(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034844
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】電流検出器及び電子回路装置
(51)【国際特許分類】
G01R 15/20 20060101AFI20220225BHJP
【FI】
G01R15/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020138733
(22)【出願日】2020-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100120592
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】吉田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】坂脇 賢二
(72)【発明者】
【氏名】門馬 彰夫
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA17
2G025AB02
2G025AC01
(57)【要約】
【課題】実装先の外部基板への実装状態で充分な絶縁を得る。
【解決手段】電流センサ100は、実装先となる外部基板上で被測定電流を導通させる導体と接続される被測定導体106の一部を取り囲んで配置されるコア部材104と、コア部材104に形成されたギャップ内に配置されるASIC110と、ASIC110を外部基板と接続させる接続端子112と、コア部材104及びASIC110を内部に収容するケース体102とを備える。ケース体102は、外部基板への設置を可能とする設置部102kが外側に形成され、接続端子112を外部基板と接続可能に保持する。またケース体102には、外部基板への実装状態で外部基板との接続箇所となる被測定導体106及び接続端子112の端部同士の間を区画可能な絶縁壁102cが形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装先となる外部基板上で被測定電流を導通させる導体と接続される被測定導体の一部を取り囲んで配置されるコア部材と、
前記コア部材に形成されたギャップ内に配置される感磁素子と、
前記感磁素子を前記外部基板と接続させる接続端子と、
前記コア部材及び前記感磁素子を内部に収容するとともに前記外部基板上への設置を可能とする設置部が外側に形成され、前記接続端子を前記外部基板と接続可能に保持するケース体と、
前記外部基板への実装状態で前記外部基板との接続箇所となる前記被測定導体及び前記接続端子の端部同士の間を区画可能に前記ケース体の外側で前記設置部よりも実装方向へ突出して形成された絶縁部と
を備えた電流検出器。
【請求項2】
請求項1に記載の電流検出器において、
前記絶縁部は、
前記外部基板への実装状態で外部接続箇所となる前記被測定導体及び前記接続端子の端部同士の間に規定される絶縁距離の一部を構成可能な外面を有していることを特徴とする電流検出器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電流検出器において、
前記感磁素子は、
前記ケース体の内部で前記接続端子と接続された回路基板に実装された状態で収容されており、
前記ケース体は、
内部で前記感磁素子を前記コア部材との間に絶縁物を介することなくギャップ内に配置させており、
前記絶縁部は、
前記ケース体の外側で保持される前記被測定導体の端部と前記ケース体との間を区画するとともに、前記ケース体の外側で保持される前記被測定導体の端部と内部に収容された前記コア部材との間に規定される沿面距離を所定値以上とする大きさの壁形状を有することを特徴とする電流検出器。
【請求項4】
被測定電流を導通させる導体パターンとともに前記感磁素子の入出力信号を導通させる配線パターンが形成され、請求項1から3のいずれかに記載の電流検出器が前記設置部にて設置された状態で実装された外部基板と、
前記外部基板を貫通して形成され、前記電流検出器の実装状態で前記被測定導体及び前記接続端子の各端部とともに前記絶縁部をそれぞれ挿通させる複数の貫通孔と
を備えた電子回路装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流検出器、及びこれを備えた電子回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一次導体の電流を測定するための電流変換器として、ハウジングの中央開口部を囲む磁気コアや接続端子を含む磁場感知装置に加えて、ハウジング開口部内にU字型の導体コイル部分を含む導体モジュールを固定した構造の先行技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
先行技術の電流変換器は、中央開口部から磁気コアのギャップが延びる方向と導体コイル部分が延びる方向との間にある程度の角度(20°~40°)を持たせることで、ハウジング外で磁場感知装置の接続端子の屈曲端部分を導体コイル部分からできる限り離間させ、互いの間に電気的な絶縁距離をもたせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、製品単体の状態で導体コイル部分と接続端子との間にいくら絶縁距離をもたせていたとしても、外部回路基板に実装した状態で充分な絶縁が得られるとは限らない。
【0006】
本発明は、実装先の外部基板への実装状態で充分な絶縁を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔第1発明〕
本発明は、電流検出器を提供する。電流検出器は、被測定導体を備えた構造である態様と、被測定導体を自らが備えない構造である態様の両方がある。いずれの態様においても、被測定導体は、電流検出器の実装先となる外部基板上で被測定電流を導通させる導体と接続され、電流検出器の実装状態で、被測定導体に外部基板から被測定電流が導通することになる。また、電流検出器はコア部材を備え、コア部材は被測定導体の一部を取り囲んで配置される。被測定電流の導通時に発生する磁界は、コア部材によって収束される。電流検出器は、感磁素子及び接続端子を備え、感磁素子は、コア部材に形成されたギャップ内に配置されて磁界強度に応じた信号を出力する。感磁素子は、接続端子により外部基板に外部接続される。
【0008】
電流検出器は、ケース体を備える。ケース体は、コア部材及び感磁素子を内部に収容するとともに、電流検出器を外部基板上に設置(実装)可能とするための設置部をその外側に有する。さらにケース体は、接続端子を外部基板と接続可能に保持する。したがって、ケース体外側の設置部にて外部基板上に電流検出器を設置すると、接続端子を外部基板に接続させた状態での実装が可能となる。
【0009】
さらに電流検出器は、絶縁部を備える。絶縁部は、外部基板への実装状態で接続箇所(例えば半田付け箇所)となる被測定導体及び接続端子の端部同士の間を区画可能である。このため絶縁部は、ケース体の外側で設置部よりも電流検出器の実装方向へ突出して形成されている。これにより、本発明の電流検出器が外部基板に実装される場合は、必然的に絶縁部が外部基板に対して挿通されることとなり、この挿通形態において、絶縁部は被測定導体及び接続端子の端部同士の間を区画する。
【0010】
このとき、実装先となる外部基板には、様々な電気配線物等が不測の配置で存在している。このため、電流検出器としては被測定導体及び接続端子の端部同士の間に物理的な空間距離を持たせていても、実装状態で外部基板に存在する導体が一次側要素又は二次側要素となって互いに近接し、絶縁が不十分となることもあり得る。
【0011】
この点、本発明の電流検出器は、実装状態を想定して絶縁部により被測定導体及び接続端子の端部同士の間を区画しているので、実装先である外部基板に不測の配置で導体パターン等が存在していても、外部基板への実装状態で被測定導体(一次側)と接続端子(二次側)との間の絶縁を確実に保証することができる。
【0012】
絶縁部は、その外面が絶縁に関する絶縁距離(沿面距離、空間距離)の一部を構成することで、充分な絶縁距離の確保に寄与する。すなわち、電流検出器の外部基板への実装状態において、外部接続箇所(半田付け箇所)となる被測定導体及び接続端子の端部同士の間には、絶縁に関して外部基板等の外面に沿う絶縁距離(沿面距離、空間距離)が規定されることになる。このとき、端部同士の間には絶縁部が突出した状態となるため、その分の沿面距離、空間距離は延長され、結果として絶縁距離の確保に寄与することができる。なお、外部基板には、絶縁部を挿通させるための貫通孔が形成されることになるため、その分の沿面距離がさらに延長されるとの副次的効果も得られる。
【0013】
本発明の電流検出器は、実装先となる外部基板上に配置が想定される一次側要素(例えば被測定電流が流れる導体)と二次側要素である感磁素子との絶縁をも保証する。すなわち、感磁素子はケース体の内部で接続端子と接続された回路基板に実装された状態で収容されており、ケース体の内部で感磁素子は、コア部材との間に絶縁物(固形物である絶縁体、電気不導体等)を介することなくギャップ内に配置されている。このとき絶縁部は、ケース体の外側で保持される被測定導体の端部とケース体との間を区画するとともに、ケース体の外側で保持される被測定導体の端部と内部に収容されたコア部材との間に規定される沿面距離を所定値以上とする大きさの壁形状を有する。これにより、コア部材と感磁素子とが特に絶縁されていなくても、ケース体の外側に突出する一次側要素(被測定導体)の端部からコア部材までの沿面距離が予め充分に確保されているので、電流検出器の実装先となる外部基板上で配置が想定される他の一次側要素との絶縁を確実に保証することができる。
【0014】
〔第2発明〕
本発明は、電流検出器を備えた電子回路装置を提供する。電子回路装置は、第1発明の電流検出器が実装された外部基板を備える。外部基板には、電流検出器側の被測定導体及び接続端子の各端部を挿通させる複数の貫通孔が形成されているとともに、絶縁部を挿通させる貫通孔がさらに形成されている。これにより、電子回路装置は、電流検出器自身の一次側と二次側だけでなく、外部基板上に配置される一次側要素と二次側要素との絶縁が確実に図られる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、実装先の外部基板への実装状態で充分な絶縁を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態の電流センサ100の斜視図である。
【
図2】第1実施形態の電流センサ100の斜視図である。
【
図5】
図3中V-V線に沿う電流センサ100の前後方向縦断面図である。
【
図6】
図4中VI-VI線に沿う電流センサ100の左右方向縦断面図である。
【
図9】外部基板150への実装形態で示した電流センサ100の側面図及び正面図である。
【
図10】第2実施形態の電流センサ200及びこれを備える電子回路装置の分解斜視図である。
【
図11】外部基板150への実装形態で示した第1実施形態の電流センサ200の側面図及び正面図である。
【
図12】第3実施形態の電流センサ300の斜視図である。
【
図13】第3実施形態の電流センサ300の斜視図である。
【
図14】外部基板150への実装形態で示した第3実施形態の電流センサ300の側面図及び正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
〔電流検出器:第1実施形態〕
図1及び
図2は、第1実施形態の電流センサ100の斜視図である。これら
図1及び
図2において、
図1中(A)は電流センサ100の上方斜視図であり、
図1中(B)はその下方斜視図である。
図1中(A)の左斜め下方向に電流センサ100の前方向、右斜め上方向に後方向をそれぞれ規定したとすると、
図2は、
図1に示される電流センサ100を前後反転させて示したものであり、
図2中(A)が上方斜視図、
図2中(B)がその下方斜視図である。なお、電流センサ100の前後方向はこれ以降も同様とする。
【0019】
電流センサ100は、例えば樹脂製のケース体102を備えており、ケース体102は、大きく分けて上部パーツ102a及び下部パーツ102bから構成されている。なお、電流センサ100の上下方向は、
図1中(A)及び
図2中(A)をそれぞれ上方斜視図とした場合のものである(これ以降も同様)。また、ケース体102の分割構造についてはさらに別の図面を参照して後述する。
【0020】
図1中(A)及び
図2中(A)に破線で示されているように、ケース体102の内部には、コア部材104や回路基板108が収容されている。コア部材104は、例えば電流センサ100の一側面視でC字形状(横倒しU字形状)をなしている。回路基板108には、例えば図示しない感磁素子(ホール素子)を内蔵したASIC110が実装されており、コア部材104との位置関係でみると、ちょうどASIC110がコア部材104のギャップ内に配置されている。ASIC110には、例えばホール素子の出力を用いた磁気比例式の電流検出回路が内部に集積されている。なお、ASIC110やコア部材104のギャップ等についても別の図面を参照して後述する。
【0021】
第1実施形態の電流センサ100は、被測定導体106を備えたタイプのものであり、被測定導体106の中間部106aがケース体102の内部を横方向に貫通して延び、ケース体102の両外側には被測定導体106の両端部106bがそれぞれ突出している。上記のコア部材104は、ケース体102の内部で中間部106aを取り囲むようにして配置されている。ケース体102から両外側に突出した両端部106bは、いずれも下方へ屈曲された後、それぞれの下端部が櫛歯状に分かれた3本の実装端子106cとして形成されている。なお、電流センサ100は被測定導体106を備えないタイプのものでもよい。この場合、ケース体102には被測定導体106を挿通可能な挿通孔が形成される。
【0022】
回路基板108には、例えば4本の接続端子112が接続しており、これら接続端子112がASIC110の制御端子として使用可能である。回路基板108がケース体102の内部に収容されているため、接続端子112の回路基板108との接続部分はケース体102の内部に位置しているが、下端部はいずれもケース体102の外側に突出して下方に延びている。
図1中(B)及び
図2中(B)に示されているように、ケース体102(上部パーツ102a)には例えば4つの圧入孔102fが形成されており、接続端子112は、それぞれ圧入孔102fに圧入されている。個々の圧入孔102fは、接続端子112の角柱形状に合わせて角孔形状をなしている。これに限らず、接続端子を例えば丸棒形状として圧入孔を丸孔としてもよいし、その他の形状としてもよい。
【0023】
〔絶縁部〕
ケース体102の両側方には、一対の絶縁壁102cが一体に形成されている。一対の絶縁壁102cは、ケース体102がコア部材104及び回路基板108を収容する本体部分の両側方を壁形状に拡がっており、その壁面中央から被測定導体106の両端部106bが突き出ている。
【0024】
〔設置部〕
また、絶縁壁102cには、両端部106bの突出箇所を挟んで前後にリブ102d,102eが形成されている。これらリブ102d,102eは、絶縁壁102cの壁面に沿って上下方向に延びており、それぞれ上端は絶縁壁102cの上縁と同じ高さにまで達しているが、下端部は段付き形状となっており、絶縁壁102cから側方に突き出た最下端の下面が設置部102kとして形成されている。これら設置部102kは、電流センサ100を実装先となる外部基板(ここでは図示していない)に実装する場合の接触面(設置面)となり、これにより、ケース体102ひいては電流センサ100の外部基板上への設置を可能とする。なお、両側一対の絶縁壁102cにそれぞれ前後のリブ102d,102eが形成されており、また、前後のリブ102d,102eそれぞれの最下端面に設置部102kが形成されていることから、ケース体102全体としては、合計4つの設置部102kが下面側に形成されていることになる。
【0025】
また、ケース体102は被測定導体106及び接続端子112を保持しているが、このとき、被測定導体106の実装端子106c及び接続端子112はいずれも、上記の設置部102kよりも下方(実装方向)に突出した状態にある。これは、第1実施形態の電流センサ100が外部基板に挿通形態で実装(スルーホール実装)されることを想定したものであり、想定される実装形態において、実装端子106c及び接続端子112は外部基板との外部接続箇所(半田付け箇所)となる。なお、電流センサ100の実装形態については、別の図面を参照してさらに後述する。
【0026】
図3及び
図4は、電流センサ100の分解斜視図である。このうち、
図3が
図1中(A)の方向に一致し、
図4が
図3に示される分解状態での電流センサ100を前後反転させ、
図2中(A)よりも上方から示したものである。
【0027】
上記のように、ケース体102は上部パーツ102a及び下部パーツ102bを組み合わせて構成されている。組み合わせ状態において、上部パーツ102aは主にコア部材104の上面及び背面をカバーする。これに対して下部パーツ102bは、その内部に収容部102hが形成されている他、被測定導体106(中間部106a)の保持部102gや上記の圧入孔102fも形成されている。また、一対の絶縁壁102cは下部パーツ102bと一体に形成されている。被測定導体106は、下部パーツ102bにインサート成形されており、成形時において中間部106aが保持部102g及び絶縁壁102cに埋もれた状態となる。
【0028】
回路基板108は、ケース体102(下部パーツ102b)の圧入孔102fに上方から圧入して収容されている。組み立て順でみると、ケース体102に圧入された接続端子112に回路基板108を半田付けすることにより、ケース体102内部でのASIC110の位置決めがなされ、その状態でコア部材104が収容部102hに収容されると、コア部材104の内側に保持部102gが相対的に嵌まり込むことでコア部材104が位置決めされるとともに、ギャップ104a内の正規の位置にASIC110が配置されるものとなっている。そして、上部パーツ102aを下部パーツ102bと組み合わせて互いに固定すると、ケース体102とともに電流センサ100の組み立てが完了する。
【0029】
図5は、
図3中V-V線に沿う電流センサ100の前後方向縦断面図である。また、
図6は、
図4中VI-VI線に沿う電流センサ100の左右方向縦断面図である。これら
図5及び
図6の断面から明らかなように、ケース体102の内部でコア部材104、被測定導体106及びASIC110は互いに正しく位置決めされている。この位置決め状態において、電流センサ100によるASIC110の感磁素子を用いた被測定電流の測定(検出)が行われる。
【0030】
〔電子回路装置〕
次に、第1実施形態の電流センサ100を備えた電子回路装置としての実施形態について説明する。
図7は、電子回路装置の分解斜視図である。また
図8は、電子回路装置の斜視図である。
図8中(A)は、
図1中(A)と同じ上方から示した斜視図であり、
図8中(B)が
図1中(B)と同じ下方から示した斜視図である。
【0031】
電子回路装置(参照符号なし)は、上記第1実施形態の電流センサ100の他に、これを実装した外部基板150を備える。なお、外部基板150は、電流センサ100の実装領域近傍以外を省略して示しているが、これは、電子回路装置の実施形態において、外部基板150は適宜の大きさを取り得るためである。
【0032】
外部基板150には、例えばその実装面に導体パターン152が形成されている他、めっき加工された複数のスルーホール150a,150bが形成されている。これらスルーホール150a,150bは、電流センサ100の実装位置に合わせて形成されている。したがって、電流センサ100の実装端子106cは、それぞれスルーホール150a内に挿通された状態で半田付けにより外部接続される(半田は図示していない)。これにより、外部基板150の導体パターン152に導通する被測定電流が被測定導体106に導通し、その測定が可能となる。ASIC110につながる接続端子112もまた、対応する位置のスルーホール150bにそれぞれ挿通された状態で半田付けにより外部接続される(半田は図示していない)。
【0033】
この他に、外部基板150の上面や下面には、他の信号線パターン150d,150eが形成されていてもよく、このような信号線パターン150d,150eは、上面で電流センサ100の実装領域内、又はその下面を通過して延びている。あるいは、下面で複数の信号線パターン150eが個々に接続端子112に接続されることで、ASIC110の制御信号線(例えば駆動信号Vcc線,参照信号Vref線,出力信号Vout線,GND線等)として用いられてもよい。
【0034】
〔貫通孔〕
ここで、
図8に示されているように、電流センサ100の実装形態においては、必然的に絶縁壁102cを外部基板150に挿通させた形態となる。すなわち、絶縁壁102cは、電流センサ100の実装形態において、被測定導体106の実装端子106c及び接続端子112の外部接続箇所を区画する形状となっているからである。このため外部基板150には、スルーホール150a,150bの他に貫通孔150cが形成されており、貫通孔150cは、電流センサ100の実装状態で絶縁壁102cを挿通させることができる。なお、貫通孔150cの内側はめっき加工されておらず、絶縁樹脂面となっている。
【0035】
〔絶縁距離〕
次に、電子回路装置における絶縁距離の確保について説明する。
図8中(A):外部基板150の実装面側において、電流センサ100に対する一次側要素の被測定導体106と二次側要素の接続端子112との間では、空間距離及び沿面距離ともに、規格要求である絶縁距離(例えば8mm以上)が電流センサ100の製品段階で既に充分確保されている。これは、製品段階で被測定導体106の両端部106bから接続端子112までの間には、絶縁壁102c及びケース体102が存在しているためである。したがって、外部基板150への実装状態で被測定導体106が導体パターン152に接続された場合においても、一次側要素となる導体パターン152と二次側要素の接続端子112との間には、互いに充分な絶縁距離が確保されていることになる。
【0036】
図8中(B):また、外部基板150の実装面と反対面側(下面側)において、電流センサ100に対する一次側要素の被測定導体106(実装端子106c)と二次側要素の接続端子112との間には、互いを空間的に区画するものとして絶縁壁102cの突出部分が存在していることに加え、絶縁壁102cを挿通する貫通孔150cも存在する。この場合、実装端子106cと接続端子112との間に規定される沿面距離には、貫通孔150cの内面や、突出した絶縁壁102cの外面に沿う距離も含まれることになる。したがって、電子回路装置としてみた場合でも、外部基板150の下面側で被測定導体106と接続端子112との間には、空間距離及び沿面距離ともに、規格要求である絶縁距離(例えば8mm以上)が充分確保されている。これは、電流センサ100の製品段階で絶縁壁102cが実装方向に設置部102kよりも突出して形成されているため、外部基板150への実装状態では、必然的に貫通孔150cを形成して絶縁壁102cを挿通させることになるからである。
【0037】
また、上記のように、外部基板150の下面側に不測の配置で信号線パターン150eが形成されている場合であっても、一次側要素である被測定導体106の実装端子106cとの間に絶縁壁102cや貫通孔150cが配置されているため、二次側要素となる信号線パターン150eとの絶縁距離も充分に確保されることなる。
【0038】
〔各部寸法〕
図9は、外部基板150への実装形態で示した電流センサ100の側面図及び正面図である。このうち、
図9中(A)は右側面図であり、
図9中(B)は正面図である。
【0039】
図9中(A):上述した第1実施形態の電流センサ100では、絶縁壁102cの前後方向の最大長L2に対し、外部基板150に挿通される部分の前後方向の長さL1が短く設定されている。
図9中(B):また、外部基板150の下面から実装方向に突出する高さH1は、実装端子106cや接続端子112の突出長さと同等か、あるいはやや短く設定されている。なお、外部基板150上面からの絶縁壁102cの高さH2は、ケース体102を含む電流センサ100の高さと同等であり、これが製品の実装高さとなる。
【0040】
〔第2実施形態〕
図10は、第2実施形態の電流センサ200及びこれを備える電子回路装置の分解斜視図である。また、
図11は、外部基板150への実装形態で示した第2実施形態の電流センサ200の側面図及び正面図である。このうち、
図11中(A)が右側面図であり、
図11中(B)が正面図である。
図10に分解斜視図のみを挙げているが、電流センサ200の外部基板150への実装形態は
図11に示されるものとなる。
【0041】
第2実施形態の電流センサ200は、絶縁壁202cの外部基板150に挿通される部分の長さが第1実施形態とは異なっている。具体的には、外部基板150に挿通される部分の長さが第1実施形態よりも長く、そのため、外部基板150に形成される貫通孔250cも、絶縁壁202cに合わせて長くなっている点が第1実施形態と異なっている。その他は、第1実施形態の電流センサ100と同じであり、これと共通する箇所には同じ符号を付している。
【0042】
図11中(A):第2実施形態の電流センサ200を備えた電子回路装置では、絶縁壁202cの外部基板150に挿通される部分の前後方向の長さが前後方向の最大長L2と同等に設定されている。この場合、実装状態において被測定導体106の実装端子106cとケース体102との間に絶縁壁102cが存在することになる。
図11中(B):その他の外部基板150の下面から実装方向に突出する高さH1や、外部基板150上面からの絶縁壁102cの高さH2は第1実施形態と同じである。
【0043】
〔第3実施形態〕
次に、表面実装タイプとした第3実施形態の電流センサ300について説明する。
図12及び
図13は、第3実施形態の電流センサ300の斜視図である。また、
図14は、外部基板150への実装形態で示した第3実施形態の電流センサ300の側面図及び正面図である。
【0044】
図14に示されているように、第3実施形態の電流センサ300は、外部基板150に対して表面実装するタイプであり、そのために第1実施形態の電流センサ100とは異なる被測定導体306及び接続端子312を備えている。なお、その他の部位については、第1実施形態の電流センサ100と同じであり、これと共通する箇所には同じ符号を付している。
【0045】
〔表面実装タイプの被測定導体〕
第3実施形態では、被測定導体306の実装端子306cが外部基板150の実装面に沿う方向に屈曲されており、電流センサ300の実装状態では、実装端子306cは外部基板150の実装面上にて配線パターンに半田付けされる。特に図示していないが、外部基板150には実装端子306cに対応したスルーホールは形成されておらず、代わりに半田付け用のランドが形成されている。なお、被測定導体306の中間部306aがケース体102の内部を横方向に貫通して延びており、ケース体102の両外側には両端部306bがそれぞれ突出している点は第1実施形態と同様である。
【0046】
〔表面実装タイプの接続端子〕
同様に、接続端子312についても、下端部が外部基板150の実装面に沿う方向に屈曲されており、電流センサ300の実装状態では、接続端子312の下端部が外部基板150の実装面上にて配線パターンに半田付けされる。ここでも特に図示していないが、外部基板150には実装端子306cに対応したスルーホールは形成されておらず、代わりに半田付け用のランドが形成されている。なお、接続端子312がケース体102に圧入されている点については第1実施形態と同様である。
【0047】
第3実施形態の電流センサ300においても、これを外部基板150に表面実装した状態では、実装面側において一次側要素の被測定導体306と二次側要素の接続端子312との間では、空間距離及び沿面距離ともに、規格要求である絶縁距離(例えば8mm以上)が製品段階で既に充分確保されていることになる。
【0048】
なお、外部基板150の下面側には被測定導体306及び接続端子312が突出しないが、例えば、ビアホール等で実装面側の接続端子312と接続する信号線パターン等が外部基板150の下面側に形成されている場合であっても、一次側要素である被測定導体306の実装端子106cとの間には、同じく絶縁壁102cや貫通孔150cが配置されているため、二次側要素となる信号線パターンとの絶縁距離も充分に確保されることになる。
【0049】
上述した各種実施形態の電流センサ100,200,300によれば、以下の利点が得られる。
(1)電流センサ100,200,300の製品段階で、既に実装状態での絶縁を想定した絶縁壁102c,202cを備えているため、外部基板への実装段階では必然的に貫通孔150c,250cが設けられた上で絶縁壁102c,202cが挿通されることになる。これにより、実装先となる外部基板150にどのような配線パターンが形成されているかの予測が付かないとしても、実装状態での被測定導体106,306(実装端子106c,306c)と接続端子112,312との間の絶縁距離を確実に確保することができ、さらには、これらと実装状態で接続される一次側要素と二次側要素との間の絶縁距離も確保することができる。
【0050】
(2)逆に、電流センサ100,200,300を外部基板150に実装するだけで、同時に被測定導体106,306と接続端子112,312との間の絶縁を行うことができる。このため、別途これらの間にわざわざ絶縁を施す必要がなく、実装作業時間の短縮化や製造コストの低減を図ることができる。
【0051】
(3)ケース体102の内部でコア部材104との間に絶縁物を介することなく、ASIC110をギャップ104a内に配置しているが、ケース体102の外側で被測定導体106とコア部材104との間の絶縁距離が充分に確保されているため、結果的にASIC110との絶縁距離の確保を心配する必要がない。
【0052】
(4)また、電流センサ100,200,300を備えた電子回路装置は、特に一次側要素と二次側要素との間に絶縁対策を施す必要がないことから、配線パターンのレイアウトの自由度が高まるとともに、構造の簡素化や低コスト化が図られる。
【0053】
本発明は、上述した実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施することができる。
ケース体102は、上部パーツ102aと下部パーツ102bから構成される構造であるが、3つ以上のパーツで構成される構造としてもよい。また、ケース体102が左右方向に分割されたパーツから構成されていてもよい。
【0054】
絶縁壁102c,202cは、壁形状とは異なる形状であってもよい。また、絶縁壁102c,202cに開口が形成されていたり、表面に凹凸が形成されていたりしてもよい。また、リブ102d,102eは特に形成されていなくてもよい。あるいは、リブ102d,102eとは別のリブが絶縁壁102c,202cに形成されていてもよい。
【0055】
設置部102kは、ケース体102の方に形成されていてもよい。あるいは、絶縁壁102c,202cとケース体102の両方に設置部102kが形成されていてもよい。
【0056】
コア部材104の形状や被測定導体106,306の形状は図示の例に限定されない。被測定導体106は、実装端子106c,306cが4本以上であってもよいし、2本以下であってもよい。また、ASIC110に代えてホール素子がコア部材104のギャップ104a内に配置されていてもよい。この場合、ホール素子は回路基板108に実装されることなく、リード端子がケース体102に圧入されることになる。
【0057】
また、被測定導体106,306の実装端子106c,306cと接続端子112,312との位置関係は、図示の例に限ることなく、その他の位置関係であってもよい。この場合でも、互いの間に絶縁距離を確保し得る絶縁壁102c,202cを形成することができる。
【0058】
その他、実施形態等において図示とともに挙げた構造はあくまで好ましい一例であり、基本的な構造に各種の要素を付加し、あるいは一部を置換しても本発明を好適に実施可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0059】
100,200,300 電流センサ
102 ケース体
102c,202c 絶縁壁
104 コア部材
106,306 被測定導体
110 ASIC
112,312 接続端子
150 外部基板
150c,250c 貫通孔