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特開2022-34884レンズ、光学装置、金型、及び、製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034884
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】レンズ、光学装置、金型、及び、製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 3/00 20060101AFI20220225BHJP
   G02B 1/118 20150101ALI20220225BHJP
   C03B 11/08 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
G02B3/00 A
G02B1/118
C03B11/08
G02B3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020138803
(22)【出願日】2020-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】福井 俊矢
(72)【発明者】
【氏名】細谷 成紀
【テーマコード(参考)】
2K009
【Fターム(参考)】
2K009AA12
(57)【要約】
【課題】凹面により構成され、反射を低減する凹凸構造が設けられた光学有効面を含むレンズにおいて、凹凸構造の形状を設計時に定めた形状に近づけること。
【解決手段】レンズ(10)は、凹面により構成され、反射を低減する凹凸構造が設けられた第1光学有効面(111)を含む主部(11)と、外周面(121)の一部である第1領域(1211)が自由表面からなる把持部(12)と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹面により構成され、且つ、反射を低減する凹凸構造が設けられた第1光学有効面、当該第1光学有効面に対向する第2光学有効面、及び、前記第1光学有効面と前記第2光学有効面との間に介在する同心円状の側面を含む主部と、
前記側面の全周にわたって、且つ、当該側面から突出するように設けられた円環状の把持部であって、外周面の一部である第1領域が自由表面からなる把持部と、を備えている、
ことを特徴とするレンズ。
【請求項2】
前記第1領域は、前記外周面の全周にわたって円環状に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のレンズ。
【請求項3】
前記把持部の厚さt及び当該レンズの最も厚い部分の厚さTは、1mm≦t≦T-0.5mmを満たす、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のレンズ。
【請求項4】
前記把持部の厚さt及び前記第1領域の厚さtは、t≦0.9×tを満たす、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のレンズ。
【請求項5】
前記外周面のうち前記第1領域以外の領域を第2領域として、
前記第2領域は、前記第1領域に隣接し、且つ、前記第1領域に近づくにしたがって直径が拡大されている逆テーパ領域を含む、
ことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載のレンズ。
【請求項6】
前記第2領域は、前記逆テーパ領域と、前記第1領域からの距離によらず直径が略一定であるストレート領域と、により構成されている、
ことを特徴とする請求項5に記載のレンズ。
【請求項7】
前記第1光学有効面は、平面視において円形状であり、
前記把持部における前記側面からの突出量f及び前記第1光学有効面の直径Dは、0.5mm≦f≦Dを満たす、
ことを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載のレンズ。
【請求項8】
前記凹凸構造は、複数の柱状突起が規則的に配列されてなり、
前記複数の柱状突起の配列ピッチPは、使用波長域に属する所定の波長を波長λとして、0.2×λ≦P≦λを満たす、
ことを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載のレンズ。
【請求項9】
前記複数の柱状突起の突出量hは、0.25×λ≦hを満たす、
ことを特徴とする請求項8に記載のレンズ。
【請求項10】
前記第1光学有効面は、平面視において円形状であり、
前記複数の柱状突起の突出量hは、前記第1光学有効面の光軸に最も近接する柱状突起の突出量を突出量hとして、0.75×h≦h≦1.25×hを満たす、
ことを特徴とする請求項8又は9に記載のレンズ。
【請求項11】
前記複数の柱状突起は、横断面が円形状であり、且つ、根本から先端に近づくにしたがって直径が小さくなるテーパ形状を有し、
前記複数の柱状突起の前記根本における直径である直径dは、0.2×λ≦d≦0.6×λを満たす、
ことを特徴とする請求項8~10の何れか1項に記載のレンズ。
【請求項12】
ガラス転移点を有する単一の材料により構成されている、
ことを特徴とする請求項1~11の何れか1項に記載のレンズ。
【請求項13】
請求項1~12の何れか1項に記載のレンズを備えている、
ことを特徴とする光学装置。
【請求項14】
凹面により構成され、且つ、反射を低減する凹凸構造が設けられた第1光学有効面、当該第1光学有効面に対向する第2光学有効面、及び、前記第1光学有効面と前記第2光学有効面との間に介在する同心円状の側面を含む主部と、前記側面の全周にわたって、且つ、当該側面から突出するように設けられた円環状の把持部と、を備えているレンズをプレス成形する金型であって、
前記第1光学有効面の形状を転写する第1部分であって、前記凹面に対応する凸面を含む第1部分と、
前記第2光学有効面の形状を転写する第2部分であって、且つ、前記第1部分に対向する第2部分と、
前記側面及び前記把持部の形状を転写する第3部分であって、転写面が同心円状であり、且つ、前記把持部の外周面の一部に対応する領域に空隙が形成されている第3部分と、を備えている、
ことを特徴とする金型。
【請求項15】
前記空隙は、前記第3部分の前記転写面の全周にわたって円環状に形成されている、
ことを特徴とする請求項14に記載の金型。
【請求項16】
前記空隙の間隔を調整する調整機構を更に備えている、
ことを特徴とする請求項15に記載の金型。
【請求項17】
凹面により構成され、且つ、反射を低減する凹凸構造が設けられた第1光学有効面、当該第1光学有効面に対向する第2光学有効面、及び、前記第1光学有効面と前記第2光学有効面との間に介在する同心円状の側面を含む主部と、前記側面の全周にわたって、且つ、当該側面から突出するように設けられた円環状の把持部と、を備えているレンズを、金型を用いたプレス成形により製造する製造方法であって、
前記金型にセットされた材料を加熱する加熱工程と、
金型に加重することによって前記材料を前記レンズにプレス成形するプレス工程であって、前記把持部の外周面の一部である第1領域にかかる圧力を逃がしながらプレス成形するプレス工程と、を含む、
ことを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ、そのレンズを備えた光学装置、そのレンズをプレス成形する金型、及び、そのレンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、撮像に加えて、測距や形状測定など、光学装置の適用範囲が拡大している。また、光学装置に用いるレンズとして、ガラスやプラスチックなどの透光性を有する材料を基材として用いたレンズが広く普及している。レンズの性能を向上するためには、光学有効面の表面の反射を抑制することが有効な手段の一つであり、一対の光学有効面の一方又は両方に反射防止膜を設ける表面処理が広く知られている。
【0003】
この反射防止膜は、レンズの基材より低屈折率の物質からなる単層膜、又は低屈折率の物質と高屈折率の物質が交互に積層した多層膜で構成されている。このような反射防止膜は、精密な膜厚の制御など高精度なプロセスが要求されることが多く、製造コストが上昇する要因となる。また、反射光の干渉を利用して透過効率を向上するという原理であるため、反射を防止する性能における波長依存性が高くなりやすい。したがって、このような反射防止膜には、使用波長域を広帯域化することが難しいという課題がある。また、膜の密着性や、基材の線膨張係数と膜の線膨張係数との差や、膜材料自体の耐熱性などに起因して、このような反射防止膜は、高温環境や急激な温度変化が発生する環境などにおける使用に適していない。
【0004】
そこで、反射防止膜に代わる手段として、入射光の波長以下の大きさを有する微細な凹凸構造を光学有効面の表面に設ける手法が普及し始めている。この手法は、微細な凹凸構造を用いて光学有効面と大気との界面における急激な屈折率の変化を抑制するという原理である。そのため、このような凹凸構造においては、上述した反射防止膜と比較して、使用波長域の広帯域化が期待できる。
【0005】
また、レンズの形状を加工する際に、微細凹凸構造を素子表面へ同時加工すれば、製造コストを抑制することができ、且つ、上述した反射防止膜と比較して耐熱性を高めることができる。例えば、プレス成形法と組み合わせて、光学有効面に凹凸構造を形成することが提案されている。特許文献1には微細凹凸構造を備える金型を用いてカルコゲナイドガラスをプレス成形する方法が開示されている。特許文献1の図9には、このプレス成形を実施するためのプレス成形装置が示されている。
【0006】
また、レンズは、光学装置の枠体(例えば鏡筒や筐体など)へ組付けて使用される。このとき、枠体への組付け精度が低いと、いかに反射防止性能が高いレンズであっても、組付けの精度が低いと光学性能が著しく低下する。したがって、この組付け精度は、できるだけ高いことが好ましい。
【0007】
しかし、光学有効面の表面に凹凸構造が設けられたレンズにおいては、組付け面をプレス成形の後に改めて加工すること(いわゆる後加工)が困難である。これは、光学有効面に凹凸構造が設けられているレンズに対しては、後加工において使われるベルクランプを使用できないためである。なお、ベルクランプは、光学有効面を保持することによってレンズの姿勢を整える方式を採用している。光学有効面に凹凸構造が設けられているレンズに対してベルクランプを用いた場合、凹凸構造がある故に光学有効面の表面が摺動せず、また、凹凸構造が破壊されやすいという課題が生じる。特許文献2には、微細凹凸構造と組付け面とをプレス成形で同時に形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010-72484号公報
【特許文献2】特開2020-71361号公報
【特許文献3】特開2013-35713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、プレス成形法ではレンズの材料の温度を高くする程成形素材の粘度が低くなり変形しやすくなるため、金型に印加される圧力が低下しやすくなる。
【0010】
また、図10の左側の図に示すように、金型121の光学有効面を転写する部分である凸面1211が上記材料に与える垂直抗力FNは、凸面1211の中心を通るプレス軸から遠ざかる方向を向く。また、図10の右側の図に示すように、金型122の光学有効面を転写する部分である凸面1221が上記材料に与える垂直抗力FNは、凹面1221の中心を通るプレス軸に近づく方向を向く。
【0011】
凸面1211を含む金型121を用いて光学有効面が凹面であるレンズをプレス成形する場合、垂直抗力FNが凸面1211の中心を通るプレス軸から遠ざかる方向を向いている。そのため、プレス中に上記材料が光学有効面の中心から光学有効面の外周に向かう方向である径外向き方向に向かって変形しやすい。
【0012】
一方、凹面1221を含む金型122を用いて光学有効面が凸面であるレンズをプレス成形する場合、垂直抗力FNが凹面1221の中心を通るプレス軸に近づく方向を向いている。そのため、上記材料における上述した径外向き方向への変形は抑制されやすい。
【0013】
金型122のような金型を用いて凸面により構成された光学有効面をプレス成形する場合に比べて、金型121のような金型を用いて凹面により構成された光学有効面をプレス成形する場合のほうが上記材料における上述した径外向き方向への変形が生じやすいことは、レンズのプレス成形法の経験者の多くが感覚的に理解している。特許文献3では、垂直抗力FNが上記プレス軸に近づく方向を向いている場合、及び、垂直抗力FNが上記プレス軸から遠ざかる方向を向いている場合の各々を、それぞれ、変形応力の凝集及び発散と表現している。特許文献3には、非球面ガラスモールドレンズの成形難易度を予測する方法が記載されている。この方法は、変形応力が凝集であれば成形は容易であるのに対し、発散では成形困難である、との仮定に基づいている。
【0014】
本願の発明者らは、プレス成形後のレンズにおける凹凸構造の形状を、どれだけ設計時に定めた凹凸構造の形状に近づけられるかは、以下の2点に大きく依存していることを見出した。1点目は、プレス成形の変形の過程における金型側の凹凸構造部分へ印加される積算圧力であり、2点目は、上記材料の粘度(すなわち温度)である。すなわち、積算圧力が大きい程、また、上記材料の粘度が低いほど(すなわち温度が高いほど)、プレス成形後のレンズにおける凹凸構造の形状を設計時に定めた凹凸構造の形状に近づけやすい。凹凸構造の形状を示すパラメータの一例としては、凹凸構造を構成する凸部の突出量が上げられる。この突出量は、凹凸構造が発揮する反射防止性能へ影響を与える重要な要素である。
【0015】
特許文献2に記載の技術は、プレス成形を用いて凹凸構造と枠体への組付け面とを同時形成できる技術である。しかし、この技術を用いてプレス成形したレンズにおいては、光学有効面が凹面により構成されている場合に、凸部の突出量が設計時に定めた突出量よりも小さくなりやすいことを本願の発明者らは見出した。これは、上述したように、垂直抗力FNが上記プレス軸から遠ざかる方向を向いていることに起因する。上記材料の粘度を下げても、金型にかかる積算圧力が低下するうえ、径外向き方向へ上記材料が更に変形しやすくなる。そのため、凸部の突出量が設計時に定めた突出量に近づけることは難しい。
【0016】
特許文献2に記載の環状板部の厚さを薄くすれば金型にかかる積算圧力を増加することは可能だが、環状板部は枠体への組付け面として用いるため機械強度が必要なため、薄くすることが難しい。また、環状板部を薄く設定しすぎると、成形素材に内部応力が多く蓄積し、良好な光学有効面の形状を得られないという問題が生じる。また、枠体へ組付けられる他のレンズとの関係性が設計時に定められているため、プレス成形の凹凸構造の転写具合に応じて厚さを調整することは困難である。
【0017】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたものであり、その目的は、凹面により構成されており、且つ、反射を低減する凹凸構造が設けられた光学有効面を含むレンズにおいて、凹凸構造の形状を設計時に定めた形状に近づけることである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るレンズは、凹面により構成され、且つ、反射を低減する凹凸構造が設けられた第1光学有効面、当該第1光学有効面に対向する第2光学有効面、及び、前記第1光学有効面と前記第2光学有効面との間に介在する同心円状の側面を含む主部と、前記側面の全周にわたって、且つ、当該側面から突出するように設けられた円環状の把持部であって、外周面の一部である第1領域が自由表面からなる把持部と、を備えている。
【0019】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る金型は、凹面により構成され、且つ、反射を低減する凹凸構造が設けられた第1光学有効面、当該第1光学有効面に対向する第2光学有効面、及び、前記第1光学有効面と前記第2光学有効面との間に介在する同心円状の側面を含む主部と、前記側面の全周にわたって、且つ、当該側面から突出するように設けられた円環状の把持部と、を備えているレンズをプレス成形する金型であって、前記第1光学有効面の形状を転写する第1部分であって、前記凹面に対応する凸面を含む第1部分と、前記第2光学有効面の形状を転写する第2部分であって、且つ、前記第1部分に対向する第2部分と、前記側面及び前記把持部の形状を転写する第3部分であって、転写面が同心円状であり、且つ、前記把持部の外周面の一部に対応する領域に空隙が形成されている第3部分と、を備えている。
【0020】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る製造方法は、凹面により構成され、且つ、反射を低減する凹凸構造が設けられた第1光学有効面、当該第1光学有効面に対向する第2光学有効面、及び、前記第1光学有効面と前記第2光学有効面との間に介在する同心円状の側面を含む主部と、前記側面の全周にわたって、且つ、当該側面から突出するように設けられた円環状の把持部と、を備えているレンズを、金型を用いたプレス成形により製造する製造方法であって、前記金型にセットされた材料を加熱する加熱工程と、金型に加重することによって前記材料を前記レンズにプレス成形するプレス工程であって、前記把持部の外周面の一部である第1領域にかかる圧力を逃がしながらプレス成形するプレス工程と、を含む。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によれば、凹面により構成されており、且つ、反射を低減する凹凸構造が設けられた光学有効面を含むレンズにおいて、凹凸構造の形状を設計時に定めた形状に近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明第1の実施形態に係るレンズの断面図及び一対の平面図である。
図2図1に示したレンズの第1光学有効面に設けられた凹凸構造の拡大断面図である。
図3図1に示したレンズの第1光学有効面に設けられた凹凸構造の拡大平面図である。左側は、柱状突起が六方配置された凹凸構造を示し、右側は、柱状突起が正方配置された凹凸構造を示す。
図4図1に示したレンズの把持部の拡大断面図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る金型の断面図である。
図6】本発明の第3の実施形態に係る製造方法のフローチャートである。
図7図1に示したレンズの変形例の断面図である。
図8図5に示した金型の変形例の断面図である。
図9】本発明の第4の実施形態に係る撮像装置の模式的な断面図である。
図10】光学有効面を転写する部分が凸面により構成された金型、及び、光学有効面を転写する部分が凹面により構成された金型の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔第1の実施形態〕
本発明の第1の実施形態に係るレンズ10について、図1図4を参照して説明する。
【0024】
図1は、レンズ10の断面図及び一対の平面図である。一対の平面図のうち、断面図の上側に位置する平面図は、レンズ10を構成する一対の光学有効面である第1光学有効面111及び第2光学有効面112のうち、第1光学有効面111の側からレンズ10を見た場合に得られる平面図である。一対の平面図のうち、断面図の下側に位置する平面図は、第2光学有効面112の側からレンズ10を見た場合に得られる平面図である。
【0025】
図2は、第1光学有効面111に設けられた凹凸構造1111の拡大断面図である。なお、図2には、凹凸構造1111を構成する複数の凸部1113のうち、第1光学有効面111の中心軸に最も近接する凸部1113(本実施形態においては、第1光学有効面111の中心に位置する凸部1113)を左側に図示し、それ以外の凸部1113を中央及び右側に図示している。
【0026】
図3は、凹凸構造1111の拡大平面図である。左側は、凸部1113が六方配置された凹凸構造1111を示し、右側は、凸部1113が正方配置された凹凸構造1111を示す。
【0027】
図4は、レンズ10が備えている把持部12の拡大断面図である。
【0028】
<レンズの材料及び使用波長域>
レンズ10は、光透過性材料により構成された光学素子の一態様である。本実施形態では、レンズ10を構成する光透過性材料として、カルコゲナイドガラスIRG206を採用している。ただし、レンズ10を構成する光透過性材料は、所定の波長域に属する光に対して透光性を有し、且つ、ガラス転移点を有し、且つ、金型を用いたプレス成形により成形可能な材料のなかから適宜選択することができる。なお、カルコゲナイドガラスIRG206の典型的なガラス転移点は、180℃である。
このような光透過性材料の例としては、ガラス及びプラスチックが挙げられる。なお、以下においては、レンズ10を構成する光透過性材料における光の透過率が85%以上である波長域を、レンズ10の使用波長域と称する。カルコゲナイドガラスIRG206の典型例における使用波長域は、約7μm以上14μm以下である。レンズ10は、この使用波長域のうち10μm近傍において用いることを想定して設計されている。10μmは、使用波長域に属する所定の波長である波長λの一例であり、所定の波長は7μm以上14μm以下で任意に選択し得る。可視光域の場合は、使用波長域は約0.4μm以上0.7μm以下であり、所定の波長は、この範囲内で任意に選択し得る。近赤外域の場合は、使用波長域は約0.7μm以上2.0μm以下であり、所定の波長は、この範囲内で任意に選択し得る。
【0029】
<レンズの構成>
図1に示すように、レンズ10は、主部11及び把持部12を備えている。また、レンズ10は、単一の材料(本実施形態においてはカルコゲナイドガラスIRG206)により構成されている。
(主部)
図1に示すように、主部11は、一対の光学有効面である第1光学有効面111及び第2光学有効面112と、側面113とを備えている。レンズ10を平面視した場合、第1光学有効面111及び第2光学有効面112の輪郭は、円形状(本実施形態においては円形)である。
【0030】
図2に示すように、第1光学有効面111には、凹凸構造1111が設けられている。第1光学有効面111のベースとなる形状は、凹面1112により構成されている。なお、凹面1112は、球面であってもよいし、非球面であってもよい。
【0031】
図3に示すように、凹凸構造1111は、凹面1112の表面に複数の凸部1113を規則的に配置することによって構成されている。本実施形態において、凸部1113は、一対の底面を含む円錐台状の形成された柱状の突起である。以下において、凸部1113を構成する一対の底面のうち凹面1112から遠い側の底面であって、凸部1113の先端に相当する底面を上底面と呼び、凸部1113を構成する一対の底面のうち凹面1112から近い側の底面であって、凸部1113の根本に相当する底面を下底面と呼ぶ。
本実施形態において、凸部1113は、横断面が略円形状であり、且つ、上底面の直径が下底面の直径dよりも小さく、且つ、横断面における直径が根本から先端に近づくにしたがって小さくなるテーパ形状を有する。なお、凸部1113の横断面とは、光軸Aと直交する平面に沿って凸部1113を見た場合に得られる断面である。
【0032】
また、各凸部1113において、光軸Aと略平行な方向に沿ってみた場合に、凹面1112から最も突出した点(言い替えれば、最も離間した点)を点Aとし、点Aを通り且つ光軸Aと平行な直線と下底面との交点を点Bとする。また、各凸部1113において、点Aと点Bとの距離を突出量hとする。
【0033】
図2の左側に示した第1光学有効面111の中心近傍に位置する凸部1113の中心軸は、光軸Aと一致していない。ただし、第1光学有効面111の中心近傍に位置する凸部1113の中心軸は、光軸Aと一致していてもよい。なお、光軸Aに最も近接する凸部1113(本実施形態においては、第1光学有効面111の中心近傍に位置する凸部1113)においては、点Aと点Bとの距離を突出量hとして、他の凸部1113の突出量hとは区別する。
【0034】
本実施形態において、上底面は、なだらかな凸面により構成されている。ただし、上底面の形状は、凸面に限定されるものではない。上底面は、例えば、平面により構成されていてもよい。また、本実施形態において、凸部1113の根本の近傍には、凸部1113の側面と凹面1112との間をなだらかに接続する裾部が形成されている。ただし、側面と凹面1112とを接続する態様は、これに限定されるものではない。例えば、凸部1113の側面と凹面1112とは、裾部を介さずに直接接続されていてもよい。
【0035】
複数の凸部1113の規則的な配置の例としては、六方配置(図3の左側参照)及び正方配置(図3の右側参照)が挙げられる。六方配置においては、正六角形状(図3の左側においては正六角形)の各頂点及び該正六角形状の略中心(図3の左側においては中心)の各々に、それぞれ、凸部1113が配置されている。正方配置においては、正方形状(図3の右側においては正方形)の各頂点の各々に、それぞれ、凸部1113が配置されている。
【0036】
六方配置及び正方配置の各々において、互いに隣接する凸部1113のうち、x軸方向に沿って配置された2つの凸部1113の点A同士の間隔をピッチPaと称し、x軸に交わる方向に沿って配置された2つの凸部1113の点A同士の間隔をピッチPbと称する。本実施形態において、ピッチPaとピッチPbとは等しい。したがって、これらの2つを特に区別する必要がない限りピッチPa及びピッチPbをピッチPと総称する。
【0037】
このように構成された凹凸構造1111において、ピッチPは、0.2×λ≦Pa≦λを満たすことが好ましく、本実施形態においては4μmである。なお、波長λは、上述したように使用波長域に属する所定の波長であり、本実施形態では、10μmである。
【0038】
また、凸部1113の突出量hは、0.25×λ≦hを満たすことが好ましい。なお、第1光学有効面111の光軸に最も近接する凸部1113の突出量hについても突出量hと同様に、0.25×λ≦hを満たすことが好ましい。
【0039】
また、突出量hと突出量hとは、0.75×h≦h≦1.25×hを満たすことが好ましい。
【0040】
また、凸部1113の根本における直径である直径dは、0.2×λ≦d≦0.6×λを満たすことが好ましく、本実施形態においては3.5μmである。なお、波長λは、上述したように使用波長域に属する所定の波長であり、本実施形態では、10μmである。
【0041】
レンズ10は、ガラス転移点を有する単一の材料により構成されていることが好ましい。
図1に示すように、第2光学有効面112は、第1光学有効面111に対向している。本実施形態において、第2光学有効面112の形状は、凸面である。ただし、第2光学有効面112の形状は、凸面に限定されるものではなく、平面であってもよいし、凹面であってもよい。レンズ10の変形例であるレンズ10Aであって、第2光学有効面112に対応する第2光学有効面112Aの形状が凹面であるレンズ10Aについては、図7を参照して後述する。また、第2光学有効面112は、球面であってもよいし、非球面であってもよい。
【0042】
本実施形態において、第2光学有効面112には、第1光学有効面111に設けられた凹凸構造1111と同様の凹凸構造が設けられている。ただし、第2光学有効面112に設けられた凹凸構造は、省略することもできる。
【0043】
側面113は、第1光学有効面111と第2光学有効面112との間に介在する柱状部材の外側面である。レンズ10において、側面113は、光学装置(例えば図9に示す撮像装置1)の枠体(例えば図9に示す筐体2)へ組付ける場合の組付け面の一部を構成する。本実施形態において、該柱状部材の形状は、円柱である。したがって、側面113の断面であって、光軸Aに直交する断面は、z軸方向における何れの位置においてみた場合でも同心円状である。
以上のように構成されたレンズ10は、メニスカスレンズの一例である。
【0044】
(把持部)
図1に示すように、把持部12は側面113の全周にわたって、且つ、側面113から突出するように設けられた円環状の部材である。図4に示すように、把持部12の外縁を構成する外周面121は、第1領域1211と、第2領域1212とにより構成されている。また、把持部12の表面のうち外周面121以外の領域である一対の底面は、平面により構成されている。レンズ10において、この一対の底面は、光学装置(例えば図9に示す撮像装置1)の枠体(例えば図9に示す筐体2)へ組付ける場合の組付け面を、上述した側面113とともに構成する。
【0045】
図5及び図6を参照して後述するように、レンズ10は、金型を用いたプレス成形により成形される。このプレス成形の工程において、第1領域1211は、金型を用いてその表面形状を転写されていない領域であり、金型の空隙P33へと余剰材料が逃げることによって形成される領域である。したがって、第1領域1211の表面は、自由表面からなる(図4参照)。
本実施形態において、第1領域1211は、外周面121の全周にわたって円環状に形成されている。ただし、第1領域1211は、外周面121の全周のうち少なくとも一部に形成されていればよい。
把持部12の厚さをt、及びレンズの最も厚い部分の厚さをTとすると、t及びTは1mm≦t≦T-0.5mmを満たすことが好ましい。
また、第1領域の厚さをtとすると、t≦0.9×tを満たすことが好ましい。
第2領域1212は、外周面121のうち第1領域1211以外の領域である。第2領域1212の表面は、プレス成形の工程において金型によりその形状を転写されている。図2に示すように、第2領域1212は、第1領域1211のz軸負方向側に設けられており、且つ、第1領域1211に隣接している。
【0046】
図4に示すように、第2領域1212は、第1領域1211に隣接する逆テーパ領域Rと、ストレート領域Rとにより構成されている。逆テーパ領域Rは、第1領域1211のz軸負方向側に設けられており、且つ、第1領域1211に隣接している。ストレート領域Rは、逆テーパ領域Rのz軸負方向側に設けられており、且つ、逆テーパ領域Rに隣接している。
逆テーパ領域Rは、光軸Aを中心軸とする同心円形状であり、本実施形態においては、円錐台形状である。逆テーパ領域Rは、ストレート領域Rの側から第1領域1211に近づくにしたがって、光軸Aに直交する断面の直径が拡大するように構成されている。
ストレート領域Rは、光軸Aを中心軸とする同心円形状であり、本実施形態においては、円柱状である。ストレート領域Rは、第1領域1211からの距離によらず、光軸Aに直交する断面の直径が略一定(本実施形態においては一定)となるように構成されている。
【0047】
図4に示したレンズ10の断面において、逆テーパ領域Rの表面と、光軸Aに直交する面とのなす角θは、本実施形態においてθ=45°である。ただし、角θは、45°に限定されるものではなく、0°≦θ<90°の範囲内において適宜定めることができ、0°≦θ≦60°であることが好ましい。θ≦60°であることによって、内部応力による面形状の悪化や破損を防ぐことができる。
なお、θ=90°である場合、逆テーパ領域Rを定義することはできず、外周面121は、ストレート領域Rのみにより構成されることになる。このように、レンズ10の一変形例において、逆テーパ領域Rを省略することもできる。また、レンズ10の一変形例において、ストレート領域Rを省略することもできる。
【0048】
上述したように、第1光学有効面111は、レンズ10を平面視した場合に円形状(本実施形態においては円形)である。把持部12における側面113からの突出量f及び第1光学有効面111の直径Dは、0.5mm≦f≦Dを満たすことが好ましい。本実施形態において、平面視した場合の把持部12の形状及び第1光学有効面111の形状は、何れも円形であるので、突出量fは、把持部12の直径と直径Dとの差分の1/2で定義される。
【0049】
なお、本実施形態において、逆テーパ領域R及びストレート領域Rからなる第2領域1212は、第1領域1211の一方の側(第2光学有効面112に近接する側)のみに設けられている。ただし、第2領域1212は、第1領域1211の他方の側(第1光学有効面111に近接する側)のみに設けられていてもよいし、第1領域1211の両側(第1光学有効面111に近接する側、及び、第2光学有効面112に近接する側)に設けられていてもよい。
【0050】
また、本実施形態において、逆テーパ領域Rの表面は、滑らかな曲面である円錐台形状の側面により構成されている。この構成によれば、不要な内部応力の発生を抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態において、逆テーパ領域Rと、ストレート領域Rとは、不連続的に、折れ曲がった状態で接続されている(図4参照)。ただし、逆テーパ領域Rと、ストレート領域Rとは、連続的に、滑らかな曲面を形成する状態で接続されていてもよい。逆テーパ領域Rと、ストレート領域Rとを滑らかな曲面で接続することによって、不要な内部応力の発生を抑制することができる。
【0052】
〔第2の実施形態〕
本発明の第2の実施形態に係る金型20について、図1図4と、図5とを参照して説明する。
【0053】
上述したとおり、図1は、レンズ10の断面図及び一対の平面図であり、図2及び図3の各々は、それぞれ、第1光学有効面111に設けられた凹凸構造1111の拡大断面図及び拡大平面図であり、図4は、レンズ10の把持部12の拡大断面図である。
【0054】
図5は、金型20の断面図である。図5においては、レンズ10の輪郭の一部を仮想線(二点鎖線)で図示し、レンズ10の各部を指し示す符号と、レンズ10の断面に付すハッチングとを省略している。
【0055】
金型20は、その内部空間にセットされたカルコゲナイドガラスIRG206を加熱しながら、加重軸に沿った方向に加重FL(図5参照)を印加することによって、レンズ10をプレス成形することができる。レンズ10については、図1図4を参照して説明したため、ここではレンズ10の説明を省略する。
【0056】
<金型の構成>
図5に示すように、金型20は、第1光学有効面転写金型21、第2光学有効面転写金型22、側面転写金型23、第2領域転写金型24、シム25、第1位置決め金型26、第2位置決め金型27、及び、摺動スリーブ金型28を備えている。これらの部材は、何れも金属製である。
【0057】
(第1光学有効面転写金型)
第1光学有効面転写金型21は、第1部分P1を含み、凸面P11を一方の端部とする円柱状の部材である。第1光学有効面転写金型21の凸面P11と逆側の端部には、外径が拡大されたフランジ部が設けられている。
【0058】
第1部分P1は、第1光学有効面転写金型21の一部である。第1部分P1は、第1光学有効面111の形状を転写する。第1部分P1は、凹面1112に対応する凸面P11を含む。凸面P11には、レンズ10の凹面1112に設けられた凹凸構造1111(図2及び図3参照)を転写するための凹凸構造が設けられている。
【0059】
(第2光学有効面転写金型)
第2光学有効面転写金型22は、第2部分P2を含み、凹面P21を一方の端部とする円柱状の部材である。第2光学有効面転写金型22の凹面P21と逆側の端部には、外径が拡大されたフランジ部が設けられている。
【0060】
第2部分P2は、第2光学有効面転写金型22の一部である。第2部分P2は、第2光学有効面112の形状を転写する、凹面P21を含む。第2部分P2は第1部分P1に対向している。また、凹面P21には、凸面P11に設けられた凹凸構造と同様の凹凸構造が設けられている。ただし、この凹凸構造は、省略することもできる。
【0061】
(側面転写金型)
側面転写金型23は、円筒状の部材である。側面転写金型23の一方の端部は、後述する第2領域転写金型24とともに空隙P33を形成する。側面転写金型23の空隙P33と逆側の端部には、外径が拡大されたフランジ部が設けられている。側面転写金型23は、内側空間に第1光学有効面転写金型21のフランジ部以外の部分を収容する。
【0062】
側面転写金型23の内側面のうち第1光学有効面転写金型21から突出している内側面である転写面P31は、レンズ10の側面113を転写する。また、側面転写金型23の一方の端部を構成する底面は、レンズ10の把持部12の一方の底面を転写する。
【0063】
第2領域転写金型24は、円筒状の部材である。第2領域転写金型24の一方の端部は、側面転写金型23とともに空隙P33を形成する。第2領域転写金型24は、内側空間に第2光学有効面転写金型22のフランジ部以外の部分を収容する。
【0064】
第2領域転写金型24の内側面のうち第2光学有効面転写金型22から突出している内側面である転写面P32は、レンズ10の外周面121の第2領域1212を転写する。転写面P32の内径は、図4に示すストレート領域R及び逆テーパ領域Rの形状と対応するように定められている。
【0065】
(第3部分)
第3部分P3は、主に側面転写金型23の一部と、第2領域転写金型24の一部とにより構成され、第1位置決め金型26の一部と、第2位置決め金型27の一部と、摺動スリーブ金型28の一部とを含む。第3部分P3は、側面113及び把持部12の形状を転写する。第3部分P3は、転写面が同心円状であり、且つ、把持部12の外周面の一部である第1領域1211に対応する領域に空隙P33が形成されている。第3部分P3の一部に空隙P33が形成されていることによって、金型20は、プレス成形時にカルコゲナイドガラスIRG206にかかる内部応力PIを逃がすことができる。また、第3部分P3の一部に空隙P33が形成されていることによって、レンズ10の第1領域1211の表面は、金型20により形状を転写されることなく、結果として自由表面となる。
【0066】
本実施形態において、空隙P33は、第3部分P3の転写面の全周にわたって円環状に形成されている。したがって、本実施形態において、空隙P33は、加重軸に直交する断面において、等方的である。ただし、空隙P33は、この構成に限定されるものではない。例えば、空隙P33は、第3部分P3の転写面の一部に形成されていてもよく、加重軸に直交する断面において異方的に形成されていてもよい。
【0067】
(シム)
シム25は、円環状の板状部材である。シム25を平面視した場合の形状は、第2領域転写金型24の他方の端部を構成する底面の形状とほぼ一致する。図5に示すように、第2光学有効面転写金型22のフランジ部と第2領域転写金型24との間にシム25が介在することによって、第2光学有効面転写金型22の一方の端部から突出する第2領域転写金型24の突出量を調整することができ、結果として、空隙P33の間隔ΔGを調整することができる。金型20においては、厚さが異なる複数のシム25が予め用意されていることが好ましい。レンズ10の製造者は、シム25の厚さを適宜選択することによって、プレス成形時にカルコゲナイドガラスIRG206にかかる内部応力PIを調整することができる。
【0068】
このように構成されたシム25は、間隔ΔGを調整する調整機構の一例である。ただし、調整機構の方式は、シム25のような取り替え式に限定されるものではなく、第2光学有効面転写金型22の一方の端部から突出する第2領域転写金型24の突出量を調整可能な方式であれば如何なる方式であってもよい。調整機構の別の方式としては、ねじ式が挙げられる。
【0069】
(位置決め金型及び摺動スリーブ金型)
第1位置決め金型26は、内径が2段階に変化する円筒状の部材である。第1位置決め金型26は、内側空間に第1光学有効面転写金型21と、側面転写金型23とを、一体化した状態で収容する。
【0070】
第2位置決め金型27は、第1位置決め金型26と同様に、内径が2段階に変化する円筒状の部材である。第2位置決め金型27は、内側空間に第2光学有効面転写金型22と、第2領域転写金型24と、シム25とを、一体化した状態で収容する。
【0071】
摺動スリーブ金型28は、円筒状の部材である。摺動スリーブ金型28は、内側空間に、第1位置決め金型26により一体化された第1光学有効面転写金型21及び側面転写金型23と、第2位置決め金型27により一体化された第2光学有効面転写金型22、第2領域転写金型24、及びシム25とを、一体化した状態で収容する。摺動スリーブ金型28は、第1光学有効面転写金型21、側面転写金型23、及び第1位置決め金型26の動き得る方向、及び、第2光学有効面転写金型22、第2領域転写金型24、シム25、及び第2位置決め金型27の動き得る方向を、摺動スリーブ金型28の中心軸に沿った方向(図5に示す金型20においては、上下方向)に限定する。以下において、摺動スリーブ金型28の中心軸のことを加重軸と称する。
【0072】
(加熱機構及び冷却機構)
また、金型20は、図5には図示を省略しているものの、金型20にセットされたカルコゲナイドガラスIRG206を加熱する加熱機構と冷却する冷却機構を更に備えている。
【0073】
〔第3の実施形態〕
本発明の第3の実施形態に係る製造方法M1について、図1図5、及び図6を参照して説明する。上述したとおり、図1は、レンズ10の断面図及び一対の平面図であり、図5は、金型20の断面図である。図6は、製造方法M1のフローチャートである。
【0074】
製造方法M1は、図5に示す金型20を用いて、図1に示すレンズ10をプレス成形することによって製造することができる。レンズ10については、図1図4を参照して説明しており、金型20については、図5を参照して説明しているため、ここではレンズ10及び金型20の説明を省略する。
【0075】
<製造方法>
図6に示すように、製造方法M1は、加熱工程S11と、プレス工程S12とを含む。
【0076】
(加熱工程)
加熱工程S11は、金型20の内部空間にセットされた材料を、金型20が備えている加熱機構を用いて加熱する工程である。加熱工程S11で用いる材料は、本実施形態においてカルコゲナイドガラスIRG206である。ただし、この材料は、レンズ10の説明において述べたように、所定の波長域に属する光に対して透光性を有し、且つ、ガラス転移点を有し、且つ、金型を用いたプレス成形により成形可能な材料のなかから適宜選択することができる。
【0077】
加熱工程S11において、材料は、その温度がガラス屈伏点-15℃以上となるように、加熱されていることが好ましい。材料がカルコゲナイドガラスIRG206である場合、典型的な屈伏点は、216℃であり、典型的なガラス屈伏点-15℃は、201℃である。本実施形態においては、加熱温度として225℃を採用している。
【0078】
(プレス工程)
プレス工程S12は、金型20に加重FL(図5参照)を印加することによって、材料をレンズ10にプレス成形する工程である。プレス工程S12は、把持部12の外周面121の一部である第1領域1211にかかる圧力を逃がしながら、材料をレンズ10にプレス成形する。
【0079】
プレス工程S12を実施している期間中においても、加熱工程S11の場合と同様に、材料は、その温度がガラス屈伏点-15℃以上となるように、加熱されていることが好ましい。本実施形態においては、プレス工程S12と並行して加熱工程S11を実施するものとし、加熱温度として225℃を採用している。
【0080】
なお、プレス工程S12において金型20に印加する加重FL、及び、プレス工程S12を実施する期間の各々は、それぞれ、適宜定めることができる。本実施形態では、500Nの加重FLを金型20に印加した状態で、225℃の加熱温度を4分間保持したあとに、500Nの加重FLを金型20に印加した状態で、加熱温度を180℃まで、-10℃/分の早さで冷却した。
【0081】
(徐冷工程)
図6には図示を省略しているものの、製造方法M1は、加熱工程S11及びプレス工程S12に加えて徐冷工程を更に含んでいてもよい。徐冷工程は、プレス工程S12のあとに実施する。徐冷工程は、加重FLを金型20に印加していない状態において、金型20の温度を、プレス工程S12の最後における加熱温度から常温まで徐々に下げる工程である。
【0082】
〔レンズ及び金型の変形例〕
レンズ10の変形例であるレンズ10Aと、金型20の変形例である金型20Aとについて、図7及び図8を参照して説明する。図7は、レンズ10Aの断面図である。図8は、金型20Aの断面図である。
【0083】
<レンズの構成>
図7に示すように、レンズ10Aは、主部11A及び把持部12Aを備えている。主部11Aは、レンズ10の主部11に対応し、把持部12Aは、レンズ10の把持部12に対応する。
【0084】
(主部)
主部11Aは、一対の光学有効面である第1光学有効面111A及び第2光学有効面112Aと、側面113Aとを備えている。レンズ10Aを平面視した場合、第1光学有効面111A及び第2光学有効面112Aの輪郭は、円形状(本実施形態においては円形)である。第1光学有効面111A、第2光学有効面112A、及び、側面113Aの各々は、それぞれ、レンズ10の第1光学有効面111、第2光学有効面112、及び、側面113に対応する。
【0085】
第1光学有効面111Aは、第1光学有効面111と同様に、ベースとなる形状は凹面により構成されており、凹面の表面に凹凸構造1111(図3及び図4参照)と同様の凹凸構造が設けられている。
【0086】
第2光学有効面112Aは、第1光学有効面111Aと同様に、ベースとなる形状は凹面により構成されており、凹面の表面に凹凸構造1111(図3及び図4参照)と同様の凹凸構造が設けられている。
【0087】
以上のように、レンズ10の主部11とレンズ10Aの主部11Aとは、以下の点において異なる。すなわち、主部11は、一対の光学有効面の各々が凹面及び凸面からなるレンズであるのに対して、主部11Aは、一対の光学有効面の両方が凹面からなるレンズである点が異なる。この点を除けば、主部11Aは、主部11と同様に構成されている。したがって、本変形例において、主部11Aの詳しい説明は、省略する。
【0088】
(把持部)
図1に示したレンズ10の把持部12と同様に、把持部12Aは側面113Aの全周にわたって、且つ、側面113Aから突出するように設けられた円環状の部材である。図7に示すように、把持部12Aの外縁を構成する外周面121Aは、第1領域1211Aと、第2領域1212Aとにより構成されている。把持部12Aの外周面121A、第1領域1211A、及び、第2領域1212Aの各々は、それぞれ、把持部12の外周面121、第1領域1211、及び、第2領域1212に対応する。
【0089】
第1領域1211Aの表面は、第1領域1211の表面と同様に、自由表面からなる。
【0090】
本実施形態において、第1領域1211は、外周面121の全周にわたって円環状に形成されている。ただし、第1領域1211は、外周面121の全周のうち少なくとも一部に形成されていればよい。
【0091】
レンズ10Aにおいても、把持部12Aの厚さをt、第1領域1211Aの厚さをt、及び、レンズ10Aの最も厚い部分の厚さをTとして、厚さt、厚さをt、及び、厚さTが満たすことが好ましい条件は、レンズ10の場合と同様である。
【0092】
第2領域1212Aは、外周面121Aのうち第1領域1211A以外の領域である。第2領域1212Aの表面は、プレス成形の工程において金型20Aによりその形状を転写されている。
【0093】
図7に示すように、第2領域1212Aは、第1領域1211に隣接する逆テーパ領域Rにより構成されている。すなわち、第2領域1212に設けられているストレート領域Rは、第2領域1212Aにおいて省略されている。
【0094】
また、図7に示したレンズ10Aの断面において、逆テーパ領域Rの表面と、レンズ10Aの光軸に直交する面とのなす角θは、レンズ10の場合と同様に、θ=45°である。
【0095】
以上のように、レンズ10の把持部12と、レンズ10Aの把持部12Aとは、以下の点において異なる。すなわち、把持部12は、第2領域1212が逆テーパ領域Rと、ストレート領域Rとにより構成されていたのに対して、把持部12Aは、逆テーパ領域により構成されている点が異なる。この点を除けば、把持部12Aは、把持部12と同様に構成されている。したがって、本変形例において、把持部12Aの詳しい説明は、省略する。
【0096】
<金型の構成>
図8に示すように、金型20Aは、第1光学有効面転写金型21A、第2光学有効面転写金型22A、側面転写金型23A、第2領域転写金型24A、シム25A、第1位置決め金型26A、第2位置決め金型27A、及び、摺動スリーブ金型28Aを備えている。第1光学有効面転写金型21A、第2光学有効面転写金型22A、側面転写金型23A、第2領域転写金型24A、シム25A、第1位置決め金型26A、第2位置決め金型27A、及び、摺動スリーブ金型28Aの各々は、それぞれ、金型20の、第1光学有効面転写金型21、第2光学有効面転写金型22、側面転写金型23、第2領域転写金型24、シム25、第1位置決め金型26、第2位置決め金型27、及び、摺動スリーブ金型28に対応している。
【0097】
上述したように、レンズ10Aは、レンズ10と対比した場合に、一対の光学有効面である第1光学有効面111A及び第2光学有効面112Aが凹面からなるレンズである点と、把持部12Aの第2領域1212Aが逆テーパ領域により構成されている点と、が異なる。したがって、本変形例においては、これらの点に関連する第2光学有効面転写金型22A及び第2領域転写金型24Aについて説明し、それ以外の部材に関する説明を省略する。
【0098】
(第2光学有効面転写金型)
第2光学有効面転写金型22Aは、第2部分P2Aを含む円柱状の部材である。第2光学有効面転写金型22の一方の端部が凹面P21により構成されていたのに対して、第2光学有効面転写金型22Aの一方の端部は、凸面P21Aにより構成されている(図8参照)。
【0099】
(側面転写金型)
側面転写金型23Aは、円筒状の部材である。側面転写金型23Aの一方の端部は、後述する第2領域転写金型24Aとともに、間隔ΔGである空隙P33Aを形成する。
【0100】
側面転写金型23Aの内側面のうち第1光学有効面転写金型21Aから突出している内側面である転写面P31Aは、レンズ10Aの側面113Aの一部を転写する。また、側面転写金型23Aの一方の端部を構成する底面は、レンズ10の把持部12の底面を転写する。
【0101】
第2領域転写金型24Aは、円筒状の部材である。第2領域転写金型24Aの一方の端部は、側面転写金型23Aとともに間隔ΔGである空隙P33を形成する。
【0102】
第2領域転写金型24Aの内側面のうち第2光学有効面転写金型22から突出している内側面である転写面P32は、レンズ10Aの側面113Aの一部と、外周面121Aの第2領域1212Aである逆テーパ領域を転写する。転写面P32の内径は、図7に示す逆テーパ領域の形状と対応するように定められている。
【0103】
〔第4の実施形態〕
<光学装置>
本発明の第4の実施形態に係る光学装置の一態様である撮像装置1について、図9を参照して説明する。図9は、撮像装置1の模式的な断面図である。
【0104】
図9に示すように、撮像装置1は、筐体2、光学系3、フィルタ4、及び、撮像素子5を備えている。
【0105】
筐体2は、光学系3、フィルタ4、及び、撮像素子5を収容する。
【0106】
光学系3は、3群6枚のレンズから構成されており、レンズ31~36からなる。レンズ31~36のうちレンズ33は、図1に示したレンズ10と同一に構成されている。
【0107】
なお、本実施形態においては、レンズ31~36のうちレンズ33にのみ本発明の一態様であるレンズを採用している。ただし、何れか一方の光学有効面が凹面により構成されているレンズ31,35,36のいずれにおいても、本発明の一態様であるレンズを採用することができる。
【0108】
フィルタ4は、レンズ33の使用波長域を含む所定の波長域に属する光を透過させ、それ以外の光を透過させない、バンドパスフィルタである。
【0109】
撮像素子5は、光学系3及びフィルタ4を透過した光を電気信号に変換することによって、画像を表す画像情報を生成する。当該画像は、静止画像であってもよいし、動画像であってもよい。
【0110】
また、図示は省略するが、本発明の第4の実施形態に係る光学装置の一態様は、撮像装置に限定されるものではなく、距離に関する情報をセンシングする(測定する)測定装置であってもよい。測定装置の一例としては、TOF(Time-of-Flight)カメラ及びLiDAR(Light Detection and Ranging又はLaser Imaging Detection and Ranging)が挙げられる。このような測定装置においては、センシングに用いる光を投光する投光系の光学系と、センシングに用いる光を受光する受光系の光学系とを備えている。測定装置においては、本発明の一態様であるレンズ(例えば、図1に示すレンズ10、及び、図7示すレンズ10A)を投光系の光学系及び受光系の光学系の何れか一方又は両方に態様することができる。
【0111】
〔第1の実施例〕
本発明の第1の実施例について、以下に説明する。第1の実施例は、図1に示したレンズ10の実施例である。レンズ10は、メニスカスレンズの一例である。
【0112】
本実施例では、10μm近傍において用いることを想定してレンズ10を設計した。レンズ10を構成する材料として、ガラス転移点が180℃であるカルコゲナイドガラスIRG206を採用した。カルコゲナイドガラスIRG206の使用波長域は、約7μm以上14μm以下である。また、レンズ10をプレス成形するための金型として図5に示した金型20を採用し、製造方法として、図6に示した製造方法M1を採用した。
【0113】
製造方法M1においては、加熱工程S11における加熱温度として225℃を採用し、プレス工程S12を実施するまえに、金型20の内部空間にセットしたカルコゲナイドガラスIRG206を4分間加熱した。
【0114】
その次に、500Nの加重FLを金型20に印加するプレス工程S12と並行して、225℃の加熱温度を4分間保持し、その次に、500Nの加重FLを金型20に印加した状態で、加熱温度を180℃まで、-10℃/分の早さで冷却した。
【0115】
その後、加重FLを金型20に印加していない状態にし(FL=0N)、金型20の温度を、プレス工程S12の最後における加熱温度から常温まで徐々に下げた。
【0116】
なお、本実施例のレンズ10においては、厚さTとしてT=5.3mmを採用し、厚さtとしてt=2mmを採用し、厚さtとしてt=0.8mmを採用した。また、直径DとしてD=9.2mmを採用し、直径DとしてD=14.2mmを採用した。また、逆テーパ領域Rの表面と、レンズ10の光軸Aに直交する面とのなす角θとしてθ=45°を採用した。また、配列ピッチPとして、P=3.3μm(=0.33λ)を採用し、直径dとして、およそd=3μm(~0.33λ)を採用した。なお、凹凸構造1111における複数の凸部1113の配置として、六方配置を採用した。また、複数の凸部1113の設計時における突出量h及び突出量hを3.2μmとした。
【0117】
金型20と、このような製造方法M1を用いて製造したレンズ10において、複数の凸部1113の突出量h及び突出量hを測定し、その平均を算出したところ、その平均値は、3.2μmであった。
【0118】
一方、従来の金型であって、第3部分P3に空隙P33が設けられていない金型を用いて作成したレンズ(すなわち、レンズ10の比較例となるレンズ)では、複数の凸部1113の突出量h及び突出量hの平均値が2.8μmであった。
【0119】
したがって、レンズ10においては、凹凸構造の形状を設計時に定めた形状に近づけることができることが分かった。
【0120】
〔第2の実施例〕
本発明の第2の実施例について、以下に説明する。第2の実施例は、図7に示したレンズ10Aの実施例である。レンズ10Aは、第1光学有効面111A及び第2光学有効面112Aの各々が凹面により構成されたレンズの一例である。
【0121】
本実施例では、1.3μm近傍において用いることを想定してレンズ10Aを設計した。レンズ10Aを構成する材料として、ガラス転移点が344℃であるカルコゲナイドガラスK-PG375を採用した。また、レンズ10Aをプレス成形するための金型として図8に示した金型20Aを採用し、製造方法として、図6に示した製造方法M1を採用した。
【0122】
製造方法M1においては、加熱工程S11における加熱温度として373℃を採用し、プレス工程S12を実施するまえに、金型20Aの内部空間にセットしたカルコゲナイドガラスK-PG375を4分間加熱した。
【0123】
その次に、2KNの加重FLを金型20Aに印加するプレス工程S12と並行して、373℃の加熱温度を5分間保持し、その次に、2KNの加重FLを金型20に印加した状態で、加熱温度を352℃まで、-10℃/分の早さで冷却した。
【0124】
その後、加重FLを金型20Aに印加していない状態にし(FL=0N)、金型20Aの温度を、プレス工程S12の最後における加熱温度から常温まで徐々に下げた。
【0125】
なお、本実施例のレンズ10においては、厚さTとしてT=8.5mmを採用し、厚さtとしてt=2.5mmを採用し、厚さtとしてt=2.0mmを採用した。また、直径DとしてD=34.2mmを採用し、直径DとしてD=34.0mmを採用した。また、逆テーパ領域Rの表面と、レンズ10Aの光軸に直交する面とのなす角θとしてθ=45°を採用した。また、配列ピッチPとして、P=0.52μm(=0.4λ)を採用し、直径dとして、およそd=0.48μm(=0.4λ)を採用した。なお、凹凸構造1111Aにおける複数の凸部1113Aの配置として、六方配置を採用した。また、複数の凸部1113Aの設計時における突出量h及び突出量hを0.48μmとした。
【0126】
金型20Aと、このような製造方法M1を用いて製造したレンズ10Aにおいて、複数の凸部1113Aの突出量h及び突出量hを測定し、その平均を算出したところ、その平均値は、0.48μmであった。
【0127】
一方、従来の金型であって、第3部分P3Aに空隙P33Aが設けられていない金型を用いて作成したレンズ(すなわち、レンズ10Aの比較例となるレンズ)では、複数の凸部1113の突出量h及び突出量hの平均値が0.41μmであった。
【0128】
したがって、レンズ10においては、凹凸構造の形状を設計時に定めた形状に近づけることができることが分かった。
【0129】
〔まとめ〕
本発明の第1の態様に係るレンズは、凹面により構成され、且つ、反射を低減する凹凸構造が設けられた第1光学有効面、当該第1光学有効面に対向する第2光学有効面、及び、前記第1光学有効面と前記第2光学有効面との間に介在する同心円状の側面を含む主部と、前記側面の全周にわたって、且つ、当該側面から突出するように設けられた円環状の把持部であって、外周面の一部である第1領域が自由表面からなる把持部と、を備えている。
【0130】
外周面の一部である第1領域が自由表面からなるということは、当該レンズをプレス成形するプレス工程において、第1領域が金型による転写を受けていないことを意味する。このことは、当該レンズのプレス工程において材料に加重が印加された場合に生じる内部応力が、従来のレンズのプレス工程において材料に加重が印加された場合に生じる内部応力よりも抑制されていることを意味する。したがって、当該レンズは、凹面により構成されており、且つ、反射を低減する凹凸構造が設けられた光学有効面を含むレンズであって、従来よりも光学有効面の形状を設計時に定めた形状に近づけることができる。
【0131】
本発明の第2の態様に係るレンズは、上述した第1の態様に係るレンズの構成に加えて、前記第1領域は、前記外周面の全周にわたって円環状に形成されている、構成を採用している。
【0132】
上記の構成によれば、第1領域は、第1光学有効面を平面視した場合に、等方的に設けられている。したがって、当該レンズは、第1領域が外周面の一部に形成されているレンズと比較して、形状における対称性を高めることができる。
【0133】
本発明の第3の態様に係るレンズは、上述した第1の態様又は第2の態様に係るレンズの構成に加えて、前記把持部の厚さt及び当該レンズの最も厚い部分の厚さTは、1mm≦t≦T-0.5mmを満たす、構成を採用している。
【0134】
本発明の第4の態様に係るレンズは、上述した第1の態様~第3の態様の何れか一態様に係るレンズの構成に加えて、前記把持部の厚さt及び前記第1領域の厚さtは、t≦0.9×tを満たす、構成を採用している。
【0135】
これらの構成によれば、撮像装置や測定装置などに代表される光学装置の一部として当該レンズを採用した場合に、実用に耐え得る機械的強度を保つことができ、且つ、光学装置の筐体又は枠体へレンズを組付ける場合の精度を容易に高めることができる。
【0136】
本発明の第5の態様に係るレンズは、上述した第1の態様~第4の態様の何れか一態様に係るレンズの構成に加えて、前記外周面のうち前記第1領域以外の領域を第2領域として、前記第2領域は、前記第1領域に隣接し、且つ、前記第1領域に近づくにしたがって直径が拡大されている逆テーパ領域を含む、構成を採用している。
【0137】
上記の構成によれば、不連続性を小さくすることができるので、角部への応力集中による破損を防ぐことができる。また、流動性を確保することができるので、過度な内部応力による面形状の悪化を防ぐことができる。
【0138】
本発明の第6の態様に係るレンズは、上述した第5の態様に係るレンズの構成に加えて、前記第2領域は、前記逆テーパ領域と、前記第1領域からの距離によらず直径が略一定であるストレート領域と、により構成されている、構成を採用している。
【0139】
上記の構成によれば、第2領域が逆テーパ領域のみで構成されている場合と比較して、把持部の厚さを厚くすることができるので、把持部の機械的強度を高めることができる。
【0140】
本発明の第7の態様に係るレンズは、上述した第1の態様~第6の態様の何れか一態様に係るレンズの構成に加えて、前記第1光学有効面は、平面視において円形状であり、前記把持部における前記側面からの突出量f及び前記第1光学有効面の直径Dは、0.5mm≦f≦Dを満たす、構成を採用している。
【0141】
上記の構成によれば、撮像装置や測定装置などに代表される光学装置の一部として当該レンズを採用した場合に、レンズが無闇に大きくなることを防ぎつつ、光学装置の筐体又は枠体へのレンズの組付けを容易にすることができる。
【0142】
本発明の第8の態様に係るレンズは、上述した第1の態様~第7の態様の何れか一態様に係るレンズの構成に加えて、前記凹凸構造は、複数の柱状突起が規則的に配列されてなり、前記複数の柱状突起の配列ピッチPは、使用波長域に属する所定の波長を波長λとして、0.2×λ≦P≦λを満たす、構成を採用している。
【0143】
本発明の第9の態様に係るレンズは、上述した第8の態様に係るレンズの構成に加えて、前記複数の柱状突起の突出量hは、0.25×λ≦hを満たす、構成を採用している。
【0144】
本発明の第10の態様に係るレンズは、上述した第8の態様又は第9の態様に係るレンズの構成に加えて、前記第1光学有効面は、平面視において円形状であり、前記複数の柱状突起の突出量hは、前記第1光学有効面の光軸に最も近接する柱状突起の突出量を突出量hとして、0.75×h≦h≦1.25×hを満たす、構成を採用している。
【0145】
本発明の第11の態様に係るレンズは、上述した第8の態様~第10の態様の何れか一態様に係るレンズの構成に加えて、前記複数の柱状突起は、横断面が円形状であり、且つ、根本から先端に近づくにしたがって直径が小さくなるテーパ形状を有し、前記複数の柱状突起の前記根本における直径である直径dは、0.2×λ≦d≦0.6×λを満たす、構成を採用している。
【0146】
凹凸構造が発揮する反射低減の性能を高めるために、これらの構成が好適である。
【0147】
本発明の第12の態様に係るレンズは、上述した第1の態様~第11の態様の何れか一態様に係るレンズの構成に加えて、ガラス転移点を有する単一の材料により構成されている、構成を採用している。
【0148】
上記の構成によれば、プレス成形を用いた当該レンズの製造を容易にすることができる。
【0149】
本発明の範疇には、上述した第1の態様~第12の態様の何れか一態様に係るレンズも含まれる。
【0150】
本発明の第14の態様に係る金型は、凹面により構成され、且つ、反射を低減する凹凸構造が設けられた第1光学有効面、当該第1光学有効面に対向する第2光学有効面、及び、前記第1光学有効面と前記第2光学有効面との間に介在する同心円状の側面を含む主部と、前記側面の全周にわたって、且つ、当該側面から突出するように設けられた円環状の把持部と、を備えているレンズをプレス成形する金型であって、前記第1光学有効面の形状を転写する第1部分であって、前記凹面に対応する凸面を含む第1部分と、前記第2光学有効面の形状を転写する第2部分であって、且つ、前記第1部分に対向する第2部分と、前記側面及び前記把持部の形状を転写する第3部分であって、転写面が同心円状であり、且つ、前記把持部の外周面の一部に対応する領域に空隙が形成されている第3部分と、を備えている。
【0151】
当該金型を用いることによって、上述した第1の態様に係るレンズをプレス成形することができる。
【0152】
本発明の第15の態様に係る金型は、上述した第14の態様に係る金型の構成に加えて、前記空隙は、前記第3部分の前記転写面の全周にわたって円環状に形成されている、構成を採用している。
【0153】
上記の構成によれば、プレス成形したレンズの形状における対称性を高めることができる。
【0154】
本発明の第16の態様に係る金型は、上述した第15の態様に係る金型の構成に加えて、前記空隙の間隔を調整する調整機構を更に備えている、構成を採用している。
【0155】
上記の構成によれば、前記空隙の間隔を調整することができるので、レンズをプレス成形する場合に生じ得る内部応力の大きさを調整することができる。したがって、プレス成形後のレンズにおける凹凸構造の形状を、金型を変更することなく微調整することができる。
【0156】
本発明の第17の態様に係る製造方法は、凹面により構成され、且つ、反射を低減する凹凸構造が設けられた第1光学有効面、当該第1光学有効面に対向する第2光学有効面、及び、前記第1光学有効面と前記第2光学有効面との間に介在する同心円状の側面を含む主部と、前記側面の全周にわたって、且つ、当該側面から突出するように設けられた円環状の把持部と、を備えているレンズを、金型を用いたプレス成形により製造する製造方法であって、前記金型にセットされた材料を加熱する加熱工程と、金型に加重することによって前記材料を前記レンズにプレス成形するプレス工程であって、前記把持部の外周面の一部である第1領域にかかる圧力を逃がしながらプレス成形するプレス工程と、を含む。
【0157】
当該製造方法を用いることによって、上述した第1の態様に係るレンズをプレス成形することができる。
【0158】
本発明の第18の態様に係る製造方法は、上述した第17の態様に係る製造方法の構成に加えて、前記加熱工程は、前記材料の温度がガラス屈伏点-15℃以上を満たすように前記材料を加熱し、前記プレス工程は、前記温度がガラス屈伏点-15℃以上を満たす状態において、前記材料を前記レンズにプレス成形する、構成を採用している。
【0159】
上記の構成によれば、凹凸構造の形状を設計時に定めた形状により近づけることができる。
【0160】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0161】
10,10A レンズ
11,11A 主部
111,111A 第1光学有効面
1111,1111A 凹凸構造
1112,1112A 外接面(凹面)
1113,1113A 凸部
112,112A 第2光学有効面
113,113A 側面
12,12A 把持部
121,121A 外周面
1211,1211A 第1領域
1212,1212A 第2領域
ストレート領域
逆テーパ領域
20,20A 金型
21,21A 第1光学有効面転写金型
22,22A 第2光学有効面転写金型
23,23A 側面転写金型
24,24A 第2領域転写金型
25,25A シム
26,26A 第1位置決め金型
27,27A 第2位置決め金型
28,28A 摺動スリーブ金型
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10