IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 文化シヤッター株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-避難路構造 図1
  • 特開-避難路構造 図2
  • 特開-避難路構造 図3
  • 特開-避難路構造 図4
  • 特開-避難路構造 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035156
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】避難路構造
(51)【国際特許分類】
   A62B 3/00 20060101AFI20220225BHJP
   E06B 5/16 20060101ALI20220225BHJP
   E06B 3/48 20060101ALI20220225BHJP
   E05D 15/26 20060101ALI20220225BHJP
   E06B 3/36 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
A62B3/00 C
E06B5/16
E06B3/48
E05D15/26
E06B3/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020139276
(22)【出願日】2020-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣島 光彰
(72)【発明者】
【氏名】小縣 剛士
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 弘幸
【テーマコード(参考)】
2E014
2E015
2E034
2E184
2E239
【Fターム(参考)】
2E014AA02
2E014DB02
2E015AA01
2E015BA00
2E015CA01
2E015CB05
2E015EA03
2E015FA01
2E034JA01
2E184AA07
2E184DD20
2E239CA01
2E239CA12
(57)【要約】
【課題】 開放された扉体を容易に閉鎖できるようにする。
【解決手段】 高圧室と該高圧室よりも気圧が低くなる低圧室との間を仕切る壁部1a,3aと、この壁部1a,3aに設けられた避難側扉装置20とを具備した避難路構造であって、避難側扉装置20は、前記低圧室へ向かって開放回動し逆方向へ閉鎖回動する扉体(戸先扉23)を備え、開放状態の前記扉体を、前記高圧室から前記低圧室へ向かう気流により閉鎖動作するようにした。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧室と該高圧室よりも気圧が低くなる低圧室との間を仕切る壁部と、この壁部に設けられた扉装置とを具備した避難路構造であって、
前記扉装置は、前記低圧室へ向かって開放回動し逆方向へ閉鎖回動する扉体を備え、開放状態の前記扉体を前記高圧室から前記低圧室へ向かう気流により閉鎖動作することを特徴とする避難路構造。
【請求項2】
前記扉体は、戸尻側が不動部位に支持されて回動する吊元扉と、前記吊元扉の戸先側に回動可能に連結された戸先扉とを具備することを特徴とする請求項1記載の避難路構造。
【請求項3】
前記扉体は、戸尻側が不動部位に支持されて回動する吊元扉と、前記吊元扉の戸先側に回動可能に連結されるとともに戸幅方向の途中箇所が上方及び/又は下方の不動部位に対し回転可能且つ開口幅方向移動可能に支持された戸先扉とを具備し、前記吊元扉が前記高圧室側から受ける気流、及び前記戸先扉の回転軸よりも戸尻側の部分が前記高圧室側から受ける気流によって、前記戸先扉の回転軸よりも戸先側の部分を前記高圧室側へ回動させて閉鎖動作することを特徴とする請求項1記載の避難路構造。
【請求項4】
前記戸先扉には、戸先寄り且つ下端寄りの角部分に、開閉可能な挿通口が設けられていることを特徴とする請求項2又は3記載の避難路構造。
【請求項5】
前記吊元扉の戸先側には、マグネットキャッチの片半部が設けられ、前記戸先扉の戸尻側には、前記片半部に対し戸厚方向に着脱するように同マグネットキャッチの他半部が設けられていることを特徴とする請求項2~4何れか1項記載の避難路構造。
【請求項6】
前記高圧室は、避難経路中に設けられた附室であり、給気装置により加圧されることを特徴とする請求項1~5何れか1項記載の避難路構造。
【請求項7】
前記扉装置を前記高圧室の避難側の壁部に設けられた避難側扉装置とし、前記高圧室の進入側の壁部には、進入側扉装置が設けられ、
前記進入側扉装置は、前記高圧室内へ向かって開放回動し逆方向へ閉鎖回動するように不動部位に支持された吊元扉と、この吊元扉の戸先側に支持されて開閉回動する戸先扉とを具備していることを特徴とする請求項1~6何れか1項記載の避難路構造。
【請求項8】
前記避難側扉装置は、前記進入側扉装置に対し、避難路幅方向にずれて配置されていることを特徴とする請求項7記載の避難路構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災等の災害時の避難経路を確保するための避難路構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の避難経路中には、部屋で発生した火災等による煙が、避難階段室に侵入することのないように、部屋と避難階段室の間の避難経路中に、強制的に加圧される附室を設ける場合がある。このような避難路構造では、火災時に附室を加圧して、部屋の煙が避難階段室に侵入しないようにする。
前記附室の壁部に設けられる扉装置は、附室内外の気圧差により扉体の開閉が困難になるおそれがある。そこで、このような扉装置には、例えば、特許文献1に記載される差圧緩和機構付き扉装置を用いることが提案される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5535348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記差圧緩和機構付き扉装置を、避難階段室側の壁部に設置した場合には、避難階段室側へ開放回動した扉体が、附室から避難階段室側へ向かう気流に押されて閉鎖し難くなってしまう可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明は、以下の構成を具備するものである。
高圧室と該高圧室よりも気圧が低くなる低圧室との間を仕切る壁部と、この壁部に設けられた扉装置とを具備した避難路構造であって、前記扉装置は、前記低圧室へ向かって開放回動し逆方向へ閉鎖回動する扉体を備え、開放状態の前記扉体を前記高圧室から前記低圧室へ向かう気流により閉鎖動作することを特徴とする避難路構造。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、開放された扉体を容易に閉鎖することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る避難路構造の一例を示す斜視図である。
図2】同避難路構造の要部横断面図である。
図3】(a)は進入側扉装置の一例を進入側から視た図、(b)は避難側扉装置の一例を避難側から視た図である。
図4】第一の扉体の閉鎖動作を(a)~(c)に順次に示す横断面図である。
図5】第二の扉体の閉鎖動作を(a)~(c)に順次に示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
高圧室と該高圧室よりも気圧が低くなる低圧室との間を仕切る壁部と、この壁部に設けられた扉装置とを具備した避難路構造であって、前記扉装置は、前記低圧室へ向かって開放回動し逆方向へ閉鎖回動する扉体を備え、開放状態の前記扉体を前記高圧室から前記低圧室へ向かう気流により閉鎖動作する(図1図4参照)。
ここで、前記「高圧室」とは、前記「低圧室」と比較して相対的に気圧が高くなった室を意味する。
また、前記「気流」とは、前記扉体が開放状態の際に前記高圧室から前記低圧室へ向かう気体の流れを意味する。
【0009】
第二の特徴としては、前記扉体は、戸尻側が不動部位に支持されて回動する吊元扉と、前記吊元扉の戸先側に回動可能に連結された戸先扉とを具備する(図3(b)及び図5参照)。
【0010】
第三の特徴としては、前記扉体は、戸尻側が不動部位に支持されて回動する吊元扉と、前記吊元扉の戸先側に回動可能に連結されるとともに戸幅方向の途中箇所が上方及び/又は下方の不動部位に対し回転可能且つ開口幅方向移動可能に支持された戸先扉とを具備し、前記吊元扉が前記高圧室側から受ける気流、及び前記戸先扉の回転軸よりも戸尻側の部分が前記高圧室側から受ける気流によって、前記戸先扉の回転軸よりも戸先側の部分を前記高圧室側へ回動させて閉鎖動作する(図3(b)及び図5参照)。
【0011】
第四の特徴として、前記戸先扉には、戸先寄り且つ下端寄りの角部分に、開閉可能な挿通口が設けられている(図1及び図3(b)参照)。
【0012】
第五の特徴として、前記吊元扉の戸先側には、マグネットキャッチの片半部が設けられ、前記戸先扉の戸尻側には、前記片半部に対し戸厚方向に着脱するように同マグネットキャッチの他半部が設けられている(図3(b)及び図5参照)。
【0013】
第六の特徴として、前記高圧室は、避難経路中に設けられた附室であり、給気装置により加圧される(図1参照)。
【0014】
第七の特徴として、前記扉装置を前記高圧室の避難側の壁部に設けられた避難側扉装置とし、前記高圧室の進入側の壁部には、進入側扉装置が設けられ、前記進入側扉装置は、前記高圧室内へ向かって開放回動し逆方向へ閉鎖回動するように不動部位に支持された吊元扉と、この吊元扉の戸先側に支持されて開閉回動する戸先扉とを具備している(図3(a)及び図4参照)。
【0015】
第八の特徴として、前記避難側扉装置は、前記進入側扉装置に対し、避難路幅方向にずれて配置されている(図1及び図2参照)。
ここで、前記「避難路幅方向にずれて」とは、避難路幅方向の位置が異なることを意味する。
【0016】
なお、後述する実施態様では、以下の構成要件のみを必須とした発明も開示している。
この発明の一つは、戸尻側が不動部位に支持されて回動する吊元扉と、前記吊元扉の戸先側に回動可能に連結された戸先扉とを具備し、これら吊元扉及び戸先扉によって開口部を開閉するようにした扉装置であって、前記吊元扉の戸先側には、マグネットキャッチの片半部が設けられ、前記戸先扉の戸尻側には、前記片半部に対し戸厚方向に着脱するように同マグネットキャッチの他半部が設けられていることを特徴とする扉装置(図4及び図5参照)。
この発明によれば、マグネットキャッチの磁力により吊元扉に対し戸先扉を略平坦状に保持することができる上、この保持状態を解除するのも容易である。
【0017】
<具体的実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
避難路構造Aは、高圧室と、前記高圧室の避難側(脱出側)で前記高圧室よりも気圧が低くなる低圧室との間を仕切る壁部と、この壁部に設けられた扉装置とを具備する。
詳細に説明すれば、避難路構造Aは、第一室1と、この第一室1の避難側に壁部1aを隔てて隣接する第二室2と、第二室2の避難側に壁部2aを隔てて隣接する第三室3と、第三室3の避難側に壁部3aを隔てて隣接する第四室4とを具備し、第一室1における避難側の壁部1aに避難側扉装置20を設け、第二室2における進入側の壁部2aに進入側扉装置10を設け、第三室3における避難側の壁部3aに避難側扉装置20を設けている(図1参照)。
【0019】
そして、例えば第一室1にて火災が発生した場合、この第一室1は火炎により比較的気圧の高い高圧室となり、第二室2が第一室1よりも相対的に気圧の低い低圧室となる。
また、第三室3は火災発生時に給気されることで第二室2及び第四室4よりも気圧の高い高圧室となり、第四室4が相対的に気圧の低い低圧室となる。
【0020】
第一室1は、四方が壁により囲まれて略密閉された部屋である。この第一室1の天井部分には、火災時に発生した煙を室外へ排出する排煙装置1bが設けられる。
【0021】
第二室2は、例えば図示しない他の部屋との間を行き来するための廊下等である。この第二室2の天井部分には、火災時に第一室1側等から侵入した煙を室外へ排出する排煙装置2bが設けられる。
【0022】
第三室3は、四方が耐火性の壁により囲まれて略密閉された部屋である。
この第三室3には、火災時に作動して空気が送り込まれるように給気装置3bが設けられる。給気装置3bは、図示例によれば床下に配設され、床面から第三室3内へ空気を送り込んで、第三室3内の気圧を第三室3外よりも高くする。
【0023】
第四室4は、避難階段4aに通じる空間を形成している。この第四室4は、給気装置3bが作動した際の第三室3内よりも気圧が低くなる。
【0024】
なお、第三室3と第四室4は、それぞれ、建築基準法で定められた附室と特別避難階段として機能する。
【0025】
進入側扉装置10は、図2及び図3(a)に示すように、壁部2aの開口内縁に一体的に固定された枠体11と、第三室3(附室)内へ向かって開放回動し逆方向へ閉鎖回動するように枠体11(不動部位)に支持された吊元扉12と、吊元扉12の戸先側に支持されて開閉回動する戸先扉13と、吊元扉12を閉鎖方向へ付勢するドアクローザ(図示せず)と、吊元扉12に相対し戸先扉13を閉鎖方向へ付勢するヒンジクローザ(図示せず)とを備える。
【0026】
枠体11は、図3(a)に示すように、幅方向に間隔を置いた左右の縦枠11a,11bと、これら縦枠の上端部間に接続された上枠11cとを一体的に有する正面視逆凹状に形成され、壁部2aの矩形状の開口部に嵌め合わせられ固定されている。
なお、枠体11の他例としては、左右の縦枠、上枠、下枠を有する正面視矩形枠状に構成することも可能である。
【0027】
吊元扉12は、上下方向へ長尺な矩形状の本体部12X1と、本体部12X1の上端側と下端側からそれぞれ戸先方向へ突出する支持片部12X2,12X2とを有する正面視横向き凹状に形成される(図3(a)参照)。
この吊元扉12における本体部12X1の戸尻側部分は、上下方向の軸部12eを支点にして開閉回動するように、枠体11に支持されている。軸部12eは、例えば、周知構造のピポットヒンジ等とすればよい。
【0028】
戸先扉13は、上枠11cと床面の間に嵌り合う長尺矩形状の戸先側部分13X1と、この戸先側部分13X1から戸尻方向へ突出して上下の支持片部12X2,12X2間に嵌り合う矩形状の戸尻側部分13X2とを有する正面視横向き凸状に形成される。
この戸先扉13の戸尻側部分13X2は、吊元扉12の上下の支持片部12X2,12X2間にて、支持片部12X2,12X2に対し上下方向の軸部13gを支点にして開閉回動するように係合している。
【0029】
軸部13gは、戸尻側部分13X2における戸先寄りに偏って位置する。この軸部13gには、戸先扉13を閉鎖方向へ付勢するヒンジクローザ(図示せず)が具備されている。
【0030】
戸先扉13の戸先寄りには、表裏側へ突出するようにして、回転操作可能なレバーハンドル13dが設けられる。
また、戸先扉13の戸先部には、レバーハンドル13dに対する回転操作により出没するようにラッチ13eが設けられる。このラッチ13eは、戸先側の縦枠11aに設けられたラッチ受け11a1に嵌脱する。
【0031】
また、戸先扉13における戸先寄り且つ下端寄りの角部分には、挿通口13aと、この挿通口13aを開閉する蓋部材13bとが設けられる。
【0032】
挿通口13aは、戸先扉13における戸先寄り且つ下端寄りの角部分を切欠してなる貫通孔であり、例えば、消防用ホースや電源ケーブル等を挿通可能な大きさに形成される。
【0033】
蓋部材13bは、挿通口13aを開閉可能に塞ぐ板状の部材である。この蓋部材13bは、図示例によれば、ドア状に開閉回動する態様としているが、他例としては、引戸状に開閉スライドする態様や、着脱される態様とすることも可能である。
【0034】
また、吊元扉12の本体部12X1の戸先側には、マグネットキャッチの片半部12dが設けられ、戸先扉13の戸尻側には、片半部12dに対し戸厚方向に着脱するように同マグネットキャッチの他半部13fが設けられる。
前記マグネットキャッチは、片半部12dに対し他半部13fを磁着するように構成され、マグネットラッチ等と呼称される場合もある。片半部12dと他半部13fは、その一方が永久磁石により構成され、他方が磁性体、又は磁極を逆向きにした永久磁石により構成される。
前記マグネットキャッチは、全閉状態においては吊元扉12と戸先扉13の表面が略面一になるように保持し、外部操作により戸先扉13に開放力が加わった際には離脱して戸先扉13を容易に開放できるように、その磁力が適宜に設定されている。
なお、他例としては、前記マグネットキャッチを、上述したラッチ13e及びラッチ受け11a1等、他のラッチ構造に置換することも可能である。
【0035】
また、進入側扉装置10のドアクローザ(図示せず)は、吊元扉12を閉鎖方向へ回動させるように付勢するものであればよく、例えば、吊元扉12と枠体11の間で開放した際の吊元扉12を閉鎖方向へ引っ張るようにした態様や、開放した際の吊元扉12を閉鎖方向へ押すようにした態様等とすることが可能である。
【0036】
また、進入側扉装置10のヒンジクローザ(図示せず)は、戸先扉13を吊元扉12に相対し閉鎖方向へ回動するように付勢するものであればよく、例えば、ねじりバネの復元力により戸先扉13を閉鎖方向へ回動する態様等とすることが可能である。
【0037】
そして、上記構成の進入側扉装置10は、吊元扉12に相対し戸先扉13を回動させた際に(図2の二点鎖線参照)、戸先扉13の戸尻側部分13X2と、吊元扉12の本体部12X1との間に、扉内外へ連通する通気路を確保する。
【0038】
また、避難側扉装置20は、低圧室(図示例によれば、第二室2又は第四室4)へ向かって開放回動し逆方向へ閉鎖回動する扉体(図示例によれば、戸先扉23)を備え、開放状態の前記扉体を、高圧室(図示例によれば、第一室1又は第三室3)側から前記低圧室側へ向かう気流を受けた際の力により閉鎖動作する。
【0039】
詳細に説明すれば、この避難側扉装置20は、図2及び図3(b)に示すように、枠体21と、戸尻側が不動部位である枠体21に支持されて回動する吊元扉22と、吊元扉22の戸先側に回動可能に連結されるとともに戸幅方向の途中箇所が上方及び/又は下方の不動部位に対し回転可能且つ開口幅方向移動可能に支持された戸先扉23と、吊元扉22及び戸先扉23を閉鎖方向へ付勢するドアクローザ(図示せず)とを具備し、吊元扉22と戸先扉23の間を折り曲げるようにして閉鎖動作し、前記間を折り曲げ状態から展開するようにして開放動作する。すなわち、この避難側扉装置20は、折戸状に開閉動作する。
ここで、前記「戸幅方向」とは、戸先扉23の戸厚方向に直交する横幅方向を意味する。また、前記「開口幅方向」とは、吊元扉22及び戸先扉23によって開閉される開口部の横幅方向、すなわち枠体21の横幅方向を意味する。
【0040】
そして、この避難側扉装置20は、吊元扉22が高圧室(図示例によれば、第一室1又は第三室3)側から受ける気流(風圧)、及び戸先扉23の上下の回転軸23a,23bよりも戸尻側の部分が高圧室側から受ける気流(風圧)によって、戸先扉23の回転軸23a,23bよりも戸先側の部分を高圧室側へ回動させて閉鎖動作する(図5(a)~(c)参照)。
この避難側扉装置20において、吊元扉22と、戸先扉23における回転軸23a,23bよりも戸尻側の部分との合計面積は、戸先扉23における回転軸23a,23bよりも戸先側の部分の面積よりも大きく設定される。
【0041】
枠体21は、図3(b)に示すように、幅方向に間隔を置いた左右の縦枠21a,21bと、これら縦枠の上端部間に接続された上レール枠21cと、これら縦枠の下端部間に接続された下レール枠21dとを一体的に有する正面視矩形枠状に形成される。
【0042】
上レール枠21cは、上側走行体24を、開口部幅方向へ自在にスライドするように支持する。上側走行体24は、戸先扉23の上側の回転軸23aを回転自在に吊持するとともに上レール枠21cに沿って開口幅方向へ走行するように構成され、吊り車やハンガー車等と呼称される場合もある。
【0043】
下レール枠21dは、下側走行体25を、開口部幅方向へ自在にスライドするように支持する。下側走行体25は、戸先扉23の下側の回転軸23bを回転自在に支持するとともに下レール枠21dに沿って開口幅方向へ走行するように構成され、ガイド車等と呼称される場合もある。
【0044】
吊元扉22は、上下方向へ長尺な矩形状の本体部22X1と、本体部22X1の上端側と下端側からそれぞれ戸先方向へ突出する突片部22X2,22x2とを有する正面視横向き凹状に形成される(図3(b)参照)。
この吊元扉22における本体部22X1の戸尻側部分は、上下方向の軸部22aを支点にして開閉回動するように、枠体21に支持される。軸部22aは、例えば、周知構造の蝶番等とすればよく、吊元扉22と戸尻側の縦枠21aとの間において、上下方向に間隔を置いて複数設けられる。
【0045】
戸先扉23は、上レール枠21cと下レール枠21dの間に嵌り合う矩形状の戸先側部分23X1と、この戸先側部分23X1から戸尻方向へ突出して上下の突片部22X2,22X2間に嵌り合う矩形状の戸尻側部分23X2とを有する正面視横向き凸状に形成される(図3(b)参照)。
この戸先扉23は、その戸尻側における上端側部分と下端側部分が、それぞれ、吊元扉22の上下の突片部22X2,22x2に対し、軸部23hを介して回転自在に接続されている。軸部23hには、例えば蝶番等を用いればよい。
【0046】
戸先扉23は、上レール枠21cと下レール枠21dに対し、それぞれ、上下の走行体24,25及び回転軸23a,23bを介在することで、開閉回動可能、かつ開口部幅方向へ移動可能に支持される。
【0047】
戸先扉23の戸先寄りには、表裏側へ突出するようにして、回転操作可能なレバーハンドル23cが設けられる。
また、戸先扉23の戸先部には、レバーハンドル23cに対する回転操作により出没するようにラッチ23dが設けられる。このラッチ23dは、戸先側の縦枠21bに設けられたラッチ受け21b1に嵌脱する。
【0048】
また、戸先扉23における戸先寄り且つ下端寄りの角部分には、進入側扉装置10の戸先扉13と同様にして、挿通口23eと、この挿通口23eを開閉する蓋部材23fとが設けられる。
【0049】
挿通口23eは、戸先扉23における戸先寄り且つ下端寄りの角部分を切欠してなる貫通孔であり、例えば、消防用ホースや電源ケーブル等を挿通可能な大きさに形成される。
蓋部材23fは、挿通口23eを開閉可能に塞ぐ板状の部材であればよく、図示例によれば、ドア状に開閉回動する態様としているが、他例としては、引戸状に開閉スライドする態様や、着脱される態様とすることも可能である。
【0050】
また、吊元扉22の本体部22X1の戸先側には、マグネットキャッチの片半部22bが設けられ、戸先扉23の戸尻側には、片半部22bに対し戸厚方向に着脱するように同マグネットキャッチの他半部23gが設けられる。
前記マグネットキャッチは、全閉状態においては吊元扉22と戸先扉23の表面が略面一なるように保持し、外部操作により戸先扉23に開放力が加わった際には離脱して戸先扉23を容易に開放するように、その磁力が適宜に設定されている。
なお、他例としては、前記マグネットキャッチを、上述したラッチ23d及びラッチ受け21b1等、他のラッチ構造に置換することも可能である。
【0051】
また、避難側扉装置20のドアクローザ(図示せず)は、吊元扉22及び戸先扉23を閉鎖方向へ付勢する構造であればよく、例えば、吊元扉22を閉鎖方向へ引っ張るようにした態様や、吊元扉22を閉鎖方向へ押すようにした態様、上側走行体24及び/又は下側走行体25を戸先方向へ引っ張るようにした態様、上側走行体24及び/又は下側走行体25を戸先方向へ押すようにした態様等とすることが可能である。
【0052】
上記構成の避難側扉装置20は、吊元扉22に相対し戸先扉23を回動させた際に(図2の二点鎖線参照)、戸先扉23の戸尻側部分23X2と、吊元扉22の本体部22X1との間に、扉内外へ連通する通気路を確保する。
【0053】
そして、進入側扉装置10は、第一室1の避難側扉装置20に対し、避難路幅方向の一方(図1によれば避難方向に向かって右寄り)へずれて配置される。
換言すれば、進入側扉装置10の幅方向中心部と、第一室1の避難側扉装置20の幅方向中心部とは、避難路幅方向の位置が異なる。
さらに、第三室3における避難側の避難側の避難側扉装置20は、進入側扉装置10に対し、避難路幅方向の一方(図1によれば避難方向に向かって左寄り)へずれて配置される。
換言すれば、第三室3の避難側扉装置20の幅方向中心部と、進入側扉装置10の幅方向中心部とは、避難路幅方向の位置が異なる。
【0054】
次に、上記構成の避難路構造Aについて、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
例えば、図1に示すように、第一室1内で火災が発生した場合、この火災は図示しない火災検知器により検知さる。火災を検知した火災検知器は、排煙装置1b,2b及び給気装置3b等を作動する。
【0055】
第一室1内は、火災熱等の影響により第二室2内よりも気圧が高くなる。
そして、第三室3内は、給気装置3bによる給気により、第二室2及び第四室4よりも気圧が高くなる。
【0056】
<進入側扉装置の動作>
上記した気圧状態において、進入側扉装置10は、第三室3内の比較的高い気圧を受けるため、吊元扉12及び戸先扉13を含む扉全体としては第三室3内側へ開放し難くなるが、戸幅の小さい戸先扉13のみを開放するのは容易である。
避難者等により戸先扉13のみが開放回動されると、吊元扉12と戸先扉13の間に形成される通気路により、第二室2内と第三室3内の気圧がバランスする。このため、避難者等は、吊元扉12及び戸先扉13を含む扉全体も、容易に開放回動することができる。
【0057】
また、図4(a)~(c)に示すように、開放状態の吊元扉12及び戸先扉13から開放力が除去されると、吊元扉12が図示しないドアクローザの付勢力により閉鎖方向へ回動し、この閉鎖回動の途中で、戸先扉13が図示しないヒンジクローザの付勢力により閉鎖方向へ回動する。この回動中、吊元扉12及び戸先扉13は、第三室3から第二室2へ向かう気流に押される。
【0058】
<避難側扉装置の動作>
上記した気圧状態において、第一室1と第三室3の各避難側扉装置20は、第一室1内又は第三室3内から比較的高い気圧を受けるが、戸先扉23の回転軸23a,23bよりも戸先側を押して、戸先扉23を少しでも開放側へ回動させれば、戸先扉23と吊元扉22の間に通気路が形成され、室内外の気圧がバランスするため、この後は、吊元扉22及び戸先扉23を折り曲げるようにして開放方向へ容易に回動させることができる。
【0059】
そして、図5(a)~(c)に示すように、避難側扉装置20に対する開放力が除去されると、折畳まれた状態の吊元扉22及び戸先扉23が、ドアクローザ(図示せず)の付勢力と、高圧室側から受ける気流とによって、展開するようにして閉鎖動作する。
すなわち、吊元扉22、及び戸先扉23の回転軸23a,23bよりも戸尻側の部分は、高圧室(図示例によれば第一室1又は第三室3)から低圧室(図示例によれば第二室2又は第四室4)へ向かう気流による風圧力を受ける。このため、ドアクローザによる閉鎖力が、前記風圧力に補助されて、速やかな閉鎖動作が行われる。
【0060】
よって、上記構成の避難路構造Aによれば、避難中に開放された扉体が、室内外の気圧差により閉鎖されなくなってしまうようなことを防ぎ、開放された扉体を容易に全閉することができる。
【0061】
しかも、上記実施態様では、第一室1の避難側扉装置20、第二室2の進入側扉装置10、避難側扉装置20を、それぞれ、互いに避難路幅方向へずれるように配置している。
このため、万が一、避難経路の上流側で発生した煙が、その下流側の部屋へ侵入した場合に、この煙を部屋内で対流させて、次の部屋への侵入し難くすることができる。
例えば、進入側扉装置10の開放により第三室3へ侵入した煙は、壁部3a等にぶつかる等して第三室3内で対流するため、避難側扉装置20が開放した場合でも第四室4へ侵入し難い。
【0062】
さらに、上記実施態様では、進入側扉装置10の戸先方向に対し、避難側扉装置20の戸先方向を、逆向きにしている。
このため、上述したように進入側扉装置10と避難側扉装置20を避難路幅方向へずらした場合でも、直線的な避難経路を確保し易く、ひいては、速やかな避難行動が可能になる。
【0063】
<変形例>
上記実施態様によれば、特に好ましい一例として、進入側扉装置10及び避難側扉装置20に、ドアクローザ及びヒンジクローザ等の自閉装置を設けたが、図示しない他例としては、前記自閉装置を省き、室内外の気圧差のみによって扉体が閉鎖される態様とすることも可能である。
【0064】
また、上記実施態様によれば、特に好ましい態様として、進入側扉装置10に対し避難側扉装置20を、避難路幅方向へずらして配置したが、他例としては、これら進入側扉装置10と避難側扉装置20を避難路幅方向の同位置に配置することも可能である。
【0065】
また、上記実施態様において、進入側扉装置10には、例えば、特開2013―177803号公報に開示される差圧緩和機構付き扉装置を適用することが可能である。
なお、進入側扉装置10は、室内外の差圧緩和機構を具備するものであればよく、他例としては、上記実施態様や上記公報に開示される態様以外の構成とすることも可能である。
【0066】
また、上記実施態様において、避難側扉装置20には、例えば、特開2019―100037号公報に開示される扉装置を適用することが可能である。
なお、避難側扉装置20は、高圧室から低圧室へ向かう気流により閉鎖動作する構造にすればよく、上記実施態様や上記公報に開示される態様以外の構成とすることも可能である。
【0067】
また、本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0068】
1:第一室(高圧室)
2:第二室(低圧室)
3:第三室(高圧室)
4:第四室(低圧室)
1a,2a,3a:壁部
1b,2b:排煙装置
3b:給気装置
10:進入側扉装置
12:吊元扉(扉体)
13:戸先扉(扉体)
13a:挿通口
20:避難側扉装置
22:吊元扉(扉体)
23:戸先扉(扉体)
12d,22b:片半部(マグネットキャッチ)
13f,23g:他半部(マグネットキャッチ)
23e:挿通口
A:避難路構造
図1
図2
図3
図4
図5