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  • 特開-振動締固め機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034993
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】振動締固め機
(51)【国際特許分類】
   E01C 19/34 20060101AFI20220225BHJP
【FI】
E01C19/34 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020138987
(22)【出願日】2020-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000175386
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107375
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 明広
(72)【発明者】
【氏名】永澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】関口 誠也
【テーマコード(参考)】
2D052
【Fターム(参考)】
2D052AD13
2D052BC06
2D052BC12
2D052CA15
2D052DA31
(57)【要約】
【課題】比較的損傷を受けにくい位置において、制御スイッチボックスを安全に、かつ、安定的に防振支持することができる振動締固め機を提供する。
【解決手段】振動を発生させるための起振体3、及び、起振体3に回転駆動力を供給する原動機4が転圧板2の上に搭載され、原動機4の出力軸41、及び、起振体3の入力軸31が伝動装置5によって連結され、機体後部に操作ハンドル6が取り付けられ、原動機4を制御するための制御スイッチボックス7を固定するための手段として、ホルダーと防振パネル9とからなる固定手段を有し、ホルダーが、原動機4の側部に固定され、ホルダーと防振パネル9とが、防振部材を介して連結され、制御スイッチボックス7が、防振パネル9に固定されていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動を発生させるための起振体、及び、起振体に回転駆動力を供給する原動機が転圧板の上に搭載され、原動機の出力軸、及び、起振体の入力軸が、機体の側方へ向かって突出するように支持されるとともに、伝動装置によって連結され、機体後部に操作ハンドルが取り付けられた振動締固め機において、
原動機を制御するための制御スイッチボックスを固定するための手段として、連結用ボルト孔を三個以上有するホルダーと、連結用貫通孔を三個以上有する防振パネルとからなる固定手段を有し、
ホルダーが、原動機の側部に対して直接又は間接的に固定され、
ホルダーと防振パネルとが、ホルダーの各連結用ボルト孔と、防振パネルの各連結用貫通孔の位置において、防振部材を介して連結され、
制御スイッチボックスが、防振パネルに固定されていることを特徴とする振動締固め機。
【請求項2】
防振部材として、リング状の防振グロメットが、防振パネルの連結用貫通孔に装着されていることを特徴とする、請求項1に記載の振動締固め機。
【請求項3】
制御スイッチボックスが、機体の左右方向について、操作ハンドルの内側の位置に配置されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の振動締固め機。
【請求項4】
ホルダーの連結用ボルト孔の各中心点を含む仮想平面と直交し、かつ、防振パネルと制御スイッチボックスのユニットの重心を通る仮想直線が、ホルダーの連結用ボルト孔の各中心点を頂点とする多角形の内側の領域において、前記仮想平面と交差することとなる位置に、ホルダーの連結用ボルト孔が形成されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の振動締固め機。
【請求項5】
ホルダーが、原動機の側部のうち、出力軸が突出する部分の周辺部に対して固定されるとともに、出力軸と同方向へ所定の高さで突出するガードプレートを有し、
ガードプレートが、原動機の出力軸の外周側を取り囲むように配置されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の振動締固め機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面や地盤の締め固め作業に用いられる振動締固め機に関し、特に、転圧板の上に起振体と原動機が搭載され、起振体によって転圧板を振動させて路面等を締め固めることができる振動締固め機に関する。
【背景技術】
【0002】
路面や地盤の締め固めに使用されるプレートコンパクターやバイブロコンパクター(振動締固め機)は、基本的には、振動を発生させるための起振体と、この起振体に回転駆動力を供給する原動機(エンジン、電動モータ等)とが、転圧板の上に搭載され、原動機の出力軸と起振体の入力軸とがベルト伝動装置によって連結され、回転駆動力が伝達されるように構成されている。
【0003】
この種の振動締固め機においては、原動機を緊急停止させるためのスイッチや、原動機の動作状態を示すLEDランプ等を配置した制御スイッチボックスが、標準的に装備されている。そのような制御スイッチボックスは、一般的に、機体後部から後方側斜め上方へ向かって延在するように装着された操作ハンドルに固定されていることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-224551号公報
【特許文献2】実用新案登録第3216134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
操作ハンドルは、これを把持して操作するオペレーターに対して伝達される振動が可能な限り減衰されるように、機体後部のフレームに対して防振部材を介して接続されている。制御スイッチボックスについても、耐久性等の観点から、伝達される振動ができるだけ減衰されることが望ましいため、上述の通り、操作ハンドルに取り付けられることが多いが、この場合、原動機と制御スイッチボックスとを電気的に接続するコードを操作ハンドルに沿って配線する必要があるため、振動締固め機の作業時や運搬時において、外的要因によってコードが断線したり、制御スイッチボックス自体が損傷を受け易いという問題がある。
【0006】
本発明は、このような従来技術における問題を解決しようとするものであって、比較的損傷を受けにくい位置において、制御スイッチボックスを安全に、かつ、安定的に防振支持することができる振動締固め機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る振動締固め機は、振動を発生させるための起振体、及び、起振体に回転駆動力を供給する原動機が転圧板の上に搭載され、原動機の出力軸、及び、起振体の入力軸が、機体の側方へ向かって突出するように支持されるとともに、伝動装置によって連結され、機体後部に操作ハンドルが取り付けられ、原動機を制御するための制御スイッチボックスを固定するための手段として、連結用ボルト孔を三個以上有するホルダーと、連結用貫通孔を三個以上有する防振パネルとからなる固定手段を有し、ホルダーが、原動機の側部に対して直接又は間接的に固定され、ホルダーと防振パネルとが、ホルダーの各連結用ボルト孔と、防振パネルの各連結用貫通孔の位置において、防振部材を介して連結され、制御スイッチボックスが、防振パネルに固定されていることを特徴としている。
【0008】
尚、この振動締固め機においては、防振部材として、リング状の防振グロメットが、防振パネルの連結用貫通孔に装着されていることが好ましく、また、制御スイッチボックスが、機体の左右方向について、操作ハンドルの内側の位置に配置されていることが好ましい。
【0009】
更に、ホルダーの連結用ボルト孔の各中心点を含む仮想平面と直交し、かつ、防振パネルと制御スイッチボックスのユニットの重心を通る仮想直線が、ホルダーの連結用ボルト孔の各中心点を頂点とする多角形の内側の領域において、前記仮想平面と交差することとなる位置に、ホルダーの連結用ボルト孔が形成されていることが好ましく、また、ホルダーが、原動機の側部のうち、出力軸が突出する部分の周辺部に対して固定されるとともに、出力軸と同方向へ所定の高さで突出するガードプレートを有し、ガードプレートが、原動機の出力軸の外周側を取り囲むように配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る振動締固め機は、比較的損傷を受けにくい位置において、制御スイッチボックスを安全に、かつ、安定的に防振支持することができ、原動機の取扱性及び操作性の向上を期待することができ、また、制御スイッチボックスの耐久性及びメンテナンス性の向上を期待することができる。
【0011】
また、本発明において制御スイッチボックスの固定手段として使用されるホルダーを原動機の出力軸の周辺部に対して固定するとともに、ホルダーにおいて、出力軸と同方向へ突出するガードプレートを、出力軸の外周側を取り囲むように配置した場合には、ホルダーを、制御スイッチボックスを固定する機能と、出力軸を保護する機能を兼ね備えた要素として活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明に係る振動締固め機1の側面図である。
図2図2は、本発明に係る振動締固め機1の背面図である。
図3図3は、図1に示す制御スイッチボックス7の固定手段(ホルダー8、及び、防振パネル9)の側面図である。
図4図4は、図3に示すホルダー8と防振パネル9との連結構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に沿って本発明「振動締固め機」の実施形態について説明する。図1は、本発明に係る振動締固め機1(プレートコンパクター)の側面図、図2は、その背面図である。図1に示すように、この振動締固め機1は、転圧板2の上に、振動を発生させるための起振体3と、起振体3に回転駆動力を供給する原動機4(エンジン、電動モーター等)とが搭載されている。
【0014】
原動機4の出力軸41、及び、起振体3の入力軸31は、いずれも先端が機体の側方へ向かって突出するように支持されており、これらは伝動装置(本実施形態においては、ベルト伝動装置5)によって連結され、原動機4から起振体3へ回転駆動力が伝達される。ベルト伝動装置5は、出力軸41と入力軸31の先端にそれぞれ固定された一対のプーリ51,52と、これらの間に張設されたベルト53とによって構成されている。
【0015】
尚、ベルト伝動装置5(プーリ51,52、及び、ベルト53)は、保護カバーによって覆われて、外的要因(異物の侵入等)から保護される。より具体的には、保護カバーは、ベルト伝動装置5と原動機4(及び起振体3)との間に配置されるインナーカバー54、及び、それらの外側(原動機4等とは反対側)に配置されるアウターカバー(図示せず)によって構成され、全体が覆われるようになっている。
【0016】
機体後部には、操作用の操作ハンドル6が取り付けられている。この操作ハンドル6は、図2に示すように、逆U字型に形成されており、左右二つの下端部61が機体の後部フレームに対し、それぞれ防振部材65を介して枢着されている。
【0017】
機体側部には、制御スイッチボックス7が取り付けられている。この制御スイッチボックス7には、原動機4を制御するための各種の回路基板が収容されるとともに、図1に示すように、原動機4の緊急停止スイッチ71、及び、原動機4の動作状態を示すLEDランプ72等が上面に配置されている。従来の制御スイッチボックスの多くは、操作ハンドルに取り付けられていたが、本実施形態においては、出力軸41の近傍位置において、専用の固定手段によって原動機4の側部に固定されている。
【0018】
図3は、制御スイッチボックス7の固定手段の側面図である。この固定手段は、ホルダー8と、防振パネル9とによって構成されている。これらのうちホルダー8は、図3(1)に示すように、複数個(本実施形態においては三個)の連結用ボルト孔81が形成された上半部と、出力軸41を通過させるための大孔83、及び、固定用のネジ孔84が形成された下半部とからなり、ネジ孔84に挿通したネジ85を締め付けることによって、原動機4の側部(より詳細には、出力軸41が突出する部分の周辺部)に対して直接固定されている。尚、連結用ボルト孔81の裏側(原動機4側)には、ナット82が固定(溶着)されている。
【0019】
一方、防振パネル9には、図3(2)に示すように、複数個(ホルダー8の連結用ボルト孔81と同数)(本実施形態においては三個)の連結用貫通孔91と、制御スイッチボックス7を固定するためのネジ孔92とが形成されている。防振パネル9の連結用貫通孔91は、ホルダー8の連結用ボルト孔81に対応する位置に形成されており、ゴム製のリング状防振部材(防振グロメット93)がそれぞれ装着されている。防振パネル9は、連結用貫通孔91(防振グロメット93)及びホルダー8の連結用ボルト孔81に挿通したボルト94によって、ホルダー8に対して防振支持状態で連結されている。
【0020】
図4は、ホルダー8と防振パネル9との連結構造を示す断面図である。図4(1)に示すように、防振グロメット93を装着した防振パネル9の連結用貫通孔91と、ホルダー8の連結用ボルト孔81との位置を合わせて、防振グロメット93の中心の穴に挿通したボルト94を、ホルダー8の連結用ボルト孔81及びナット82に挿通して締め付けることにより、図4(2)に示すように、ホルダー8と防振パネル9とが、防振グロメット93を介して連結される。その結果、ホルダー8(即ち、原動機4側)から防振パネル9に伝達される振動が、防振グロメット93によって減衰される。
【0021】
制御スイッチボックス7は、筐体の外側から挿通したネジ(図示せず)を、防振パネル9のネジ孔92(図3(2)参照)に挿通して締め付けることにより、防振パネル9の外側に固定される(図1参照)。防振パネル9は、上述した通り、防振グロメット93を介してホルダー8に対して防振支持されているため、ホルダー8(原動機4側)から制御スイッチボックス7に伝達される振動を、好適に減衰することができる。
【0022】
また、制御スイッチボックス7は、図2に示すように、振動締固め機1の機体の左右方向について、操作ハンドル6の内側(左右のハンドルバー62,63の間)(左側のハンドルバー62と原動機4との間)の位置に配置されている。このため、振動締固め機1の作業時や運搬時において、外的要因によって制御スイッチボックス7が損傷を受ける蓋然性を可及的に低減することができる。
【0023】
更に、本実施形態においては、制御スイッチボックス7を安定的に防振支持できるように、ホルダー8の連結用ボルト孔81、及び、防振パネル9の連結用貫通孔91の形成位置が工夫されている。具体的には、防振パネル9と、防振パネル9に固定した制御スイッチボックス7とからなるユニット(防振パネル9と制御スイッチボックス7の組立体)の重心が、三個の連結用ボルト孔81(及び、三個の連結用貫通孔91)の内側に位置するように設計されている。
【0024】
より詳細には、図3に示すホルダー8の三個の連結用ボルト孔81(又は、防振パネル9の三個の連結用貫通孔91)の各中心点を含む仮想平面と直交し、かつ、防振パネル9と制御スイッチボックス7のユニットの重心を通る仮想直線が、三個の連結用ボルト孔81(又は、三個の連結用貫通孔91)の各中心点を頂点とする多角形(本実施形態においては三角形)の内側の領域(例えば、図3(1)及び図3(2)にそれぞれ示す点Cの位置)において、前記仮想平面と交差するように、制御スイッチボックス7及び防振パネル9が支持される三次元位置との関係において、ホルダー8の連結用ボルト孔81、及び、防振パネル9の連結用貫通孔91の形成位置が設計されている。その結果、制御スイッチボックス7を安定的に防振支持することができる。
【0025】
尚、本実施形態において、制御スイッチボックス7を支持するために原動機4に固定されるホルダー8(図3参照)は、ベルト伝動装置5(プーリ51,52、及び、ベルト53)、及び、出力軸41を保護する機能を兼ね備えている。より具体的には、プーリ51と原動機4の間に配置されるインナーカバー54には、出力軸41の先端にプーリ51を取り付けた状態でインナーカバー54の着脱が行えるように、プーリ51よりも大きな直径を有する開口部54a(図1参照)が形成されているため、この開口部54aから、カバー内部(インナーカバー54と図示しないアウターカバーの間の空間)への異物の侵入を許すと、プーリ51,52、及び、ベルト53等が損傷を受ける可能性がある。また、原動機4と保護カバー(インナーカバー54等)との間の領域において、出力軸41の近傍への異物の侵入を許すと、出力軸41が損傷を受ける可能性がある。
【0026】
本実施形態においては、ホルダー8の本体から出力軸41と同方向へ所定の高さで突出するガードプレート86が、ホルダー8において立設されている(図3(2)参照)。これらのガードプレート86は、原動機4の出力軸41の外周側を取り囲むように、かつ、インナーカバーの開口部54aの形成位置(図3(2)において二点鎖線で示す位置)に沿うように配置されており、保護カバー内部、及び、出力軸41近傍への異物等の侵入を防止できるようになっている。つまり、上述したように、ホルダー8は、保護カバー(インナーカバー54等)と協働してベルト伝動装置5(プーリ51,52、及び、ベルト53)を保護し、かつ、出力軸41を保護する機能を兼ね備えている。
【0027】
尚、上記実施形態においては、制御スイッチボックス7の緊急停止スイッチ71、及び、原動機4の動作状態を示すLEDランプ72等が、制御スイッチボックス7の上面に配置されているが、オペレーター側の側面(図2に示す後方側側面73)に配置することもできる。
【0028】
また、上記実施形態では、ホルダー8において連結用ボルト孔81が三個形成され、防振パネル9においても連結用貫通孔91が三つ形成されているが、これらはそれぞれ三個以上であればよく、例えば、四個ずつ、或いは、五個ずつ形成することもできる。更に、上記実施形態においては、ホルダー8が、原動機4の側部に対して直接固定されているが、中間に他の要素を介在させることにより、原動機4の側部に対して間接的に固定されるように構成してもよい。
【0029】
また、上記実施形態においては、防振グロメット93が、防振パネル9の連結用貫通孔91に装着されているが、ホルダー8の連結用ボルト孔81に装着するように構成することもでき、更に、防振グロメット以外の防振部材を、ホルダー8と防振パネル9との間(各連結用ボルト孔81と各連結用貫通孔91の位置)に介在させて、ホルダー8に対して防振パネル9が防振支持されるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0030】
1:振動締固め機、
2:転圧板、
3:起振体、
31:入力軸、
4:原動機、
41:出力軸、
5:ベルト伝動装置、
51,52:プーリ、
53:ベルト、
54:インナーカバー、
54a:開口部、
6:操作ハンドル、
61:下端部、
62,63:ハンドルバー、
65:防振部材、
7:制御スイッチボックス、
71:緊急停止スイッチ、
72:LEDランプ、
73:後方側側面、
8:ホルダー、
81:連結用ボルト孔、
82:ナット、
83:大孔、
84:ネジ孔、
85:ネジ、
86:ガードプレート、
9:防振パネル、
91:連結用貫通孔、
92:ネジ孔、
93:防振グロメット、
94:ボルト、
図1
図2
図3
図4