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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035279
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】スライサー
(51)【国際特許分類】
   B26D 3/28 20060101AFI20220225BHJP
   A47J 43/04 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
B26D3/28 610J
B26D3/28 610A
A47J43/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020139491
(22)【出願日】2020-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】000151139
【氏名又は名称】ワタナベフーマック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 英二
(72)【発明者】
【氏名】山田 淳
(72)【発明者】
【氏名】山口 保
【テーマコード(参考)】
4B053
【Fターム(参考)】
4B053AA01
4B053BA04
(57)【要約】
【課題】スライスする際に大きい外力が作用しても食肉を適正に切断できるスライサーを構成する。
【解決手段】スライサーは、円板状のスライス刃と、往復移動によって食肉をスライス刃に供給する供給器と、供給器を往復作動させるクランク機構Cとを備えている。クランク機構Cが、第1アーム24と、第2アーム25と、受動アームとを備え、クランク機構Cの第1連結部J1と、第2連結部との何れかに緩衝部を備えている。緩衝部は、枢支軸芯P1と同軸芯の枢支孔25aに挿入される枢支軸30と、枢支軸30に一体形成されるフランジ部32と、フランジ部32の支持孔32bに挿入される筒状で可撓性の緩衝部材34と、緩衝部材34に挿通することでフランジ部32を第1アーム24に連結する締結部材36とを備えている。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に刃部を有し回転軸芯を中心に駆動回転する円板状のスライス刃と、
食肉の搭載が可能であり、前記回転軸芯に対して直交する方向における往復移動によって搭載された前記食肉を前記スライス刃に供給する供給器と、
前記供給器を往復作動させるクランク機構と、を備え、
前記クランク機構が、駆動軸と一体回転する第1アームと、前記第1アームの前記駆動軸が取り付けられた側と反対側の端部に一端が取り付けられ、前記第1アームの回転運動を往復運動に変換する第2アームと、前記第1アームに対し前記第2アームの一端を街道自在に連結する第1連結部と、前記第2アームの他端に一端が取り付けられた前記供給器の受動アームと、前記第2アームの他端と前記受動アームの一端とを回転自在に連結する第2連結部とを備え、
前記第1連結部と前記第2連結部との少なくとも一方は、前記第1アームと前記第2アームと前記受動アームとの3つのアームのうちの、互いに回転自在に連結された2つの前記アームの一方に前記駆動軸の駆動軸芯と平行な枢支軸芯と同軸芯で形成された枢支孔と、前記枢支軸芯と同軸芯で前記枢支孔に挿入され他方の前記アームに支持された枢支軸とを有し、この枢支軸は、緩衝部を有する枢支軸体と、前記枢支軸体を2つの前記アームの他方に連結する締結部材と、を有しており、
前記枢支軸は、前記枢支軸体に一体形成されるフランジ部を有し、前記緩衝部は、前記フランジ部に形成された支持孔と、前記支持孔に挿入された筒状で可撓性の緩衝部材と、を有し、
前記締結部材は、前記緩衝部材の内面側の空間に挿通されて2つの前記アームの他方に連結されているスライサー。
【請求項2】
前記第1連結部は、前記緩衝部材に挿通された前記締結部材により前記枢支軸体の前記フランジ部が前記第1アームに締結され、前記枢支軸体が、前記第2アームに形成された前記枢支孔に回動自在に挿入されて前記第2アームに枢支されている請求項1に記載のスライサー。
【請求項3】
前記第2連結部は、前記緩衝部材に挿通された前記締結部材により前記枢支軸体の前記フランジ部が前記第2アームに締結され、前記枢支軸体が前記受動アームに形成された前記枢支孔に回動自在に挿入されて前記受動アームに枢支されている請求項1又は2に記載のスライサー。
【請求項4】
前記枢支軸芯を中心とする仮想円の円周上に複数の前記支持孔が配置されている請求項1~3のいずれか一項に記載のスライサー。
【請求項5】
テーブルをさらに備え、
前記スライス刃と、前記供給器とが前記テーブルの上側に配置され、前記供給器に一体形成され前記供給器を支持する作動フレームが前記供給器から前記テーブルの下側に亘る領域に配置され、この作動フレームの下端部に前記受動アームが取り付けられており、前記クランク機構と、前記供給器の往復移動を案内するガイド部とが前記テーブルの下側に配置され、
前記ガイド部が、前記供給器の往復移動方向に沿う姿勢のガイドレールと、前記作動フレームに支持され前記ガイドレールの両側面に接触する複数の第1ローラと、前記作動フレームに支持され前記ガイドレールの上面に接触する第2ローラとを備えており、
前記駆動軸の回転により前記クランク機構を介して前記作動フレームが前記ガイドレールに沿って往復移動することにより、前記供給器が往復作動する請求項1~4のいずれか一項に記載のスライサー。
【請求項6】
前記第1ローラが、前記作動フレームの移動方向に沿う方向で前記作動フレームを挟む位置となる2箇所に配置されている請求項5に記載のスライサー。
【請求項7】
テーブルをさらに備え、
前記スライス刃と、前記供給器とが前記テーブルの上側に配置され、前記供給器に一体形成され前記供給器を支持する作動フレームが前記供給器から前記テーブルの下側に亘る領域に配置され、この作動フレームの下端部に前記受動アームが取り付けられており、前記クランク機構と、前記供給器の往復移動を案内するガイド部とが前記テーブルの下側に配置され、
前記ガイド部が、前記供給器の往復移動方向に沿う姿勢のガイドレールと、前記作動フレームに支持され前記ガイドレールの上面に接触する規制ローラとを備え、この規制ローラが前記ガイドレールの上面に接触するローラ部と、前記ガイドレールの両側面に接触するように前記ローラ部の両端部に前記ローラ部より大径に形成されたフランジとを有しており、
前記駆動軸の回転により前記クランク機構を介して前記作動フレームが前記ガイドレールに沿って往復移動することにより、前記供給器が往復作動する請求項1~4のいずれか一項に記載のスライサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食肉を載置した供給器を往復移動させることで、円板状のスライス刃によって食肉をスライスするスライサーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からのスライサーとして特許文献1には、クランク軸の回転により供給器を往復作動させる供給器往復駆動装置を備えたスライサーが記載されている。この特許文献1では、供給器が、食肉を切断する切断位置付近、あるいは、食肉を供給する供給位置付近を走行する場合に、供給器往復駆動装置によってクランク軸の回転速度が低減されることでスライサーの揺動を抑制する点が記載されている。
【0003】
また、従来からのスライサーとして特許文献2には、クランク軸の回転により供給器を往復作動させるようにクランク機構を含む供給器往復駆動装置を備えたスライサーが記載されている。
【0004】
この特許文献2では、供給器の往復作動のうち、復動中の供給器が最大速度となる時点の付近のみ、クランク機構の回転速度を減速することでスライサーの揺動を抑制する点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-300694号公報
【特許文献2】特開2001-121476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、特許文献2に記載されるスライサーでスライスした食肉を観察すると、スライスされた1枚の食肉でも各部の厚みが不揃いになることもあった。更に、食肉の状態によりスライスされた肉に裂けを生ずることや、スライスを行っても必要とするサイズより小さい複数の肉片が作り出されることもあった。
【0007】
スライスされた食肉片の形状は、供給器に載置された食肉の断面と一致することが理想であり、前述したように裂けた食肉や、小さい複数の肉片は商品価値がなく、廃棄に繋がるものであった。また、1枚の食肉の各部の厚みが不揃いになるものでも商品価値が低下することになり改善の余地があった。
【0008】
ここで、スライサーでスライスされた食肉が不良品となる原因を考えると、スライス時に供給器が直線的に移動しないことが不良品を作り出す要因であることが考えられる。つまり、供給器は、円板状のスライス刃の回転軸芯と直交する方向に直線的に移動するように設計されているが、肉塊をスライスするタイミングや、スライスする際に肉塊の硬い部位がスライス刃に接触したタイミングにおいて負荷が増大し、この増大に伴いクランク機構を構成するアームが一時的に弾性変形することや、クランク機構を構成するアームが一時的に捻れの関係になり、供給器が浮き上がることや、供給器の姿勢が変化する等、直線的に移動できず不良品の発生に繋がることが想像された。
【0009】
また、スライサーでスライスされた食肉が不良品となる理由を異なる観点から考えると、クランク機構の特性から供給器が往復する際の移動速度は一定でなく、例えば、供給器に載置される肉塊の重量が大きい場合には、スライスを行うために供給器が移動を開始する際にクランク機構に大きい荷重が作用し、前述したものと同様に、クランク機構のアームの連結部において想定されない方向(例えば、上下方向)にアームを揺動させることや、クランク機構を構成するアームが弾性変形することも想像できる。このように食肉の大きい慣性が作用する場合にも、前述と同様に供給器の浮き上がりや、姿勢変化等の現象から不良品の発生に繋がることが想像された。
【0010】
このような理由から、スライスする際に大きい外力が作用することがあっても食肉を適正に切断できるスライサーが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るスライサーの特徴構成は、外周に刃部を有し回転軸芯を中心に駆動回転する円板状のスライス刃と、食肉の搭載が可能であり、前記回転軸芯に対して直交する方向における往復移動によって搭載された前記食肉を前記スライス刃に供給する供給器と、前記供給器を往復作動させるクランク機構と、を備え、前記クランク機構が、駆動軸と一体回転する第1アームと、前記第1アームの前記駆動軸が取り付けられた側と反対側の端部に一端が取り付けられ、前記第1アームの回転運動を往復運動に変換する第2アームと、前記第1アームに対し前記第2アームの一端を街道自在に連結する第1連結部と、前記第2アームの他端に一端が取り付けられた前記供給器の受動アームと、前記第2アームの他端と前記受動アームの一端とを回転自在に連結する第2連結部とを備え、前記第1連結部と前記第2連結部との少なくとも一方は、前記第1アームと前記第2アームと前記受動アームとの3つのアームのうちの、互いに回転自在に連結された2つの前記アームの一方に前記駆動軸の駆動軸芯と平行な枢支軸芯と同軸芯で形成された枢支孔と、前記枢支軸芯と同軸芯で前記枢支孔に挿入され他方の前記アームに支持された枢支軸とを有し、この枢支軸は、緩衝部を有する枢支軸体と、前記枢支軸体を2つの前記アームの他方に連結する締結部材と、を有しており、前記枢支軸は、前記枢支軸体に一体形成されるフランジ部を有し、前記緩衝部は、前記フランジ部に形成された支持孔と、前記支持孔に挿入された筒状で可撓性の緩衝部材と、を有し、前記締結部材は、前記緩衝部材の内面側の空間に挿通されて2つの前記アームの他方に連結された点にある。
【0012】
この特徴構成では、第1連結部と第2連結部との何れに緩衝部を備えた構成であっても、クランク機構に作用する負荷が上昇した場合には、負荷の増大に伴い緩衝部材が柔軟に弾性変形することで、第1アームと第2アームと受動アームとの何れのアームに対しても曲げ方向や、ねじれ方向に外力が作用する現象を抑制し、クランク機構を適正に作動させ、スライス時に供給器の姿勢を変化させることや、供給器の直線的な移動を妨げる不都合を招くことがない。また、この構成では緩衝部材が柔軟に変形する際にもフランジ部がアームに接触する状態を維持するため、枢支軸芯の姿勢を駆動軸芯と平行する姿勢に維持し、クランク機構の円滑な作動を維持できる。
従って、スライスする際に大きい外力が作用することがあっても供給器を直線的に作動させ、食肉を適正に切断できるスライサーが構成された。
【0013】
上記構成に加えた構成として、前記第1連結部は、前記緩衝部材に挿通された前記締結部材により前記枢支軸体の前記フランジ部が前記第1アームに締結され、前記枢支軸体が、前記第2アームに形成された前記枢支孔に回動自在に挿入されて前記第2アームに枢支されても良い。
【0014】
これによると、クランク機構に作用する負荷が上昇した場合には、負荷の増大に伴い緩衝部材が柔軟に変形することで第1アームと第2アームとの間に過大な負荷が作用する現象を抑制しつつ、第1アームと第2アームとを第1連結部の枢支軸芯を中心にした回転を行わせることが可能となる。
【0015】
上記構成に加えた構成として、前記第2連結部は、前記緩衝部材に挿通された前記締結部材により前記枢支軸体の前記フランジ部が前記第2アームに締結され、前記枢支軸体が前記受動アームに形成された前記枢支孔に回動自在に挿入されて前記受動アームに枢支されても良い。
【0016】
これによると、クランク機構に作用する負荷が上昇した場合には、負荷の増大に伴い緩衝部材が柔軟に変形することで第2アームと受動アームとの間に過大な負荷が作用する現象を抑制しつつ、第2アームと受動アームとを第2連結部の枢支軸芯を中心にした回転を行わせることが可能となる。
【0017】
上記構成に加えた構成として、前記枢支軸芯を中心とする仮想円の円周上に複数の前記支持孔が配置されても良い。
【0018】
これによると、枢支軸芯を中心とする仮想円の円周上に複数の支持孔が形成されているため、各々の支持孔に挿入した筒状の緩衝部材に締結部材を挿通するため、複数箇所でフランジ部を安定的に支持し、枢支軸体の姿勢も安定する。
【0019】
上記構成に加えた構成として、テーブルをさらに備え、前記スライス刃と、前記供給器とが前記テーブルの上側に配置され、前記供給器に一体形成され前記供給器を支持する作動フレームが前記供給器から前記テーブルの下側に亘る領域に配置され、この作動フレームの下端部に前記受動アームが取り付けられており、前記クランク機構と、前記供給器の往復移動を案内するガイド部とが前記テーブルの下側に配置され、前記ガイド部が、前記供給器の往復移動方向に沿う姿勢のガイドレールと、前記作動フレームに支持され前記ガイドレールの両側面に接触する複数の第1ローラと、前記作動フレームに支持され前記ガイドレールの上面に接触する第2ローラとを備えており、前記駆動軸の回転により前記クランク機構を介して前記作動フレームが前記ガイドレールに沿って往復移動することにより、前記供給器が往復作動しても良い。
【0020】
これによると、テーブルの下側に配置したクランク機構からの力を、作動フレームを介してテーブルの上側の供給器に伝え、供給機構の往復移動が可能となる。また、テーブルの下側にガイドレールを備え、作動フレームに支持された複数の第1ローラがガイドレールの両側面に接触し、作動フレームに支持された第2ローラがガイドレールの上面に接触する。このため、食肉をスライスするスライス刃からの力が、供給器から作動フレームをレールの幅方向に変位させる方向に作用した場合には、複数の第1ローラがガイドレールの両側面に接触する状態を維持するため作動フレームをレールの幅方向に変位させることがない。また、食肉をスライスするスライス刃からの力が、供給器から作動フレームを下側に変位させる方向に作用した場合には、第2ローラがレールの上面に接触することで作動フレームを下方に変位させることがない。これにより、供給器の姿勢を変化させる不都合を抑制し、供給器の姿勢を安定させることが可能となる。
【0021】
上記構成に加えた構成として、前記第1ローラが、前記作動フレームの移動方向に沿う方向で前記作動フレームを挟む位置となる2箇所に配置されても良い。
【0022】
これによると、食肉をスライスするスライス刃からの力が、供給器から作動フレームをレールに対して傾斜させる方向に作用した場合には、2箇所に配置した第2ローラがガイドレールの上面に接触することで作動フレームを傾動させることがない。これにより、供給器の姿勢を変化させる不都合を抑制できる。
【0023】
上記構成に加えた構成として、テーブルをさらに備え、前記スライス刃と、前記供給器とが前記テーブルの上側に配置され、前記供給器に一体形成され前記供給器を支持する作動フレームが前記供給器から前記テーブルの下側に亘る領域に配置され、この作動フレームの下端部に前記受動アームが取り付けられており、前記クランク機構と、前記供給器の往復移動を案内するガイド部とが前記テーブルの下側に配置され、前記ガイド部が、前記供給器の往復移動方向に沿う姿勢のガイドレールと、前記作動フレームに支持され前記ガイドレールの上面に接触する規制ローラとを備え、この規制ローラが前記ガイドレールの上面に接触するローラ部と、前記ガイドレールの両側面に接触するように前記ローラ部の両端部に前記ローラ部より大径に形成されたフランジとを有しており、前記駆動軸の回転により前記クランク機構を介して前記作動フレームが前記ガイドレールに沿って往復移動することにより、前記供給器が往復作動しても良い。
【0024】
これによると、テーブルの下側に配置したクランク機構からの力を、作動フレームを介してテーブルの上側の供給器に伝え、供給機構の往復移動が可能となる。また、テーブルの下側にガイドレールを備え、作動フレームに支持された規制ローラのローラ部がガイドレールの上面に接触し、この規制ローラのフランジがガイドレールの両側面に接触する。このため、食肉をスライスするスライス刃からの力が、供給器から作動フレームをレールの幅方向に変位させる方向に作用した場合には、規制ローラの一対のフランジが幅方向への変位を規制する。また、食肉をスライスするスライス刃からの力が、供給器から作動フレームを下側に変位させる方向に作用した場合には、規制ローラのローラ部がガイドレールの上面に接触することで作動フレームを下方に変位させることがない。これにより、供給器の姿勢を変化させる不都合を抑制し、供給器の姿勢を安定させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】スライサーの全体の正面図である。
図2】供給器がスタート位置にあるスライサーの平面図である。
図3】供給器がエンド位置にあるスライサーの平面図である。
図4】ガイド部の縦断側面図である。
図5】ガイド部の下部のローラを示す正面図である。
図6】クランク機構の平面図である。
図7】クランク機構とガイド部とを示す平面図である。
図8】クランク機構の背面図である。
図9】第1連結部の分解状態の断面図である。
図10】第1連結部の斜視図である。
図11】フランジ部の拡大底面図である。
図12】支持プレートの拡大底面図である。
図13】別実施形態(a1)のガイド部の正面図である。
図14】別実施形態(a1)のガイド部の側面図である。
図15】別実施形態(a2)のガイド部の正面図である。
図16】別実施形態(a2)のガイド部の側面図である。
図17】別実施形態(a3)のガイド部の正面図である。
図18】別実施形態(a3)のガイド部の側面図である。
図19】第1アームの駆動側端部の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔全体構成〕
図1図3に示すように、機台1のテーブル2の上側に、外周に刃部を有した円板状のスライス刃3と、縦向き姿勢の規制板4と、肉塊やブロック状のベーコン等の塊状の食肉Mの載置が可能で、食肉Mをスライス刃3に供給する供給器5とを備え、テーブル2の下側に供給器5を往復作動させる駆動部Dを備えてスライサーAが構成されている。
【0027】
駆動部Dは、図6図8に示すように駆動軸22aの回転運動を往復運動に変換するクランク機構Cを有し、このクランク機構Cは、駆動軸22aの1回転運動を、供給器5を1往復作動させる運動に変換する。このクランク機構Cの構成は後述する。
【0028】
スライサーAは、スライス刃3が回転軸芯Xを中心に回転自在に支持され、このスライス刃3は、駆動ケース3aに内蔵された電動型の切断モータ(図示せず)の駆動力により駆動回転する。規制板4は、回転軸芯Xに対して直交する姿勢(スライス刃3と平行する姿勢)で配置され、この規制板4の回転軸芯Xに沿う方向へのオフセット量を調節することで食肉Mのスライス厚を設定できるように位置調節自在に構成されている。
【0029】
供給器5は、回転軸芯Xに対して直交する方向(規制板4に沿う方向)に往復移動できるようにテーブル2の上面のガイドフレーム6に対しスライド移動に支持されている。この供給器5は、食肉Mを規制板4に近接する方向に送るコンベアベルト7と、このコンベアベルト7の両サイドに配置されたガイド板8と、コンベアベルト7に載置された食肉Mの上面に接触して搬送力を作用させる搬送ローラ9と、コンベアベルト7及び搬送ローラ9を作動させる電動型の搬送モータ(図示せず)を内蔵する搬送駆動ケース10とを備えている。
【0030】
図1に示すように、供給器5は、下側に延出する形態で供給器5に一体形成された作動フレーム11を備えている。作動フレーム11は、供給器5のうち、規制板4と反対側の端部から下側に延出している。駆動部Dは、供給器5が往復作動する方向(ガイドフレーム6が案内する方向)に作動フレーム11を案内するガイド部Gと、作動フレーム11を往復作動させるクランク機構Cとをテーブル2の下側に備えている。特に、ガイド部Gは、作動フレーム11と供給器5との直線的な往復作動を案内する。
【0031】
この構成から、スライサーAは、供給器5に食肉Mを載置し、駆動ケース3aの駆動力によってスライス刃3を継続して駆動回転させ、駆動部Dのクランク機構Cの駆動力で供給器5を往復作動させることで食肉Mのスライスが実現する。
【0032】
また、このスライサーAでは図6図7に示すように、クランク機構Cの作動により供給器5が1往復作動する際の作動量を作動ストロークSとして示しており、同図における左端をスタート位置とし、右端がエンド位置としている。このため、供給器5が連続的に往復作動する際に、供給器5がスタート位置からエンド位置に達する領域で食肉Mがスライスされ、供給器5がエンド位置からスタート位置に復帰したタイミングでコンベアベルト7と搬送ローラ9との作動により食肉Mを規制板4に接触させる位置まで搬送する制御が行われる。これにより、設定されたスライス厚で食肉Mを連続的にスライスする作動を実現する。
【0033】
〔駆動部:ガイド部〕
図1図4図7に示すように、ガイド部Gは、テーブル2の下側の駆動空間の上部に配置した丸パイプ状のガイドシャフト14と、この下側に配置した角パイプ状のガイドレール15とを備えている。尚、ガイドシャフト14とガイドレール15とは、供給器5が往復移動方向に沿う姿勢(往復移動方向と平行する姿勢)で配置されている。
【0034】
図4図7に示すように、作動フレーム11の下端にブラケット17が連結されている。ガイド部Gは、ガイドシャフト14に対してスライド自在に外嵌する筒状のスライダー16を有し、スライダー16はブラケット17に一体形成されている。また、ガイド部Gは、図4図5図7に示すように、ガイドレール15の両側面に接触する一対の第1ローラ18と、平面視でブラケット17の下端部を挟む前後位置(作動フレーム11が作動する方向での前後方向)の2箇所においてガイドレール15の上面に接触する一対の第2ローラ19とを有している。
【0035】
つまり、ブラケット17の下端に水平姿勢で形成される第1支持部17aの2箇所に対し、縦向き姿勢の第1支軸18aを中心に回転自在に第1ローラ18が支持されている。また、ブラケット17の下端部で、第1支持部17aの上部位置に縦向き姿勢の第2支持部17bを備え、この第2支持部17bの2箇所に対し、第2支軸19aを中心に回転自在に第2ローラ19が支持されている。
【0036】
〔駆動部:クランク機構〕
図6図8に示すように、テーブル2の下側の空間には、電動型の駆動モータ21と、減速ケース22とを有し、減速ケース22は駆動軸芯Yを中心下方に向けて突出する駆動軸22aを備えている。駆動モータ21の出力プーリ21pと減速ケース22の従動プール22pとに亘って駆動ベルト23が巻回されている。
【0037】
クランク機構Cは、駆動軸22aと一体回転する第1アーム24と、作動フレーム11の下端のブラケット17に一体形成された受動アーム12と、第1アーム24の回転運動を往復運動に変換して受動アーム12に伝える第2アーム25とを有している。
【0038】
このクランク機構Cでは、第1アーム24のうち駆動軸22aに連結する基端と反対側の駆動側端部と、第2アーム25の一方の端部とを駆動軸芯Yと平行姿勢の第1軸芯P1(枢支軸芯の一例)を中心に回転自在に第1連結部J1で連結し、第2アーム25の他方の端部と、受動アーム12とを駆動軸芯Yと平行姿勢の第2軸芯P2(枢支軸芯の一例)を中心に回転自在に第2連結部J2で連結している。
【0039】
尚、第1アーム24に板状材が用いられ、第2アーム25に丸棒材が用いられ、受動アーム12に板状部材が用いられている。
【0040】
クランク機構Cは、駆動軸芯Yを中心に駆動軸22aと一体的に第1アーム24が回転することにより、第1連結部J1の第1軸芯P1の位置が、図6図7に一点鎖線で示すように円形の軌道を移動する。また、受動アーム12は図6図7に示すようにガイド部Gにより直線的に移動する。
【0041】
クランク機構Cは、駆動モータ21の駆動力を減速ケース22で減速して駆動軸22aを駆動することで第1アーム24が駆動回転し、第1アーム24の回転力が第2アーム25を介して受動アーム12に伝えられ、作動フレーム11と一体的に供給器5が往復移動する。この往復作動の作動ストロークSを図6図7に示しており、前述したように図面の左端がスタート位置であり、右端がエンド位置である。
【0042】
〔駆動部:クランク機構の緩衝部〕
特に、従来からのスライサーAでは、供給器5の移動により、肉塊にスライス刃3が接触してスライスを開始するタイミングや、肉塊のスライス時に肉塊の硬い部位がスライス刃に接触したタイミング等においてクランク機構Cに作用する負荷が増大し、第1アーム24と第2アーム25と受動アーム12とに曲げ方向や、ねじれ方向に過大な力が作用することもあった。
【0043】
このスライサーAでは、図6図7に示すように受動アーム12が作動ストロークSの作動端(スタート位置、エンド位置)に達したタイミングで、受動アーム12が機械的な移動限界に達し、逆方向への移動を開始する。しかしながら、供給器5と作動フレーム11との重量に起因して移動を継続する方向に慣性が作用するため、この作動端に達したタイミングで慣性により過大な力が衝撃として作用する。
【0044】
このように、過大な力が作用した場合には、この過大な力が、第1アーム24と第2アーム25とを互いに捩る方向に作用することもあり、この過大な力の作用により第1連結部J1と、第2連結部J2とにおいて摺動抵抗の増大に繋がることもあった。
【0045】
また、過大な力が作用した場合には、例えば、第1連結部J1では、この第1連結部J1が、本来あるべき位置から上下何れかの方向に変位し、クランク機構Cに連係する供給器5の姿勢を不適正に変化させることもあった。この状態で食肉Mをスライスすると、スライスされた食肉に裂けを生ずることや、食肉が小さい複数の肉片に切り出される不都合を招くこともあった。
【0046】
このような不都合を解消するため、第1連結部J1に作用する負荷を一時的に軽減するように第1連結部J1を構成する枢支軸30に緩衝部を備えている。
【0047】
図8図10に示すように、枢支軸30は、枢支軸体31とフランジ部32を一体形成した構造であり、枢支軸体31は、大径部31aと小径部31bとを有している。また、枢支軸体31の突出端に雌ネジ部を有した連結孔31cを形成している。尚、小径部31bが第2アーム25の枢支孔25aに対し隙間なく挿通するように、小径部31bの外径と枢支孔25aの内径との関係が設定されている。
【0048】
第1連結部J1は、第2アーム25に対して駆動軸芯Yと平行姿勢の第1軸芯P1を中心に穿設された枢支孔25aと、この枢支孔25aに回転自在に挿入される枢支軸体31(枢支軸体31の小径部31b)と、フランジ部32を第1アーム24に連結する締結部材としての保持ボルト36とを有している。
【0049】
この構成では、枢支孔25aが形成される第2アーム25が、2つのアームの一方の一例であり、フランジ部32が支持される第1アーム24が、2つのアームの他方の一例となる。
【0050】
また、枢支軸30のフランジ部32には緩衝部として緩衝部材34を備えている。つまり、フランジ部32に複数の支持孔32bが形成され、これらの支持孔32bに対して筒状で可撓性のゴムや樹脂で成る筒状の緩衝部材34挿通し、更に、緩衝部材34の内面に金属や硬質の樹脂等で成る筒体35を挿入し、この筒体35に対して保持ボルト36を挿通し、この保持ボルト36を支持プレート33のネジ孔33bに螺合させることで枢支軸30が第1アーム24に連結される。
【0051】
特に、保持ボルト36は、保持ワッシャ39に挿通する状態で枢支軸30を連結固定しており、保持ワッシャ39としてフランジ部32の支持孔32bより大径のものを用いることで支持孔32bに嵌め込んだ緩衝部材34の脱落を防止している。
【0052】
図8図12に示すように、第1アーム24の駆動側端部は、連結された支持プレート33を有しており、この支持プレート33に対して第1軸芯P1と同軸芯で開口33aが穿設されている。更に、この支持プレート33には図12に示すように、この開口33aの中心(組み立て状態では第1軸芯P1と一致する)を基準にした所定半径の第2仮想円Rの円周上の複数箇所(実施形態では4箇所)に複数のネジ孔33bが形成されている。
【0053】
尚、図19に変形例として示すように、支持プレート33を用いずにフランジ部32を第1アーム24の駆動側端部に対して直接的に連結するように第1連結部J1を構成しても良い。
【0054】
この変形例では、第1アーム24の端部に支持プレート部24aを一体的に形成し、この支持プレート部24aに対し、枢支軸30のフランジ部32を重ね合わせて配置している。また、フランジ部32の複数の支持孔32bに緩衝部材34を挿通し、これに筒体35を挿入し、保持ワッシャ39と筒体35とに挿通する保持ボルト36を支持プレート部24aのネジ孔部24bに螺合させている。これにより、枢支軸30の枢支軸体31が第1アーム24に支持されている。また、この変形例では、枢支軸体31に対し、図9図10に示すものと同様に第2アーム25を支持することで第1連結部J1が構成されている。
【0055】
図9図11に示すように、フランジ部32のうち、支持プレート33に対向する面には、支持プレート33の開口33aの内径より小さい外径となる規制突起32aを形成しており、フランジ部32には、枢支軸体31の軸芯(組み立て状態では第1軸芯P1と一致する)を中心とする第1仮想円Qの円周上の複数箇所(実施形態では4つ)に支持孔32bが形成されている。
【0056】
また、第1連結部J1が組み立てられた状態では、第1軸芯P1と同軸芯で枢支軸30が配置され、支持プレート33の開口33aが第1軸芯P1と同軸芯となっている。
【0057】
このような構成であるため、第1連結部J1を組み立てる際には、枢支軸体31の大径部31aと小径部31bとの境界の段状部に支点ワッシャ40を配置し、枢支軸体31の小径部31bを支点ワッシャ40と第2アーム25の枢支孔25aに挿通し、第2アーム25から露出する小径部31bに別の支点ワッシャ40を配置し、連結孔31cの雌ネジ部に支点ボルト41が螺合させることで、枢支孔25aに対する枢支軸30の抜け止めを行う。
【0058】
また、この組み立て時には、第1アーム24の駆動側端部に支持プレート33が複数の連結ボルト38により予め締結固定されている。そして、図9図10に示すように、枢支軸体31に一体的に形成されるフランジ部32の複数の支持孔32bに緩衝部材34を挿入し、この緩衝部材34に対して筒体35を挿通した状態で複数の保持ボルト36を、支持プレート33のネジ孔33bに螺合させることで第1アーム24に対して枢支軸30が支持される。
【0059】
この第1連結部J1では、筒体35の長さを、フランジ部32の厚さに等しくしており、保持ボルト36を支持プレート33のネジ孔33bに螺合させた状態でフランジ部32と支持プレート33とを強く密着させないように構成されている。これにより、大きい負荷が作用した場合には緩衝部材34を柔軟に弾性変形させ、フランジ部32と支持プレート33とが接触する面において、これらを滑動させるように相対的移動を行わせ、第1軸芯P1(枢支軸芯)の姿勢を変化させることなく、第1アーム24に対する第2アーム25の流れ方向への変位を可能にしている。
【0060】
つまり、肉塊のスライスを開始するタイミングや、肉塊のスライス時に肉塊の硬い部位がスライス刃に接触したタイミング、あるいは、大きい塊の食肉をスライスする場合のように大きい慣性が作用する場合には、クランク機構Cに大きい負荷が作用し、供給器5の作動が抑制されることもあった。このような状況でも、複数の緩衝部材34が柔軟に弾性変形することで第1連結部J1において第1アーム24に対する第2アーム25の長手方向への変位を許容しつつ、このように変位する場合でも第2アーム25に対する枢支軸30の位置が維持されるのである。
【0061】
更に、前述したように、受動アーム12が作動ストロークSの作動端(スタート位置、エンド位置)に達し、移動方向が逆転するタイミングでは、受動アーム12が作動の端部に慣性により過大な力が衝撃として作用する。このように過大な力が作用する場合にも、複数の緩衝部材34が柔軟に弾性変形することで衝撃を抑制するだけでなく、この衝撃に伴い第1アーム24と第2アーム25とを互いに「ねじれ」の方向に変位させる力が作用する状況でも、複数の緩衝部材34が柔軟に弾性変形することで、変位方向に作用する力を抑制する。
【0062】
これにより、第1アーム24と第2アーム25との何れのアームに対しても曲げ方向や、ねじれ方向に外力が作用する現象が抑制される。その結果、供給器5の直線的な移動を妨げる不都合を招くことなく、食肉Mを適正にスライスすることが可能となる。
【0063】
特に、過大な力の作用によって複数の緩衝部材34が柔軟に弾性変形した後に、力の作用が低減する際には、緩衝部材34が元の形状に復元する際に生ずる力が、クランク機構Cの作動を助ける方向に作用するため、クランク機構Cの円滑な作動を促進し、駆動モータ21の電力消費の低減も実現する。
【0064】
スライサーAは、図6図7に示すように、平面視において受動アーム12が、クランク機構Cの方向に突出する姿勢でブラケット17に形成されている。スライダー16は、供給器5と作動フレーム11との全重量が作用するため、このスライダー16の内周面とガイドシャフト14の外周面とが強く接触する状態にある。従って、クランク機構Cの駆動力が受動アーム12に伝えられる際には、その駆動力が、スライダー16の姿勢を僅かに変化させることもあり、この姿勢変化が僅かであっても、スライダー16とガイドシャフト14との接触部位での摺動抵抗を大きく増大させ、作動フレーム11の直進性を低下させるものであった。
【0065】
このような課題に対し、第2ローラ19が、ガイドレール15の上面に接触することにより、供給器5と作動フレーム11との全重量を、第2ローラ19を介してガイドレール15に受け止めさせることで、スライダー16の内周面とガイドシャフト14の外周面とが強く接触する不都合を抑制し、この接触部位における摩擦抵抗を軽減している。
【0066】
更に、一対の第1ローラ18が、ガイドレール15の両側面を挟むように接触することにより、クランク機構Cから作用する力でスライダー16の姿勢が変化する状況であっても、この姿勢変化を抑制することにより、結果として、スライダー16の内周面とガイドシャフト14の外周面との接触部位での摩擦の増大を抑制している。
【0067】
このように、ガイド部Gが、ガイドレール15の両側面に接触する一対の第1ローラ18と、ガイドレール15の上面に接触する一対の第2ローラ19とを備えるだけで、供給器5の直進性の向上を実現している。
【0068】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い(実施形態と同じ機能を有するものには、実施形態と共通の番号、符号を付している)。
【0069】
ガイド部Gを、図13図18のように、ガイドレール15の両側面に接触する一対のフランジ20bを一体形成した規制ローラ20を用いて構成する。これらの構成を、以下の別実施形態(a1)~(a3)に示しており、夫々の詳細を以下に説明する。
【0070】
(a1)図13図14に示すように、ブラケット17の下端に単一の支持ブラケット27を固設し、この支持ブラケット27のうち、ガイドレール15の長手方向での両端部の2箇所に規制ローラ20を回転自在に支持してガイド部Gを構成する。規制ローラ20は、ガイドレール15に接触するローラ部20aと、ローラ部20aのローラ軸芯に沿う方向での両端位置にローラ部20aより大径となるフランジ20bとを形成した構造を有しており、ガイドレール15の長手方向に直交する姿勢で規制支軸20cを介して支持ブラケット27に支持されている。
【0071】
別実施形態(a1)の〔作用効果〕
別実施形態(a1)のガイド部Gは、規制ローラ20のローラ部20aが、ガイドレール15の上面に接触することで、供給器5と作動フレーム11との全重量を一対の規制ローラ20を介してガイドレール15に受け止めさせている。また、別実施形態(a1)のガイド部Gは、一対のフランジ20bが、ガイドレール15の両側面を挟むように接触するため、クランク機構Cから作用する力でスライダー16の姿勢が変化する不都合を抑制できる。更に、実施形態で示した第1ローラ18用いない構成となり部品点数の低減を実現する。
【0072】
(a2)図15図16に示すように、ブラケット17の下端を挟む位置に一対の支持ブラケット27を配置し、この一対の支持ブラケット27の下部でガイドレール15の長手方向での両端部の2箇所に規制ローラ20を回転自在に支持する。つまり、先に説明した別実施形態(a1)では、ブラケット17の下端の一方の側面に単一の支持ブラケット27を固定していたが、別実施形態(a2)では、一対の支持ブラケット27を用いることにより、規制ローラ20の支持強度の向上が図られている。
【0073】
また、別実施形態(a2)では、一対の支持ブラケット27に対し上下方向に延びる姿勢の長孔27aが形成され、この長孔27aとブラケット17とに貫通する固定ボルト28が用いられている。これにより、固定ボルト28締結によって支持ブラケット27の上下位置を調整できる。尚、支持ブラケット27の上下位置を調整する構造として、ブラケット17に長孔を形成し、支持ブラケット27に円形の貫通孔を形成しても良い。
【0074】
更に、この別実施形態(a2)では、規制ローラ20が、ガイドレール15に接触するローラ部20aと、このローラ部20aのローラ軸芯に沿う方向での両端位置にローラ部20aより大径となるフランジ20bとを有し、ガイドレール15の長手方向に直交する姿勢で規制支軸20cを介して支持ブラケット27に支持されている。そして、規制ローラ20の一対のフランジ20bのうち対向する位置となる内面は、ローラ部20aに近接する位置ほどローラ軸芯に方向での間隔が短縮する傾斜面20sを形成している。
【0075】
この別実施形態(a2)の〔作用効果〕
別実施形態(a2)のガイド部Gは、別実施形態(a)と共通する作用効果を奏すると共に、一対のフランジ20bの対向する部位を傾斜面20sとして形成することにより、フランジ20bとガイドレール15との接触抵抗の軽減を実現できる。
【0076】
(a3)図17図18に示すように、ブラケット17の下端の両側部に一体的に形成される支持ブラケット27を下方に延出し、このように延出した一対の支持ブラケット27の下部でガイドレール15の長手方向での両端部の2箇所に規制ローラ20を回転自在に支持する。
【0077】
この別実施形態(a3)は、別実施形態(a2)と同様に、規制ローラ20が、ガイドレール15に接触するローラ部20aと、ローラ部20aより大径となる一対のフランジ20bと、規制ローラ20のうちローラ部20aに近接する位置ほどローラ軸芯に沿う方向での間隔が短縮する傾斜面20sとを有している。夫々の規制ローラ20は、支持ブラケット27に対し規制支軸20cによって回転自在に支持されている。
【0078】
また、一対の支持ブラケット27には、一対の規制ローラ20を上下方向に移動自在に支持するため、上下方向に延びる姿勢の長孔27aが形成され、これらの長孔27aに対して規制ローラ20の規制支軸20cが挿通されている。また、ブラケット17は、規制ローラ20の上下位置を調整する調整ユニットFを備えている。
【0079】
規制支軸20cのうち、この規制支軸20cが延びる方向で規制ローラ20より外側に筒状体20dが、規制支軸20cに対し相対回転自在に外嵌している。調整ユニットFは、一対の筒状体20dの上面に当接する当接体45と、当接体45の上下方向での位置を設定する調整ボルト46と、調整ボルト46を支持する保持ブラケット47とを有している。保持ブラケット47は、ブラケット17に固定されている。
【0080】
当接体45は、水平姿勢のプレート部45aと、このプレート部45aに対し下方に延出する姿勢で一体形成された当接部45bとを備えており、一対の当接部45bの下端部を、対応する一対の筒状体20dの上面に当接させている。また、調整ボルト46は保持ブラケット47のナット部47aに螺合することにより上下方向に移動自在に備えられている。この調整ボルト46の下端に形成された小径の軸体46aを、当接体45のプレート部45aを上下方向に貫通させることで、調整ボルト46と当接体45との位置関係を適正に維持している。
【0081】
このような構成により、調整ボルト46の人為的な操作により規制ローラ20とガイドレール15との位置関係を適正に調整し、供給器5と作動フレーム11との全重量を一対の規制ローラ20を介してガイドレール15に受け止めさせることが可能となる。尚、このような調節の後に、ロックナット47bの操作により調整ボルト46の緩みの防止も可能となる。
【0082】
別実施形態(a3)の〔作用効果〕
この別実施形態(a3)のガイド部は別実施形態(a1)(a2)と共通する作用効果を奏すると共に、一対の支持ブラケット27が、ブラケット17と一体形成されているため、一対の規制ローラ20を強固に支持できるものであり、調整ユニットFによって一対の規制ローラ20の上下位置の微調整も可能となる。また、この別実施形態(a3)の構成では、別実施形態(a2)のようにブラケット17に対して一対の支持ブラケット27を上下位置調節自在に備える構成と比較して、支持ブラケット27の位置を強固に保持することが可能であり、2つの規制ローラ20の上下位置を個別に調節することも可能である。
【0083】
別実施形態(a1)~(a3)に示したように、ガイド部Gは、一対のフランジ20bを有する規制ローラ20を用いて構成することが可能であり、規制ローラ20のうちローラ部20aに近接する位置ほどローラ軸芯に沿う方向での間隔が短縮する傾斜面20sを形成することも可能である。また、ガイド部Gは、ブラケット17の一方の側面にだけ支持ブラケット27を形成する構成と、ブラケット17の両側面に対して支持ブラケット27を形成する構成との何れを用いても良く、ブラケット17に対して支持ブラケット27を一体形成するように構成することも可能である。更に、ガイド部Gは、規制ローラ20の上下位置を調整する機構を、ブラケット17と支持ブラケット27との間に形成するものと、ブラケット27に長孔を形成するものとの何れを用いても良く、例えば、別実施形態(a3)に示す調整ユニットFを用いることも可能である。特に、このガイド部Gは、規制ローラ20、支持ブラケット27、長孔、調整ユニットFを任意に組み合わせて用いることも可能である。
【0084】
(b)第2連結部J2に緩衝部を備える、又は、第1連結部J1と第2連結部J2との夫々に緩衝部を備える。この別実施形態(b)の緩衝部の構成は、基本的に実施形態に示したものと共通する構成のものを用いることが可能である。このように構成することにより、第1連結部J1と第2連結部J2との夫々に緩衝部の機能により一層良好なスライスを実現する。
【0085】
この別実施形態(b)のうち、第2連結部J2に緩衝部を備える構成の具体例として、緩衝部材34に挿通した保持ボルト36(締結部材)により枢支軸体31のフランジ部32を第2アーム25に締結し、枢支軸体31を受動アーム12に形成された枢支孔に回動自在に挿入することで受動アームに第2アーム25を枢支させる構成が考えられる。
【0086】
(c)実施形態では、第1アーム24に枢支軸体31を支持し、第2アーム25に枢支孔25aを形成していたが、これとは逆に第2アーム25で枢支軸体31を支持し、第1アーム24に枢支孔を形成しても良い。
【0087】
(d)緩衝部材34としては可撓性のゴムや樹脂に限るものではなく、例えば、フランジ部32に一体形成された枢支軸体31の軸芯位置を、第1軸芯P1の位置に保持する方向に付勢力を作用させるトーションスプリングや、板バネ等の付勢部材を用いても良い。
【0088】
(e)クランク機構Cを、テーブル2より高い位置に配置する。このようにクランク機構Cを配置するものでは、スライサーAの上側への張り出し量を増大させることになるが、実施形態に示した作動フレーム11に相当するフレームを小型化し、ガイド部Gの構成の小型化も可能にする。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、食肉を載置した供給器を往復移動させることにより円板状のスライス刃によって食肉をスライスするスライサーに利用できる。
【符号の説明】
【0090】
2 テーブル
3 スライス刃
5 供給器
11 作動フレーム
12 受動アーム
15 ガイドレール
18 第1ローラ
19 第2ローラ
20 規制ローラ
20b フランジ
22a 駆動軸
24 第1アーム
25 第2アーム
25a 枢支孔
30 枢支軸
31 枢支軸体
32 フランジ部
32b 支持孔
34 緩衝部材(緩衝部)
36 保持ボルト(締結部材)
C クランク機構
G ガイド部
J1 第1連結部
J2 第2連結部
P1 第1軸芯(枢支軸芯)
P2 第2軸芯(枢支軸芯)
Q 仮想円(第1仮想円)
X 回転軸芯
Y 駆動軸芯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19