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特開2022-35032回折シートおよび製造方法、並びに3次元表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035032
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】回折シートおよび製造方法、並びに3次元表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/18 20060101AFI20220225BHJP
   G02B 30/56 20200101ALI20220225BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
G02B5/18
G02B30/56
G02B5/20 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020139079
(22)【出願日】2020-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 翼
(72)【発明者】
【氏名】高橋 進
(72)【発明者】
【氏名】本間 英明
【テーマコード(参考)】
2H148
2H199
2H249
【Fターム(参考)】
2H148BD24
2H148BG02
2H148BH25
2H199BA20
2H199BB22
2H199BB25
2H199BB52
2H199BB68
2H249AA03
2H249AA13
2H249AA39
2H249AA50
2H249AA60
2H249AA64
2H249AA65
2H249AA68
(57)【要約】
【課題】大面積であっても高精度に配列された回折パターンを実現する。
【解決手段】3次元表示装置51は、透明な基板上に第一配列パターンで配置された第一回折パターンと、第二配列パターンで配置された第二回折パターンとを含む回折層とを有する、対角10インチ以上の回折シート1と、複数の画素を有する液晶装置LCと、光源とを備える。回折シートの法線方向において、第一回折パターンおよび第二回折パターンと、画素とが重なって配置されており、かつそのずれ量は画素のピッチの1/10以下である。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な基板上に第一配列パターンで配置された第一回折パターンと、第二配列パターンで配置された第二回折パターンとを含む回折層とを有する、対角10インチ以上の回折シートと、
複数の画素を有する液晶装置、および2種類以上の色フィルタを有するカラーフィルターの何れかと、
光源と、
を備え、
前記回折シートの法線方向において、前記第一回折パターンおよび前記第二回折パターンと、前記画素又は前記色フィルタとが重なって配置されており、かつそのずれ量が前記画素又は前記色フィルタのピッチの1/10以下である、
3次元表示装置。
【請求項2】
前記回折シートは、前記光源と前記液晶装置または前記カラーフィルターとの間に配置されている、
請求項1に記載の3次元表示装置。
【請求項3】
前記液晶装置または前記カラーフィルターは、前記光源と前記回折シートとの間に配置されている、
請求項1に記載の3次元表示装置。
【請求項4】
前記回折層は、透明な粘着材料により前記液晶装置または前記カラーフィルターに接合されている、
請求項1に記載の3次元表示装置。
【請求項5】
気体層または真空層が前記回折層に隣接している、
請求項1に記載の3次元表示装置。
【請求項6】
対角10インチ以上の透明な基板上に、第一未硬化樹脂層を形成するステップAと、
第一版の一方の面に対角10インチ以上の矩形範囲にわたり形成された第一回折パターンを前記第一未硬化樹脂層に接触させるステップBと、
第一配列パターンに基づいて形成された複数の第一開口を有する第一マスクを前記第一版上に配置し、光を照射して前記第一未硬化樹脂層のうち前記第一開口と重なる部位を硬化させるステップCと、
前記基板上の第一未硬化樹脂層が形成された側に第二未硬化樹脂層を形成するステップDと、
第二版の一方の面に対角10インチ以上の矩形範囲にわたり形成された、前記第一回折パターンと異なる第二回折パターンを前記第二未硬化樹脂層に接触させるステップEと、
前記第一配列パターンと異なる第二配列パターンに基づいて形成された複数の第二開口を有する第二マスクを前記第二版上に配置し、光を照射して前記第二未硬化樹脂層のうち前記第二開口と重なる部位を硬化させるステップFと、
を備える、
回折シートの製造方法。
【請求項7】
前記第一未硬化樹脂層の硬化後の硬度が、室温において0.5MPa~100GPaである、
請求項6に記載の回折シートの製造方法。
【請求項8】
前記ステップDにおいて、前記第二未硬化樹脂層が前記第一未硬化樹脂層よりも厚く形成される、
請求項6に記載の回折シートの製造方法。
【請求項9】
前記第二未硬化樹脂層と前記第一未硬化樹脂層との厚みの差は、前記第二回折パターンの高さ以上である、
請求項8に記載の回折シートの製造方法。
【請求項10】
前記第一版および前記第二版の少なくとも一方は、前記一方の面に離型層を有する、
請求項6に記載の回折シートの製造方法。
【請求項11】
前記離型層は、熱硬化性樹脂、シリコーン、フッ素系樹脂、およびアルキル基を含む高分子のいずれかを主成分とする、
請求項10に記載の回折シートの製造方法。
【請求項12】
透明な基板と、
前記基板上に第一配列パターンで配置された第一回折パターンと、前記基板上であって前記第一回折パターンと同じ側に前記第一配列パターンと異なる第二配列パターンで配置された第二回折パターンと、を含む回折層と、
を備え、
前記第二回折パターンは前記第一回折パターンよりも厚い、
回折シート。
【請求項13】
前記第二回折パターンと前記第一回折パターンとの厚みの差は、前記第二回折パターンの表面凹凸の深さ以上である、
請求項12に記載の回折シート。
【請求項14】
前記第二回折パターンと前記第一回折パターンとの厚みの差は、100nm以上10μm以下である、
請求項12に記載の回折シート。
【請求項15】
前記第一回折パターンおよび前記第二回折パターンと前記基板との間に設けられ、複数の色フィルタを含むカラーフィルターをさらに備え、
平面視において、前記第一回折パターンおよび前記第二回折パターンと前記色フィルタとのずれが、前記色フィルタのピッチの1/10以下である、
請求項12に記載の回折シート。
【請求項16】
前記第一回折パターンおよび前記第二回折パターンは色材を含有し、
前記回折層がカラーフィルターとして機能する、
請求項12に記載の回折シート。
【請求項17】
前記第一回折パターンと前記第二回折パターンとの間に1μm以上100μm以下のギャップを有する、
請求項12に記載の回折シート。
【請求項18】
平面視形状が対角10インチ以上の矩形である、
請求項12に記載の回折シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回折シートおよびその製造方法に関する。この回折シートを備えた3次元表示装置についても言及する。
【背景技術】
【0002】
光の回折現象を用いて光の方向を制御し、3次元像(立体像)を表示する様々な技術が知られている。
特許文献1には、液晶パネル等の遮光手段と回折パターンとを重ねることで、像飛びなく自然に動く3次元像を表示することが記載されている。
【0003】
特許文献2や特許文献3には、回折格子やホログラムなどの回折素子を複数配置し、光源と回折格子セルとカラーフィルターとを組み合わせることで、自然な色彩の立体像を表示する表示体が記載されている。
このように、複数の回折素子が配置された回折パターンと、液晶やカラーフィルターのような配列されたパターンとを位置合わせしつつ組み合わせることで、3次元像を動かしたりフルカラー表示したりできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-287192号公報
【特許文献2】特開平8-211821号公報
【特許文献3】特開2017-219824号公報
【特許文献4】特開2003-316241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した技術を用いて、より大きな3次元像を表示したいというニーズが存在する。しかしながら、可視光を回折する回折パターンはサブミクロンオーダーの微細な構造であり、電子線描画装置やレーザー描画装置等を用いて作製されるため、現状では一度に形成できるサイズの上限は10インチ(長方形の対角線)以下となっている。
【0006】
大面積の回折パターンを作成する方法として、特許文献4には、複数の単位原版からなる多面原版を用いて作成する方法が記載されている。
【0007】
多面原版においては、複数の単位原版を整列配置する際の精度に限界があり、数十μmから数百μm程度のずれがどうしても生じてしまう。位置を変えながら単位原版の転写を複数回繰り返す場合も同様のずれが避けられない。
単に三次元像を表示するだけであればこのずれは許容できるが、3次元像を動かしたりフルカラー表示したりするためには、回折パターンと、カラーフィルターや液晶画素の配列パターンとを位置合わせする必要がある。良好な表示を行う観点からは、そのずれを配列ピッチの1/10以下程度に収める必要があるが、上述の状況より、特許文献4に記載の方法だけでは極めて困難であり、ほぼ不可能である。
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は、大面積であっても高精度に配列された回折パターンを実現できる回折シートを提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、動く3次元像やカラーの3次元像を表示できる大面積の3次元表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様は、透明な基板上に第一配列パターンで配置された第一回折パターンと、第二配列パターンで配置された第二回折パターンとを含む回折層とを有する、対角10インチ以上の回折シートと、複数の画素を有する液晶装置、および2種類以上の色フィルタを有するカラーフィルターの何れかとを備える3次元表示装置である。
この3次元表示装置においては、回折シートの法線方向において、第一回折パターンおよび第二回折パターンと、画素または色フィルタとが重なって配置されており、かつそのずれ量が画素又は色フィルタのピッチの1/10以下である。
【0010】
本発明の第二の態様は、回折シートの製造方法である。
この製造方法は、対角10インチ以上の透明な基板上に、第一未硬化樹脂層を形成するステップAと、第一版の一方の面に対角10インチ以上の矩形範囲にわたり形成された第一回折パターンを第一未硬化樹脂層に接触させるステップBと、第一配列パターンに基づいて形成された複数の第一開口を有する第一マスクを第一版上に配置し、光を照射して第一未硬化樹脂層のうち第一開口と重なる部位を硬化させるステップCと、基板上の第一未硬化樹脂層が形成された側に第二未硬化樹脂層を形成するステップDと、第二版の一方の面に対角10インチ以上の矩形範囲にわたり形成された、第一回折パターンと異なる第二回折パターンを第二未硬化樹脂層に接触させるステップEと、第一配列パターンと異なる第二配列パターンに基づいて形成された複数の第二開口を有する第二マスクを第二版上に配置し、光を照射して第二未硬化樹脂層のうち第二開口と重なる部位を硬化させるステップFとを備える。
【0011】
本発明の第三の態様は、透明な基板と、基板上に第一配列パターンで配置された第一回折パターンと、基板上であって第一回折パターンと同じ側に第一回折パターンと異なる第二配列パターンで配置された第二回折パターンとを含む回折層とを備え、第二回折パターンが第一回折パターンよりも厚い回折シートである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、大面積であっても高精度に配列された回折パターンを実現できる。
これにより、動く3次元像やカラーの3次元像を表示できる大面積の3次元表示装置の実現に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第一実施形態に係る回折シートの製造方法の一過程を示す図である。
図2】同製造方法の一過程を示す図である。
図3】同製造方法の一過程を示す図である。
図4】同製造方法の一過程を示す図である。
図5】同製造方法の一過程を示す図である。
図6】同製造方法の一過程を示す図である。
図7】同製造方法の一過程を示す図である。
図8】同製造方法の一過程を示す図である。
図9】同製造方法の一過程を示す図である。
図10】同製造方法の一過程を示す図である。
図11】同製造方法の一過程を示す図である。
図12】完成した同回折シートを示す図である。
図13】同回折シートの変形例を示す図である。
図14】同回折シートの変形例を示す図である。
図15】本発明の第二実施形態に係る回折シートを示す模式図である。
図16】本発明に係る三次元表示装置を示す模式図である。
図17】本発明に係る三次元表示装置の他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第一実施形態について、図1から図14を参照しながら説明する。
まず、本実施形態に係る回折シート1の製造方法について説明する。
ステップAとして、図1に示すように、透明な基板10上に、光硬化樹脂を層状に配置して未硬化樹脂層(第一未硬化樹脂層)20を形成する。基板10としては、ガラスや各種樹脂を使用できる。光硬化樹脂の典型例は紫外線硬化樹脂であるが、それ以外の材料も使用できる。
【0015】
ステップBとして、図2に示すように、第一版100を未硬化樹脂層20に接近させ、第一版100に形成された第一回折パターン100aを未硬化樹脂層20に接触させる。
第一版100は、対角10インチを超える大面積の透明版であり、特許文献4に記載された技術を用いて作製できる。例えば、対角10インチの単位原版を3×3で二次元マトリクス状に配列あるいは転写すると、対角30インチ程度の第一版100を作製できる。第一回折パターン100aは、第一版100の一方の面において、対角10インチ以上の矩形範囲に形成されており、作製しようとする回折シートとほぼ同様の寸法を有する。
【0016】
続くステップCにおいて、図3に示すように第一マスク110を第一版100上に配置し、未硬化樹脂層20を硬化させる光を照射する。
第一マスク110は、第一配列パターンに基づいて形成された複数の開口(第一開口)110aを有する。第一配列パターンは、例えばRGBカラーフィルターの赤フィルタの配列である。第一マスクは、カラーフィルターを形成するためのマスクと概ね同様であり、大面積のものも公知の方法で比較的簡便に作製できる。
ステップCにより、未硬化樹脂層20のうち、平面視において開口110aと重なり開口110a内に露出した部分のみが硬化する。第一版100および第一マスク110を移動させて硬化していない未硬化樹脂層を洗浄等により除去すると、図4に示すように、第一配列パターンにパターニングされた第一回折パターン21が基板10上に形成される。
なお、本明細書における開口は光が透過する部位を意味する。したがって、マスクに穴(空間)があることは必須ではない。
【0017】
続くステップDにおいて、基板10上の第一回折パターン21が形成された側に、光硬化樹脂を配置し、図5に示すように、未硬化樹脂層(第二未硬化樹脂層)20Aを形成する。この未硬化樹脂層20Aを構成する光硬化樹脂は、ステップAで用いたものと同一でもよいし、異なってもよい。未硬化樹脂層20Aは、第一回折パターン21の一部または全部を覆ってもよい。
【0018】
続くステップEとして、図6に示すように、第二版200を未硬化樹脂層20Aに接近させ、第二版200に形成された第二回折パターン200aを未硬化樹脂層20Aに接触させる。
第二版200は、第一版100と同様のサイズの透明な版である。第二回折パターン200aは、第一回折パターン100aと異なる回折パターンであり、第二版200の一方の面において、対角10インチ以上の矩形範囲に形成されている。
【0019】
続くステップFにおいて、図7に示すように第二マスク210を第二版200上に配置し、未硬化樹脂層20Aを硬化させる光を照射する。
第二マスク210は、第一配列パターンと異なる第二配列パターンに基づいて形成された複数の開口(第二開口)210aを有する。第二配列パターンは、例えばRGBカラーフィルターの緑フィルタの配列である。
ステップFにより、未硬化樹脂層20Aのうち、平面視において開口210aと重なり開口210a内に露出した部分のみが硬化する。第二版200および第二マスク210を移動させて硬化していない未硬化樹脂層を洗浄等により除去すると、図8に示すように、第二配列パターンにパターニングされた第二回折パターン22が基板10上に形成される。このとき、第一回折パターン21の一部または全部を覆っていた未硬化樹脂も除去される。
【0020】
続くステップGにおいて、基板10上の第二回折パターン22が形成された側に、光硬化樹脂を配置し、図9に示すように、未硬化樹脂層(第三未硬化樹脂層)20Bを形成する。未硬化樹脂層20Bを構成する光硬化樹脂は、ステップAおよびDで用いたもののいずれかと同一でもよいし、いずれとも異なってもよい。未硬化樹脂層20Bは、第一回折パターン21および第二回折パターン22の一部または全部を覆ってもよい。
【0021】
続くステップHとして、図10に示すように、第三版300を未硬化樹脂層20Bに接近させ、第三版300に形成された第三回折パターン300aを未硬化樹脂層20Bに接触させる。
第三版300は、第一版100および第二版200と同様のサイズの透明な版である。第三回折パターン300aは、第一回折パターン100aおよび第二回折パターン200aのいずれとも異なる回折パターンであり、第三版300の一方の面において、対角10インチ以上の矩形範囲に形成されている。
【0022】
続くステップIにおいて、図11に示すように第三マスク310を第三版300上に配置し、未硬化樹脂層20Bを硬化させる光を照射する。
第三マスク310は、第一配列パターンおよび第二配列パターンのいずれとも異なる第三配列パターンに基づいて形成された複数の開口(第三開口)310aを有する。第三配列パターンは、例えばRGBカラーフィルターの青フィルタの配列である。
ステップIにより、未硬化樹脂層20Bのうち、平面視において開口310aと重なり開口310a内に露出した部分のみが硬化する。第三版300および第三マスク310を移動させて硬化していない未硬化樹脂層を洗浄等により除去すると、図12に示すように、第三配列パターンにパターニングされた第三回折パターン23が基板10上に形成される。
【0023】
以上の工程を経て、本実施形態の回折シート1が製造される。回折シート1は、図12に示すように、基板10上に、第一回折パターン21、第二回折パターン22、および第三回折パターン23を含む回折層30を備えて構成されている。
第一回折パターン21、第二回折パターン22、および第三回折パターン23は、回折シート1の平面視において、それぞれ第一配列パターン、第二配列パターン、および第三配列パターンに基づいて精度良く配置されている。したがって、第一配列パターン、第二配列パターン、および第三配列パターンに基づいて三色の色フィルタが配置されたカラーフィルターや、開口110a、開口210a、および開口310aと同一サイズの画素が配列された、液晶層と駆動基板とを有する液晶装置に、位置合わせしつつ取り付けることにより、回折シート1の法線方向において各回折パターン21、22、23を色フィルタや画素と重ね合わせ、かつそのずれ量を色フィルタや画素のピッチの1/10以下に抑えることができる。
【0024】
本実施形態に係る回折シートの製造方法によれば、ステップB、E、Hで用いる各版においては、パターニングされていない全面回折パターンを用い、ステップC、F、Iにおけるマスクを用いた光照射により、未硬化樹脂層をパターニングしつつ硬化させる。
これにより、対角10インチ以上の大面積であっても、高いパターニング精度を実現しつつ複数の回折パターンを含む回折層30を形成できる。
【0025】
本実施形態では、版とマスクとを用いた回折パターンの形成を3セット行う例を説明したが、これは一例に過ぎない。回折パターンの形成回数は、2以上の所望の回数とできる。例えば、再生される3次元像が少しずつ異なる複数のパターンを形成し、液晶装置に取り付けて表示装置を構成することにより、動く三次元像を表示することが可能になる。
【0026】
図13に示す変形例の回折シート1Aは、基板10と回折層30との間に複数種類の色フィルタを含むカラーフィルター40を備えている。
回折シート1Aの製造時は、カラーフィルターの各色フィルタを形成する際のマスクを、そのまま第一マスク110、第二マスク210、および第三マスク310として使用できるため、各回折パターンと対応する色フィルタとのずれ量を色フィルタのピッチの1/10以下に抑えつつ、簡便に製造できる。
【0027】
図14に示す変形例の回折シート1Bは、回折層に代えて回折層40Aを備えている。回折層40Aは、赤色の色材を含有する第一回折パターン41と、緑色の色材を含有する第二回折パターン42と、青色の色材を含有する第三回折パターン43とを有する。すなわち、回折層40Aは、カラーフィルターとしても機能する。
回折シート1Bは、未硬化樹脂層の材料に対応する色材を混合するだけで、上述と同様の手順により作製できる。回折シート1Bにおいては、カラーフィルターと回折パターンとのずれが全く生じないという利点がある。
【0028】
本発明の第二実施形態について、図15から図17を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0029】
図15は、本実施形態に係る回折シート2を示す模式図である。回折シート2は、回折層30に代えて回折層30Aを備えている。
回折層30Aを構成する3つの回折パターンのうち、第一回折パターン21は、第一実施形態と同一である。第二回折パターン22Aは、パターン自体は第二回折パターン22と同一であるものの、第二回折パターン22より厚く形成されている。第三回折パターン23Aは、パターン自体は第三回折パターン23と同一であり、第二回折パターン22Aよりもさらに厚く形成されている。
【0030】
回折シート2は、概ね第一実施形態と同様の手順で製造できる。第一実施形態からの変更点は、以下の通りである。
・ステップEにおいて、未硬化樹脂層20Aを未硬化樹脂層20よりも厚く形成する。
・ステップFにおいて、第二版200は第一版100よりも高い位置で停止される。
・ステップGにおいて、未硬化樹脂層20Bを未硬化樹脂層20Aよりも厚く形成する。
・ステップHにおいて、第三版300は第二版200よりも高い位置で停止される。
回折層における回折パターンの種類が増える場合は、同様に、新しく形成する未硬化樹脂層を、直前に形成した未硬化樹脂層よりも厚く形成すればよい。
【0031】
本実施形態に係る回折シートおよびその製造方法は、第一実施形態と同様の効果を奏する。
さらに、後に形成される回折パターンが、より厚く形成されるため、版が既に形成された回折パターンと接触しにくい。その結果、形成済みの回折パターンの変形や損傷等を好適に抑制できる。
【0032】
本実施形態において、回折パターン間の段差の寸法は適宜設定でき、例えば100nm以上10μm以下とできる。段差が大きすぎると、隣接する色フィルタや画素に入射して迷光となる漏れ光が増加する点に注意する。
回折パターンの平均ピッチをd、光の波長をλ、回折角θとすると、以下の式1が成り立つ。
Sin(θ)=λ/d …(1)
このとき、回折シート1の平面視における漏れ光の幅wは、以下の式2により算出できる。wの値を色フィルタや画素のピッチの1/10以下に抑えることにより、迷光の影響を問題ない程度に小さくできる。
w=h×tan(θ) …(2)
【0033】
他の観点として、段差の寸法は、後から形成される回折パターンの高さ、すなわち表面凹凸の深さ以上であることが好ましく、表面凹凸の深さの1.5倍以上であることが好ましい。このようにすると、より厚い未硬化樹脂層に版を接触させる際に、版が既に形成された回折パターンに接触しにくく、形成済みの回折パターンが好適に保持される。
【0034】
本発明に係る回折シートを適用した3次元表示装置について説明する。図16は、液晶装置LCの入射側に回折シート1を配置した3次元表示装置51の模式図である。回折層30から射出する光は不図示の光源から回折シート1に入射した光よりも回折シート1に対して垂直に近い角度を有するため、回折シート1の回折パターンと液晶装置LCの画素とを適切にアライメントすることにより、液晶装置LCや液晶装置にLCに取り付けられたカラーフィルターに対して精度よく光を導ける。
【0035】
図17は、液晶装置LCの出射側に回折シート1を配置した3次元表示装置52の模式図である。液晶装置LCに入射する光は、回折シート1を通ることにより指向性の強い光となるため、高いコントラストや優れた発色の表示をすることが可能になる。
3次元表示装置51、52のいずれの場合においても、回折シートと液晶装置やカラーフィルターとの距離が500μm以下であると、両者の間で生じる光線のずれを抑制できるため好ましい。回折シートと液晶装置等は、密着して(すなわち距離ゼロ)配置されてもよい。この場合、回折の効果を十分に発揮させる観点からは、回折パターンと液晶装置との間にわずかに空気層もしくは真空層が存在してもよい。
回折シートと液晶装置等を接着剤または粘着剤を介して密着させる場合は、回折パターンの樹脂の屈折率と、接着剤または粘着剤の屈折率とを異ならせる必要がある。
【0036】
以上、本発明の各実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせなども含まれる。以下にいくつか変更を例示するが、これらはすべてではなく、それ以外の変更も可能である。これらの変更が2以上適宜組み合わされてもよい。
【0037】
・回折パターンの弾性率を適切に設定することにより、回折パターン間に段差を設けない場合も、形成済みの回折パターンが版により破損することや、新たに形成する回折パターンにおいて圧力ムラにより転写不良が生じることを抑制できる。このような観点からは、形成された(すなわち硬化後の)回折パターンの弾性率(硬度)が、室温で0.5MPa~100GPaであることが好ましく、2500MPa~13GPaであることがより好ましい。
【0038】
・製造方法において使用する各版の回折パターン表面に離型層を設けてもよい。このようにすると、ステップC、F、I等において、未硬化樹脂層の硬化後に版を容易に剥離でき、回折パターンを好適に形成できる。
離形層の材料としては、シリコーン、フッ素系樹脂、アルキル基を有する高分子等の、滑りをよくするものや、加熱により脆くなる熱硬化性樹脂等を例示できる。
後者の場合は、光照射により未硬化樹脂層の硬化した後に版を加熱して離型層を硬化する。その後、版を移動させると、脆くなった離型層が版から剥離して回折パターン上に残留することにより、版が容易に回折パターンから剥離される。その後、剥離した離型層を洗浄等により回折パターン上から除去する。回折シートの製造後、次回の製造に備えて版に新しい離型層を配置しておく。加熱して版から剥離させる離型層の厚みは、例えば10nm以上1μm以下とできる。
【0039】
・回折パターン上に回折パターンを形成する樹脂と屈折率が異なる透明材料を配置することにより、回折層の表面を平坦にしてもよい。透明材料として粘着性の樹脂材料を使用することにより、回折層を直接液晶装置やカラーフィルター等に接合できる。
回折パターンは、空気等の気体層または真空層と隣接させることにより、入射した光を好適に回折させることができる。
【0040】
・未硬化樹脂層は、熱硬化性樹脂で形成されてもよい。この場合は、配列パターンに対応する領域のみを加熱することにより、各回折パターンを形成できる。この場合、版は透明でなくてもよいため、ニッケル等の金属で形成することにより、耐久性を向上できる。
【0041】
・本発明の回折シートにおいて、複数の回折パターンは、隙間なく配置されてもよいし、一定幅の隙間(ギャップ)を空けて配置されてもよい。ギャップの幅が液晶画素における隔壁や、カラーフィルターに形成されたブラックマトリクスの平面視における幅以下であれば、表示品質に及ぼす影響を最小限とできる。隔壁やブラックマトリクスの一般的な寸法に鑑みると、ギャップの幅は1μm~100μm程度が好ましく、5μm~40μm程度がさらに好ましい。
【符号の説明】
【0042】
1、1A、1B、2 回折シート
10 基板
20 未硬化樹脂層(第一未硬化樹脂層)
20A 未硬化樹脂層(第二未硬化樹脂層)
20B 未硬化樹脂層(第三未硬化樹脂層)
21、41 第一回折パターン
22、22A、42 第二回折パターン
30、40A 回折層
40 カラーフィルター
51、52 3次元表示装置
100 第一版
100a 第一回折パターン
110 第一マスク
110a 開口(第一開口)
200 第二版
200a 第二回折パターン
210 第二マスク
210a 開口(第二開口)
LC 液晶装置
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
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図16
図17