(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035069
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】フットレスト付き介護用椅子
(51)【国際特許分類】
A61G 5/12 20060101AFI20220225BHJP
A61G 5/10 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
A61G5/12 705
A61G5/10 703
A61G5/12 706
A61G5/12 702
A61G5/12 701
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020139137
(22)【出願日】2020-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】516137786
【氏名又は名称】株式会社土橋製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100119297
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 正男
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(72)【発明者】
【氏名】土橋 悦子
(57)【要約】 (修正有)
【課題】レッグレストと足乗せ台とを分離することができるフットレスト付き介護用椅子を提供する。
【解決手段】フットレストは、平坦部位と段差部位とを備えた段付き形状の固定部71と、前記段差部位の端部に設けられた回転軸を介して折り曲げ可能に接続し、閉状態にあっては前記段差部位に嵌合し段差を平坦化し、開状態にあっては前記閉状態から時計回り方向に回転し、前記固定部と略直角に開き足乗せ台となる開閉部72とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後に各一対の脚部を備えた本体フレームと、前記本体フレームに傾動可能に支持された背凭れと、前記背凭れに支持された座面フレームと、上端が前記座面フレームの先端に設けられた回動支点に回動可能に連結されたフットレストと、一端が前記フットレストの所定の位置に取付け金物で連結され、他端が前記背凭れの下端に取付けられ、前記背凭れの傾動により前記回動支点を軸として前記フットレストを上下方に回動させる駆動ロッドとを備えた介護用椅子において、
前記フットレストは、平坦部位と段差部位とを備えた段付き形状の固定部と、前記段差部位の端部に設けられた回転軸を介して折り曲げ可能に接続し、閉状態にあっては前記段差部位に嵌合し段差を平坦化し、開状態にあっては前記閉状態から時計回り方向に回転し、前記固定部と略直角に開き足乗せ台となる開閉部とを備えたことを特徴とするフットレスト付き介護用椅子。
【請求項2】
前記開閉部が開状態であって、前記背凭れの傾動により座乗者の姿勢が横向き略S字形状の座乗状態において、前記座乗者が前記開閉部を足で押圧することで生じる前記開閉部と前記背凭れとからの反力により、前記座乗者の腰回りを浮かす方向の力が作用することを特徴とする請求項1に記載のフットレスト付き介護用椅子。
【請求項3】
前記回転軸の回転半径が、前記平坦部の縦方向の厚みの略1/2であることを特徴とする請求項1又は2に記載のフットレスト付き介護用椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フットレストを有するリクライニング式の介護用椅子に関し、特に背凭れが後倒した状態(リクライニング状態)において、座乗者がフットレストを足で押圧することで容易に腰回りを浮かせることができるフットレスト付き介護用椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
車椅子やマッサージチェアにおいては、背凭れを後方に傾斜(後倒)させるリクライニングの機能を必要とする場合が多い。快適なリクライニングを可能にするための重要なポイントは、背ずれの問題と、重心の後方への移動による転倒の問題に如何に対処するかである。
【0003】
リクライニングの際に、座面を傾斜させず、背凭れのみを傾斜させると、座乗者の臀部が前方に滑って、座乗者の背中と背凭れの表面がずれる「背ずれ」を起こしやすく、着衣のまくれが生じるという問題がある。 また、リクライニングの際に、椅子の重心が後方に移動して、椅子全体が後ろに倒れやすくなるという問題がある。
【0004】
そのため、従来からリクライニング時の背ずれや転倒を防止する方策について、種々の特許出願がなされてきた。かかる問題を回避する方策として有力なのは、リクライニングの際に、背凭れと座面の開き角を大きくするのに併せて、座面の後方を下方に沈み込ませるという方法である。
【0005】
すなわち、リクライニングの際に、背凭れの傾斜と座面後方の沈込みの二つの動作を連動して行うことにより、背ずれが起こりにくくなるとともに、重心が下方に移動するため、転倒もしにくくなると考えられる。このような考え方から、本願の出願人も先に、背凭れ-座面連動機能を実現するための新規なリンク機構を提案している(特許文献1)。
【0006】
また、車椅子等の介護用椅子は、通常足乗せ台となるフットレストを有しているが、リクライニング時にはフットレストが上昇して、足を伸ばせるようにすることが望ましい。すなわち、非リクライニング時(以下、「座乗時」という)にはフットレスト面は、ほぼ垂直下方に延在、あるいは立ち上がりやすくするために垂直より約5度ほど内側に入っているのが通例であるが、リクライニングの際には、フットレストの下部が持ち上がって膝を伸ばすことが可能な位置に上昇し、座乗位置に戻した時には再び元の位置に戻るというように、フットレストが、リクライニングの動作と連動して、昇降するものであることが望ましい。本願の出願人も先に、背凭れ、座面、フットレスト連動機能を実現するための新規なリンク機構を提案している(特許文献2)。
【0007】
一般にフットレストは、座面前端から下方に延在する脚部(ふくらはぎ)を支持する部分(レッグレスト)と、その下端に取付けられた足乗せ台とから構成されている。下記非特許文献1に記載の車椅子のフットレストは、レッグレストと足乗せ台とに2分割されており、背凭れが後倒した状態では、レッグレストと略直角にある足乗せ台をレッグレストと180度の角度となるように回転させることで、足乗せ台がレッグレストとフラットになるように構成されている。
【0008】
下記の非特許文献2も非特許文献1と同様に、フットレストは、レッグレストと足乗せ台とに2分割されており、背凭れが後倒した状態では、レッグレストと略直角にある足乗せ台をレッグレストと180度の角度となるように回転させることで、足乗せ台がレッグレストとフラットになるように構成されている。
【0009】
図12に示す下記特許文献3に記載のフットレスト部13は、座部11に回動可能に取けられる第1の部分131と、第1の部分131に回動可能に取付けられる第2の部分132とで構成され、フットレスト部131は、背凭れ部12の傾斜角度に連動して、その姿勢を変形するように設けられている。
【0010】
これらの従来技術の内容の詳細はここでは省略するが、いずれもレッグレストと足乗せ台とに2分割され、背凭れが傾斜している状態(リクライニング状態)では、レッグレストと略直角にある足乗せ台をレッグレストと180度の角度となるように回転させることで、足乗せ台がレッグレストとフラットになるように構成されている点で共通している。
【0011】
【非特許文献1】https://www.hukusi-orosi.jp/fs/hukusi/wheelchair-w21-094:介助用フルリクライニング車いす RR70NB
【非特許文献2】https://www.hukusi-orosi.jp/fs/hukusi/wheelchair-w22-025:介助型 ティルト&フルリクライニング車椅子 NHR-7
【特許文献1】特許第6273397号公報
【特許文献2】特許第6573264号公報
【特許文献3】特開2017-191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
介護用椅子の利用者にとって、背凭れを傾斜させリラックスしている状態にあっては、レッグレストと足乗せ台とがフラットになることは好ましく、上述した従来技術のフットレストはそのように構成されている。一方において、介護用椅子の利用者は、一般には高齢者や障害者で、何らかの疾患又は障害を抱えている場合が多く、下着の取り換え等には介助が必要な場合が多い。従来、被介護者の下着の取り換え、特に臀部回りの下着の取り換えは、介護用椅子から被介護者をベッドへ移乗させ、ベッドに寝かせた状態で行われている。介護用椅子に乗ったままでは、被介護者の臀部を持ち上げて、介護者の手の入る空間を確保することが困難なためである。
【0013】
しかし、被介護者をベッドに移乗させることなく介護用椅子に乗ったまま臀部回り(腰回り)の下着の取り換えができれば、介護者、被介護者ともにその負担が軽減される。そのためには被介護者の無理のない自然な動きを上手に活かして、介護者の手の入る空間を確保できることが好ましい。
【0014】
非特許文献1、2、特許文献3の従来技術のいずれにおいても、レッグレスト部と足乗せ台とは別々に構成され、背凭れの傾斜により足が持ち上げられた状態では、レッグレストと足乗せ台がフラットとなる。
【0015】
このため被介護者は、ほぼ仰向けに寝て、脚が腹部より少し上になった状態となる。つま先、踵はともに浮いた状態であり、大きな力を出せる足を使うことは出来ない。被介護者がその姿勢を変えるのに足を使うことができず、手に頼らざるを得ない。主に手の力により腰回りを浮かすことは容易でなく、従来技術では被介護者の臀部回りの下着を介護用椅子に乗ったままで交換することは難しい。
【0016】
そこで、本発明の課題は、リクライニング連動フットレスト付き介護用椅子において、レッグレストと足乗せ台とが一体化されたフットレストであって、被介護者が介護用椅子に乗っている状態や、必要となる動きに応じて、レッグレストと足乗せ台とを分離することができるフットレスト付き介護用椅子を提供することにある。
【0017】
これにより、背凭れが直立した状態において、足乗せ台が不要であればレッグレストと足乗せ台とを一体化し、被介護者は足を地につけられる。また、背凭れの傾斜により足が持ち上げられたリクライニング状態において、腰回りを浮かせたいときは足乗せ台を開き、足乗せ台を踵で踏ん張ることで腰回りを容易に浮かすことができるフットレスト付き介護用椅子を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するための手段について、着想の経緯も含めて、図を用いて詳細に説明する。なお、以降の明細書においてフットレスト付き介護用椅子1を、単に介護用椅子1とも記載する。また、本明細書において、取付け金物の材料としては金属に限らず樹脂も含み、「リクライニング状態」及び「リクライニング時」の語は、主に背凭れ2が最大傾斜状態を意味するものとして用いている。
【0019】
図1は、出願人が先に提案した背凭れ-座面-フットレスト連動機能を備えた(特許文献1、特許文献2)介護用椅子に、被介護者が乗っている状態を示した図である。介護用椅子1は、背凭れ2、肘掛30、フットレスト7、本体フレーム13(13a、13b)を備える。フットレスト7は、固定部71と開閉部72とを備えるが、
図1においては、固定部71の段差部位77に開閉部72が嵌合し、フットレスト7は固定部71と開閉部72(
図7、
図8参照)とがフラットな状態となっている。被介護者の足は地(床)につき安定する。被介護者の好みや動作に応じて、開閉部72の足乗せ台の開閉により足を地(床)に置くことも、足乗せ台に足を置くことも行うことができる。
【0020】
図2は、本発明の基本原理を説明するための図で、リクライニング状態にある被介護者が、踵で開閉部72を押圧することで生じる力とそのベクトルを示した図である。
図2(a)はその状態における側面図、
図2(b)はその状態における斜視図である。
【0021】
図2において、フットレスト7の開閉部72は開の状態であり、背凭れ2が傾斜し介護用椅子1はリクライニング状態となっている。かかる状態における被介護者の姿勢は、頭から腰回り方向に湾曲しながら臀部が最下点となり、そこから膝が頂点となりフットレストに足が伸びている。その姿勢は側面からみると横向きの略S字形状である。
【0022】
上述したように介護用椅子の利用者は、高齢者や障害者であって何らかの疾患又は障害を抱えている場合が多い。このため、被介護者が介護用椅子に乗ったまま下着の取り換え、特に臀部回りの下着の取り換え行うには、被介護者の臀部を持ち上げ、介護者の手の入る空間を確保する必要がある。
【0023】
図2に示すような被介護者の姿勢が横向きの略S字形状(リクライニング状態)において、被介護者が踵により、開状態にある開閉部72の足乗せ台76(
図8、
図9参照)を、押圧力F1で押圧(踏ん張る)すると、開閉部72から反力F1‘が生じ、背凭れ2は背中により押圧力F2で押圧され、背凭れ2から反力F2’が生じる。これらの反力(F1‘、F2’)により被介護者の腰回りには、腰回りを浮かせる力である浮力Fが生じる。
【0024】
これらの着想に基づく本発明は、前後に各一対の脚部を備えた本体フレームと、前記本体フレームに傾動可能に支持された背凭れと、前記背凭れに支持された座面フレームと、上端が前記座面フレームの先端に設けられた回動支点に回動可能に連結されたフットレストと、一端が前記フットレストの所定の位置に取付け金物で連結され、他端が前記背凭れの下端に取付けられ、前記背凭れの傾動により前記回動支点を軸として前記フットレストを上下方に回動させる駆動ロッドとを備えた介護用椅子において、
前記フットレストは、平坦部位と段差部位とを備えた段付き形状の固定部と、前記段差部位の端部に設けられた回転軸を介して折り曲げ可能に接続し、閉状態にあっては前記段差部位に嵌合し段差を平坦化し、開状態にあっては前記閉状態から時計回り方向に回転し、前記固定部と略直角に開き足乗せ台となる開閉部とを備えたことを特徴とするフットレスト付き介護用椅子である。
【0025】
前記開閉部が開状態であって、背凭れの傾動により被介護者の姿勢が横向き略S字形状となっている状態において、被介護者が開閉部を足で押圧することで生じる開閉部と背凭れとからの反力により腰回りを浮かす方向の力が作用する。これにより、介護者は被介護者の腰回りを容易に浮かすことができ、臀部回りの衣類を着脱する空間を確保することができる。
【0026】
フットレストの端部に設けられる回転軸の回転半径が、固定部の平坦部位の縦方向の厚みの略1/2とすることで、閉状態において開閉部が段差部位に嵌合しフットレスト全体が平坦化される。
【発明の効果】
【0027】
本発明により、レッグレストと足乗せ台とが一体化されたフットレストであって、被介護者の好みに応じて、レッグレストと足乗せ台とを分離することができるフットレスト付き介護用椅子を提供することができる。これにより、背凭れが直立した状態で足乗せ台が不要であればレッグレストと足乗せ台とを一体化し、被介護者は足を地につけることができる。
【0028】
また、背凭れの傾斜により足が持ち上げられたリクライニング状態において、腰回りを浮かせたいときはフットレストから足乗せ台を分離し、足乗せ台を利用することで腰回りを容易に浮かすことができるフットレスト付き介護用椅子を提供することできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、実施例の図面を参照して、本発明の好ましい実施形態について説明する。
図3は、本発明の一実施例である介護用椅子1の背凭れがほぼ直立した状態の側面図であり、
図3(a)はフットレスト7の開閉部72が開いた状態、
図3(b)はフットレスト7の開閉部72が閉じた状態の側面図である。
【0030】
このフットレスト付き介護用椅子1のフレーム構造について説明する。背凭れ2の下端は、回動支点3において、連結フレーム4の上端及びアクチュエーター5(例えばガススプリング)のロッド先端と回動可能に連結されている。
【0031】
また、駆動ロッド6の一端が回動支点3に回動可能に連結され、その他端は、フットレストフレーム7の長手方向中間の所定の位置で、取付け金物8に設けられた回動支点に回動可能に連結されている。さらに、フットレストフレーム7の上端は、回動支点で座面41を載置する座面フレーム11の前端に、回動可能に連結されている。この構成により、背凭れ2の下端が後方に移動したときに、フットレストフレーム7が、回動支点10を軸として反時計回りに回動することが可能になる。
【0032】
図4は、本発明の一実施例である介護用椅子1の背凭れがほぼ直立した状態の斜視図であり、
図4(a)はフットレスト7の開閉部72が開いた状態、
図4(b)はフットレスト7の開閉部72が閉じた状態の斜視図である。
【0033】
図4(a)に示すようにフットレスト7は、背凭れがほぼ直立した状態において、開閉部72が開いた状態であれば、座乗者は開閉部72を足乗せ台として使うことができる。また、
図4(b)に示すように足を床(地)につけたいときは、開閉部72を閉状態とすることで、平坦部71と一体的なフットレストとすることで、足を床(地)につけることができる。
【0034】
図5は、本発明の一実施例である介護用椅子1がリクライニングした状態を示した図であり、
図5(a)はフットレスト7の開閉部72が開いた状態、
図5(b)はフットレスト7の開閉部72が閉じた状態の側面図である。
図6は介護用椅子1の背凭れが最大に傾斜した状態(リクライニング状態)の斜視図であり、
図6(a)はフットレスト7の開閉部72が開いた状態、
図6(b)はフットレスト7の開閉部72が閉じた状態の斜視図である。介護用椅子1のリクライニング機能について、上述した内容と一部重複するところもあるが以下説明する。介護用椅子1のフレームは、下部フレーム13aと側面フレーム13bとからなる本体フレーム13と、背凭れ2、座面フレーム11、フットレスト7、回動支点3に連結する連結フレーム4(
図3参照)等とから構成されている。
【0035】
座面フレーム11は、その前方(介護用椅子の進行方向の前方)で、本体フレー13(側面フレーム13a)で支持されている。背凭れ2は、その中間の位置に設けられた回動支点で、座面フレーム11と回動可能に連結されている。
【0036】
また、背凭れ2は、その下部に設けられた回動支点3で、連結フレーム4の上端と回動可能に連結されている。さらに、連結フレーム4の下端が、本体下部フレーム13aに回動可能に支持され、その上端は回動支点3に回動可能に連結されている。これにより、背凭れ2も間接的に本体フレーム13で支持される。
【0037】
背凭れ2の傾動を付勢するアクチュエーター(本実施例ではガススプリング)5のピストン5a(
図3参照)の先端も、回動支点3に回動可能に連結され、その本体は本体フレーム13に回動可能に支持されている。
【0038】
また、フットレスト7の位置を固定する駆動ロッド6の一方の端部が、回動支点3に回動可能に連結され、その他方の端部がフットレスト7に回動可能に支持されている。フットレスト7は、その上端が、座面フレーム11の先端に設けられた回動支点10で、回動可能に支持されている。
【0039】
図3に見られるように、アクチュエーターのピストン5aは伸びきった状態で、回動支点3は図の左方(進行方向から見て後方)に位置しており、背凭れ2もほぼ直立に近い状態になっている。また、連結フレーム4の傾斜角(水平面との間の角)も大きく、回動支点3は高い位置を保っている。
【0040】
この座乗状態から、座乗者が背中で背凭れ2を押すと、アクチュエーターのピストン5aが後退して(図の右方に移動して)、背凭れ2の傾斜状態が進行する。背凭れ2の傾動を途中で保持することも可能であるが、最大限に傾斜させると、ピストン5aがアクチュエーター5に内蔵されるストッパー(図示していない)に突き当たって、それ以上の傾動は阻止される。この状態が背凭れ2の最大傾斜状態である。
【0041】
最大傾斜状態になると、回動支点3は大幅に右方に移動する。これにより、背凭れ2の傾斜が大きくなるとともに、連結フレーム4の傾斜角が小さくなり、回動支点3は下方にも移動する。
【0042】
リクライニング時の回動支点3の移動に伴って、駆動ロッド6も右方に移動する。駆動ロッド6の前端は、フットレストフレーム7に取付けられた取付け金物8に回動可能に連結されている。フットレストフレーム7の上端は回動で固定されており、駆動ロッド6の右方への移動に伴って、フットレスト7は回動支点を軸として、反時計回りに回動し、フットレストは上昇し、
図5に示すようなリクライニング状態になる。
【0043】
上述したリクライニング構造は、本発明固有のものではなく、リクライニングの際の座面後方の沈み込み機構は、特許文献1及び2のものと同じであり、リクライニングの際にフットレストを上昇させる機構は、特許文献2のものと同様である。
【0044】
本発明固有の新規な構成は、フットレスト7にクッション78が載置された平坦部位と段差部位77とを備えた段付き形状の固定部71と、前記段差部位77の端部に設けられた回転軸を介して折り曲げ可能に接続し、閉状態では前記段差部位77に嵌合し段差を平坦化し、開状態では前記閉状態から時計回り方向に回転し、前記固定部71と略直角に開く開閉部72とを備えるところにある。
【0045】
図7は、本発明の実施例である介護用椅子1のフットレスト7の構造を示す図で、開閉部72が開いた状態の図であり、
図8は、開閉部72が閉じた状態の図である。
図7において、
図7(a)は側面図、
図7(b)は前方からみた正面図であり、
図7(c)は背面からの斜視図である。フットレスト7は、フットレストフレーム73と、そこに載置されるクッション78とを有する固定部71と、固定部71に回動可能に接続する開閉部72とを備える。
【0046】
フットレストフレーム73は縦フレームと横フレームとからなる矩形で、縦フレームの端部には開閉部72を接続するためのネジ穴が設けられた取付け部80が設けられ、かかる取付け部80のネジ穴と開閉部72の取付け部74とがネジの締付により固着される。
【0047】
フットレストフレーム73の上側の横フレームには、駆動ロッド6が接続する取付け金物8が設けられている。
図7におけるフレーム73に載置されるクッション78は固定部71の略2/3を覆い、残りの部分が段差部位77となり、段差部位77には開閉部72の足乗せ台76が回転軸75により回転し嵌合する。この実施例ではクッション78は、フットレストフレーム73と分離して構成しているが、クッション78を挟着保持するフレームとして一体的に形成しても良い。
【0048】
図9は、本発明の実施例である介護用椅子1の開閉部72の構造を示す図で、開閉部72が開いた状態、即ち、足乗せ台76が水平になった状態を示す図であり、
図10は開閉部72が閉じた状態で、足乗せ台76が直立し、固定部71の段差部位77に嵌合している状態を示した図である。
【0049】
図9、
図10において、開閉部72は固定部71のフレーム73と固着するための取付け部74と、足乗せ台76と、足乗せ台76を開閉させる回転軸76とを備える。足乗せ台76は、開閉部72が開状態にあっては、水平状態でその回転が固定され、閉状態にあっては、直立状態でその回転が固定されるように構成されている。
【0050】
図9に示す状態における足乗せ台76の下側表面は、固定部71のクッション78と同様なクッション性のある素材で覆うことが好ましい。一方、足乗せ台76の上側表面は、踵で押圧できるようある程度固い素材のものとすることが好ましい。
【0051】
回転軸75の半径は、足乗せ台76が固定部の段差部77に嵌合し、フラットとなるような厚みとすることが好適である。足乗せ台76は取付け部79により回転軸75と一体化される。
【0052】
図11は固定部71の詳細を示した図であり、
図11(a)は背面図であり、
図11(b)は背面から見た斜視図である。クッション78がフットレストフレーム73に載置・固定され、背面フレーム73の取付け部80と開閉部72の取付け部74とがネジ締めされ固定される。フットレストフレーム73の横フレームには駆動ロッド6が接続する取付け金物8が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】本発明の一実施例である介護用椅子に被介護者が座乗している状態を示す図である。
【
図2】本発明の一実施例である介護用椅子でリクライニング状態にある座乗者(被介護者)が、踵で開閉部72を押圧することで生じる力とそのベクトルを示した図である。
【
図3】本発明の一実施例である介護用椅子1の背凭れがほぼ直立した状態の側面図である。
【
図4】本発明の一実施例である介護用椅子1の背凭れがほぼ直立した状態の斜視図である。
【
図5】本発明の一実施例である介護用椅子1がリクライニングした状態を示した図である。
【
図6】本発明の一実施例である介護用椅子1の背凭れが最大に傾斜した状態(リクライニング状態)の斜視図である。
【
図7】本発明の実施例のである介護用椅子1のフットレスト7の構造を示す図である。
【
図8】本発明の実施例のである介護用椅子1のフットレスト7の構造を示す図である。
【
図9】本発明の実施例の介護用椅子1の開閉部72の構造を示す図である。
【
図10】本発明の実施例の介護用椅子1の開閉部72の構造を示す図である。
【
図11】本発明の実施例の介護用椅子1の固定部71の構造を示す図である
【
図12】下記特許文献3に記載の車椅子の斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
1:介護用椅子
2:背凭れ
3:回動支点
4:連結フレーム
5:アクチュエータ
6:駆動ロッド
7:フットレスト
8:取付け金物
10:回動支点
11:座面フレーム
13:本体フレーム
13a:本体下部フレーム
13b:本体側面フレーム
14:回動支点
41:座面
71:固定部
72:開閉部
73:フットレストフレーム
74:取付け部
75:回転軸
76:足乗せ台
77:段差部位
78:クッション
79,80:取付け部
30:肘掛