(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035093
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】電動ヒンジ及びそれを用いた自動ドア装置
(51)【国際特許分類】
E05F 15/614 20150101AFI20220225BHJP
【FI】
E05F15/614
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020139181
(22)【出願日】2020-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】591013997
【氏名又は名称】株式会社 五十嵐電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】瀬下 直人
(72)【発明者】
【氏名】小林 隆泰
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA01
2E052AA02
2E052BA04
2E052CA06
2E052DA02
2E052DB02
2E052EA03
2E052EB01
2E052EC01
2E052GA08
2E052GB13
2E052GC01
2E052GC05
2E052GC10
2E052GD09
2E052HA01
2E052KA08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】屋内のドアの開閉に適した、小型で安価な電動ヒンジを提供する。
【解決手段】電動ヒンジ20は、ドア本体12に固定される被駆動側ヒンジと、枠11に固定される駆動側ヒンジと、両ヒンジで支持されるヒンジシャフトを備え、駆動側ヒンジ内にモータと減速機構が設けられ、モータを駆動することにより被駆動側ヒンジがヒンジシャフトを中心にして回転させるように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状の軸受部と平板状の駆動側羽根板部とを有する駆動側ヒンジと、
中空円柱部と平板状の被駆動側羽根板部とを有する被駆動側ヒンジと、
前記軸受部及び前記中空円柱部内に保持される1本のヒンジシャフトとを備えた電動ヒンジであって、
前記ヒンジシャフトは、本体部と前記本体部の一端に設けられた軸連結部とからなり、
前記軸受部は、前記ヒンジシャフトの前記本体部に対応し前記中空円柱部と同等の肉厚の厚肉軸受け部と、前記中空円柱部よりも薄肉の薄肉軸受け部とからなり、
前記駆動側ヒンジの前記薄肉軸受け部内に、モータと、遊星ギアを有し前記モータに連結された減速機構とが保持されており、
前記減速機構の出力軸と前記ヒンジシャフトとが、同一の軸上に配置されて固定されており、
前記ヒンジシャフトの前記本体部は、前記被駆動側ヒンジの前記中空円柱部に固定されると共に、前記駆動側ヒンジの前記厚肉軸受け部で軸支されており、
前記駆動側ヒンジは、ドア枠に固定される固定側ヒンジであり、
前記被駆動側ヒンジは、ドア本体に固定される可動側ヒンジであり、
前記駆動側ヒンジを介して前記ドア本体の重量を前記ドア枠で保持するようにして、前記駆動側ヒンジと前記被駆動側ヒンジが、前記ドア本体の回転中心軸線上に設置されるものであり、前記モータを駆動することにより、前記被駆動側ヒンジを、前記ヒンジシャフトを中心にして回転させるように構成されており、
前記軸連結部と前記減速機構の前記出力軸とは、軸方向には固定せず、円周方向に固定することにより、前記減速機構の出力軸と前記駆動側ヒンジとを前記円周方向に固定する第1の回転止め構造を介して接続され、
前記減速機構に設けられた係合面部と前記薄肉軸受け部内に設けられた一対の係合面部により、前記モータと前記減速機構の前記回転中心軸線周りの回転を阻止する第2の回転止め構造を形成し、
前記軸受部と前記モータ若しくは前記減速機構との間に、軸方向固定手段を設けたことを特徴とする電動ヒンジ。
【請求項2】
前記第1の回転止め構造は、前記ヒンジシャフトに設けた軸連結部と、前記減速機構の出力軸に設けられた軸連結部とによって構成されていることを特徴とする請求項1記載の電動ヒンジ。
【請求項3】
前記軸方向固定手段は、前記薄肉軸受け部に圧入され前記モータを前記薄肉軸受け部に着脱可能に固定する弾性部材によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動ヒンジ。
【請求項4】
前記モータは、一対の永久磁石と、前記永久磁石の外周に沿った曲面部と前記永久磁石間の平面部とを有する扁平断面のモータケースと、前記モータケース内に回転軸を介して回転自在に支持されるロータとを備えたブラシ付き直流モータであり、
前記薄肉軸受け部と前記モータとの間に、前記弾性部材としての円筒状の弾性キャップが挿入されており、
前記円筒状の弾性キャップは、一対の廻り止め部を有し、
前記中空状の前記軸受部と前記モータの扁平断面のモータケースの外周との間の空間に、前記円筒状の弾性キャップの前記廻り止め部を圧入することによって、前記モータを前記駆動側ヒンジに固定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動ヒンジ。
【請求項5】
前記モータは、ブラシレス直流モータであり、
前記モータを前記駆動側ヒンジに固定する前記軸方向固定手段として、取り外し可能なのスナップ フィット構造を、前記モータと前記駆動側ヒンジの前記薄肉軸受け部との間に設けたことを特徴とする請求項1に記載の電動ヒンジ。
【請求項6】
ドア本体と、前記ドア本体を回転可能に支持する複数のドアヒンジと、制御回路とを備えたドア装置であって、
少なくとも1つの前記ヒンジは、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の前記電動ヒンジであり、
前記ドア本体の近傍に設けられ、前記ドア本体の開閉の指示を受け付けるドア開閉スイッチと、
前記モータの負荷電流を検知する電流センサを備え、
前記制御回路は、前記ドア開閉スイッチ及び前記電流センサからの入力に基づいて、前記モータの運転・停止及び回転を制御し、前記ドア本体の開閉を制御するように構成されていることを特徴とする自動ドア装置。
【請求項7】
前記自動ドア装置が複数の前記電動ヒンジを備えている場合、前記制御回路は、前記複数の前記電動ヒンジの前記各モータのモータ電流を監視し、電圧を制御することで前記各モータの駆動トルクが同等の値になるように、前記各電動ヒンジを制御することを特徴とする請求項6に記載の自動ドア装置。
【請求項8】
前記制御回路は、前記ドア本体が設けられた部屋に設置されたエアコンの操作に連動して、前記部屋に設けられた前記ドア本体の開閉を制御するように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の自動ドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ヒンジ及びそれを用いた自動ドア装置に係り、特に、屋内のドアに組み込まれドアを自動的に開閉できる電動ヒンジ及びそれを用いた自動ドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドアには、種々のタイプのヒンジが採用されており、重量のある扉などに使用される既存のヒンジとして、旗ヒンジがある。この旗ヒンジは、ドアの開閉に従動する従動型のヒンジ(以下、従動型ヒンジ)であり、扉側ヒンジすなわち可動側ヒンジと枠等への取付け側ヒンジすなわち固定側ヒンジで上下に分かれており、夫々、軸方向長さの半分の長さの羽根板を有している。また、半自動ヒンジとして、従動型ヒンジよりもサイズが大きく、円柱状の軸受部内にコイルスプリングを内蔵し、このスプリングの力でドアの開閉をアシストするものも知られている。しかし、この半自動ヒンジも基本的には、手動で動作するヒンジであり、ドアを自動で開閉する機能はない。
【0003】
特許文献1には、本体と蓋部とを軸を介してヒンジ結合させることによって蓋部を開閉自在にした、携帯電話機用のモータ付き電動ヒンジ装置が開示されている。特許文献1に記載の電動ヒンジ装置は、本体側に固定されたギア機構部の出力軸と同軸でかつその半径方向外側に、出力軸に対して回動自在の第1の回動部材、回動自在でロック機構を有する第2の回動部材、回動自在で第2の回動部材に隣接する第3の回動部材が設けられており、第1の回動部材に蓋部が固定されている。出力軸の半径方向外側には、さらに、第1の係合部と第2の係合部も設けられている。携帯電話機1の蓋部を電動によって開く場合、出力軸の正転に伴って第3の回動部材が正転し第2の回動部材のロック機構が解除され、第2の回動部材に追従して第1の回動部材が回動することで蓋部がそれに追従して回動する。
【0004】
一方、多くの人が利用するドアのドアノブは、新型コロナウィルス感染症の感染源になる恐れがあるために、感染防止の対策として、アルコール消毒等が行われている。特許文献2には、ノロウィルスや新型コロナウィルス等の感染症の対策のために、不特定多数の人が利用するドアのドアノブを紫外線により自動的に除菌する発明が開示されている。
特許文献3には、赤外線センサやマイクロ波センサを使用して人体のような物体の存在を検知し、自動ドアの開閉を制御する自動ドアセンサ装置が開示されている。
特許文献4には、操作画面を空中画像として結像させ、ユーザの空中画像への操作を検知するタッチレスの制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-083432号公報
【特許文献2】特開2020-116430号公報
【特許文献3】特開2019-086521号公報
【特許文献4】特開2020-056806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
屋内の各種のドアに広く用いられている旗ヒンジ等の従動型ヒンジや半自動ヒンジは、人のドア開閉の操作に従動するであり、ヒンジによりドアを自動的に開閉する機能はない。
特許文献1に記載の電動ヒンジ装置は、本体側に固定されたギア機構部の出力軸と同軸でかつその半径方向外側に、複数の回転部材や係合部が設けられ、これらを介して、蓋部を開くように構成されている。構成が複雑であり、かつ、半径方向のサイズが大きなものとなっている。また、ギア機構部から蓋部が設けられた第1の回動部材へ、大きな回転トルクを伝達するものではない。
特許文献2に記載の発明は、ドアノブ付きのドアを対象とし、ドアノブに人が触ることが発明の前提となっており、ドアノブ無しのドアを自動的に開閉するものではない。
特許文献3に記載の自動ドアは、スライド式の自動ドアを対象としており、ヒンジで支持されたドアを対象とするものではない。
特許文献4に記載のタッチレスの制御装置は、屋内のドアをタッチレスで自動的に開閉することへの言及はない。
【0007】
本発明の課題の1つは、屋内の各種のドアを自動的に開閉することができる小型で安価な電動ヒンジを提供することにある。
本発明の他の課題は、外形やサイズが既存半自動ヒンジと同等で、この半自動ヒンジに置き換えて、容易にドア本体に組み込んで使用することが可能な電動ヒンジを提供することにある。
本発明の他の課題は、外形やサイズが既存の半自動ヒンジと同等で、かつ、耐久性に優れた電動ヒンジを提供することにある。
本発明の他の課題は、ヒンジで支持されたドアをタッチレスで開閉でき、ウィルス感染のリスクを低減できる、小型で安価な自動ドア装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの態様によれば、円柱状の軸受部と平板状の駆動側羽根板部とを有する駆動側ヒンジと、中空円柱部と平板状の被駆動側羽根板部とを有する被駆動側ヒンジと、前記軸受部及び前記中空円柱部内に保持される1本のヒンジシャフトとを備えた電動ヒンジであって、前記ヒンジシャフトは、本体部と前記本体部の一端に設けられた軸連結部とからなり、前記軸受部は、前記ヒンジシャフトの前記本体部に対応し前記中空円柱部と同等の肉厚の厚肉軸受け部と、前記中空円柱部よりも薄肉の薄肉軸受け部とからなり、前記駆動側ヒンジの前記薄肉軸受け部内に、モータと、遊星ギアを有し前記モータに連結された減速機構とが保持されており、前記減速機構の出力軸と前記ヒンジシャフトとが、同一の軸上に配置されて固定されており、前記ヒンジシャフトの前記本体部は、前記被駆動側ヒンジの前記中空円柱部に固定されると共に、前記駆動側ヒンジの前記厚肉軸受け部で軸支されており、前記駆動側ヒンジは、ドア枠に固定される固定側ヒンジであり、
前記被駆動側ヒンジは、ドア本体に固定される可動側ヒンジであり、前記ドア本体の重量を前記駆動側ヒンジで保持するようにして、前記駆動側ヒンジと前記被駆動側ヒンジが、前記ドア本体の回転中心軸線上に設置されるものであり、前記モータを駆動することにより、前記被駆動側ヒンジを、前記ヒンジシャフトを中心にして回転させるように構成されており、前記軸連結部と前記減速機構の前記出力軸とは、軸方向には固定せず、円周方向に固定することにより、前記減速機構の出力軸と前記駆動側ヒンジとを前記円周方向に固定する第1の回転止め構造を介して接続され、前記減速機構に設けられた係合面部と前記薄肉軸受け部内に設けられた一対の係合面部により、前記モータと前記減速機構の前記回転中心軸線周りの回転を阻止する第2の回転止め構造を形成し、前記軸受部と前記モータ若しくは前記減速機構との間に、軸方向固定手段を設けたことを特徴とする。
【0009】
本発明の1つの態様によれば、小型で安価な電動ヒンジを提供することができる。また、本発明の他の態様によれば、外形やサイズが既存半自動ヒンジと同等で、この半自動ヒンジに置き換えて、容易にドア本体に組み込んで使用することが可能な電動ヒンジを提供することができる。
【0010】
本発明の他の態様によれば、自動ドア装置は、ドア本体と、前記ドア本体を回転可能に支持する複数のドアヒンジと、制御回路とを備えたドア装置であって、少なくとも1つの前記ヒンジは、前記電動ヒンジであり、
前記ドア本体の近傍に設けられ、前記ドア本体の開閉の指示を受け付けるドア開閉スイッチと、前記モータの負荷電流を検知する電流センサを備え、前記制御回路は、前記ドア開閉スイッチ及び前記電流センサからの入力に基づいて、前記モータの運転・停止及び回転を制御し、前記ドア本体の開閉を制御するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の他の態様によれば、モータやリンク機構等具備したアクチュエータを設置する必要が無く、取り付けが容易な電動ヒンジを提供することができる。また、ヒンジで支持されたドアをタッチレスで開閉ができ、ウィルス感染のリスクを低減できる、小型で安価な自動ドア装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施例に係る電動ヒンジを具備する自動ドア装置が室内に設置された状態の外観を示す図である。
【
図2】
図1に示した自動ドア装置の全体のシステム構成図である。
【
図3】本発明の一実施例に係る電動ヒンジの外観を示す斜視図である。
【
図4】
図3に示した電動ヒンジの縦断面図及び横断面図である。
【
図5D】
図3に示した電動ヒンジの右側面図である。
【
図6】
図3に示した電動ヒンジにおける駆動側ヒンジと、電動機及び減速機構との関係を示す図である。
【
図7】本発明の一実施例に係る電動ヒンジの組み立て工程の一例を示す図である。
【
図8A】本発明の一実施例に係る自動ドア装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8B】本発明の一実施例に係る自動ドア装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の第2の実施例に係る自動ドア装置が室内に設置された状態の外観を示す図である。
【
図10】本発明の第3の実施例に係る自動ドア装置の外観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら、説明する。説明する。
【実施例0014】
本発明の第一の実施例について、
図1~
図8Bを参照しながら、説明する。
図1は、本発明の一実施例に係る電動ヒンジを具備する自動ドア装置が室内に設置された状態の外観を示す図であり、
図2は、
図1に示した自動ドア装置の全体のシステム構成図である。
本実施例の自動ドア装置10は、ドア枠11に電動ヒンジ20及び従動ヒンジ30を介して取り付けられたドア本体12と、制御回路40と、タッチレスのドア開閉スイッチ41(室内側ドア開閉スイッチ411、室外側ドア開閉スイッチ412)、室内に出入りする人の検知などを行うために前記ドア本体の前後に設けられたカメラ機能を有する近接センサ45(室内側近接センサ451、室外側近接センサ452)を備えている。14は室内の床である。また、ドアの全閉状態を検知するセンサを備えていても良い。
本実施例では、ドア枠11に1個の電動ヒンジ20が設けられているが、その数は、用途やドアの仕様などによって適宜変更であり、全部を電動ヒンジ20としても良い。
タッチレスのドア開閉スイッチ41は、ドアの「開」、「閉」、「内側ドアロック」、あるいはさらに「運転停止」等を指示するアイコンやボタンの画像などを空中に投映し、アイコン等の映像の位置に人の指先が重なるとセンサが、ドアの開閉操作を感知するように構成されている。なお、「内側ドアロック」は、例えばトイレ内のドアを内側からロックするための指示である。
【0015】
ドア開閉スイッチ41は、映像方式に代えて、表示画面と赤外線センサの組み合わせ等、他のタッチレス検知技術を採用しても良い。また、ドア開閉スイッチとして、ユーザによる音声による指示を受け付ける構成を採用しても良い。あるいはまた、ドア開閉スイッチ41は、スマートフォンなどのユーザインターフェースからの指令を、Wi-Fiで受信できるようにしても良い。また、ドア開閉スイッチ41はその近傍に表示画面を備え、制御回路40からのメッセージ等を画面に表示できるように構成されているのが望ましい。なお、タッチレスのドア開閉スイッチ41の具体的な構成例に関しては、特許文献4の引用を以って、詳細な説明に代える。
近接センサ45は、ドア開閉スイッチ41と共にあるいはドア開閉スイッチ41の代わりに、室内に出入りする人を検知する。例えば、ドア開閉スイッチ41の操作が困難な人、例えば、高齢者や車椅子の使用者等の要介護者、の室内への出入りを検知するものである。あるいは、健常者が洗濯時や買い物の帰り等、両手で荷物を抱えておりドア開閉スイッチ41を操作できない場合などにも、有効である。なお、近接センサ45の具体的な構成例に関しては、特許文献3の引用を以って、詳細な説明に代える。
【0016】
ドアノブ付きの手動ドアに代えてより安全な自動ドア装置を提供するという観点から、本発明の電動ヒンジ20を採用しつつ、ドア開閉スイッチ41をタッチ方式のスイッチとしても良い。この場合、ドア開閉スイッチ41は例えば静電容量式のスイッチとし、表示基板上の「開」、「閉」、「内側ドアロック」等を選択し指先等でタッチすることによる静電容量の変化を検出する方式としても良い。これにより、ドアノブに比べて、指の接触面積は大幅に低減される。さらに、近接センサを省略した自動ドア装置として構成することで、より安価な自動ドア装置を実現することもできる。
【0017】
電動ヒンジ20は、モータ260が内蔵されドア本体12を開閉駆動するヒンジである。一方、従動ヒンジ30は、スプリングを含めて動力源の無いヒンジであり、ドア本体12は、少なくとも1個の電動ヒンジ20と任意の数の従動ヒンジ30により、ドア本体12の回転中心軸線O-Oの廻りに回転自在に支持され、室内の出入り口13を開閉する。42は電磁ロック装置であり、ドア本体12の側部に設けられ、ばね力に抗して電磁力で移動するロックピンがドア枠11に設けられたピン孔43に係合してドア本体12をロックするように構成されている。
51は自動ドア装置の全体の電源装置であり、商用電源のコンセント50から供給される100VのAC電源を所定の電圧、例えば25VのDC電源に変換して出力する。
【0018】
次に、制御回路40は、ドア開閉制御ユニット401、センサ制御ユニット402、モータ駆動信号生成ユニット403、初期設定ユニット404、通信制御ユニット405、及びメモリ406を備えている。制御回路40は、例えば、メモリに記録された所定の手順を含むコンピュータプログラムを、CPUで処理し出力することのできる、マイクロコンピュータにより、実現される。46は、ドア開閉操作用のアプリケーションプログラムがインストールされたユーザインターフェースである。
【0019】
ドア開閉制御ユニット401は、センサ制御ユニット402で検知した情報や指令と、ユーザインターフェース46を介して、初期設定ユニット404に設定されメモリ406に記録された初期設定条件に基づき、モータ駆動信号生成ユニット403によりモータ駆動信号を生成し、PWM信号で電動ヒンジ20内のモータ260に設けられたモータドライバを介してHブリッジ回路を駆動して、モータの回転を制御し、ドア本体12を開閉する。
初期設定条件としては、例えば、ドア本体12の最大開度、開閉速度、同じドア本体12に設けられた他の電動ヒンジ20の有無、等がある。
52は電力線である。471及び472は、LANケーブルやPoE(Power over Ethernet)であり、制御回路40と、モータ260、ドア開閉スイッチ41、電磁ロック装置42、近接センサ45との間で、電力やデータを送受する。
モータ260の負荷電流を検知する電流センサのデータも、センサ制御ユニット402を介して、ドア開閉制御ユニット401に送られる。
通信制御ユニット405は、LANケーブルやPoE、Wi-Fi等を通じて、ドア開閉制御ユニット401を構成する各機器との間における電力やデータの送受を制御する。
【0020】
本発明の電動ヒンジは、主に、木製や樹脂製の屋内用の軽量ドアを対象としている。例えば、ドアの重量は5Kg程度、モータ260の動作電流は1A程度あるいはそれ以下、ドアの開き角度が100度の場合、ドアの開閉時間は、3秒程度である。
【0021】
次に、
図3を参照しながら、本発明の一実施例に係る電動ヒンジの構成について、説明する。
図3は電動ヒンジ20の外観を示す斜視図である。
電動ヒンジ20は、駆動側ヒンジ210と被駆動側ヒンジ220、1本のヒンジシャフト230、ワッシャ240、及び弾性キャップ250を備えている。ヒンジシャフトの材料としては、機械的強度の高い、例えば、ステンレス鋼を使用する。また、駆動側ヒンジ210や被駆動側ヒンジ220には、アルミニウム合金を使用する。電動ヒンジ20の使用回数が多くなると被駆動側ヒンジ220と被駆動側ヒンジ220の接触面が摩耗し、駆動側ヒンジ210とヒンジシャフト230の隙間に摩耗粉が入る可能性がある。そのため、ワッシャ240には、摩擦係数が小さく、耐摩耗性に優れたナイロン製のワッシャ240を配置し、摩耗粉の発生を防止している。また、電動ヒンジ20は、垂直方向にドアに取り付けられるものであり、被駆動側ヒンジ220にドアの重量がかかると、被駆動側ヒンジ220と駆動側ヒンジ210の接触面に摩擦が発生し、無駄な駆動トルクが必要となる可能性がある。ワッシャ240を介在させることで、この摩擦を軽減できる。
弾性キャップ250は、ゴム製又は樹脂製であり、これを駆動側ヒンジ210に押し込むことで、モータ260や減速機構270を駆動側ヒンジ210に固定する機能を有する。すなわち、弾性キャップ250は、軸受部と前記モータとの間の軸方向固定手段として機能する弾性部材である。また、この弾性キャップ250は、垂直方向にドアに取り付けられている電動ヒンジ20の駆動側ヒンジ210から、モータ260や減速機構270がそれらの自重で落下するのを防止する機能もある。
【0022】
駆動側ヒンジ210は、ドア枠11若しくはドアを支える壁等の固定部材(以下、単に、ドア枠)に固定される固定側ヒンジであり、円柱状の軸受部211、平板状の駆動側羽根板部212、及び少なくとも2つの取付穴213を有している。
被駆動側ヒンジ220は、ドア本体12に固定される可動側ヒンジであり、中空円柱部221、平板状の被駆動側羽根板部222、及び少なくとも2つの取付穴223を有している。すなわち、被駆動側ヒンジ220はドア本体12の重量を駆動側ヒンジ210で保持するようにして、ドア本体12の回転中心軸線O-O上に設置されるものである。換言すると、ドア本体12の重量は、被駆動側ヒンジ220、駆動側ヒンジ210を介して、ドア枠11により保持される。
また、駆動側ヒンジ210の円柱状の軸受部211の外径と被駆動側ヒンジ220の中空円柱部221の外径は、1つの例として、外観上、同じ若しくはほぼ等しい。用途に応じて、例えば、大きな駆動トルクの必要な場合には、駆動側ヒンジ210の円柱状の軸受部211の外径を大きくしても良い。一例として、電動ヒンジ20の円柱状の軸受部211の外径は、既存の半自動ヒンジと同じ、例えば、24mmであり、また、軸方向長さは160mm程度である。なお、ヒンジシャフト230の長さとの関係で、被駆動側ヒンジ220の軸方向長さを長くする場合、円柱部221の一部は中実部となることは言うまでもない。
【0023】
次に、
図4~
図6を参照しながら、電動ヒンジの内部構造について説明する。
図4(A)は
図3の縦断面図、
図4(B)は
図3の横断面図である。また、
図4(A)のA-A断面を
図5Aに、
図4(A)のB-B断面を
図5Bに、
図4(A)のC-C断面を
図5Cに、夫々示す。
図5Dは、電動ヒンジの右側面図であり、
図6は、電動ヒンジにおける駆動側ヒンジと、電動機及び減速機構との関係を示す図である。
ヒンジシャフト230は、円柱状の本体部231と、その延長部に設けられた接続部232を有している。接続部232は、穴又は溝等で構成されている。
【0024】
駆動側ヒンジ210の円柱状の軸受部211は、肉厚の厚肉軸受け部2110と、この厚肉軸受け部2110よりもかなり薄肉の薄肉軸受け部2120とからなっている。換言すると、1本のヒンジシャフト230を共通に保持する、厚肉軸受け部2110の軸穴2130と被駆動側ヒンジ220の中空円柱部221の軸穴は、径が等しい。他方、モータ260や減速機構270を収容する薄肉軸受け部2120の穴2140の径は軸穴2130の径よりもかなり大きい(
図6参照)。
【0025】
厚肉の厚肉軸受け部2110は、ヒンジシャフト230の本体部231を支持している。薄肉軸受け部2120には、モータ260と減速機構270が挿入・固定され、これらは軸方向固定手段として機能する弾性キャップ250のキャップ本体251で封止されている。すなわち、駆動側ヒンジは、モータ及び減速機構を収容するケース機能を有している。モータ260は、この実施例では、ブラシ付き直流モータである。直流モータ260の回転軸261は遊星ギアを有する減速機構270に連結されている。減速機構270の出力軸272の軸連結部275は、断面が半円形状であり、ヒンジシャフト230の接続部232の半円形状の穴に対して、軸方向には移動可能で、円周方向には拘束された関係で、相互に係合するように構成されている(第1の回転止め構造)。なお、出力軸272の断面形状と接続部232の断面形状は、この例に限定されるものではなく、両者が、軸方向には移動可能で、円周方向には拘束された関係で、相互に係合し得るようになっていればよい。
すなわち、駆動側ヒンジ210の円柱状の軸受部211内に、直流モータ260と、この直流モータに連結された減速機構270と、この減速機構の出力軸272をヒンジシャフト230の一端に連結する軸連結部275、232とが同一の軸Oh上に配置されている。
なお、軸方向固定手段は、薄肉軸受け部2120と減速機構270との間に設けても良い。例えば、薄肉軸受け部2120と減速機構270の外周部との間に、リング状の弾性体からなる軸方向固定手段を設け、直流モータ260を介して減速機構270を薄肉軸受け部2120の段部に対して軸方向左側に押し付け、リング状の弾性体を半径方向外側に拡大させることで、減速機構270と薄肉軸受け部2120との間の摩擦力により、軸方向固定手段として機能させるようにしても良い。
【0026】
直流モータ260は、鉄等の磁性体材料で形成される有底筒状のモータケース内に固定される一対(2極)の永久磁石と、モータケース内に回転軸261を介して回転自在に支持されるロータとを備えている。モータケースの外周部は、一対の永久磁石の外周に沿った一対の曲面部と、これら永久磁石間の一対の平面状壁部262とを有する扁平形状となっている。直流モータのロータは、コイルと整流子を有している。ブラシ付き直流モータのエンドキャップには、整流子に摺接して、コイルに電流を供給するための、一対のブラシが収容されている。これら一対のブラシは、一対の電源ターミナルに接続されている。この電源ターミナルから、モータドライバに電力が供給される。
【0027】
断面が円形の薄肉軸受け部2120とモータ260の一対の平面状壁部262との間には、弾性キャップ250の一対のアーム部252が挿入され、モータ260の軸方向の移動を阻止するようになっている。弾性キャップ250のキャップ本体251の中央には、回転軸261の軸方向の移動を許容する逃げ穴254が設けられている。
直流モータ260の一対の電源ターミナルに接続されたPoE(Power over Ethernet)471は、弾性キャップ250の一対のリード線穴253を経て、制御回路40や電源装置51に接続されている。モータ260の負荷電流を検知する電流センサのデータもPoE471を介して、制御回路40に送られる。
【0028】
また、減速機構270は、直流モータ260の回転軸261の回転を減速することで、その出力軸272から、大きなトルクを得るものである。すなわち、直流モータ260の回転軸261の回転を、減速機構の外周を構成するケーシングの左端のエンドブラケット273に設けられた軸受から突出した出力軸272に伝達するように構成されている。減速機構のケーシングの内部には、複数段、例えばギア比が1/400の3~4段の減速機構が、直流モータ260の回転軸261の軸方向に連続して設置されている。この減速機構は、回転軸(入力軸)261の端に固定されたサンギアと、このサンギアとその外側のリングギアとに噛合う3個の遊星ギアとを備えている。3つの遊星ギアの軸を保持するベース(出力軸)が、さらに次の段の減速機の入力軸となる。なお、ギア比は、1/100~1/1000、望ましくは、1/300~1/500である。
【0029】
減速機構270のケーシングのエンドブラケット273には、減速機構270及びこれと一体のモータ260の、軸周りの回転を阻止するための、係合面部274が設けられており、これに対応する係合面部2150が、駆動側ヒンジ210の軸受部211の厚肉軸受け部2110と薄肉軸受け部2120の境界付近に設けられている(第2の回転止め構造)。なお、駆動側ヒンジ210に対するモータ260及び減速機構270の、軸周りの回転を阻止する、第2の回転止め構造は、平面部の組み合わせに限定されるものではなく、互いに軸周りの回転が阻止される係合関係になっていれば良く、他の形状でも良い。
【0030】
ヒンジシャフト230の他端は、被駆動側ヒンジ220の中空円柱部221に、圧入等で固定されており、モータを駆動することにより、ヒンジシャフト230を中心にして、被駆動側ヒンジ220を回転させるように構成されている。
【0031】
本実施例では、駆動側ヒンジ210の円柱状の軸受部211の厚肉軸受け部2110の軸Oh方向の長さLは、被駆動側ヒンジ220の中空円柱部221の軸方向長さとほぼ等しい。
換言すると、既存の従動式の旗ヒンジや半自動ヒンジは、駆動側ヒンジと被駆動側ヒンジの、軸方向長さが等しい場合が多いのに対し、本実施例の電動ヒンジは、駆動側ヒンジの軸方向長さが被駆動側ヒンジの軸方向長さの1~10倍、望ましくは2~4倍程度である。このような構成とすることで、ヒンジシャフト230の保持部分や軸受け部分の機械的強度を十分に確保し、ドアの駆動に必要な駆動トルクを出力できる直流モータを構成しつつ、既存の半自動ヒンジと同等の外径のヒンジを実現することができる。駆動側ヒンジの長さの割合を長くするほど、直流モータの駆動トルクを大きくできるが、部品が長大化し価格が上昇する。用途によっては、既存の半自動ヒンジの旗ヒンジと同様に、駆動側ヒンジと被駆動側ヒンジの軸方向長さを等しくしても良い。
【0032】
次に、
図7を参照しながら、本発明の一実施例に係る電動ヒンジの組み立て工程の一例を説明する。
図7(A)に示したように、2極のブラシ付き直流モータ260は、一対の平面状壁部262を有している。
図7(B)に示したように、この直流モータ260と減速機構270とは、一体に形成されている。そして、弾性キャップ250の一対のアーム部252を、直流モータ260の外側に差し込む。さらに、第2の回転止め構造に関して、
図7(C)、(D)に示したように、減速機構270の係合面部274を、駆動側ヒンジ210の薄肉軸受け部2120の係合面部2150に当接させる。
【0033】
一方、
図7(E)、(F)に示したように、ヒンジシャフト230は、軸連結部232の無い側が、被駆動側ヒンジ220の中空円柱部221に、圧入等で固定される。そして、第1の回転止め構造に関して、
図7(G)に示したように、ヒンジシャフト230の軸連結部232の半円形状の穴に、出力軸272の断面が半円形状の軸連結部275を挿入することで、
図7(H)に示したように、ヒンジシャフト230と減速機構270とが円周方向に拘束された関係で、駆動側ヒンジ210と被駆動側ヒンジ220とが連結される。この場合、直流モータ260の後方に固定されている弾性キャップ250を利用してモータ260及び減速機構270を回転若しくは軸方向に移動させる作業を行うことで、薄肉軸受け部2120の右端の開口部からは離れた位置にある第1の回転止め構造や第2の回転止め構造に関して、位置合わせや結合が容易になる。
先に述べたように、モータ260及び減速機構270は、駆動側ヒンジ210に対して、換言するとドア枠11に対して、軸方向の移動及び軸周りの回転が阻止されているので、この状態で、直流モータ260が回転すると、減速機構270の出力軸272が減速されて回転し、その回転力が、被駆動側ヒンジ220、すなわち、ドア本体12に伝達され、ドア本体12が開閉される。
【0034】
また、本実施例では、ヒンジシャフト230と減速機構270の出力軸272の軸/円周方向の固定は圧入力ではなく、円周方向の固定はヒンジシャフトの軸連結部232の穴と減速機構270の出力軸272の軸連結部275とを回転止め構造とし(第1、第2の回転止め構造)、軸方向の固定は、弾性キャップ250をモータ260の後方から薄肉軸受け部2120に圧入して、その摩擦力で保持力を確保するようにしている。そのため、ヒンジシャフト230、直流モータ260及び減速機構270を、同一の軸Oh上に配置するのが容易であり、直流モータ260及び減速機構270の長寿命化を可能にしている。これにより、本実施例の電動ヒンジは、ドアの開閉動作10万回に耐える、耐久特性を有している。また、ヒンジシャフト230、直流モータ260及び減速機構270を、同一の軸Oh上に維持できることは、直流モータ260及び減速機構270における騒音の発生を低減することにもつながる。
【0035】
次に、
図8A~
図8Bのフローチャートを参照しながら、制御回路40によって制御される自動ドア装置の構成及び動作の一例について、説明する。換言すると、制御回路40のドア開閉制御ユニット401、センサ制御ユニット402、モータ駆動信号生成ユニット403、初期設定ユニット404、通信制御ユニット405の各々の機能について、説明する。なお、この例では、ドア開閉スイッチ41が、「開閉」、「開」、「閉」、「停止」可能のいずれかを設定可能に構成されているものとする。
ドア開閉制御ユニット401は、まず、センサ制御ユニット402及びメモリ406から、各センサ411、412、451、452からの過去及び現在の情報と、初期設定されたドアの制御に関連するデータを取得する(S801)。
例えば、トイレのドアのように、ドアが室内にいる人の指示で内側からロックされた「内側ドアロック」の状態にある場合、室内に入ろうとするユーザに、「内側ドアロック有」の表示を行う(S802、S803)。内側ドアロックが無い場合、次に、ユーザの選択した条件を判別する。
【0036】
ユーザの指示が、「開閉」である場合(S804)、ドア開閉制御ユニット401は、ドアを開き、その後ドアを閉じる。そのために、ドア開閉制御ユニット401は、過去及び現在の情報に基づき、ドアを開いても差し支えないか判定し、ドアを開けられない状態の場合、ドアを開くことができない旨の表示を行う(S805、S806)。例えば、ドアが室内側に開くタイプのドアであって、ある人が室外側から室内へ入ろうとする場合に、先に他の人がドアの反対側からドアの開きの指示をしている場合がある。このような、1つのドアに対する出入りの競合状態で、いきなりドアを開くと、室内側のドアの前で待機している人にドアが当たる可能性もある。そのため、ドア開閉制御ユニット401は、過去及び現在の情報に基づき、ドアを開いても差し支えないか判定し、ドアを開少なくとも、室内の人が外へ出られる開度までドアが開かれてから、次に、室外の人が室内へ入れるようにドアの開きを制御する。
【0037】
ドアを開くことができる状態になったら、モータのドライバに駆動指令を送り、電動ヒンジ20のモータ260を駆動してドアを開く(S807)。モータ駆動信号生成ユニット403は、電動ヒンジ20が複数個ある場合には、各電動ヒンジ20のモータ260に流れる電流を監視し、電圧を制御することで、各モータ260の駆動トルクが同等の値になるように制御する。
モータの運転中、異常を検知したら、ドア開閉制御ユニット401は、モータ260の運転を停止し、ドアロックがあればそれを解除する(S808、S809)。例えば、ドアに人の指が挟まった場合、モータの駆動トルク、換言するとモータ電流が正規の動作電流、例えば1Aを超えて増大する。そのため、モータ電流が例えば1.5A以上の場合、異常と判定し、モータを停止させる。停電時なども停止する。次に、ドア開閉制御ユニット401は、モータの運転開始後の時間経過等により、ドアが全開か、換言すると、ドアの開度が初期設定された例えば100度に達したかを判定し、ドアが全開の場合、モータの回転を停止する(S810、S811)。その後、ユーザが室内に入ったことを、カメラ等の近接センサ45で確認するか、所定の時間経過等の条件で判定し、ドアの閉動作の開始を決定し、モータ260によりドア閉方向に電動ヒンジ20を駆動する(S812、S813)。モータの運転中、異常を検知したら、モータ260の運転を停止し(S814、S815)、ドアの全閉と判定したら、モータの運転を停止し、電磁ロック装置42を作動させて、ドアロックを行う(S816、S817)。
さらに、内側ドアロックの要求がある場合には、電磁ロック装置42を作動させて、内側ドアロックを行い、外部からはドアを開けられないようにする。但し、この電磁ロック装置42は、停電時には、ロックが解除されるように構成されている(S818、S819)。
【0038】
ユーザの指示が「開」である場合(S820)、ドア開閉制御ユニット401は、過去及び現在の情報に基づき、ドアを開いても差し支えないか判定し、ドアを開けられない状態の場合、その旨の表示を行う(S821、S822)。以降、ドア「開閉」のS807~S811と同様の処理を行う(S823~S827)。
【0039】
ユーザの指示が、「閉」である場合(S830)、ドア開閉制御ユニット401は、過去及び現在の情報に基づき、ドアを閉じても差し支えないか判定し、ドアを閉じられない状態の場合、その旨の表示を行う(S831、S832)。以降、ドア「開閉」のS813~S819と同様の処理を行う(S833~S839)。
ユーザの指示が、「停止」である場合(S840)、モータを停止しても差し支えないか判定し、停止できない状態の場合、その旨の表示を行い(S841)、「停止」できる状態になったら、モータを停止する(S842)。
【0040】
本実施例の電動ヒンジは、外形やサイズ、あるいは外観が既存の半自動ヒンジと同等で、全体として小型で安価なものである。そのため、既存の半自動ヒンジに置き換えて、容易にドア本体に組み込んで使用することが可能である。ドア本体の外側に、モータやリンク機構等具備したアクチュエータを設置する必要が無く、取り付けが容易である。
【0041】
また、ドアの開閉に伴うストレスを繰り返し受けることで、ヒンジシャフト230が絶えず傾き、この傾きによりモータ260や減速機構の寿命を短くする可能性がある。本実施例の電動ヒンジでは、ヒンジシャフト230と減速機構270の出力軸272とが、軸連結部232、275等の回転止め構造を介して連結されており、かつ、ヒンジシャフト230を、剛性の高い駆動側ヒンジ210の厚肉軸受け部2110と厚肉の被駆動側ヒンジ220の中空円柱部221とで保持している。そのため、ヒンジシャフト230の傾きを抑え、ヒンジシャフト、モータ260の回転軸261、及び減速機構270の出力軸272を常に一軸上に保持することで、モータ260や減速機構270の耐久性を向上させることができる。
【0042】
また、本実施例の電動ヒンジを用いた自動ドア装置を採用することで、部屋に出入りする人がドアノブに触れることなく、ドアの開閉が自動的に行われる。そのため、高齢者や要介護者でも、容易に部屋への出入りができる。さらに、自覚症状のない新型コロナウィルス感染症の感染者が、ドアノブに触れることで他の人へ感染させることを防止でき、ドアノブのアルコール消毒作業も不要になる。
【0043】
また、電動ヒンジ20は、ドア本体12の回転中心軸線O-Oに沿って設置されているため、モータによる回転トルクは小さい。そのため、非常時に、ユーザがドア本体12の縁(回転中心軸線O-Oとは反対の側)を手で軽く押すだけで、モータによる回転トルクに抗して、容易にドアの開閉を行うことができ、これにより、安全を確保できる。
駆動側ヒンジ210の円柱状の軸受部211に、減速機構270の遊星ギアのケース機能とモータ260のケース機能を持たせることで、ドアの駆動に必要なトルクを確保しつつ、電動ヒンジ20の外径は細いものとすることができる。
本実施例の電動ヒンジを用いた自動ドア装置を採用することで、エアコンの使用時に、自動的にドアを閉めることができる。そのため、高齢者や要介護者でも、エアコンの使用が楽に行えるようになる。
なお、制御回路40の上位の制御手段として、建物全体のドアやエアコンをコントロールできる統括制御部と、建屋内の通信ネットワークが存在すると、より適切な制御が可能になる。