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  • 特開-NAD産生促進剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035271
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】NAD産生促進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/98 20060101AFI20220225BHJP
   A61K 8/65 20060101ALI20220225BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20220225BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220225BHJP
   A61P 39/00 20060101ALI20220225BHJP
   A61K 38/05 20060101ALI20220225BHJP
   A61K 38/06 20060101ALI20220225BHJP
   A61K 38/39 20060101ALI20220225BHJP
   A61K 35/50 20150101ALI20220225BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20220225BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20220225BHJP
   A23L 33/18 20160101ALI20220225BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20220225BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20220225BHJP
【FI】
A61K8/98
A61K8/65
A61Q19/08
A61P43/00 105
A61P39/00
A61K38/05
A61K38/06
A61K38/39
A61K35/50
A61P43/00 121
A61P17/16
A23L33/10
A23L33/18
A23L2/00 F
A23L2/38 N
A23L2/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020139472
(22)【出願日】2020-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】599098518
【氏名又は名称】株式会社ディーエイチシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】片吉 健史
(72)【発明者】
【氏名】仲條 嵩久
(72)【発明者】
【氏名】内藤 健太郎
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
4C083
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LE02
4B018MD20
4B018MD27
4B018MD69
4B018ME14
4B018MF01
4B117LC04
4B117LK11
4B117LK15
4B117LK17
4C083AA071
4C083AA072
4C083AA082
4C083AB032
4C083AB082
4C083AC022
4C083AC062
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC422
4C083AC442
4C083AD202
4C083AD431
4C083AD432
4C083CC04
4C083CC05
4C083DD27
4C083DD31
4C083EE12
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA14
4C084BA15
4C084DA40
4C084MA17
4C084MA28
4C084MA63
4C084NA05
4C084ZA891
4C084ZB211
4C084ZC411
4C084ZC521
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB58
4C087CA06
4C087MA02
4C087MA17
4C087MA28
4C087MA63
4C087NA05
4C087ZA89
4C087ZB21
4C087ZC41
4C087ZC52
(57)【要約】
【課題】 老化に伴って生体から減少するニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)の回復を促進する組成物を提供する。
【解決手段】 プラセンタ抽出物と、コラーゲンペプチドとを含むNAD産生促進剤、並びに当該NAD産生促進剤を含む、皮膚外用剤、化粧品、内服剤、飲食品組成物、及び医薬部外品を提供する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラセンタ抽出物と、コラーゲンペプチドとを含むNAD産生促進剤。
【請求項2】
前記コラーゲンペプチドが、Hypを含むジペプチドもしくはトリペプチドを含む請求項1に記載のNAD産生促進剤。
【請求項3】
前記コラーゲンペプチドが、Ala-Hypを含む、請求項1または2に記載のNAD産生促進剤。
【請求項4】
前記プラセンタ抽出物が、乾燥重量あたり6ppm以上のNRを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のNAD産生促進剤。
【請求項5】
前記プラセンタ抽出物と、前記コラーゲンペプチドとの重量比が、2000:1~10:1である、請求項1~4のいずれか1項に記載のNAD産生促進剤。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のNAD産生促進剤を含む皮膚外用剤。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載のNAD産生促進剤を含む化粧品。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載のNAD産生促進剤を含む内服剤。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか1項に記載のNAD産生促進剤を含む飲食品組成物。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか1項に記載のNAD産生促進剤を含む医薬部外品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NAD産生促進剤に関する。本発明は、特には安全性が高く、外用剤としても内服剤としても適用可能なNAD産生促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(以下、NADと指称する)は、生体内において、脱水素酵素の補酵素として機能することが知られている。NADは、特には生体内の解糖系及びクエン酸回路に関与しており、エネルギーの産生に大きく影響する。
【0003】
細胞内NAD量の維持に必須の酵素であるニコチンアミドフォスフォリボシルトランスフェラーゼ(NAMPT)の働きは年齢とともに低下することが知られており(例えば、非特許文献1を参照)、皮膚のNAD量も年齢を重ねるごとに減少することが知られている(例えば、非特許文献2を参照)。
【0004】
一方、ニコチンアミドリボシド(以下、NRと指称する)などのNAD中間代謝産物が老化関連疾患の病態を改善することが知られており(例えば、非特許文献3を参照)、NRは牛乳に多く含まれていることも知られている(例えば、非特許文献4を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】PLos ONE.Vol.12,e0170930(2017)
【非特許文献2】PLos ONE.Vol.7,e42357(2012)
【非特許文献3】生化学 第87巻第2号、pp.239-244(2015)
【非特許文献4】J.Nutr.Vol.146,pp.957-63(2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
NADの産生を促進し、特には加齢個体におけるNADの産生の回復を促進して、老化の防止につながる物質の開発が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、プラセンタ抽出物とコラーゲンペプチドを併用して生体に適用することにより、細胞内のNADの回復を促進することができることを発見し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は一実施形態によれば、NAD産生促進剤であって、プラセンタ抽出物とコラーゲンペプチドとを含む。
【0009】
前記NAD産生促進剤において、前記コラーゲンペプチドが、Hypを含むジペプチドもしくはトリペプチドを含むことが好ましい。
【0010】
前記NAD産生促進剤において、前記コラーゲンペプチドが、Ala-Hypを含むことが好ましい。
【0011】
前記NAD産生促進剤において、前記プラセンタ抽出物が、乾燥重量あたり6ppm以上のNRを含むことが好ましい。
【0012】
前記NAD産生促進剤において、前記プラセンタ抽出物と、前記コラーゲンペプチドとの重量比が、2000:1~10:1であることが好ましい。
【0013】
本発明は、別の実施形態によれば、上述のいずれか1項に記載のNAD産生促進剤を含む皮膚外用剤、化粧品、内服剤、飲食品組成物、または医薬部外品に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、細胞内のNAD産生を有意に促進することができるNAD産生促進剤を提供することが可能になる。NAD産生促進剤は、皮膚外用剤並びに内服剤として用いることができ、生体の老化防止に非常に有用となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、牛乳及びプラセンタ抽出物におけるNRの含有量を相対的に示すグラフである。
図2図2は、プラセンタ抽出物の濃度を変え、コラーゲンペプチドの濃度を一定としてNAD産生促進剤を3次元培養皮膚に添加した場合の、NAD産生量を相対的に示すグラフである。
図3図3は、コラーゲンペプチド単独、プラセンタ抽出物単独、及びNAD産生促進剤を細胞培養液に添加した場合の、NAD産生量を相対的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施の形態によって限定されるものではない。
【0017】
[第1実施形態:NAD産生促進剤]
本発明は、第1実施形態によれば、NAD産生促進剤に関する。当該NAD産生促進剤は、プラセンタ抽出物と、コラーゲンペプチドとを含む。
【0018】
本実施形態において、プラセンタ抽出物とは、哺乳動物の胎盤由来の抽出物を言うものとする。哺乳動物としては、ヒト、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマが挙げられるが、それらには限定されない。好ましくは、ブタの胎盤由来の抽出物であってよい。また、プラセンタ抽出物は、加熱処理を経たものであってもよく、非加熱のいわゆる「生プラセンタ」と呼ばれるプラセンタ抽出物であってもよい。
【0019】
生プラセンタは、プラセンタに含まれるサイトカイン等の有用な活性成分(例えばTGFβ1、EGF、FGF1、IGF)を出来る限り損なわないように調製したものを使用することが好ましい。この「生プラセンタ」は、例えば以下のように調製することができる。採取した胎盤をトリミングして不要な組織片や血液等を取り除いた後、低温殺菌等の手法を用いて殺菌し、凍結保存する。その後、解凍することにより(すなわち凍結融解することにより)胎盤抽出液を抽出した後、遠心分離により固液分離する。固液分離して得られた上澄み液をプラセンタエキス原液という。このプラセンタエキス原液からウイルスや細菌を除去することにより、生プラセンタを得ることができる。ウイルスや細菌の除去方法としては、例えば複数の濾過膜を利用した濾過処理等、酸や熱を使用しない方法を用いることが好ましい。こうして得られた生プラセンタは、その調製段階において加熱や酸による殺菌方法を使用しないため、サイトカイン等の有用な活性成分が多く残存しているという利点を有する。
【0020】
プラセンタ抽出物としては、上記生プラセンタから、高分子タンパク及びその凝集体を除去したものが好ましい。ここでいう高分子タンパク質とは、分子量が概ね100キロダルトンを超えるタンパク質をいう。これにより、変性した高分子タンパクによる成分の凝集を生じにくくすることができるため、NRの変性や劣化を抑制し、NRの含有量をより高めることができる。また、低分子タンパク質や遊離アミノ酸の含有割合を高め、体内への吸収効率を高めることができる。低分子タンパク質とは、分子量が概ね20キロダルトン以下のタンパク質をいう。特に総窒素量を定量すると0.01~0.1%となるものが好ましい。
【0021】
高分子タンパク及びその凝集体を除去する方法としては、例えばフィルター濾過分離を用いることができる。具体的には、生プラセンタについて、濾過膜を用いて分子量分画処理することができる。濾過膜としては、例えば孔径が0.22μm以下の精密濾過膜や、分画分子量が20キロダルトン以下の限外濾過膜を用いることができる。
【0022】
この方法により生プラセンタをさらに精製することで、ナイアシン等の水溶性ビタミン及びNAD中間代謝産物の配合割合を高めることができる。ここでいうNAD中間代謝産物とは、NR、ニコチンアミドモノヌクレオチド、ニコチン酸リボシド、ニコチン酸モノヌクレオチド、ニコチン酸アデニンジヌクレオチドをいう。こうしたプラセンタ抽出物としては、NRを多く含むことが好ましく、特に乾燥重量あたりのNR量が6ppm以上であることが最も好ましい。プラセンタ抽出物中のNR量を6ppm以上とすることで、内服又は外用した際に細胞内のNAD産生を有意に促進することができる。NR量の上限値は、理論上は特には限定されないが、例えば、NR量は6ppm以上であって、1200ppm以下程度であってよい。
【0023】
なお、プラセンタ抽出物は、上記以外にも市販品も用いることができる。市販のプラセンタ抽出物としては、プラセンタエキス、プラセンタエキス末、プラセンタ原末等として市販され、医薬品やサプリメントの原料として使用されているものを広く使用することができる。
【0024】
本実施形態によるNAD産生促進剤に含まれるコラーゲンタンパク質は、生体由来コラーゲンの加水分解物であってよい。
【0025】
より具体的には、ウシやブタなどの哺乳類や魚類の組織、例えば、皮膚、骨及び腱などの結合組織から抽出したコラーゲンタンパク、もしくはコラーゲンタンパク質の熱変性物であるゼラチンから加水分解等により得られたものを使用してもよく、また人工的に合成したものを用いても良い。コラーゲンタンパク質より得る場合には、コラーゲンタンパク質溶解液を、コラゲナーゼ酵素固定化カラムにアプライし、カラム法による酵素分解を行う。カラムを通した酵素反応終了溶液を分取し、0.22~0.45μmのフィルターで濾過を行い、そのろ液を凍結乾燥にて粉末化しコラーゲントリペプチドを得た後、コラーゲントリペプチド粉末を再溶解しHPLC(ゲル濾過およびODSカラム)において各々のジペプチドおよびトリペプチド含有画分を精製する。更に、単一のコラーゲントリペプチド成分を得るために、イオン交換クロマト法およびカーボンカラムを用いて精製し得ることができる。また、人工合成により得る場合には、ペプチド合成機器を用いて固相法により人工合成する。使用する機器のプログラムに従いC末端よりFmoc法によりペプチド鎖を延長する。固相法ペプチド合成用支持体である担体を用いて、副反応を防止するために、あらかじめFmocおよびBocによりα-アミノ基、δ-アミノ基を保護したオルニチンとFmocによりβ-アミノ基を保護したβ-アラニンのFmocアミノ誘導体を用いる。Fmoc-Orn(Boc)を担体に結合させ、ピペリジンなどによりα-アミノ基を脱保護後、Fmoc-Orn(Boc)のC末端をカップリングさせ、ピペリジンなどで二つ目のオルニチンのα-アミノ基を脱保護し、Fmoc-β-AlaのC末端を同様にカップリングさせる。最後にトリフルオロ酢酸などの酸を用いて全ての脱保護と担体除去を行い、0.01~2%トリフルオロ酢酸水を用いて抽出したものを凍結乾燥することでジペプチドおよびトリペプチドを製造することができ、HPLC(逆送カラム)などで精製することによって得ることができる。
【0026】
コラーゲンペプチドは、ヒドロキシプロリン(Hyp)を少なくとも含むペプチドであることが好ましく、Hypを含むジペプチドまたはトリペプチドから選択されることが好ましい。より具体的には、Ala-Hyp-Gly、Pro-Hyp-Gly、Pro-Hyp、Leu-Hyp、Ala-Hypのジペプチドまたはトリペプチドから選択される1または2以上の混合物であってよい。中でも、Ala-Hypのジペプチドを含むことが最も好ましい。Ala-Hypはトリペプチドに比べて低分子であることから体内への吸収が良く、またこれらのペプチドのなかでも安定性が高い点で好ましい。
【0027】
プラセンタ抽出物と、コラーゲンペプチドは、プラセンタ抽出物:コラーゲンペプチド重量の比率が、2000:1~10:1となるように含まれていることが好ましく、1000:1~100:1となるように含まれていることがより好ましい。プラセンタ抽出物と、コラーゲンペプチドが上記比率範囲で含まれていることにより、コラーゲンペプチドがプラセンタ抽出物中のNRの安定性に寄与し、NADの産生量を増加させることができる。
【0028】
本実施形態によるNAD産生促進剤においては、プラセンタ抽出物と、コラーゲンペプチドとの両者を含むことで、NADの産生を促進することができる。より具体的には、コラーゲンペプチドがプラセンタ抽出物に含まれるNRの分解を抑制することで、NADの中間代謝産物であるNR量の低下を抑制し、結果として生体内で産生させるNAD量を促進することができると考えられる。また、NAD産生促進剤は、従来から知られているプラセンタ抽出物単独の作用である保湿作用や美白作用、抗シワ作用、抗炎症作用、チロシナーゼ阻害作用、創傷治癒促進作用、線維芽細胞増殖促進作用、神経細胞活性化作用、血圧上昇抑制作用、エラスターゼ阻害作用や、コラーゲンペプチド単独の作用である生体内コラーゲンの合成促進効果をも備えている。
【0029】
NAD産生促進剤には、プラセンタ抽出物と、コラーゲンペプチドに加えて、任意選択的な成分として、ニコチン酸アミド、ビタミンC誘導体、アルブチン、エラグ酸、コウジ酸、トラネキサム酸、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコールを含んでもよい。
【0030】
NAD産生促進剤は、プラセンタ抽出物と、コラーゲンペプチドを混合することにより得ることができる。得られたNAD産生促進剤は、プラセンタ抽出物と、コラーゲンペプチドを含む液体組成物である。NAD産生促進剤は、冷蔵で1~3年程度にわたって安定に貯蔵することができ、生細胞のNADの産生を促進することができる。また、得られた組成物は、特には老化して、NAD産生が低減した生細胞においても、NADの産生を促進することができるため、NADの回復促進剤ということもできる。
【0031】
NAD産生促進剤は、内服剤、飲食品組成物、皮膚外用剤、化粧品、及び医薬部外品に添加して用いることができる。特には、老化防止効果を得るために、飲食品等、化粧品に添加して用いることができる。以下に、NAD産生促進剤を添加して用いる各種の組成物について説明する。
【0032】
[第2実施形態:内服剤]
本発明は、第2実施形態によれば内服剤であって、第1実施形態によるNAD産生促進剤を含む。内服剤は、例えば経口投与剤であってよく、茶剤、カプセル剤、錠剤、丸剤、顆粒剤、細粒剤、シロップ剤、ドライシロップ剤等が挙げられる。
【0033】
これらの内服剤は、第1実施形態によるNAD産生促進剤を含め、この分野で通常知られた慣用的な方法により製造される。内服剤には、たとえば、デンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩などを含めることができる。調製に当っては、更に結合剤、崩壊剤、界面活性剤、潤沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料などを配合することもできる。たとえば、錠剤または丸剤とする場合は、所望によりショ糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロースなどの糖衣または胃溶性もしくは腸溶性物質のフィルムで被覆してもよい。液体組成物からなる経口剤とする場合は、薬理学的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤などとすることができ、例えば、精製水、エタノールなどが担体として利用される。また、さらに所望により湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、防腐剤などを添加してもよい。
【0034】
内服剤におけるNAD産生促進剤の有効成分量は、プラセンタ抽出物の乾燥重量を基準として、例えば、通常成人1日当たり50mg以上、好ましくは100mg以上を摂取するのが好ましい。投与量の上限は、1日当たり、10,000mg以下が好ましく、5,000mg以下がより好ましい。よって、NAD産生促進剤は、各形態に応じた範囲で前述した摂取量となるように含有されれば良い。
【0035】
[第3実施形態:飲食品組成物]
本発明は、第3実施形態によれば飲食品組成物であって、第1実施形態によるNAD産生促進剤を含む。本実施形態による飲食品組成物には、第1実施形態によるNAD産生促進剤を、飲食品組成物において通常用いられている任意成分と共に配合することができる。このようなヒトまたは動物用の飲食品組成物としては、例えば、パン類、菓子類、麺類、肉製品・水産加工品、穀類の加工品、加工野菜・加工果実、加工卵、乳製品、粉類、即席菓子の素、食用油脂、スープの素、粉末飲料、調味料、食品添加物、飲料類、飼料等が挙げられる。
【0036】
また、飲食品組成物は、例えば、ビタミン剤などの栄養補助食品、栄養補助飲料、動物用健康食品、特定保健用食品、栄養機能食品、保健機能食品等が含まれ、通常用いられている各種形態、例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤、フィルム等として製品化することができる。製品化に際しては、第1実施形態によるNAD産生促進剤とともに、賦形剤、結合剤、崩壊剤、崩壊抑制剤、吸収促進剤、吸着剤、滑沢剤、着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等が配合される。
【0037】
これらの飲食品組成物は、この分野で通常知られた慣用的な方法により製造される。
【0038】
このような飲食品組成物におけるNAD産生促進剤の有効成分量は、プラセンタ抽出物の重量を基準として、飲食品の形態ごとに応じた範囲で所望の摂取量となるように添加されれば良く、飲食品には、0.1~20重量%の範囲内で添加することが好ましい。例えば、液状の飲食品に対し0.1~20重量%、固体状の飲食品に対し0.1~20重量%、錠剤状の飲食品に対し、0.1~20重量%の範囲内で添加することが好ましい。さらに具体的には、以下に限定されないが、例えば、サプリメントには、プラセンタ抽出物の乾燥重量を基準として、0.1~20重量%の範囲内で添加することが好ましい
【0039】
[第4実施形態:皮膚外用剤]
本発明は、第4実施形態によれば皮膚外用剤であって、第1実施形態によるNAD産生促進剤を含む。より詳細には、皮膚外用剤は化粧品であってよく、老化防止用化粧品、クレンジング用化粧品、頭髪用化粧品、入浴用化粧品、医療用化粧品が挙げられ、また、顔料、化粧水、美容液、乳液、クリーム、ジェル、パック、リポソーム、液状、粘土状、ソリッド粉末状化粧料、エアゾール化粧料、ハップ剤等のスキンケア化粧品、下地クリーム、ファンデーション等のメークアップ化粧品が挙げられる。
【0040】
本実施形態による化粧品には、水、アルコール、界面活性剤(カチオン、アニオン、ノニオン、両性界面活性剤等)、保湿剤(グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、アミノ酸、尿素、ピロリドンカルボン酸塩、核酸類、単糖類、少糖等およびそれらの誘導体ほか)、増粘剤(多糖類、ポリアクリル酸塩、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、キチン、キトサン、アルギン酸、カラギーナン、キサンタンガム、メチルセルロース等およびそれらの誘導体ほか)、ワックス、ワセリン、炭化水素飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、シリコン油等およびそれらの誘導体、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリオクタン酸グリセリル等のトリグリセライド類、ステアリン酸イソプロピル等のエステル油類、天然油脂類(オリブ油、椿油、アボガド油、アーモンド油、カカオ脂、月見草油、ブドウ種子油、マカデミアンナッツ油、ユーカリ油、ローズヒップ油、スクワラン、オレンジラフィー油、ラノリン、セラミド等)、防腐剤(オキシ安息香酸誘導体、デヒドロ酢酸塩、感光素、ソルビン酸、フェノキシエタノール等およびそれらの誘導体ほか)、殺菌剤(イオウ、トリクロカルバアニリド、サリチル酸、ジンクピリチオン、ヒノキチオール等およびそれらの誘導体ほか)、紫外線吸収剤(パラアミノ安息香酸、メトキシケイ皮酸等およびそれらの誘導体ほか)、抗炎症剤(アラントイン、グリチルリチン酸等およびそれらの誘導体ほか)、抗酸化剤(トコフェロール、BHA、BHT等およびそれらの誘導体ほか)、キレート剤(エデト酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸等およびそれらの誘導体ほか)、動植物エキス(アシタバ、アロエ、エイジツ、オウゴン、オウバク、海藻、カリン、カミツレ、甘草、キウイ、キュウリ、クワ、シラカバ、トウキ、ニンニク、ボタン、ホップ、マロニエ、ラベンダー、ローズマリー、ユーカリ、ミルク、各種ペプタイド、プラセンタ、ローヤルゼリー等およびこれらの含有成分精製物または発酵物ほか)、pH調整剤(無機酸、無機酸塩、有機酸、有機酸塩等およびそれらの誘導体ほか)、ビタミン類(ビタミンA類、ビタミンB類、ビタミンC、ビタミンD 類等およびそれらの誘導体ほか)、酸化チタン、タルク、マイカ、シリカ、酸化亜鉛、酸化鉄、シリコンおよびこれらを加工処理した粉体類等を本発明の目的を達成する範囲内で配合することができる。なお、化粧品を構成する成分は上述に限られるものではなく、化粧料に用い得る成分であれば自由に選択が可能である。
【0041】
ハップ剤においては上記成分に加えて、基剤(カオリン、ベントナイト等)、ゲル化剤(ポリアクリル酸塩、ポリビニルアルコール等)を本発明の目的を達成する範囲内で配合することができる。浴剤においては、硫酸塩、炭酸水素塩、ホウ酸塩、色素、保湿剤を本発明の目的を達成する範囲内で適宜配合し、パウダータイプ、液剤タイプに調製が可能である。
【0042】
これらの化粧品は、この分野で通常知られた慣用的な方法により製造される。
【0043】
化粧品におけるNAD産生促進剤の有効成分量は、プラセンタ抽出物の重量を基準として、化粧品の形態ごとに応じた範囲で前述した摂取量となるように添加されれば良く、化粧品には、0.1~20重量%の範囲内で添加することが好ましい。例えば、液状の化粧品に対し0.1~20重量%、クリーム状の化粧品に対し0.1~10重量%、粉末状の化粧品に対し、0.1~5重量%の範囲内で添加することが好ましい。さらに具体的には、以下に限定されないが、例えば、化粧水には、1~10重量%、化粧用クリームには、1~5重量%の範囲内で添加することが好ましい。
【0044】
[第5実施形態:医薬部外品]
本発明は、第5実施形態によれば医薬部外品であって、第1実施形態によるNAD産生促進剤を含む。医薬部外品としては飴類、ガム類、歯磨き粉類、液体歯磨き剤類、ジェル状歯磨き剤類、制汗剤、飲料類等が含まれる。
【0045】
NAD産生促進剤を含む医薬部外品は、この分野で通常知られた慣用的な方法により製造される。
【0046】
医薬部外品におけるNAD産生促進剤の有効成分量は、プラセンタ抽出物の重量を基準として、医薬部外品の形態ごとに応じた範囲で前述した摂取量となるように添加されれば良く、医薬部外品には、0.1~20重量%の範囲内で添加することが好ましい。例えば、固体状の医薬部外品に対し、0.1~20重量%、液体状の医薬部外品に対し、0.1~20重量%、ジェル又はペースト状の医薬部外品に対し、0.1~20重量%の範囲内で添加することが好ましい。さらに具体的には、以下に限定されないが、例えば、ペットガムには、0.02~5重量%、歯磨き粉に対し、0.02~1重量%の範囲内で添加することが好ましい。
【実施例0047】
以下、本発明を、実施例を参照してより詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0048】
<1:プラセンタ抽出物中のNR量の測定>
試料溶液中のNRを蛍光誘導体化し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた定量分析法を実施した。NRの誘導体化は、ニコチンアミドモノヌクレオチド定量法(Formentini, L. et al., Biochem. Pharmacol. Vol. 77, pp. 1612-20(2009))に基づき、以下の手順で行った。
【0049】
試料溶液としては、プラセンタ抽出物及び牛乳を使用した。使用したプラセンタ抽出物は、ブタ胎盤抽出液を段階的にフィルター濾過処理したものを使用した。段階的なフィルター濾過はまず、孔径0.22μmの精密濾過膜(Sartorius社製)を用いて濾過し、次に、分画分子量10キロダルトンの遠心式限外濾過膜(Merck Millipore社製)を用いた濾過により高分子タンパク質及びその凝集体を除去した。また、牛乳は、無脂乳固形分8.3%以上、乳脂肪分3.5%以上の市販品を使用した。それぞれの試料溶液に1N水酸化カリウムと20%アセトフェノンを添加し、4℃で15分間静置した。その後、88%ギ酸を加えよく混和し、100℃で5分間加熱した。この液を孔径0.45μmのメンブランフィルターで濾過したものを蛍光誘導体化試料溶液とした。別に、β-NRトリフルオロメタンスルホン酸塩(Carbosynth社製)を各濃度で水に溶解し、試料溶液と同様の処理を行ったものを蛍光誘導体化標準溶液とした。
【0050】
蛍光誘導体化した試料溶液、標準溶液について以下の条件でHPLC分析を行い、標準溶液から得られたピーク面積値で検量線を作成し、試料溶液から得られるピーク面積値からNR濃度を算出した。図1に牛乳に対する相対値を示す。
装置:PU-2089Plus(日本分光)
検出器:FP-2025Plus(日本分光)
励起波長:360nm
蛍光波長:445nm
カラム:Inertsil ODS-3(4.6mm×250mm,5μm)(GLサイエンス)
ガードカラム:ODS-HG(4.0mm×10mm,5μm)(野村化学)
流速:1mL/min
移動相:水(0.05%トリフルオロ酢酸含有):アセトニトリル(83:17)
【0051】
測定の結果、プラセンタ抽出物は、NRを多く含むことが知られている牛乳(非特許文献4)と比較して、高濃度のNRを含有していることが明らかとなった。
【0052】
<2:NAD産生促進剤のヒト皮膚に対するNAD産生促進活性の評価>
3次元培養皮膚(MatTek社製)の培養液中にNAMPT阻害剤であるFK866を添加し、NADを枯渇させた状態における、NAD産生促進剤のNAD産生促進活性を測定した。
【0053】
3次元培養皮膚の培養液中に5nMのFK866を、皮膚上側にNAD産生促進剤、又はネガティブコントロールとしてPBSをそれぞれ添加し、5%CO、37℃にて48時間培養した。NAD産生促進剤は、培養液中、プラセンタ抽出物が1体積%、5体積%、または25体積%と、人工合成したジペプチドAla-Hypが0.5mMとなるように調製した。その後、培養皮膚の細胞を溶出させ、NAD/NADH Assay Kit-WST(DOJINDO社製)を用いて、細胞内の総NAD量を測定した。同時に細胞溶出液のタンパク量をBCA法により測定し、各細胞溶出液におけるタンパク量に対するNAD量を算出した。図2にコントロール(PBS)に対する相対値を示す。
【0054】
図2より、プラセンタ抽出物の濃度依存的に3次元培養皮膚の細胞内NAD量の増加が認められたことから、プラセンタ抽出物はNAD産生促進活性を持つことが示唆された。
【0055】
<3:プラセンタ抽出物とAla-Hypの相乗効果の検証>
ヒト皮膚線維芽細胞においてコラーゲン合成促進効果が確認されているジペプチドであるAla-Hyp(特開2010-24200号公報)の前処理による、プラセンタ抽出物の細胞内NAD産生促進活性への影響を調べた。
【0056】
正常ヒト皮膚線維芽細胞(クラボウ社製)を12ウェルプレートに5×10個/ウェルとなるように播種し、5%CO、37℃にて24時間培養し、DMEM/F12培地(Thermo Fisher Scientific社製)に置換した。人工合成したAla-Hypを0.5mMとなるように添加し、24時間培養した後、5nMのFK866を含有したDMEM/F12培地に置換し、プラセンタ抽出物を5体積%となるように添加した。さらに24時間培養後、細胞を溶出させ、NAD/NADH Assay Kit-WSTを用いて、細胞内の総NAD量を測定した。同時に細胞溶出液のタンパク質をBCA法により測定し、各細胞溶出液におけるタンパク質に対するNAD量を算出した。図3に未処理(コントロール)の細胞に対する相対値を示す。
【0057】
線維芽細胞を用いた単層培養試験において、プラセンタ抽出物の添加により、細胞内NAD量が増加することが確認された。さらにその増加量は、Ala-Hypの前処理によって亢進することが認められた。
【0058】
<4:NR安定性試験>
NRは水溶液中で不安定な成分であり、容易にニコチンアミドとリボースに分解してしまうことが知られている(特表2017-518306号公報)。ここでは、Ala-HypによるNRの分解抑制効果を検証した。
【0059】
β-NRトリフルオロメタンスルホン酸塩を200μMとなるように調製したものをNR溶液とし、β-NRトリフルオロメタンスルホン酸塩水溶液とAla-Hyp水溶液を1:1で混和し、終濃度をそれぞれ、200μM、5mMとしたものをNR+Ala-Hyp溶液とした。各溶液について、室温(RT)、50℃、及び75℃で1時間静置した後、孔径0.45μmのメンブランフィルターで濾過したものを試料溶液とした。別にβ-NRトリフルオロメタンスルホン酸塩を各濃度で水に溶解し、孔径0.45μmのメンブランフィルターで濾過したものを標準溶液とした。各試料溶液及び標準溶液について以下の条件でHPLC分析を行い、標準溶液から得られたピーク面積値で検量線を作成し、試料溶液から得られるピーク面積値からNR濃度を算出した。
装置:PU-2089Plus(日本分光)
検出器:MD-2010Plus(日本分光)
測定波長:220nm
カラム:Inertsil ODS-3(4.6mm×250mm,5μm)(GLサイエンス)
ガードカラム:ODS-HG(4.0mm×10mm,5μm)(野村化学)
流速:1mL/min
移動相:水(0.05%トリフルオロ酢酸含有)
【0060】
測定の結果、NRは温度依存的に分解反応が促進されることが確認された。その際、Ala-Hypを添加しておくことで、NRの分解を抑制する傾向が認められた。結果を下記表1に示す。表1から、Ala-HypがNRの水溶液中での安定性に寄与する可能性が示唆された。
【0061】
【表1】
【0062】
<処方例>
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
【表5】
図1
図2
図3