IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニチカ株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035045
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】易接着フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/34 20060101AFI20220225BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220225BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20220225BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20220225BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220225BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20220225BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
B32B27/34
B32B27/30 A
B32B27/40
C09D7/65
C09D7/61
C09D175/04
C09D201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020139104
(22)【出願日】2020-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高橋 菜保
(72)【発明者】
【氏名】奥村 暢康
(72)【発明者】
【氏名】芦原 公美
【テーマコード(参考)】
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AA20B
4F100AB21C
4F100AB22C
4F100AK01B
4F100AK25B
4F100AK46A
4F100AK47A
4F100AK51B
4F100AR00C
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CA02B
4F100DD08B
4F100DE01B
4F100EH46B
4F100EJ37
4F100EJ38
4F100GB41
4F100JG01C
4F100JK04
4F100JK17
4F100JL11B
4F100JM01B
4J038CG001
4J038CG141
4J038DD001
4J038DG001
4J038DH001
4J038HA446
4J038KA03
4J038KA08
4J038KA09
4J038NA12
4J038PB09
4J038PC02
4J038PC08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】画像表示装置や有機薄膜太陽電池などの基材として好適に使用することができ、耐屈曲性に優れ、透明性を損なうことなく耐ブロッキング性を有する易接着フィルム、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基材フィルムの少なくとも片面に易接着層を有する易接着フィルムであって、基材フィルムが半芳香族ポリアミド樹脂からなり、かつ、易接着層が樹脂成分と、有機系及び/または無機系微粒子とを含有し、最大高さ(Sz)が、1μm以下であることを特徴とする易接着フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも片面に易接着層を有する易接着フィルムであって、基材フィルムが半芳香族ポリアミド樹脂からなり、かつ、易接着層が樹脂成分と微粒子とを含有し、易接着層面の最大高さ(Sz)が1μm以下である易接着フィルム。
【請求項2】
易接着層に含有される微粒子が、シリカ系微粒子またはアクリル系微粒子である、請求項1に記載の易接着フィルム。
【請求項3】
易接着層に含有される樹脂成分が、ウレタン樹脂である、請求項1~2のいずれかに記載の易接着フィルム。
【請求項4】
ヘイズが8%以下である、請求項1~3のいずれかに記載の易接着フィルム。
【請求項5】
半芳香族ポリアミド樹脂からなる基材フィルムの少なくとも片面に、樹脂成分と微粒子とを含有する液状物を塗布し、延伸する工程を含む、請求項1~4のいずれかに記載の易接着フィルムの製造方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載の易接着フィルムの易接着層面に、機能層が積層された積層体。
【請求項7】
機能層が、導電層である請求項6記載の積層体。
【請求項8】
導電層が、インジウム-スズ複合酸化物またはアンチモン-スズ複合酸化物からなる、請求項7に記載の積層体。
【請求項9】
請求項6~8のいずれかに記載の積層体を用いた画像表示装置または有機薄膜太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易接着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELなどのディスプレイパネル用の電極シートや、ディスプレイ表面のタッチパネルシート、有機太陽電池用基板などの基材には、導電性フィルムが用いられている。
【0003】
導電性フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチックフィルム基材に、インジウム-スズ酸化物(ITO)等の導電層を設けたものが知られている。
【0004】
プラスチックフィルム基材に導電層等の各種機能層を形成する場合には、機能層のプラスチックフィルム基材への接着性を高める目的で、この基材表面に易接着層(プライマー層ともいう。)と呼ばれる薄膜層が設けられる。
【0005】
また、プラスチックフィルム基材には、半芳香族ポリアミド樹脂フィルムのような、より耐熱性、耐久性の高いフィルムが提案されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2018/052104号公報
【特許文献2】特開2019-51644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2で示されたフィルムは、耐熱性樹脂フィルムの表面に、機能層を積層することを目的として樹脂層を設けたものであるが、樹脂層の表面を、機能層の形成に適した粗さとすることについては何ら開示されていない。
【0008】
本発明は、耐屈曲性に優れるとともに、平滑性、耐ブロッキング性を有し、導電層をはじめとする各種機能層を形成するための基材として適した易接着フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、半芳香族ポリアミド樹脂からなる基材フィルムの少なくとも片面に、表面の最大高さ(Sz)が1μm以下である易接着層を設けた易接着フィルムが、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち本発明の要旨は下記の通りである。
(1)基材フィルムの少なくとも片面に易接着層を有する易接着フィルムであって、基材フィルムが半芳香族ポリアミド樹脂からなり、かつ、易接着層が樹脂成分と微粒子とを含有し、易接着層面の最大高さ(Sz)が1μm以下である易接着フィルム。
(2)易接着層に含有される微粒子が、シリカ系微粒子またはアクリル系微粒子である、(1)に記載の易接着フィルム。
(3)易接着層に含有される樹脂成分が、ウレタン樹脂である、(1)~(2)のいずれかに記載の易接着フィルム。
(4)ヘイズが8%以下である、(1)~(3)のいずれかに記載の易接着フィルム。
(5)半芳香族ポリアミド樹脂からなる基材フィルムの少なくとも片面に、樹脂成分と微粒子とを含有する液状物を塗布し、延伸する工程を含む、(1)~(4)のいずれかに記載の易接着フィルムの製造方法。
(6)(1)~(4)のいずれかに記載の易接着フィルムの易接着層面に、機能層が積層された積層体。
(7)機能層が、導電層である(6)記載の積層体。
(8)導電層が、インジウム-スズ複合酸化物またはアンチモン-スズ複合酸化物からなる、(7)に記載の積層体。
(9)(6)~(8)のいずれかに記載の積層体を用いた画像表示装置または有機薄膜太陽電池。
【発明の効果】
【0011】
本発明の易接着フィルムは、耐屈曲性に優れ、透明性を損なうことなく耐ブロッキング性を有するとともに、導電層のような機能層を積層する際の密着性に優れる。本発明の易接着フィルムは、画像表示装置や有機薄膜太陽電池などの基材として好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<基材フィルム>
本発明の易接着フィルムを構成する基材フィルムは、半芳香族ポリアミド樹脂からなる。半芳香族ポリアミド樹脂を基材フィルムに使用することにより、成形加工しやすく、長期での反復折り曲げ耐性や耐衝撃性に優れる易接着フィルムを得ることができる。
本発明において、半芳香族ポリアミド樹脂とは、ジカルボン酸成分とジアミン成分とから構成され、ジカルボン酸成分またはジアミン成分中に芳香族成分を有するものである。
【0013】
半芳香族ポリアミド樹脂を構成するジカルボン酸成分は、テレフタル酸を主成分とすることが好ましく、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸や、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,3-ナフタレンジカルボン酸、1,2-ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸が挙げられる。ジカルボン酸成分中のテレフタル酸の割合は、60~100モル%であることが好ましい。
【0014】
半芳香族ポリアミド樹脂を構成するジアミン成分は、炭素数が4~15である脂肪族ジアミンを主成分とすることが好ましい。炭素数が4~15である脂肪族ジアミンとしては、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、4-メチル-1,8-オクタンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,14-テトラデカンジアミン、1,15-ペンタデカンジアミン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0015】
半芳香族ポリアミド樹脂としては、テレフタル酸のみからなる(テレフタル酸100モル%である)ジカルボン酸成分と、1,9―ノナンジアミンと2-メチル-1,8-オクタンジアミンとを合計でジアミン成分中に60~100モル%含有するジアミン成分とからなる半芳香族ポリアミド樹脂や、テレフタル酸のみからなる(テレフタル酸100モル%である)ジカルボン酸成分と、1,10-デカンジアミンを含有するジアミン成分とからなる半芳香族ポリアミド樹脂が好ましい。
【0016】
半芳香族ポリアミド樹脂には、本発明の目的を損なわない範囲で、ε-カプロラクタム、ζ-エナントラクタム、η-カプリルラクタム、ω-ラウロラクタム等のラクタム類が共重合されていてもよい。
【0017】
半芳香族ポリアミド樹脂は、公知の任意の方法を用いて、製造することができる。例えば、酸クロライド成分とジアミン成分とを原料とする溶液重合法または界面重合法が挙げられる。あるいは、ジカルボン酸成分とジアミン成分とを原料としてプレポリマーを作製し、該プレポリマーを溶融重合または固相重合により高分子量化する方法が挙げられる。
【0018】
半芳香族ポリアミド樹脂の製造においては、ジアミン成分、ジカルボン酸成分とともに、熱分解抑制や分子量増加抑制の観点から、末端封止剤を用いてもよい。末端封止剤は、特に限定されず、モノカルボン酸、モノアミン、酸無水物、モノイソシアネート、モノハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコール類が挙げられる。
【0019】
半芳香族ポリアミド樹脂として、市販品を好適に使用することができる。例えば、クラレ社製の「ジェネスタ(登録商標)」、ユニチカ社製「ゼコット(登録商標)」、三菱エンジニアリングプラスチック社製「レニー(登録商標)」、三井化学社製「アーレン(登録商標)」、BASF社製「ウルトラミッド(登録商標)」などが挙げられる。
【0020】
基材フィルムには、本発明の効果を損なわなければ、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、帯電防止剤、可塑剤、有機または無機の粒子、充填剤、架橋剤などの公知の添加剤が含まれてもよい。なお、フィルムには、生産時および使用時における滑り性や耐ブロッキング性を向上させて、フィルムに擦り傷が発生することを防ぐ目的で粒子が添加されることが一般的である。本発明においては、基材フィルムへの粒子の添加は全光線透過率の低下やヘイズの上昇といった透明性に関する特性を低下させる場合があるだけでなく、粒子が基材フィルムの表面に存在することにより、易接着層を形成した場合に易接着層の表面粗さに影響を及ぼすので、基材フィルムに粒子を添加する場合は、極力粒子径が小さいものを用いて、添加量を少なくすることが好ましく、実質的に添加しないことが好ましい。
【0021】
基材フィルムは、異種または同種の樹脂からなる2層以上の積層構造を有する複合フィルムであってもよい。このとき、例えば、3層以上の層構成とし、内層に粒子を含有させず、表層に粒子をごく少量含有させた複合フィルムとすることもできる。
【0022】
基材フィルムの表面には、易接着層との密着性などを考慮して、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、薬品処理、溶剤処理などが施されていてもよい。
【0023】
基材フィルムの厚みは、0.5~300μmであることが好ましく、15~100μmであることがより好ましく、25~75μmであることがさらに好ましく、25~50μmであることが特に好ましい。厚みが0.5μm未満であると、製造が困難であるだけでなく、コシが弱くなるため、取り扱いが困難となることがある。一方、厚みが300μmを超えると、折り曲げ可能なディスプレイ等で使用した場合にコシが強くなりすぎることがある。
【0024】
<易接着層>
本発明の易接着フィルムは、基材フィルムの少なくとも片面に、樹脂成分と微粒子を含有する易接着層が形成されたものである。
【0025】
(微粒子)
微粒子は、易接着層表面の最大高さ(Sz)を調整するために添加される。易接着層表面の最大高さ(Sz)を1μm以下とすることで、表面の平滑性を大きく損なわずに、ブロッキング抑制や工程中のロール等への接触による擦り傷発生を抑制することができるとともに、この易接着層上に導電層を積層する際の密着性が高まり、導電層の十分な導電性が得られ、デバイス内における電極間の短絡によるデバイス特性の不良の発生、およびデバイス寿命等の低下を抑制することができる。
【0026】
易接着層に含有される微粒子としては、特に限定されず、有機系および/または無機系微粒子を挙げることができる。
有機系微粒子を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、シリコーン樹脂、ナイロン、アクリル系樹脂、ポリアクリロニトリル、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、スチレンジビニルベンゼン共重合体、アクリルジビニルベンゼン共重合体等が挙げられ、アクリル系樹脂からなる微粒子(アクリル系微粒子)が、透明性や基材との密着性、表面粗さの調整のための粒子径の制御のしやすさなどの観点から好ましい。アクリル系微粒子としては、綜研化学社製のMX-80H3wTやMPシリーズ(MP-1451、MP-2200、MP-1000)、日本ペイントのファインスフェアシリーズ(MG-155、MG-651)、日本触媒社製のエポスターMXシリーズ(MX020W、MX030W、MX050W、MX100W、MX200W)やIXシリーズ(IX-3-BR-W-A-01-02、IX-3-BR-W-A-01-05)などが挙げられる。
無機系粒子としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタン、スズ、亜鉛、ニオブ、ネオジム、ランタン、セリウム、マグネシウムなどからなる粒子を用いることが好ましく、透明性や基材との密着性、表面粗さの調整のための粒子径の制御のしやすさなどの観点からシリカ、コロイダルシリカを用いることが好ましい。
これらの微粒子は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
シリカ粒子としては、特に限定されないが、日本触媒社製のシーホスターシリーズ(KE-S100、KE-W10、KE-W30、KE-W50、KE-S30、KE-S50)や、日産化学社製のスノーテックスシリーズ(MP-1040、MP-2040、MP-4540)、扶桑化学社製のPLシリーズ(PL-1、PL-3、PL-5、PH-7、PL-10H)、日揮触媒化成社製のカタロイドシリーズ(SI-550、SI-30、SI-40、SI-50、SI-45P、SI-80P、SI-120、SI-140、SI-300、SA)などが挙げられる。
【0028】
微粒子の平均粒子径は、耐ブロッキング性、透明性に加え、易接着層面に機能層を積層した場合にも平滑性を損なわないなどの観点から、0.001~1μmであることが好ましく、0.01~0.8μmであることがより好ましく、0.05~0.5μmであることがさらに好ましい。平均粒子径が0.001μm未満の場合、微粒子の凝集により、易接着フィルムの透明性が低下する場合がある。平均粒子径が1μmを超えると、易接着フィルムの最大高さが1μmを超え、易接着層上に積層する機能層の性能が十分に得られない場合があるだけでなく、十分な滑り性や耐ブロッキング性を得ることが難しい。
【0029】
微粒子の添加量は、密着性や透明性などの観点から、易接着層に占める割合が0.01~50質量%であることが好ましく、0.05~40質量%であることがより好ましく、0.1~30質量%であることがさらに好ましい。透明性と耐ブロッキング性とのバランスの観点から、8~25質量%とすることが特に好ましい。添加量が0.01質量%未満の場合、易接着フィルムの透明性は十分に得られるが、表面の耐ブロッキング性を得ることが難しい。添加量が50質量%を超えると、易接着層中の微粒子による光の散乱のため、透明性が低下するだけでなく、十分な平滑性を得られない場合がある。
【0030】
易接着層は、基材フィルムとの密着性および導電層などの各種機能層との密着性の観点から、樹脂成分を含む。易接着層に含まれる樹脂成分は、特に限定されないが、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、中でも基材との密着性及び機能層との密着性の観点からウレタン樹脂であることが好ましい。
【0031】
(ポリウレタン樹脂)
易接着層に含有されるウレタン樹脂としては、特に限定されず、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂等の各種ウレタン樹脂を挙げることができ、基材フィルムと機能層との密着性の向上や水への分散性向上の観点から、スルホ基を有する化合物やカルボキシル基を有する化合物が共重合されていてもよい。易接着層を形成するために、ウレタン樹脂の水分散体を使用することができる。市販のウレタン樹脂水性分散体としては、例えば、DIC社製ハイドランシリーズ、第一工業製薬社製スーパーフレックスシリーズ、三井化学社製タケラックシリーズ、アデカ社製アデカボンタイターシリーズ、三洋化成工業社製ユーコートなどが挙げられる。
【0032】
(ポリアミド樹脂)
易接着層に含有されるポリアミド樹脂は、特に限定はされず、脂肪族ポリアミド、脂環族ポリアミド、芳香族ポリアミド等を用いることができる。芳香族ポリアミドは、半芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミド(アラミド)を含む。なお、基材として用いる半芳香族ポリアミドとの接着性向上の観点から、易接着層として同種の半芳香族ポリアミドを用いることもできる。これらポリアミド系樹脂の中でも、耐熱性と接着性とのバランスが優れる観点から、ダイマー酸系ポリアミドが好ましい。また、易接着層を形成するために、ポリアミド樹脂の水分散体を使用することができる。市販のポリアミド樹脂水性分散体としては、例えば、セポルジョンPA-150、PA―200(住友精化社製)が挙げられる。
【0033】
(ポリエステル樹脂)
易接着層を構成するポリエステル樹脂は、特に限定はされないが、多塩基酸成分と多価アルコール成分とから構成され、公知の重合方法にて製造されるものが挙げられ、1種類のみを使用しても2種類以上を併用してもよい。また、易接着層を形成するために、ポリエステル樹脂の水分散体を使用することができる。市販のポリエステル樹脂水性分散体としては、例えば、エリーテルKA-5034、KZA-0134、KZA-3556(いずれもユニチカ社製)、プラスコートZ-730、RZ-142(いずれも互応化学工業社製)などを挙げることができる。
【0034】
(アクリル樹脂)
易接着層に用いられるアクリル樹脂は、特に限定はされないが、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート等を主成分とし、スチレン、メチルメタアクリレート、アクリロニトリル等のビニル化合物及び官能基モノマーとして、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸、アクリルアミド、メチロールアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレート等を共重合したものである。易接着層を形成するためには、アクリル樹脂の水性分散体を用いることができる。市販のアクリル樹脂水性分散体としては、ニカゾールシリーズ(日本カーバイド社製)、ナノクリルシリーズ、リオクリルシリーズ(いずれもトーヨーケム社製)、ウルトラゾールシリーズ(アイカ工業社製)、ボンコートシリーズ(DIC社製)などが挙げられる。
【0035】
(添加剤)
本発明において、易接着層は、本発明の効果を阻害しない範囲内で各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、架橋剤、充填剤、帯電防止剤、核剤などを含有してもよい。中でも、基材フィルムとの密着性向上、耐湿熱性、耐溶剤性などの観点から、架橋剤を含有していることが好ましい。
【0036】
架橋剤としては、例えば、ヒドラジド化合物、イソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物や、自己架橋性を有するものや多価の配位座を有するものが挙げられ、これらの化合物を単独でまたは混合して用いてもよい。
【0037】
本発明では、市販の架橋剤を用いてもよい。ヒドラジド化合物として、大塚化学社製APAシリーズ(APA-M950、APAM980、APA-P250、APA-P280など)などが使用できる。イソシアネート化合物として、BASF社製のバソナート(BASONAT)PLR8878、バソナートHW-100、住化コベストロウレタン社製のバイヒジュール(BAYHYDUR)3100、バイヒジュールVPLS2150/1、GSIクレオス社製のAqua BIシリーズ(Aqua BI 220、Aqua BI 200)などが使用できる。メラミン化合物として、三井サイテック社製サイメル325、三井化学社製ユーバン225などが使用できる。尿素化合物として、DIC社製のベッカミンシリーズなどが使用できる。エポキシ化合物として、ナガセケムテック社製のデナコールシリーズ(EM-150、EM-101など)、ADEKA社製のアデカレジンEM-0517、EM-0526、EM-051R、EM-11-50Bなどが使用できる。カルボジイミド化合物として、日清紡ケミカル社製のカルボジライトシリーズ(SV-02、V-02、V-02-L2、V-04、E-01、E-02、V-01、V-03、V-07、V-09、V-05)などが使用できる。オキサゾリン化合物として、日本触媒社製のエポクロスシリーズ(WS-500、WS-700、K-1010E、K-1020E、K-1030E、K-2010E、K-2020E、K-2030E)などが使用できる。これらは、架橋剤を含む分散体または溶液として市販されている。
【0038】
<製造方法>
本発明の易接着フィルムを製造する方法としては、基材フィルムに対し、微粒子、樹脂を含有する液状物を塗布する方法(オフライン法)や、基材フィルムに対し、微粒子、樹脂を含有する液状物を塗布した後、延伸および熱処理する方法(インライン法)が挙げられ、いずれの方法も採用できる。以上の製造方法では、微粒子、樹脂を含有する液状物を基材フィルムに塗布した後、液状媒体を除去するので、緻密な塗膜からなる、密着性の良好な易接着フィルムを得ることができる。
また、離型フィルム上に、易接着層を形成し、この層と基材フィルムとを貼り合せたのち、離型フィルムを剥離することで、易接着層を基材フィルムに転写させるなどの方法を採用することもできる。
【0039】
上記のインライン法においては、延伸前の基材フィルムは、表面の配向結晶化の程度が小さい状態で、易接着層を形成するための液状物が塗布されるため、形成された易接着層との密着性が向上する。また、基材フィルムが緊張した状態で、易接着層に、より高温の熱処理ができるので、基材フィルムの品位を低下させることなく、易接着層の密着性を向上させることができる。熱処理温度は、基材フィルムの熱セット温度である250℃以上とすることができ、この温度において、基材フィルムとともに易接着層中の樹脂成分の配向結晶化が進行する。また、易接着層が架橋剤を含有している場合、熱セット時に易接着層中で樹脂と架橋剤とが反応することで、易接着層は、基材フィルムとの密着性や耐熱性、耐溶剤性などの性能が向上する。
インライン法は、オフライン法に比べると、製造工程を簡略化することができるばかりでなく、塗膜を薄膜化することもできるため、コスト面でも有利である。
【0040】
インライン法による易接着フィルムの製造において、同時二軸延伸法を採用する場合には、未延伸フィルムに、樹脂を含有する液状物を塗布したのち、基材フィルムを構成する樹脂のTg~Tgより50℃高い温度の範囲で、長手および巾方向にそれぞれ2~4倍程度の延伸倍率となるように二軸延伸する。同時二軸延伸機に導く前に、1~1.2倍程度の予備縦延伸を施しておいてもよい。
【0041】
また、逐次二軸延伸法を採用する場合には、一軸方向に延伸された樹脂フィルムに、微粒子、樹脂を含有する液状物を塗布し、その後、基材フィルムを前記方向と直交する方向にさらに延伸することが、簡便さや操業上の理由から好ましい。
【0042】
液状物を基材フィルムに塗布する方法としては、公知の方法が採用できる。例えば、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法などが採用できる。
【0043】
本発明の易接着フィルムにおいて、易接着層は、基材フィルムの一方の面のみに設けられてもよいし、基材フィルムの両面に設けられてもよい。また、基材フィルムの、易接着層が設けられていない面には、易接着層以外の層が設けられてもよい。
【0044】
本発明の易接着フィルムにおいて、基材フィルムの両面に易接着層を設ける場合には、2つの易接着層の組成は同一でもよいし、異なっていてもよい。また、両面に設けた易接着層のうち、片面のみに機能層を積層し、他の面に機能層を積層せずに使用してもよい。この場合、機能層を積層しない易接着層は、透明性を有する易滑層として機能するので、片面のみに易接着層を設けて機能層を積層する場合に比べて、フィルム全体の透明性を保ちつつ機能層を積層する反対面の耐ブロッキング性を付与することができる。
【0045】
易接着フィルムにおける易接着層の量(単位面積当たりの質量)は、特に制限はなく 、0.01~10g/mであることが好ましく、0.05~1g/mであることがより好ましく、0.1~0.5g/mであることがさらに好ましい。易接着層の量が少ない場合、基材フィルムと機能層との密着性が十分に得られないだけでなく、易接着層に含まれる微粒子が脱落するおそれや、耐ブロッキング性が低下するおそれがある。易接着層の量が多い場合、易接着フィルムの透明性が低下するおそれがある。
【0046】
<易接着フィルムの物性>
本発明の易接着フィルムは、各種の機能性フィルムとして用いた場合に、十分な光透過性を得ることができるという観点から、全光線透過率は、80%以上であることが好ましく、87%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、またヘイズは、8.0%以下であることが好ましく、5.0%以下であることがより好ましく、2.0%以下であることがさらに好ましい。
【0047】
本発明の易接着フィルムは、例えば、JIS K7125に基づいた方法で測定した場合の易接着層同士の動摩擦係数が、2.0以下であることが好ましく、1.0以下であることがより好ましく、0.7以下であることがさらに好ましい。両面に易接着層を有する易接着フィルムは、一方の易接着層に機能層が積層されても、巻き取りや、巻き出し時において、十分な滑り性が得られ、短時間での加工に有利となるため、摩擦係数は小さい方が好ましい。また、易接着層の滑り性の向上は、加工ロール等との擦れ、巻き出しや巻き取り時の摩擦抵抗等、予期しない易接着フィルムへのダメージ、特に傷付き、歪み等、易接着フィルムの透明性に影響を与える各種要因を低減することができる。なお、易接着層の摩擦係数低減は、易接着層に有機系および/または無機系微粒子を添加することによって達成することができる。
【0048】
本発明の易接着フィルムの耐屈曲性は、連続折り畳み試験を行うことで、評価することが可能である。例えば、後述の試験方法により、10万回以上折り畳み試験を行った場合でも変化が見られないことが好ましい。
【0049】
本発明の易接着フィルムと機能層との密着性は、例えば、JIS K5600に記載の方法に従い、クロスカット法によってセロハンテープ剥離後の残存率にて評価を行うことが可能であり、実用上の性能の観点から、残存率が85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましく、100%であることが特に好ましい。
【0050】
<機能層>
本発明の易接着フィルムは、易接着層面に種々の機能層を積層することができる。
【0051】
本発明の易接着フィルムの易接着層面に積層する機能層としては、特に限定されないが、導電層、ハードコート層、粘着層、バリア層、反射防止層、防眩層、偏光層、防汚層、離型層、帯電防止層、親水層、撥水層、撥油層、紫外線吸収層、赤外線吸収層、衝撃吸収層、封止層、絶縁層、発光層、印刷層、接着層などの機能層が挙げられる。
【0052】
本発明の易接着フィルムの易接着層面に、機能層を設ける方法としては、特に限定されないが、例えば、易接着層面に、塗布する方法、蒸着する方法、溶融物を押出しして貼り合わせる方法、離型フィルム上に設けた機能層を、易接着フィルムに貼り合わせて熱プレスなどを行った後、機能層を易接着フィルムに転写させる方法などが挙げられる。
【0053】
(導電層)
導電層としては、公知のものを使用することが可能であり、主として、導電性金属酸化物、導電性繊維状フィラー、導電性高分子、金属などの導電材料を含む材料から構成される層を積層することが好ましく、安定性や耐熱性、透明性などの観点から、導電性金属酸化物であることがより好ましい。
【0054】
導電性金属酸化物としては、インジウム-スズ酸化物(ITO)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO)、アルミニウム-亜鉛酸化物(AZO)、ガリウム-亜鉛酸化物(GZO)、インジウム-ガリウム-亜鉛酸化物(IGZO)、アンチモン-スズ酸化物(ATO)、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化スズ等が挙げられ、これらを単独で、もしくは複数を用いることができる。この中で、ITO、GZO、IGZO、ATOが好ましい。
【0055】
導電性高分子としては、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホン酸)[PEDOT:PSS]、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール等が挙げられ、中でも、PEDOT:PSS、ポリチオフェンが好ましい。
【0056】
導電性繊維状フィラーとしては、例えば、金属繊維、導電性炭素繊維および金属被覆合成繊維から選択される少なくとも1種であることが好ましく、金属繊維であることが好ましい。
【0057】
金属繊維としては、例えば、ステンレススチール、鉄、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン等を細く、長く伸ばす伸線法、または、切削法により作製された繊維が使用できる。このような金属繊維は、2種類以上を使用してもよく、合金化したものを使用してもよい。これらの金属繊維の中でも、導電性に優れることから、銀を用いた金属繊維が好ましい。
【0058】
導電性炭素繊維としては、例えば、気相成長法炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ、ワイヤーカップ、ワイヤーウォール等が挙げられる。これらの導電性炭素繊維は、2種類以上を使用してもよい。
【0059】
金属被覆合成繊維としては、例えば、アクリル繊維に金、銀、アルミニウム、ニッケル、チタン等をコーティングした繊維等が挙げられる。このような金属被覆合成繊維は、2種類以上を使用してもよい。これらの金属被覆合成繊維の中でも、導電性に優れることから、銀を用いた金属被覆合成繊維が好ましい。
【0060】
金属としては、例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、亜鉛、すず、クロム、亜鉛、カドミウムなどが挙げられ、2種類以上を使用してもよい。比較的安価で、導電性にも優れることから、銅を用いることが好ましい。
【0061】
導電層の厚みは、1nm~50μmであることが好ましく、5nm~20μmであることがより好ましく、10nm~5μmであることがさらに好ましい。導電層の厚みが薄い場合、透明性に優れる塗膜を得ることが可能である一方で、薄すぎた場合、易接着層表面の凹凸により導電層に厚みのムラができ、導電性が不安定になったり、フィルムを屈曲させて使用する場合に屈曲により導電性が悪化する可能性がある。一方で、導電層の厚みが大きすぎる場合、経済的に望ましくない。
【0062】
導電層の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD(物理気相成長法)、もしくは熱CVD、原子層蒸着(ALD)等のCVD(化学気相成長法)、めっき法(電気めっき、無電解めっき、溶融めっき、真空めっき)などが挙げられる。上記手法により積層した後、必要に応じて、加熱処理を施すことにより、より優れた表面抵抗率を有する導電層を形成することができる。
【0063】
また、導電層形成用塗布液を用いてコーティングを行う方法でも導電層を得ることができる。塗布方法としては、ディップコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、ドクターブレード法、インクジェット法等が挙げられる。上記手法により塗布し、乾燥させた後、必要に応じて、他の積層体に影響を及ぼさない範囲で、加熱処理や紫外線照射等の硬化処理を施すことにより、より優れた表面抵抗率を有する導電層を形成することができる。導電層形成用塗布液は、溶媒と、前述した導電性酸化物微粒子を溶媒中に分散された形で含むものを使用することができる。また、膜強度を高めるために、バインダーを添加してもよい。バインダーとしては、特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等が挙げられ、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂等、紫外線硬化性樹脂としては、各種オリゴマー、モノマー、光重合開始剤を含有する樹脂等、電子線硬化性樹脂としては、各種オリゴマー、モノマーを含有する樹脂などの有機バインダー、およびシリカゾル、フッ化マグネシウム微粒子、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル等や、有機官能基で修飾されたシリカゾルなどの無機バインダーのいずれかまたは、これらを複合して使用してもよい。
【0064】
導電層の表面抵抗率は、1000(Ω/□)以下であることが好ましく、より好ましくは、100(Ω/□)以下である。
【0065】
易接着層上に導電層を形成したフィルムは、画像表示装置や有機薄膜太陽電池などの基材フィルムとして使用することができる。具体的には、有機ELなどのディスプレイパネル用の電極シートや、ディスプレイ表面のタッチパネルシート、有機太陽電池用基板などの基材として使用することができる。
【0066】
(粘着層)
粘着層を構成する粘着剤としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤などが挙げられる。耐熱性、透明性、安定性の観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。アクリル系粘着剤に使用される成分としては、公知のものを使用することでき、例えば、2-エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、メチルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、酢酸ビニル、アクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレートなどが挙げられる。このような成分を、所望するタックや熱特性に合わせて、共重合または混合して用いてもよい。なお、ディスプレイ用の部材を積層する際に、通常使用されるOCA(OPTICAL CLEAR ADHESIVE)と呼ばれる透明性に優れた粘着剤を使用することもできる。
【0067】
上記の粘着剤に対して、架橋剤、粘着付与剤、充填剤、界面活性剤、顔料、酸化防止剤、難燃剤、シランカップリング剤などの添加剤を配合してもよい。
架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート系化合物、メラミン化合物などが挙げられる。
粘着付与剤としては、例えば、ロジン類、テルペン類、石油樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂が挙げられる。
【0068】
(バリア層)
バリア層に使用する材料としては、特に制限はなく、公知の材料を使用することが可能である。例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、鉄、コバルト、亜鉛、金、銀、銅などの金属、ケイ素、ゲルマニウム、炭素等の半導体、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸価インジウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化ハフニウム、酸化バリウムなどの無機酸化物、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化マグネシウムなどの窒化物、炭化ケイ素などの炭化物、硫化物などを使用することができる。なかでも、シリコン酸化膜(SiO)、シリコン窒化膜(SiN)、シリコン酸窒化膜(SiO)、シリコン炭化膜(SiO)、シリコン窒化炭化膜(SiC)、アルミニウム酸化膜(AlO)、アルミニウム窒化膜(AlN)、アルミニウム酸窒化膜(AlO)、チタン酸化膜(TiO)、チタン酸窒化膜(TiO)、ITO、ポリシラザン(Xは酸素の数、Yは窒素の数を表す)が好ましい。また、2種類以上を複合して用いてもよく、単層であっても、複層であってもよい。
【0069】
ガスバリア層の形成方法としては、特に制限はないが、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンスプレーティング法、Cat―CVD法、プラズマCVD法、大気圧プラズマCVD法などが挙げられる。
【0070】
バリア層の厚みは、1~800nmであることが好ましく、5~500nmであることがより好ましく、10~200nmであることがさらに好ましい。
さらにバリア層を保護する目的で、保護層が形成されてもよい。
【0071】
(反射防止層)
反射防止層を構成する材料としては、公知の材料を使用することができ、シリカなどの無機粒子や、スチレン、アクリル等の有機粒子が挙げられる。またこれら以外にもバインダー等の成分を含んでもよい。
【0072】
(離型層)
離型層を構成する離型剤としては、公知の材料を使用することができ、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、長鎖アルキルポリマー、ワックス、オレフィン樹脂などが挙げられる。離型層は、剥離力調整剤やオイル等の添加剤を含んでもよい。
【0073】
(帯電防止層)
帯電防止層を構成する材料としては、公知の材料を使用することができ、前述の導電層と同様の材料を使用することが可能であり、例えば、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛などの導電性金属酸化物、ポリアニリン系、ポリピロール系、ポリチオフェン系などの導電性高分子、カーボンブラックやケッチェンブラックなどの導電性カーボン、銀、銅、アルミ等の金属、界面活性剤が挙げられる。また、上記以外にもバインダーとして樹脂成分などを含んでもよい。
【0074】
(親水層、撥水層、撥油層)
親水層を構成する材料としては、公知の材料を使用することができ、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、アクリルなどに親水性官能基を付与したポリマーなどの親水性ポリマーを使用したものや、界面活性剤、シリカなどの無機系材料などが挙げられる。
撥水層、撥油層を構成する材料としては、公知の材料を使用することができ、フッ素系樹脂、ワックス、シリコーンなどが挙げられる。
【0075】
(紫外線吸収層、赤外線吸収層)
紫外線吸収層を構成する材料としては、公知の材料を使用することができ、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、シアノアクリレート系、オキザリニド系、サリシレート系、ホルムアミジン系などの有機系紫外線吸収剤などが挙げられる。また、これ以外にも、酸化チタンや酸化亜鉛などの紫外線反射剤や、ヒンダードアミン系などのラジカル捕捉剤などが添加されてもよい。
赤外線吸収層を構成する材料としては、公知の材料を使用することができ、六ホウ化ランタン、セシウム酸化タングステン、シアニン色素、フタロシアニン色素、ナフタロシアニン化合物、ニッケルジチオレン錯体、スクアリウム色素、キノン系化合物、ジインモニウム化合物、アゾ化合物などが挙げられる。
【0076】
(防眩層)
防眩層を構成する材料としては、公知の材料を使用することができ、通常、有機粒子または無機粒子などのフィラー、および熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂などのバインダーを混合したものが一般的である。
【0077】
有機粒子としては、例えば、ポリスチレンビーズ、メラミン樹脂ビーズ、アクリルビーズ、アクリル-スチレンビーズ、シリコーンビーズ、ベンゾグアナミンビーズ、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合ビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ等が挙げられる。
【0078】
無機粒子としては、シリカ(SiO)微粒子、アルミナ微粒子、チタニア微粒子、酸化スズ微粒子、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)微粒子、酸化亜鉛微粒子等の無機酸化物微粒子等が挙げられる。
【0079】
熱可塑性樹脂としては、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂およびゴムまたはエラストマー等が挙げられる。
【0080】
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。
【0081】
(偏光層)
偏光層を構成する材料としては、公知の材料を使用することができ、例えば、ポリビニルアルコール、部分ホルマール化ポリビニルアルコール、エチレン・酢酸ビニル共重合体等やこれらを染色したもの、脱水処理したものや、ポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物などが挙げられる。
【0082】
(絶縁層)
絶縁層としては、公知の材料を使用することができ、例えば、マイカ(雲母)、セラミック、ガラス、ポリエステル、ポリアミド、セラック、ロジン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂、フェノール、メラミン、エポキシ、シリコーン等の熱硬化性樹脂、天然ゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム等のゴム系材料が挙げられる。
【0083】
(発光層)
発光層を構成する材料としては、公知の材料を使用することができ、例えば、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾ-ル誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー等の色素性材料、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体等、中心金属に、Al、Zn、Be等または、Tb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体等の金属錯体系材料、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体等、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、上記色素体、金属錯体系発光材料を高分子化したものなどの高分子系材料などが挙げられる。
上記の発光材料だけでなく、発光層中の発光効率の向上、発光波長を変化させる等の目的で、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィレン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン等などのドーピング材料が添加されてもよい。さらに、印刷適性を向上させる目的で、界面活性剤などが添加されてもよい。
【0084】
(接着層)
接着層を構成する材料としては、公知の材料を使用することができ、例えば、酢酸ビニル、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリオレフィン、ポリアミド、天然ゴム、合成ゴム、シリコーンゴム、ポリウレタン、ポリエステル、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド系樹脂、アクリレート系樹脂、シアノアクリレート等が挙げられる。
【0085】
(印刷層)
印刷層を構成する材料としては、公知の材料を使用することができ、例えば、着色した顔料および/または染料とバインダー(ビヒクルともいう)を有する層であり、安定剤、光安定剤、硬化剤、架橋剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、粒子、帯電防止剤、充填材、その他等の添加剤が必要に応じて適宜添加されてもよい。バインダーとしては、ロジン、ロジンエステル、ロジン変性樹脂、シェラック、アルキッド樹脂、フェノール系樹脂、ポリ酢酸系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリルまたはメタクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミノアルキッド系樹脂、硝化綿、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ゴム、環化ゴム、あまに油、きり油、大豆油、炭化水素油などが挙げられる。
【実施例0086】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。
以下の実施例・比較例における各種物性の評価方法は、下記のとおりとした。なお、特に記載がない限りは、いずれの測定も、温度23℃、湿度50%の環境下で行った。
【0087】
<評価方法>
(1)半芳香族ポリアミドの特性
〔極限粘度[η]〕
濃硫酸中、30℃にて、0.05、0.1、0.2、0.4g/dlの各濃度の試料の固有粘度(ηinh)を以下の式から求め、これを濃度0に外挿した値を極限粘度[η]とした。
ηinh=[ln(t1/t0)]/c
〔式中、ηinhは固有粘度(dl/g)、t0は溶媒の流下時間(秒)、t1は試料溶液の流下時間(秒)、cは溶液中の試料の濃度(g/dl)を表す。〕
【0088】
〔融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)〕
DSC装置(パーキンエルマー社製 DSC7)を用い、半芳香族ポリアミドを、窒素雰囲気下で20℃から350℃まで10℃/分で昇温させ5分間保持した(1st Scan)後、350℃から20℃まで100℃/分で冷却して5分間保持した。さらに20℃から350℃まで10℃/分で再昇温させた過程(2nd Scan)でのガラス転移温度を、半芳香族ポリアミドのTgとした。同様に、2nd Scanで観測される結晶融解ピークのピークトップ温度をTmとした。
【0089】
(2)ダイマー酸系ポリアミドの特性
〔酸価、アミン価〕
JIS K2501に記載の方法により測定した。
【0090】
〔軟化点温度〕
樹脂10mgをサンプルとし、顕微鏡用加熱(冷却)装置ヒートステージ(リンカム社製、Heating-Freezing ATAGE TH-600型)を備えた顕微鏡を用いて、昇温速度20℃/分の条件で測定を行い、樹脂が変形し始める温度を軟化点とした。
【0091】
(3)ダイマー酸系ポリアミド樹脂水性分散体の特性
〔固形分濃度〕
得られた水性分散体を適量秤量し、これを150℃で残存物(固形分)の質量が恒量に達するまで加熱し、固形分濃度を求めた。
【0092】
〔粘度〕
B型粘度計(トキメック社製、DVL-BII型デジタル粘度計)を用い、温度25℃における回転粘度(mPa・s)を測定した。
【0093】
(4)積層フィルムの特性
〔厚み〕
得られた積層フィルムを23℃、50%RHの環境下に2時間以上放置してから、透過型電子顕微鏡(TEM)によりフィルム断面観察を行い、各層の厚みを測定した。なお、易接着層に平均粒子径が易接着層の厚みよりも大きい微粒子を含有する場合、微粒子の存在しない部分の易接着層の厚みを測定した。
【0094】
〔密着性〕
(易接着層の密着性)
実施例で作製した積層フィルムの易接着層について、JIS K 5600に記載の方法に従い、クロスカット法によって、基材フィルム/易接着層の密着性を評価した。
詳しくは、23℃、50%RHの環境下にて十分調湿を行った積層フィルムについて、易接着層側より縦、横に切り込みを入れ100区画の格子パターンをつくった後、易接着層側に、粘着テープ(ニチバン社製、TF-12)を貼り、勢いよくテープを剥離した。基材上に残留する易接着層格子の百分率から、基材フィルム/易接着層の密着性を評価した。
【0095】
〔ヘイズ、全光線透過率〕
日本電色社製ヘイズメーター(NDH 2000)を用い、JIS K7105に準じて、積層フィルムの全光線透過率(Tt)、拡散透過率(Td)の測定を行い、下記式に基づいて、ヘイズを計算した。
ヘイズ(%)=(Td/Tt)×100
【0096】
〔耐屈曲性〕
実施例で得られた積層フィルムを、30×100mmの長方形にカットして、サンプルを作製し、耐久試験機(ユアサシステム機器社製DLDMLH-FS)に、サンプルの短辺側をそれぞれ固定し、対向する2つの辺部の最小間隔が1.5mmとなるようにして取り付け、サンプルの表面側を180度折り畳む屈曲試験(易接着層が内側)を最大で10万回行い、屈曲部に、割れ、折れ痕、白化、破断等が生じていないか目視で確認した。折り畳み回数1万回ごとに、目視でサンプルの確認を行い、屈曲部に変化が見られなかったサンプルや、屈曲部に変化が見られるものの実使用上問題ないレベルのサンプルについては、屈曲試験を継続した。屈曲部に明らかな割れ、折れ痕、白化、破断等が生じたものについては、試験を中止した。
◎:10万回の折り畳みにおいて、屈曲部に割れ、破断はなく、かつ、折れ痕、白化が生じなかった。
×:屈曲部に割れまたは破断が生じたので試験を10万回未満で中止した
【0097】
〔動摩擦係数〕
JIS K7125に準じて、積層フィルムの易接着層同士の動摩擦係数を測定した。
【0098】
〔熱収縮率〕
積層フィルムを10mm幅×150mmの短冊状にカットし、これに間隔100mmとなるように2本の標線を入れた試験片を作製した。得られた試験片を無荷重下で250℃のオーブン中に5分間熱処理した後、試験片を取り出して23℃×50%RH下で2時間調湿した後、標線間距離を測定した。フィルムの長さ方向(MD)と幅方向(TD)測定用の各3試料について、下式にて熱収縮率を求め、それぞれの方向の熱収縮率の平均値を算出した。
熱収縮率(%)=(A-B)/A×100
A:熱処理前の標線間距離(mm)、B:熱処理後の標線間距離(mm)
【0099】
〔耐ブロッキング性〕
積層フィルムのフィルムロールから積層フィルムを巻き出して、耐ブロッキング性を評価した。
◎:何の抵抗もなく巻き出すことができる
○:巻き出す際フィルム同士が剥がれる音が聞こえるが、巻出した後のフィルムの外観は白化が見られず、透明である。
△:巻き出す際フィルム同士が剥がれる音が聞こえ、巻出した後に塗膜の白化が見られる。
×:巻き出す時に強い抵抗があり、巻出した後のフィルムに塗膜の白化が見られる。
【0100】
〔平滑性〕
実施例で得られた積層フィルムを、350×350mmの正方形にカットして、サンプルを作製し、三次元レーザー顕微鏡(オリンパス株式会社製、3Dレーザー顕微鏡 LEXT OLS4100)を用いて最大高さ(Sz)を測定した。
○:Sz≦0.5
△:0.5<Sz≦1.0
×:1.0<Sz
【0101】
〔導電性〕
(導電層1の形成)
易接着層上に、アルゴンガス80%、酸素ガス20%からなる、4×10-1Paの雰囲気下で、酸化インジウムおよび酸化スズの混合物の焼結体(酸化インジウム97質量%、酸化スズ3質量%)を用いて、スパッタリング法により厚さが50nmの導電層を積層し、導電フィルムを得た。
(導電層2の形成)
易接着フィルムの易接着層を設けた側の反対面に対してマスキングテープ(日東電工社製 N-300)を貼り、易接着フィルムを前処理として、コンディショナー液「CLC-601」(日立化成社製)に60℃で5分間浸漬し、その後水洗し、プリディップ液「PD-201」(日立化成社製)に室温にて2分間浸漬した。次に、塩化鉛(PdCl)を含む無電解めっき用触媒である「HS-202B」(日立化成社製)に、室温で10分間浸漬処理したのち、水洗し、無電解銅めっき液である「CUST-201めっき液」(日立化成社製)に室温にて15分間浸漬し、更に硫酸銅電解めっきを行った。その後、アニールを180℃で10分間行い、厚さ1μmの銅めっき層を積層し、易接着層の表面に導電層を設けた導電フィルムを得た。
(表面抵抗率の評価)
得られた導電フィルムについて、低抵抗率計(三菱化学アナリテック社製、ロレスタAX MCP-T700)により、25℃、50%RHの環境下で、表面抵抗率(Ω/□)を測定し、得られた表面抵抗率の数値に応じて、以下の指標で評価した。
導電フィルムの実用上、1000Ω/□以下であることが好ましく、100Ω/□以下であることが特に好ましい。
〇:100Ω/□以下
△:100Ω/□超、1000Ω/□以下
×:1000Ω/□超
【0102】
〔導電層の密着性〕
積層フィルムの易接着層上に形成した導電層について、JIS K 5600に記載の方法に従い、クロスカット法によって、基材フィルム/導電層の密着性を評価した。
詳しくは、23℃、50%RHの環境下にて十分調湿を行った積層フィルムについて、導電層側より縦、横に切り込みを入れ100区画の格子パターンをつくった後、導電層側に、粘着テープ(ニチバン社製、TF-12)を貼り、勢いよくテープを剥離した。基材上に残留する導電層格子の百分率から、基材フィルム/導電層の密着性を評価した。
【0103】
<原料>
易接着層を形成するための樹脂水性分散体として、以下のものを用いた。
【0104】
〔ダイマー酸系ポリアミド樹脂水性分散体E-1〕
ダイマー酸系ポリアミドP-1として、ジカルボン酸成分として、ダイマー酸を100モル%含有し、ジアミン成分としてエチレンジアミンを100モル%含有し、酸価が10.0mgKOH/g、アミン価が0.1mgKOH/g、軟化点が158℃であるポリアミド樹脂を使用した。
撹拌機およびヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器に、75.0gのダイマー酸系ポリアミドP-1、37.5gのイソプロパノール(IPA)、37.5gのテトラヒドロフラン(THF)、7.2gのN,N-ジメチルエタノールアミンおよび217.8gの蒸留水を仕込んだ。回転速度を300rpmで撹拌しながら、系内を加熱し、120℃で60分間加熱攪拌を行った。その後、撹拌しながら室温付近(約30℃)まで冷却し、100gの蒸留水を追加した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)でごくわずかに加圧しながらろ過した。得られた水性分散体を1Lナスフラスコに入れ、80℃に加熱した湯浴につけながらエバポレーターを用いて減圧し、IPA、THF、水の混合媒体約100gを留去し、乳白色の均一なダイマー酸系ポリアミド樹脂水性分散体E-1を得た。E-1の固形分濃度は20質量%、分散体中の樹脂の数平均粒子径は0.040μm、pHは10.4、粘度は36mPa・sであった。
【0105】
〔ダイマー酸系ポリアミド樹脂水性分散体E-2〕
ダイマー酸系ポリアミドP-2として、ジカルボン酸成分として、ダイマー酸を85モル%、アゼライン酸を15モル%含有し、ジアミン成分としてピペラジンを50モル%、エチレンジアミンを50モル%含有し、酸価が15.0mgKOH/g、アミン価が0.3mgKOH/g、軟化点が110℃であるポリアミド樹脂を使用した。
撹拌機およびヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器に、75.0gのダイマー酸系ポリアミドP-2、93.8gのIPA、6.0gのN,N-ジメチルエタノールアミンおよび200.3gの蒸留水を仕込んだ。回転速度を300rpmで撹拌しながら、系内を加熱し、120℃で60分間加熱攪拌を行った。その後、撹拌しながら室温付近(約30℃)まで冷却し、130gの蒸留水を追加した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)でごくわずかに加圧しながらろ過した。得られた水性分散体を1Lナスフラスコに入れ、80℃に加熱した湯浴につけながらエバポレーターを用いて減圧し、IPA、水の混合媒体約130gを留去し、乳白色の均一なダイマー酸系ポリアミド樹脂水性分散体E-2を得た。E-2の固形分濃度は20質量%、分散体中の樹脂の数平均粒子径は0.052μm、pHは10.6、粘度は30mPa・sであった。
【0106】
易接着層を形成するその他の水性分散体として、以下のものを用いた。
L-1:ウレタン樹脂水性分散体(三井化学社製、タケラック WPB-341(30)、固形分濃度30質量%)
L-2:ウレタン樹脂水性分散体(三井化学社製、タケラック WS-4000、固形分濃度30質量%)
【0107】
L-3:アクリル樹脂水性分散体(日本カーバイド社製、ニカゾール RX-7033、固形分濃度35質量%)
L-4:共重合ナイロン樹脂水性分散体(住友精化社製、セポルジョン PA-200、固形分濃度40質量%)
【0108】
易接着層形成用塗剤には、以下のものを配合した。
F-1:コロイダルシリカ微粒子(扶桑化学 PL-10H 、平均粒子径0.1μm)
F-2:コロイダルシリカ微粒子(日産化学社製 MP-1040、平均粒子径0.1μm)
F-3:コロイダルシリカ微粒子(日産化学社製 MP-2040、平均粒子径0.2μm)
F-4:シリカ微粒子(日本触媒社製 シーホスター KE-W30、平均粒子径0.3μm、固形分濃度20質量%)
F-5:シリカ微粒子(日本触媒社製 シーホスター KE-W50、平均粒子径0.45μm、固形分濃度20質量%)
F-6:コロイダルシリカ微粒子(日産化学社製 MP-4540M、平均粒子径0.5μm、固形分濃度40質量%)
F-7:アクリル系微粒子(日本触媒社製 IX-3-BR-W-A-01-02、平均粒子径0.2μm)
F-8:アクリル系微粒子(日本触媒社製 IX-3-BR-W-A-01-05、平均粒子径0.5μm)
F-9:アクリル系微粒子(日本触媒社製 IX-3-BR-W-A-01-13、平均粒子径1.3μm)
F-10:アクリル系微粒子(日本触媒社製 エポスター MA1002、平均粒子径2.5μm)
F-11:長鎖アルキル系表面処理剤(中京油脂社製 レゼム T-738)
【0109】
架橋剤として、下記のものを使用した。
C-1:ブロックイソシアネート基含有高分子分散体(GSIクレオス社製、BI-220、固形分濃度40質量%)
C-2:メラミン化合物の水性溶液(三和ケミカル社製、ニカラックMX-035、固形分濃度70質量%)
【0110】
基材を構成する樹脂として、以下のものを用いた。
〔半芳香族ポリアミドA〕
テレフタル酸(TA)3289質量部、1,9-ノナンジアミン(NDA)2533質量部、2-メチル-1,8-オクタンジアミン(MODA)633質量部、安息香酸(BA)48.9質量部、次亜リン酸ナトリウム一水和物6.5質量部(前記のポリアミド原料4者の合計に対して0.1質量%)および蒸留水2200質量部を反応釜に入れ、窒素置換した。これらの原料のモル比(TA/BA/NDA/MODA)は99/2/80/20である。
反応釜の内容物を100℃で30分間攪拌した後、2時間かけて内部温度を210℃に昇温した。この時、反応釜の内部は2.12MPa(22kg/cm)まで昇圧した。そのまま1時間反応を続けた後、230℃に昇温し、その後2時間、230℃に温度を保ち、水蒸気を徐々に抜いて圧力を2.12MPa(22kg/cm)に保ちながら反応させた。次に、30分かけて圧力を0.98MPa(10kg/cm)まで下げ、さらに1時間反応させて、プレポリマーを得た。これを100℃、減圧下で12時間乾燥した後、2mm以下の大きさまで粉砕した。
次いで、粉砕したプレポリマーを、温度230℃、圧力13.3Pa(0.1mmHg)の条件下で10時間固相重合してポリマーを得た。これを二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX44C」)に供給し、シリンダー温度320℃の条件下で溶融混練して押し出し、冷却、切断して、半芳香族ポリアミドAのペレットを製造した。
半芳香族ポリアミドAは、極限粘度1.17dl/g、融点290℃、ガラス転移温度125℃であった。
【0111】
〔樹脂B〕
樹脂Bとして、PET(ユニチカ社製PET「UT-CBR」)を用いた。
【0112】
実施例1
<易接着層形成用塗剤の調製>
ウレタン樹脂水性分散体L-1と、架橋剤C-1とを、各成分の固形分質量比率が100:10になるように混合し、室温で5分間混合攪拌した。さらに、易接着層を構成する成分全体に対するシリカ微粒子の含有量が20質量%になるようにシリカ微粒子F-3を混合し、易接着層形成用塗剤を得た。
<積層フィルムの製造>
半芳香族ポリアミドAを、シリンダー温度を320℃に設定した単軸押出機に投入して溶融し、320℃に設定したTダイよりフィルム状に押し出し、50℃に設定した冷却ロール上に、密着させて冷却し、厚さ250μmの実質的に無配向の未延伸フィルムを得た。
次に、上記易接着層形成用塗剤を、延伸後の樹脂塗布量が0.1g/mとなるように、未延伸フィルムの片面に塗布した後、未延伸フィルムを、両端をクリップで把持しながら、テンター方式同時二軸延伸機に導いて、130℃において、縦方向延伸倍率3.0倍、横方向延伸倍率3.3倍で同時二軸延伸した。そして、同テンター内にて285℃で熱固定を行い、フィルムの幅方向に5%の弛緩処理を施した後、均一に徐冷し、厚さ25μmの二軸延伸された半芳香族ポリアミドフィルム上に、厚さ0.10μmの易接着層が設けられた積層フィルムを得た。
【0113】
実施例2~19
易接着層形成用塗剤における樹脂の種類、架橋剤の種類、含有量、微粒子の種類、粒子径、含有量、および易接着層の厚みを表1に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0114】
実施例20
320℃に加熱した単軸押出機Aに、半芳香族ポリアミドAを投入し溶融して溶融ポリマーAを得た。一方、320℃に加熱した単軸押出機Bに、含有量が0.1質量%となるようにシリカ粒子(富士シリシア製 2.3μm)をブレンドした半芳香族ポリアミドAを溶融して溶融ポリマーBを得た。
得られた溶融ポリマーAと溶融ポリマーBをフィードブロックにて合流させたのち、Tダイより、溶融ポリマーAと溶融ポリマーBの厚み比が20(A)/5(B)になるようにフィルム状に押し出し、厚さ250μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムに、実施例1と同様にして易接着層形成用塗材を塗布して、厚さ25μmの基材フィルム上に厚さ0.10μmの易接着層を有する積層フィルムを得た。
【0115】
実施例21
実施例1において、易接着層形成用塗材を基材フィルムの両面に塗布して、厚さ25μmの基材フィルムの両面に厚さ0.10μmの易接着層を有する積層フィルムを得た。なお、導電層はフィルムの片面のみに設けた。
【0116】
比較例1
実施例1において、易接着層形成用塗剤を塗布しない以外は、同様の操作を行って、フィルムを得た。
【0117】
比較例2
実施例1において、易接着層に微粒子を添加しないこと以外は、同様の操作を行って、積層フィルムを得た。
【0118】
比較例3
実施例1において、易接着層が微粒子のみで構成されること以外は、同様の操作を行って、積層フィルムを得た。
【0119】
比較例4
樹脂B(PET)を、シリンダー温度を280℃に設定した単軸押出機に投入して溶融し、280℃に設定したTダイよりフィルム状に押し出し、20℃に設定した冷却ロール上に、密着させて冷却し、厚さ375μmの実質的に無配向の未延伸フィルムを得た。
得られた未延伸フィルムを、ロール式縦延伸機で85℃の条件下にて3.4倍に延伸した。次いで、表1に示す構成の易接着層形成用塗剤を、フィルムの片面にグラビアロールで、延伸後の樹脂塗布量が0.1g/mとなるように塗布したのち、その後連続的にシートの端部をフラット式延伸機のクリップに把持させ、120℃の条件下、横4.4倍に延伸を施し、その後、横方向の弛緩率を5%として、240℃で熱固定を行い、厚さ25μmのPETフィルムの片面に厚さ0.10μmの易接着層が設けられた積層フィルムを得た。
【0120】
比較例5
実施例1において、易接着層に添加する微粒子の粒子径が1.3μmであること以外は、同様の操作を行って、積層フィルムを得た。
【0121】
比較例6
実施例1において、易接着層に添加する添加剤として長鎖アルキル系表面処理剤を使用したこと以外は、同様の操作を行って、積層フィルムを得た。
【0122】
比較例7
実施例1において、易接着層に添加する微粒子の粒子径を2.5μmとした以外は、同様の操作を行って、積層フィルムを得た。
【0123】
実施例1~21、比較例1~7で得られたフィルムについて、評価した結果を表1に示す。
【0124】
【表1】
【0125】
表1に示すように、実施例1~21で得られた易接着フィルムは、密着性や滑り性、表面平滑性に優れ、透明性、ブロッキング耐性が良好なものであった。また、導電層を形成した場合の密着性および表面抵抗も良好であった。
実施例20の易接着フィルムは、易接着層と反対面(基材フィルム面)の耐ブロッキング性が易接着層表面と同程度の耐ブロッキング性になるように、基材フィルムに微粒子を添加したものである。また実施例21は、易接着層を基材フィルムの両面に形成したものである。両者を対比すると、実施例21では実施例20よりも透明性が高いことがわかる。すなわち、本発明の易接着フィルムの易接着層は、フィルム全体の透明性を損なわずに、機能層を形成しないフィルム面の耐ブロッキング性を向上させる、易滑層として機能することがわかる。
比較例1のフィルムは、易接着層を形成していないため、滑り性や密着性を有していなかった。
比較例2のフィルムは、易接着層に微粒子を添加していないため、滑り性や耐ブロッキング性にも劣るものであった。
比較例3のフィルムは、易接着層に樹脂を添加していないため、Szが1μmを超え、導電層との密着性に劣り、導電層の表面抵抗も高かった。
比較例4のフィルムは、本発明で規定する以外の樹脂を基材フィルムとして使用したものであり、耐屈曲性に劣るものであった。
比較例5のフィルムは、易接着層に比較的粒子径の大きい微粒子を用いた結果、Szが1μmを超え、導電層との密着性に劣り、導電層の表面抵抗も高かった。
比較例6のフィルムは、易接着層に微粒子以外の添加剤を使用した結果、易接着層の滑り性が極めて悪くブロッキングが生じたので、製造工程で使用できるものではなかった。このため、導電層の形成は行わなかった。
比較例7のフィルムは、易接着層に粒子径の大きい微粒子を用いた結果、微粒子が易接着層からはがれ落ちてしまうため、基材および導電層との密着性に劣り導電層の表面抵抗も高かった。