N…ノズル
S1~S4…第1~第4辺
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7