(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034904
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】エンジン用排熱回収装置
(51)【国際特許分類】
F01N 5/02 20060101AFI20220225BHJP
F01K 23/10 20060101ALI20220225BHJP
F02G 5/02 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
F01N5/02 F
F01K23/10 P
F02G5/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020138832
(22)【出願日】2020-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(71)【出願人】
【識別番号】521362885
【氏名又は名称】コベルコ・コンプレッサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】壷井 昇
【テーマコード(参考)】
3G081
【Fターム(参考)】
3G081BA01
3G081BB04
3G081BC07
(57)【要約】
【課題】エンジンを冷却した冷却液とエンジンから出た排気ガスという2つの異なる熱源から有効に排熱回収できる排熱回収装置を提供する。
【解決手段】エンジン用排熱回収装置1は、エンジンから出た排気ガスが流れる排気ガス流路5と、熱媒が循環する熱媒循環流路6と、エンジン2の冷却液が流れる冷却液流路7とを備える。また、排熱回収装置1は、第1熱交換器11と、第2熱交換器12と、膨張機13と、発電機14と、凝縮器15と、熱媒ポンプ16とを備える。第1熱交換器11は、エンジン2から出た冷却液流路7を流れる冷却液と熱媒循環流路6を流れる熱媒とで熱交換することによって冷却液を冷却するとともに熱媒を加熱する。第2熱交換器12は、エンジン2から出た排気ガス流路5を流れる排気ガスと第1熱交換器11から出た熱媒循環流路6を流れる熱媒とで熱交換することによって排気ガスを冷却するとともに熱媒を加熱する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから出た排気ガスが流れる排気ガス流路と、
熱媒が循環する熱媒循環流路と、
前記エンジンの冷却液が流れる冷却液流路と、
前記エンジンから出た前記冷却液流路を流れる前記冷却液と前記熱媒循環流路を流れる前記熱媒とで熱交換することによって前記冷却液を冷却するとともに前記熱媒を加熱する第1熱交換器と、
前記エンジンから出た前記排気ガス流路を流れる前記排気ガスと前記第1熱交換器から出た前記熱媒循環流路を流れる前記熱媒とで熱交換することによって前記排気ガスを冷却するとともに前記熱媒を加熱する第2熱交換器と、
前記熱媒循環流路において前記第2熱交換器から流出した前記熱媒により駆動される膨張機と、
前記膨張機に機械的に接続され、前記膨張機によって駆動される発電機と、
前記熱媒循環流路において前記膨張機から流出した前記熱媒を凝縮させる凝縮器と、
前記熱媒循環流路の前記熱媒を流動させる熱媒ポンプと
を備える、エンジン用排熱回収装置。
【請求項2】
前記第2熱交換器から出た前記排気ガス流路を流れる前記排気ガスと、前記第1熱交換器に入る前記熱媒循環流路を流れる前記熱媒とで熱交換することによって前記排気ガスを冷却するとともに前記熱媒を加熱する第3熱交換器をさらに備える、請求項1に記載のエンジン用排熱回収装置。
【請求項3】
前記第2熱交換器と前記第3熱交換器は、一体である、請求項2に記載のエンジン用排熱回収装置。
【請求項4】
前記凝縮器に入る前記熱媒循環流路を流れる前記熱媒と、前記凝縮器から出た前記熱媒循環流路を流れる前記熱媒とで熱交換することによって、前記凝縮器に流入する前記熱媒を冷却するとともに前記凝縮器から流出した前記熱媒を加熱する第4熱交換器をさらに備える、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のエンジン用排熱回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン用排熱回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、廃熱回収装置を搭載した車両が開示されている。この廃熱回収装置は、1つの蒸発器において、エンジンを冷却した冷却水と、エンジンから出た排気ガスとから熱回収している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、排気ガスの温度は冷却水の温度よりも高いが、上記廃熱回収装置では、熱回収用の蒸発器が1つのみ設けられている。従って、排気ガスや冷却水といった異なる熱源からの異なる温度の排熱を1つの蒸発器で熱回収しており、排熱回収効率の観点から改善の余地がある。
【0005】
本発明は、エンジンを冷却した冷却液とエンジンから出た排気ガスという2つの異なる熱源から有効に排熱回収できる排熱回収装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、エンジンから出た排気ガスが流れる排気ガス流路と、熱媒が循環する熱媒循環流路と、前記エンジンの冷却液が流れる冷却液流路と、前記エンジンから出た前記冷却液流路を流れる前記冷却液と前記熱媒循環流路を流れる前記熱媒とで熱交換することによって前記冷却液を冷却するとともに前記熱媒を加熱する第1熱交換器と、前記エンジンから出た前記排気ガス流路を流れる前記排気ガスと前記第1熱交換器から出た前記熱媒循環流路を流れる前記熱媒とで熱交換することによって前記排気ガスを冷却するとともに前記熱媒を加熱する第2熱交換器と、前記熱媒循環流路において前記第2熱交換器から流出した前記熱媒により駆動される膨張機と、前記膨張機に機械的に接続され、前記膨張機によって駆動される発電機と、前記熱媒循環流路において前記膨張機から流出した前記熱媒を凝縮させる凝縮器と、前記熱媒循環流路の前記熱媒を流動させる熱媒ポンプとを備える、エンジン用排熱回収装置を提供する。
【0007】
この構成によれば、排熱回収装置が2つの熱交換器(第1熱交換器および第2熱交換器)を備えるため、異なる温度の冷却液および排気ガスのそれぞれから有効に排熱回収できる。具体的には、第1熱交換器においてエンジンの冷却に使用された高温の冷却液から熱媒に熱回収し、第2熱交換器においてエンジンから出た高温の排気ガスから熱媒に熱回収する。ここで、エンジンから出た排気ガスは通常エンジンの冷却に使用された冷却液よりも高温である。上記構成では、熱媒循環流路においては、第1熱交換器にて相対的に低温の冷却液から熱回収して熱媒をある程度加熱した後、第2熱交換器にて相対的に高温の排気ガスから熱回収して熱媒をさらに加熱する。従って、熱媒を段階的に加熱することができ、広い温度範囲で有効に排熱回収できる。このようにして熱媒を高温に加熱して蒸発させることができるため、膨張機を高温の熱媒ガスによって高効率で駆動でき、発電機を高効率で駆動できる。なお、膨張機の駆動に使用された熱媒は、凝縮器にて凝縮され、熱媒ポンプによって第1熱交換器および第2熱交換器に圧送され、第1熱交換器および第2熱交換器にて加熱されて蒸発し、再び膨張機に供給される。即ち、熱媒循環流路では、ランキンサイクルが構成されている。
【0008】
前記エンジン用排熱回収装置は、前記第2熱交換器から出た前記排気ガス流路を流れる前記排気ガスと、前記第1熱交換器に入る前記熱媒循環流路を流れる前記熱媒とで熱交換することによって前記排気ガスを冷却するとともに前記熱媒を加熱する第3熱交換器をさらに備えてもよい。
【0009】
この構成によれば、一層有効に排熱回収できる。具体的には、第3熱交換器において、第2熱交換器で熱回収しても未だ高温である排気ガスからさらに熱回収して熱媒を加熱する。これにより、第1熱交換器に流入する熱媒を予加熱できる。即ち、一層段階的に熱媒を加熱でき、一層広い温度範囲で有効に排熱回収できる。
【0010】
前記第2熱交換器と前記第3熱交換器は、一体であってもよい。
【0011】
この構成によれば、第2熱交換器と第3熱交換器とを繋ぐ配管を省略ないし短縮できるため、排気ガスを流しやすくすることができる。またこれにより、第2熱交換器および第3熱交換器における熱交換性能を向上させることができるとともに、第2熱交換器および第3熱交換器を設置するスペースを節約でき、コストダウンを図ることもできる。
【0012】
前記エンジン用排熱回収装置は、前記凝縮器に入る前記熱媒循環流路を流れる前記熱媒と、前記凝縮器から出た前記熱媒循環流路を流れる前記熱媒とで熱交換することによって、前記凝縮器に流入する前記熱媒を冷却するとともに前記凝縮器から流出した前記熱媒を加熱する第4熱交換器をさらに備えてもよい。
【0013】
この構成によれば、一層有効に排熱回収できる。凝縮器に流入する熱媒の温度は、凝縮器から流出した熱媒の温度よりも高いため、凝縮器の流入前後の熱媒で熱交換することにより、凝縮器から流出した熱媒を加熱できる。これにより、第1熱交換器(または第3熱交換器)に流入する熱媒を予加熱できる。即ち、一層段階的に熱媒を加熱でき、一層広い温度範囲で有効に排熱回収できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、排熱回収装置において、エンジンを冷却した冷却液とエンジンから出た排気ガスという2つの異なる熱源からそれぞれ熱回収する第1熱交換器と第2熱交換器を設けているため、広い温度範囲で有効に排熱回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るエンジン用排熱回収装置の概略構成図。
【
図2】
図1のエンジン用排熱回収装置のモリエル線図。
【
図3】第2実施形態に係るエンジン用排熱回収装置の概略構成図。
【
図4】
図3のエンジン用排熱回収装置のモリエル線図。
【
図5】
図3の第2および第3熱交換器が一体となった熱交換器の概略構成図。
【
図6】第3実施形態に係るエンジン用排熱回収装置の概略構成図。
【
図7】
図6のエンジン用排熱回収装置のモリエル線図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1を参照して、第1実施形態のエンジン用排熱回収装置1(以下、単に排熱回収装置1ともいう。)は、車両や船舶等の様々なエンジン2で発生する排熱を回収して発電を行う発電システムとして構成されている。
【0018】
排熱回収装置1は、排気ガス流路5と、熱媒循環流路6と、冷却液流路7とを備える。排気ガス流路5は、エンジン2から出た排気ガスが流れる流路である。熱媒循環流路6は、熱媒が循環する流路である。冷却液流路7は、エンジン2の冷却液が流れる流路である。各流路5~7は、配管によって構成されていてもよい。
【0019】
第1に、排気ガス流路5について説明する。排気ガス流路5は、エンジン2から開放端5aまで延びている。開放端5aは外気に開放されており、エンジン2からの排気ガスは開放端5aを介して外気に排気される。
【0020】
排気ガス流路5には、第2熱交換器12が設けられている。第2熱交換器12は、エンジン2から出た排気ガス流路5を流れる排気ガスと後述する第1熱交換器11から出た熱媒循環流路6を流れる熱媒とで熱交換することによって排気ガスを冷却するとともに熱媒を加熱する。
【0021】
第2に、熱媒循環流路6について説明する。熱媒循環流路6内を流れる熱媒は、例えばHFO系のR1336mzzZ、またはR245faなどの有機媒体であり得る。熱媒循環流路6には、膨張機13および発電機14と、凝縮器15と、熱媒ポンプ16と、第1熱交換器11と、第2熱交換器12とがこの順で設けられている。
【0022】
膨張機13は、気体状態の熱媒を供給され、熱媒を膨張させることによって発電機14を駆動する力を取り出す。発電機14は、膨張機13と機械的に接続されており、膨張機13から駆動力を受けて発電する。例えば、膨張機13は、スクリュ式であってもよい。この場合、膨張機13は、熱媒を膨張させることによって内部のスクリュロータを回転駆動する。このスクリュロータは発電機14と機械的に接続されており、発電機14はこのスクリュロータから回転駆動力を受けて発電する。ただし、膨張機13の種類は、特に限定されず、代替的にはスクロール式またはターボ式等であり得る。
【0023】
凝縮器15は、膨張機13から排出された気体状態の熱媒を冷却して凝縮させ、液体状態の熱媒とする。例えば、凝縮器15は、汎用の水冷式のものを使用し得る。
【0024】
熱媒ポンプ16は、凝縮器15で凝縮した液体状態の熱媒を加圧して流動させる。本実施形態では、熱媒ポンプ16は、熱媒を第1熱交換器11に圧送している。熱媒ポンプ16は、例えば、汎用の遠心ポンプまたはギアポンプ等であり得る。
【0025】
第1熱交換器11は、後述するようにエンジン2から出た冷却液流路7を流れる冷却液と、凝縮器15から出た熱媒循環流路6を流れる熱媒とで熱交換することによって冷却液を冷却するとともに熱媒を加熱する。ここで、熱媒は、温度Th11から温度Th12まで昇温する(Th11<Th12)。熱媒は、第1熱交換器11で加熱されることにより、液体状態から気体状態に一部変化している。
【0026】
第2熱交換器12は、前述のようにエンジン2から出た排気ガス流路5を流れる排気ガスと第1熱交換器11から出た熱媒循環流路6を流れる熱媒とで熱交換することによって排気ガスを冷却するとともに熱媒を加熱する。ここでは、熱媒は温度Th12から温度Th13まで昇温する(Th12<Th13)。第2熱交換器12は、第1熱交換器11よりも熱媒が高温となるように加熱しており、段階的な昇温が実現されている(Th11<Th12<Th13)。熱媒は、第2熱交換器12で加熱されることによって、完全に気体状態となっている。
【0027】
第2熱交換器12にて加熱された高温の気体状態の熱媒は、膨張機13に供給され、膨張機の駆動に使用される。このように熱媒は、熱媒循環流路6中を循環している。即ち、熱媒循環流路6では、ランキンサイクルが構成されている。
【0028】
第3に、冷却液流路7について説明する。冷却液流路7内を流れる冷却液の種類は、特に限定されず、例えばクーラント液または水であり得る。冷却液流路7には、冷却機構17と、第1熱交換器11と、冷却液ポンプ18とが、この順で設けられている。
【0029】
冷却機構17は、例えば、エンジン用のラジエータである。冷却機構17は、冷却液をエンジンに通液することでエンジン2を冷却する。冷却液はエンジン2の冷却に伴って受熱し、冷却機構17から流出した後の冷却液は冷却機構17に流入する前の冷却液よりも昇温している。
【0030】
第1熱交換器11は、前述のようにエンジン2から出た冷却液流路7を流れる冷却液と、凝縮器15から出た熱媒循環流路6を流れる熱媒とで熱交換することによって冷却液を冷却するとともに熱媒を加熱する。
【0031】
冷却液ポンプ18は、冷却液流路7において、冷却液を加圧して流動させている。本実施形態では、冷却液ポンプ18は、冷却液を冷却機構17に圧送している。冷却液ポンプ18は、例えば、汎用の遠心ポンプまたはギアポンプ等を使用し得る。
【0032】
このように、冷却液流路7では、エンジン2を冷却する冷却液が循環している。ただし、冷却液流路7は、必ずしも循環する態様でなくてもよい。
【0033】
図2を参照して、本実施形態の排熱回収装置1の熱媒循環流路6におけるランキンサイクルおよび排熱回収について説明する。
【0034】
図2では、横軸が比エンタルピーを示し、縦軸が圧力を示している。即ち、
図2は、モリエル線図を示している。
図2中の破線L1および破線L2は、飽和液線および飽和蒸気線をそれぞれ示している。
図2において、飽和液線L1よりも左側の領域では熱媒が液体状態であることを示し、飽和液線L1と飽和蒸気線L2との間の領域では熱媒が気液混合状態であることを示し、飽和蒸気線L2よりも右側の領域では熱媒が気体状態であることを示す。
図2のグラフ上の状態S11~S15は、各地点における熱媒の状態を表しており、
図1の点S11~S15にそれぞれ対応している。
【0035】
グラフ右上の状態S11は、膨張機13に流入する気体状態の熱媒を示している。熱媒は、状態S11から膨張機13にて膨張し、圧力と比エンタルピーが減少して状態S12となる。状態S12では、熱媒は気体状態である。熱媒は、状態S12から凝縮器15にて凝縮して比エンタルピーが減少し、状態S13となる。状態S13では、熱媒は液体状態である。熱媒は、状態S13から熱媒ポンプ16にて加圧されて圧力が増加し、状態S14となる。状態S14では、熱媒は液体状態である。熱媒は、状態S14から第1熱交換器11にて加熱されて比エンタルピーが増加し、状態S15となる。状態S15では、気体状態と液体状態の熱媒が混合している。熱媒は、状態S15から、第2熱交換器12にて加熱されてさらに比エンタルピーが増加し、状態S11となる。状態S11では、熱媒は気体状態となっている。
【0036】
上記のように、第1熱交換器11にて状態S14から状態S15に変化する際に熱媒は部分的に蒸発しており、第2熱交換器12にて状態S15から状態S11に変化する際に熱媒は完全に蒸発している。従って、第1熱交換器11および第2熱交換器12は、ともに蒸発器として機能している。
【0037】
本実施形態の排熱回収装置1は、以下の作用効果を有している。
【0038】
排熱回収装置1が2つの熱交換器(第1熱交換器11および第2熱交換器12)を備えるため、異なる温度の冷却液および排気ガスのそれぞれから有効に排熱回収できる。具体的には、第1熱交換器11においてエンジン2の冷却に使用された高温の冷却液から熱媒に熱回収し、第2熱交換器12においてエンジン2から出た高温の排気ガスから熱媒に熱回収する。ここで一般に、エンジン2から出た排気ガスはエンジン2の冷却に使用された冷却液よりも高温である。本実施形態の構成では、熱媒循環流路6においては、第1熱交換器11にて相対的に低温の冷却液から熱回収して熱媒をある程度加熱した後、第2熱交換器12にて相対的に高温の排気ガスから熱回収して熱媒をさらに加熱する。従って、熱媒を段階的に加熱することができ、広い温度範囲で有効に排熱回収できる。このようにして熱媒を高温に加熱して蒸発させることができるため、膨張機13を高温の熱媒ガスによって高効率で駆動でき、発電機14を高効率で駆動できる。
【0039】
(第2実施形態)
図3に示す第2実施形態の排熱回収装置1は、第1実施形態の構成に加えて第3熱交換器19をさらに備える。これに関する構成以外は、
図1の第1実施形態のエンジン用排熱回収装置1の構成と実質的に同じである。従って、
図1に示した構成と同じ部分については同じ符号を付して説明を省略する場合がある。
【0040】
本実施形態では、熱媒循環流路6において凝縮器15と第1熱交換器11との間、かつ、排気ガス流路5において第2熱交換器12と開放端5aとの間に第3熱交換器19が設けられている。
【0041】
第3熱交換器19は、第2熱交換器12から出た排気ガス流路5を流れる排気ガスと、第1熱交換器11に入る熱媒循環流路6を流れる熱媒とで熱交換することによって排気ガスを冷却するとともに熱媒を加熱する。ここで、熱媒は、温度Th21から温度Th22まで昇温する(Th21<Th22)。
【0042】
また、熱媒は、第1熱交換器11において温度Th22からTh23まで昇温し(Th22<Th23)、第2熱交換器12において温度Th23から温度Th24まで昇温する(Th23<Th24)。従って、第1熱交換器11は第3熱交換器19よりも熱媒が高温となるように加熱しており、第2熱交換器12は第1熱交換器11よりも熱媒が高温となるように加熱している。よって、段階的な昇温が実現されている(Th21<Th22<Th23<Th24)。
【0043】
図4を参照して、本実施形態の排熱回収装置1の熱媒循環流路6におけるランキンサイクルおよび排熱回収について説明する。
【0044】
図4は、
図2と同様のモリエル線図である。
図4のグラフ上の状態S21~S26は、各地点における熱媒の状態を表しており、
図3の点S21~S26にそれぞれ対応している。
【0045】
グラフ右上の状態S21は、膨張機13に流入する気体状態の熱媒を示している。熱媒は、状態S21から膨張機13にて膨張し、圧力と比エンタルピーが減少して状態S22となる。状態S22では、熱媒は気体状態である。熱媒は、状態S22から凝縮器15にて凝縮して比エンタルピーが減少し、状態S23となる。状態S23では、熱媒は液体状態である。熱媒は、状態S23から熱媒ポンプ16にて加圧されて圧力が増加し、状態S24となる。状態S24では、熱媒は液体状態である。熱媒は、状態S24から第3熱交換器19にて加熱されて比エンタルピーが増加し、状態S25となる。状態S25では、熱媒は未だ液体状態である。熱媒は、状態S25から第1熱交換器11にて加熱されて比エンタルピーが増加し、状態S26となる。状態S26では、気体状態と液体状態の熱媒が混合している。熱媒は、状態S26から、第2熱交換器12にて加熱されてさらに比エンタルピーが増加し、状態S21となる。状態S21では、熱媒は気体状態となっている。
【0046】
上記のように、第1熱交換器11にて状態S25から状態S26に変化する際に熱媒は部分的に蒸発しており、第2熱交換器12にて状態S26から状態S21に変化する際に熱媒は完全に蒸発している。従って、第1熱交換器11および第2熱交換器12は、ともに蒸発器として機能している。ただし、第3熱交換器19にて状態S24から状態S25に変化する際には、熱媒は液体状態のままであるので、第3熱交換器19は蒸発器としては機能していない。
【0047】
図2と
図4を比較すると、状態S21の比エンタルピーは、状態S11の比エンタルピーよりも高い。即ち、第2実施形態では、第1実施形態よりも高温の熱媒を膨張機13に供給している。従って、第2実施形態では、第1実施形態よりも発電機14における高効率の発電が可能となっている。
【0048】
本実施形態の排熱回収装置1は、第1実施形態と同様の作用効果に加えて以下の作用効果をさらに有している。
【0049】
本実施形態によれば、一層有効に排熱回収できる。具体的には、第3熱交換器19において、第2熱交換器12で熱回収しても未だ高温である排気ガスからさらに熱回収して熱媒を加熱する。これにより、第1熱交換器11に流入する熱媒を予加熱できる。即ち、一層段階的に熱媒を加熱でき、一層広い温度範囲で有効に排熱回収できる。
【0050】
(変形例)
図5を参照して、第2実施形態の排熱回収装置1の変形例について説明する。本変形例では、第2熱交換器12と第3熱交換器19は、一体である。詳細には、第2熱交換器12と第3熱交換器19は、一体のケーシング20内に形成されている。
【0051】
ケーシング20には、熱媒が流入する熱媒入口ポート20aと、熱媒が流出する熱媒出口ポート20bと、第2熱交換器12と第3熱交換器19との間で熱媒が一時的に流出する熱媒中間出口ポート20cと、第2熱交換器12と第3熱交換器19との間で一時的に流出した熱媒が戻ってくる熱媒中間入口ポート20dとが形成されている。熱媒中間出口ポート20cから熱媒中間入口ポート20dまでの間には、第1熱交換器11が配置されている。また、ケーシング20には、排気ガスが流入する排気ガス入口ポート20eと、排気ガスが流出する排気ガス出口ポート20fとが形成されている。
【0052】
第2熱交換器12と第3熱交換器19が一体となった熱交換器では、高温の排気ガスが排気ガス入口ポート20eから流入し、第2熱交換器12および第3熱交換器19でそれぞれ冷却されて排気ガス出口ポート20fから流出する。また、低温の熱媒が熱媒入口ポート20aから流入し、第3熱交換器で加熱され、熱媒中間出口ポート20cから流出し、第1熱交換器11にて加熱され、熱媒中間入口ポート20dから流入し、第2熱交換器12で加熱され、熱媒出口ポート20bから流出する。熱媒出口ポート20bは膨張機13と流体的に接続されており、熱媒出口ポート20bから流出した熱媒は膨張機13へと流れる。
【0053】
本変形例によれば、第2熱交換器12と第3熱交換器19とを繋ぐ配管を省略ないし短縮できるため、排気ガスを流しやすくすることができる。またこれにより、第2熱交換器12および第3熱交換器19における熱交換性能を向上させることができるとともに、第2熱交換器12および第3熱交換器19を設置するスペースを節約でき、コストダウンを図ることもできる。
【0054】
(第3実施形態)
図6に示す第3実施形態の排熱回収装置1は、第2実施形態の構成に加えて第4熱交換器21をさらに備える。これに関する構成以外は、
図3の第2実施形態のエンジン用排熱回収装置1の構成と実質的に同じである。従って、
図3に示した構成と同じ部分については同じ符号を付して説明を省略する場合がある。
【0055】
本実施形態では、熱媒循環流路6において、凝縮器15の前後に第4熱交換器21が設けられている。詳細には、第4熱交換器21は、凝縮器15の上流側の熱媒と下流側の熱媒とで熱交換するように配置されている。
【0056】
第4熱交換器21は、凝縮器15に入る熱媒循環流路6を流れる熱媒と、凝縮器15から出た熱媒循環流路6を流れる熱媒とで熱交換することによって、凝縮器15に流入する熱媒を冷却するとともに凝縮器15から流出した熱媒を加熱する。ここで、凝縮器15から流出した熱媒は温度Th31からTh32まで昇温する(Th31<Th32)。
【0057】
また、熱媒は、第3熱交換器19において温度Th32からTh33まで昇温し(Th32<Th33)、第1熱交換器11において温度Th33からTh34まで昇温し(Th33<Th34)、第2熱交換器12において温度Th34から温度Th35まで昇温する(Th34<Th35)。従って、第3熱交換器19は第4熱交換器21よりも熱媒が高温となるように加熱しており、第1熱交換器11は第3熱交換器19よりも熱媒が高温となるように加熱しており、第2熱交換器12は第1熱交換器11よりも熱媒が高温となるように加熱している。よって、段階的な昇温が実現されている(Th31<Th32<Th33<Th34<Th35)。
【0058】
図7を参照して、本実施形態の排熱回収装置1の熱媒循環流路6におけるランキンサイクルおよび排熱回収について説明する。
【0059】
図7は、
図2,4と同様のモリエル線図である。
図7のグラフ上の状態S31~S37は、各地点における熱媒の状態を表しており、
図6の点S31~S37にそれぞれ対応している。
【0060】
グラフ右上の状態S31は、膨張機13に流入する気体状態の熱媒を示している。熱媒は、状態S31から膨張機13にて膨張し、圧力と比エンタルピーが減少して状態S32となる。状態S32では、熱媒は気体状態である。熱媒は、状態S32から第4熱交換器21にて冷却されるとともに凝縮器15にて凝縮して比エンタルピーが減少し、状態S33となる。状態S33では、熱媒は液体状態である。熱媒は、状態S33から熱媒ポンプ16にて加圧されて圧力が増加し、状態S34となる。状態324では、熱媒は液体状態である。熱媒は、状態S34から第4熱交換器にて加熱されて比エンタルピーが増加し、状態S35となる。状態S35では、熱媒は未だ液体状態である。熱媒は、状態S35から第3熱交換器19にて加熱されて比エンタルピーが増加し、状態S36となる。状態S36では、熱媒は未だ液体状態である。熱媒は、状態S36から第1熱交換器11にて加熱されて比エンタルピーが増加し、状態S36となる。状態S36では、気体状態と液体状態の熱媒が混合している。熱媒は、状態S37から、第2熱交換器12にて加熱されてさらに比エンタルピーが増加し、状態S31となる。状態S31では、熱媒は気体状態となっている。
【0061】
上記のように、第1熱交換器11にて状態S36から状態S37に変化する際に熱媒は部分的に蒸発しており、第2熱交換器12にて状態S37から状態S31に変化する際に熱媒は完全に蒸発している。従って、第1熱交換器11および第2熱交換器12は、ともに蒸発器として機能している。ただし、第4熱交換器21にて状態S34から状態S35に変化する際には、熱媒は液体状態のままであるので、第4熱交換器21は蒸発器としては機能していない。同様に、第3熱交換器19にて状態S35から状態S36に変化する際には、熱媒は液体状態のままであるので、第3熱交換器19は蒸発器としては機能していない。
【0062】
図4と
図7を比較すると、状態S31の比エンタルピーは、状態S21の比エンタルピーよりも高い。即ち、第3実施形態では、第2実施形態よりも高温の熱媒を膨張機13に供給している。従って、第3実施形態では、第2実施形態よりも発電機14における高効率の発電が可能となっている。
【0063】
本実施形態の排熱回収装置1は、第1実施形態および第2実施形態と同様の作用効果に加えて以下の作用効果をさらに有している。
【0064】
本実施形態によれば、一層有効に排熱回収できる。凝縮器15に流入する熱媒の温度は、凝縮器15から流出した熱媒の温度よりも高いため、凝縮器15の流入前後の熱媒で熱交換することにより、凝縮器15から流出した熱媒を加熱できる。これにより、第3熱交換器19に流入する熱媒を予加熱できる。即ち、一層段階的に熱媒を加熱でき、一層広い温度範囲で有効に排熱回収できる。
【0065】
以上より、本発明の具体的な実施形態およびその変形例について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、個々の実施形態の内容を適宜組み合わせたものを、この発明の一実施形態としてもよい。
【0066】
また、上記各実施形態の排熱回収装置1の用途は広く、例えば発電機14で発電した電気エネルギーを車両用のバッテリーに供給するようにしてもよく、HV車(ハイブリッド車)のバッテリーに供給するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 エンジン用排熱回収装置(排熱回収装置)
2 エンジン
5 排気ガス流路
5a 開放端
6 熱媒循環流路
7 冷却液流路
11 第1熱交換器
12 第2熱交換器
13 膨張機
14 発電機
15 凝縮器
16 熱媒ポンプ
17 冷却機構
18 冷却液ポンプ
19 第3熱交換器
20 ケーシング
20a 熱媒入口ポート
20b 熱媒出口ポート
20c 熱媒中間出口ポート
20d 熱媒中間入口ポート
20e 排気ガス入口ポート
20f 排気ガス出口ポート
21 第4熱交換器