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特開2022-34910磁性体アンテナ、及びそれを実装した基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034910
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】磁性体アンテナ、及びそれを実装した基板
(51)【国際特許分類】
   H01Q 7/08 20060101AFI20220225BHJP
【FI】
H01Q7/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020138842
(22)【出願日】2020-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000166443
【氏名又は名称】戸田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(71)【出願人】
【識別番号】305043179
【氏名又は名称】韋僑科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(72)【発明者】
【氏名】香嶋 純
(72)【発明者】
【氏名】丸山 伸介
(57)【要約】      (修正有)
【課題】RFIDタグ等とリーダ/ライタとの交信可能な距離が伸長され、優れた交信特性を有する磁性体アンテナ及びそれを実装した基板を提供する。
【解決手段】磁性体アンテナ10は、複数の非磁性体層が積層されてなる積層体20と、積層体20の厚さ方向に延びる磁性体からなる複数の棒状コア60と、複数の棒状コアの周囲を囲むように形成されたアンテナコイル70とを含む。積層体20の厚さ方向において、棒状コアの長さとアンテナコイルの長さとの比は1より大きく、アンテナコイルの内側領域における複数の棒状コアの全含有量は、体積比率に換算して20%以上である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の非磁性体層が積層されてなる積層体と、
前記積層体の厚さ方向に延びる磁性体からなる複数の棒状コアと、
前記複数の棒状コアの周囲を囲むように形成されたアンテナコイルとを備え、
前記積層体の厚さ方向において、前記アンテナコイルの長さに対する前記棒状コアの長さの比は1よりも大きく、前記アンテナコイルの内側領域における前記複数の棒状コアの全含有量は、体積比率に換算して20%以上であることを特徴とする、磁性体アンテナ。
【請求項2】
前記積層体の厚さ方向において、前記アンテナコイルの長さに対する前記棒状コアの長さの比は、1.3以上1.8以下である、請求項1に記載の磁性体アンテナ。
【請求項3】
前記アンテナコイルの内側領域における前記複数の棒状コアの全含有量は、体積比率に換算して20%以上70%以下である、請求項1又は2に記載の磁性体アンテナ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の磁性体アンテナを実装した基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体アンテナに関し、特に、非接触で信号の送受信を行うRFIDタグ及びICカード等に用いられる磁性体アンテナ、及びそれを実装した基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ICチップを備えた非接触IC媒体(RFIDタグ)とリーダ/ライタとの間で電磁波を介してデータの交信を行うRFIDシステムが普及している。このRFIDシステムは、非接触での交信が可能であり、また汚れ等に強いという長所から、工場における生産工程管理や倉庫における物品管理等に利用される他、RFIDタグが組み込まれたICカードとして交通機関の乗車券や電子マネー等の様々な分野に利用されるようになってきている。このようなRFIDシステムには、例えば、電磁誘導方式を利用したものがあり、磁性体を使用し電磁波を送受信するアンテナ(磁性体アンテナ)が使用されている。
【0003】
RFIDタグに設けられる磁性体アンテナは、通常、コア(磁性体)に導線を巻き線してアンテナコイルを作り、リーダ/ライタから飛来する磁界成分を磁性体に貫通させアンテナコイルに誘導させて電圧(又は電流)に変換する。磁性体アンテナは、通常の共振型のアンテナに比べて、交信距離が短い傾向にある。そこで、特許文献1では、磁性体と非磁性体とからなるコアを中心として電極材料がアンテナコイル状となるように形成された磁性体アンテナを構成し、交信感度を向上させることが提案されている。
【0004】
一方、ICカードの場合、カード面と垂直な方向の交信距離を向上させることが好ましく、このために磁性体アンテナにおいて、カード面に搭載される基板に対して垂直方向に延びる棒状コアの周囲にコイルを配置することが考えられる。例えば、特許文献2では、第1磁性体部と、第1磁性体部上に積層された低透磁率部と、低透磁率部上に積層された第2磁性体部と、低透磁率部内に配置された、少なくとも1つの、環状または渦巻き状のコイルと、低透磁率部内において、第1磁性体部と第2磁性体部を繋ぎ、コイルの内側を貫通して配置された柱状磁性体部とを備えた積層型電子部品が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-284476号公報
【特許文献2】特開2013-183068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の磁性体アンテナは、上述の通り、磁性体と非磁性体からなるコアを中心として電極材料がアンテナコイル状となるように形成されており、交信感度が比較的良好な磁性体アンテナであると考えられる。しかしながら、生産工程管理や物品管理等のためのRFIDタグやその他のICカード等においては、それらとリーダ/ライタとの間で信号の送受信が容易になり、信号の送受信に要する時間の短縮及び両者の位置関係の自由度の向上等において有利になることから、RFIDタグやICカード等のリーダ/ライタに対する有効な交信距離をさらに長くすることが求められている。また、特許文献2に記載の磁性体アンテナは、基板面に垂直方向に延びる複数のコアを有するものの、基板面に垂直方向の交信距離を向上することを目的にはしておらず、交信距離の向上に有利な構造や条件等について何ら開示されていない。
【0007】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、RFIDタグ等とリーダ/ライタとの交信可能な距離が伸長され、優れた交信特性を有する磁性体アンテナ、及びそれを実装した基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明では、アンテナコイルの内側領域に、磁性材料からなる複数の棒状コアを所定の条件で設けた。
【0009】
具体的には、本発明に係る磁性体アンテナは、複数の非磁性体層が積層されてなる積層体と、前記積層体の厚さ方向に延びる複数の磁性体からなる棒状コアと、前記複数の棒状コアの周囲を囲むように形成されたアンテナコイルとを備え、前記積層体の厚さ方向において、前記アンテナコイルの長さに対する前記棒状コアの長さの比は1よりも大きく、且つ前記アンテナコイルの内側領域における前記複数の棒状コアの全含有量は、体積比率に換算して20%以上であることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る磁性体アンテナによると、前記積層体の厚さ方向において、前記アンテナコイルの長さに対する前記棒状コアの長さの比は1よりも大きいため、RFIDタグとリーダ/ライタとのコイル間に誘導されて発生する磁束の通路を確保することができ、RFIDタグのリーダ/ライタに対する有効な交信距離を長くすることができる。さらに、前記アンテナコイルの内側領域における前記複数の棒状コアの全含有量は、体積比率に換算して20%以上であるため、アンテナコイルの内側領域内に多くの棒状コアを含むことができ、リーダ/ライタから送信される電磁波に伴う磁束を効率よくアンテナコイル内に集束することができる。その結果、リーダ/ライタとRFIDタグとの交信可能な距離が伸長され、交信特性の優れた磁性体アンテナを提供することができる。
【0011】
本発明に係る磁性体アンテナにおいて、前記積層体の厚さ方向において、前記アンテナコイルの長さに対する前記棒状コアの長さの比は、1.3以上1.8以下であることが好ましい。
【0012】
このようにすると、アンテナコイルから発生する磁束をより効果的に集束するとともに、RFIDタグとリーダ/ライタとの間の磁束の通路を十分確保することができ、交信距離を伸長することができる。
【0013】
本発明に係る磁性体アンテナにおいて、前記アンテナコイルの内側領域における前記複数の棒状コアの全含有量は、体積比率に換算して20%以上70%以下であることが好ましい。
【0014】
このようにすると、アンテナコイルの内側領域内により多くの棒状コアを含むことができ、リーダ/ライタから送信される電磁波に伴う磁束を効率よくアンテナコイル内に集束することができる。
【0015】
また、本発明の他の対象は、上記のいずれかの磁性体アンテナを用いた装置である。
【0016】
このような装置は、上記の本発明に係る磁性体アンテナを備えているため、リーダ/ライタとRFIDタグとの交信可能な距離を伸長することができ、優れた交信特性を発揮することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る磁性体アンテナによると、RFIDタグとリーダ/ライタとの交信可能な距離を伸長することができ、優れた交信特性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る磁性体アンテナの分解斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る磁性体アンテナの図1のII-II線における断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る磁性体アンテナにおける積層体の上から2層目の非磁性体層を上面から見た平面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る磁性体アンテナにおけるアンテナコイルと棒状コアとの長さの関係を説明するための模式図である。
図5】実施例及び比較例で得られた磁性体アンテナにおける、交信距離と体積比率との関係を表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用方法又はその用途を制限することを意図するものではない。
【0020】
まず、本発明の一実施形態に係る磁性体アンテナについて図1及び図2を参照しながら説明する。図1及び図2に示すように、本実施形態に係る磁性体アンテナ10は、複数の非磁性体層21~28が積層されてなる積層体20と、積層体20の上に設けられた表層30と、前記積層体20の下に設けられた引出し層40と、前記引出し層40の下に設けられたパッド層50とを備えている。表層30、引出し層40及びパッド層50は、積層体20と同様に非磁性体からなる。表層30にはIC(集積回路)と接続するためのIC搭載用電極31が設けられている。引出し層40には、積層体20を介してIC搭載用電極31に接続された引出し配線41が設けられている。パッド層50には、引出し配線41と接続され、外部回路基板(図示省略)に接続されるための接続パッド51が設けられている。
【0021】
積層体20は、上述の通り非磁性体層21~28が積層されて構成されており、非磁性体層の最上層21及び最下層28を除く非磁性体層22~27の表面には、アンテナコイル70を構成するコイル導体部22b~27bがそれぞれ形成されている。コイル導体部22b~27bは、各非磁性体層22~27の表面の外周部に沿って周回するように形成されている。なお、コイル導体部22b~27bはそれらの周回方向がそれぞれ交互に反対方向に形成されており、すなわち、コイル導体部22b、24b、26bの周回方向は、コイル導体部23b、25b、27bの周回方向の反対である。但し、コイル導体部22b~27bの周回方向は必ずしもこれには限られない。また、図示は省略しているがコイル導体部22b~27bは、その両端部が上層又は下層に延びてそれぞれ上層又は下層のコイル導体部22b~27bに接続されている。なお、最上層に位置するコイル導体部22bの一端は表層30に設けられたIC搭載用電極31に接続され、最下層に位置するコイル導体部27bの一端は引出し層40に設けられた引出し配線41に接続されている。
【0022】
コイル導体部22b~27bの内側には、磁性体からなる複数の貫通コア22a~27aが非磁性体層22~27のそれぞれの厚み方向に貫通するように形成されている。また、複数の貫通コア22a~27aの位置に対応するように、最上層の非磁性体層21及び最下層の非磁性体層28にも複数の貫通コア21a、28aがそれぞれ形成されている。これらの貫通コア21a~28aがそれぞれ接続されることにより、積層体20の厚み方向に貫通するように複数の棒状コア60が形成されている。言い換えると、複数の棒状コア60は、コイル導体部22b~27bにより構成されたアンテナコイル70に囲まれるように配設されている。図1では貫通コア21a~28aの横断面の形状を円形で示しているが、円形には限られず、矩形、又は他の多角形であっても良い。なお、本実施形態では、図の簡略化のため、各非磁性体層21~28に形成される複数の貫通コアのうち1つを21a~28aとして表したが、各非磁性体層21~28に形成される他の貫通コアも同様にそれぞれが積層されて各々棒状コア60を形成する。
【0023】
また、コイル導体部22b~27bの内側には、棒状コア60と同様に積層体20の厚み方向に貫通するように層間接続導体22c~27cが設けられている。また、層間接続導体は、棒状コア60と同様に、コイル導体部22b~27bが設けられた非磁性体層22~27のみならず、その最上層及び最下層である非磁性体層21、28にまで達するように設けられている。これらの層間接続導体21c~28cを介して、IC搭載用電極31と引出し配線41が接続されている。ここで、図1に示す本実施形態に係る磁性体アンテナ10では、8層の非磁性体層21~28が積層されているが、非磁性体層の積層数は特に限定はされない。
【0024】
非磁性体層21~28に用いられる非磁性体材料としては、特に限定はされないが、例えば、非磁性フェライト、ガラス系セラミック、又は非磁性フェライトとガラス系セラミックを適量混合したものなどを用いることができ、また、非磁性フェライトの種類についても特に限定されないが、例えばZn系フェライト等を用いることができる。ガラス系セラミックの種類についても特に限定されないが、例えば、ホウケイ酸系ガラス、亜鉛系ガラス又は鉛系ガラス等を用いることができる。
【0025】
棒状コア60に用いられる磁性体材料としては、特に限定はされないが、磁性フェライトを用いることができ、また、磁性フェライトの種類についても特に限定されないが、例えば、Ni-Zn系フェライト、Mn-Zn系フェライト等を用いることができる。
【0026】
コイル導体部22b~27bを形成する材料は、特に限定されないが、例えば、銀、銅、銀を含む合金等の導電性材料等を用いることができる。また、層間接続導体21c~28cを形成する材料も、特に限定されることはないが、例えば、銀、銅、銀を含む合金等の導電性材料を使用することができる。
【0027】
次に、図3及び図4を参照しながら、本発明の一実施形態に係る磁性体アンテナ10の構造についてさらに詳細に説明する。
【0028】
本実施形態に係る磁性体アンテナ10において、アンテナコイル70の内側領域、言い換えるとコイル導体部22b~27bの内側領域には、上述の通り、複数の棒状コア60が設けられており、特に当該内側領域における複数の棒状コア60の全含有量は、体積比率に換算して20%以上である。具体的に、内側領域とは、コイル導体部22b~27bのそれぞれの内周縁領域(コイル導体部22bにおいては図3の太線で囲まれた領域)を非磁性体層22~27の厚み方向につないだ領域をいう。従って、当該内側領域の体積は、コイル導体部22b~27bのそれぞれの内周縁領域の面積が全て同一であれば、当該面積と非磁性体層22~27の総厚さとの積により算出される。一方、当該内側領域における複数の棒状コア60の全量の体積は、複数の貫通コア21a~28aの横断面積が全て同一であれば、当該横断面積と、非磁性体層21~28の総厚さと、棒状コア60の数との積により算出される。これらにより算出されるアンテナコイル70の内側領域における複数の棒状コア60の全含有量が体積比率に換算して20%以上であると、アンテナコイル70の内側領域内に多くの棒状コア60が含まれることとなるため、リーダ/ライタから送信される電磁波に伴う磁束を効率よくアンテナコイル内に集束することができる。本実施形態において、さらに好ましくは、当該内側領域における複数の棒状コア60の全含有量は、体積比率に換算して20%以上70%以下である。
【0029】
また、本実施形態に係る磁性体アンテナ10では、積層体20の厚さ方向において、アンテナコイル70の長さに対する棒状コア60の長さの比は1よりも大きくなるように構成されている。ここで、アンテナコイル70の長さとは、図4に示すように、アンテナコイル70の最上端から最下端までの長さ(a)をいう。言い換えると、最上層のコイル導体部22bの上端から最下層のコイル導体部27bの下端までの長さをいう。一方、棒状コア60の長さとは、図4に示すように、棒状コア60の積層体20の厚さ方向の長さ(b)をいう。言い換えると、最上層の貫通コア21aの上端から最下層の貫通コア28aの下端までの長さをいう。アンテナコイル70の長さ(a)に対する棒状コア60の長さ(b)の比(b/a)を1よりも大きくすることによって、アンテナコイルから発生する磁束をより効果的に集束するとともに、RFIDタグとリーダ/ライタとの間の磁束の通路を十分確保することができ、交信距離を伸長することができる。本実施形態において、さらに好ましくは、前記長さ比(b/a)が1.2以上3.0以下、さらにより好ましくは1.3以上1.8以下である。
【0030】
次に、磁性体アンテナ10の製造方法について説明する。まず、積層体20を構成する非磁性体層21~28、表層30、引出し層40及びパッド層50の原料粉末である非磁性フェライト等の非磁性材料及びバインダを混合した混合物に溶剤を添加して混合し、非磁性フェライト分散体を作製する。次に、この非磁性フェライト分散体をドクターブレード法等の公知のシート成形法を使用して、非磁性フェライトのグリーンシートを作製して所望の形状に切断する。
【0031】
次に、非磁性体層21~28となるグリーンシートに、貫通コア21a~28a及び層間接続導体21c~28cを形成する。より具体的には、まず、上記グリーンシートに、例えば、ピンやレーザビームで穴あけ加工を行い、貫通コア用スルーホール及び層間接続導体用スルーホールを形成する。次に、磁性フェライト等の磁性材料及びバインダを混合した混合物に溶剤を添加して混合し、磁性フェライト分散体を作製し、当該磁性フェライト分散体を貫通コア用スルーホールに充填する。一方、層間接続導体用スルーホールに対しては、上述の銀、銅、銀を含む合金等を主成分とする導電性ペーストを用意し、この導電性ペーストを層間接続導体用スルーホールに充填する。これらのスルーホールへの材料の充填方法は特に限定されないが、例えばスクリーン印刷法を利用することができる。
【0032】
次に、非磁性体層22~27となるグリーンシートの各々の表面にコイル導体部22b~27bを形成する。具体的には、グリーンシートの表面上に、上述の銀、銅、銀を含む合金等を主成分とする導電性ペーストをスクリーン印刷法等の方法で塗布し、コイル導体部22b~27bを形成する。
【0033】
次に、表層30、引出し層40及びパッド層50となるグリーンシートの各々の表面に、上記コイル導体部22b~27bの形成方法と同様にして、IC搭載用電極31、引出し配線41及び接続パッド51をそれぞれ形成する。
【0034】
次に、非磁性体層21~28、表層30、引出し層40及びパッド層50となるグリーンシートを、図1に示す順序に積層し、静水圧プレスを行うことにより加圧して圧着(ラミネート処理)を行い、マザー積層体を得る。圧着後のマザー積層体を所定寸法にカットする。そして、カットした積層体に対して焼成処理を行うことにより、図1に示す磁性体アンテナ10が製造される。
【0035】
また、本実施形態に係る磁性体アンテナ10は、回路基板に対して接続パッド51を介して実装されて用いられる。このような本実施形態に係る磁性体アンテナ10が実装された基板は、RFIDタグやICカード等に好適に用いられる。
【0036】
以上のとおり、本発明の実施形態に係る磁性体アンテナによると、交信可能な距離を伸長することができ、該磁性体アンテナを実装した基板によると、該基板の交信性能を向上することができる。
【実施例0037】
以下に、本発明に係る磁性体アンテナを実装した基板を詳細に説明するための実施例を示す。本実施例は、本発明について例示するものであり、発明の範囲を限定するものではない。
【0038】
[実施例1]
(磁性体アンテナの作製)
上述した磁性体アンテナの製造方法に従って実施例1に係る磁性体アンテナを作製した。具体的には、非磁性体層、表層、引出し層及びパッド層用として、Zn-Cuフェライト仮焼粉(Fe 48.5モル%、ZnO 41モル%、CuO 10.5モル%)100重量部、ブチラール樹脂8重量部、可塑剤5重量部、溶剤80重量部をボールミルで混合しスラリーを製造した。出来たスラリーをドクターブレードでPETフィルム上に150mm角で、焼結時の厚みが0.1mmになるようにシート成型した。次に、貫通コア用として、900℃焼結後に13.56MHzでの材料としての透磁率が100になるNi-Zn-Cuフェライト仮焼粉(Fe 48.5モル%、NiO 25モル%、ZnO 16モル%、CuO 10.5モル%)100重量部、ブチラール樹脂8重量部、可塑剤5重量部、溶剤80重量部をボールミルで混合しスラリーを製造した。次に、上記のようにして製造された非磁性体層用のグリーンシートに貫通コア用及び層間接続導体用のスルーホールを開け、貫通コア用のスルーホールに前記Ni-Zn-Cuフェライトのスラリーを、層間接続導体用のスルーホールにAgペーストを充填した。さらに、Agペーストでコイル導体部を印刷した。表層にはIC搭載用電極を、引出し層には引出し配線を、パッド層には接続パッドを、それぞれ印刷した。そして、図1に示すように、表層、非磁性体層用グリーンシート(8層)、引出し層及びパッド層を積層させたシートを加圧接着し、所定の形状となるように切断し、900℃で2時間、一体焼成して、横8mm×縦6mm×厚みおよそ1mmのサイズの磁性体アンテナを作製した。
【0039】
実施例1の磁性体アンテナにおけるアンテナコイルの長さ(a)、棒状コアの長さ(b)、それらの比(b/a)、アンテナコイルの内側領域の体積、棒状コアの個数及び全量の体積並びにアンテナコイルの内側領域における棒状コアの体積比率は、表1に示す通りに設定した。
【0040】
実施例1の磁性体アンテナのコイル両端にRFIDタグ用ICを接続してさらにICと並列にコンデンサーを接続して共振周波数を13.56MHzに調整してRFIDタグを作製し、出力100mWのリーダ/ライタで交信する距離を測定した。各測定方法を以下にまとめる。
【0041】
(共振周波数の測定と調整方法)
共振周波数は、キーサイト・テクノロジー株式会社製インピーダンスアナライザー4291Aに1ターンコイルを接続し、これとRFIDタグを結合させ、測定されるインピーダンスのピーク周波数をもって共振周波数とした。
【0042】
(交信距離の測定方法)
磁性体アンテナの交信距離は、表層にIC(NXP社製I CODE SLIX)を実装し、出力100mWのリーダ/ライタ(株式会社タカヤ製、製品名TR3-A201/TR3-D002A)のアンテナを水平に固定し、その上方にRFIDタグの長手方向をアンテナに対して垂直に位置させて、13.56MHzで交信が可能な限り高い位置の時のアンテナとRFIDタグの垂直方向の距離を交信距離とした。実施例1の磁性体アンテナの交信距離は表1に示す通りである。
【0043】
[実施例2~12]
アンテナコイルの長さ(a)に対する棒状コアの長さ(b)の比(b/a)、及びアンテナコイルの内側領域における棒状コアの体積比率を表1に示すとおりに変更した以外は前記実施例1と同様にして、実施例2~12の磁性体アンテナを作製した。そして、実施例1と同様にして交信距離を測定し、その結果を表1にまとめた。実施例2~12の磁性体アンテナは、上記(b/a)が1よりも大きく且つアンテナコイルの内側領域における複数の棒状コアの全含有量が体積比率で20%以上である。
【0044】
[比較例1~10]
アンテナコイルの長さ(a)に対する棒状コアの長さ(b)の比(b/a)、及びアンテナコイルの内側領域における棒状コアの体積比率を表1に示すとおりに変更した以外は前記実施例1と同様にして、比較例1~10の磁性体アンテナを作製した。そして、実施例1と同様にして交信距離を測定し、その結果を表1にまとめた。比較例1~10の磁性体アンテナは、上記(b/a)が1よりも大きいこと、及びアンテナコイルの内側領域における複数の棒状コアの全含有量が体積比率で20%以上であることの少なくともいずれか一方を満たしていないものである。
【0045】
実施例及び比較例それぞれの長さ比(b/a)に対する、上記体積比率と交信距離との関係を図5に示す。具体的に交信距離は比較例1の交信距離を基準としてその交信距離の増大率(%)を示している。
【0046】
表1及び図5に示すように、長さ比(b/a)が1より大きく、体積比率が20%以上である実施例1~12はいずれも、比較例と比較して交信距離が長くなったことがわかる。特に、同じ長さ比(b/a)で比較すると、体積比率が大きいほうが交信距離は長くなり、同じ体積比率で比較すると、長さ比(b/a)が大きいほうが交信距離は長くなった。このことから、本発明に係る磁性体アンテナは、長さ比(b/a)及び体積比率が大きいほど、交信距離の向上効果が大きくなり、優れた交信性能を発揮することが明確となった。
【0047】
【表1】
【0048】
以上のように、本発明に係る磁性体アンテナはいずれも、RFIDタグとリーダ/ライタとの交信可能な距離を伸長することができ、交信性能の優れたアンテナであることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の磁性体アンテナは、非接触で信号の送受信を行うRFIDタグ及びICカード等に実装される磁性体アンテナとして有効に利用できる。
【符号の説明】
【0050】
10 磁性体アンテナ
20 積層体
21~28 非磁性体層
21a~28a 貫通コア
22b~27b コイル導体部
21c~28c 層間接続導体
30 表層
31 IC搭載用電極
41 引出し配線
51 接続パッド
60 棒状コア
70 アンテナコイル


図1
図2
図3
図4
図5