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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035219
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】砂防堰堤の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/02 20060101AFI20220225BHJP
【FI】
E02B7/02 B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020139385
(22)【出願日】2020-08-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】399035386
【氏名又は名称】株式会社本久
(74)【代理人】
【識別番号】100082658
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 儀一郎
(72)【発明者】
【氏名】小布施 栄
(57)【要約】
【課題】本発明は、砂防ソイルセメント工法による砂防堰堤構築に使用されるソイルセメント材のさらなる品質向上、また砂防ソイルセメント工法による砂防堰堤構築のゼロエミッション化のより一層の推進が達成できる砂防堰堤の構築方法を提供する。
【解決手段】本発明は、セメントミルクまたはセメントと水を投入すると共に、該投入物にペースト状をなす一次混合材1が混合撹拌により生成できる大きさの現地発生土砂を投入して混合撹拌し、ペースト状をなす一次混合材1を生成し、次いで、前記ペースト状をなす一次混合材1に、ペースト状をなす一次混合材1が混合撹拌により生成不可な大きさの現地発生土砂を前記一次混合材1の体積の50%以下の体積投入量にして投入し、絡ませて二次混合材3を生成し、生成した二次混合材を型枠4で囲まれた砂防堰堤設置個所に打設したことを特徴とする。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントミルクまたはセメントと水を投入すると共に、該投入物にペースト状をなす一次混合材が混合撹拌により生成できる大きさの現地発生土砂を投入して混合撹拌し、ペースト状をなす一次混合材を生成し、
次いで、前記ペースト状をなす一次混合材に、ペースト状をなす一次混合材が混合撹拌により生成不可な大きさの現地発生土砂を前記一次混合材の体積の50%以下の体積投入量にして投入し、前記ペースト状をなす一次混合材に、前記ペースト状をなす一次混合材が混合撹拌により生成不可な大きさの現地発生土砂を絡ませて二次混合材を生成し、生成した二次混合材を型枠で囲まれた砂防堰堤設置個所に打設した、
ことを特徴とする砂防ソイルセメント流動タイプによる砂防堰堤の構築方法。
【請求項2】
セメントミルクまたはセメントと水を投入すると共に、大きさがバックホウに装着される普通バケットまたはスケルトンバケットまたはスクリュー型撹拌機で混合撹拌できる大きさに限定された現地発生土砂を投入して前記バックホウに装着される普通バケットまたはスケルトンバケットまたはスクリュー型撹拌機で混合撹拌し、前記バックホウに装着される普通バケットまたはスケルトンバケットまたはスクリュー型撹拌機での混合撹拌によりペースト状をなす一次混合材を生成し、
次いで、前記ペースト状をなす一次混合材に、投入される現地発生土の大きさが前記バックホウに装着される普通バケットまたはスケルトンバケットまたはスクリュー型撹拌機で混合撹拌不可な大きさの現地発生石材を前記一次混合材の体積の50%以下の体積投入量にして投入し、前記ペースト状をなす一次混合材に、前記バックホウに装着される普通バケットまたはスケルトンバケットまたはスクリュー型撹拌機で混合撹拌不可な大きさの現地発生石材を絡ませて二次混合材を生成し、生成した二次混合材を型枠で囲まれた砂防堰堤設置個所に打設した、
ことを特徴とする砂防ソイルセメント流動タイプによる砂防堰堤の構築方法。
【請求項3】
セメントミルクまたはセメントと水を投入すると共に、粒径が略300mm以下の現地発生土砂を投入して混合撹拌し、ぺースト状をなす一次混合材を生成し、次いで、前記ペースト状をなす一次混合材に粒径が略300mm以上の現地発生石材を前記一次混合材の体積の50%以下の体積投入量にして投入し、前記ペースト状をなす一次混合材に前記粒径が略300mm以上の現地発生石材を絡ませて二次混合材を生成し、生成した二次混合材を型枠で囲まれた砂防堰堤設置個所に打設した、
ことを特徴とする砂防ソイルセメント流動タイプによる砂防堰堤の構築方法。
【請求項4】
前記一次混合材に使用される現地発生土砂は、細粒分としての粘性土、シルト、粗粒分としての砂、礫である、
ことを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の砂防ソイルセメント流動タイプによる砂防堰堤の構築方法。
【請求項5】
前記細粒分としての粘性土は黒ボク、赤ボクといった火山灰質粘性土である、
ことを特徴とする請求項4記載の砂防ソイルセメント流動タイプによる砂防堰堤の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砂防堰堤の構築方法にかかり、特に砂防ソイルセメント流動タイプによる砂防堰堤の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
いわゆる砂防ソイルセメント工法とは、砂防事業を推進する上で、特に砂防施設の構築に現地発生土砂を有効活用するために開発されたものであり、施工現場において現地発生土砂などとセメント及び水あるいはセメントミルク等を撹拌混合して築造するもので、砂防施設とこれに伴う附帯施設の構築および地盤改良に活用する工法の総称として用いられている。
【0003】
そして、前記砂防ソイルセメント工法には、振動ローラー等で締固める工法の「転圧タイプ」のほか、コンクリートのように型枠に流し込み構造物を構築するタイプで、セメントミルク等を加え撹拌した材料に流動性を持たせる「流動タイプ」がある。
【0004】
前記流動タイプの長所としては、水和反応に必要となる加水量を十分に確保できる点が挙げられる。そして、コンクリートホッパなどを用いることで、狭小部にも打設が可能である。また、充填性が良いため、法勾配の緩い構造物への適用のほか粗石の活用が期待できるなどの特徴がある。
【0005】
逆に短所としては、レディーミクストコンクリート同様、ワーカビリティ(打設性)を確保する必要があること、また施工方法によっては、施工機械などが大がかりとなること、すなわち、施工方法によりセメントミルクプラント等、製造ヤードが大がかりとなる点などが挙げられている。
【0006】
なお、混練りする際に使用する使用水については、原則として施工現場付近で採取できる河川水や流水等を使用することができるが、該使用水はセメント硬化反応を妨げることがないことを事前に確認しておく必要がある。
【0007】
ここで、砂防ソイルセメントに用いる現地発生土砂は掘削土砂だけでなく、既設堰堤の堆砂土砂等、施工現場付近で採取できる土砂、さらには他工事の現場からの搬入土砂等も含めたものとすることができる。
【0008】
そして、近年では前記砂防ソイルセメント工法(流動タイプ)による砂防堰堤構築の再検討が求められており、砂防ソイルセメント工法(流動タイプ)による砂防堰堤構築おいて、ソイルセメント材のさらなる品質向上(圧縮強度・単位体積重量)が要請され、またゼロエミッション化についてより一層の推進が要請されるに至ったのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2019-093558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
かくして本発明は前記従来の要請に鑑み創案されたもので、砂防ソイルセメント工法(流動タイプ)による砂防堰堤構築に使用されるソイルセメント材のさらなる品質向上(圧縮強度・単位体積重量)、また砂防ソイルセメント工法(流動タイプ)による砂防堰堤構築のゼロエミッション化のより一層の推進が達成できる砂防堰堤の構築方法を提供することを目的とするものである。
【0011】
すなわち、本発明では砂防ソイルセメント流動タイプへ石を混入することによって、外部からの調達となる改質材なしでは活用困難であった現地発生土砂の例えば赤ボク・黒ボクといった火山灰質粘性土への適用など砂防ソイルセメント堰堤構築に際しての一層の品質向上効果が期待できるものとなったのである。
【0012】
本発明では、良質土、ズリ、砕石、スラグといった現場外からの購入改質材を用いず、現地の粗石や巨石をはじめとする石を活用することで、これまで活用することが困難であった粘性土(細粒分20%以上)を母材とする砂防ソイルセメントの品質(圧縮強度・単位体積重量)を容易に向上させ、併せて製造コストの低減を実現し、現地発生材料をより多く活用することを可能とする製造技術が提供できるものとなった。
【0013】
粘性土を母材とする砂防ソイルセメントでは、下記に示す事項が課題となっていた。すなわち、細粒分を多く含む土砂は、固化させることがきわめて困難であり、その結果、要求される圧縮強度を満たすことが困難である。
【0014】
特に、黒ボクや赤ボクといった火山材質粘性土や有機質を含む土砂は要求強度の確保が非常に困難であり、砂防ソイルセメント堰堤の建設にあたり、黒ボクや赤ボクといった火山材質粘性土や有機質を含む土砂を使用する場合には大きな品質課題が生じた。
【0015】
また、このような土砂は、単位体積重量が小さいため、外力に抵抗する重量を確保するため砕石やスラグなど外部から購入する改質材料が必要となることに加え、強度の確保上大きな面積及び体積を有する施設構築が必要となり一般のコンクリート堰堤と比べて不経済であった。
【0016】
また、このような粘性土の土砂は、粘性が強く土やセメントの均一な混合が困難となることだけでなく、従来の締固めによる工法では、施工機械への付着や過大なウェービングを生じるなど施工性に難があり取扱いが困難であった。さらに、大量に発生している現地発生土砂の有効活用が進まず、現地発生土の処分に苦慮していた。
そして、現地では、粘性土だけでなく、粗石・巨石・転石(以下、石)も多量に発生しており、従来、粗石・巨石・転石の処分についても苦慮していた。
【0017】
従来技術である砂防ソイルセメント転圧タイプではφ15cm以下の礫しか活用できないため、小割にする必要が生ずるなど、現場作業が煩雑となっていた。
なお、石を活用する従来工法には、石を並べ礫間に高流動コンクリートを充填する工法(新粗石コンクリート工法)があるが、地盤面以下への適用であり、堰堤全体への適用がされていないため、石を含む現地発生土砂の活用にはなっていない。
【0018】
また、石を並べ礫間に高流動コンクリートを充填する工法は、確実な石の間隙への充填が困難となることがあり、これに伴う品質上の課題に加え、不安定な凹凸面のため作業足場の危険を伴うなど安全施工上の課題もあった。
【0019】
さらに、砂防ソイルセメント流動タイプでは、転圧タイプに比べ、単位セメント量が多くなる傾向があり、コスト高となることが多く、コスト低減を求められていたのである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、
セメントミルクまたはセメントと水を投入すると共に、該投入物にペースト状をなす一次混合材が混合撹拌により生成できる大きさの現地発生土砂を投入して混合撹拌し、ペースト状をなす一次混合材を生成し、
次いで、前記ペースト状をなす一次混合材に、ペースト状をなす一次混合材が混合撹拌により生成不可な大きさの現地発生土砂を前記一次混合材の体積の50%以下の体積投入量にして投入し、前記ペースト状をなす一次混合材に、前記ペースト状をなす一次混合材が混合撹拌により生成不可な大きさの現地発生土砂を絡ませて二次混合材を生成し、生成した二次混合材を型枠で囲まれた砂防堰堤設置個所に打設した、
ことを特徴とし、
または、
セメントミルクまたはセメントと水を投入すると共に、大きさがバックホウに装着される普通バケットまたはスケルトンバケットまたはスクリュー型撹拌機で混合撹拌できる大きさに限定された現地発生土砂を投入して前記バックホウに装着される普通バケットまたはスケルトンバケットまたはスクリュー型撹拌機で混合撹拌し、前記バックホウに装着される普通バケットまたはスケルトンバケットまたはスクリュー型撹拌機での混合撹拌によりペースト状をなす一次混合材を生成し、
次いで、前記ペースト状をなす一次混合材に、投入される現地発生土の大きさが前記バックホウに装着される普通バケットまたはスケルトンバケットまたはスクリュー型撹拌機で混合撹拌不可な大きさの現地発生石材を前記一次混合材の体積の50%以下の体積投入量にして投入し、前記ペースト状をなす一次混合材に、前記バックホウに装着される普通バケットまたはスケルトンバケットまたはスクリュー型撹拌機で混合撹拌不可な大きさの現地発生石材を絡ませて二次混合材を生成し、生成した二次混合材を型枠で囲まれた砂防堰堤設置個所に打設した、
ことを特徴とし、
または、
セメントミルクまたはセメントと水を投入すると共に、粒径が略300mm以下の現地発生土砂を投入して混合撹拌し、ぺースト状をなす一次混合材を生成し、次いで、前記ペースト状をなす一次混合材に粒径が略300mm以上の現地発生石材を前記一次混合材の体積の50%以下の体積投入量にして投入し、前記ペースト状をなす一次混合材に前記粒径が略300mm以上の現地発生石材を絡ませて二次混合材を生成し、生成した二次混合材を型枠で囲まれた砂防堰堤設置個所に打設した、
ことを特徴とし、
または、
前記一次混合材に使用される現地発生土砂は、細粒分としての粘性土、シルト、粗粒分としての砂、礫である、
ことを特徴とし、
または、
前記細粒分としての粘性土は黒ボク、赤ボクといった火山灰質粘性土である、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、砂防ソイルセメント工法(流動タイプ)による砂防堰堤構築に使用されるソイルセメント材のさらなる品質向上、また砂防ソイルセメント工法(流動タイプ)による砂防堰堤構築のゼロエミッション化のより一層の推進が達成できるとの優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の構成を説明する構成説明図(1)である。
図2】本発明の構成を説明する構成説明図(2)である。
図3】本発明の構成を説明する構成説明図(3)である。
図4】供試体の実験結果を説明する説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図に基づいて本発明を実施するための最良の形態について説明する。
本発明では、砂防ソイルセメント工法(流動タイプ)による砂防堰堤構築に使用されるソイルセメント材の生成に際し、一次混合工程と二次混合工程を採用した。
【0024】
一次混合工程では、セメントミルクまたはセメントと水に必要に応じて混和剤を入れて混合する。さらに現場で収集した現場発生土砂を入れて撹拌混合する。ここで、撹拌には一般的にバックホウに装着される普通バケットまたはスケルトンバケットまたはスクリュー型撹拌機が使用される。すなわち、バックホウに装着される普通バケットまたはスケルトンバケットで撹拌したり、またはスクリュー型撹拌機のスクリュー羽が回転して前記セメントミルクまたはセメントと水、混和剤、現場で収集した現場発生土砂を撹拌混合するものとなる。そして、その混合物が半流動体のペースト状になるまで撹拌混合する。
【0025】
現場発生土砂には、前述した細粒分である黒ボクあるいは赤ボクなどの火山灰質粘性土また細粒分である粘土、シルトが該当し、これらが混入される。該細粒分の粒径は、略0.075mm以下のものが一般的である。
【0026】
次に、細砂、中砂、粗砂も混入される。細砂の粒径は、0.075mmから0.25mmが一般的とされ、中砂の粒径は0.25mmから0.85mmが一般的であり、粗砂の粒径は0.85mmから2mmが一般的とされている。次に、細礫、中礫、粗礫が混入される。ここで、細礫の粒径は、2mmから4.25mmが一般的であり、中礫の粒径は4.25mmから19mmが一般的であり、粗礫の粒径は19mmから75mmが一般的である。次に、粗石が混入される。ここで、粗石の粒径は、75mmから300mmが一般的とされている。そして、それらは例えば、バックホウに装着される普通バケットまたはスケルトンバケットで撹拌され、またはスクリュー型撹拌機により撹拌される。すなわち、バックホウに装着される普通バケットまたはスケルトンバケットで撹拌し、またはスクリュー型撹拌機のスクリュー羽が回転して撹拌するものである。
【0027】
上記のように前記メントミルクまたはセメントと水に必要に応じて混和剤、さらに現場で収集した前記現場発生土砂を入れて撹拌混合することによりペースト状をなす一次混合材1が生成される。この段階で形状の大きい、例えば前記スクリュー型撹拌機により撹拌できない現場発生土砂は投入できないものとなる。例えばスクリュー型撹拌機により撹拌できない現場発生土砂が投入されるとペースト状の一次混合材が生成できないからである。
【0028】
このように、一次混合工程では、セメントミルクまたはセメントと水に必要に応じて混和剤を入れ、さらに現場で収集した前記細粒分、砂、礫、粗石などの現場発生土砂を入れて混合される。そして、一次混合工程で混合され、撹拌されて生成され、良好に撹拌混合されてペースト状に生成されたものを一次混合材1と称する。
【0029】
次に、前記一次混合工程で撹拌、混合された一次混合材1に、現場発生土砂である例えば巨石2が投入される。この巨石2の粒径は約300mm前後の大きさから500mmの大きさが一般的とされている。しかし、500mm以上の大きさでも構わない。現場発生土砂であればよい。
【0030】
前記一次混合材1に粒径が約300mmから500mmが一般的な大きさの現場発生土砂である巨石2を投入し、ペースト状をなしている一次混合材1を該巨石2に絡ませる。これによって二次混合材3が生成される。巨石2は粒径が大きすぎ、一次混合材1と巨石2とを撹拌混合することができない。よって、二次混合材3は半流動体のようなペースト状に構成することができない。しかし、ペースト状をなしている一次混合材1を該巨石2に絡ませることはできる。
【0031】
そして、前記粒径が約300mmから500mmが一般的な大きさの現場発生土砂である巨石2の投入量であるが、体積比で前記一次混合材1の約50%までとされる。50%以上の比率で投入すると、巨石2をぺースト状をなす一次混合材1に絡ませることができないからである。なお、巨石2をぺースト状をなす一次混合材1に絡ませる作業は、例えばバックホウなど重機のショベルで掻きまわすなどの作業によって行われる。
【0032】
上記のようにして構成された二次混合材3は、例えばバックホウなど重機のショベルで掬い上げ、あらかじめ型枠4などで囲まれた砂防堰堤設置個所に打設されるものとなる。なお、砂防堰堤などの打設箇所はかなり上方個所になる場合が多く、図2に示すように、クレーン車5などを使用して打設作業が行われる。
【0033】
ここで、図3を参照して石を投入したときのセメント量の変化につき説明する。図3において、(1)は石分が0%のとき、セメントまたはセメント系固化材は400kg/m必要とされるが、(2)の場合のように石分が25%のときはセメントまたはセメント系固化材は300kg/m必要とされ、(3)のように石分が50%のときはセメントまたはセメント系固化材は200kg/m必要とされることが明確になった。
【0034】
次に、図4に供試体を使用して実験した結果を示す。すなわち、粒径が、略0.075mm以下の粘性土が100%の供試体と、粒径が0.84mmから2.0mmの礫を25%及び50%混合した供試体と、粒径が13mmから16mmの礫を25%及び50%混合した供試体と、粒径が26.5mmから31.5mmの礫を25%及び50%混合した供試体とを形成してそれぞれの一軸圧縮強度を測定した結果である。
【0035】
図4から理解されるように、特に石を50%混合すると一軸圧縮強度が増加することが確認された。すなわち、粒径が、略0.075mm以下の粘性土が100%の供試体の一軸圧縮強度は3.75N/mmであるのに対し、粒径が0.84mmから2.0mmの礫を50%混合した供試体では6.71N/mm、粒径が26.5mmから31.5mmの礫を50%混合した供試体では、7.36N/mmと増加している。
【0036】
供試体には粒径が略300mm以上の巨石を混合して実験することは困難なため、粒径が26.5mmから31.5mmまでの礫を50%混合した供試体で実験せざるを得なかったが、粒径が大きい石を混合すればするほど一軸圧縮強度が増加することが確認できるものとなった。
【0037】
以上、本発明では、ソイルセメント材の生成に際し、いわゆる現地発生土砂、さらには現地で発生する撹拌作業に適さない石を用いることとした。なお、現地で発生する石が不足する場合は、近隣地域で発生する石を用いることができる。さらに、不足する場合には購入石材や礫材を用いる。
【0038】
まず、ソイルセメント材(現地発生土砂とセメント、水、場合によって混和剤からなる混合物)は、セメントミルクまたは水+セメントにより、均一かつ流動性を有し、打設に適した性状となるまで、すなわち半流動体のペースト状になるまで混合攪拌した後(一次混合工程で一次混合材1を製造)、撹拌混合できない石を投入し、その石にペースト状をなす一次混合材1を絡ませることによって製造するものである(二次混合工程で二次混合材3を製造)。
【0039】
ここで、二次混合工程で投入する撹拌混合に適さない大きさの石は、30~50cmを標準としており、一次混合材1に用いる母材の最大礫径によっては75mm~50cmであってもかまわない。また、部分的には70cm程度の石が入ることも許容できる。
さらに、前記石の混入可能な量は、最大体積比で50%程度まで混入することができる。
【0040】
また、一次混合材1は、撹拌混合に適さない石分の混入率に関わらず、事前に実施される配合試験で決定した配合量(単位セメント量、単位水量)を採用することができ、一次混合工程での粗石混入率が多ければ多いほど、全体体積に占める単位セメント量や単位水量を小さくすることができる。
なお、本発明ではスランプ試験またはフロー試験によりコンシステンシーの経時変化に対応し、良好なワーカビリティが確保されている。
【0041】
また、一次混合工程と二次混合工程を経て製造された砂防ソイルセメント材は、コンクリートと同様に前述したようにクレーン車5によって打設することができ、よって、これにより砂防堰堤全断面への適用が可能となる。
【0042】
かくして、本発明によって製造した、砂防ソイルセメント流動タイプの二次混合材3は、撹拌混合できない大きさの石の混入に伴い、全体としての単位セメント量を減らしつつ、要求性能である圧縮強度の増加、単位体積重量の増加を実現している。
【0043】
また、半流動体のペースト状をなす一次混合材1を撹拌混合に適さない大きさの石に絡ませて二次混合材3とすれば、前記石のかみ合わせの効果も発生することで、一次混合材1のみで構築する砂防ソイルセメントよりも全体としての強度が大幅に増加することが確認された。
そして、本発明によれば、二次混合材3生成の際の石の混入量に応じ、半流動体のペースト状をなす一次混合材1の製造量を確実に低減することができる。
【0044】
さらに、二次混合材3の生成に際し、撹拌混合に適さない石を混入することによって、内部発熱温度が上昇することを抑制するなど急激な温度変化の緩和する効果をもたらし、またその後は、前記石が二次混合材3の保温を実現するなどの効果をもたらしている。
【0045】
また、一次混合材1の生成に際し、粘性が大きな粘性土を使用しても、撹拌混合に適さない大きさの石を投入した二次混合材3は材料分離することなく良好な施工性を確保することが確認された。
【0046】
このように、これまで活用困難とされていた現場で大量に発生する粘性土を使用しても、二次混合材3の品質確保ができるものとなった。
また、粘性土だけではなく、砂質土や砂礫など、現地で発生する土砂の物性が良くなれば、更なる二次混合材3の品質向上が可能となる。
そして、現地で発生する土砂・石まで幅広い粒径の土砂の活用が可能となることで、ゼロエミッションの推進が可能となり、環境負荷低減につながることとなった。
また、現場で発生する撹拌混合に適さない大きさの石の活用に伴う、ソイルセメント材製造量の低減。そしてそれによる堰堤構築にかかる工事コストダウンができるものとなった。
【0047】
すなわち、品質向上に伴い、堰堤断面のスリム化が可能となり、それに伴う工事コストダウンが可能となり、加えて、堰堤断面のスリム化は、掘削範囲を小さくし、残土発生量の抑制が可能となるとともに、全体計画上では用地買収や残土処理費用の低減など建設全体の事業コストを縮減することが出来ることとなった。
【符号の説明】
【0048】
1 一次混合材
2 巨石
3 二次混合材
4 型枠
5 クレーン車
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2021-11-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントミルクまたはセメントと水に対して、粒径が比較的小さい現地発生土砂を投入しかつ混合攪拌することによりペースト状の一次混合材を生成し、
次いで、前記ペースト状をなす一次混合材に、ペースト状をなす一次混合材が混合撹拌により生成不可な大きさの現地発生土砂を前記一次混合材の体積の50%以下の体積投入量にして投入し、前記ペースト状をなす一次混合材に、前記ペースト状をなす一次混合材が混合撹拌により生成不可な大きさの現地発生土砂を絡ませて二次混合材を生成し、生成した二次混合材を型枠で囲まれた砂防堰堤設置個所に打設した、
ことを特徴とする砂防ソイルセメント流動タイプによる砂防堰堤の構築方法。
【請求項2】
セメントミルクまたはセメントと水を投入すると共に、大きさがバックホウに装着される普通バケットまたはスケルトンバケットまたはスクリュー型撹拌機で混合撹拌できる大きさに限定された現地発生土砂を投入して前記バックホウに装着される普通バケットまたはスケルトンバケットまたはスクリュー型撹拌機で混合撹拌し、前記バックホウに装着される普通バケットまたはスケルトンバケットまたはスクリュー型撹拌機での混合撹拌によりペースト状をなす一次混合材を生成し、
次いで、前記ペースト状をなす一次混合材に、投入される現地発生土の大きさが前記バックホウに装着される普通バケットまたはスケルトンバケットまたはスクリュー型撹拌機で混合撹拌不可な大きさの現地発生石材を前記一次混合材の体積の50%以下の体積投入量にして投入し、前記ペースト状をなす一次混合材に、前記バックホウに装着される普通バケットまたはスケルトンバケットまたはスクリュー型撹拌機で混合撹拌不可な大きさの現地発生石材を絡ませて二次混合材を生成し、生成した二次混合材を型枠で囲まれた砂防堰堤設置個所に打設した、
ことを特徴とする砂防ソイルセメント流動タイプによる砂防堰堤の構築方法。
【請求項3】
セメントミルクまたはセメントと水を投入すると共に、粒径が略300mm以下の現地発生土砂を投入して混合撹拌し、ぺースト状をなす一次混合材を生成し、次いで、前記ペースト状をなす一次混合材に粒径が略300mm以上の現地発生石材を前記一次混合材の体積の50%以下の体積投入量にして投入し、前記ペースト状をなす一次混合材に前記粒径が略300mm以上の現地発生石材を絡ませて二次混合材を生成し、生成した二次混合材を型枠で囲まれた砂防堰堤設置個所に打設した、
ことを特徴とする砂防ソイルセメント流動タイプによる砂防堰堤の構築方法。
【請求項4】
前記一次混合材に使用される現地発生土砂は、細粒分としての粘性土、シルト、粗粒分としての砂、礫である、
ことを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の砂防ソイルセメント流動タイプによる砂防堰堤の構築方法。
【請求項5】
前記細粒分としての粘性土は黒ボク、赤ボクといった火山灰質粘性土である、
ことを特徴とする請求項4記載の砂防ソイルセメント流動タイプによる砂防堰堤の構築方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砂防堰堤の構築方法にかかり、特に砂防ソイルセメント流動タイプによる砂防堰堤の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
いわゆる砂防ソイルセメント工法とは、砂防事業を推進する上で、特に砂防施設の構築に現地発生土砂を有効活用するために開発されたものであり、施工現場において現地発生土砂などとセメント及び水あるいはセメントミルク等を撹拌混合して築造するもので、砂防施設とこれに伴う附帯施設の構築および地盤改良に活用する工法の総称として用いられている。
【0003】
そして、前記砂防ソイルセメント工法には、振動ローラー等で締固める工法の「転圧タイプ」のほか、コンクリートのように型枠に流し込み構造物を構築するタイプで、セメントミルク等を加え撹拌した材料に流動性を持たせる「流動タイプ」がある。
【0004】
前記流動タイプの長所としては、水和反応に必要となる加水量を十分に確保できる点が挙げられる。そして、コンクリートホッパなどを用いることで、狭小部にも打設が可能である。また、充填性が良いため、法勾配の緩い構造物への適用のほか粗石の活用が期待できるなどの特徴がある。
【0005】
逆に短所としては、レディーミクストコンクリート同様、ワーカビリティ(打設性)を確保する必要があること、また施工方法によっては、施工機械などが大がかりとなること、すなわち、施工方法によりセメントミルクプラント等、製造ヤードが大がかりとなる点などが挙げられている。
【0006】
なお、混練りする際に使用する使用水については、原則として施工現場付近で採取できる河川水や流水等を使用することができるが、該使用水はセメント硬化反応を妨げることがないことを事前に確認しておく必要がある。
【0007】
ここで、砂防ソイルセメントに用いる現地発生土砂は掘削土砂だけでなく、既設堰堤の堆砂土砂等、施工現場付近で採取できる土砂、さらには他工事の現場からの搬入土砂等も含めたものとすることができる。
【0008】
そして、近年では前記砂防ソイルセメント工法(流動タイプ)による砂防堰堤構築の再検討が求められており、砂防ソイルセメント工法(流動タイプ)による砂防堰堤構築おいて、ソイルセメント材のさらなる品質向上(圧縮強度・単位体積重量)が要請され、またゼロエミッション化についてより一層の推進が要請されるに至ったのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2019-093558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
かくして本発明は前記従来の要請に鑑み創案されたもので、砂防ソイルセメント工法(流動タイプ)による砂防堰堤構築に使用されるソイルセメント材のさらなる品質向上(圧縮強度・単位体積重量)、また砂防ソイルセメント工法(流動タイプ)による砂防堰堤構築のゼロエミッション化のより一層の推進が達成できる砂防堰堤の構築方法を提供することを目的とするものである。
【0011】
すなわち、本発明では砂防ソイルセメント流動タイプへ石を混入することによって、外部からの調達となる改質材なしでは活用困難であった現地発生土砂の例えば赤ボク・黒ボクといった火山灰質粘性土への適用など砂防ソイルセメント堰堤構築に際しての一層の品質向上効果が期待できるものとなったのである。
【0012】
本発明では、良質土、ズリ、砕石、スラグといった現場外からの購入改質材を用いず、現地の粗石や巨石をはじめとする石を活用することで、これまで活用することが困難であった粘性土(細粒分20%以上)を母材とする砂防ソイルセメントの品質(圧縮強度・単位体積重量)を容易に向上させ、併せて製造コストの低減を実現し、現地発生材料をより多く活用することを可能とする製造技術が提供できるものとなった。
【0013】
粘性土を母材とする砂防ソイルセメントでは、下記に示す事項が課題となっていた。すなわち、細粒分を多く含む土砂は、固化させることがきわめて困難であり、その結果、要求される圧縮強度を満たすことが困難である。
【0014】
特に、黒ボクや赤ボクといった火山材質粘性土や有機質を含む土砂は要求強度の確保が非常に困難であり、砂防ソイルセメント堰堤の建設にあたり、黒ボクや赤ボクといった火山材質粘性土や有機質を含む土砂を使用する場合には大きな品質課題が生じた。
【0015】
また、このような土砂は、単位体積重量が小さいため、外力に抵抗する重量を確保するため砕石やスラグなど外部から購入する改質材料が必要となることに加え、強度の確保上大きな面積及び体積を有する施設構築が必要となり一般のコンクリート堰堤と比べて不経済であった。
【0016】
また、このような粘性土の土砂は、粘性が強く土やセメントの均一な混合が困難となることだけでなく、従来の締固めによる工法では、施工機械への付着や過大なウェービングを生じるなど施工性に難があり取扱いが困難であった。さらに、大量に発生している現地発生土砂の有効活用が進まず、現地発生土の処分に苦慮していた。
そして、現地では、粘性土だけでなく、粗石・巨石・転石(以下、石)も多量に発生しており、従来、粗石・巨石・転石の処分についても苦慮していた。
【0017】
従来技術である砂防ソイルセメント転圧タイプではφ15cm以下の礫しか活用できないため、小割にする必要が生ずるなど、現場作業が煩雑となっていた。
なお、石を活用する従来工法には、石を並べ礫間に高流動コンクリートを充填する工法(新粗石コンクリート工法)があるが、地盤面以下への適用であり、堰堤全体への適用がされていないため、石を含む現地発生土砂の活用にはなっていない。
【0018】
また、石を並べ礫間に高流動コンクリートを充填する工法は、確実な石の間隙への充填が困難となることがあり、これに伴う品質上の課題に加え、不安定な凹凸面のため作業足場の危険を伴うなど安全施工上の課題もあった。
【0019】
さらに、砂防ソイルセメント流動タイプでは、転圧タイプに比べ、単位セメント量が多くなる傾向があり、コスト高となることが多く、コスト低減を求められていたのである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、
セメントミルクまたはセメントと水に対して、粒径が比較的小さい現地発生土砂を投入しかつ混合攪拌することによりペースト状の一次混合材を生成し、
次いで、前記ペースト状をなす一次混合材に、ペースト状をなす一次混合材が混合撹拌により生成不可な大きさの現地発生土砂を前記一次混合材の体積の50%以下の体積投入量にして投入し、前記ペースト状をなす一次混合材に、前記ペースト状をなす一次混合材が混合撹拌により生成不可な大きさの現地発生土砂を絡ませて二次混合材を生成し、生成した二次混合材を型枠で囲まれた砂防堰堤設置個所に打設した、
ことを特徴とし、
または、
セメントミルクまたはセメントと水を投入すると共に、大きさがバックホウに装着される普通バケットまたはスケルトンバケットまたはスクリュー型撹拌機で混合撹拌できる大きさに限定された現地発生土砂を投入して前記バックホウに装着される普通バケットまたはスケルトンバケットまたはスクリュー型撹拌機で混合撹拌し、前記バックホウに装着される普通バケットまたはスケルトンバケットまたはスクリュー型撹拌機での混合撹拌によりペースト状をなす一次混合材を生成し、
次いで、前記ペースト状をなす一次混合材に、投入される現地発生土の大きさが前記バックホウに装着される普通バケットまたはスケルトンバケットまたはスクリュー型撹拌機で混合撹拌不可な大きさの現地発生石材を前記一次混合材の体積の50%以下の体積投入量にして投入し、前記ペースト状をなす一次混合材に、前記バックホウに装着される普通バケットまたはスケルトンバケットまたはスクリュー型撹拌機で混合撹拌不可な大きさの現地発生石材を絡ませて二次混合材を生成し、生成した二次混合材を型枠で囲まれた砂防堰堤設置個所に打設した、
ことを特徴とし、
または、
セメントミルクまたはセメントと水を投入すると共に、粒径が略300mm以下の現地発生土砂を投入して混合撹拌し、ぺースト状をなす一次混合材を生成し、次いで、前記ペースト状をなす一次混合材に粒径が略300mm以上の現地発生石材を前記一次混合材の体積の50%以下の体積投入量にして投入し、前記ペースト状をなす一次混合材に前記粒径が略300mm以上の現地発生石材を絡ませて二次混合材を生成し、生成した二次混合材を型枠で囲まれた砂防堰堤設置個所に打設した、
ことを特徴とし、
または、
前記一次混合材に使用される現地発生土砂は、細粒分としての粘性土、シルト、粗粒分としての砂、礫である、
ことを特徴とし、
または、
前記細粒分としての粘性土は黒ボク、赤ボクといった火山灰質粘性土である、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、砂防ソイルセメント工法(流動タイプ)による砂防堰堤構築に使用されるソイルセメント材のさらなる品質向上、また砂防ソイルセメント工法(流動タイプ)による砂防堰堤構築のゼロエミッション化のより一層の推進が達成できるとの優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の構成を説明する構成説明図(1)である。
図2】本発明の構成を説明する構成説明図(2)である。
図3】本発明の構成を説明する構成説明図(3)である。
図4】供試体の実験結果を説明する説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図に基づいて本発明を実施するための最良の形態について説明する。
本発明では、砂防ソイルセメント工法(流動タイプ)による砂防堰堤構築に使用されるソイルセメント材の生成に際し、一次混合工程と二次混合工程を採用した。
【0024】
一次混合工程では、セメントミルクまたはセメントと水に必要に応じて混和剤を入れて混合する。さらに現場で収集した現場発生土砂を入れて撹拌混合する。ここで、撹拌には一般的にバックホウに装着される普通バケットまたはスケルトンバケットまたはスクリュー型撹拌機が使用される。すなわち、バックホウに装着される普通バケットまたはスケルトンバケットで撹拌したり、またはスクリュー型撹拌機のスクリュー羽が回転して前記セメントミルクまたはセメントと水、混和剤、現場で収集した現場発生土砂を撹拌混合するものとなる。そして、その混合物が半流動体のペースト状になるまで撹拌混合する。
【0025】
現場発生土砂には、前述した細粒分である黒ボクあるいは赤ボクなどの火山灰質粘性土また細粒分である粘土、シルトが該当し、これらが混入される。該細粒分の粒径は、略0.075mm以下のものが一般的である。
【0026】
次に、細砂、中砂、粗砂も混入される。細砂の粒径は、0.075mmから0.25mmが一般的とされ、中砂の粒径は0.25mmから0.85mmが一般的であり、粗砂の粒径は0.85mmから2mmが一般的とされている。次に、細礫、中礫、粗礫が混入される。ここで、細礫の粒径は、2mmから4.25mmが一般的であり、中礫の粒径は4.25mmから19mmが一般的であり、粗礫の粒径は19mmから75mmが一般的である。次に、粗石が混入される。ここで、粗石の粒径は、75mmから300mmが一般的とされている。そして、それらは例えば、バックホウに装着される普通バケットまたはスケルトンバケットで撹拌され、またはスクリュー型撹拌機により撹拌される。すなわち、バックホウに装着される普通バケットまたはスケルトンバケットで撹拌し、またはスクリュー型撹拌機のスクリュー羽が回転して撹拌するものである。
【0027】
上記のように前記メントミルクまたはセメントと水に必要に応じて混和剤、さらに現場で収集した前記現場発生土砂を入れて撹拌混合することによりペースト状をなす一次混合材1が生成される。この段階で形状の大きい、例えば前記スクリュー型撹拌機により撹拌できない現場発生土砂は投入できないものとなる。例えばスクリュー型撹拌機により撹拌できない現場発生土砂が投入されるとペースト状の一次混合材が生成できないからである。
【0028】
このように、一次混合工程では、セメントミルクまたはセメントと水に必要に応じて混和剤を入れ、さらに現場で収集した前記細粒分、砂、礫、粗石などの現場発生土砂を入れて混合される。そして、一次混合工程で混合され、撹拌されて生成され、良好に撹拌混合されてペースト状に生成されたものを一次混合材1と称する。
【0029】
次に、前記一次混合工程で撹拌、混合された一次混合材1に、現場発生土砂である例えば巨石2が投入される。この巨石2の粒径は約300mm前後の大きさから500mmの大きさが一般的とされている。しかし、500mm以上の大きさでも構わない。現場発生土砂であればよい。
【0030】
前記一次混合材1に粒径が約300mmから500mmが一般的な大きさの現場発生土砂である巨石2を投入し、ペースト状をなしている一次混合材1を該巨石2に絡ませる。これによって二次混合材3が生成される。巨石2は粒径が大きすぎ、一次混合材1と巨石2とを撹拌混合することができない。よって、二次混合材3は半流動体のようなペースト状に構成することができない。しかし、ペースト状をなしている一次混合材1を該巨石2に絡ませることはできる。
【0031】
そして、前記粒径が約300mmから500mmが一般的な大きさの現場発生土砂である巨石2の投入量であるが、体積比で前記一次混合材1の約50%までとされる。50%以上の比率で投入すると、巨石2をぺースト状をなす一次混合材1に絡ませることができないからである。なお、巨石2をぺースト状をなす一次混合材1に絡ませる作業は、例えばバックホウなど重機のショベルで掻きまわすなどの作業によって行われる。
【0032】
上記のようにして構成された二次混合材3は、例えばバックホウなど重機のショベルで掬い上げ、あらかじめ型枠4などで囲まれた砂防堰堤設置個所に打設されるものとなる。なお、砂防堰堤などの打設箇所はかなり上方個所になる場合が多く、図2に示すように、クレーン車5などを使用して打設作業が行われる。
【0033】
ここで、図3を参照して石を投入したときのセメント量の変化につき説明する。図3において、(1)は石分が0%のとき、セメントまたはセメント系固化材は400kg/m必要とされるが、(2)の場合のように石分が25%のときはセメントまたはセメント系固化材は300kg/m必要とされ、(3)のように石分が50%のときはセメントまたはセメント系固化材は200kg/m必要とされることが明確になった。
【0034】
次に、図4に供試体を使用して実験した結果を示す。すなわち、粒径が、略0.075mm以下の粘性土が100%の供試体と、粒径が0.84mmから2.0mmの礫を25%及び50%混合した供試体と、粒径が13mmから16mmの礫を25%及び50%混合した供試体と、粒径が26.5mmから31.5mmの礫を25%及び50%混合した供試体とを形成してそれぞれの一軸圧縮強度を測定した結果である。
【0035】
図4から理解されるように、特に石を50%混合すると一軸圧縮強度が増加することが確認された。すなわち、粒径が、略0.075mm以下の粘性土が100%の供試体の一軸圧縮強度は3.75N/mmであるのに対し、粒径が0.84mmから2.0mmの礫を50%混合した供試体では6.71N/mm、粒径が26.5mmから31.5mmの礫を50%混合した供試体では、7.36N/mmと増加している。
【0036】
供試体には粒径が略300mm以上の巨石を混合して実験することは困難なため、粒径が26.5mmから31.5mmまでの礫を50%混合した供試体で実験せざるを得なかったが、粒径が大きい石を混合すればするほど一軸圧縮強度が増加することが確認できるものとなった。
【0037】
以上、本発明では、ソイルセメント材の生成に際し、いわゆる現地発生土砂、さらには現地で発生する撹拌作業に適さない石を用いることとした。なお、現地で発生する石が不足する場合は、近隣地域で発生する石を用いることができる。さらに、不足する場合には購入石材や礫材を用いる。
【0038】
まず、ソイルセメント材(現地発生土砂とセメント、水、場合によって混和剤からなる混合物)は、セメントミルクまたは水+セメントにより、均一かつ流動性を有し、打設に適した性状となるまで、すなわち半流動体のペースト状になるまで混合攪拌した後(一次混合工程で一次混合材1を製造)、撹拌混合できない石を投入し、その石にペースト状をなす一次混合材1を絡ませることによって製造するものである(二次混合工程で二次混合材3を製造)。
【0039】
ここで、二次混合工程で投入する撹拌混合に適さない大きさの石は、30~50cmを標準としており、一次混合材1に用いる母材の最大礫径によっては75mm~50cmであってもかまわない。また、部分的には70cm程度の石が入ることも許容できる。
さらに、前記石の混入可能な量は、最大体積比で50%程度まで混入することができる。
【0040】
また、一次混合材1は、撹拌混合に適さない石分の混入率に関わらず、事前に実施される配合試験で決定した配合量(単位セメント量、単位水量)を採用することができ、一次混合工程での粗石混入率が多ければ多いほど、全体体積に占める単位セメント量や単位水量を小さくすることができる。
なお、本発明ではスランプ試験またはフロー試験によりコンシステンシーの経時変化に対応し、良好なワーカビリティが確保されている。
【0041】
また、一次混合工程と二次混合工程を経て製造された砂防ソイルセメント材は、コンクリートと同様に前述したようにクレーン車5によって打設することができ、よって、これにより砂防堰堤全断面への適用が可能となる。
【0042】
かくして、本発明によって製造した、砂防ソイルセメント流動タイプの二次混合材3は、撹拌混合できない大きさの石の混入に伴い、全体としての単位セメント量を減らしつつ、要求性能である圧縮強度の増加、単位体積重量の増加を実現している。
【0043】
また、半流動体のペースト状をなす一次混合材1を撹拌混合に適さない大きさの石に絡ませて二次混合材3とすれば、前記石のかみ合わせの効果も発生することで、一次混合材1のみで構築する砂防ソイルセメントよりも全体としての強度が大幅に増加することが確認された。
そして、本発明によれば、二次混合材3生成の際の石の混入量に応じ、半流動体のペースト状をなす一次混合材1の製造量を確実に低減することができる。
【0044】
さらに、二次混合材3の生成に際し、撹拌混合に適さない石を混入することによって、内部発熱温度が上昇することを抑制するなど急激な温度変化の緩和する効果をもたらし、またその後は、前記石が二次混合材3の保温を実現するなどの効果をもたらしている。
【0045】
また、一次混合材1の生成に際し、粘性が大きな粘性土を使用しても、撹拌混合に適さない大きさの石を投入した二次混合材3は材料分離することなく良好な施工性を確保することが確認された。
【0046】
このように、これまで活用困難とされていた現場で大量に発生する粘性土を使用しても、二次混合材3の品質確保ができるものとなった。
また、粘性土だけではなく、砂質土や砂礫など、現地で発生する土砂の物性が良くなれば、更なる二次混合材3の品質向上が可能となる。
そして、現地で発生する土砂・石まで幅広い粒径の土砂の活用が可能となることで、ゼロエミッションの推進が可能となり、環境負荷低減につながることとなった。
また、現場で発生する撹拌混合に適さない大きさの石の活用に伴う、ソイルセメント材製造量の低減。そしてそれによる堰堤構築にかかる工事コストダウンができるものとなった。
【0047】
すなわち、品質向上に伴い、堰堤断面のスリム化が可能となり、それに伴う工事コストダウンが可能となり、加えて、堰堤断面のスリム化は、掘削範囲を小さくし、残土発生量の抑制が可能となるとともに、全体計画上では用地買収や残土処理費用の低減など建設全体の事業コストを縮減することが出来ることとなった。
【符号の説明】
【0048】
1 一次混合材
2 巨石
3 二次混合材
4 型枠
5 クレーン車