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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034783
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】母指用装具
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/10 20060101AFI20220225BHJP
   A61F 5/01 20060101ALI20220225BHJP
   A61F 13/10 20060101ALI20220225BHJP
   A41D 13/08 20060101ALI20220225BHJP
   A41D 13/05 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
A61F5/10
A61F5/01 N
A61F13/10 W
A41D13/08 107
A41D13/05 156
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020138649
(22)【出願日】2020-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000151380
【氏名又は名称】アルケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】松村 近代
(72)【発明者】
【氏名】椎名 裕亮
(72)【発明者】
【氏名】三浦 俊樹
【テーマコード(参考)】
3B011
4C098
【Fターム(参考)】
3B011AA06
3B011AB09
3B011AC17
3B011AC21
4C098AA02
4C098BB10
4C098BC16
4C098BC46
4C098BD01
4C098DD03
(57)【要約】
【課題】日常生活動作が不要に制限されず、かつ母指を良肢位で固定できる母指用装具を提供すること。
【解決手段】本発明は、母指基節骨の少なくとも一部を被覆する第1の固定部と、母指中手骨の少なくとも一部を被覆する第2の固定部と、前記第1の固定部及び前記第2の固定部を連結する第3の固定部と、を備え、前記第1の固定部、前記第2の固定部、及び前記第3の固定部は、母指MP関節を屈曲位にして固定する、母指用装具を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
母指基節骨の少なくとも一部を被覆する第1の固定部と、
母指中手骨の少なくとも一部を被覆する第2の固定部と、
前記第1の固定部及び前記第2の固定部を連結する第3の固定部と、を備え、
前記第1の固定部、前記第2の固定部、及び前記第3の固定部は、母指MP関節を屈曲位にして固定する、母指用装具。
【請求項2】
前記第1の固定部は、母指IP関節と母指MP関節との間の位置の少なくとも一部を被覆するように構成されている、
請求項1に記載の母指用装具。
【請求項3】
前記第2の固定部の一部は、母指と示指との間の水かきにあたる位置を被覆するように構成されている、
請求項1又は2に記載の母指用装具。
【請求項4】
前記第2の固定部は、近位手掌皮線及び/又は母指球皮線より母指側の位置を被覆するように構成されている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の母指用装具。
【請求項5】
前記第2の固定部は、手関節より母指側の位置を被覆するように構成されている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の母指用装具。
【請求項6】
前記第1の固定部、前記第2の固定部、及び前記第3の固定部は、1枚の部材によって構成されている、
請求項1~5のいずれか一項に記載の母指用装具。
【請求項7】
前記部材は、可塑性を有する、
請求項6に記載の母指用装具。
【請求項8】
前記部材は、3点曲げ試験において、曲げ初期の荷重が30~60N、曲げ途中の荷重が50~90Nである、
請求項6又は7に記載の母指用装具。
【請求項9】
前記部材は、撥水性を有する、
請求項6~8のいずれか一項に記載の母指用装具。
【請求項10】
前記部材は、皮膚表面と対向する側に、クッション性を有するクッション部材が設けられている、
請求項6~9のいずれか一項に記載の母指用装具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、母指用装具に関する。
【背景技術】
【0002】
手の変形性関節症は、手の酷使や加齢により関節軟骨の老化や摩耗が進行し、関節部位に腫れや痛みが生じる疾患である。手の変形性関節症の一つとして、母指の付け根にある母指CM関節(指先から3番目の関節、母指手根中手関節)に腫れや痛みが生じる母指CM関節症が挙げられる。母指CM関節症は、特に中高年の女性に多くみられ、物を掴んだり字を書いたりするなどの母指の動作により、関節に強い痛みが生じる疾患である。
【0003】
母指CM関節症の治療及び/又は予防のために、母指CM関節の動きを制限する装具が種々提案されている。例えば特許文献1では、先端を露出させた状態で母指をそのMP関節近傍からCM関節を越えた部位までを包み込む母指キャップと、手関節を周回させて係止することで該母指キャップを固定するベルトとにより構成されるものであって、該母指キャップは母指外側に相当する部分に補強布を内包するシリコーンラバーにより形成されるものであることを特徴とする母指関節装具が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-218781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、例えば特許文献1において提案されているような母指用装具は、母指だけでなく、母指以外の指や手関節なども被覆する傾向にある。そのため、日常生活動作が不要に制限されるという問題がある。
【0006】
そこで本発明では、日常生活動作が不要に制限されず、かつ母指を良肢位で固定できる母指用装具を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、母指基節骨の少なくとも一部を被覆する第1の固定部と、母指中手骨の少なくとも一部を被覆する第2の固定部と、前記第1の固定部及び前記第2の固定部を連結する第3の固定部と、を備え、前記第1の固定部、前記第2の固定部、及び前記第3の固定部は、母指MP関節を屈曲位にして固定する、母指用装具を提供する。
前記第1の固定部は、母指IP関節と母指MP関節との間の位置の少なくとも一部を被覆するように構成されていてよい。
前記第2の固定部の一部は、母指と示指との間の水かきにあたる位置を被覆するように構成されていてよい。
前記第2の固定部は、近位手掌皮線及び/又は母指球皮線より母指側の位置を被覆するように構成されていてよい。
前記第2の固定部は、手関節より母指側の位置を被覆するように構成されていてよい。
前記第1の固定部、前記第2の固定部、及び前記第3の固定部は、1枚の部材によって構成されていてよい。
前記部材は、可塑性を有していてよい。
前記部材は、3点曲げ試験において、曲げ初期の荷重が30~60N、曲げ途中の荷重が50~90Nであってよい。
前記部材は、撥水性を有していてよい。
前記部材は、皮膚表面と対向する側に、クッション性を有するクッション部材が設けられていてよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、日常生活動作が不要に制限されず、かつ母指を良肢位で固定できる母指用装具を提供できる。なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本明細書に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施形態に係る母指用装具10の装着後の状態を掌側から見たときの模式図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る母指用装具10の装着後の状態を背側から見たときの模式図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る母指用装具10を示す模式図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る母指用装具10の製造工程を示す概略図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る母指用装具10の製造工程を示す概略図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係る母指用装具10の製造工程を示す概略図である。
図7】本発明の第1の実施形態に係る母指用装具10の製造工程を示す概略図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係る母指用装具10を示す模式図である。
図9】右手RHの構造を示す概略図である。
図10】母指CM関節症における母指CM関節及び母指MP関節の経時的な変形を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が限定されることはない。また、本発明は、下記の実施例及びその変形例のいずれかを組み合わせることができる。
【0011】
以下の実施形態の説明において、略平行、略直交のような「略」を伴った用語で構成を説明することがある。例えば、略平行とは、完全に平行であることを意味するだけでなく、実質的に平行である、すなわち、完全に平行な状態から例えば数%程度ずれた状態を含むことも意味する。他の「略」を伴った用語についても同様である。また、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。
【0012】
特に断りがない限り、図面において、「上」とは図中の上方向又は上側を意味し、「下」とは、図中の下方向又は下側を意味し、「左」とは図中の左方向又は左側を意味し、「右」とは図中の右方向又は右側を意味する。また、図面については、同一又は同等の要素又は部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
<1.本発明の概要>
まず、手の構造について図9を参照しつつ説明する。図9は、右手RHの構造を示す概略図である。図9に示すように、右手RHの母指には、指の付け根にある母指CM関節(指先から3番目の関節、母指手根中手関節)と、母指MP関節(指先から2番目の関節、母指中手指節間関節)と、母指IP関節(指先から1番目の関節、母指指節間関節)と、がある。
【0014】
母指CM関節に腫れや痛みが生じると、痛みを回避するための代償動作として母指MP関節が過伸展肢位になる傾向にある。母指MP関節の過伸展肢位が続くと、母指CM関節の亜脱臼肢位を助長するため、母指MP関節及び母指CM関節の変形が進行し、さらに痛みが生じる。このことについて図10を参照しつつ説明する。図10は、母指CM関節症における母指CM関節及び母指MP関節の経時的な変形を示す概略図である。
【0015】
図10Aは、母指CM関節症が生じていない、正常な状態の母指CM関節を示している。図10Bは、母指CM関節症が進行中の状態である。母指CM関節に少しずれが生じている。図10Cは、母指CM関節症が完全に生じている。母指MP関節が過伸展肢位になり、母指CM関節が亜脱臼肢位になっている。これにより、母指CM関節に痛みが生じる。
【0016】
従来、この母指CM関節症の治療及び/又は予防のための母指用装具は、母指だけでなく、母指以外の指や手関節なども被覆する傾向にある。そのため、日常生活動作が不要に制限されるという問題がある。日常生活動作とは、生活を営む上で不可欠な基本的行動をいい、例えば、食事、更衣、移動、排泄、整容、入浴などが挙げられる。
【0017】
また、このような母指用装具は、例えば母指CM関節を圧迫するなど、母指CM関節に作用を及ぼす傾向にある。
【0018】
以上のような状況に鑑み、本発明者らは本発明を完成した。本発明者の一実施形態に係る母指用装具は、母指及び/又はその近傍を被覆し、母指以外の指や手関節などは被覆しない構成である。これにより、煩わしさや不要な抑制などが生じにくくなっている。
【0019】
また、本発明者らは、母指MP関節を屈曲位にして固定することが、母指MP関節が過伸展肢位になることを低減し、母指CM関節の求心性を高めることに着目した。求心性とは、中心に向かう性質をいう。母指CM関節が手の中心に向かうことにより、母指CM関節が亜脱臼肢位になることを低減できる。つまり、本発明の一実施形態に係る母指用装具は、母指を良肢位で固定できる。ここで、本明細書における「良肢位」とは、母指CM関節への負担が少なくなるような最適な肢位のことをいう。
【0020】
<2.第1の実施形態>
(1)母指用装具10の構成
以下では、一実施形態として、着用者の右手RHに装着される母指用装具10について説明する。なお、母指用装具10は、着用者の左手に装着されてもよい。着用者の左手に装着する場合は、以下に説明する母指用装具10を左右反転して構成したものを、装着することで同様の効果が得られる。
【0021】
図1及び図2を参照しつつ、本発明の第1の実施形態に係る母指用装具10の構成について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る母指用装具10の装着後の状態を掌側から見たときの模式図である。図2は、当該状態を背側から見たときの模式図である。
【0022】
図1及び図2に示すとおり、本実施形態に係る母指用装具10は、母指基節骨の少なくとも一部を被覆する第1の固定部1と、母指中手骨の少なくとも一部を被覆する第2の固定部2と、第1の固定部1及び第2の固定部2を連結する第3の固定部3と、を備える。
【0023】
第1の固定部1、第2の固定部2、及び第3の固定部3は、母指MP関節を屈曲位にして固定する。母指MP関節の角度は特に限定されないが、例えば屈曲30度程度であってよい。これにより、母指用装具10は、母指CM関節の求心性を高めることができ、母指CM関節の変形を低減できる。つまり、母指用装具10は、母指を良肢位で固定できる。
【0024】
第1の固定部1は、母指IP関節を被覆しないように、母指IP関節と母指MP関節との間の位置の少なくとも一部を被覆するように構成されていてよい。第1の固定部1が母指IP関節を被覆しないため、手指の対立運動が妨げられない。これにより、例えば物を掴むなどの動作が容易になる。
【0025】
第1の固定部1は、母指基節骨を囲むように環状に形成されているが、この形状に限られない。図3に示すように、第1の固定部1は、例えば母指基節骨を挟むように略U字に形成されていてよい。図3は、本発明の第1の実施形態に係る母指用装具10を示す模式図である。
【0026】
ここで、図1及び図2の説明に戻る。第2の固定部2は、母指中手骨を囲むように構成されているが、この形状に限られない。第2の固定部2は、母指を挿入する開口部21を有していてよい。開口部21から挿入された母指は、第1の固定部1を貫通する。
【0027】
第2の固定部2の一部は、母指と示指との間の水かきにあたる位置を被覆するように構成されていてよい。これにより、母指と示指との間隔が広くなり、母指を橈側外転位で保持できる。
【0028】
第2の固定部2は、近位手掌皮線及び/又は母指球皮線を被覆しないように、近位手掌皮線及び/又は母指球皮線より母指側の位置を被覆するように構成されていてよい。第2の固定部2が近位手掌皮線及び/又は母指球皮線を被覆しないため、母指の外転運動が妨げられず、母指以外の指(示指、中指、薬指及び小指)の動作が妨げられない。その結果、例えば物を掴むなどの動作が容易になる。
【0029】
第2の固定部2は、手関節RWを被覆しないように、手関節RWより母指側の位置を被覆するように構成されていてよい。第2の固定部2が手関節RWを被覆しないため、手関節RWの可動域が制限されない。可動には、例えば回旋運動、外転運動、及び内転運動などが含まれる。第2の固定部2が手関節RWを被覆しないことにより、手関節RWの基本動作(例えば掌屈、背屈、橈屈、尺屈など)が妨げられない。
【0030】
第1の固定部1、第2の固定部2、及び第3の固定部3は、1枚の部材によって構成されていてよい。これにより、母指用装具10の製造工程において複数種の部材を準備する必要がなく、また、部材同士を接合する必要がないため、製造コストが低減される。
【0031】
母指用装具10の製造工程について図4~7を参照しつつ説明する。図4~7は、本発明の第1の実施形態に係る母指用装具10の製造工程を示す概略図である。
【0032】
図4は、製造工程における第1の段階であり、製造される前の状態を示している。左側の領域が第1の固定部1である。右側の領域が第2の固定部2である。第1の固定部1及び第2の固定部2を連結する領域が第3の固定部3である。第1の固定部1、第2の固定部2、及び第3の固定部3は、1枚の部材によって構成されている。
【0033】
図5は、製造工程における第2の段階であり、右手RHの形状に沿うように、第2の固定部2が折り曲げられた状態を示している。
【0034】
図6は、製造工程における第3の段階であり、右手RHの形状に沿うように、第2の固定部2が折り曲げられた状態を示している。図5に示す第2の段階における上部の領域が、下方向に屈曲している。これにより、母指を挿入する開口部21が形成される。
【0035】
図7は、製造工程における第4の段階であり、右手RHの形状に沿うように、第1の固定部1が折り曲げられた状態を示している。第1の固定部1は、母指基節骨を挟むように略U字に形成される。なお、第1の固定部1は、母指基節骨を囲むように環状に形成されてもよい。
【0036】
母指用装具10を構成する部材は、例えばアルミニウム合金や鋼などの金属材料であってもよいし、例えばポリプロピレンなどのプラスチック材料であってもよいし、例えばポリアセタールなどの樹脂材料であってもよい。
【0037】
母指用装具10を構成する部材は、可塑性を有することが好ましい。これにより、母指用装具10の形状が、着用者の手の形状や大きさなどに追従してフィットする。
【0038】
母指MP関節を確実に固定するために、母指用装具10は容易に変形しないことが好ましい。よって、母指用装具10を構成する部材は、引張強度が100~220N/mmであることが好ましい。より好ましくは、前記部材は、引張強度が110~210N/mmであってよい。より好ましくは、前記部材は、引張強度が120~200N/mmであってよい。ここで、本発明における引張強度は、幅20mm、長さ100mm、厚さ1mmの試験片にて、島津製作所社製オートグラフを用い、JIS Z2241に準拠して測定されるものとする。
【0039】
母指用装具10を構成する部材は、3点曲げ試験(押し込み試験)において、曲げ初期の荷重が30~60N、曲げ途中の荷重が50~90Nであることが好ましい。より好ましくは、前記部材は、曲げ初期の荷重が40~50Nの荷重、曲げ途中の荷重が60~80Nの荷重であってよい。ここで、本発明における3点曲げ試験は、幅20mm、長さ100mm、厚さ1mmの試験片を用意し、島津製作所社製オートグラフAG-20KNI及び5kNロードセルを用い、JIS Z2248に準拠して、23℃、試験速度100mm/分で行った。曲げ初期の荷重とは、1mm押し曲げたときの荷重(弾性領域の荷重)であり、曲げ途中の荷重とは、4~15mm押し曲げたときの荷重(塑性領域の荷重)である。これら引張強度及び/又は3点曲げ試験の特性により、母指MP関節に対する固定性が向上する。
【0040】
母指用装具10を構成する部材は、撥水性を有していてよい。これにより、例えば母指用装具10が水や汗などを含んだり、母指用装具10にカビが発生したりすることが低減できる。その結果、母指用装具10は快適に装着されることができる。
【0041】
<3.第2の実施形態>
図8を参照しつつ、本発明の第2の実施形態に係る母指用装具10の構成について説明する。図8は、本発明の第2の実施形態に係る母指用装具10を示す模式図である。
【0042】
図8に示すとおり、本実施形態に係る母指用装具10を構成する部材は、皮膚表面と対向する側に、クッション性を有するクッション部材4が設けられていてよい。クッション部材4には、例えばフェルト材やスポンジなどが用いられることができる。母指用装具10は、このクッション部材4と、上述した可塑性を有する部材との2層で構成されてよい。これにより、肌に痛みが生じにくくなり、フィット感が良好になる。ここで、可塑性を有する部材とクッション部材とを合わせた厚みは、装着快適性及びフィット感の観点から、5mm以下、好ましくは3mm以下であり、例えば、1mmの可塑性を有する部材と2mmのクッション材とで合わせて約3mmであってもよい。
【0043】
なお、本発明は、以下のような構成をとることもできる。
[1]
母指基節骨の少なくとも一部を被覆する第1の固定部と、
母指中手骨の少なくとも一部を被覆する第2の固定部と、
前記第1の固定部及び前記第2の固定部を連結する第3の固定部と、を備え、
前記第1の固定部、前記第2の固定部、及び前記第3の固定部は、母指MP関節を屈曲位にして固定する、母指用装具。
[2]
前記第1の固定部は、母指IP関節と母指MP関節との間の位置の少なくとも一部を被覆するように構成されている、
[1]に記載の母指用装具。
[3]
前記第2の固定部の一部は、母指と示指との間の水かきにあたる位置を被覆するように構成されている、
[1]又は[2]に記載の母指用装具。
[4]
前記第2の固定部は、近位手掌皮線及び/又は母指球皮線より母指側の位置を被覆するように構成されている、
[1]~[3]のいずれか一つに記載の母指用装具。
[5]
前記第2の固定部は、手関節より母指側の位置を被覆するように構成されている、
[1]~[4]のいずれか一つに記載の母指用装具。
[6]
前記第1の固定部、前記第2の固定部、及び前記第3の固定部は、1枚の部材によって構成されている、
[1]~[5]のいずれか一つに記載の母指用装具。
[7]
前記部材は、可塑性を有する、
[6]に記載の母指用装具。
[8]
前記部材は、3点曲げ試験において、曲げ初期の荷重が30~60N、曲げ途中の荷重が50~90Nである、
[6]又は[7]に記載の母指用装具。
[9]
前記部材は、撥水性を有する、
[6]~[8]のいずれか一つに記載の母指用装具。
[10]
前記部材は、皮膚表面と対向する側に、クッション性を有するクッション部材が設けられている、
[6]~[9]のいずれか一つに記載の母指用装具。
【符号の説明】
【0044】
10 母指用装具
1 第1の固定部
2 第2の固定部
21 開口部
3 第3の固定部
4 クッション部材
RH 右手
IP 母指IP関節
MP 母指MP関節
CM 母指CM関節
RF 母指
RW 手関節
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10