(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034985
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】回転成形体の製造方法、回転成形体及び回転成形用成形材料
(51)【国際特許分類】
B29C 41/04 20060101AFI20220225BHJP
B29C 41/36 20060101ALI20220225BHJP
B29L 22/00 20060101ALN20220225BHJP
【FI】
B29C41/04
B29C41/36
B29L22:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020138967
(22)【出願日】2020-08-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・2020年5月19日 https://www.youtube.com/watch?v=QsyyV1d2daM にて公開 ・2020年5月21日 「REOD-100L >>業界初!帯電防止容器」のチラシにて公開 ・2020年6月1日 http://www.e-suiko.co.jp/ http://www.e-suiko.co.jp/news/4162/ http://www.e-suiko.co.jp/product/4146/ にて公開
(71)【出願人】
【識別番号】506117840
【氏名又は名称】スイコー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川西 健太
(72)【発明者】
【氏名】坂木 博之
【テーマコード(参考)】
4F205
【Fターム(参考)】
4F205AA04
4F205AB13
4F205AB18
4F205AC04
4F205AE03
4F205AF16
4F205AG07
4F205GA01
4F205GB01
4F205GC04
4F205GF02
4F205GN01
4F205GN29
(57)【要約】
【課題】添加物が内面側に偏在する成形体を簡便に製造することができる方法を提供する。
【解決手段】回転成形体の製造方法は、熱可塑性樹脂の粉体と機能性微粒子とをドライブレンドして成形材料を得る工程と、前記成形材料を回転成形する工程とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂の粉体と機能性微粒子とをドライブレンドして成形材料を得る工程と、
前記成形材料を回転成形する工程と
を備える回転成形体の製造方法。
【請求項2】
前記回転成形体が容器を含む請求項1に記載の回転成形体の製造方法。
【請求項3】
前記機能性微粒子が、導電性微粒子及び抗菌性微粒子からなる群から選択される少なくとも一種を含む請求項1又は2に記載の回転成形体の製造方法。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレンを含む請求項1から3のいずれか一項に記載の回転成形体の製造方法。
【請求項5】
熱可塑性樹脂と機能性微粒子とを含む成形材料の回転成形体であって、
内面と外面とを有し、
前記熱可塑性樹脂に対する機能性微粒子の割合が、前記外面の表層よりも前記内面の表層において大きい回転成形体。
【請求項6】
前記機能性微粒子が、導電性微粒子及び抗菌性微粒子からなる群から選択される少なくとも一種を含む請求項5に記載の回転成形体。
【請求項7】
熱可塑性樹脂と機能性微粒子とを含む成形材料の回転成形体であって、
内面と外面とを有し、
前記機能性微粒子に由来する特性が、前記外面よりも前記内面において高い回転成形体。
【請求項8】
前記特性が、導電性及び抗菌性からなる群から選択される少なくとも一種を含む請求項7に記載の回転成形体。
【請求項9】
前記成形材料が、前記熱可塑性樹脂の粉体と前記機能性微粒子とのドライブレンド混合物を含む請求項5から8のいずれか一項に記載の回転成形体。
【請求項10】
容器を含む請求項5から9のいずれか一項に記載の回転成形体。
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレンを含む請求項5から10のいずれか一項に記載の回転成形体。
【請求項12】
熱可塑性樹脂の粉体と機能性微粒子とのドライブレンド混合物を含む回転成形用成形材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転成形体の製造方法、回転成形体及び回転成形用成形材料に関し、詳しくは、ドライブレンド工程と回転成形工程とを備える回転成形体の製造方法、熱可塑性樹脂と機能性微粒子とを含む成形材料の回転成形体、並びにドライブレンド混合物を含む回転成形用成形材料に関する。
【背景技術】
【0002】
容器、タンク等の中空状の製品を製造する方法として、回転成形法が用いられている。回転成形法では、成形材料を投入した金型を回転させながら加熱し、金型表面に溶融した成形材料を付着させ、徐々に堆積させることによって、成形体を製造する。このような成形材料が堆積して形成される回転成形体は、金型表面に接していた面である外面と、この外面に対し成形体を形成する材料の反対側の面である内面とを有している。
【0003】
回転成形において、成形体に金属やカーボン等の粒子を添加物として含有させる場合、この添加物を成形体中に均一に分散させる以外に、回転成形の遠心力により、添加物を成形体の外面側に偏在させることができることが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、容器等においては、内容物が容器の内面に付着するのを低減させる等、導電性等の特性を内面において高くすることが要求されることが多く、そのため、添加物を成形体の外面側よりも内面側に、より偏在させることが求められる。
【0006】
本開示の課題は、添加物が内面側に偏在する成形体を簡便に製造することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る回転成形体の製造方法は、熱可塑性樹脂の粉体と機能性微粒子とをドライブレンドして成形材料を得る工程と、前記成形材料を回転成形する工程とを備える。
【0008】
本開示の一態様に係る回転成形体は、熱可塑性樹脂と機能性微粒子とを含む成形材料の回転成形体である。この回転成形体は、内面と外面とを有する。前記熱可塑性樹脂に対する機能性微粒子の割合は、前記外面の表層よりも前記内面の表層において大きい。
【0009】
本開示の一態様に係る回転成形体は、熱可塑性樹脂と機能性微粒子とを含む成形材料の回転成形体である。この回転成形体は、内面と外面とを有する。前記機能性微粒子に由来する特性は、前記外面よりも前記内面において高い。
【0010】
本開示の一態様に係る回転成形用成形材料は、熱可塑性樹脂の粉体と機能性微粒子とのドライブレンド混合物を含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、添加物が内面側に偏在する成形体を簡便に製造できる方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る回転成形体の一例を示す概略の斜視図である。
【
図2】
図2は、同上の回転成形体の水平方向の概略の断面図である。
【
図3】
図3は、同上の回転成形体の一部の光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.概要
本実施形態の回転成形体の製造方法は、熱可塑性樹脂の粉体と機能性微粒子とをドライブレンドして成形材料を得る工程(以下、ドライブレンド工程ともいう)と、前記成形材料を回転成形する工程(以下、回転成形工程ともいう)とを備える。
【0014】
本実施形態の製造方法によれば、ドライブレンドと回転成形とを行うことによって簡便に、添加物である機能性微粒子が内面側に偏在する成形体を製造することができる。本実施形態の製造方法により、機能性微粒子が内面側に偏在する成形体が得られる理由については、必ずしも明確ではないが、例えば以下のように推察することができる。成形体の成形方法として、回転成形を採用し、かつ回転成形に用いる成形材料として、熱可塑性樹脂の粉体と機能性微粒子とのドライブレンド混合物を用いることにより、熱可塑性樹脂と機能性微粒子との混錬物等を成形材料に用いる場合と異なり、成形過程において、機能性微粒子が熱可塑性樹脂中に直ちに均一分散することがなく、最初に成形体が形成される金型に接する外面側においては、熱可塑性樹脂に対する機能性微粒子の割合は小さいが、成形が内面側に進むに従って、この割合は大きくなっていくと考えられる。その結果、機能性微粒子が成形体の内面側に偏在している成形体が形成される。
【0015】
2.詳細
以下、本実施形態の回転成形体の製造方法、この製造方法により得られる回転成形体及びこの製造方法に用いられる回転成形用成形材料について、詳細に説明する。
【0016】
<回転成形体の製造方法>
上述の通り、本実施形態の製造方法は、ドライブレンド工程と、回転成形工程とを備える。以下、各工程について説明する。
【0017】
[ドライブレンド工程]
本工程では、熱可塑性樹脂の粉体と機能性微粒子とをドライブレンドして成形材料を得る。「ドライブレンドする」とは、2種以上の材料を、溶融することなく、かつ溶媒などの媒体を使用せずに、直接混ぜ合わせて混合(乾式混合)することをいう。
【0018】
(熱可塑性樹脂の粉体)
熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンと1-ブテン、1-オクテン等のα-オレフィンとの共重合体などのポリオレフィン;ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール等のビニル樹脂;ポリアミド66、ポリアミド6等のポリアミド;ポリイミド;ポリフェニレンスルフィド;ポリオキシメチレン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリスチレン;ポリアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体等のスチレン共重合体;ポリカーボネート;ポリエーテルエーテルケトン;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂;フッ素樹脂などが挙げられる。
【0019】
本実施形態では、熱可塑性樹脂は、ポリエチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、及びアクリル樹脂からなる群から選択される一種以上の樹脂を含むことが好ましく、ポリエチレンを含むことが特に好ましい。ポリエチレンは、軽量であり、焼却しても有毒ガスが発生しにくく、リサイクルが容易であり、耐油性・耐薬品性に優れ、衝撃強度に優れる。ポリエチレンとしては、例えば直鎖状低密度ポリエチレン、側鎖分岐低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等が挙げられる。
【0020】
熱可塑性樹脂のJIS-K7210で規定される流動性(MFR:Melt Flow Rate)は、2.5g/10min以上であることが好ましい。この場合、成形時において、溶融した成形材料の流動性を確保することができ、回転成形体の表面形状をより向上させることができる。熱可塑性樹脂のMFRの上限値は、特に限定されないが、例えば50g/10minである。
【0021】
熱可塑性樹脂の粉体の形状としては、例えば球形状、卵形状、紡錘形状、中空形状、無定形状、鎖状、針状、円柱状、棒状、扁平状、鱗片状、葉状、チューブ状、シート状等が挙げられる。
【0022】
熱可塑性樹脂の粉体の粒子径は、100μm以上1500μm以下であることが好ましく、300μm以上1300μm以下であることがより好ましく、500μm以上1000μm以下であることがさらに好ましい。粉体の粒子径は、例えば粒径分布測定装置(島津製作所社製、SALD-2300)で測定したメディアン径である。
【0023】
熱可塑性樹脂の粉体は、例えば熱可塑性樹脂のペレットを粉砕することにより得ることができる。粉砕方法は、特に限定されないが、例えば機械粉砕法や冷凍粉砕法などの公知の粉砕方法を用いることができる。熱可塑性樹脂は、新品であっても、リサイクル品であっても、これらの混合物であってもよい。
【0024】
(機能性微粒子)
「機能性微粒子」とは、成形体の導電性、抗菌性等の機能性の付与又は向上のために添加される微粒子をいう。機能性微粒子は、融点が60℃以上であるか、又は融点を有さないことが好ましい。このような機能性微粒子を用いることにより、機能性微粒子をより成形体の内面側に偏在させることができる。
【0025】
機能性微粒子としては、例えば導電性微粒子、絶縁性微粒子、熱伝導性微粒子、断熱性微粒子、吸音性微粒子、電磁波吸収性微粒子、難燃性微粒子、着色性微粒子、補強性微粒子、抗菌性微粒子、防汚性微粒子等が挙げられる。
【0026】
導電性微粒子としては、例えばカーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラファイト等の炭素粒子;金、銀、銅、ニッケル、クロム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、インジウム、アルミニウム、タングステン、モリブデン、白金、銅-ニッケル合金、銀-パラジウム合金、銅-スズ合金、銀-銅合金、銅-マンガン合金、これらの微粒子の表面を銀等で被覆したもの等の金属粒子;酸化銀、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ルテニウム、酸化チタン、アンチモン含有スズ酸化物、スズ含有インジウム酸化物等の導電性酸化物粒子などが挙げられる。
【0027】
絶縁性微粒子としては、例えばガラス、シリカ、アルミナ、チタニア、クレイ、ゼオライト、窒化ケイ素、窒化ホウ素、酸化カルシウム等の無機粒子;アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂等の樹脂粒子などが挙げられる。
【0028】
熱伝導性微粒子としては、例えば金、銀、銅、鉄、ニッケル、スズ、アルミニウム、コバルト、インジウム、これらの合金等の金属粒子;酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン等の金属酸化物粒子;窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の金属窒化物粒子;黒鉛、ダイヤモンド等の炭素粒子;樹脂粒子に金属層を被覆した金属被覆粒子などが挙げられる。
【0029】
断熱性微粒子としては、例えば無機又は有機の中空フィラー、ビーズ;シリカ等の粒子などが挙げられる。
【0030】
吸音性微粒子としては、例えば硫酸バリウム、シリカ、シラスバルーン、バーミキュライト等の粒子などが挙げられる。
【0031】
電磁波吸収性微粒子としては、例えばカルボニル鉄、各種フェライト(マンガン-亜鉛系、ニッケル-亜鉛系、ニッケル-亜鉛-銅系、銅-亜鉛系、マグネシウム-マンガン系、銅-マグネシウム-マンガン系、ネオジム-鉄-ボロン系等)などが挙げられる。
【0032】
難燃性微粒子としては、例えば赤リン系化合物粒子、ホスファゼン化合物粒子、メラミン系樹脂粒子、酸化チタン-酸化ケイ素複合粒子などが挙げられる。
【0033】
着色性微粒子としては、例えば顔料、着色骨材、着色樹脂粒子、着色ゲル粒子等が挙げられる。
【0034】
補強性微粒子としては、例えばジルコニア、チタン酸バリウム、ハイドロキシアパタイト等のセラミックス粒子;酸化アルミニウム等の金属酸化物粒子;ダイヤモンド粒子などが挙げられる。
【0035】
抗菌性微粒子としては、例えば銀、銅、亜鉛、金、チタン、コバルト、タングステン、スズ、ビスマス、クロム、ニッケル、タリウム等の金属元素を含む粒子;銀イオン等の公知の抗菌性化合物、又は酸化チタン等の光触媒を微粒子化又は担持した粒子などが挙げられる。
【0036】
防汚性微粒子としては、例えば銅化合物、亜酸化銅化合物等の無機銅化合物粒子;公知の防汚性化合物を微粒子化又は担持した粒子などが挙げられる。
【0037】
本実施形態では、抗菌性微粒子は、導電性微粒子及び抗菌性微粒子からなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0038】
機能性微粒子の形状としては、例えば球形状、卵形状、紡錘形状、中空形状、無定形状、鎖状、針状、円柱状、棒状、扁平状、鱗片状、葉状、チューブ状、シート状等が挙げられる。
【0039】
機能性微粒子の平均粒径は、0.01μm以上であることが好ましく、0.03μm以上であることがより好ましい。この場合、機能性微粒子を成形体の内面側により偏在させることができる。この平均粒径は、100μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。この場合、機能性微粒子の偏在をより均一に行わせることができる。機能性微粒子の粒子径は、例えば粒径分布測定装置(島津製作所社製、SALD-2300)で測定したメディアン径である。機能性微粒子は、一次粒子が互いに集合して、二次粒子やストラクチャーを形成したものであってもよい。
【0040】
(ドライブレンド方法)
熱可塑性樹脂の粉体と機能性微粒子とをドライブレンドすることにより、回転成形用成形材料であるドライブレンド混合物を得る。ドライブレンドの方法としては、特に限定されず、例えばタンブラーミキサー、リボンミキサー、ナウターミキサー、リボコーンミキサー等の密閉式混合機を使用して混合する方法などが挙げられる。ドライブレンドの際の温度は、通常常温以上60℃以下である。ドライブレンドを行う時間は、通常1分以上6時間以下であり、5分以上3時間以下であることが好ましく、10分以上2時間以下であることがより好ましく、20分以上60分以下であることが特に好ましい。
【0041】
熱可塑性樹脂の粉体100質量部に対する機能性微粒子の割合は、0.01質量部以上であることが好ましい。この場合、成形体の内面における特性をより向上させることができる。この割合は、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることがさらに好ましく、0.15質量部以上であることが特に好ましい。機能性微粒子の割合は、1質量部以下であることが好ましい。この場合、機能性微粒子の成形体の内面からの剥離をより低減することができる。この割合は、0.7質量部以下であることがより好ましく、0.4質量部以下であることがさらに好ましく、0.3質量部以下であることが特に好ましい。
【0042】
本開示の効果を損なわない範囲において、熱可塑性樹脂の粉体及び機能性微粒子以外の他の成分を、ドライブレンドの前に、熱可塑性樹脂の粉体及び機能性微粒子の少なくとも一方に混合してもよく、又はドライブレンドの際に混合してもよい。他の成分は、粒子状であっても、液体等であってもよい。他の成分としては、例えば紫外線吸収剤、安定剤、酸化防止剤、相溶化剤、分散剤、離型剤等が挙げられる。
【0043】
ドライブレンド工程で得られた熱可塑性樹脂と機能性微粒子とのドライブレンド混合物は、回転成形用の成形材料として好適に用いることができる。
【0044】
[回転成形工程]
本工程では、ドライブレンド工程で得た成形材料(以下、成形材料(X)ともいう)を回転成形する。
【0045】
本工程では、まず、金型内に成形材料(X)を投入する。次に、金型を回転させながら、加熱する。金型の温度が上昇するに伴い、成形材料(X)が溶融する。溶融した成形材料(X)が金型表面に付着して徐々に堆積していく。金型を一定時間加熱した後、金型を冷却し、成形体を金型から取り出す。このようにして、成形材料(X)の回転成形体が得られる。
【0046】
本実施形態では、回転成形を行う際の金型温度は、熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜設定されるが、150℃以上300℃以下であることが好ましく、180℃以上280℃以下であることがより好ましい。また、本実施形態では、回転成形を行う際の加熱時間は、5分以上60分以下であることが好ましく、10分以上35分以下であることがより好ましい。回転成形における加熱方式としては、例えば直火式、熱風循環オーブン式、媒体循環式などが挙げられる。
【0047】
本実施形態では、金型の形状に応じて、容器、タンク、ケース、ボックス等の種々の形状及び寸法の成形体を製造することができる。回転成形における回転方式は、製造する回転成形体の形状等に応じて、一軸回転でも、二軸回転でもよく、一軸回転に揺動運動を組み合わせた方式でもよい。
【0048】
図1に、本実施形態の製造方法により得られる回転成形体の一例を示す。
図2は、
図1の回転成形体1である容器における水平方向の断面図である。回転成形体1は、内面2と外面3とを有している。本実施形態の製造方法により得られる回転成形体1において、回転成形の金型面側が外面3となり、金型とは反対の面側が内面2となる。
【0049】
回転成形体1の肉厚は、0.5mm以上30mm以下であることが好ましく、1mm以上20mm以下であることがより好ましく、2mm以上10mm以下であることがさらに好ましく、3mm以上8mm以下であることが特に好ましい。
【0050】
回転成形体1において、機能性微粒子は、内面側に偏在している。すなわち、回転成形体1において、熱可塑性樹脂に対する機能性微粒子の割合は、外面3の表層よりも内面2の表層において大きい。表層とは、回転成形体1の内面2、外面3等の表面の近傍領域を意味し、例えば回転成形体1の表面から深さ100μmまでの領域、好ましくは表面から深さ10μmまでの領域をいう。
【0051】
回転成形体1において、熱可塑性樹脂に対する機能性微粒子の割合(以下、割合(Y)ともいう)について、外面3の表層における割合(Y)に対する内面2の表層における割合(Y)(内面2の表層における割合(Y)/外面3の表層における割合(Y))の倍数は、1.1倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることがより好ましく、2倍以上であることがさらに好ましく、3倍以上であることが特に好ましい。この倍数の上限値は、特に限定されないが、例えば10倍である。
【0052】
前述の機能性微粒子の偏在に起因して、回転成形体1においては、機能性微粒子に由来する特性が、外面3よりも内面2において高い。機能性微粒子に由来する特性とは、例えば導電性微粒子については導電性であり、抗菌性微粒子については抗菌性である。
【0053】
回転成形体1において、外面3における特性の値(以下、特性値(Z)ともいう)に対する内面における特性の値(内面2における特性値(Z)/外面3における特性値(Z))の倍数は、2倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましく、10倍以上であることがさらに好ましく、100倍以上であることが特に好ましい。この倍数の上限値は、特に限定されないが、例えば1010倍である。
【0054】
機能性微粒子が導電性微粒子である場合、回転成形体1の表面における導電性に対応する表面抵抗率は、内面2において、1×1012Ω以下であることが好ましい。この場合、回転成形体1の内容物が内面2に付着することをより抑制することができる。内面2における表面抵抗率は、1×1010Ω以下であることがより好ましく、1×109Ω以下であることがさらに好ましく、1×108Ω以下であることが特に好ましい。表面抵抗率の下限値は、特に限定されないが、例えば1×105Ωである。外面3における表面抵抗率は、1×1013Ω以上であることが好ましい。表面抵抗率は、JIS-K6911:2006に準じた方法により測定される値である。
【0055】
機能性微粒子が抗菌性微粒子である場合、回転成形体1の表面における抗菌性を示す抗菌活性値は、内面2において、2.0以上であることが好ましい。この場合、回転成形体1の内面における生菌数の増加をより抑制することができる。抗菌活性値は、2.5以上であることがより好ましく、3.0以上であることがさらに好ましく、4.0以上であることが特に好ましい。抗菌活性値の上限値は、特に限定されないが、例えば8.0である。外面3における抗菌活性値は、例えば1.0以上2.0未満である。抗菌活性値は、JIS-Z2801:2012に準じた方法により測定される値である。
【0056】
本実施形態の回転成形体は、前述の製造方法を用いることにより、機能性微粒子が内面側に偏在しており、機能性微粒子に由来する特性が外面よりも内面において高くなっている。
【実施例0057】
1.導電性微粒子含有容器の製造
[実施例1]
(ドライブレンド工程)
ポリエチレン粉体100質量部と、導電性微粒子であるカーボンブラック(東京インキ社製、品番PM-905H-BLK)0.2質量部とを、リボンミキサーを用いて混合することによりドライブレンドし、ドライブレンド混合物を得、成形材料Aとした。
【0058】
(回転成形工程)
ドライブレンド工程で得た成形材料Aを、回転成形機の金型内部に投入し、回転成形法によって成形することで、中空の円柱形状である肉厚4.5mmの容器を製造した。加熱設定温度は、250℃~300℃、加熱設定時間は15分とした。
【0059】
[比較例1]
ポリエチレンペレット100質量部と、カーボンブラック(東京インキ社製、品番PM-905H-BLK)0.2質量部とを混合してから、押出し機で混錬した後、微粉砕機で粉砕することにより、成形材料Bを得た。この成形材料Bを用い、実施例1と同様の回転成形条件で、同様の形状及び寸法の容器を製造した。
【0060】
(表面抵抗率の測定)
回転成形体の内面及び外面の導電性の評価として、内面及び外面それぞれの表面抵抗率を、JIS-K6911:2006(熱硬化性プラスチック一般試験方法)に準拠した方法により、試験電圧500V又は5V、充電時間1分の条件で測定した。測定結果を表1に示す。
【0061】
【0062】
表1の結果から、比較例の表面抵抗率は、内面と外面とで同程度であるのに対して、実施例の表面抵抗率は、内面に対し外面が108倍であり、本実施形態の回転成形体において、外面より内面が導電性が高くなっていることが示された。
【0063】
(回転成形体の構造解析)
実施例1で得られた回転成形体の内面及び外面を含む一部を切り取って作製したサンプルを、光学顕微鏡で倍率40倍で観察し、回転成形体の構造解析を行った。顕微鏡写真を
図3に示す。
図3のサンプルにおいて、右側の面が外面、左側の面が内面である。外面(右側)の表層において、ポリエチレン(無色)に対するカーボンブラック(黒色)の割合が小さいのに対し、内面(左側)の表層においては、ポリエチレンに対するカーボンブラックの割合が大きくなっている。これは、回転成形により製造したことに関係していると考えられる。また、ポリエチレンとカーボンブラックとは均一に混合されているのではなく、カーボンブラックはその多くが、ポリエチレンの粉体に起因する複数の領域の隙間に存在しており、回転成形体は、局所的にカーボンブラックの存在割合が大きい部分を含む構造を形成している。これは、ポリエチレンとカーボンブラックとのドライブレンド混合物により製造したことに関係していると考えられる。
【0064】
2.抗菌性微粒子含有容器の製造
[実施例2]
(ドライブレンド工程)
ポリエチレン粉体100質量部と、抗菌性微粒子である抗菌剤(富士ケミカル社製、品名バクテキラー、品番BM-102JG)0.5質量部とを共にタンブラーミキサーに入れ、混合することによりドライブレンドし、ドライブレンド混合物を得、成形材料Cとした。
【0065】
(回転成形工程)
ドライブレンド工程で得た成形材料Cを、回転成形機の金型内部に投入し、回転成形法によって成形することで、中空の角柱形状である肉厚3.0mmの容器を製造した。加熱設定温度は280℃、加熱設定時間は14分とした。
【0066】
[比較例2]
ポリエチレンペレット100質量部と、抗菌性微粒子である抗菌剤(富士ケミカル社製、品名バクテキラー、品番BM-102JG)0.5質量部とを混合してから、押出し機で混錬した後、微粉砕機で粉砕することにより、成形材料Eを得た。この成形材料Eを用い、実施例1と同様の回転成形条件で、同様の形状及び寸法の容器を製造した。
【0067】
(抗菌活性値の測定)
回転成形体の内面及び外面の抗菌性の評価として、内面及び外面それぞれの抗菌活性値を、JIS-Z2801:2012(抗菌加工製品-抗菌性試験方法・抗菌効果)に準拠した方法により、黄色ぶどう球菌について測定した。すなわち、試験片の表面に1/500普通ブイヨンで調製した菌液を滴下し、フィルムで密着させ35℃で保存し、その後、供試片上の菌液について生菌数を測定した。抗菌活性値は、下記式により求めた。
抗菌活性値=(無加工試験片における24時間後の生菌数の常用対数値)-(試験片における24時間後の生菌数の常用対数値)
【0068】
【0069】
表2の結果から、比較例の抗菌活性値は、内面と外面とで同程度であるのに対して、実施例の抗菌活性値は、外面に対し内面が1.0大きく、本実施形態の回転成形体において、外面より内面が抗菌性が高いことが示された。