(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034960
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】センサ装置
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20220225BHJP
G06K 19/07 20060101ALI20220225BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20220225BHJP
G02F 1/167 20190101ALI20220225BHJP
G02F 1/16753 20190101ALI20220225BHJP
【FI】
G06K19/077 220
G06K19/07 170
G06K19/077 112
G06K19/07 040
H05K1/02 B
G02F1/167
G02F1/16753
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020138932
(22)【出願日】2020-08-19
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業「マテリアル×プロセスイノベーションによる革新的ソフト3D界面の創製とやわらかものづくり革命への展開に関する国立大学法人山形大学による研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】304036754
【氏名又は名称】国立大学法人山形大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芝 健夫
(72)【発明者】
【氏名】時任 静士
【テーマコード(参考)】
2K101
5E338
【Fターム(参考)】
2K101AA05
2K101BA02
2K101BB43
2K101BD61
2K101EB02
2K101EB04
2K101EB71
2K101EB82
2K101EC08
2K101EC55
2K101EC58
2K101EC62
2K101EC72
2K101EC84
2K101EF03
2K101EH17
5E338AA12
5E338BB54
5E338CC01
5E338CD02
5E338EE60
(57)【要約】
【課題】 従来のセンサ装置では、どの程度の温度が何時間くらい継続したのか等の情報を得ることができない。そのため、輸送経路等のどこに問題があるのか、品質に影響を与える程度の環境であったのか等を、知ることができない。また、安価で高機能なセンサ装置をいかに得るかについては記載されていない。
【解決手段】 物品に取り付けられ、通信アンテナを有する可撓性を備えたセンサ装置であって、回路部と、表示部を、可撓性基板に搭載し、前記回路部は、センサーデバイスと、電源と、前記センサーデバイスの情報を記憶するメモリと、を備え、前記表示部は、前記センサーデバイスから得られた情報を表示する可撓性を備えた表示デバイスを備え、前記通信アンテナは、前記メモリの記憶内容を送信し、前記表示デバイスと前記センサーデバイスと前記電源は、前記可撓性基板に形成した前記印刷配線により電気的に接続され、前記回路部と前記表示部は重なって配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品に取り付けられ、通信アンテナを有する可撓性を備えたセンサ装置であって、
回路部と、表示部を、可撓性基板に搭載し、
前記回路部は、センサーデバイスと、電源と、前記センサーデバイスの情報を記憶するメモリとを備え、
前記表示部は、前記センサーデバイスから得られた情報を表示する可撓性を備えた表示デバイスを備え、
前記通信アンテナは、前記メモリの記憶内容を送信し、
前記表示デバイスと前記センサーデバイスと前記電源は、前記可撓性基板に形成した印刷配線により電気的に接続され、
前記回路部と前記表示部は重なって配置されていることを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
前記表示デバイスは、電子ペーパであることを特徴とする請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記表示デバイスは、前記表示部において前記可撓性基板に前記印刷配線により走査線及び信号線を形成したものであることを特徴とする請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記可撓性基板は、前記回路部と前記表示デバイスの間を折り曲げた折曲げ部とし、前記回路部と前記表示部を重ねた配置とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記可撓性基板が重なった部分を接着せず、前記表示部の前記折曲げ部と対向する端部と、前記回路部の間を接続する接続フィルムを備えたことを特徴とする請求項4に記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記接続フィルムは切断可能部を有し、切断可能部を切断することにより、前記通信アンテナに前記表示デバイスが重ならない状態にできることを特徴とする請求項5に記載のセンサ装置。
【請求項7】
前記可撓性基板の一面のみに前記表示部と前記回路部を形成することを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項8】
前記可撓性基板の一面に前記表示部を形成し、他面に前記回路部を形成することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項9】
前記表示部は印刷部を有し、
前記通信アンテナは前記印刷部と重なって配置されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項10】
前記表示デバイスは走査線駆動チップと信号線駆動チップを備え、
前記走査線駆動チップと前記信号線駆動チップは、長辺方向が前記表示デバイスの短辺方向となるように前記可撓性基板に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、瓶のような曲面を持つ商品に貼り付けることができる表示機能付きのセンサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本酒や果実酒、その他の食品等は、輸送や貯蔵の際に温度管理等の品質管理が重要である。特に、高品質の日本酒や食品等は温度環境等に対して繊細である場合が多く、一部でも消費者に届くまでに品質が劣化すると、生産者の信用が低下してしまう。また、小売店やレストランに届くまでの間に、転売などが行われて管理がなされず、品質が劣化すると、小売店等に対する消費者の評価が下がることになる。
【0003】
そこで、温度により化学変化する物質を用いて有効期限を表示したり、センサ及びメモリを用いて温度等の環境と経過時間から警告を表示したりする表示ラベルが考えられている。特許文献1には、温度等の環境と経過時間により警告を表示する表示ラベルが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の警告表示ラベルは電子ペーパと駆動部からなるセンサ装置である。しかしながら、単に警告を表示するだけであり、どの程度の温度が何時間くらい継続したのか等の情報を得ることができない。そのため、輸送経路等のどこに問題があるのか、品質に影響を与える程度の環境であったのか等の情報から問題の解決を図ることができない。また、安価で問題の解決に役立つ高機能なセンサ装置をいかに得るかについては記載されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明の一側面に係るセンサ装置は、物品に取り付けられ、通信アンテナを有する可撓性を備えたセンサ装置であって、回路部と、表示部を、可撓性基板に搭載し、前記回路部は、センサーデバイスと、電源と、前記センサーデバイスの情報を記憶するメモリとを備え、前記表示部は、前記センサーデバイスから得られた情報を表示する可撓性を備えた表示デバイスを備え、前記通信アンテナは、前記メモリの記憶内容を送信し、前記表示デバイスと前記センサーデバイスと前記電源は、前記可撓性基板に形成した印刷配線により電気的に接続され、前記回路部と前記表示デバイスは重なって配置されていることを特徴とする。
当該構成によれば、解析に用いるデータを記憶しつつ、部分的な情報は表示デバイスを介してユーザに知らせる、高機能で比較的安価な、物品に取り付けるセンサ装置を得ることができる。
【0007】
また、上記一側面に係るセンサ装置の別の形態として、前記表示デバイスは、電子ペーパであることを特徴とする。
当該構成によれば、瞬時消費電力が小さい電子ペーパを用いることにより、電源の容量を小さくすることができる。
【0008】
また、上記一側面に係るセンサ装置の別の形態として、前記表示デバイスは、前記表示部において前記可撓性基板に前記印刷配線により走査線及び信号線を形成したものであることを特徴とする。
当該構成によれば、印刷配線を用いて可撓性基板に回路部と表示デバイスを作り込むことができる。
【0009】
また、上記一側面に係るセンサ装置の別の形態として、前記可撓性基板は、前記回路部と前記表示デバイスの間を折り曲げた折曲げ部とし、前記回路部と前記表示部を重ねた配置とすることを特徴としてもよい。
当該構成によれば、一枚の可撓性基板を用いて、比較的安価でコンパクトなセンサ装置を売ることができる。
【0010】
また、上記一側面に係るセンサ装置の別の形態として、前記可撓性基板が重なった部分を接着せず、前記表示部の前記折曲げ部と対向する端部と、前記回路部の間を接続する接続フィルムを備えたことを特徴としてもよい。
当該構成によれば、センサ装置を曲率半径が小さい物品に取り付けた際に、表示部の接続フィルム側の端部が回路部から浮き上がる。これにより表示デバイスに過度の曲げが行われない。また、接続フィルムによって端部は接続されているため、表示部がふらつかないセンサ装置を得ることができる。
【0011】
また、上記一側面に係るセンサ装置の別の形態として、前記接続フィルムは切断可能部を有し、切断可能部を切断することにより、前記通信アンテナに前記表示デバイスが重ならない状態にできることを特徴としてもよい。
当該構成によれば、物品の搬送の終了後に、接続フィルムを切断して通信アンテナに表示デバイスが重ならない状態とすることができる。この状態では、通信アンテナに印刷配線や共通電極等の導電体が重ならないため、良好な通信を行うことができる。
【0012】
また、上記一側面に係るセンサ装置の別の形態として、前記可撓性基板の一面のみに前記表示部と前記回路部を形成してもよい。
当該構成によれば、両面に表示部と回路部を形成する場合と比べて製造工程を複雑にすることなく、比較的安価なセンサ装置を提供することができる。また、回路部のセンサーデバイスが可撓性基板よりも物品側になるため、物品の温度等を正確に検知することができる。
【0013】
また、上記一側面に係るセンサ装置の別の形態として、前記可撓性基板の一面に前記表示部を形成し、他面に前記回路部を形成することを特徴としてもよい。
当該構成によれば、可撓性基板が2重にならないため、センサ装置を薄く形成することができる。また、回路部のセンサーデバイスが可撓性基板よりも物品側になるため、物品の温度等を正確に検知することができる。
【0014】
また、上記一側面に係るセンサ装置の別の形態として、前記表示部は非導電性の材料から構成される印刷部を有し、前記通信アンテナは前記印刷部と重なって配置されることを特徴としてもよい。
当該構成によれば、印刷配線や表示デバイスによる導体が通信アンテナに重ならず、良好な通信を行うことができる。
【0015】
また、上記一側面に係るセンサ装置の別の形態として、前記表示デバイスは走査線駆動チップと信号線駆動チップを備え、前記走査線駆動チップと前記信号線駆動チップは、長辺方向が前記表示デバイスの短辺方向となるように前記可撓性基板に取り付けられていることを特徴としてもよい。
当該構成によれば、センサ装置を円筒形の物品に取り付ける場合に、センサ装置の長辺が曲がり、短辺が曲がらないように取り付けることが可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、高機能で比較的安価であり、コンパクトな物品に取り付けるセンサ装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】実施例1に係るセンサ装置1における表示部の配置図。
【
図3】接着層18による接着を行う前の実施例1に係るセンサ装置1を斜めから見た図。
【
図7】実施例4に係るセンサ装置4を瓶に取り付けた際の断面図。
【
図9】実施例5の変形例1に係るセンサ装置5-1の断面図。
【
図10】実施例5の変形例2に係るセンサ装置5-2の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態を説明する。以下の実施形態では表示デバイスとして可撓性を有する電子ペーパを用いるが、可撓性があれば他の表示デバイスでもよい。
【実施例0019】
図1は、実施例1に係るセンサ装置1の断面図である。センサ装置1はシート状に形成され、可撓性を有する。そして、
図1におけるセンサ装置1の下方で物品に取り付ける。可撓性基板11は表示部12と回路部16を有している。可撓性基板11の表面には、印刷配線111が施されており、印刷配線111は、可撓性基板11と共に折曲げ部112で折り曲げられている。本願の実施形態で用いる印刷配線111は、インクジェット印刷によって樹脂製の可撓性基板11の上に金属の粒子が分散したインクを印刷し、150℃以下の温度で加熱して導電配線としたものである。
【0020】
可撓性基板11を折り曲げる前において、折曲げ部112の両側に表示部12と回路部16を形成する。そして、折曲げ部112での折曲げにより表示部12と回路部16が重なり、重なった部分を接着層18により接着する。
図1において、表示部12には電子ペーパ13と走査線駆動チップ14が記載されている。電子ペーパ13は、可撓性を有している。このように、可撓性基板11の一面に表示部12を形成し、他面に回路部16を形成している。
【0021】
電子ペーパ13は、走査線134と信号線135(
図2参照)が可撓性基板11の上に印刷配線111により形成されている。また、走査線134と信号線135の交点の近傍には、画素トランジスター136(
図2参照)、画素電極137(
図2参照)、画素容量素子138(
図2参照)が形成されている。そして、画素電極137の上に電気泳動素子131が設けられる。本実施形態で用いる電気泳動素子131は、マイクロカプセルの中に透明オイルと、正に帯電した白色顔料と、負に帯電した黒色顔料を封止した構造になっている。電気泳動素子131の上部には共通電極132を備えたカバー基板133が設けられている。
図1では、印刷配線111で形成された走査線134が、印刷配線111により走査線駆動チップ14に接続している。走査線駆動チップ14からは印刷配線111が折曲げ部112を通過して回路部16に至り、ビアホール113で可撓性基板11を通過して取付素子17に接続し、さらに印刷配線111を介して他の取付素子17や、通信アンテナ171等に接続する。
図1に示されていないが、信号線135と信号線駆動チップ15についても同様である。取付素子17は、センサーデバイスやメモリ素子、制御回路、等の回路チップや二次電池、通信アンテナ171などである。ここで通信アンテナ171は回路部16に設けられるが、上部に配置される表示部12において、印刷配線111などの導電性部材がない非導電領域121の下に設ける。
【0022】
表示部12の上側、回路部16の下側、折曲げ部112の外側は、保護層19により覆われて保護されている。センサ装置1は柔軟性を有しており、物品の曲面に接着等により取り付けることができる。なお、
図1において、信号線駆動チップ15の記載は省略している。
【0023】
図2は、実施例1に係るセンサ装置1における表示部12の配置図である。電子ペーパ13は印刷配線111で形成された走査線134と信号線135を備える。また、走査線134と信号線135の交点近傍には画素電極137が設けられ、電気泳動素子131の画素を形成している。さらに、交点近傍には画素容量素子138と画素トランジスター136を備える。走査線134から延在する印刷配線111は走査線駆動チップ14の走査線バッファ141に接続し、信号線135から延在する印刷配線111は走査線駆動チップ14の信号線バッファ151に接続する。
【0024】
表示部12は、
図2の横方向(X方向)に長く延在する形状を有している。走査線駆動チップ14と信号線駆動チップ15は、延在する長辺方向が電子ペーパ13及び表示部12の短辺方向(Y方向)となるように可撓性基板11に取り付けられている。センサ装置1を円筒形の物品に貼り付ける場合には、長辺であるX方向が湾曲するように取り付けることが一般的である。走査線駆動チップ14と信号線駆動チップ15は延在方向では曲がらないため、
図2のようにX方向に垂直に延在するように配置する。
【0025】
図3は、接着層18による接着を行う前の実施例1に係るセンサ装置1を斜めから見た図である。表示部12と回路部16は重なって配置され、表示部12と回路部16は折曲げ部112で接続している。表示部12の電子ペーパ13には温度、時間等の文字と二次元バーコードが表示されている。また、回路部16には、電源である二次電池が取付素子17として取り付けられている。本実施例では、二次電池は柔軟性のあるフィルム状のものを用いる。
【0026】
センサ装置1は物品に取り付けられる。センサ装置1は可撓性を有したシート状であり、瓶等の円筒形の物品にも取り付けることができる。そして、温湿度センサや9軸センサ等のセンサーデバイスの情報を得られた時間と共に連続的にメモリに記憶する。物品の搬送後等において、メモリの記憶内容は近距離無線通信により、通信アンテナから送信可能である。また、得られた温度等の情報の一部は電子ペーパ13で表示する。本実施例では、物品にセンサ装置1を取り付けた後、出荷時に近距離無線通信により送り先名を入力する等の出荷処理をする。
図3では、出荷処理後に温度センサにより検出した温度の最高温度と、出荷処理の日時の情報等を表示している。送り先の店舗等では、表示されている最高温度が高すぎる場合に、商品を販売しないなどの処置を取ることができる。さらに、高すぎる最高温度が表示されている場合には、近距離通信を用いてメモリ内の情報を通信アンテナ経由で取り出し、温度の時間推移等をチェックして問題のある輸送過程を把握し、改善につなげることができる。また、表示部12に異常値が表示されているか否かにかかわらず、取り出したメモリ内の情報を商品管理に役立てることができる。
【0027】
<実施例1の変形例>
図2において、信号線駆動チップ15を、電子ペーパ13からみてY方向の側に配置することもできる。この場合には、信号線駆動チップがX方向に延在することになるが、複数に分割して複数の信号線駆動チップを用いる。これにより、複数の信号線駆動チップがX方向に延在しても、各チップのX方向の長さが短いため、X方向で湾曲することができ、センサ装置を円筒形の物品に貼り付けることができる。
実施例2では物品に取り付ける側に回路部26があるため、可撓性基板21を介さずに取付素子27である温度センサを物品の近くに配置することができる。そのため、物品の温度を正確に記憶することができる。