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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034974
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】恒温槽付水晶発振器
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20220225BHJP
【FI】
H03B5/32 H
H03B5/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020138953
(22)【出願日】2020-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】松本 隆司
【テーマコード(参考)】
5J079
【Fターム(参考)】
5J079AA04
5J079BA02
5J079BA39
5J079BA43
5J079CA04
5J079CA12
5J079CB07
5J079HA05
5J079HA16
5J079HA25
5J079HA28
5J079HA30
(57)【要約】
【課題】 小型化に伴い、内部の熱を外部に漏らさない構成を実現し、周波数温度特性及び温度スロープ特性を向上させた恒温槽付水晶発振器を提供する。
【解決手段】 セラミックベース11のパッケージ内の段差部分に水晶振動子23を水平に搭載し、更に水晶振動子23のほぼ全体を覆うように発熱素子のヒーターIC24を設置し、水晶振動子23の下側でパッケージ内側の第1層21aの平面上に発振用IC25を設置し、パッケージの上部をリッド27で蓋をし、パッケージの外側の側面にキャスタレーションを形成していない恒温槽付水晶発振器である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
恒温槽付水晶発振器であって、
凹形状のセラミックのパッケージと、
前記パッケージ内に水平に設置される水晶振動子と、
前記水晶振動子の上面に設けられた発熱素子と、
前記水晶振動子の下側で、前記パッケージの内側平面に設けられた電子部品と、
前記パッケージの上部を覆うリッドと、を有し、
前記パッケージの外側の側面にキャスタレーションを備えていないことを特徴とする恒温槽付水晶発振器。
【請求項2】
パッケージは、内側の側面が階段状の段差部分を備え、
水晶振動子が、前記段差部分に搭載され、前記パッケージ内に水平に設置されることを特徴とする請求項1記載の恒温槽付水晶発振器。
【請求項3】
水晶振動子の四辺の角部分が段差部分に搭載され、
前記段差部分に形成された電極と、前記水晶振動子の角部分の裏面とが電気的に接続されていることを特徴とする請求項2記載の恒温槽付水晶発振器。
【請求項4】
水晶振動子と電気的に接続する段差部分には、バンプが形成され、当該バンプを覆うように導電性接着剤が形成されていることを特徴とする請求項3記載の恒温槽付水晶発振器。
【請求項5】
水晶振動子を搭載する水晶基板を備え、
パッケージの内側の側面には、前記水晶基板を搭載する階段状の段差部分が形成されていることを特徴とする請求項1記載の恒温槽付水晶発振器。
【請求項6】
水晶基板には、水晶振動子に接続する電極パターンが形成され、
前記電極パターンが、前記水晶基板の端辺で導電性接着剤によりパッケージの段差部分に固定されることを特徴とする請求項5記載の恒温槽付水晶発振器。
【請求項7】
水晶振動子の代わりに、パッケージ水晶発振器、温度補償型水晶発振器又は電圧制御水晶発振器を用いたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか記載の恒温槽付水晶発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、恒温槽付水晶発振器に係り、特に、内部の熱を外部に漏らさない簡易な構成を実現し、小型化に対応して、周波数温度特性及び温度スロープ特性を向上させる恒温槽付水晶発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
従来、水晶振動子の持つ温度特性と正反対の特性を持つ回路(温度補償回路)を内蔵し、広い温度範囲にわたって良好な温度特性が得られる温度補償水晶発振器(TCXO:Temperature Compensated Crystal Oscillator)がある。
【0003】
また、恒温槽によって水晶発振器、または水晶振動子の温度を一定に保ち、周囲温度の変化による出力周波数の変化が、最も少なくなるようにした恒温槽付水晶発振器(OCXO:Oven Controlled Crystal Oscillator)がある。
【0004】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開2015-170950号公報「水晶デバイス」(特許文献1)、特開2015-073252号公報「水晶発振器」(特許文献2)がある。
【0005】
特許文献1は、キャビティ内の台座の上に水晶振動片が搭載され、その台座の裏側にヒーターパターンが形成され、更にその下側に温度センサを備えた水晶デバイスが示されている。
【0006】
特許文献2は、キャビティの底面に吸熱パターンが水平方向に形成され、吸熱パターンに対して垂直方向に形成された熱伝達部材を介して水平方向に放熱パターンが形成され、その放熱パターンの上側で空間を空けて水晶振動片が搭載される水晶発振器が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-170950号公報
【特許文献2】特開2015-073252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の温度補償水晶発振器又は恒温槽付水晶発振器では、近年、1℃当たりの周波数変動(温度スロープ)の要求規格が厳しくなっており、特に小型化に伴って内部の熱が外部に漏れないような構成とすることが難しいという問題点があった。
【0009】
具体的には、OCXOにおいて、パッケージの外側の側面に垂直方向に溝構造のキャスタレーションが設けられていることが多い。
キャスタレーションは実装時の接続信頼性の向上に寄与するものではあるが、放熱の観点から見れば、ヒートシンクの機能(放熱機能)を持っているため、内部に熱を閉じ込めておきたいOCXOにとって不都合である。
【0010】
尚、特許文献1は、キャビティ内に水晶振動片、ヒーターパターン、温度センサを備える恒温槽付水晶発振器となっており、水晶振動片を全体的に効率よく加熱できるものではなく、更に、構成を簡易にして発熱効率を高め、熱を逃がさないようにして、周波数温度特性、温度スロープ特性を向上させる構成の記載がない。
【0011】
また、特許文献2は、キャビティの底面に吸熱パターンと放熱パターンを形成し、その上側に水晶振動片を搭載する恒温槽付水晶発振器となっており、水晶振動片を全体的に効率よく加熱できるものではなく、更に、構成を簡易にして発熱効率を高め、熱を逃がさないようにして、周波数温度特性、温度スロープ特性を向上させる構成の記載がない。
【0012】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、内部の熱を外部に漏らさない簡易な構成を実現し、小型化に対応して、周波数温度特性及び温度スロープ特性を向上させた恒温槽付水晶発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、恒温槽付水晶発振器であって、凹形状のセラミックのパッケージと、パッケージ内に水平に設置される水晶振動子又は温度補償型と、水晶振動子の上面に設けられた発熱素子と、水晶振動子の下側で、パッケージの内側平面に設けられた電子部品と、パッケージの上部を覆うリッドと、を有し、パッケージの外側の側面にキャスタレーションを備えていないことを特徴とする。
【0014】
本発明は、上記恒温槽付水晶発振器において、パッケージが、内側の側面が階段状の段差部分を備え、水晶振動子が、段差部分に搭載され、パッケージ内に水平に設置されることを特徴とする。
【0015】
本発明は、上記恒温槽付水晶発振器において、水晶振動子の四辺の角部分が段差部分に搭載され、段差部分に形成された電極と、水晶振動子の角部分の裏面とが電気的に接続されていることを特徴とする。
【0016】
本発明は、上記恒温槽付水晶発振器において、水晶振動子と電気的に接続する段差部分には、バンプが形成され、当該バンプを覆うように導電性接着剤が形成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明は、上記恒温槽付水晶発振器において、水晶振動子を搭載する水晶基板を備え、パッケージの内側の側面には、水晶基板を搭載する階段状の段差部分が形成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明は、上記恒温槽付水晶発振器において、水晶基板には、水晶振動子に接続する電極パターンが形成され、電極パターンが、水晶基板の端辺で導電性接着剤によりパッケージの段差部分に固定されることを特徴とする。
【0019】
本発明は、上記恒温槽付水晶発振器において、水晶振動子の代わりに、パッケージ水晶発振器、温度補償型水晶発振器又は電圧制御水晶発振器を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、凹形状のセラミックのパッケージと、パッケージ内に水平に設置される水晶振動子と、水晶振動子の上面に設けられた発熱素子と、水晶振動子の下側で、パッケージの内側平面に設けられた電子部品と、パッケージの上部を覆うリッドと、を有し、パッケージの外側の側面にキャスタレーションを備えていない恒温槽付水晶発振器としているので、小型化に対応した簡易な構成で発熱効率を高め、熱を逃がさないようにして、周波数温度特性、温度スロープ特性を向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1の発振器の断面説明図である。
図2】第1の発振器の平面説明図である。
図3】第1の発振器の周波数温度特性を示す図である。
図4】第1の発振器の温度スロープ特性を示す図である。
図5】第2の発振器の断面説明図である。
図6】第2の発振器の平面説明図である。
図7】水晶基板の平面説明図である。
図8】第2の発振器の周波数温度特性を示す図である。
図9】第2の発振器の温度スロープ特性を示す図である。
図10】温度差の比率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る恒温槽付水晶発振器(本発振器)は、凹形状のセラミックのパッケージと、パッケージ内に水平に設置される水晶振動子と、水晶振動子の上面に設けられた発熱素子と、水晶振動子の下側で、パッケージの内側平面に設けられた電子部品と、パッケージの上部を覆うリッドと、を有し、パッケージの外側の側面にキャスタレーションを備えていないものであり、小型化に対応して簡易な構成で発熱効率を高め、熱を逃がさないようにして、周波数温度特性、温度スロープ特性を向上させることができるものである。
【0023】
キャスタレーションは、パッケージの長辺側面又は短辺側面に垂直方向に複数本の溝の中に金属を埋め込んだ電極が形成されるものである。しかしながら、本発振器では、パッケージの外側の側面にキャスタレーション(電極及び溝)を設けていない。つまり、本発振器では、キャスタレーションを削除してパッケージの外側の側面をフラットにして表面積を削減すると共に、熱伝導率の大きい金属を表面に設けないことで、パッケージの外側への放熱を抑えることができるものである。
【0024】
尚、本発振器では、パッケージ外側の側面のキャスタレーションを削除しているので、垂直方向の電極はパッケージ内でスルーホール等により形成し、パッケージの底面(裏面)の電極に導き出される。
【0025】
以下、本発振器の具体例について、第1の発振器と第2の発振器を説明する。
まず、第1の発振器について説明する。
【0026】
[第1の発振器の概要]
本発明の実施の形態に係る第1の恒温槽付水晶発振器(第1の発振器)は、セラミックのパッケージの内側の側面で階段状の段差部分に水平に水晶振動子を設置し、更に水晶振動子を覆うように発熱素子のヒーターIC(Integrated Circuit)を設置し、水晶振動子の下側でパッケージ内側の平面に発振回路となる発振用ICとコンデンサ等の電子部品を設置し、パッケージの上部をリッドで蓋をしたものであり、小型化に対応して簡易な構成で発熱効率を高め、熱を逃がさないようにして、周波数温度特性、温度スロープ特性を向上させることができるものである。
【0027】
つまり、第1の発振器は、発熱素子が水晶振動子のほぼ全体を覆う構成であるため、発熱素子が水晶片の一部に接する従来の発振器の構造に比べて水晶振動子を効率的に加熱できるものであり、また、水晶振動子を段差部分に水平に搭載する構成であるため、台座のような接続板に水晶振動子を搭載する従来の発振器の構造に比べて構成を簡易にできるものである。
【0028】
[第1の発振器:図1,2]
第1の発振器の構成について図1,2を参照しながら説明する。図1は、第1の発振器の断面説明図であり、図2は、第1の発振器の平面説明図である。尚、図2では、リッド27とシールリング21eを取り除いた状態を示している。
第1の発振器は、図1,2に示すように、パッケージとなるセラミックベース21と、水晶振動子23と、発熱素子のヒーターIC24と、発振用IC25と、コンデンサ26と、リッド27とを基本的に有している。
【0029】
[各部:図1,2]
第1の発振器の各部について具体的に説明する。
[セラミックベース21]
図1,2に示すように、セラミックベース21は、第1層21a~第4層21dのセラミック層が積層され、凹形状のパッケージとなっている。尚、第1層21aが底面を形成し、第2層21bより上の層が側壁を形成している。
【0030】
そして、セラミックベース21は、内側の側面が階段状になっている。つまり、下層の第2層21bの側壁の幅が広く、上層になれば側壁の幅が狭くなっている。
尚、第2層21bと第3層21cとの段差部分に、水晶振動子23が搭載されている。
具体的には、第2層21bの段差部分の平面に、水晶振動子23を搭載するバンプ30が形成されている。バンプ30は、水晶振動子23を浮かせるための箱状の突起部である。
【0031】
尚、第3層21cの下側にも第2層21bが形成されるが、段差部分における第2層21bの平面部分は、図2に示すように、水晶振動子23の四隅が搭載される部分に形成され、水晶振動子23の短辺及び長辺に沿って形成されるものとはなっていない。
【0032】
図2では、4つの角部分に形成され、当該角部分は、密なドットを付して示している。そして、角部分の第2層21bのパッケージ中央側に水晶振動子23が搭載される構成としているので、水晶振動子23の長短辺と第2層21bの内側の側面との間には隙間が形成され、当該隙間は、第1層21aまで突き抜けて達している。
この水晶振動子23の長短辺に沿った隙間が、ヒーターIC24で温めた空気を対流させ、パッケージ内で均等に熱を効率的に伝達できるものになる。
【0033】
また、第3層21cと第4層21dとの段差部分には、ヒーターIC24と接続するワイヤーボンディングのワイヤー28aが取り付けられる。従って、当該段差部分にヒーターIC24に電気的に接続する電極が形成されている。
【0034】
[水晶振動子23]
水晶振動子23は、水晶片を容器に収納したもので、当該容器の底面四隅に電極が形成されている。
水晶振動子23の底面四隅に形成された電極部分が、第2層21bの段差部分のバンプ30に搭載され、そのバンプ30を覆うように形成された導電性接着剤29により第2層21bに固定され、電気的に接続される。つまり、水晶振動子23の裏面の四隅が第2層21bの段差部分のバンプ30に接するよう配置される。
【0035】
ここでは、第2層21bの段差部分のバンプに水晶振動子23を搭載したが、温度制御や温度補償をしていないパッケージ水晶発振器(SPXO:Simple Packaged Crystal Oscillator)、温度補償回路を付加して周囲温度の変化による周波数の変動を少なくする温度補償水晶発振器(TCXO)、外部からの制御電圧によって出力周波数を可変又は変調できる電圧制御水晶発振器(VCXO:Voltage Controlled Crystal Oscillator)を搭載してもよい。
また、SPXO、TCXO、CCXOの場合、発振用ICをその内部に設けるようにしている。
【0036】
[ヒーターIC24]
発熱素子のヒーターIC24は、水晶振動子23の表面全体をほぼ覆うように固定されており、ワイヤーボンディングのワイヤー28aにより第3層21cに接続している。
第3層21cの平面部分は、図2に示すように、パッケージの両短辺の内側に帯状に形成されるものであり、図2ではワイヤー28aが接続する電極部分(電極パターン)を粗いドットで示している。
ヒーターIC24が、水晶振動子23の表面全体的に覆うように形成されているので、水晶振動子23を均一に温めることができ、効率的である。
【0037】
[発振用IC25]
発振用IC25は、発振回路となるもので、セラミックベース21の第1層21a上に設置されている。
発振用IC25は、第1層21a上の配線にワイヤーボンディングのワイヤー28bで接続している。また、発振用IC25に波形成型用ICも合わせて一体化し矩形波を出力できる構成にしてもよい。
【0038】
[コンデンサ26]
コンデンサ26は、第1層21a上に設置される電子部品である。
[リッド27]
リッド27は、パッケージの蓋となる部分で、第4層21d上に形成されえたシールリング21eに接着固定される。尚、図2では、パッケージの内側が分かるように、シールリング21eとリッド27を取り除いたものとなっている。
【0039】
パッケージとしては、セラミックよりガラスエポキシ樹脂の方が熱を逃がさないので、優れているが、製造工程でガラスエポキシ樹脂に高温の熱処理を行うことができないことを考慮すると、パッケージにはセラミックを用いる方が耐熱性に優れている。
【0040】
第1の発振器は、ヒーターIC24が水晶振動子23を全体的に覆う構成であるため、従来の発振器に比べて水晶振動子23を効率的に加熱できるものであり、また、水晶振動子23の下側に発振用IC25を配置する構成であるため、従来の発振器に比べて構造を簡易にできるものである。
【0041】
従って、第1の発振器は、小型化に伴って温度に対する周波数変動を抑えるために、簡易な構成で内部の熱を外部に漏らさない構成を実現している。
つまり、従来の発振器のように複雑な構成では、小型化と周波数温度特性及び温度スロープ特性の改善の両方を実現するのは困難であるが、第1の発振器では、両方を実現するものである。以下、特性の改善について説明する。
【0042】
[周波数温度特性:図3
第1の発振器の周波数温度特性について図3を参照しながら説明する。図3は、第1の発振器の周波数温度特性を示す図である。
図3は、温度(Temperature(℃))に対する周波数変化率(Frequency Deviation:ΔF/F(ppm))を示すもので、従来のTCXOでは変動が大きいが、第1の発振器では温度に対して100℃以上を除いて周波数変化率は、0~0.1ppmの間で安定している。
【0043】
[温度スロープ特性:図4
次に、第1の発振器の温度スロープ特性について図4を参照しながら説明する。図4は、第1の発振器の温度スロープ特性を示す図である。
図4は、温度(Temperature(℃))に対する温度スロープ(Temp Slope(ppb/deg.C))を示すもので、従来のTCXOでは不安定に上下動して変動が大きいが、第1の発振器では温度に対して温度スロープは、0ppb/deg.Cを中心に安定している。
【0044】
[第1の発振器の効果]
第1の発振器によれば、セラミックベース21のパッケージ内の段差部分に水晶振動子23を水平に搭載し、更に水晶振動子23のほぼ全体を覆うように発熱素子のヒーターIC24とコンデンサ26を設置し、水晶振動子23の下側でパッケージ内側の第1層21aの平面上に発振用IC25を設置し、パッケージの上部をリッド27で蓋をした構成としているので、小型化に対応して簡易な構成で発熱効率を高め、熱を逃がさないようにして、周波数温度特性、温度スロープ特性を向上させることができる効果がある。
【0045】
更に、第1の発振器によれば、パッケージの外側の側面にキャスタレーションを形成せず、フラットにしているので、表面積を削減し、外部への放熱を抑制できる効果がある。
【0046】
次に、第2の発振器について説明する。
[第2の発振器の概要]
本発明の実施の形態に係る第2の恒温槽付水晶発振器(第2の発振器)は、セラミックのパッケージ内を上下に仕切る水晶基板の上に温度補償型水晶発振器(TCXO)を搭載し、更にTCXOの全体を覆うように発熱素子のヒーターIC(Integrated Circuit)を設置し、水晶基板の下側でパッケージ内側の平面に矩形波を出力する波形成型用ICとコンデンサ等の電子部品を設置し、パッケージの上部をリッドで蓋をしたものであり、小型化に対応して簡易な構成で発熱効率を高め、熱を逃がさないようにして、周波数温度特性、温度スロープ特性を向上させることができるものである。
【0047】
つまり、第2の発振器は、発熱素子がTCXOを全体に覆う構成であるため、発熱素子が水晶片の一部に接する従来の発振器の構造に比べてTCXOを効率的に加熱できるものであり、また、TCXOの搭載板を水晶基板とする構成であるため、台座のような接続板に水晶振動子を搭載する従来の発振器の構造に比べて構成を簡易にできるものである。
【0048】
[第2の発振器:図5,6]
第2の発振器の構成について図5,6を参照しながら説明する。図5は、第2の発振器の断面説明図であり、図6は、第2の発振器の平面説明図である。
第2の発振器は、図5,6に示すように、パッケージとなるセラミックベース11と、水晶基板12と、温度補償型水晶発振器(TCXO)13と、発熱素子のヒーターIC14と、矩形波を出力する波形成型IC15と、コンデンサ16と、リッド17とを基本的に有している。
【0049】
[各部:図5,6]
第2の発振器の各部について具体的に説明する。
[セラミックベース11]
図5,6に示すように、セラミックベース11は、第1層11a~第6層11fのセラミック層が積層され、凹形状のパッケージとなっている。尚、第1層11aと第2層11bが底面を形成し、第3層11cより上の層が側壁を形成している。
【0050】
そして、セラミックベース11は、内側の側面が階段状になっている。つまり、下層の第3層11cの側壁の幅が広く、上層になれば側壁の幅が狭くなっている。
尚、第3層11cと第4層11dとの段差部分に、水晶基板12が搭載されている。
【0051】
また、第4層11dと第5層11eとの段差部分には、ヒーターIC14と接続するワイヤーボンディングのワイヤー18aが取り付けられる。従って、当該段差部分にヒーターIC14に電気的に接続する電極が形成されている。
【0052】
[水晶基板12:図7
水晶基板12は、TCXO13に内蔵される水晶片と同じ素材で形成されている。同じ素材とすることでコストを安くできる。
また、水晶基板12の熱伝導率は、ガラスエポキシ樹脂とセラミックの中間である。
【0053】
水晶基板12は、図7に示すように、上面の四隅から中央に向けて電極が形成されている。図7は、水晶基板の平面概略図である。
水晶基板12の中央に形成された四角い電極部分にTCXO13の四隅が搭載され、TCXO13の電極と接続される。
水晶基板12の四隅に形成された四角い電極部分が上側になるよう第3層11cの段差部分に搭載され、導電性接着剤19により第3層11cに固定され、電気的に接続される。つまり、水晶基板12の裏面の四隅が第3層11cの段差部分に接するよう配置される。
【0054】
そして、角部分の第3層11cのパッケージ中央側に水晶基板12が搭載される構成としているので、水晶基板12の長短辺と第2層11cの内側の側面との間には隙間が形成され、当該隙間は、第1層11aまで突き抜けて達している。
この水晶基板12の長短辺に沿った隙間が、ヒーターIC14で温めた空気を対流させ、パッケージ内で均等に熱を効果的に伝達できるものとなる。
【0055】
[TCXO13]
TCXO13は、水晶片を容器内に収納して、発振回路と温度補償回路を備え、周囲温度の変化による周波数の変化量を少なくしたものである。尚、当該容器の底面四隅に電極が形成されている。
【0056】
ここでは、水晶基板12上にTCXO13を搭載したが、温度制御や温度補償をしていないパッケージ水晶発振器(SPXO:Simple Packaged Crystal Oscillator)、外部からの制御電圧によって出力周波数を可変又は変調できる電圧制御水晶発振器(VCXO:Voltage Controlled Crystal Oscillator)を水晶基板12に搭載してもよい。
また、TCXO13の代わりに、水晶振動子を水晶基板12に搭載してもよい。この場合は、波形成型IC15が配置されるセラミックベース11の第2層11b上に発振回路からなる発振用ICが設置されることになる。尚、波形成型IC15と発振用ICは一体化してもよい。
【0057】
[ヒーターIC14]
発熱素子のヒーターIC14は、TCXO13の表面全体を覆うように固定されており、ワイヤーボンディングのワイヤー18aにより第4層11dに接続している。
ヒーターIC14が、TCXO13の表面全体を覆うように形成されているので、TCXO13を均一に温めることができ、効率的である。
【0058】
[波形成型IC15]
波形成型IC15は、矩形波を出力する回路(波形成型回路)となるもので、セラミックベース11の第2層11b上に設置されている。
波形成型IC15は、第2層11b上の配線にワイヤーボンディングのワイヤー18bで接続している。
尚、本発振器において、波形成型IC15は必須な構成ではなく、設けられない場合もある。
【0059】
[コンデンサ16]
コンデンサ16は、第2層11b上に設置される電子部品である。
[リッド17]
リッド17は、パッケージの蓋となる部分で、第6層11f上に形成されえたシールリング11gに接着固定される。尚、図6では、第6層11fを図示しているが、その部分は、リッド17が搭載される部分であり、実際は図5に示すように、シールリング11gが形成されるものである。
【0060】
パッケージとしては、セラミックよりガラスエポキシ樹脂の方が熱を逃がさないので、優れているが、製造工程でガラスエポキシ樹脂に高温の熱処理を行うことができないことを考慮すると、パッケージにはセラミックを用いる方が耐熱性に優れている。
TCXO13を搭載する基板をガラスエポキシ樹脂基板とせず、水晶基板12としたのも、耐熱性を考慮してのことである。
【0061】
第2の発振器は、ヒーターIC14がTCXO13を全体に覆う構成であるため、従来の発振器に比べてTCXO13を効率的に加熱できるものであり、また、TCXO13の搭載板を水晶基板12とする構成であるため、台座のような接続板を用いた従来の発振器に比べて構造を簡易にできるものである。
【0062】
従って、第2の発振器は、小型化に伴って温度に対する周波数変動を抑えるために、簡易な構成で内部の熱を外部に漏らさない構成を実現している。
つまり、従来の発振器のように複雑な構成では、小型化と周波数温度特性及び温度スロープ特性の改善の両方を実現するのは困難であるが、第2の発振器では、両方を実現するものである。以下、特性の改善について説明する。
【0063】
[周波数温度特性:図8
第2の発振器の周波数温度特性について図8を参照しながら説明する。図8は、第2の発振器の周波数温度特性を示す図である。
図8は、温度(Temperature(℃))に対する周波数変化率(ΔF/F(ppm))を示すもので、従来のTCXOでは変動が大きいが、第2の発振器では温度に対して周波数変化率は、0~0.1ppmの間で安定している。
【0064】
[温度スロープ特性:図9
次に、第2の発振器の温度スロープ特性について図9を参照しながら説明する。図9は、第2の発振器の温度スロープ特性を示す図である。
図9は、温度(Temperature(℃))に対する温度スロープ(Temp Slope(ppb/deg.C))を示すもので、従来のTCXOでは不安定に上下動して変動が大きいが、第2の発振器では温度に対して温度スロープは、0ppb/deg.Cを中心に安定している。
【0065】
[第2の発振器の効果]
第2の発振器によれば、セラミックベース11のパッケージ内を水晶基板12で上下に仕切り、水晶基板12の上にTCXO13を搭載し、更にTCXO13の全体を覆うように発熱素子のヒーターIC14を設置し、水晶基板12の下側でパッケージ内側の第2層11bの平面上に波形成型用IC15とコンデンサ16を設置し、パッケージの上部をリッド17で蓋をした構成としているので、小型化に対応して簡易な構成で発熱効率を高め、熱を逃がさないようにして、周波数温度特性、温度スロープ特性を向上させることができる効果がある。
【0066】
更に、第2の発振器によれば、パッケージの外側の側面にキャスタレーションを形成せず、フラットにしているので、表面積を削減し、外部への放熱を抑制できる効果がある。
【0067】
[温度差特性:図10
次に、本発振器(第1の発振器、第2の発振器を含む)とキャスタレーションを備える従来の発振器との温度差の比率を図10に示す。図10は、温度差の比率を示す図である。
図10では、横軸が周囲温度を示し、縦軸が本発振器とキャスタレーションを備える従来の発振器との温度差の比率を示している。ここで、温度差の比率とは、周囲温度が85℃の場合の両者の温度差の値を基準にして、その時の温度差を「1」とした場合に、その他の周囲温度における温度差がどのように変化したのかを比率で示している。
【0068】
図10に示すように、周囲温度が低くなる程に温度差の比率が高くなっており、これは、周囲温度が低い方が、熱がキャスタレーションに伝わってパッケージ(カバー)の表面温度を大きく上昇させていることを示している。
従って、本発振器は、周囲温度が低くなると放熱をより抑制できるものである。
【0069】
[実施の形態の効果]
本発振器によれば、凹形状のセラミックのパッケージと、パッケージ内に水平に設置されるTCXO13、水晶振動子23と、TCXO13、水晶振動子23の上面に設けられたヒーターIC14,24と、TCXO13、水晶振動子23の下側で、パッケージの内側平面に設けられた電子部品と、パッケージの上部を覆うリッド17,27と、を有し、パッケージの外側の側面にキャスタレーションを備えていないものであり、パッケージの外側の側面にキャスタレーションを形成しないためフラットにでき、表面積を削減し、外部への放熱を抑制できるものであり、更に、小型化に対応して簡易な構成で発熱効率を高め、熱を逃がさないようにして、周波数温度特性、温度スロープ特性を向上させることができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、小型化に伴い、内部の熱を外部に漏らさない構成を実現し、周波数温度特性及び温度スロープ特性を向上させた恒温槽付水晶発振器に好適である。
【符号の説明】
【0071】
11…セラミックベース、 11a…第1層、 11b…第2層、 11c…第3層、 11d…第4層、 11e…第5層、 11f…第6層、 11g…シリコンリング、 12…水晶基板、 13…温度補償型水晶発振器(TCXO)、 14…ヒーターIC、 15…波形成型IC、 16…コンデンサ、 17…リッド、 18a,18b…ワイヤー、 19…導電性接着剤、 21…セラミックベース、 21a…第1層、 21b…第2層、 21c…第3層、 21d…第4層、 21e…シリコンリング、 23…水晶振動子、 24…ヒーターIC、 25…発振用IC、 26…コンデンサ、 27…リッド、 28a,28b…ワイヤー、 29…導電性接着剤、 30…バンプ
図1
図2
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図7
図8
図9
図10