(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035101
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】浮遊式砂浜育成ユニット及びそれを用いた砂浜育成装置
(51)【国際特許分類】
E02B 3/06 20060101AFI20220225BHJP
【FI】
E02B3/06 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020139190
(22)【出願日】2020-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】501485375
【氏名又は名称】恩田 銀二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100081558
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 晴男
(74)【代理人】
【識別番号】100154287
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 貴広
(72)【発明者】
【氏名】恩田 銀二郎
【テーマコード(参考)】
2D118
【Fターム(参考)】
2D118AA11
2D118CA02
2D118CA07
2D118JA06
2D118JA15
(57)【要約】
【課題】比較的手軽に且つ低コストにて施工することができ、確実且つ有効に消波作用を発揮して、津波、高波等の被害の発生を有効に防止し、同時に砂浜の育成に寄与し得る浮遊式砂浜育成ユニットを提供することを課題とする。
【解決手段】沖側に向けられる沖側端部2と陸側に向けられる陸側端部3とを有していて、沖側端部2が枢支されることにより波の上下動に呼応して揺動する浮動体1と、沿岸部の比較的浅瀬の水中に立設されて沖側端部2を枢支するスタンド4と、浮動体1の陸側端部3を受けてその海底埋没を防止する受け台5とから成り、浮動体は複数本の中空パイプ6によって構成され、中空パイプ6群は、その沖側端部2が固定フレーム16を介してスタンド4において枢支され、中間部が波受け桟7によって連結される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
沖側に向けられる沖側端部と陸側に向けられる陸側端部とを有していて、前記沖側端部が枢支されることにより海面の上下動に呼応して揺動する浮動体と、沿岸部の比較的浅瀬の水中に立設されて前記沖側端部を枢支するスタンドと、前記浮動体の前記陸側端部の下側に設置されて、前記浮動体の前記陸側端部を受けてその海底埋没を防止する受け台とから成り、
前記浮動体は複数本の中空パイプによって構成され、前記中空パイプ群は、その沖側端部が固定フレームを介して前記スタンドにおいて枢支され、中間部が波受け桟によって連結され、
前記波受け桟は、沖側に傾斜する状態で上半部が前記中空パイプ群の上側に露出し、下半部がその下側に露出することを特徴とする浮遊式砂浜育成ユニット。
【請求項2】
前記固定フレームの沖側端部に錘材が取り付けられる、請求項1に記載の浮遊式砂浜育成ユニット。
【請求項3】
前記中空パイプは長さが10mほどのFRPコンポーズパイプである、請求項1又は2に記載の浮遊式砂浜育成ユニット。
【請求項4】
前記波受け桟の上面は曲面である、請求項1乃至3のいずれかに記載の浮遊式砂浜育成ユニット。
【請求項5】
前記スタンドは、前記浮動体の上方への回動端の規制手段を備える、請求項1乃至4のいずれかに記載の浮遊式砂浜育成ユニット。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の浮遊式砂浜育成ユニットを複数、波の進行方向に対して傾斜させ、且つ、前記各ユニットの末端が直線状になるようにして適宜間隔置きに配設して成る浮遊式砂浜育成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は浮遊式砂浜育成ユニット及びそれを用いた砂浜育成装置に関するものであり、より詳細には、海や河川の水中に設置されて波力を抑制し、以て、砂浜育成機能を発揮する浮遊式砂浜育成ユニット及びそれを用いた砂浜育成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、津波や高波等による被害を防止するために、沿岸部の比較的浅瀬に設置される消波装置が種々考えられている。しかし、従来提案されていた消波装置は、その構造上それ自体高価となるだけでなく、設置にも手間がかかり、トータルコストが嵩む欠点があった。この欠点を解消するために本発明者は、単純な構造で、装置自体のコスト及び設置コストが比較的低廉で、しかも有効な消波効果を有する消波方法及び消波装置を開示した(特許第3609052号)。
【0003】
その発明に係る消波装置は、長さ方向に伸びる開口側面を有する断面C字形状の消波体を1又は複数、開口側面を波の進行方向に向け且つ波の進行方向に対して傾けて、沿岸部の比較的浅瀬の水中に設置して成り、波が消波体の沖側端部に当たった際に消波体の前記沖側端部内と陸側端部内との間に生ずる水流圧力差により、消波体内に流れが生ずることを可能にしたものである。
【0004】
しかし、この消波装置の場合は、従来の装置よりも低廉ではあるが、固定杭を含む消波体自体のコスト及びその設置工事のためのコストが嵩むため、よりコストを抑えた消波装置の出現が切望されていた。また、その消波装置の場合、設置時に消波体間に大きな隙間ができ、その隙間から波が抜け、その抜けた波が消波作用を不十分なものとするおそれもある。
【0005】
そこで本発明者は、沖側に向けられる沖側端部と前記沖側端部よりも大きな浮力を有していて陸側に向けられる陸側端部とを有していて、前記沖側端部が枢支されることにより波の上下動に追随して揺動する浮動体と、沿岸部の比較的浅瀬の水中に立設されて前記沖側端部を枢支するスタンドと、前記陸側端部の受け手段とから成る消波体を複数、適宜間隔置きに横並びにし、且つ、波の進行方向に対して水平方向に傾斜するように設置して成り、前記浮動体は、その沖側端部が、前記スタンドによって小潮の干潮時に水平状態となるように枢支され、また、その陸側端部が、前記陸側端部受け手段によって大潮の干潮時において水位以上となるように保持されることによりその海底埋没が防止されることを特徴とする浮遊式砂浜育成ユニットを提案した(特許第5665820号)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3609052号
【特許文献2】特許第5665820号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この提案に係る浮遊式砂浜育成ユニットの場合、期待通りの砂浜育成効果を発揮し、成果を上げているが、その装置の場合、浮動体として、主に竹又は笹を多数本束ねたものが用いられていたため、破損しやすく、波に対する抵抗が低下しやすいという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、シンプル且つ堅牢な構成であって、耐久性に富み、波に呼応して揺動しつつ、波に対して強い抵抗力を発揮することで消波効果を奏し、以て、波勢によって海底が抉られることを防止すると共に、砂浜を育成することができる浮遊式砂浜育成ユニット及びそれを用いた砂浜育成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、沖側に向けられる沖側端部と陸側に向けられる陸側端部とを有していて、前記沖側端部が枢支されることにより海面の上下動に呼応して揺動する浮動体と、沿岸部の比較的浅瀬の水中に立設されて前記沖側端部を枢支するスタンドと、前記浮動体の前記陸側端部の下側に設置されて、前記浮動体の前記陸側端部を受けてその海底埋没を防止する受け台とから成り、
前記浮動体は複数本の中空パイプによって構成され、前記中空パイプ群は、その沖側端部が固定フレームを介して前記スタンドにおいて枢支され、中間部が波受け桟によって連結され、
前記波受け桟は、沖側に傾斜する状態で上半部が前記中空パイプ群の上側に露出し、下半部がその下側に露出することを特徴とする浮遊式砂浜育成ユニットである。
【0010】
一実施形態においては、前記固定フレームの沖側端部に錘材が取り付けられる。また、前記中空パイプは長さが10mほどのFRPコンポーズパイプとされる。
【0011】
一実施形態においては、前記波受け桟の上面は曲面にされる。
【0012】
一実施形態においては、前記スタンドは、前記浮動体の上方への回動端の規制手段を備える。
【0013】
上記課題を解決するための請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の浮遊式砂浜育成ユニットを複数、波の進行方向に対して傾斜させ、且つ、前記各ユニットの末端が直線状になるようにして適宜間隔置きに配設して成る浮遊式砂浜育成装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上記のとおりのものであり、シンプル且つ堅牢な構成であって、耐久性に富み、波に呼応して揺動起立しつつ、波に対して強い抵抗力を発揮することで消波効果を奏し、以て、波勢によって海底が抉られることを防止すると共に、砂浜を育成することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る浮遊式砂浜育成ユニットの設置状態を示す側面図である。
【
図2】本発明に係る浮遊式砂浜育成ユニットの平面図である。
【
図3】本発明に係る浮遊式砂浜育成ユニットにおける波受け桟を示す側面図である。
【
図4】
図3におけるE-E視図及びF-F視図である。
【
図6】本発明に係る浮遊式砂浜育成ユニットにおける固定フレームを示す平面図及びD-D線断面拡大図である。
【
図7】本発明に係る浮遊式砂浜育成ユニットにおける押さえ枠を示すC-C視断面図及び斜視図である。
【
図8】本発明に係る浮遊式砂浜育成装置の設置状態を示す図である。
【
図9】本発明に係る浮遊式砂浜育成装置の作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
台風等の低気圧の影響で海面が上昇して波が高くなると、海底に所謂底荒れが起こって海底の砂が舞い上がり、舞い上がった砂は潮流に乗って陸側に運ばれる。しかし、陸側に運ばれた砂は、沖側への流れ、特に離岸流によって再び沖側に戻されてしまう。そのため、離岸流によって砂浜が削られることはあっても、育成されることはない。この離岸流は、波によって海水が沖から海岸に打ち寄せられて、海岸に貯まった海水が沖へ戻ろうとして起こるので、波を押さえれば離岸流が弱くなり、その結果、潮流に乗って陸側に運ばれてきた砂がよどみ、次第に堆積してくるので、砂浜を育成することができることになる。
【0017】
本発明者は、以上のような自然の摂理の理解の下に本発明を完成させたものである。以下に、本発明の実施の形態を、添付図面に依拠して説明する。本発明に係る浮遊式砂浜育成ユニットは、
図1乃至
図3に示されるように、海中設置時に沖側に向けられる沖側端部2と陸側に向けられる陸側端部3とを有していて、沖側端部2付近が枢支されることにより海面の上下動に呼応して揺動する浮動体1と、沿岸部の比較的浅瀬の水中に立設されて浮動体1の沖側端部2を枢支するスタンド4と、浮動体1の陸側端部3の下側に設置されて、浮動体1の陸側端部3を受けてその海底埋没を防止する受け台5とから成る(
図1)。
【0018】
浮動体1は、沖側端部2付近がスタンド4において枢支され、中間部が波受け桟7によって連結された複数本の中空パイプ6で構成される(
図2)。中空パイプ6としては、例えば、長さ10mほどの軽量で海水による腐食の心配がないFRPコンポーズパイプを用いることが推奨される。この中空パイプ6を、適宜間隔置きに5~10本並置する(図示した例では6本)。
【0019】
波受け桟7は、断面が扁平なかまぼこ型の横長材で、沖側に傾く状態で中空パイプ6群を取りまとめるように取り付けられ、複数の中空パイプ6を一体化してその浮遊動作を安定させる。波受け桟7は、例えば
図3,4に示されるように、その中間部に、中空パイプ6を挿通するための挿通孔8を、中空パイプ6の数分斜め向きに貫設したものである。
【0020】
波受け桟7の中空パイプ6群に対する固定方法は任意であるが、例えば、波受け桟7の裏面にボルト止めされるベース板9と、中空パイプ6の外径に対応する間隔でベース板9に固定される一対の折曲された挟持板10,11から成る固定手段を用いることができる。この固定手段を用いる場合、各中空パイプ6を、上下の挟持板10,11間を通して挿通孔8内に挿通し、そのまま所定位置までずらし動かした後、上下の挟持板10,11を多数のボルト12により締着する(
図3,4)。かくして波受け桟7は、沖側に傾斜する状態で上半部が中空パイプ6群の上側に露出し、下半部がその下側に露出することになる。
【0021】
スタンド4は、100~200m沖合の比較的浅瀬の水中に立設されて、浮動体1の沖側端部2を枢支する。スタンド4は、例えば、一対の支柱14,14と横材15をH型に組んで構成され、支柱14,14が海底に立設される(
図5)。そして、スタンド4の支柱14,14間に、浮動体1の沖側端部2を固定支持する固定フレーム16が、揺動可能に取り付けられる。そのために、例えば、固定フレーム16の側板に軸孔17が開けられ、そこに、支柱14,14に取り付けた短軸18が嵌入される(
図6)。
【0022】
固定フレーム16は、浮動体1の沖側端部2を固定する四角形枠で、その上面の端部と中間部に、押さえ枠20を介して中空パイプ6群が固定される。押さえ枠20は、中空パイプ6の径に対応する半円形の切り欠き21を並設したアングル材で(
図5,7)、上方から配置して各切り欠き21に中空パイプ6の上半部を嵌合した後、押さえ枠20を、ボルト22により固定フレーム16にボルト止めする。必要に応じ、固定フレーム16の裏面端部に、錘材23が取り付けられる(
図6)。この錘材23は、後述するように、中空パイプ6群の立ち上がりを助ける役目を果たす。
【0023】
スタンド4における浮動体1の枢支位置は、浮動体1が小潮の干潮時に水平状態となる高さ位置に設定される。この高さは、沖合からの漂砂通過高さ、並びに、離岸流通過時の海面の高さに対応するものであり、浮動体1の枢支位置高さをこのようにすることにより、各浮遊式砂浜育成ユニットが水面上に露見して海の景観が損なわれることが極力防止される。この高さ調整は、支柱14,14の短軸18の設置位置を変更し、あるいは、支柱14,14の埋設深さを変更することによって行うことができる。
【0024】
好ましい実施形態においては、スタンド4に、浮動体1の起立角度を規制して反転を防止するストッパー25が設けられる。例えば、ストッパー25は、固定フレーム16の下側の支柱14、14に、内向きに突設される(
図1,5参照)。この場合浮動体1は、垂直状態に回動起立した際に、固定フレーム16がストッパー25に当たることにより、それ以上の回動が阻止される。
【0025】
また、浮動体1の陸側端部3の下側に、浮動体1の陸側部分を受けてその海底埋没を防止する受け台5が設置される。受け台5は、浮動体1の横幅より長い長さの倒コ字状のもので、その高さは、浮動体1の沖側端部2の枢支位置高さとほぼ同じにされ、浮動体1を大潮の干潮時における水位以上に保持する(
図1)。その場合、浮動体1が受け台5によって受け止められることにより、常に浮動体1と海底間に、離岸流の通過を許容する空間が確保されるため、漂砂が陸地側へと運ばれる一方、離岸流は、浮動体1によって何ら妨げられることなく沖に流れる。
【0026】
この点について更に詳述すると、海底傾斜を経て浅瀬に到来した波は、離岸流となって沖側に戻るが、各浮遊式砂浜育成ユニットの陸側の波は、勢いが殺がれているために、離岸流として戻る際には、各浮動体1の下側に確保される空間を静かに通過していく。ここでこのような空間が確保されていないと、そこにおいて離岸流が堰き止められて付近に渦巻流が発生し、海底の砂が浸食されていくことになり、砂浜の育成が困難となる。
【0027】
更に浮動体1は、受け台5によって受け止められて海底埋没することが防止されることで、海底埋没に伴って海藻、貝類、漂着物等が絡み付き、その重みで浮上不可となって消波効果が薄れることが確実に防止される。また、受け台5が浮動体1を大潮の干潮時における水位以上に保持する高さに設置されるため、浮動体2の陸側端部3は、大潮の干潮時において海面上に晒されることになる。かくして、陸側端部3に絡み付いた海藻や貝類は(海底埋没時ほどではないが、浮遊する海藻等が多少絡み付く。)、乾燥して風によって吹き飛ばされるために、浮動体1の浮力が保持される。
【0028】
本発明に係る浮遊式砂浜育成装置は、上記構成の浮遊式砂浜育成ユニットを多数、それぞれ波の進行方向に対して、例えば、20~45度程度水平方向に傾斜するようにし、且つ、各ユニットの末端が直線状になるようにして適宜間隔置きに配設される(
図8,9参照)。その設置位置は、沿岸部の沖合100~200mの水中で、深場と浅場の境の白波の立つ個所が好適である。なお、波の進行方向は、その海岸の海底地形等によって定まるものである。
【0029】
本発明に係る浮遊式砂浜育成ユニットを上記のようにして設置することにより、消波効果と同時に砂浜育成効果が得られる。即ち、各浮遊式砂浜育成ユニットに向かって到来する入射波w1は、各浮遊式砂浜育成ユニットに当たり、一部は該装置を通り抜けることで分散消波され、また、一部は約90度屈折して反射波w2となる(
図9参照)。
【0030】
しかるに、各浮遊式砂浜育成ユニットは、それぞれ波の進行方向に対して、例えば、20~45度程度水平方向に傾斜するように設置され、且つ、各ユニットの末端が直線状になるようにして設置されるために、入射波w1は、1つの浮遊式砂浜育成ユニットに対し、その全幅に亘って同時に当たる訳ではなく、一番沖側に位置する浮遊式砂浜育成ユニットに当たる時間(一番早い)と、一番陸側に位置する浮遊式砂浜育成ユニットに当たる時間(一番遅い)とに時間差ができる。即ち、入射波w1から反射波w2となる屈折部が、波の進行方向に対して傾斜している各ユニットに沿って移動していくことになり、その過程において消波作用が起こる。
【0031】
上述したように入射波w1は、各浮遊式砂浜育成ユニットに当たり、その一部が、水流圧力の低い各ユニット間の隙間から陸地側に抜けるため、入射波w1は分散消波される。そして、この入射波w1の分散消波に伴い、浮遊式砂浜育成ユニットの陸側には、消波に伴う漂砂の淀み域が生じ、漂砂はそこに堆積していき、結果的に徐々に砂浜が育成されていくことになる。なお、浮動体1は、水位が上がればそれに追随して起立していくので、水位によって消波作用が失われることはない。
【0032】
特に、本発明に係る浮遊式砂浜育成ユニットの場合は、浮動体1の中間部に波受け桟7が存在し、この波受け桟7の浮動体1より下に露出している部分が、浮動体1の下側に到来する入射波w1を消波し、その際に入射波w1からの上昇力を受けて、沖側端部2が枢支されている浮動体1の揺動起立を促進する。また、波受け桟7はやや扁平なかまぼこ状で上面が曲面のため、その上を流れる波によって揚力が生ずるので、この揚力によっても起立が促進される。これに加えて更に、錘材23の作用で起立が助長されるので、浮動体1は、水位の上昇に呼応して確実に揺動起立して消波機能を発揮し続ける。
【0033】
なお、海底の深場から浅場に至る傾斜面に当たった海水は、その傾斜面に沿って斜め上方に上昇する上昇波となる。波受け桟7はこの上昇波を下側から受けるので、浮動体1の揺動起立がより促進され、浮動体1は上方に回動しつつ、抵抗となって消波するよう作用する。また、この上昇波が本装置の沖側において上昇し、浮動体1上に砕け落ちる場合にも、浮動体1の抵抗によって波勢が減衰することになる。なお、陸側に向かう入射波w1は、この上昇波の影響を受けることによっても衰勢する。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係る浮遊式砂浜育成ユニット及びそれを用いた砂浜育成装置は上記のとおりのものであり、シンプル且つ堅牢な構成であって、耐久性に富み、波に呼応して揺動起立しつつ、波に対して強い抵抗力を発揮することで消波効果を奏し、以て、波勢によって海底が抉られることを防止すると共に、砂浜を育成することができる効果のあるものであり、その産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0035】
1 浮動体
2 沖側端部
3 陸側端部
4 スタンド
5 受け台
6 中空パイプ
7 波受け桟
8 挿通孔
9 ベース板
10,11 挟持板
12 ボルト
14 支柱
15 横材
16 固定フレーム
17 軸孔
18 短軸
20 押さえ枠
23 錘材
25 ストッパー