(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035213
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】ガスシールタンク、シールガス供給方法、超純水製造装置及び超純水製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 90/44 20060101AFI20220225BHJP
F16J 12/00 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
B65D90/44
F16J12/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020139366
(22)【出願日】2020-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】000245531
【氏名又は名称】野村マイクロ・サイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 克美
【テーマコード(参考)】
3E070
3E170
3J046
【Fターム(参考)】
3E070AA01
3E070AA02
3E070AA03
3E070AA04
3E070AB02
3E070AB31
3E070BE04
3E070CB04
3E070CC07
3E070RA02
3E070RA30
3E070VA30
3E170AA01
3E170AA02
3E170AA03
3E170AA04
3E170AB02
3E170AB28
3E170BA04
3E170CB03
3E170CC05
3E170RA02
3E170RA20
3E170VA20
3J046AA20
3J046BA06
3J046BD02
3J046DA10
(57)【要約】
【課題】シールガスの供給時の動圧の影響を抑制し、気相部の圧力調整を効率的、かつ、安定して行うことができるガスシールタンクを提供する。
【解決手段】液体50をシールガスからなる気相部60と接触させて収容するための、密閉可能な収容容器11と、収容容器11内の気相部60の圧力が所定の排気開始圧力よりも高くなったとき、収容容器11内のシールガスを排気するシールガス排気装置12と、収容容器11内の気相部60にシールガスを供給するシールガス供給装置13と、を有するガスシールタンクであって、シールガス供給装置13が、その供給するシールガスの供給方向を液体50の液面50aに対して平行又は鋭角となるように設けたシールガス供給口13aを有するガスシールタンク10。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体をシールガスからなる気相部と接触させて収容するための、密閉可能な収容容器と、
前記収容容器内の気相部の圧力が所定の排気開始圧力よりも高くなったとき、前記収容容器内のシールガスを排気するシールガス排気装置と、
前記収容容器内の気相部にシールガスを供給するシールガス供給装置と、
を有するガスシールタンクであって、
前記シールガス供給装置が、その供給するシールガスの供給方向を前記液体の液面に対して平行又は鋭角となるように設けたシールガス供給口を有することを特徴とするガスシールタンク。
【請求項2】
平面視において、前記シールガス供給口が、前記シールガス排気装置を作動させる圧力検知部側に開口していない請求項1に記載のガスシールタンク。
【請求項3】
前記シールガス供給口が、さらに前記シールガス排気装置側に開口していない請求項2に記載のガスシールタンク。
【請求項4】
前記ガスシールタンクを平面視したときの外形形状が円形状であり、当該外形形状に対して前記シールガス供給口を通る同心円上において、前記シールガスの供給方向が、前記シールガス供給口を起点とする前記同心円の接線方向から前記同心円の中心までの範囲となるように、前記シールガス供給口が設けられている請求項1~3のいずれか1項に記載のガスシールタンク。
【請求項5】
前記シールガス供給口が、前記シールガスの流れを鉛直方向から水平方向に変更する配管形状を有する請求項1~4のいずれか1項に記載のガスシールタンク。
【請求項6】
前記シールガス供給口が、その供給された前記シールガスにより、前記ガスシールタンク内で旋回流を生じさせることができるように設けられている請求項1~5のいずれか1項に記載のガスシールタンク。
【請求項7】
前記シールガス供給装置が、前記供給口を側面に有する円筒状部材を有し、前記円筒状部材が、その軸回転により前記シールガスの供給方向を変更できる可動式の部材である請求項1~6のいずれか1項に記載のガスシールタンク。
【請求項8】
液体を収容し、その気相部をシールガスで満たした、請求項1~7のいずれか1項に記載のガスシールタンクを用い、
前記シールガス供給装置により、前記液体の液面に対して平行又は鋭角となるように前記シールガスを供給することを特徴とするシールガス供給方法。
【請求項9】
前記気相部の圧力が所定の供給開始圧力よりも低くなったとき、前記シールガス供給装置により前記シールガスを前記気相部に供給する請求項8に記載のシールガス供給方法。
【請求項10】
前記気相部の圧力が所定の排気開始圧力よりも高くなったとき、前記シールガス排気装置により前記シールガスを前記収容容器の外部に放出する請求項8又は9に記載のシールガス供給方法。
【請求項11】
脱気装置を備えた1次純水装置と、2次純水装置と、を有する超純水製造装置であって、
前記1次純水装置と前記2次純水装置の間、又は、前記1次純水装置内で前記脱気装置の後段に、請求項1~7のいずれか1項に記載のガスシールタンクを備えたことを特徴とする超純水製造装置。
【請求項12】
被処理水を、脱気装置を備えた1次純水装置にて脱気処理した1次純水を製造し、
前記1次純水を、2次純水装置で処理して2次純水を製造する超純水製造方法であって、
前記1次純水装置で得られた1次純水、又は、前記1次純水装置内で前記脱気装置により脱気処理された処理水を、請求項1~7のいずれか1項に記載のガスシールタンクに収容することを特徴とする超純水製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスシールタンク、シールガス供給方法、超純水製造装置及び超純水製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を一時的に貯留、貯蔵しておくタンクにおいて、タンク内に外気(空気)が侵入すると、内部結露によるタンク内壁の腐食、タンク内液体への外気成分や水分の混入、酸化による液体の劣化等が生じるため、外気の侵入を防止するために、タンク内の気相部をシールガス(不活性ガス)で置換することが行われている。
【0003】
このようなタンクは、比較的大型のもので、収容している液体の使用による減少、液体の補充による増大等が生じ、それに応じて気相部の増減が生じること、タンクの外気条件等が変化すること等により、気相部の圧力が変化する。そのため、気相部の圧力が高くなったときは、シールガスをタンクの外部に排気して気相部の圧力を低減させ、気相部の圧力が低くなったときは、シールガスを供給するようにしている。
【0004】
例えば、半導体ウェハーのような精密電子部品の洗浄用には、溶存電解質、微粒子、コロイダル物質、高分子有機物、発熱物質のほか、微生物の増殖を促すおそれのある溶存ガス、特に溶存酸素を可能な限り除去した超純水が要求される。特に、酸素が溶解している純水にて半導体ウェハー等を洗浄すると、当該ウェハーの酸化が促進され歩留りが悪くなるという問題点がある。そのため、純水の製造ライン中には真空脱気装置や加熱脱気装置のような脱気設備が付設されている。そして、これらの脱気設備によって溶存ガスの取り除かれた純水は、次段のサブシステムに送られるまでの間、あるいはユースポイントにおいて使用されるまでの間、ライン中に準備された純水貯槽内に一時的に貯溜される。ところが、この純水貯槽内で貯溜中に酸素や炭酸ガス等が微量ではあるが、半導体ウェハーの洗浄用としては好ましくない程度の量が純水中に再溶解する場合があり、これまで純水貯槽内の気相部を窒素ガスのような不活性ガスを圧入し、純水の水面上を不活性ガスでシールする方法が一般的に採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、このようなガスシールタンクに収容する液体としては、(超)純水の他、防錆油や油圧装置用の作動油等の油、石油系液体、揮発性のある液体等が挙げられ、同様にガスシールしてタンク内に収容される(例えば、特許文献2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06-191591号公報
【特許文献2】特開2005-256886号公報
【特許文献3】特開2007-45491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のガスシールタンクにおいて、そのシールガスの供給は、通常外気圧よりも高い圧力として封入したガスシールタンクの気相部に、さらに高い圧力でシールガスを供給するため、その際に生じる動圧が問題となる場合があった。
【0008】
すなわち、ガスシールタンク内に供給されるシールガスは、通常、ガスシールタンクの天井部分に設けられたシールガス供給口から、鉛直方向下方に向かって供給されるのが一般的である。しかし、供給されたシールガスは、ガスシールタンク内に収容された液体の液面と衝突し、左右および上方へ、その向きを変えて流れるため、上方に流れるシールガスの動圧により、シールガスの排気装置の圧力検知部を誤作動させる場合がある。この誤作動は、圧力検知部に、ガスシールタンク内の気相部の圧力が、実際の圧力よりも高い圧力であると誤認させるもので、このとき、シールガスがタスシールタンクの外部に排気される。しかし、この誤作動による動作は、シールガスの供給による動圧が原因であるため、シールガスの排気による排気動作が停止されずに、気相部の圧力が低下してしまい、シールガスの供給も継続され、同時にシールガスの排気も継続され、これらの動作が連続的に行われてしまい、ガスシールを効率的かつ安定して行うことが難しくなる。すなわち、タンク内の液体量が一定となっている場合でも、排気と吸気が交互に行われる状況となり、これが継続的に続くため、シールガスが無駄に消費されてしまう。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、ガスシールタンクにおいて、シールガスの供給時の動圧の影響を抑制し、気相部の圧力調整を効率的、かつ、安定して行うことができるガスシールタンク及びシールガスの供給を安定して行うことができるシールガス供給方法を提供することである。
【0010】
また、本発明が解決しようとする他の課題は、上記ガスシールタンクを用いた、超純水製造装置及び超純水製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のガスシールタンクは、液体をシールガスからなる気相部と接触させて収容するための、密閉可能な収容容器と、前記収容容器内の気相部の圧力が所定の排気開始圧力よりも高くなったとき、前記収容容器内のシールガスを排気するシールガス排気装置と、前記収容容器内の気相部にシールガスを供給するシールガス供給装置と、を有するガスシールタンクであって、前記シールガス供給装置が、その供給するシールガスの供給方向を前記液体の液面に対して平行又は鋭角となるように設けたシールガス供給口を有することを特徴とする。
【0012】
本発明のシールガス供給方法は、液体を収容し、その気相部をシールガスで満たした、本発明のガスシールタンクを用い、前記シールガス供給装置により、前記液体の液面に対して平行又は鋭角となるように前記シールガスを供給することを特徴とする。
【0013】
本発明の超純水製造装置は、脱気装置を備えた1次純水装置と、2次純水装置と、を有する超純水製造装置であって、前記1次純水装置と前記2次純水装置の間、又は、前記1次純水装置内で前記脱気装置の後段に、本発明のガスシールタンクを備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明の超純水製造方法は、被処理水を、脱気装置を備えた1次純水装置にて脱気処理した1次純水を製造し、前記1次純水を、2次純水装置で処理して2次純水を製造する超純水製造方法であって、前記1次純水装置で得られた1次純水、又は、前記1次純水装置内で前記脱気装置により脱気処理された処理水を、本発明のガスシールタンクに収容することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のガスシールタンク及びシールガス供給方法によれば、シールガスの供給時の動圧の影響を抑制し、気相部の圧力調整を効率的、かつ、安定して行うことができる。
【0016】
また、本発明のガスシールタンク及びシールガス供給方法は、シールガスの供給時に、収容している液体の液面へのシールガスの吹付が抑制されるため、液面の波立ちを抑え、液位を安定でき、さらに、シールガスの液体への溶解量を抑制することもできる。
【0017】
本発明の超純水製造装置及び超純水製造方法は、製造した1次純水から2次純水を製造するにあたって、その間に本発明のガスシールタンクを設けているため、1次純水を安定して貯留でき、2次純水装置への供給を効率的、かつ、安定して行うことができる。さらに、1次純水中へのシールガスの混入等を抑制することができ、超純水を効率的に、かつ、安定して、製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】本発明の実施形態におけるガスシールタンクの概略構成を示した側断面図である。
【
図1B】本発明の実施形態におけるガスシールタンクの概略構成を示した平面図である。
【
図2】本発明の実施形態におけるシールガス供給装置のシールガス供給方向を説明するための図である。
【
図3】本発明の実施形態におけるシールガス供給装置のシールガス供給方向について、液面との関係を説明するための図である。
【
図4】本発明の実施形態におけるガスシールタンクの変形例を示した平面図である。
【
図5】
図4で示したガスシールタンクにおける、シールガスの供給方向を説明するための図である。
【
図6】
図4で示したガスシールタンクにおける、シールガス供給装置から圧力検知部までの距離を示した図である。
【
図7】本発明の実施形態のガスシールタンクの変形例を示した平面図である。
【
図8】本発明の実施形態のガスシールタンクの変形例を示した平面図である。
【
図9】本実施形態の超純水製造装置の概略構成を示した図である。
【
図10】実施例及び比較例で得られた超純水の溶存窒素濃度の経時変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本実施形態におけるガスシールタンク及びシールガス供給方法について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
[ガスシールタンク]
本発明の第1の実施形態であるガスシールタンクは、液体をシールガスからなる気相部と接触させて収容するための、密閉可能な収容容器と、液体供給口から液体が供給されて、収容容器内の気相部の圧力が所定の排気開始圧力よりも高くなったとき、収容容器内のシールガスを排気するシールガス排気装置と、液体流出口から液体が流出されて、収容容器内の気相部の圧力が所定の供給開始圧力よりも低くなったとき、収容容器内の気相部にシールガスを供給するシールガス供給装置と、を有するガスシールタンクである。そして、このガスシールタンクにおいて、シールガス供給装置が、その供給するシールガスの供給方向を液体の液面に対して平行又は鋭角となるように設けたシールガス供給口を有することを特徴とする。なお、液体供給口と液体流出口は図示を省略している。
【0021】
このガスシールタンクとしては、例えば、
図1A及び1Bに示したように、収容容器11と、シールガス供給装置12と、シールガス排気装置13と、を有してなるガスシールタンク10が例示できる。以下、各構成について、さらに詳細に説明する。
【0022】
収容容器11は、対象となる液体50を密閉して収容可能な容器である。このとき、収容容器11は、その液体50をシールガスからなる気相部60と接触させて収容可能とする。このシールガスにより、液体50は、空気等との接触を防止でき、その劣化(酸化等)等を抑制できる。なお、通常、シールガスは常圧よりも高い、加圧状態で収容するため、この収容容器11は保持するシールガスの圧力に耐性を有する収容容器を用いる。
【0023】
収容容器11は、上記したように液体50を安定して収容できればよく、その形状は特に制限されない。この収容容器11としては公知の収容容器形状が例示でき、例えば、平面視したときの外形形状が、円形状や、三角形状、四角形状等の多角形状のものが挙げられ、円形状が好ましい。
図1Bには、この収容容器11の外形が円形状の場合を例示している。ここで、円形状とは、真円だけではなく、扁平した楕円や、円形の一部が凹凸を有するように変形した形状等も含まれ、多角形状においても同様に変形した形状が含まれる。
【0024】
また、収容容器11の大きさは、特に制限されるものではなく、収容する液体50の種類やその収容(使用)状況に応じて、適宜設定できる。例えば、半導体装置製造において洗浄に使用する超純水の場合、その収容容器の一片(直径)を1~10m、高さ(側壁)を1~12mとすることができる。
【0025】
なお、ここで収容容器11に収容される液体50は、空気等の外気から遮断することが求められる液体であれば特に制限されるものではなく、公知の液体を例示できる。このような液体としては、具体的には、(超)純水、潤滑油や防錆油等の機械油、石油系液体、薬液等が挙げられ、好ましくは、(超)純水である。
【0026】
また、気相部60を構成するシールガスとしては、一般的に、不活性ガスとして用いられる窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガス等が挙げられ、公知の不活性ガスを制限されずに用いることができる。このシールガスは、適宜最適なものを選択すればよい。シールガスは1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0027】
シールガス排気装置12は、収容容器11内の気相部60の圧力が所定の排気開始圧力よりも高くなったとき、収容容器11内のシールガスを排気する装置である。
【0028】
シールガス排気装置12により、収容容器11内の気相部60の圧力が高くなったとき、その気相部60を構成するシールガスを収容容器11外に排気して、収容容器11内の圧力が過度に高まることがないようにしている。
【0029】
このシールガス排気装置12としては、公知のシールガス排気装置を制限なく用いることができ、例えば、ブリーザー弁、自動制御弁等が挙げられる。具体的には、金子産業株式会社製 KNシリーズが例示される。
【0030】
シールガス供給装置13は、収容容器11内の気相部60にシールガスを供給する装置である。このシールガス供給装置13は、供給されるシールガスの供給方向が、収容されている液体50の液面に対して、平行又は鋭角となるように設けられたシールガス供給口13aを有する。
【0031】
このシールガス供給装置13は、シールガスを収容するガスタンク(図示せず)を有し、このガスタンクが配管13bと接続され、減圧弁(図示せず)により所定の圧力に調整されて、この配管13bを通じて収容容器11内にシールガスを導入できるようになっている。
【0032】
また、配管13bは、シールガスの流通を制御するバルブ13cを有しており、このバルブ13cが開くことでシールガスが収容容器11内へ供給される。なお、バルブ13cの開閉は、通常、収容容器11内の気相部60の圧力が所定の供給開始圧力よりも低くなったときに開き、気相部60の圧力が供給開始圧力よりも高くなったときに閉まるように設定される。したがって、この場合、シールガス供給装置13は、気相部60の圧力を検知するガス供給のための圧力検知部を有する。
シールガス供給装置13としては、金子産業株式会社製ガスシールユニット GUシリーズ等が好適に用いられる。また、これに限られず、通常の圧力センサーと自動制御弁を組み合わせたものを使用することも可能である。
【0033】
そして、このシールガス供給装置13は、供給されるシールガスの供給方向が、収容されている液体50の液面に対して、平行又は鋭角となるように設けられたシールガス供給口13aを有する点が特徴である。この点については、
図2を参照しながら説明する。
【0034】
図2は、収容容器11の天井から鉛直方向下方に配管が伸びている場合を示しているが、そのガス供給口13aが、その配管の端部付近における配管の側面に設けられている。従来公知の典型的なシールガス供給装置においては、配管の端部がそのまま開放されており、シールガスが液体50に垂直に吹付けられるようになっている点で本発明とは異なる。
【0035】
このシールガス供給装置13においては、シールガスの供給方向を、上記規定したものとなればよく、例えば、
図2に示したように、収容容器11の天井から鉛直方向下方に伸ばした配管の端部付近において、その配管の側面にガス供給口13aを有しているものが例示できる。
【0036】
図2(a)は、配管の端部(下端)に円板状の部材が設けられ、その配管の端部付近の側面にシールガス供給口13aが設けられている例を示している。このとき、供給されるシールガスは、上方から配管を通って収容容器11内に導入されるが、その際、端部の円板状の部材に衝突して、シールガス供給口13aを通り、水平方向に供給される。すなわち、このときのシールガスの供給方向FDは、液面50aに対して平行となる。
【0037】
図2(b)は、配管の端部(下端)に楕円板状の部材が傾斜して設けられ、その配管の端部付近の側面には、
図2(b)と同様に、側面にシールガス供給口13aが設けられている例を示している。このとき、供給されるシールガスは、上方から配管を通って収容容器11内に導入されるが、その際、端部の楕円板状の部材に衝突して、シールガス供給口13aを通り、斜め下方に供給される。すなわち、このときのシールガスの供給方向FDは、液面50aに対して鋭角となる。なお、シールガス供給口13aとしては、本発明の趣旨に反しない限り特に形状は限定されるものではない。例えば、L字に曲がった配管を用いることも可能である。
【0038】
図2で説明したシールガス供給装置13は、シールガスの流れを垂直方向から水平方向に変更する配管形状を有する例であるが、シールガスの供給方向FDについて、さらに
図3を参照して説明する。
【0039】
供給方向FDの液面50aに対してなす角は、
図3に示した角度θで表すことができる。供給方向FDについて、液面50aに対して鋭角となるとは、本明細書においては、この角度θが90度より小さい角度になることを意味し、この角度θは、45度以下が好ましく、30度以下がより好ましく、20度以下がさらに好ましく、10度以下が特に好ましい。また、この角度θが0となったとき、供給方向FDは液面50aに対して平行となり、この態様が最も好ましい。
【0040】
このように液面50aに対して鋭角になるようにシールガスを供給すると、シールガスと液面50aとの衝突による動圧が小さくなり、シールガス排気装置12の誤作動を抑制することができる。
なお、上記では、シールガスの流れを鉛直方向から水平方向に変更する配管形状を例示したが、収容容器11の側面にシールガスを供給する配管13bを接続し、接続部をそのまま供給口13aとすることもでき、この場合、供給方向を変えなくても、そのまま液面50aに対して平行又は鋭角に供給するようにしてもよい。
【0041】
以上、シールガスの供給方向FDについて、鉛直方向における説明をしたが、ガスシールタンク1を平面視したときの、シールガス排気装置12と供給方向との位置関係についても以下説明する。
【0042】
上記したように、シールガスの供給方向FDは、その液面50aとの衝突による動圧を小さくできるようにしているため、平面視したときのシールガスの供給方向FDは特に限定されずに、いずれの方向にも供給することができる。このとき、平面方向の360度全てにシールガス供給口13aを設けてもよいが、
図2に示したように、一部に側壁を設け、特定の方向にシールガス供給口13aを設けることが好ましい。
【0043】
上記したようなシールガスの排気動作の誤作動を抑制するためには、その供給方向FDは、さらに以下のように設定することが好ましい。
【0044】
図4及び5は、
図1Bと同様に、ガスシールタンク10を平面視して表した図である。なお、ここで、シールガス排気装置12は、上記説明したように、気相部60の圧力を検知して、その動作の可否が決まるため、圧力検知器を有している。この圧力検知器は、シールガス排気装置12の近辺に検知用の開口部を設け、この開口部を気体流路で圧力検知器と接続して構成されるが、この圧力検知用の開口部を圧力検知部12aとして示した。
【0045】
なお、圧力検知部12aの位置は、気相部60の圧力を検知できれば、その位置は特に限定されるものではないが、本発明においては、シールガスの供給及び排気による影響を受けないようにすることが好ましい。そのため、
図4及び5では、シールガス排気装置12と収容容器11との接続部(排気時にシールガスが通過する開口)とは少し離れた位置に、圧力検知部12aを設けた場合を例示している。
【0046】
このとき、シールガス供給口13aが、シールガス排気装置12を作動させる圧力検知部12a側に開口していないことが好ましい。ここで、「圧力検知部12a側に開口していない」とは、シールガス供給口13aから、圧力検知部12aの下方に直接シールガスが供給されないようになっていることを意味し、その場合、圧力検知部12aが、供給されたシールガスによる圧力の影響を受けずに、正確に気相部60の圧力を検知できる。
【0047】
図4において、シールガスの供給方向FDを示しているが、これは主として供給される方向を示しており、実際には、開口部が幅を有しているため、
図4に示した供給方向FDの左右に扇状に広がるように供給される。すなわち、その全ての供給方向FDが、圧力検知部12aに向いていないことが好ましい。
【0048】
さらに、シールガス供給口13aは、圧力検知部12a側だけでなく、シールガス排気装置12側にも開口していないことが好ましい。
【0049】
また、
図5には、平面視したとき、好ましいシールガスの供給方向FDの範囲を説明するための図を示した。このとき、収容容器11の外形形状に対してシールガス供給口13aを通る同心円上において、シールガスの供給方向FDが、シールガス供給口13aを起点とする同心円の接線方向から同心円の中心までの範囲となるように、シールガス供給口13aが設けられていることが好ましい。このときの好ましいシールガスの供給方向FDの領域Qを斜線のハッチングパターンで示した。
【0050】
このようにすることで、上記作用に加えて、シールガスが供給後にすぐに収容容器11の側壁と衝突しないか、又は、衝突してもその供給方向と側壁とのなす角度が45度以下と鋭角であるため、乱流が生じる等の不具合がない。
【0051】
なお、シールガスの供給方向FDは上記のように扇状に広がりを持つことが多いため、その供給方向FDのうち領域Qの範囲と重なっている部分が、50%以上であることが好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましく、100%が最も好ましい。
【0052】
さらに、シールガス供給口13aが、圧力検知部12aの位置からシールガス供給装置13の配管を見たとき、シールガス供給口13aが見えないような配置が好ましい。このようにすると、供給されたシールガスが収容容器11の側面に沿って流れやすくなり、収容容器11内で旋回流が生じやすくなる。旋回流とすることで、例えば、純水装置の立ち上げの際でタンク内が空気で満たされている場合や、大気の混入があった場合、その排出、置換を容易に行うことができる。
【0053】
また、旋回流としたとき、圧力検知部12aが、シールガス供給装置13の背面近くに設けておくと、供給されたシールガスの気流が圧力検知部12aまでに到達する際の移動距離を大きくすることができ、圧力検知部12aがシールガスの供給圧力に影響を受けることがなく好ましい。例えば、
図6に示したように、シールガス供給装置13と圧力検知部12aの距離は、直線距離では、距離aで示されるが、矢印方向に供給されたシールガスの気流が旋回して圧力検知部12aに到達するまでの移動距離は、例えば、少なくとも破線で示した距離bとなる。したがって、シールガス供給装置13と圧力検知部12aとの距離とを近づけることができ、近づけるほど、シールガスが供給された後、圧力検知部の下方に到達するまでの距離が長くなり、供給されるシールガスの動圧による影響をより受けづらくなる。例えば、シールガス供給装置13のシールガス供給口13aと圧力検知部12aとの距離を1m以内と近づけることができ、このため、タンク及び配管及び付属する設備を設置する自由度が大きくなり、装置設計が容易となる。なお、
図6では、シールガス供給装置13と圧力検知部12aの距離を問題としたが、シールガス供給装置13とシールガス排気装置12との距離についても同様に考えることができる。
【0054】
シールガス供給装置13、シールガス排気装置12、圧力検知部12aは必要に応じ複数設置することが可能である。
複数設置する場合は、例えば、
図7のように、シールガス供給口13aを円の中心側に向けることも可能であるし、
図8のように、シールガス供給装置13、シールガス排気装置12、圧力検知部12aを対角に設置することも可能である。
図8のように設置した場合、シールガスが収容容器11の側面に沿って流れやすくなり、収容容器11内で旋回流が生じやすくなるため、より好ましい。
【0055】
また、上記説明したシールガス供給装置13のシールガス供給口13aは、
図2のように円筒状の部材を用いる場合、その軸を中心に軸回転させることができる可動式の部材としてもよい。この場合、平面方向の側壁に、シールガス供給口13aを設けている場合、シールガス供給口13aの方向を回転により変えることできる。この場合、シールガス供給装置13の配置方向を気にすることが必要なくなり、また、シールガス排気装置12やその圧力検知器12a等の配置に応じて、最適なシールガスの供給方向FDを調整でき、好ましい。例えば、シールガス供給方向の影響が複雑となる場合もある。シールガス供給装置13、シールガス排気装置12、圧力検知部12aを複数設置する場合はその可能性が高くなる。そこで、ガスシールタンクを利用中に、実際の影響を確認しながら、最適なシールガスの供給方向FDに調整可能となる。
【0056】
[シールガスの供給方法]
次に、本発明のシールガスの供給方法について、
図1A及び1Bのガスシールタンクを用いる場合を例に、説明する。
【0057】
まず、収容容器11内に、液体50を収容し、その気相部60をシールガスで満たしたガスシールタンク10を用意し、次いで、液体流出口から液体が流出されて、収容容器内の気相部の圧力が所定の供給開始圧力よりも低くなったとき、シールガス供給装置13により、液体50の液面50aに対して平行又は鋭角となるようにシールガスを供給する。
【0058】
このように、シールガスの供給を特定の条件で行うことで、シールガスが鉛直方向上方から直接液体50の液面50aに衝突することがなく、シールガスの供給による動圧を抑えることができ、それにより、シールガス排気装置を誤作動させるような事態を回避することができる。
【0059】
また、シールガスが鉛直方向上方から直接液体50の液面50aに衝突することがないため、液面50aの波立ちを抑えることもできる。この場合、液面50aの波立ちが抑えられるため、液面計等による液面50aの高さの測定が正確であり、測定値が脈動しない。そのため、液体50の液位を安定して測定できるため、液位を比例制御している場合、その制御精度が向上でき、管理を安定して行うことができる。また、例えば、液面50aの高さによりポンプの制御をする場合、液面50aの脈動に起因するポンプの小刻みなオンオフが起きることがない。
さらに、シールガスが鉛直方向上方から直接液体50の液面50aに衝突することがないため、シールガスの液体50中への混入(溶け込み)を抑制することもできる。
【0060】
以下、収容容器への液体の収容、シールガスへの置換、シールガスの供給、排気について、より詳細に説明する。
【0061】
ガスシールタンク10を用意する。このとき収容容器11には、まだ液体50を収容しておらず、シールガスも供給されておらず、空気で満たされている。このガスシールタンク10において、まず、液体50を供給し、空気の一部を液体50で置換する。しかる後、液体50を液体流出口から液体を流出させ、シールガスを供給する。このとき、シールガスは、シールガスの供給開始圧力から排気開始圧力の所定の圧力範囲となるようにしておく。この液体の供給(空気の排気)とシールガスの供給の操作を繰り返すことで、収容容器11内は液体50とシールガスで満たされた気相部のみとなる。この際、本実施形態の方法を用いると、タンク内のいずれかの部分に空気のたまりができず、効率的に空気の排気が行えるため、上記操作の繰り返し回数を少なくして早期に立ち上げることができる。
【0062】
なお、液体50の供給、流出は、収容容器11にそのための流路がそれぞれ設けられている(図示は省略)。
【0063】
気相部60のシールガスへの置換と、液体50を所定の水位となるまで供給すると本発明で目的とする収容容器内での貯留の動作を行うことができる。すなわち、所定の水位まで供給された液体50は、液体50が使用されるまでは、その状態を保持する。
【0064】
次に、液体50の使用が開始されると、収容容器11内の液体50が減少し、気相部60の体積が増加していくため、気相部60の圧力が低下する。気相部60の圧力が所定の供給開始圧力よりも低くなると、シールガス供給装置13が作動し、シールガスが収容容器11内に供給され、気相部60の圧力が調整される。
【0065】
このとき、シールガスは、その供給方向が液面50aに対して、平行又は鋭角であるため、上記説明したように、安定して供給される。
【0066】
次いで、使用により液体50の水位が所定の量以下に低下すると、再度、所望の量となるまで収容容器11内に液体50が供給される。このとき、液体50が供給されると、気相部60が圧縮されて圧力が高くなるが、所定の排気開始圧力よりも高くなると、シールガス排気装置12が作動し、シールガスを収容容器11の外部に放出することで、気相部60の圧力は調整される。
【0067】
液体50が所望の量まで供給されると、液体50の供給は停止され、気相部60の圧力変動もなくなるため、シールガス排気装置12も動作を停止する。このとき、液体50は、気相部60を構成するシールガスと接触し、空気等と接触しないため、安定して貯留できる。
【0068】
なお、上記した供給開始圧力と排気開始圧力は、液体50の保存状態を最適にするために適宜設定され、供給開始圧力よりも排気開始圧力が高くなるように(排気開始圧力>供給開始圧力となるように)設定され、特に限定されるものではない。
【0069】
例えば、液体50が半導体装置製造において洗浄に使用される超純水の場合、供給開始圧力を0.2~1kPa、排気開始圧力を0.5~5kPa、シールガスの供給圧力を0.2~0.5MPaと設定する例が挙げられ、排気開始圧力を供給開始圧力よりも0.3~2kPa程度高くなるように設定する例が挙げられる。なお、この数値は例示であり、これに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0070】
このとき、気相部60の圧力は、供給開始圧力から排気開始圧力の範囲に保持するように調整される。なお、シールガス供給装置13、シールガス排気装置12ともに自動制御弁を用いる場合には、供給時圧力、排気時圧力として、圧力範囲で設定される。たとえば、供給時圧力は0.2~0.5kPaとし、排気時圧力1~5kPaとすると、気相部60の圧力は、その設定された圧力の間、例えば、0.5kPa~1kPaの範囲に保持される。
【0071】
次に、上記ガスシールタンク及びシールガスの供給方法を超純水製造装置に適用した場合の実施形態について説明する。
【0072】
(超純水製造装置)
この実施形態に係る超純水製造装置は、
図9に示したように、脱気装置を備えた1次純水装置31と、2次純水装置32と、1次純水装置31と2次純水装置32の間に、上記説明した本実施形態のガスシールタンク10が設けられた構成の超純水製造装置30である。
【0073】
1次純水装置31及び2次純水装置32は、公知の超純水製造装置で用いられる装置を特に制限なく用いることができる。なお、1次純水装置31には、脱気装置が備えられている。
【0074】
また、
図9には、ガスシールタンク10を1次純水装置31で得られた1次純水を収容するようにしているが、ガスシールタンクを1次純水装置31の中に組み入れ、1次純水装置31を構成する収容タンクとして用いることもできる。このとき、ガスシールタンク10は、脱気装置よりも後段に設け、脱気処理された処理水を収容するように配置する。
【0075】
ここで用いられる脱気装置は、公知の脱気装置が挙げられ、脱気膜、真空脱気塔、触媒脱気装置が好ましい。
また、1次純水装置31を構成する他の装置としては、逆浸透膜装置、電気脱イオン装置、イオン交換装置、紫外線照射装置等が挙げられ、これら装置は任意の組み合わせで備えることができる。
【0076】
2次純水装置にも、脱気装置を含むことが好ましい。脱気装置は、1次純水装置と同様に、公知の脱気装置が挙げられ、脱気膜、真空脱気塔、触媒脱気装置が好ましい。2次純水装置を構成する他の装置として、紫外線照射装置、限外ろ過装置、イオン交換装置等が挙げられ、これら装置は任意の組み合わせで備えることができる。
【0077】
また、製造された超純水に、溶解膜や溶解タンクを設置して、水素、オゾン、窒素等の気体を溶解して、機能水を製造することも可能である。この場合、溶存窒素の低い超純水を用いるため、機能水として溶解させる気体の量を増加させることができるので、高濃度の機能水が製造できる。また、溶存窒素濃度の変動の少ない超純水を利用するので、機能水の気体濃度を安定させることができる。
【0078】
脱気装置では、一般的に脱気膜や真空脱気塔では窒素をスウィープガスとして使用するため脱気処理した処理水における窒素の除去率は高くならない。また、触媒脱気装置では窒素は除去できないという欠点を持つ。このような脱気処理水に対し、従来のガスシールタンクは窒素をさらに溶解させてしまう場合があったが、本実施形態のガスシールタンクを用いた純水製造装置及び純水製造方法により従来のガスシールタンクの欠点を補うことが可能である。
【0079】
この超純水製造装置30は、1次純水を収容するタンクとして本実施形態のガスシールタンク10を用いるもので、従来の超純水の製造と同様の操作で超純水を製造できる。すなわち、被処理水を、脱気装置を有する1次純水装置31にて脱気処理された1次純水を得て、これをガスシールタンク10に収容、貯留する。次いで、ガスシールタンク10から所望のタイミングで1次純水を2次純水装置32に送出し、2次純水装置32で処理し2次純水(超純水)を得る。製造された超純水は、使用場所(POU;Point of Use)に送出され、余剰の超純水は、例えば、ガスシールタンクに循環させてもよい。ここでガスシールタンク10に収容する液体は1次純水であり、そのシールガスとしては窒素が用いられる。
【0080】
この超純水製造装置30の場合、上記本実施形態のガスシールタンク10を用いているため、窒素の使用量を従来に比べて低減できる。
また、ガスシールタンク10内の水面が気体流(窒素流)の直撃により乱されないので、タンク内における、窒素の溶解量を最小限にすることができる。これは、タンク内の水面を乱さないため、溶解する液体と気体の界面の面積が最小限となるためである。タンク内に貯留される脱気された1次純水は、いわゆるハングリーウォーターであり、気液界面から急激に窒素を溶解させるので、水面を乱さないことによる表面積の減少で、上記効果が表れる。
【0081】
従来、超純水製造装置では、そのガスシールタンクや脱気装置等の機器の設計条件や運転条件にもよるが、タンク内における窒素の溶解によって、製造される超純水の溶存窒素量(DN)は高く、かつ変動の大きいものだった。例えば、平均1ppmで、0.5ppm~1.5ppmに変動する場合があったが、本実施形態の超純水製造装置を用いると、平均0.4ppmで、0.3~0.5ppmとなり、平均濃度も、ばらつきも小さくなる。
【実施例0082】
以下、本発明を実施例により説明する。本実施例は、一例であり、本発明はこの実施例の記載に限定されるものではない。
【0083】
(実施例1)
超純水製造装置として、
図9に示した構成の装置を用いた。ここで、1次純水装置31は、上流側から順番に、活性炭装置(AC)、逆浸透膜装置(RO)、電気式脱イオン装置(EDI)、紫外線照射装置(TOC-UV)、混床式イオン交換装置(MB)、脱気膜装置(MDG)と接続され、これら1次純水装置で得られた1次純水がガスシールタンク10に一旦収容されるようになっている。2次純水装置は、ガスシールタンク10の後段に配置され、上流から順番に、紫外線照射装置(TOC-UV)、脱気膜装置(MDG)、ポリッシャー(MBP)、限外ろ過膜装置(UF)と接続され、使用場所(POU)へ超純水を供給できるようになっている。
【0084】
ここで用いたガスシールタンクは、内径:3900mm、高さ2500mmの円筒状の側壁を有し、天井部分に、
図6に示したように、シールガス排気装置12、圧力検知部12a、シールガス供給装置13、を設けた。シールガス排気装置12としては、ブリーザー弁(金子産業株式会社製、商品名:KN1-40JF)、シールガス供給装置13として、ガスシールユニット(金子産業株式会社製、商品名:ガスシールユニット GU25)を用いた。シールガス供給装置13は、
図2、
図4に示したシールガスの供給方向FDとなるようなシールガス供給口13aを有する装置を用いた。なお、膜脱気装置としては、Liqui-Cel X40 14本(3M社製)を用いた。
【0085】
この超純水製造装置を用い、厚木市水を原水とし、ガスシールタンクの出口流量を300m
3/hで原水を処理して超純水を連続的に製造した。このとき、シールガス排気装置12はシールガス供給による動圧の影響を受けず、その動作は安定していた。また、2次純水装置の出口(限外ろ過膜装置の出口)で処理されて得られる超純水の溶存窒素濃度を、濃度測定装置(株式会社ハック・ウルトラ製、商品名:Oribisphere 510)で測定し、その結果を、
図10に示した。
【0086】
(比較例1)
上記実施例1で用いた超純水製造装置において、ガスシールタンク10の代わりに従来のガスシールタンク(シールガス供給装置13のシールガス供給口が、鉛直方向下方にシールガスを供給するように設けられている)以外は、同様の構成の超純水製造装置を用い、同様の操作により超純水を製造した。超純水の溶存窒素濃度を、実施例1と同様に測定し、その結果を、
図10に併せて示した。
【0087】
図10では、溶存窒素濃度測定開始からの経過時間(h)と、製造された超純水の溶存窒素濃度(ppm)との関係を示した。この結果から、本実施形態のガスシールタンクを用いた超純水製造装置により製造される超純水は、その溶存窒素濃度を平均で0.4ppm程度に低減できており、その濃度の変動も少なく、安定した水質で得られることがわかった。
【0088】
本実施形態の超純水製造装置を用いると、溶存酸素量が低く、かつ溶存窒素量も低い超純水が製造できるので、特別な装置の追加等なく、例えば、半導体やディスプレイパネル製造用の超純水、特に半導体製造における液浸露光プロセス用の超純水を供給することができる。
【0089】
このように、本発明のシールガス供給装置及び供給方法によれば、ガスシールタンクにおけるシールガスの供給を安定して行うことができる。
【0090】
また、
図4及び5で説明したように、シールガス排気装置12の圧力検知部12aとの位置関係や、シールガス排気装置12との位置関係、シールガスの供給方向FD等を設定することにより、さらに安定してシールガスを供給することができる。
【0091】
このようなガスシールタンクを超純水製造装置に適用することで、シールガス(窒素ガス)が超純水中に溶解することを抑制でき、特に、微量の溶存ガス等をも低減した超純水を製造、提供できる。
【0092】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として掲示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
10…ガスシールタンク、11…収容容器、12…シールガス排気装置、12a…圧力検知部、13…シールガス供給装置、13a…シールガス供給口、13b…配管、13c…バルブ、30…超純水製造装置、31…1次純水装置、32…2次純水装置、50…液体、50a…液面、60…気相部