(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035278
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】物体検出装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/526 20060101AFI20220225BHJP
G01S 15/93 20200101ALI20220225BHJP
【FI】
G01S7/526 J
G01S15/93
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020139490
(22)【出願日】2020-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅江 一平
(72)【発明者】
【氏名】佐々 浩一
【テーマコード(参考)】
5J083
【Fターム(参考)】
5J083AA02
5J083AB12
5J083AB13
5J083AC29
5J083AD04
5J083AE06
5J083AF05
5J083BA01
5J083BE22
5J083BE38
5J083CA01
(57)【要約】
【課題】路面情報を有効に利用できる物体検出装置を提供する。
【解決手段】物体検出装置は、路面上を移動する移動体の周囲に存在する物体をTOF方式により検出する。物体検出装置は、反射波の信号レベルと第1閾値との比較結果に基づき検出対象の距離情報を含む対象情報を取得する第1取得部と、反射波の信号レベルと第2閾値との比較結果に基づき路面の距離情報を含む路面情報を取得する第2取得部と、所定期間内に取得される距離情報の情報量が所定量を超えないように第2閾値を設定する設定部と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面上を移動する移動体の周囲に存在する物体をTOF方式により検出する物体検出装置であって、
反射波の信号レベルと第1閾値との比較結果に基づき検出対象の距離情報を含む対象情報を取得する第1取得部と、
反射波の信号レベルと第2閾値との比較結果に基づき前記路面の距離情報を含む路面情報を取得する第2取得部と、
所定期間内に取得される前記距離情報の情報量が所定量を超えないように前記第2閾値を設定する設定部と、
を備える物体検出装置。
【請求項2】
伝送路を介して前記路面情報を外部デバイスへ出力する出力部、
を更に備え、
前記所定量は、前記伝送路の伝送能力を超えないように設定される、
請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記第1閾値は、前記路面情報に基づき設定される、
請求項1又は2に記載の物体検出装置。
【請求項4】
前記第2取得部は、前記第1取得部が前記対象情報を取得する処理を行っていない場合に、前記路面情報を取得する、
請求項3に記載の物体検出装置。
【請求項5】
前記第2閾値は、時間経過に応じて上値と前記上値より小さい下値とが交互に繰り返されるように変動し、
前記路面情報は、前記上値に対応する期間においては取得されず、前記下値に対応する期間において取得される、
請求項1~4のいずれか1項に記載の物体検出装置。
【請求項6】
前記所定期間は、検出可能な距離範囲において前記路面からの反射波の信号レベルが相対的に高くなる強反射範囲に対応する期間である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の物体検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される走行支援システム等において、TOF(Time Of Flight)方式により車両の周囲に存在する物体を検出する装置が利用されている。TOF方式とは、物体へ向けて送信された送信波(超音波、電磁波等)が物体に反射して戻ってくるまでの時間に基づき物体の存否、物体までの距離等を検出する方式である。
【0003】
例えば、TOF方式により物体を検出する装置において、反射波の信号レベルの移動平均値を用いて路面からの反射波によるノイズの影響を低減する技術が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
走行支援システム等においては、路面状況の把握等のために、路面に対応するTOF情報(路面情報)を利用する場合がある。取得された路面情報は、通常、データバス等の伝送路を介して、路面情報を解析するECU(Electronic Control Unit)等の外部デバイスに伝送される。このとき、路面情報の情報量が伝送路の伝送能力に対して過大であると、路面情報を有効に利用できない可能性がある。
【0006】
そこで、本開示の課題の一つは、路面情報を有効に利用できる物体検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一例としての物体検出装置は、路面上を移動する移動体の周囲に存在する物体をTOF方式により検出する物体検出装置であって、反射波の信号レベルと第1閾値との比較結果に基づき検出対象の距離情報を含む対象情報を取得する第1取得部と、反射波の信号レベルと第2閾値との比較結果に基づき路面の距離情報を含む路面情報を取得する第2取得部と、所定期間内に取得される距離情報の情報量が所定量を超えないように第2閾値を設定する設定部と、を備える。
【0008】
上記構成によれば、路面情報の情報量を適正な範囲に抑えることができる。これにより、路面情報を有効に利用できる。
【0009】
また、上記物体検出装置は、伝送路を介して路面情報を外部デバイスへ出力する出力部、を更に備え、所定量は、伝送路の伝送能力を超えないように設定されてもよい。
【0010】
上記構成によれば、路面情報の情報量を伝送路の伝送能力に適合させることができる。
【0011】
また、第1閾値は、路面情報に基づき設定されてもよい。
【0012】
上記構成によれば、路面情報に基づき把握される路面状況等に応じて、検出対象を検出するための第1閾値を適切に設定できる。
【0013】
また、第2取得部は、第1取得部が対象情報を取得する処理を行っていない場合に、路面情報を取得してもよい。
【0014】
上記構成によれば、対象情報を取得する処理が行われていない間に、路面情報に基づき第1閾値を適切に設定できる。
【0015】
また、第2閾値は、時間経過に応じて上値と上値より小さい下値とが交互に繰り返されるように変動し、路面情報は、上値に対応する期間においては取得されず、下値に対応する期間において取得されてもよい。
【0016】
上記のように、第2閾値を上値と下値とが交互に繰り返される波形状に変化させることにより、取得される路面情報の情報量を調整できる。
【0017】
また、所定期間は、検出可能な距離範囲において路面からの反射波の信号レベルが相対的に高くなる強反射範囲に対応する期間であってもよい。
【0018】
強反射範囲は、物体検出装置の設計的条件(例えば、送受信部の設置角度、送信波の指向性等)に応じて定まるものであり、予め特定可能なものである。路面情報を取得するための所定期間を当該強反射範囲に対応する期間とすることにより、路面情報を効率的に取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施形態に係る車両制御システムを備えた車両の外観の一例を示す上面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るECU及び物体検出装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るTOF方式による物体検出方法の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るECU及び物体検出装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る路面閾値の設定方法の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るECU及び物体検出装置による処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。以下に記載する実施形態の構成、並びに当該構成によってもたらされる作用及び効果は、あくまで一例であって、以下の記載内容に限られるものではない。
【0021】
図1は、実施形態に係る車両制御システムを備えた車両1の外観の一例を示す上面図である。車両1は、路面上を移動する移動体の一例である。以下に例示する車両制御システムは、超音波を利用したTOF方式により車両1の周囲に存在する物体を検出し、検出結果に基づき車両を制御するシステムである。
【0022】
図1に示されるように、車両制御システムは、一対の前輪3Fと一対の後輪3Rとを有する車両1の内部に搭載されたECU100と、車両1の外装に搭載された物体検出装置201~204と、を備えている。
【0023】
図1に示される例では、物体検出装置201~204が、車両1の外装としての車体2の後端部(例えばリヤバンパ等)において、互いに異なる位置に設置されている。
【0024】
本実施形態において、物体検出装置201~204が有するハードウェア構成及び機能は、それぞれ同一である。従って、以下では、簡単化のため、物体検出装置201~204を総称して物体検出装置200と記載することがある。
【0025】
また、本実施形態において、物体検出装置200の設置位置は、
図1に示される例に限定されるものではない。物体検出装置200は、車体2の前端部(例えばフロントバンパ等)に設置されてもよいし、車体2の側面部に設置されてもよいし、後端部、前端部及び側面部のうち2つ以上に設置されてもよい。また、物体検出装置200の個数も、
図1に示される例に限定されるものではない。
【0026】
図2は、実施形態に係るECU100及び物体検出装置200のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0027】
図2に示すように、ECU100は、通常のコンピュータと同様のハードウェア構成を備えている。具体的には、ECU100は、入出力装置110、記憶装置120、及びプロセッサ130を備えている。
【0028】
入出力装置110は、ECU100と外部デバイス(
図1に示す例では物体検出装置200)との間における情報の送受信を実現するインターフェースである。入出力装置110は、ECU100と物体検出装置200とを電気的に接続するデータバス300(伝送路)を介して情報の送受信を行う。
【0029】
記憶装置120は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の主記憶装置、及び/又は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の補助記憶装置を含んでいる。
【0030】
プロセッサ130は、ECU100において実行される各種の処理を司る。プロセッサ130は、例えばCPU(Central Processing Unit)等演算装置を含んでいる。プロセッサ130は、記憶装置120に記憶されたプログラムを読み出して実行することで、例えば自動運転、警報出力等の各種の機能を実現する。
【0031】
物体検出装置200は、送受信部210及び制御部220備えている。
【0032】
送受信部210は、圧電素子等の振動子211を有しており、当該振動子211により、超音波の送受信を実現する。具体的には、送受信部210は、振動子211の振動に応じて発生する超音波を送信波として送信し、当該送信波として送信された超音波が外部に存在する物体で反射されて戻ってくることでもたらされる振動子211の振動を反射波として受信する。
図2には、検出対象となる物体として、路面RS上に設置された障害物Oが例示されている。
【0033】
なお、
図2には、送信波の送信と反射波の受信とを単一の振動子211を有した単一の送受信部210により実現する構成が例示されているが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、送信波の送信用の第1振動子と反射波の受信用の第2振動子とが別々に設けられた構成のような、送信側の構成と受信側の構成とが分離された構成であってもよい。
【0034】
制御部220は、通常のコンピュータと同様のハードウェア構成を備えている。具体的には、制御部220は、入出力装置221、記憶装置222、及びプロセッサ223を備えている。
【0035】
入出力装置221は、制御部220と外部デバイス(
図2に示す例ではECU100及び送受信部210)との間における情報の送受信を実現するインターフェースである。入出力装置221は、データバス300を介して情報の送受信を行う。
【0036】
記憶装置222は、ROM、RAM等の主記憶装置、及び/又は、HDD、SSD等の補助記憶装置を含んでいる。
【0037】
プロセッサ223は、制御部220において実行される各種の処理を司る。プロセッサ223は、例えばCPU等の演算装置を含んでいる。プロセッサ223は、記憶装置333に記憶されたプログラムを読み出して実行することで、各種の機能を実現する。
【0038】
本実施形態に係る物体検出装置200は、TOF方式により車両1の周囲に存在する検出対象(例えば、他車両、路上障害物、人等)までの距離を検出する。TOF方式とは、送信波が送信された(より具体的には送信され始めた)タイミングと、反射波が受信された(より具体的には受信され始めた)タイミングとの差に基づき、物体までの距離を算出する技術である。
【0039】
図3は、実施形態に係るTOF方式による物体検出方法の一例を示す図である。より具体的に、
図3は、物体検出装置200が送受信する超音波の信号レベル(例えば振幅)の経時的変化をグラフ形式で例示的且つ模式的に示した図である。
図3に示すグラフにおいて、横軸は、時間に対応し、縦軸は、物体検出装置200が送受信部210(振動子211)を介して送受信する信号の信号レベルに対応する。
【0040】
図3に示すグラフにおいて、実線で示す包絡線L11は、物体検出装置200が送受信する信号の信号レベル、つまり振動子211の振動の度合の経時的変化の一例を示している。この包絡線L11からは、振動子211がタイミングt0から時間Taだけ駆動されて振動することで、タイミングt1で送信波の送信が完了し、その後タイミングt2に至るまでの時間Tbの間は、慣性による振動子211の振動が減衰しながら継続する、ということが読み取れる。従って、
図3に示すグラフにおいては、時間Tbが、いわゆる残響時間に対応する。
【0041】
包絡線L11は、送信波の送信が開始したタイミングt0から時間Tpだけ経過したタイミングt4で、振動子211の振動の度合が、一点鎖線で示す対象閾値L21(第1閾値)を超える(又は以上になる)ピークを迎える。この対象閾値L21は、振動子211の振動が、検出対象(例えば障害物O)からの反射波の受信によってもたらされたものか、又は、検出対象外の物体(例えば路面RS)からの反射波の受信によってもたらされたものか、を識別するために設定された値である。
【0042】
なお、
図3には、対象閾値L21が時間経過によらず変化しない一定値として設定された例が示されているが、対象閾値L21は、時間経過とともに変化する値として設定されてもよい。
【0043】
ここで、対象閾値L21を超えた(又は以上の)ピークを有する振動は、検出対象からの反射波の受信によってもたらされたものだとみなすことができる。一方、対象閾値L21以下の(又は未満の)ピークを有する振動は、検出対象外の物体からの反射波の受信によってもたらされたものだとみなすことができる。従って、包絡線L11からは、タイミングt4における振動子211の振動が、検出対象からの反射波の受信によってもたらされたものである、ということが読み取れる。
【0044】
なお、包絡線L11においては、タイミングt4以降で、振動子211の振動が減衰している。従って、タイミングt4は、検出対象からの反射波の受信が完了したタイミング、換言すればタイミングt1で最後に送信された送信波が反射波として戻ってくるタイミング、に対応する。
【0045】
また、包絡線L11においては、タイミングt4におけるピークの開始点としてのタイミングt3は、検出対象からの反射波の受信が開始したタイミング、換言すればタイミングt0で最初に送信された送信波が反射波として戻ってくるタイミング、に対応する。従って、包絡線L11においては、タイミングt3とタイミングt4との間の時間ΔTが、送信波の送信時間としての時間Taと等しくなる。
【0046】
上記を踏まえて、TOF方式により検出対象までの距離を求めるためには、送信波が送信され始めたタイミングt0と反射波が受信され始めたタイミングt3との間の時間Tfを求めることが必要となる。この時間Tfは、タイミングt0と反射波の信号レベルが閾値を超えたピークを迎えるタイミングt4との差分としての時間Tpから、送信波の送信時間としての時間Taに等しい時間ΔTを差し引くことで求めることができる。
【0047】
送信波が送信され始めたタイミングt0は、物体検出装置200が動作を開始したタイミングとして容易に特定することができ、送信波の送信時間としての時間Taは、設定等によって予め決められている。従って、TOF方式により検出対象までの距離を求めるためには、反射波の信号レベルが対象閾値L21を超えてピークを迎えるタイミングt4を特定すればよい。
【0048】
図4は、実施形態に係るECU100及び物体検出装置200の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0049】
物体検出装置200は、包絡線処理部501、対象閾値設定部502、路面閾値設定部503(設定部)、対象情報取得部504(第1取得部)、路面情報取得部505(第2取得部)、及び出力部506を有する。これらの機能部501~506は、
図2に示す制御部220のハードウェア構成、記憶装置222に記憶されたプログラム等の協働により構成される。
【0050】
包絡線処理部501は、送受信部210から取得される信号に基づき反射波の信号レベルの経時的変化を示す包絡線を生成する。
【0051】
対象閾値設定部502は、包絡線処理部501により生成された包絡線(例えば包絡線L11)から、検出対象(例えば障害物O)の距離情報(TOF)を含む対象情報を取得するための対象閾値(例えば
図3に示す対象閾値L21:第1閾値)を設定する。
【0052】
路面閾値設定部503は、包絡線処理部501により生成された包絡線から路面に対応する距離情報を含む路面情報を取得するための路面閾値(第2閾値)を設定する。路面閾値の設定方法等については後述する。
【0053】
対象情報取得部504は、包絡線処理部501により生成された包絡線(例えば包絡線L11)が示す反射波の信号レベルと、対象閾値設定部502により設定された対象閾値(例えば対象閾値L21)との比較結果に基づき、検出対象の距離情報を含む対象情報を取得する。
【0054】
路面情報取得部505は、包絡線処理部501により生成された包絡線(後に例示する)が示す反射波の信号レベルと、路面閾値設定部503により設定された路面閾値(後に例示する)との比較結果に基づき、路面の距離情報を含む路面情報を取得する。
【0055】
出力部506は、対象情報取得部504により取得された対象情報及び路面情報取得部504により取得された路面情報を、データバス300を介してECU100へ出力する。
【0056】
ECU100は、入力部511、閾値制御部512、及び走行制御部513を有する。これらの機能部511~513は、
図2に示すECU100のハードウェア構成、記憶装置120に記憶されたプログラム等の協働により構成される。
【0057】
入力部511は、物体検出装置200の出力部506から出力された対象情報及び路面情報を、データバス300を介して入力する。
【0058】
閾値制御部512は、入力部511により入力された対象情報及び路面情報に基づき、対象閾値設定部502及び路面閾値設定部503を制御するための処理を行う。閾値制御部512は、路面情報に基づき、路面状況(例えば勾配、路面粗さ等)に適応した対象閾値L21を設定するための処理を行う。閾値制御部512は、データバス300を介して対象閾値設定部502を制御するための制御信号及び路面閾値設定部503を制御するための制御信号を出力する。
【0059】
走行制御部513は、入力部511により入力された対象情報及び路面情報に基づき、車両1を制御するための処理を行う。
【0060】
図5は、実施形態に係る路面閾値L41の設定方法の一例を示す図である。
図5において、路面RSからの反射波の信号レベルの経時的変化を示す包絡線L31と、路面閾値L41とが例示されている。
【0061】
路面情報は、包絡線L31の信号レベルが路面閾値L41を超える(又は以上になる)ときに取得される。本実施形態に係る路面閾値L41は、所定期間Ts内に取得される路面情報の情報量が所定量を超えないように設定される。
【0062】
上記所定量は、データバス300の伝送能力(例えば単位時間あたりに伝送可能な情報量)を超えないように設定される。すなわち、路面情報は、データバス300の伝送能力を超えない範囲内で取得される。これにより、路面情報をECU100に適切に伝送し、有効に利用できる。
【0063】
本実施形態に係る路面閾値L41は、所定期間Tsにおいて時間経過に応じて上値V1と下値V2とが交互に繰り返されるように波形状(矩形波状)に変動している。路面情報は、上値V1に対応する期間においては取得されず、下値V2に対応する期間において取得される。本実施形態においては、所定期間Ts内で8つの路面情報が取得される。なお、上値V1及び下値V2は、固定値でなくてもよい。例えば、ノイズが大きい環境下等において、下値V2をノイズより大きく設定できるように、下値V2を任意に設定可能としてもよい。また、障害物からの反射の小さい遠距離からのエコーをノイズデータとみなし、その平均値又は平均値+αに基づき下値V2を適応的に変化させてもよい。
【0064】
所定期間Tsは、物体検出装置200が物体を検出可能な距離範囲において、路面RSからの反射波の信号レベルが相対的に高くなる強反射範囲に対応する期間であることが好ましい。強反射範囲は、物体検出装置200の設計的条件(例えば、送受信部210の設置角度、送信波の指向性等)に応じて定まるものであり、予め特定可能なものである。路面情報を取得するための所定期間Tsを強反射範囲に対応する期間とすることにより、路面情報を効率的に取得できる。なお、所定期間Tsは、可変であってもよい。
【0065】
図6は、実施形態に係るECU100及び物体検出装置200による処理の一例を示すフローチャートである。閾値制御部512は、検出対象を検出するための障害物検出が実行中か否かを判定する(S101)。障害物検出が実行中である場合(S101:Yes)、対象情報取得部504は、対象閾値L21に基づき対象情報を取得し(S107)、その後ステップS101が再度実行される。
【0066】
障害物検出が実行中でない場合(S101:No)、閾値制御部512は、路面閾値設定部503に対して指示信号を出力し、路面閾値設定部503は、当該指示信号に応じて路面閾値L41を設定する(S102)。その後、路面情報取得部505は、設定された路面閾値L41に基づき路面情報を取得し(S103)、出力部506は、取得された路面情報を、データバス300を介してECU100に出力する(S104)。閾値制御部512は、路面情報から推定される路面状況(勾配、路面粗さ等)に基づき、路面RSの影響が低減されるように対象閾値L21を設定する(S105)。その後、ステップS101が再度実行される。
【0067】
上記実施形態における各種機能を実現するための処理をプロセッサ130,223等に実行させるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disc)-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供することが可能なものである。また、当該プログラムは、インターネット等のネットワーク経由で提供又は配布されてもよい。
【0068】
上記実施形態によれば、路面情報の情報量とデータバス300の伝送能力とを整合させることができ、路面情報を有効に利用できる。
【0069】
以上、本開示の実施形態を説明したが、上述した実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上述した新規な実施形態は、様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上述した実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1…車両、2…車体、3F…前輪、3R…後輪、100…ECU、200,201~204…物体検出装置、110…入出力装置、120…記憶装置、130…プロセッサ、210…送受信部、211…振動子、220…制御部、221…入出力装置、222…記憶装置、223…プロセッサ、300…データバス(伝送路)、501…包絡線処理部、502…対象閾値設定部、503…路面閾値設定部(設定部)、504…対象情報取得部(第1取得部)、505…路面情報取得部(第2取得部)、506…出力部、511…入力部、512…閾値制御部、513…走行制御部、L11,L31…包絡線、L21…対象閾値、L41…路面閾値、O…障害物、RS…路面、Ts…所定期間、V1…上値、V2…下値