IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電波工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-恒温槽付水晶発振器 図1
  • 特開-恒温槽付水晶発振器 図2
  • 特開-恒温槽付水晶発振器 図3
  • 特開-恒温槽付水晶発振器 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034973
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】恒温槽付水晶発振器
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20220225BHJP
【FI】
H03B5/32 H
H03B5/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020138952
(22)【出願日】2020-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】松本 隆司
【テーマコード(参考)】
5J079
【Fターム(参考)】
5J079AA04
5J079BA02
5J079BA39
5J079BA43
5J079CA04
5J079CA12
5J079CB07
5J079HA05
5J079HA16
5J079HA25
5J079HA28
5J079HA30
(57)【要約】
【課題】 小型化に伴い、内部の熱を外部に漏らさない構成を実現し、周波数温度特性及び温度スロープ特性を向上させた恒温槽付水晶発振器を提供する。
【解決手段】 セラミックベース11のパッケージ内の段差部分に水晶振動子23を水平に搭載し、更に水晶振動子23のほぼ全体を覆うように発熱素子のヒーターIC24を設置し、水晶振動子23の下側でパッケージ内側の第1層21aの平面上に発振用IC25、コンデンサ26を設置し、パッケージの上部をリッド27で蓋をした恒温槽付水晶発振器である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
恒温槽付水晶発振器であって、
凹形状で、内側の側面が階段状の段差部分を備えるセラミックのパッケージと、
前記段差部分に搭載され、前記パッケージ内に水平に設置される水晶振動子と、
前記水晶振動子の上面に設けられた発熱素子と、
前記水晶振動子の下側で、前記パッケージの内側平面に設けられた電子部品と、
前記パッケージの上部を覆うリッドと、を有することを特徴とする恒温槽付水晶発振器。
【請求項2】
水晶振動子の四辺の角部分が段差部分に搭載され、
前記段差部分に形成された電極と、前記水晶振動子の角部分の裏面とが電気的に接続されていることを特徴とする請求項1記載の恒温槽付水晶発振器。
【請求項3】
水晶振動子と電気的に接続する段差部分には、バンプが形成され、当該バンプを覆うように導電性接着剤が形成されていることを特徴とする請求項2記載の恒温槽付水晶発振器。
【請求項4】
発熱素子は、ヒーターICであり、ワイヤーボンディングでパッケージに接続されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の恒温槽付水晶発振器。
【請求項5】
電子部品は、コンデンサであり、パッケージの内側平面には前記コンデンサが設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の恒温槽付水晶発振器。
【請求項6】
水晶振動子の代わりに、パッケージ水晶発振器、温度補償型水晶発振器又は電圧制御水晶発振器を用いたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の恒温槽付水晶発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、恒温槽付水晶発振器に係り、特に、内部の熱を外部に漏らさない簡易な構成を実現し、小型化に対応して、周波数温度特性及び温度スロープ特性を向上させる恒温槽付水晶発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
従来、水晶振動子の持つ温度特性と正反対の特性を持つ回路(温度補償回路)を内蔵し、広い温度範囲にわたって良好な温度特性が得られる温度補償水晶発振器(TCXO:Temperature Compensated Crystal Oscillator)がある。
【0003】
また、恒温槽によって水晶発振器、または水晶振動子の温度を一定に保ち、周囲温度の変化による出力周波数の変化が、最も少なくなるようにした恒温槽付水晶発振器(OCXO:Oven Controlled Crystal Oscillator)がある。
【0004】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開2018-157377号公報「発振器、電子機器および移動体」(特許文献1)、特開2019-153851号公報「発振器、電子機器および移動体」(特許文献2)がある。
【0005】
特許文献1は、パッケージ内の平面に振動素子を設置し、振動素子上に接着剤で発振用回路を設け、発振用回路の上面の電極とパッケージ内の段差部分に形成した電極とをワイヤーボンディングのワイヤーで接続した温度補償型水晶発振器が示されている。
【0006】
特許文献2は、パッケージ内に段差部分を形成し、当該段差部分に振動素子を搭載し、当該振動素子の裏面(下面)に発振素子を取り付け、当該発振素子がパッケージの平面(内側底面)から浮いた状態で保持される温度補償型水晶発振器が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-157377号公報
【特許文献2】特開2019-153851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の温度補償水晶発振器又は恒温槽付水晶発振器では、近年、1℃当たりの周波数変動(温度スロープ)の要求規格が厳しくなっており、特に小型化に伴って内部の熱が外部に漏れないような構成とすることが難しいという問題点があった。
【0009】
尚、特許文献1は、パッケージの内側の側面に形成した段差部分に振動素子を搭載しているものの、当該振動素子の上面に発振用回路を設ける構造であるため、振動素子全体を効率的に加熱できるものではなく、更に、構成を簡易にして発熱効率を高め、熱を逃がさないようにして、周波数温度特性、温度スロープ特性を向上させる構成の記載がない。
【0010】
また、特許文献2は、パッケージの内側の側面に形成した段差部分に振動素子を搭載しているものの、当該振動素子の裏面(下面)に発振素子を取り付ける構造であるため、振動素子全体を効率的に加熱できるものではなく、更に、構成を簡易にして発熱効率を高め、熱を逃がさないようにして、周波数温度特性、温度スロープ特性を向上させる構成の記載がない。
【0011】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、内部の熱を外部に漏らさない簡易な構成を実現し、小型化に対応して、周波数温度特性及び温度スロープ特性を向上させた恒温槽付水晶発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、恒温槽付水晶発振器であって、凹形状で、内側の側面が階段状の段差部分を備えるセラミックのパッケージと、段差部分に搭載され、パッケージ内に水平に設置される水晶振動子と、水晶振動子の上面に設けられた発熱素子と、水晶振動子の下側で、パッケージの内側平面に設けられた電子部品と、パッケージの上部を覆うリッドと、を有することを特徴とする。
【0013】
本発明は、上記恒温槽付水晶発振器において、水晶振動子の四辺の角部分が段差部分に搭載され、段差部分に形成された電極と、水晶振動子の角部分の裏面とが電気的に接続されていることを特徴とする。
【0014】
本発明は、上記恒温槽付水晶発振器において、水晶振動子と電気的に接続する段差部分には、バンプが形成され、当該バンプを覆うように導電性接着剤が形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明は、上記恒温槽付水晶発振器において、発熱素子が、ヒーターICであり、ワイヤーボンディングでパッケージに接続されていることを特徴とする。
【0016】
本発明は、上記恒温槽付水晶発振器において、電子部品が、コンデンサであり、パッケージの内側平面には当該コンデンサが設けられていることを特徴とする。
【0017】
本発明は、上記恒温槽付水晶発振器において、水晶振動子の代わりに、パッケージ水晶発振器、温度補償型水晶発振器又は電圧制御水晶発振器を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、凹形状で、内側の側面が階段状の段差部分を備えるセラミックのパッケージと、段差部分に搭載され、パッケージ内に水平に設置される水晶振動子と、水晶振動子の上面に設けられた発熱素子と、水晶振動子の下側で、パッケージの内側平面に設けられた電子部品と、パッケージの上部を覆うリッドと、を有する恒温槽付水晶発振器としているので、小型化に対応した簡易な構成で発熱効率を高め、熱を逃がさないようにして、周波数温度特性、温度スロープ特性を向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発振器の断面説明図である。
図2】本発振器の平面説明図である。
図3】周波数温度特性を示す図である。
図4】温度スロープ特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る恒温槽付水晶発振器(本発振器)は、セラミックのパッケージの内側の側面で階段状の段差部分に水平に水晶振動子を設置し、更に水晶振動子を覆うように発熱素子のヒーターIC(Integrated Circuit)を設置し、水晶振動子の下側でパッケージ内側の平面に発振回路となる発振用ICとコンデンサ等の電子部品を設置し、パッケージの上部をリッドで蓋をしたものであり、小型化に対応して簡易な構成で発熱効率を高め、熱を逃がさないようにして、周波数温度特性、温度スロープ特性を向上させることができるものである。
【0021】
つまり、本発振器は、発熱素子が水晶振動子のほぼ全体を覆う構成であるため、特許文献1の発熱素子が水晶片の一部に接する構造に比べて水晶振動子を効率的に加熱できるものであり、また、水晶振動子を段差部分に水平に搭載する構成であるため、特許文献2の台座のような接続板に水晶振動子を搭載する構造に比べて構成を簡易にできるものである。
【0022】
[本発振器:図1,2]
本発振器の構成について図1,2を参照しながら説明する。図1は、本発振器の断面説明図であり、図2は、本発振器の平面説明図である。尚、図2では、リッド27とシールリング21eを取り除いた状態を示している。
本発振器は、図1,2に示すように、パッケージとなるセラミックベース21と、水晶振動子23と、発熱素子のヒーターIC24と、発振用IC25と、コンデンサ26と、リッド27とを基本的に有している。
【0023】
[各部:図1,2]
本発振器の各部について具体的に説明する。
[セラミックベース21]
図1,2に示すように、セラミックベース21は、第1層21a~第4層21dのセラミック層が積層され、凹形状のパッケージとなっている。尚、第1層21aが底面を形成し、第2層21bより上の層が側壁を形成している。
【0024】
そして、セラミックベース21は、内側の側面が階段状になっている。つまり、下層の第2層21bの側壁の幅が広く、上層になれば側壁の幅が狭くなっている。
尚、第2層21bと第3層21cとの段差部分に、水晶振動子23が搭載されている。
具体的には、第2層21bの段差部分の平面に、水晶振動子23を搭載するバンプ30が形成されている。バンプ30は、水晶振動子23を浮かせるための箱状の突起部である。
【0025】
尚、第3層21cの下側にも第2層21bが形成されるが、段差部分における第2層21bの平面部分は、図2に示すように、水晶振動子23の四隅が搭載される部分に形成され、水晶振動子23の短辺及び長辺に沿って形成されるものとはなっていない。
図2では、4つの角部分に形成され、当該角部分は、密なドットを付して示している。そして、角部分の第2層21bのパッケージ中央側に水晶振動子23が搭載される構成としているので、水晶振動子23の長短辺と第2層21bの内側の側面との間には隙間が形成され、当該隙間は、第1層21aまで突き抜けて達している。
この水晶振動子23の長短辺に沿った隙間が、ヒーターIC24で温めた空気を対流させ、パッケージ内で均等に熱を効果的に伝達できるものとなる。
【0026】
また、第3層21cと第4層21dとの段差部分には、ヒーターIC24と接続するワイヤーボンディングのワイヤー28aが取り付けられる。従って、当該段差部分にヒーターIC24に電気的に接続する電極が形成されている。
【0027】
[水晶振動子23]
水晶振動子23は、水晶片を容器に収納したもので、当該容器の底面四隅に電極が形成されている。
水晶振動子23の底面四隅に形成された電極部分が、第2層21bの段差部分のバンプ30に搭載され、そのバンプ30を覆うように形成された導電性接着剤29により第2層21bに固定され、電気的に接続される。つまり、水晶振動子23の裏面の四隅が第2層21bの段差部分のバンプ30に接するよう配置される。
【0028】
ここでは、第2層21bの段差部分のバンプに水晶振動子23を搭載したが、温度制御や温度補償をしていないパッケージ水晶発振器(SPXO:Simple Packaged Crystal Oscillator)、温度補償回路を付加して周囲温度の変化による周波数の変動を少なくする温度補償水晶発振器(TCXO)、外部からの制御電圧によって出力周波数を可変又は変調できる電圧制御水晶発振器(VCXO:Voltage Controlled Crystal Oscillator)を搭載してもよい。
また、SPXO、TCXO、VCXOの場合、発振用ICをその内部に設けるようにしている。
【0029】
[ヒーターIC24]
発熱素子のヒーターIC24は、水晶振動子23の表面全体をほぼ覆うように固定されており、ワイヤーボンディングのワイヤー28aにより第3層21cに接続している。
第3層21cの平面部分は、図2に示すように、パッケージの両短辺の内側に帯状に形成されるものであり、図2ではワイヤー28aが接続する電極部分(電極パターン)を粗いドットで示している。
ヒーターIC24が、水晶振動子23の表面全体的に覆うように形成されているので、水晶振動子23を均一に温めることができ、効率的である。
【0030】
[発振用IC25]
発振用IC25は、発振回路となるもので、セラミックベース21の第1層21a上に設置されている。
発振用IC25は、第1層21a上の配線にワイヤーボンディングのワイヤー28bで接続している。また、発振用IC25に波形成型用ICも合わせて一体化し矩形波を出力できる構成にしてもよい。
【0031】
[コンデンサ26]
コンデンサ26は、第1層21a上に設置される電子部品である。
[リッド27]
リッド27は、パッケージの蓋となる部分で、第4層21d上に形成されえたシールリング21eに接着固定される。尚、図2では、パッケージの内側が分かるように、シールリング21eとリッド27を取り除いたものとなっている。
【0032】
パッケージとしては、セラミックよりガラスエポキシ樹脂の方が熱を逃がさないので、優れているが、製造工程でガラスエポキシ樹脂に高温の熱処理を行うことができないことを考慮すると、パッケージにはセラミックを用いる方が耐熱性に優れている。
【0033】
本発振器は、ヒーターIC24が水晶振動子23を全体的に覆う構成であるため、特許文献1,2に比べて水晶振動子23を効率的に加熱できるものであり、また、水晶振動子23の下側に発振用IC25を配置する構成であるため、特許文献1,2に比べて構造を簡易にできるものである。
【0034】
従って、本発振器は、小型化に伴って温度に対する周波数変動を抑えるために、簡易な構成で内部の熱を外部に漏らさない構成を実現している。
つまり、従来の発振器のように複雑な構成では、小型化と周波数温度特性及び温度スロープ特性の改善の両方を実現するのは困難であるが、本発振器では、両方を実現するものである。以下、特性の改善について説明する。
【0035】
[周波数温度特性:図3
本発振器の周波数温度特性について図3を参照しながら説明する。図3は、周波数温度特性を示す図である。
図3は、温度(Temperature(℃))に対する周波数変化率(Frequency Deviation:ΔF/F(ppm))を示すもので、従来のTCXOでは変動が大きいが、本発振器では温度に対して100℃以上を除いて周波数変化率は、0~0.1ppmの間で安定している。
【0036】
[温度スロープ特性:図4
次に、本発振器の温度スロープ特性について図4を参照しながら説明する。図4は、温度スロープ特性を示す図である。
図4は、温度(Temperature(℃))に対する温度スロープ(Temp Slope(ppb/deg.C))を示すもので、従来のTCXOでは不安定に上下動して変動が大きいが、本発振器では温度に対して温度スロープは、0ppb/deg.Cを中心に安定している。
【0037】
[実施の形態の効果]
本発振器によれば、セラミックベース21のパッケージ内の段差部分に水晶振動子23を水平に搭載し、更に水晶振動子23のほぼ全体を覆うように発熱素子のヒーターIC24を設置し、水晶振動子23の下側でパッケージ内側の第1層21aの平面上に発振用IC25とコンデンサ26を設置し、パッケージの上部をリッド27で蓋をした構成としているので、小型化に対応して簡易な構成で発熱効率を高め、熱を逃がさないようにして、周波数温度特性、温度スロープ特性を向上させることができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、小型化に伴い、内部の熱を外部に漏らさない構成を実現し、周波数温度特性及び温度スロープ特性を向上させた恒温槽付水晶発振器に好適である。
【符号の説明】
【0039】
21…セラミックベース、 21a…第1層、 21b…第2層、 21c…第3層、 21d…第4層、 21e…シールリング、 23…水晶振動子、 24…ヒーターIC、 25…発振用IC、 26…コンデンサ、 27…リッド、 28a,28b…ワイヤー、 29…導電性接着剤、 30…バンプ
図1
図2
図3
図4