(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034969
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】コア部製造装置
(51)【国際特許分類】
H02K 15/10 20060101AFI20220225BHJP
H02K 1/27 20220101ALI20220225BHJP
H02K 15/03 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
H02K15/10
H02K1/27 501D
H02K15/03 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020138947
(22)【出願日】2020-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】武田 勇治
(72)【発明者】
【氏名】天野 克己
(72)【発明者】
【氏名】福本 崇
【テーマコード(参考)】
5H615
5H622
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP02
5H615PP06
5H615RR07
5H615SS15
5H615SS24
5H615SS44
5H615TT05
5H615TT26
5H622CA02
5H622CA07
5H622CA10
5H622CA14
5H622CB03
5H622CB05
5H622PP20
(57)【要約】
【課題】 樹脂材料と鉄心本体をモールド装置に対し異なる二方向からそれぞれ搬入する構造を採用して、搬入のための機構が互いに悪影響を及ぼさず、機構の複雑化を回避して、適切な搬入による製造の能率化が図れる、コア部製造装置を提供する。
【解決手段】 回転電機における鉄心本体11の樹脂充填対象となる空間部に溶融した樹脂を注入するモールド装置20に対して、鉄心本体11を搬入出する鉄心移送部40、及び、樹脂材料を移送供給する樹脂移送部30が、それぞれ異なる方向から鉄心本体を搬入出し且つ樹脂を供給して、モールド装置20で鉄心本体11の空間部に樹脂を充填可能とすることから、鉄心本体と樹脂材料のモールド装置20への各移動経路を簡略にでき、モールド装置20や各移送部の構造を複雑化せずに済み、製造コストを抑えられると共に、メンテナンス性も良好とすることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性金属材料製の薄板を複数積層して形成された鉄心本体における、樹脂充填対象として設けられた複数の空間部に、樹脂を充填して、回転電機の固定子又は回転子をなすコア部を製造する、コア部製造装置において、
前記鉄心本体における前記空間部に樹脂を充填するモールド装置と、
当該モールド装置に樹脂材料を移送して供給可能である樹脂移送部と、
前記モールド装置の一対の型間に対し鉄心本体を搬入及び搬出可能である鉄心移送部とを備え、
前記樹脂移送部からモールド装置への樹脂材料供給と、前記鉄心移送部によるモールド装置に対する鉄心本体の搬入及び搬出とが、モールド装置に対する向きの異なる二つの側方位置からそれぞれなされることを
特徴とするコア部製造装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載のコア部製造装置において、
前記モールド装置が、溶融した樹脂を前記空間部に充填することを
特徴とするコア部製造装置。
【請求項3】
前記請求項1に記載のコア部製造装置において、
製造対象であるコア部が、前記鉄心本体に設けられた磁石挿入孔に永久磁石を固定されてなる、回転電機の回転子であり、
前記空間部が、前記磁石挿入孔の少なくとも一部であり、
前記モールド装置が、供給された前記樹脂材料を前記鉄心本体の磁石挿入孔に投入し、当該投入された樹脂材料を溶融させて、前記空間部に樹脂を充填し、
前記磁石挿入孔に樹脂材料が投入されてから、当該樹脂材料を溶融させるより前又は溶融させる間に、磁石挿入孔に前記永久磁石を挿入することを
特徴とするコア部製造装置。
【請求項4】
前記請求項1ないし3のいずれかに記載のコア部製造装置において、
前記モールド装置が、複数並べて配置され、
前記樹脂移送部が、樹脂材料を少なくともモールド装置の並び方向に沿って移動可能とする搬送機構を有し、各モールド装置の側方まで移動させた樹脂材料をモールド装置に供給可能とされ、
モールド装置における樹脂移送部に面する側面と対向する側面の側方に、前記鉄心移送部が位置して、モールド装置に対する鉄心本体の搬入及び搬出を行うことを
特徴とするコア部製造装置。
【請求項5】
前記請求項1ないし3のいずれかに記載のコア部製造装置において、
前記モールド装置が、複数並べて配置され、
前記鉄心移送部が、モールド装置に搬入される前及びモールド装置から搬出された後の鉄心本体を、モールド装置の並び方向に沿って移動可能とする副移送機構を有し、当該副移送機構における各モールド装置側方位置で、各モールド装置に対し鉄心本体を搬入及び搬出可能とされ、
モールド装置における鉄心移送部に面する側面と対向する側面の側方に、前記樹脂移送部が位置して、樹脂材料のモールド装置への供給を行うことを
特徴とするコア部製造装置。
【請求項6】
前記請求項5に記載のコア部製造装置において、
前記鉄心移送部の副移送機構が、モールド装置への搬入前の鉄心本体を移動させる経路の一部を、鉄心本体の予熱を行う予熱装置の近傍に位置させるように設けられ、
前記鉄心移送部が、前記予熱装置から予熱済みの鉄心本体を搬出し、当該鉄心本体をモールド装置側方まで移動させ、モールド装置に搬入することを
特徴とするコア部製造装置。
【請求項7】
磁性金属材料製の薄板を複数積層して形成された鉄心本体における、樹脂充填対象として設けられた複数の空間部に、樹脂を充填して、回転電機の固定子又は回転子をなすコア部を製造する、コア部製造方法において、
樹脂移送部で、モールド装置に樹脂材料を移送して供給する樹脂移送工程と、
鉄心移送部で、前記モールド装置の一対の型間に対し鉄心本体を搬入する鉄心搬入工程と、
前記モールド装置で、前記鉄心本体における前記空間部に樹脂を充填するモールド工程と、
前記鉄心移送部で、前記モールド装置の一対の型間に対し鉄心本体を搬出する鉄心搬出工程とを備え、
前記樹脂移送部によるモールド装置への樹脂材料供給と、前記鉄心移送部によるモールド装置に対する鉄心本体の搬入及び搬出とが、モールド装置に対する向きの異なる二つの側方位置からそれぞれなされることを
特徴とするコア部製造方法。
【請求項8】
前記請求項7に記載のコア部製造方法において、
前記モールド工程では、前記モールド装置により、溶融した樹脂を前記空間部に充填することを
特徴とするコア部製造方法。
【請求項9】
前記請求項7に記載のコア部製造方法において、
製造対象であるコア部が、前記鉄心本体に設けられた磁石挿入孔に永久磁石を固定されてなる、回転電機の回転子であり、
前記空間部が、前記磁石挿入孔の少なくとも一部であり、
前記モールド工程では、前記モールド装置により、供給された前記樹脂材料を前記鉄心本体の磁石挿入孔に投入し、当該投入された樹脂材料を溶融させて、前記空間部に樹脂を充填し、
前記モールド工程における、前記磁石挿入孔に樹脂材料が投入されてから、当該樹脂材料を溶融させるより前又は溶融させる間に、磁石挿入孔に前記永久磁石を挿入することを
特徴とするコア部製造方法。
【請求項10】
前記請求項7ないし9のいずれかに記載のコア部製造方法において、
並べて配置される複数のモールド装置に対し、前記樹脂移送部が、樹脂材料を少なくともモールド装置の並び方向に沿って移動可能とする搬送機構を有し、
前記樹脂移送工程で、前記樹脂移送部の搬送機構により各モールド装置の側方まで移動させた樹脂材料を、モールド装置に供給するようにされ、
前記鉄心搬入工程及び鉄心搬出工程で、前記モールド装置における樹脂移送部に面する側面と対向する側面の側方に位置させた前記鉄心移送部により、モールド装置に対する鉄心本体の搬入及び搬出を行うことを
特徴とするコア部製造方法。
【請求項11】
前記請求項7ないし9のいずれかに記載のコア部製造方法において、
並べて配置される複数のモールド装置に対し、前記鉄心移送部が、モールド装置に搬入される前及びモールド装置から搬出された後の鉄心本体を、モールド装置の並び方向に沿って移動可能とする副移送機構を有し、
前記樹脂移送工程で、前記モールド装置における鉄心移送部に面する側面と対向する側面の側方に位置させた前記樹脂移送部により、樹脂材料のモールド装置への供給を行い、
前記鉄心搬入工程及び鉄心搬出工程で、前記鉄心移送部の副移送機構における各モールド装置側方位置で、各モールド装置に対し鉄心本体を搬入及び搬出するようにされることを
特徴とするコア部製造方法。
【請求項12】
前記請求項11に記載のコア部製造方法において、
前記鉄心移送部の副移送機構における、モールド装置への搬入前の鉄心本体を移動させる経路の一部を、鉄心本体の予熱を行う予熱装置の近傍に位置させ、
前記鉄心移送部で、前記予熱装置から予熱済みの鉄心本体を搬出し、当該鉄心本体をモールド装置側方まで移動させ、モールド装置に搬入することを
特徴とするコア部製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機の固定子又は回転子におけるコア部の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機や発電機といった回転電機の固定子又は回転子において、コイルや永久磁石を配設されるコアには、積層鉄心が一般に用いられる。
こうした積層鉄心のコアへの、コイルや永久磁石の配設にあたっては、従来から様々な工夫がなされてきた。
【0003】
例えば、回転子のコアの場合、特に、IPMモータの回転子コアの場合、積層鉄心の磁石挿入孔に磁石を挿入固定する構造が採用されていた。こうした構造では、永久磁石を固定する際、磁石挿入孔への永久磁石の挿入後、磁石挿入孔における永久磁石の存在部分を除いた空間部(隙間)に、溶融し流動性のある状態とした熱硬化性樹脂等の樹脂を注入して、空間部を埋めた後、樹脂を固化させることで、永久磁石を固定するようにしていた。
こうした従来の回転電機におけるコア製造の一例として、特開2012-235697号公報に開示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の回転電機のコアの製造は、前記特許文献に示される方法でなされており、積層鉄心に樹脂を注入するモールド装置(樹脂封止装置)に対し、鉄心本体と注入用の樹脂原料を搬入する必要があった。例えば、モールド装置の同じ側から鉄心本体と樹脂原料を搬入供給しようとする場合、モールド装置に対する物品の出し入れを一箇所で行え、モールド装置自体の構造を簡略化できるものの、一方の搬入用の機構を作動させる際に、他方の搬入用の機構が障害となって悪影響を及ぼさないよう、これを可動範囲外に一旦退避させるための機構を別途要し、搬入に係る各機構が複雑化すると共に、こうした機構の退避と復帰のための工程も必要となり、製造能率の向上を図ることが難しいという課題を有していた。
【0006】
また、モールド装置が、樹脂原料を搬入した後に積層鉄心を搬入する形式のものである場合、積層鉄心を搬入するにあたって、樹脂原料の搬入機構を積層鉄心側の搬入機構の可動範囲外まで確実に退避させる工程を要して、樹脂原料の搬入直後に積層鉄心をモールド装置の上下型間にセットできなかった。このため、加熱溶融させた樹脂を積層鉄心に注入するまでの時間が長くなり、こうした時間の経過に伴い、溶融した樹脂の流動性が低下するだけでなく、注入、充填が完了する前に固化が進行するなどして、充填した樹脂の品質劣化や未充填領域(空隙部)の発生を招きやすいという課題を有していた。
【0007】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、樹脂材料と鉄心本体をモールド装置に対し異なる二方向からそれぞれ搬入する構造を採用して、搬入のための機構が互いに悪影響を及ぼさず、機構の複雑化を回避して、適切な搬入による製造の能率化が図れる、コア部製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の開示に係るコア部製造装置は、磁性金属材料製の薄板を複数積層して形成された鉄心本体における、樹脂充填対象として設けられた複数の空間部に、樹脂を充填して、回転電機の固定子又は回転子をなすコア部を製造する、コア部製造装置において、前記鉄心本体における前記空間部に樹脂を充填するモールド装置と、当該モールド装置に樹脂材料を移送して供給可能である樹脂移送部と、前記モールド装置の一対の型間に対し鉄心本体を搬入及び搬出可能である鉄心移送部とを備え、前記樹脂移送部からモールド装置への樹脂材料供給と、前記鉄心移送部によるモールド装置に対する鉄心本体の搬入及び搬出とが、モールド装置に対する向きの異なる二つの側方位置からそれぞれなされるものである。
【0009】
このように本発明の開示によれば、回転電機における鉄心本体の樹脂充填対象となる空間部に樹脂を充填するモールド装置に対して、鉄心本体を搬入出する鉄心移送部、及び、樹脂材料を移送供給する樹脂移送部が、それぞれ異なる方向から鉄心本体を搬入出し且つ樹脂を供給して、モールド装置で鉄心本体の空間部に樹脂を充填することにより、鉄心本体と樹脂材料のモールド装置への各移動経路を簡略にでき、モールド装置や各移送部の構造を複雑化せずに済み、製造コストを抑えられると共に、メンテナンス性も良好とすることができる。
【0010】
また、本発明の開示に係るコア部製造装置は必要に応じて、前記モールド装置が、溶融した樹脂を前記空間部に充填するものである。
【0011】
このように本発明の開示によれば、鉄心移送部による鉄心本体の搬入出と、樹脂移送部による樹脂材料の移送供給とが、それぞれ異なる方向からなされるモールド装置で、鉄心本体の空間部に溶融した樹脂を注入することにより、鉄心本体と樹脂材料のモールド装置への移動経路が重ならず、モールド装置における樹脂材料と鉄心本体のセットを、それぞれ時間を空けずに前後して実行することができ、例えばモールド装置の加熱部へ樹脂材料を供給後、加熱部での加熱で溶融した樹脂が固化する前に鉄心本体の空間部に樹脂を充填することができ、充填した樹脂の品質を確保できる。
【0012】
また、本発明の開示に係るコア部製造装置は必要に応じて、製造対象であるコア部が、前記鉄心本体に設けられた磁石挿入孔に永久磁石を固定されてなる、回転電機の回転子であり、前記空間部が、前記磁石挿入孔の少なくとも一部であり、前記モールド装置が、供給された前記樹脂材料を前記鉄心本体の磁石挿入孔に投入し、当該投入された樹脂材料を溶融させて、前記空間部に樹脂を充填し、前記磁石挿入孔に樹脂材料が投入されてから、当該樹脂材料を溶融させるより前又は溶融させる間に、磁石挿入孔に前記永久磁石を挿入するものである。
【0013】
このように本発明の開示によれば、鉄心本体の磁石挿入孔に永久磁石を固定して、回転子であるコア部を製造するにあたり、鉄心移送部による鉄心本体の搬入出と、樹脂移送部による樹脂材料の移送供給とが、それぞれ異なる方向からなされるモールド装置で、鉄心本体の磁石挿入孔に樹脂材料を投入してから、磁石挿入孔に永久磁石を投入し、さらに樹脂材料を溶融させて空間部への樹脂充填を実行することにより、鉄心本体と樹脂材料のモールド装置への移動経路が重ならず、モールド装置における樹脂材料と鉄心本体のセットを、それぞれ時間を空けずに前後して実行することができ、モールド装置における樹脂材料の磁石挿入孔への投入から、永久磁石の投入を挟んで、溶融した樹脂の充填に至るまでの工程を連続して速やかに実行でき、モールド装置による樹脂充填工程を効率よく進行させられる。
【0014】
また、本発明の開示に係るコア部製造装置は必要に応じて、前記モールド装置が、複数並べて配置され、前記樹脂移送部が、樹脂材料を少なくともモールド装置の並び方向に沿って移動可能とする搬送機構を有し、各モールド装置の側方まで移動させた樹脂材料をモールド装置に供給可能とされ、モールド装置における樹脂移送部に面する側面と対向する側面の側方に、前記鉄心移送部が位置して、モールド装置に対する鉄心本体の搬入及び搬出を行うものである。
【0015】
このように本発明の開示によれば、複数のモールド装置を並べて配設し、これに合わせて樹脂移送部で樹脂材料をモールド装置の並んだ方向に沿って移動させて、各モールド装置のいずれに対しても樹脂材料を供給可能とされ、さらに、この樹脂移送部のある側と反対側となるモールド装置の側方に鉄心移送部を位置させることにより、複数のモールド装置に対して樹脂移送部で樹脂材料を移動させて、樹脂材料を適切に供給でき、鉄心本体への樹脂注入の能率を向上させられる。また、モールド装置に対し鉄心本体を出し入れする鉄心移送部は、モールド装置に対し樹脂移送部とは反対側に位置して、その各部が樹脂移送部の樹脂材料の移送、供給に伴う作動を妨げず、且つ、樹脂移送部の各部も、鉄心移送部の鉄心本体の取り扱いに係る動きを妨げない配置であることから、各機構の動きを問題なく簡略化することができ、各機構のコストダウンが図れると共に、鉄心本体や樹脂材料の移動に係る各機構の作動を単純化して、鉄心本体の搬入及び樹脂材料の供給を無理なく安定したものにでき、鉄心本体の搬入及び樹脂材料の供給からモールド装置による樹脂注入の工程にスムーズに移行できる。
【0016】
また、本発明の開示に係るコア部製造装置は必要に応じて、前記モールド装置が、複数並べて配置され、前記鉄心移送部が、モールド装置に搬入される前及びモールド装置から搬出された後の鉄心本体を、モールド装置の並び方向に沿って移動可能とする副移送機構を有し、当該副移送機構における各モールド装置側方位置で、各モールド装置に対し鉄心本体を搬入及び搬出可能とされ、モールド装置における鉄心移送部に面する側面と対向する側面の側方に、前記樹脂移送部が位置して、樹脂材料のモールド装置への供給を行うものである。
【0017】
このように本発明の開示によれば、複数のモールド装置を並べて配設し、これに合わせて鉄心移送部の主搬送手段で、鉄心本体をモールド装置の並んだ方向に沿って移動させるようにし、鉄心移送部で各モールド装置のいずれに対しても鉄心本体を搬入出可能とされ、さらに、鉄心移送部のある側と反対側となるモールド装置の側方に樹脂移送部を位置させることにより、複数のモールド装置に対して主搬送手段で鉄心本体を移動させて、鉄心本体を適切に搬入でき、鉄心本体への樹脂注入の能率を向上させられると共に、モールド装置からの鉄心本体搬出と次工程への移送も速やかに行える。また、モールド装置に対し樹脂を供給する樹脂移送部は、モールド装置に対し鉄心移送部とは反対側に位置して、その各部が鉄心移送部の鉄心本体搬入出に伴う作動を妨げず、且つ、鉄心移送部の各部も、樹脂移送部の樹脂の移送供給に係る動きを妨げない配置であることから、各機構の動きを問題なく簡略化することができ、各機構のコストダウンが図れると共に、鉄心本体や樹脂材料の移動に係る各機構の作動を単純化して、鉄心本体の搬入及び樹脂材料の供給を無理なく安定したものにでき、鉄心本体の搬入及び樹脂材料の供給からモールド装置による樹脂注入の工程にスムーズに移行できる。
【0018】
また、本発明の開示に係るコア部製造装置は必要に応じて、前記鉄心移送部の副移送機構が、モールド装置への搬入前の鉄心本体を移動させる経路の一部を、鉄心本体の予熱を行う予熱装置の近傍に位置させるように設けられ、前記鉄心移送部が、前記予熱装置から予熱済みの鉄心本体を搬出し、当該鉄心本体をモールド装置側方まで移動させ、モールド装置に搬入するものである。
【0019】
このように本発明の開示によれば、鉄心移送部の副移送機構で鉄心本体を移動させる経路が、予熱装置近傍にも存在するようにして、予熱装置で予熱された鉄心本体を、鉄心移送部で搬出した上で、副移送機構を用いて移動させ、モールド装置に向かわせることにより、予熱された鉄心本体を速やかにモールド装置に搬入して樹脂の注入を実行でき、予熱した鉄心本体の温度を大きく変化させることなくモールド装置に導入することができ、溶融した樹脂が鉄心本体の空間部に注入される際に、温度差による影響を受けにくく、適切に鉄心本体の空間部に樹脂を注入、充填して固化させることができ、固化後の樹脂の品質を向上させられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るコア部製造装置の概略平面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係るコア部製造装置による樹脂充填前の鉄心本体の治具への載置状態における平面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係るコア部製造装置による樹脂充填前の鉄心本体の治具への載置状態における縦断面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係るコア部製造装置の樹脂移送部における材料供給部による配置部への樹脂タブレット供給状態説明図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係るコア部製造装置の樹脂移送部における配置機構上方への搬送部及び開閉部材の到達状態説明図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係るコア部製造装置の樹脂移送部における配置機構の上方への移動状態説明図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係るコア部製造装置の樹脂移送部における配置機構から搬送部への樹脂タブレット移動状態説明図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態に係るコア部製造装置の樹脂移送部における搬送部に対する開閉部材の移動状態説明図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態に係るコア部製造装置の樹脂移送部における配置機構の下方への移動状態説明図である。
【
図10】本発明の第1の実施形態に係るコア部製造装置の樹脂移送部における第1の位置にある状態の開閉部材の底面図である。
【
図11】本発明の第1の実施形態に係るコア部製造装置の樹脂移送部における第2の位置にある状態の開閉部材の底面図である。
【
図12】本発明の第1の実施形態に係るコア部製造装置におけるモールド装置への鉄心本体搬入状態説明図である。
【
図13】本発明の第1の実施形態に係るコア部製造装置におけるモールド装置への樹脂タブレット搬入状態説明図である。
【
図14】本発明の第1の実施形態に係るコア部製造装置におけるモールド装置の加熱部への樹脂タブレットの移動状態説明図である。
【
図15】本発明の第1の実施形態に係るコア部製造装置におけるモールド装置外部への樹脂移送部の搬送部及び開閉部材の退避状態説明図である。
【
図16】本発明の第1の実施形態に係るコア部製造装置におけるモールド装置の上型及び下型による鉄心本体押圧状態説明図である。
【
図17】本発明の第1の実施形態に係るコア部製造装置におけるモールド装置による溶融樹脂注入状態説明図である。
【
図18】本発明の第1の実施形態に係るコア部製造装置による樹脂充填後の鉄心本体の平面図である。
【
図19】本発明の第1の実施形態に係るコア部製造装置による樹脂充填後の鉄心本体の縦断面図である。
【
図20】本発明の第2の実施形態に係るコア部製造装置におけるモールド装置への樹脂タブレット搬入状態説明図である。
【
図21】本発明の第2の実施形態に係るコア部製造装置におけるモールド装置の下型収容孔への樹脂タブレットの移動状態説明図である。
【
図22】本発明の第2の実施形態に係るコア部製造装置におけるモールド装置外部への樹脂移送部の搬送部及び開閉部材の退避状態説明図である。
【
図23】本発明の第2の実施形態に係るコア部製造装置におけるモールド装置への鉄心本体搬入状態説明図である。
【
図24】本発明の第2の実施形態に係るコア部製造装置におけるモールド装置の上型及び下型による鉄心本体押圧状態説明図である。
【
図25】本発明の第2の実施形態に係るコア部製造装置におけるモールド装置による溶融樹脂注入状態説明図である。
【
図26】本発明の第3の実施形態に係るコア部製造装置の概略平面図である。
【
図27】本発明の他の実施形態に係るコア部製造装置の第一例の概略平面図である。
【
図28】本発明の他の実施形態に係るコア部製造装置の第二例の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係るコア部製造装置を前記
図1~
図19に基づいて説明する。
【0022】
前記各図において本実施形態に係るコア部製造装置1は、積層構造の鉄心本体11における複数の空間部に、溶融した樹脂を充填し固化させて、回転電機の回転子をなすコア部10を製造するものである。詳細には、コア部製造装置1は、鉄心本体11に溶融した樹脂を充填するモールド装置20と、このモールド装置20に溶融対象の樹脂材料を供給する樹脂移送部30と、モールド装置20の上下型間に鉄心本体11を搬入出する鉄心移送部40とを備える構成である。
【0023】
本実施形態に係るコア部製造装置1で製造されるコア部10は、磁性金属材料製の薄板11aを複数積層して形成される鉄心本体11と、この鉄心本体11に複数設けられる各磁石挿入孔11bに挿入配設される永久磁石12と、各磁石挿入孔11bにおける永久磁石以外の部分に充填されて配設される樹脂製の充填材13とを備える構成である(
図18、
図19参照)。このコア部10は、回転電機(電動機や発電機)の回転子としての公知の構造を有するものであり、詳細な説明を省略する。
【0024】
前記鉄心本体11は、磁性金属材料製の薄板11aを複数積層して形成される積層鉄心である。この鉄心本体11をなす薄板11aは、電磁鋼やアモルファス合金等からなる薄板材から打抜き形成されるものである。
【0025】
鉄心本体11には、永久磁石12を設けるための磁石挿入孔11bが複数設けられる。磁石挿入孔11bは、薄板11aの積層方向に鉄心本体11を貫通する孔であり、鉄心本体11の円形の外周に沿って所定間隔で配置される。この磁石挿入孔11bの位置、形状及び数は、回転電機の用途、要求される性能などに応じて適宜設定することができる。
【0026】
この他、鉄心本体11の中央には、薄板11aの積層方向に鉄心本体11を貫通する軸孔11cが設けられ、この軸孔11cに回転子の回転軸(シャフト)を挿通固定可能とされる。
【0027】
前記永久磁石12は、回転子の界磁用として、鉄心本体11の各磁石挿入孔11bに挿入されて配設されるものである。この永久磁石12は、鉄心本体11の磁石挿入孔11bより若干小さく形成されていることから、永久磁石12を各磁石挿入孔11bに挿入すると、永久磁石12と鉄心本体11との間には隙間が生じる。すなわち、永久磁石12を挿入された各磁石挿入孔11bは、その一部が空間のまま残る状態となる。このような磁石挿入孔11bにおける永久磁石12を除く残余部分が、鉄心本体11における樹脂充填対象の空間部となる。
【0028】
前記充填材13は、永久磁石12挿入後の磁石挿入孔11b残余部分に溶融状態で注入され充填された樹脂が、充填後に固化したものである。充填材13を構成する樹脂は、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂や、熱可塑性樹脂などであり、樹脂タブレット等として供給された樹脂材料を溶融させた後、固化させて得られたものである。
この充填材13は、永久磁石12を磁石挿入孔11b内に固定すると共に、積層されて隣り合う薄板11a同士の連結強化に寄与することとなる。
【0029】
前記モールド装置20は、鉄心本体11における樹脂充填対象の前記空間部に、溶融した樹脂を注入して充填するものである。
このモールド装置20は、鉄心本体11をその軸方向両側から挟み込む上型21及び下型22と、鉄心本体11を支える治具23と、樹脂材料を加熱する加熱部24と、加熱されて溶融状態となった樹脂を鉄心本体11の磁石挿入孔11b側に押し出す押出部25とを有するものである。
【0030】
モールド装置20は、治具23に載せた鉄心本体11を、その軸方向両側から、上型21と下型22で挟持押圧する。これにより、鉄心本体11には高さ方向から所定の荷重が付与され、鉄心本体11の軸方向の端部を、各磁石挿入孔11bを除いて全て閉塞できる。
【0031】
前記上型21は、下型22上に載置された鉄心本体11の上方に位置して、下型22と共に鉄心本体11及び治具23を挟持するものである。この上型21は、例えば矩形板状に形成される金型であり、複数の貫通孔21aを設けられる構成である。これら複数の貫通孔21aは、上型21と下型22とで鉄心本体11が挟持された状態において、鉄心本体11の各磁石挿入孔11bに対応する箇所に位置するように、所定間隔で並べて設けられる。
【0032】
前記下型22は、鉄心本体11及び治具23を載せられてこれらを支持しつつ、上型21と共に鉄心本体11及び治具23を挟持するものである。この下型22は、例えば矩形板状に形成される金型であり、必要に応じて治具23下面に設けられた凸部又は凹部と嵌合して治具の不要な動きを防止する凹部又は凸部を設けられる。
【0033】
前記治具23は、鉄心本体11を載置可能なベース部材23aと、このベース部材23aの略中央部から上方へ突出する挿通ポスト23bとを備える構成である(
図2、
図3参照)。
【0034】
ベース部材23aは、例えば矩形板状の台状部材とされ、鉄心本体11を載置されてこれを支持するものである。挿通ポスト23bは、円柱状に形成されてベース部材23aの上面略中央部に上方へ向けて突出するように配設されるものである。この挿通ポスト23bは、鉄心本体11の軸孔11cに対応する大きさの円柱状とされて、鉄心本体11の軸孔11cに挿通可能とされる。
【0035】
前記加熱部24は、樹脂移送部30から供給された樹脂材料としての樹脂タブレット80を加熱して溶融させ、溶融樹脂81を得るものである。
加熱部24は、下型22に対向して、この下型22上に載った鉄心本体11及び治具23に対し上から接触可能として配設される。加熱部24は、上型21により上方から押圧可能とされており、上型21と下型22が鉄心本体11と治具23を挟持する場合には、この加熱部24を介して、鉄心本体11上部には上方から所定の荷重が付与される。
【0036】
加熱部24は、鉄心本体11の複数の磁石挿入孔11bに対応する配置とされた複数の収容孔24aを設けられて、所定数の樹脂タブレット80を収容可能とされる構成である。
各収容孔24aは、加熱部24の高さ方向に連続する孔とされて、それぞれ、少なくとも一つの樹脂タブレットを収容可能とされる。なお、収容孔24aに複数の樹脂タブレット80を収容する場合は、孔内で樹脂タブレット80が孔連続方向に一列に並ぶ状態で収容することとなる。
【0037】
加熱部24には、この加熱部24を加熱するヒータ24bが設けられる。ヒータ24bは、加熱部24を加熱して、各収容孔24aに収容されている樹脂タブレット80を加熱可能とされる。ヒータ24bにより樹脂タブレット80が加熱されると、樹脂タブレット80は溶融し、溶融樹脂81となる。このヒータ24bは、加熱部24内に配置される構成に限られず、加熱部24の外部に配置されてもかまわない。
【0038】
前記押出部25は、溶融樹脂81を鉄心本体11の磁石挿入孔11bへ押出可能とするものであり、例えば、所定の駆動源による駆動で上下動可能とされる複数のプランジャとされる構成である。
【0039】
各押出部25は、それぞれ上型21の貫通孔21aを通って加熱部24の収容孔24aに対し上方から挿入可能に配設される(
図16、
図17参照)。各押出部25は、押出部ごとに対応する駆動源でそれぞれ駆動されて上下動可能とされるほか、複数の押出部を一つの駆動源でまとめて駆動して一体に上下動可能とするようにしてもよい。
【0040】
前記樹脂移送部30は、
図1に示すように、モールド装置20の上下型間にある加熱部24に樹脂材料としての樹脂タブレット80を移送供給するものである。樹脂移送部30は、樹脂タブレット80を供給のために送り出す材料供給部31と、樹脂タブレット80を移送用の配置で保持する配置機構32と、樹脂タブレット80を保持して移動させる搬送機構35とを備える構成である。
【0041】
前記材料供給部31は、
図4に示すように、貯留状態にある多数の樹脂タブレット80の中から、一又は複数個ずつを所定の向きに揃えながら順次送り出し、配置機構32に向かわせるものである。
【0042】
前記配置機構32は、
図5に示すように、複数の樹脂タブレット80を保持する配置部33と、配置部33の樹脂タブレット80を移動させる昇降部34とを備える構成である。
前記配置部33は、
図4及び
図5に示すように、複数の収容孔33aと、複数の挿通孔33bとを設けられ、所定数の樹脂タブレット80を保持可能とされるものである。配置部33は、例えばモータ等の駆動源による駆動で、上下動可能且つ鉛直である中心軸の周りに回転可能とされる。
【0043】
各収容孔33aは、鉄心本体11の各磁石挿入孔11bに対応する配置とされ、且つ配置部33の高さ方向に連続する孔とされて、それぞれ、少なくとも一つの樹脂タブレット80を収容可能とされる。複数の樹脂タブレット80を収容する場合は、孔内で樹脂タブレット80が孔連続方向に一列に並ぶ状態で収容することとなる。
【0044】
各挿通孔33bは、各収容孔33aの下側に収容孔33aとそれぞれ連通するように設けられ、収容孔33a同様に配置部33の高さ方向に連続する孔とされる。各挿通孔33bは、収容孔33aより開口面積の小さい孔とされており、収容孔33aに収容された樹脂タブレット80が挿通孔33bに入って落下することがないようにされる。
【0045】
前記昇降部34は、例えば、流体圧シリンダなどの、上下方向に伸縮可能な機構である。複数の昇降部34の各先端部が、配置部33の下方から挿通孔33b及び収容孔33aに挿入可能且つ各孔内を上下動可能とされる。収容孔33a内に樹脂タブレット80が収容されている状態で、昇降部34の先端部を上昇させると、樹脂タブレット80は先端部により収容孔33aの外に押し上げられることとなる。
【0046】
前記搬送機構35は、複数の樹脂タブレット80を保持する搬送部36と、搬送部36への樹脂タブレット80の出入りを制御する開閉部材37とを備えるものである。
前記搬送部36は、鉄心本体11の各磁石挿入孔11bに対応する配置とされた複数の収容孔36aを設けられて、所定数の樹脂タブレット80を保持可能とされるものである。
【0047】
各収容孔36aは、搬送部36の高さ方向に連続する孔とされて、それぞれ、少なくとも一つの樹脂タブレット80を収容可能とされる。複数の樹脂タブレット80を収容する場合は、孔内で樹脂タブレット80が孔連続方向に一列に並ぶ状態で収容することとなる。
【0048】
前記開閉部材37は、
図10及び
図11に示すように、搬送部36の下部に隣接して配置されるものである。開閉部材37には、その高さ方向に連続する複数の貫通孔38が設けられる。
【0049】
各貫通孔38は、搬送部36の収容孔36aに対応する配置とされる第1の孔部38aと、これに連通する第2の孔部38bとからなる。このうち第1の孔部38aは、樹脂タブレット80を通過させられる程度の大きさに設定される。一方、第2の孔部38bは、昇降部34の先端部を通過させられるものの、樹脂タブレット80の底面より小さく、これを通過させられない程度の大きさとして設定される。
【0050】
そして、開閉部材37は、所定の駆動源により、搬送部36の下面に対し水平方向に移動可能とされ、例えば、第1の孔部38aが搬送部36の収容孔36aと重なる配置となる第1の位置と、第2の孔部38bが収容孔36aと重なる配置となる第2の位置との間で移動する構成とされる。
【0051】
開閉部材37が、前記第1の位置にある状態(
図10参照)では、樹脂タブレット80が開閉部材37の第1の孔部38aを通って収容孔36aに対し出入り可能となる。また、開閉部材37が、前記第2の位置にある状態(
図11参照)では、収容孔36aに収容された樹脂タブレット80が貫通孔38を通じて落下することを防止する一方で、昇降部34の先端部が第2の孔部38bを通過することは許容する。
【0052】
搬送機構35をなす搬送部36及び開閉部材37は、所定の駆動源による駆動で、モールド装置20における樹脂材料搬入用の開口部分のある側面の側方位置と、モールド装置20の上下型間における加熱部24上側の所定位置との間で、モールド装置20の前後方向(接近及び離隔方向)に移動可能とされる(
図13、
図15参照)と共に、配置機構32上方と各モールド装置20の前記側方位置との間で、モールド装置20の並び方向に沿って横移動可能(
図1参照)とされる。
【0053】
これにより、搬送部36及び開閉部材37に保持される樹脂材料としての樹脂タブレット80を、モールド装置20の並び方向に沿って配置機構32上方から各モールド装置20の側方位置まで移動可能とし、さらに、モールド装置20の側方位置から樹脂タブレット80をモールド装置20の上下型間に供給可能とすることができる。
【0054】
前記鉄心移送部40は、
図1に示すように、前記樹脂移送部30がモールド装置20への樹脂材料供給を行う側とは反対側となる、モールド装置20の側方に位置して、モールド装置20の上下型間に対し鉄心本体11を搬入及び搬出するものである。
【0055】
この鉄心移送部40は、
図1及び
図12に示すように、治具23に載置された鉄心本体11を、治具23ごと、モールド装置20の鉄心本体搬入出用の開口部分のある側面の側方位置と、モールド装置20の上下型間における加熱部24下側の所定位置との間で、モールド装置20の前後方向(接近及び離隔方向)に移動させ、鉄心本体11と治具23をモールド装置20に搬入出可能とすると共に、予熱装置等を出て樹脂充填のために供給された鉄心本体11及び治具23を、モールド装置20への搬入出が可能となるモールド装置20の前記側方位置まで、モールド装置20の並び方向に沿って移動可能とする、各機構を有するものである。
【0056】
鉄心移送部40は、例えば、鉄心本体11を載せた治具23を把持及び解放可能とされると共に、把持部分をこれに把持される治具23及び鉄心本体11と一体にモールド装置20に対し前後移動可能とされて、治具23及び鉄心本体11をモールド装置20の上下型間に搬入出可能とする主移送機構41と、この主移送機構41をモールド装置20の並び方向に沿って連続するガイドレール上で横移動可能として、主移送機構41で保持された治具23及び鉄心本体11を主移送機構41ごと移動させる副移送機構42とを備える構成とすることができる。
【0057】
すなわち、副移送機構42が、モールド装置20に搬入される前及びモールド装置20から搬出された後の鉄心本体11及び治具23を、モールド装置20の並び方向に沿って移動可能とし、さらに、この副移送機構42における各モールド装置20の側方位置で、主移送機構41が、各モールド装置20に対し、鉄心本体11及び治具23を搬入及び搬出可能とすることとなる。
【0058】
なお、副移送機構42が、その鉄心本体11及び治具23を移動させる経路の一部を、鉄心本体11の予熱を行う予熱装置50の近傍に位置させるように設けられる場合(
図1参照)、鉄心移送部40は、予熱装置50から予熱済みの鉄心本体11を搬出し、この予熱された鉄心本体11を各モールド装置20の側方まで移動させ、モールド装置20に搬入することができる。
【0059】
次に、本実施形態に係るコア部製造装置によるコア部の製造過程について説明する。
前提として、あらかじめ、公知の製法により、薄板材から打抜いた複数の薄板11aを積層した鉄心本体11が得られているものとする。そして、鉄心本体11は、その磁石挿入孔11bに永久磁石12を挿入され、予熱装置50で加熱されて適切な温度に予熱された状態で、この鉄心本体11を載せた治具23と共に、鉄心移送部40によりモールド装置20の側方に向けて移動可能とされているものとする。
【0060】
鉄心本体11とこれを載せた治具23は、鉄心移送部40の主移送機構41に保持された状態で、副移送機構42の作動によりモールド装置20の並び方向に沿って順次移動する。
鉄心本体11及び治具23が、モールド装置20の側方に達すると(
図1参照)、鉄心搬入工程として、鉄心移送部40の主移送機構41により、モールド装置20の側方位置から、モールド装置20側面の鉄心本体搬入出用の開口部分を通って、モールド装置20の上下型間における加熱部24下側の所定位置まで移動する。
【0061】
鉄心移送部40の主移送機構41が、鉄心本体11の載った治具23を解放し、この鉄心本体11の載った治具23を下型上に載置すると、モールド装置20への鉄心本体11及び治具23の搬入完了となる(
図12参照)。搬入を終えた鉄心移送部40の主移送機構41はモールド装置20の外に退避し、新たな鉄心本体11及び治具23の移動に供される。
【0062】
一方、樹脂タブレット80は、材料供給部31で、所定の向きに揃えられた上で、一又は複数個ずつ順次搬送され、配置機構32側に向かう(
図4参照)。
樹脂タブレット80は、材料供給部31によって、配置機構32の配置部33上方まで移動し、配置部33の所定の収容孔33aの上方に位置するようにされる。
そして、材料供給部31は、収容孔33aの上方で樹脂タブレット80を解放状態とする。解放された樹脂タブレット80は、配置部33の所定の収容孔33aに投入され、これに収容される。
【0063】
一つの収容孔33aに、これに収容されるべき一又は複数の樹脂タブレット80が収容された場合には、樹脂タブレット80を次に投入、収容する予定の他の収容孔33aが、材料供給部31による樹脂タブレット80の解放位置に対応するように、配置部33を中心軸周りに所定角度回転させればよい(
図4参照)。
【0064】
配置部33の全ての収容孔33aに、それぞれ一又は複数の樹脂タブレット80が収容されると、搬送機構35の搬送部36及び開閉部材37が、配置部33の上方に位置し(
図5参照)、搬送部36の各収容孔36aを配置部33の各収容孔33aの上方に位置させる。また、開閉部材37は、搬送部36に対し、その第1の孔部38aが搬送部36の収容孔36aと重なる第1の位置にある状態となる(
図10参照)。
【0065】
この状態で、配置部33が上方に移動してその上面を開閉部材37の下面に接近させ(
図6参照)、さらに各昇降部34が作動し、その先端部を上昇させることで、配置部33の収容孔33a内の一又は複数の樹脂タブレット80が、収容孔33aを出て、搬送部36の収容孔36aに移動し、収容される(
図7参照)。
【0066】
続いて、開閉部材37が、搬送部36に対し、その第2の孔部38bが搬送部36の収容孔36aと重なる第2の位置にある状態へ移行する(
図8及び
図11参照)。そして、昇降部34はその先端部を下降させ、配置部33より下側の当初位置に復帰し、合わせて、配置部33も下方に移動して当初位置に戻る(
図9参照)。
【0067】
搬送部36の収容孔36aに収容されている樹脂タブレット80は、これより小さい貫通孔38の第2の孔部38bを通じて落下することはなく、開閉部材37で下から支えられている。こうして樹脂タブレット80は、搬送部36及び開閉部材37で保持され、これら搬送部36及び開閉部材37と共にモールド装置20側へ移動可能な状態となる。
【0068】
樹脂タブレット80を保持した搬送部36及び開閉部材37は、配置機構32上方からモールド装置20の側方位置まで横方向に移動する(
図1参照)。この移動後、搬送部36及び開閉部材37は、モールド装置20への樹脂タブレット80の搬入工程として、前記側方位置から、モールド装置20側面の樹脂材料搬入用開口部分を通って、加熱部24の上方位置まで前方に移動する(
図13参照)。
【0069】
こうして搬送部36及び開閉部材37が加熱部24の上方位置に達した際には、加熱部24のヒータ24bを作動させて、加熱部24を所定温度となるように予熱するのが好ましい。
【0070】
搬送部36及び開閉部材37が加熱部24上方に位置して、搬送部36の各収容孔36aを加熱部24の各収容孔24aの上方に位置させたら、開閉部材37が、搬送部36に対し移動して、その第1の孔部38aが搬送部36の収容孔36aと重なる第1の位置にある状態となる。これにより、搬送部36の各収容孔36a内の一又は複数の樹脂タブレット80が、収容孔36aを出て、加熱部24の収容孔24aに投入され、収容される(
図14参照)。
【0071】
これにより、各収容孔24aに収容された樹脂タブレット80の加熱が開始される。各収容孔24aで、ヒータ24bの熱により加熱された樹脂タブレット80が溶融し、溶融樹脂81となる。
【0072】
搬送部36は、樹脂タブレット80が収容孔36aを出て、加熱部24への樹脂タブレット80の供給に係る樹脂移送工程が完了した後、開閉部材37と共に、加熱部24上方からモールド装置の外まで後退し(
図15参照)、さらに横方向に移動して配置機構32の上方位置まで戻り、あらためて樹脂移送工程として収容孔24aへの樹脂タブレット80の供給を行う状態となる。
【0073】
搬送部36及び開閉部材37が加熱部24上方から退避した後、上型21を下降させるか、鉄心本体11が載った下型22を上昇させて、上型21と下型22で鉄心本体11を挟持押圧する状態に移行する(
図16参照)。
【0074】
この状態では、鉄心本体11の軸方向両端面に、加熱部24と治具23をそれぞれ当接させて押圧することで、鉄心本体11の軸方向の端部を、磁石挿入孔11bのうち永久磁石12の存在部分を除く残余部分(空間部)以外を全て閉塞できる。
【0075】
モールド装置20で鉄心本体の各磁石挿入孔11bを外部から閉塞した状態とした後、溶融樹脂81の注入を行うモールド工程が実行される。
ここでは、加熱部24の各収容孔24a内の溶融樹脂81に対し、各押出部25がそれぞれ上型21の貫通孔21aを通って加熱部24の収容孔24aに達し、収容孔24aに挿入されることで、溶融樹脂81は、押出部25により、収容孔24aから下方の鉄心本体11の磁石挿入孔11bに押出される(
図17参照)。こうして磁石挿入孔11bに溶融樹脂81が注入、充填される。
【0076】
各磁石挿入孔11bに充填された溶融樹脂81が固化すると、押出部25を引き上げて元の状態に戻すと共に、上型21を上昇させるか、下型22を下降させて、上型21と加熱部24とを離隔させ、加熱部24の鉄心本体11への押し付けを終了させて、鉄心本体11及び治具23を上下型間から搬出可能な状態とする。
【0077】
この後、モールド装置20の側方位置に鉄心移送部40の主移送機構41を移動させ、さらに鉄心搬出工程として、主移送機構41をモールド装置20の上下型間まで導入して、治具23とこれに載った樹脂充填済みの鉄心本体11を主移送機構41で保持する状態としたら、主移送機構41で鉄心本体11及び治具23を加熱部24と下型22との間からモールド装置20の外に移動させ、鉄心本体11及び治具23をモールド装置20から搬出する。
【0078】
モールド装置20から搬出した鉄心本体11及び治具23は、鉄心移送部40の主移送機構41に保持させた状態で、副移送機構42の作動によりモールド装置20の並び方向に沿ってさらに移動させた後、鉄心移送部40から取り出されて次工程に移送されることとなる。
【0079】
一方のモールド装置20に樹脂タブレット80及び鉄心本体11が搬入された後、この一方のモールド装置20で樹脂タブレット80を溶融させて溶融樹脂81とし、この溶融樹脂81を鉄心本体11の磁石挿入孔11bに注入、充填する間に、並んだ他方のモールド装置に対し樹脂移送部30で樹脂タブレット80を、鉄心移送部40で鉄心本体11を、それぞれ搬入するようにすれば、複数のモールド装置20を交互に作動させて鉄心本体11への樹脂充填を能率よく進行させられる。
【0080】
このように、本実施形態に係るコア部製造装置は、モールド装置20に対して、鉄心本体11を搬入出する鉄心移送部40、及び、樹脂タブレット80を移送供給する樹脂移送部30が、それぞれ異なる方向から鉄心本体11を搬入出し且つ樹脂タブレット80を供給して、モールド装置20で鉄心本体11の磁石挿入孔11bに溶融した樹脂を注入可能とすることから、鉄心本体11と樹脂タブレット80のモールド装置20への各移動経路を簡略にでき、モールド装置20や各移送部の構造を複雑化せずに済み、製造コストを抑えられると共に、メンテナンス性も良好とすることができる。また、鉄心本体11と樹脂タブレット80のモールド装置20への移動経路が重ならないことで、例えばモールド装置における樹脂材料の加熱部への樹脂材料供給と、モールド装置への鉄心本体のセットとを、時間を空けずに前後して実行することができ、加熱部での加熱で溶融した樹脂が固化する前に鉄心本体の空間部に樹脂を充填することができ、充填した樹脂の品質を確保できる。
【0081】
なお、前記実施形態に係るコア部製造装置においては、モールド装置20で、溶融樹脂81を収容した加熱部24と鉄心本体11とを直接当接させた状態で、加熱部24から溶融樹脂81を押出し、鉄心本体11の磁石挿入孔11bに溶融樹脂81を注入する構成としているが、これに限らず、鉄心本体11の上側に、鉄心本体11の磁石挿入孔11bに連通可能な樹脂流路となる凹部や貫通孔が設けられた板状のカルプレートを取り付け、このカルプレートを通じて、加熱部24から押し出された溶融樹脂81を、鉄心本体11の磁石挿入孔11bに注入する構成とすることもできる。
【0082】
この場合、溶融樹脂81が固化した後、この固化した樹脂のうち鉄心本体の上部に残ったものを、カルプレートの取り外しにより除去でき、不要な樹脂の除去をより容易に行えることとなる。
【0083】
(本発明の第2の実施形態)
前記第1の実施形態に係るコア部製造装置においては、モールド装置20の上下型間に加熱部24を設ける構成としているが、これに限らず、第2の実施形態として、
図20~
図25に示すように、モールド装置20の下型27にヒータ27bを設けて加熱部を兼ねさせる構成とすることもできる。
【0084】
この場合、本実施形態に係るコア部製造装置1は、前記第1の実施形態同様、モールド装置20と、樹脂移送部30と、鉄心移送部40とを備える一方、異なる点として、モールド装置20がその下型27で樹脂タブレット80を溶融させ、鉄心本体11に対し下型27側から溶融した樹脂を注入する構成を有するものとなる。なお、樹脂移送部30及び鉄心移送部40については、前記第1の実施形態と同じ構成を有するものであり、詳細な説明を省略する。
【0085】
前記モールド装置20は、前記第1の実施形態同様、上型26と、下型27と、治具28と、押出部29とを備える一方、異なる点として、
図24に示すように、下型27が加熱部を兼ね、樹脂タブレット80を収容すると共に、この樹脂タブレット80を加熱する構成を有するものである。
【0086】
前記上型26は、前記第1の実施形態同様、下型27との間で鉄心本体11及び治具28を挟持し、鉄心本体11に高さ方向から所定の荷重を付与するものである。この上型26は、上型26を貫通する孔が設けられていない点を除いて、前記第1の実施形態と同様の構成を有するものであり、詳細な説明を省略する。
【0087】
前記下型27は、前記第1の実施形態同様、鉄心本体11及び治具28を支持するものとされる一方、異なる点として、鉄心本体11の複数の磁石挿入孔11bに対応する配置とされた複数の収容孔27aを設けられると共に、この下型27を加熱するヒータ27bを備える構成を有するものである。
【0088】
下型27の各収容孔27aは、下型27の高さ方向に連続する孔とされて、それぞれ、少なくとも一つの樹脂タブレットを収容可能とされる。なお、収容孔27aに複数の樹脂タブレット80を収容する場合は、孔内で樹脂タブレット80が孔連続方向に一列に並ぶ状態で収容することとなる。
【0089】
ヒータ27bは、下型27を加熱して、各収容孔27aに収容されている樹脂タブレット80を加熱可能とされる。ヒータ27bにより樹脂タブレット80が加熱されると、樹脂タブレット80は溶融し、溶融樹脂81となる。ヒータ27bは、下型27内に配置される構成に限られず、下型27の外部に配置されてもかまわない。
【0090】
前記治具28は、前記第1の実施形態同様、ベース部材28aと、挿通ポスト28bとを備える一方、異なる点として、ベース部材28aに、これを貫通する複数の貫通孔28cを設けられる構成である。このベース部材28aの複数の貫通孔28cは、ベース部材28aの高さ方向に連続する孔であり、鉄心本体11の複数の磁石挿入孔11b及び下型27の各収容孔27aに対応する配置とされるものである。
【0091】
前記押出部29は、
図25に示すように、溶融樹脂81を鉄心本体11の磁石挿入孔11bに押出可能とするものであり、例えば、所定の駆動源による駆動で上下動可能とされる複数のプランジャとされる構成である。
【0092】
各押出部29は、それぞれ下型27の収容孔27aに対し下方から挿入可能に配設されるものである。各押出部29は、押出部ごとに対応する駆動源でそれぞれ駆動されて上下動可能とされるほか、複数の押出部を一つの駆動源でまとめて駆動して一体に上下動可能とするようにしてもよい。
【0093】
次に、本実施形態に係るコア部製造装置によるコア部の製造過程について説明する。
前提として、前記第1の実施形態同様、あらかじめ複数の薄板11aを積層した鉄心本体11が得られており、この鉄心本体11が、その磁石挿入孔11bに永久磁石12を挿入され、予熱装置50で予熱された状態で、この鉄心本体11を載せた治具23と共に、鉄心移送部40によりモールド装置20の側方に向けて移動可能とされているものとする。
【0094】
まず、樹脂移送部30による樹脂移送工程としてのモールド装置20への樹脂タブレット80の移送、供給が、鉄心移送部40による鉄心搬入工程としてのモールド装置20への鉄心本体11及び治具28の搬入に先んじて実行される。
【0095】
樹脂タブレット80が、材料供給部31で一又は複数個ずつ送り出され、配置機構32の配置部33の収容孔33a上で解放されてこれに投入され、各収容孔33aに全て収容された状態から、配置部33の上方への移動と各昇降部34の先端部の上昇に伴って、搬送機構35の搬送部36の各収容孔36aに移動し、さらに開閉部材37の搬送部36に対する第2の位置への移動により、収容孔36aに収容された状態を保持されつつ、これら搬送部36及び開閉部材37と共にモールド装置20側へ移動可能となる段階までは、前記第1の実施形態と同様である。
【0096】
樹脂タブレット80を保持した搬送部36及び開閉部材37は、配置機構32上方からモールド装置20の側方位置まで横方向に移動する。この移動後、搬送部36及び開閉部材37は、モールド装置20への樹脂タブレット80の搬入工程として、前記側方位置から、モールド装置20側面の樹脂材料搬入用開口部分を通って、下型27の上側まで前方に移動する(
図20参照)。
こうして搬送部36及び開閉部材37が下型27の上側に達した際には、下型27のヒータ27bを作動させて、下型27を所定温度となるように予熱するのが好ましい。
【0097】
搬送部36及び開閉部材37が下型27の上側に位置して、搬送部36の各収容孔36aを下型27の各収容孔27aの上方に位置させたら、開閉部材37が、搬送部36に対し移動して、その第1の孔部38aが搬送部36の収容孔36aと重なる第1の位置にある状態となる。これにより、搬送部36の各収容孔36a内の一又は複数の樹脂タブレット80が、収容孔36aを出て、下型27の収容孔27aに投入され、収容される(
図21参照)。
【0098】
これにより、各収容孔27aに収容された樹脂タブレット80の加熱が開始される。各収容孔27aで、ヒータ27bの熱により加熱された樹脂タブレット80が溶融し、溶融樹脂81となる。
【0099】
搬送部36は、樹脂タブレット80が収容孔36aを出て、下型27への樹脂タブレット80の供給に係る樹脂移送工程が完了した後、開閉部材37と共に、下型27の上側からモールド装置20の外まで後退し(
図22参照)、さらに横方向に移動して配置機構32の上方位置まで戻り、あらためて樹脂移送工程として収容孔27aへの樹脂タブレット80の供給を行う状態となる。
【0100】
一方、鉄心本体11とこれを載せた治具28は、鉄心移送部40の主移送機構41に保持された状態で、副移送機構42の作動によりモールド装置20の並び方向に沿って移動し、モールド装置20の側方に達して停止する。
【0101】
鉄心本体11及び治具28は、樹脂移送部30の搬送部36及び開閉部材37が下型27の上側から退避した後、鉄心移送部40の主移送機構41により、モールド装置20の側方位置から、モールド装置20側面の鉄心本体搬入出用の開口部分を通って、モールド装置20の上下型間における下型27上の所定位置まで移動する。
【0102】
鉄心移送部40の主移送機構41が、鉄心本体11の載った治具28を解放し、この鉄心本体11の載った治具28を下型上に載置すると、モールド装置20への鉄心本体11及び治具28の搬入に係る鉄心搬入工程は完了となる(
図23参照)。搬入を終えた鉄心移送部40の主移送機構41はモールド装置20の外に退避し、新たな鉄心本体11及び治具28の移動に供される。
【0103】
鉄心本体11及び治具28が下型27に載置された後、上型26を下降させるか、鉄心本体11が載った下型27を上昇させて、上型26と下型27で鉄心本体11を挟持押圧する状態に移行する(
図24参照)。
【0104】
鉄心本体11の軸方向両端面に、上型26と治具28をそれぞれ当接させて押圧することで、鉄心本体11の軸方向の端部を、磁石挿入孔11bの前記残余部分(空間部)を除いて全て閉塞できる。
【0105】
モールド装置20で鉄心本体11の各磁石挿入孔11bを外部から閉塞した状態とした後、溶融樹脂81の注入を行うモールド工程が実行される。
ここでは、下型27の各収容孔27a内の溶融樹脂81に対し、各押出部29がそれぞれ下方から下型27の各収容孔27aに達し、各収容孔27aに挿入されることで、溶融樹脂81は、押出部29により、収容孔27aから治具28の貫通孔28cを通じて上方の鉄心本体11の磁石挿入孔11bに押出される(
図25参照)。こうして磁石挿入孔11bに溶融樹脂81が注入、充填される。
【0106】
各磁石挿入孔11bに充填された溶融樹脂81が固化すると、押出部29を下げて元の状態に戻すと共に、上型26を上昇させるか、下型27を下降させて、上型26と鉄心本体11とを離隔させ、上型26による鉄心本体11の押圧を終了させて、鉄心本体11及び治具28を上下型間から搬出可能な状態とする。
【0107】
この後、鉄心搬出工程として、モールド装置20の側方位置に鉄心移送部40の主移送機構41を移動させ、さらに主移送機構41をモールド装置20の上下型間まで導入して、治具28とこれに載った樹脂充填済みの鉄心本体11を主移送機構41で保持する状態としたら、主移送機構41で鉄心本体11及び治具28を上型26と下型27との間からモールド装置20の外に移動させ、鉄心本体11及び治具28をモールド装置20から搬出する。
【0108】
モールド装置20から搬出した鉄心本体11及び治具28は、鉄心移送部40の主移送機構41に保持させた状態で、副移送機構42の作動によりモールド装置20の並び方向に沿ってさらに移動させた後、鉄心移送部40から取り出されて次工程に移送されることとなる。
【0109】
本実施形態に係るコア部製造装置の場合、モールド装置20に対して樹脂タブレット80の供給を行う樹脂移送部30と、鉄心本体11を搬入出する鉄心移送部40は、いずれもモールド装置20の上下型間における下型27の上側に達し、樹脂タブレット80や鉄心本体11を移動させる経路の高さ位置が大部分重複することになる。しかし、樹脂移送部30及び鉄心移送部40は、モールド装置20に対し異なる二方向からそれぞれ異なるタイミングで樹脂タブレット80の供給と鉄心本体11の搬入出を行うため、これらを問題なく実行でき、モールド装置20による鉄心本体11への樹脂の注入工程を効率よくスムーズに進められる状態を確保できる。
【0110】
(本発明の第3の実施形態)
前記第1の実施形態に係るコア部製造装置においては、樹脂移送部30と鉄心移送部40をモールド装置20の対向する二側面の側方に設け、モールド装置20を介して互いに離隔させる構成としているが、これに限らず、第3の実施形態として、
図26に示すように、モールド装置20における二側面が直角をなす配置関係となる各側面の側方に、樹脂移送部30と鉄心移送部45をそれぞれ設ける構成とすることもできる。
【0111】
この場合、複数配置されるモールド装置20に対し、樹脂移送部30が、樹脂材料としての樹脂タブレット80をモールド装置20の並び方向に沿って移動可能とすると共に、各モールド装置の側方まで移動させた樹脂タブレット80をモールド装置20の上下型間に供給可能とするように設けられる。
【0112】
他方、鉄心移送部45は、モールド装置20に挟まれるように配設されて、モールド装置20に搬入される前及びモールド装置20から搬出された後の鉄心本体11を、モールド装置20の並び方向とは直角をなす向きに移動可能とすると共に、モールド装置20の間で、鉄心本体11を一方のモールド装置20に対しては近付け、他方のモールド装置20に対しては遠ざけるような向きにそれぞれ移動させることで、各モールド装置20の上下型間に対し、それぞれ鉄心本体11を搬入及び搬出可能とする構成である。
【0113】
本実施形態に係るコア部製造装置では、樹脂移送部30による樹脂タブレット80の移動する経路と、鉄心移送部45による鉄心本体11の移動経路とが、一部交差しているが、樹脂タブレット80の移動経路と、鉄心本体11の移動経路との高さが異なるように、樹脂移送部30及び鉄心移送部45を配設すれば、前記各実施形態同様に、モールド装置20による鉄心本体11への樹脂の注入工程を効率よくスムーズに進められる状態を確保できる。
【0114】
なお、前記各実施形態に係るコア部製造装置において、モールド装置20を複数配置する構成としているが、これに限らず、
図27及び
図28に示すように、モールド装置20を一つのみ用いて、鉄心本体11に樹脂を注入可能とする構成としてもかまわない。
【0115】
この場合、樹脂移送部30で、樹脂材料をモールド装置の並び方向に沿って移動可能とする搬送機構や、鉄心移送部40で、鉄心本体をモールド装置の並び方向に沿って移動可能とする副移送機構を、それぞれ設けずに済むこととなり、装置構成を簡略化できる。
【0116】
また、前記各実施形態に係るコア部製造装置においては、モールド装置20で鉄心本体11への注入に供する樹脂材料として、樹脂タブレット80を用いる構成としているが、これに限られるものではなく、タブレットと同じ成分の粉末など、他の形態の樹脂材料を用いる構成としてもかまわない。
【0117】
さらに、前記各実施形態に係るコア部製造装置においては、モールド装置20で、加熱部24又は下型27に投入された樹脂材料としての樹脂タブレット80を溶融させ、加熱部24又は下型27から溶融樹脂81を押出し、鉄心本体11における既に永久磁石12が挿入配設された磁石挿入孔11bに、溶融樹脂81を注入して充填する構成としているが、これに限らず、モールド装置が、供給された樹脂材料、例えば、顆粒状や粉末状、あるいはタブレット状の樹脂材料を、鉄心本体11の磁石挿入孔11bに投入し、この磁石挿入孔11bに投入された樹脂材料を溶融させるようにすると共に、磁石挿入孔11bに樹脂材料が投入されてから、この樹脂材料を溶融させるより前又は溶融させる間に、磁石挿入孔11bに永久磁石12を挿入する構成とすることもできる。なお、樹脂材料は、鉄心本体11を加熱することで溶融させる他に、加熱された永久磁石12を磁石挿入孔11bに挿入することで溶融させてもよい。
この場合、永久磁石12挿入の前から又は投入の後、磁石挿入孔11bの樹脂材料を溶融させることで、空間部としての磁石挿入孔11bにおける永久磁石12を除いた残余部分に樹脂を充填でき、最終的に固化した樹脂により鉄心本体11に永久磁石12が固定される。
【0118】
本実施形態では、モールド装置における、鉄心本体を挟み込む金型について、上型、下型と記載しているが、これは便宜上記載しているに過ぎず、権利範囲をこれのみに限定するものではない。すなわち、モールド装置は、鉄心本体をその軸方向両側から一対の金型で挟み込んで樹脂の充填を行うものであれば、金型をどのように配置してもよく、例えば、左右の金型で鉄心本体を挟み込むような配置形態としてもかまわない。
【符号の説明】
【0119】
1 コア部製造装置
10 コア部
11 鉄心本体
11a 薄板
11b 磁石挿入孔
11c 軸孔
12 永久磁石
13 充填材
20 モールド装置
21、26 上型
21a 貫通孔
22、27 下型
23、28 治具
23a、28a ベース部材
23b、28b 挿通ポスト
24 加熱部
24a 収容孔
24b、27b ヒータ
25、29 押出部
27a 収容孔
28c 貫通孔
30 樹脂移送部
31 材料供給部
32 配置機構
33 配置部
33a 収容孔
33b 挿通孔
34 昇降部
35 搬送機構
36 搬送部
36a 収容孔
37 開閉部材
38 貫通孔
38a 第1の孔部
38b 第2の孔部
40、45 鉄心移送部
41 主移送機構
42 副移送機構
50 予熱装置
80 樹脂タブレット
81 溶融樹脂