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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035298
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】表示装置の製造方法及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20220225BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220225BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20220225BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20220225BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20220225BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20220225BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
G09F9/00 342
H05B33/14 A
H05B33/12 E
H05B33/12 B
H05B33/04
H01L27/32
G02B5/20 101
G09F9/30 365
G09F9/30 349A
G09F9/30 349C
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020139517
(22)【出願日】2020-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】樫下 幸志
(72)【発明者】
【氏名】大野 龍蔵
(72)【発明者】
【氏名】三村 時生
(72)【発明者】
【氏名】井上 雄介
(72)【発明者】
【氏名】勝井 宏充
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 佳弘
【テーマコード(参考)】
2H148
3K107
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
2H148BB01
2H148BC46
2H148BD02
2H148BD11
2H148BD14
2H148BE22
2H148BE36
2H148BF07
2H148BH28
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC23
3K107CC43
3K107CC45
3K107EE22
3K107EE27
3K107EE48
3K107EE49
3K107EE50
3K107FF06
3K107FF15
5C094AA43
5C094BA27
5C094DA07
5C094ED03
5C094ED15
5C094FA02
5C094FB01
5C094FB02
5C094GB10
5C094JA08
5C094JA11
5G435AA17
5G435BB05
5G435CC12
5G435EE12
5G435FF11
5G435FF13
5G435GG12
5G435HH01
5G435KK05
(57)【要約】
【課題】アレイ基板上にカラーフィルタやブラックマトリクスを形成する表示装置の製造方法において、ブラックマトリクスの材料選択の制約が緩和された表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】基板の一表面上に、複数の画素を構成する回路層を形成する工程と、前記回路層の上方に、カラーフィルタ層を形成する工程と、を含み、前記カラーフィルタ層を形成する工程は、互いに間隔を置いて設けられる複数のカラーフィルタを、前記複数の画素の夫々に対応させて形成する工程と、前記一表面上に黒色組成物を含む分散液を塗布することによって、前記複数のカラーフィルタの夫々を覆う黒色塗膜を形成する工程と、前記複数のカラーフィルタが露出するまで前記黒色塗膜をエッチングすることによって、前記複数のカラーフィルタの夫々を区画するブラックマトリクスを形成する工程と、を含む、表示装置の製造方法。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の一表面上に、複数の画素を構成する回路層を形成する工程と、
前記回路層の上方に、カラーフィルタ層を形成する工程と、
を含み、
前記カラーフィルタ層を形成する工程は、
互いに間隔を置いて設けられる複数のカラーフィルタを、前記複数の画素の夫々に対応させて形成する工程と、
前記一表面上に黒色組成物を含む分散液を塗布することによって、前記複数のカラーフィルタの夫々を覆う黒色塗膜を形成する工程と、
前記複数のカラーフィルタが露出するまで前記黒色塗膜をエッチングすることによって、前記複数のカラーフィルタの夫々を区画するブラックマトリクスを形成する工程と、
を含む、表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記カラーフィルタ層を形成する工程の前に、
前記回路層の上方に封止層を形成する工程
を更に含む、請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記エッチングは、ドライエッチングである、
請求項1又は2に記載の表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記カラーフィルタ層を形成する工程は、
前記黒色塗膜を形成する工程の前に、
前記複数のカラーフィルタの夫々を覆う無機絶縁層を形成する工程
を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記カラーフィルタ層を形成する工程の後に、
前記一表面上に、平坦化層を形成する工程
を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記複数のカラーフィルタと、前記ブラックマトリクスとは、無機粒子を含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記複数の画素の夫々は、前記一表面側から、アノード電極と、発光層と、カソード電極との順に積層された発光素子を有し、
前記分散液は、金属微粒子を含み、
前記黒色塗膜を形成する工程は、前記カソード電極の少なくとも一部を露出させた後に前記分散液を塗布する、
請求項1~6のいずれか一項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記ブラックマトリクスは、膜厚が2μm以上5μm以下の場合に、光学密度が2以上3以下である、
請求項1~7のいずれか一項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記エッチングガスは、O、CF、SF、NF、Arのうち、少なくともいずれか一を含む、
請求項1~8のいずれか一項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記カラーフィルタは、ノボラック型エポキシアクリレート樹脂、(メタ)アクリロイル基を有するカルド樹脂、シロキサン樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記黒色組成物は、チタンブラック、カーボンブラックのいずれかを少なくとも含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記封止層は、(メタ)アクリル化合物、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物から選ばれる少なくとも一種と、酸発生剤、ラジカル重合開始剤から選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項13】
請求項10に記載のカラーフィルタに含まれる前記組成物。
【請求項14】
請求項11に記載の黒色組成物。
【請求項15】
請求項12に記載の封止層の材料。
【請求項16】
基板と、
前記基板の一表面上に設けられ、複数の画素を構成する回路層と、
前記回路層の上方に設けられたカラーフィルタ層と、
を備え、
前記カラーフィルタ層は、
夫々が、前記複数の画素のいずれかの上方に、互いに間隔を置いて設けられた複数のカラーフィルタと、
前記複数のカラーフィルタの夫々を区画するブラックマトリクスと、
を有し、
前記ブラックマトリクスは、酸化銅、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化チタン、チタン酸バリウム、酸化ビスマス、酸化セリウム、酸化クロム、酸化コバルト、酸化インジウム、酸化インジウムスズ、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化スズ、酸化インジウム-酸化ガリウム-酸化亜鉛、酸化インジウム-酸化亜鉛、酸化インジウムスズ、炭化チタン、窒化チタン、窒化アルミニウムをさらに含む、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置の製造方法及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置の技術分野において、薄膜トランジスタが行列状に設けられたアレイ基板と、カラーフィルタやブラックマトリクスが設けられたカラーフィルタ基板とを用意し、両者を貼り合わせる製造技術がよく知られている(特許文献1)。
【0003】
一方、製造工程において、アレイ基板上にカラーフィルタやブラックマトリクスを直接形成する、所謂カラーフィルタ・オン・アレイ(COA)という技術が知られている(特許文献1)。COAを採用することによって、カラーフィルタ基板が不要になることから、有機EL表示装置の低コスト化、大幅な薄型化を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6013067号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のCOAにおいて、フォトリソグラフィ工程によってブラックマトリクスを形成する場合、アレイ基板上に形成されている発光層の耐熱温度が、ブラックマトリクスの材料選択の制約になる。具体的には、ブラックマトリクスの材料として、フォトリソグラフィ工程に必要な感光性を有し、且つ発光層の耐熱温度を超えない温度でのフォトリソグラフィ工程を可能とする材料が選択される必要がある。
【0006】
このような材料の選択は、特にブラックマトリクスの所望の膜厚が厚いほど制約が大きくなり、困難になる。例えば、光照射によってブラックマトリクスを硬化させる場合、深部ほど光が届きにくくなる。そのため、深部まで硬化させるために十分高い感光性を有する材料が選択される必要がある。つまり、感光性についての制約が大きくなる。その上で、発光層の耐熱温度を超えない温度でのフォトリソグラフィ工程を可能とする材料が選択される必要がある。
【0007】
本発明の目的は、アレイ基板上にカラーフィルタやブラックマトリクスを形成する表示装置の製造方法において、ブラックマトリクスの材料選択の制約が緩和された表示装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための主たる発明は、基板の一表面上に、複数の画素を構成する回路層を形成する工程と、前記回路層の上方に、カラーフィルタ層を形成する工程と、を含み、前記カラーフィルタ層を形成する工程は、互いに間隔を置いて設けられる複数のカラーフィルタを、前記複数の画素の夫々に対応させて形成する工程と、前記一表面上に黒色組成物を含む分散液を塗布することによって、前記複数のカラーフィルタの夫々を覆う黒色塗膜を形成する工程と、前記複数のカラーフィルタが露出するまで前記黒色塗膜をエッチングすることによって、前記複数のカラーフィルタの夫々を区画するブラックマトリクスを形成する工程と、を含む、表示装置の製造方法である。本発明の他の特徴については、後述する明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アレイ基板上にカラーフィルタやブラックマトリクスを形成する表示装置の製造方法において、ブラックマトリクスの材料選択の制約が緩和された表示装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】表示装置1の全体構成を示す概略図である。
図2】複数の画素の夫々の回路構成を説明する図である。
図3】隣接する3個の画素の上面図である。
図4】隣接する3個の画素の断面図である。
図5】表示装置1の製造方法を説明する図である。
図6】表示装置1の製造方法を説明する図である。
図7】表示装置1の製造方法を説明する図である。
図8】表示装置1の製造方法を説明する図である。
図9】表示装置1の製造方法を説明する図である。
図10】表示装置1の製造方法を説明する図である。
図11】表示装置1の製造方法を説明する図である。
図12】隣接する3個の画素の断面図である。
図13】隣接する3個の画素の断面図である。
図14】隣接する3個の画素の上面図である。
図15】隣接する3個の画素の断面図である。
図16】表示装置12の製造方法を説明する図である。
図17】表示装置12の製造方法を説明する図である。
図18】表示装置12の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
[全体構成]
本実施形態の表示装置1の全体構成を説明する。図1は、本実施形態の表示装置1の全体構成を示す概略図である。表示装置1は、基板2を有し、基板2の一表面に、表示領域2aと、周辺領域2bとが設けられている。
【0012】
表示領域2aは、画像を表示する領域である。本実施形態では、表示領域2aには、複数の画素Pが、行列状に配列されている。表示領域2aには、更に、画素行毎に走査信号線303が、画素列毎に映像信号線304が設けられている。また、図1には示していないが、画素列毎に電源電位線と、複数の画素Pに亘って共通電位線とが設けられている。
【0013】
周辺領域2bは、表示領域2aの外側の領域である。周辺領域2bには、駆動回路302と、LSIチップ7と、端子部8とが設けられている。駆動回路302は、表示領域2aに配列された複数の画素Pを駆動するための回路である。駆動回路302は、走査線駆動回路302aと、映像線駆動回路302bとを含む。LSIチップ7は、駆動回路302を制御する。端子部8は、表示装置1と、FPC(Flexible Printed Circuit)等の外部端子とを接続するために設けられている。
【0014】
[画素回路]
図2は、本実施形態の複数の画素Pの夫々の回路構成を説明する図である。複数の画素Pの夫々は、選択トランジスタ300と、駆動トランジスタ301と、発光素子310とを有する。
【0015】
選択トランジスタ300は、オン・オフ動作により、映像信号線304と、駆動トランジスタ301のゲート電極との導通状態を制御する。選択トランジスタ300のソース電極は、映像信号線304に接続されている。選択トランジスタ300のドレイン電極は、駆動トランジスタ301のゲート電極に接続されている。選択トランジスタ300のゲート電極は、走査信号線303に接続されている。
【0016】
駆動トランジスタ301は、映像信号線304を介してゲート電極に印加される電圧に基づいて、発光素子310に流れる電流を制御する。駆動トランジスタ301のソース電極は、電源電位線305に接続されている。駆動トランジスタ301のドレイン電極は、発光素子310のアノード電極に接続されている。駆動トランジスタ301のゲート電極は、選択トランジスタ300のドレイン電極に接続されている。
【0017】
発光素子310は、発光素子310に流れる電流に応じた輝度の光を発する。発光素子310のアノード電極は、駆動トランジスタ301のドレイン電極に接続されている。発光素子310のカソード電極は、共通電位線306に接続されている。
【0018】
[駆動方法]
駆動トランジスタ301のソース電極には、電源電位線305を介して所定の電源電圧が印加される。また、発光素子310のカソード電極には、共通電位線306を介して所定の共通電圧が印加される。駆動トランジスタ301のゲート電極に電圧が印加されることにより、駆動トランジスタ301は、発光素子310に流れる電流を制御することができる。
【0019】
走査線駆動回路302aは、LSIチップ7から入力されるタイミング信号に応じて、複数の画素行の夫々を順番に選択する。このとき、走査線駆動回路302aは、当該画素行の画素Pに接続された走査信号線303に、選択トランジスタ300をオンにする電圧を印加する。
【0020】
映像線駆動回路302bは、LSIチップ7から映像信号を入力され、走査線駆動回路302aによる走査信号線303の選択に合わせて、選択された画素行の映像信号に応じた電圧を、複数の映像信号線304の夫々に印加する。当該電圧は、選択された画素行において、駆動トランジスタ301のゲート電極に印加される。これによって、発光素子310には、駆動トランジスタ301のゲート電極に印加された電圧に応じた電流が供給される。これによって、選択された走査信号線303に接続された画素回路の発光素子310が、当該電流に応じた輝度で発光する。
【0021】
[表示領域の詳細な構成]
図3は、本実施形態の表示装置1が表示領域2aに備える複数の画素Pのうち、隣接する3個の画素PR,PG及びPBの上面図である。画素PR,PG及びPBは夫々、赤,緑及び青のカラーフィルタ(詳細は後述)が設けられた画素である。
【0022】
図4は、図3のA-A´における隣接する3個の画素PR,PG,PBの断面図である。本実施形態の表示装置1は、発光素子310が発した光が基板2の反対側へ取り出される、所謂トップエミッション型の表示装置である。本実施形態の表示装置1は、基板2と、回路層3と、封止層4と、カラーフィルタ層5と、を備える。
【0023】
以下、夫々について説明する。尚、以下の説明では、特に断らない限り、画素Pに設けられたカラーフィルタの色については区別せず、画素PR,PG及びPBのいずれについても「画素P」と称する。
【0024】
1.基板
基板2は、例えばガラス基板、石英基板、又は有機樹脂基板等が用いられることができる。有機樹脂材料としては、例えばポリイミド等が挙げられる。有機樹脂基板は、板厚を数マイクロメートルから数十マイクロメートルにすることができ、可撓性を有するシートディスプレイを実現することが可能となる。
【0025】
2.回路層
回路層3は、複数の画素Pを構成する層である。回路層3には、複数の画素Pの夫々が有する画素回路と、駆動回路302とが設けられる。回路層3は、トランジスタ層30と、発光素子層31と、バンク層32と、を有している。
【0026】
トランジスタ層30は、複数の画素Pの夫々が有する、選択トランジスタ300と、駆動トランジスタ301と、が設けられる層である。トランジスタ層30は、更に、選択トランジスタ300と、駆動トランジスタ301とを保護するために、選択トランジスタ300と、駆動トランジスタ301とを覆う保護層(図示せず)が設けられている。
【0027】
発光素子層31は、複数の画素Pの夫々が有する、発光素子310が設けられる層である。発光素子310は、基板2の一表面側から、アノード電極310aと、発光層310eと、カソード電極310cとの順に積層された構造を有している。
【0028】
アノード電極310aは、駆動トランジスタ301のドレイン電極に接続されている。アノード電極310aの材料としては、発光層310eが発した光を基板2の反対側へ反射させるために、反射率の高い金属材料を含むことが好ましい。反射率の高い金属材料としては、例えば、アルミニウム、銀等が用いられることができる。
【0029】
発光層310eは、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)材料を含む層である。発光層310eは、アノード電極310aの上方に設けられている。発光層310eは、後述するバンク層32を覆うように設けられている。発光層310eに、アノード電極310aから正孔が注入され、カソード電極310cから電子が注入されると、電子と正孔が再結合する。これにより放出される余剰なエネルギーによって発光層310e中の発光分子が励起し、その後脱励起することによって発光する。発光層310eは、有機EL材料の層を挟むように、正孔輸送層や電子輸送層等が含まれてもよい。
【0030】
カソード電極310cは、発光層310eの上方に設けられている。カソード電極310cは、共通電位線306の一部の領域に相当する。共通電位線306は、複数の画素Pにおいて共通に設けられ、全て導通している。
【0031】
カソード電極310cの材料としては、発光層310eが発した光を基板2の反対側へ透過させるために、透光性を有し、且つ導電性を有する材料が用いられる。具体的には、カソード電極310cの材料として、ITO(酸化インジウムスズ)、IZO(酸化亜鉛スズ)等を用いることができる。または、カソード電極310cの材料として、光が透過できる程度の膜厚を有する金属材料を用いてもよい。
【0032】
バンク層32は、トランジスタ層30の上方に、複数の画素Pの夫々を区画するように設けられている。また、バンク層32は、アノード電極310aの周縁部近傍を覆うように設けられている。バンク層32の材料は、絶縁材料である。絶縁材料としては、無機絶縁材料、有機絶縁材料又はそれらの組み合わせを用いることができる。バンク層32を設けることによって、アノード電極310aと、カソード電極310cとの短絡を防止することができる。
【0033】
3.封止層
封止層4は、発光層310eに水分や不純物が侵入して、発光層310eが劣化することを抑制するために設けられている。封止層4は、回路層3の上方に設けられている。本実施形態の封止層4は、基板2側から、無機絶縁層40と、有機絶縁層41と、無機絶縁層42との順番で積層された構造を有している。
【0034】
無機絶縁層40は、有機絶縁層が内部に水分を含む場合に、その水分が発光層310eに侵入することを防止するために設けられている。無機絶縁層40の材料としては、窒化珪素、酸化珪素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム等が用いられることができる。
【0035】
有機絶縁層は、表示装置1の外部の不純物が発光層310eに侵入することにより、発光素子310が劣化することを防止するために設けられている。また、有機絶縁層は、バンク層32に起因する凹凸を平坦化するように設けられている。
【0036】
有機絶縁層の材料としては、(メタ)アクリル化合物、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物等と酸発生剤やラジカル重合開始剤等を含み、熱や光で硬化膜を形成することができる材料が用いられる。国際公報第2017/39857号には、有機EL発光装置の封止材の作製に用いられ、インクジェット法で成形される紫外線硬化性樹脂組成物の一例が示されている。具体的にはポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートモノマーと、モノ(メタ)アクリレートモノマーと、多官能(メタ)アクレート架橋剤と、架橋性光重合開始剤とを含むインク組成物が開示されている。また、特開2005-336314号公報には光カチオン重合に1分子中に3個以上のチオール基を有するポリチオールモノマー、及び、1分子中に3個以上の炭素-炭素二重結合を有するポリエンモノマーを含有する重合性化合物と、光重合開始剤とを含有する表示素子用封止剤が開示されている。
【0037】
また、環状エーテル化合物を含有する化合物と酸発生剤を含有する硬化性組成物も用いられる。上記環状エーテル化合物は、得られる有機EL表示素子用封止剤が接着性や硬化性に優れるものとなることから、エポキシ樹脂及び/又はオキセタン樹脂を含有することが好ましい。上記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールO型エポキシ樹脂、2,2’-ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンエポキシ基およびオキセタニル基等の環状エーテル基、炭素-炭素重合性二重結合等の重合性二重結合が挙げられる。
【0038】
このような有機絶縁膜材料は、発光層の上に形成する場合、高温で加熱することなく効果できる材料が好ましい。例えば、200℃以上の高温で硬化すると発光層の酸化劣化を促進し、発光を損なう恐れがあるためである。
【0039】
無機絶縁層42は、表示装置1の外部から、水分や不純物が有機絶縁層に侵入することを防止するために設けられている。無機絶縁層42は、平坦な表面を有する有機絶縁層の上層に設けられているため、膜厚の均一性が高く、内部にクラック等の欠陥が生じにくい。そのため、表示装置1の外部の水分や不純物は、無機絶縁層42を通過しにくい。無機絶縁層42の材料としては、無機絶縁層40と同様の材料を用いられることができる。
【0040】
尚、LSIチップ7や端子部8の位置には、外部端子との導通を確保するために封止層4は設けられない。
【0041】
4.カラーフィルタ層
カラーフィルタ層5は、封止層4の上方に設けられる。カラーフィルタ層5は、複数のカラーフィルタ50と、ブラックマトリクス51とを有している。
【0042】
複数のカラーフィルタ50の夫々は、複数の画素Pの夫々に対応して設けられている。また、複数のカラーフィルタ50の夫々は、互いに間隔を置いて設けられている。本実施形態では、複数のカラーフィルタ50の夫々は、下面が封止層4に接触し、側面がブラックマトリクス51に接触し、上面が露出している。
【0043】
また、本実施形態では、複数のカラーフィルタ50の夫々は、赤、緑又は青の波長の光を選択的に透過させるカラーフィルタ50R,50G,50Bである。尚、以下の説明では、特に断らない限り、カラーフィルタ50の色については区別せず、カラーフィルタ50R,50G,50Bのいずれについても「カラーフィルタ50」と称する。
【0044】
カラーフィルタ50の材料としては、バインダー樹脂にノボラック型エポキシアクリレート樹脂、例えばKAYARAD CCR-1291H(日本化薬社製)、(メタ)アクリロイル基を有するカルド樹脂、例えば、ビスフェノールフルオレンなどフルオレン骨格を有したモノマーに用いた樹脂、シロキサン樹脂、例えば、テトラメトキシシランなどアルコキシシランをモノマーに用いたオルガノシロキサン樹脂が好適である。
【0045】
ブラックマトリクス51は、複数のカラーフィルタ50の夫々を区画する。つまり、ブラックマトリクス51は、隣接する2個のカラーフィルタ50の間の間隙を埋めるように設けられている。
【0046】
ブラックマトリクス51は、膜厚が2μm以上5μm以下の場合に、光学密度が2以上3以下である。
【0047】
ブラックマトリクス51の材料としては本発明の組成物は、(A)着色剤、(B)熱硬化性化合物、(C)有機溶剤、を含有する。なお、上記(A)~(C)に加えて、添加剤として他の成分を含有してもよい。
【0048】
前記(A)としては、チタンブラック、カーボンブラックを用いることが好ましく、以下詳述する。
(a)チタンブラック
本発明は、黒着色剤として、チタンブラックを含有する。チタンブラックは、従来感光性樹脂組成物、特に遮光膜用感光性樹脂組成物に分散、溶解されている顔料・染料と比較して、赤外光領域の遮光能力が高いため、遮光膜の重ね合わせでは遮光できない、赤外光領域の遮光を確実に行うことができる。特に、本発明の感光性樹脂組成物を硬化した遮光膜は赤外光領域の遮光性が高く、これを備える固体撮像素子の暗電流によるノイズを抑制することができる。また、チタンブラックは、黒着色剤として一般的に使用されるカーボンブラックと比較して、パターン形成のために照射するi線の吸収が小さいため、少ない露光量で硬化することができ、生産性の向上に寄与することができる。
【0049】
チタンブラックは、チタン原子を有する黒色粒子である。好ましくは低次酸化チタンや酸窒化チタン等である。チタンブラック粒子は、分散性の向上や凝集性の抑制などの目的で必要に応じ、表面を化学修飾することが可能である。具体的には、チタンブラックの表面を酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウムで被覆することが可能であり、また、特開2007-302836号公報に示されるような撥水性物質による表面処理も可能である。また、前記チタンブラックは、分散性、着色性等を調整する目的で、Cu、Fe、Mn、V、Ni等の複合酸化物、酸化コバルト、酸化鉄、カーボンブラック、アニリンブラック等の黒色顔料を1種あるいは2種以上の組み合わせを含有してもよい。また、所望とする波長の遮光性を制御する目的で、既存の赤、青、緑、黄色、シアン、マゼンタ、バイオレット、オレンジ等の顔料、又は染料などの着色剤を添加することも可能である。
【0050】
前記チタンブラックの市販品の例としては、(株)ジェムコ製(三菱マテリアル(株)販売)チタンブラック10S、12S、13R、13M、13M-C、13R、13R-N、赤穂化成(株)製ティラック(Tilack)Dなどが挙げられる。
【0051】
前記チタンブラックの製造方法としては、二酸化チタンと金属チタンの混合体を還元雰囲気で加熱し還元する方法(特開昭49-5432号公報)、四塩化チタンの高温加水分解で得られた超微細二酸化チタンを水素を含む還元雰囲気中で還元する方法(特開昭57-205322号公報)、二酸化チタン又は水酸化チタンをアンモニア存在下で高温還元する方法(特開昭60-65069号公報、特開昭61-201610号公報)、二酸化チタン又は水酸化チタンにバナジウム化合物を付着させ、アンモニア存在下で高温還元する方法(特開昭61-201610号公報)などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
前記チタンブラックの粒子の粒子径に特に制限は無いが、分散性、着色性の観点、及び、固体撮像素子における歩留まりへの影響の観点から、平均粒子径(平均一次粒子径)が10~150nmであることが好ましく、15~100nmであることがより好ましく、20-80nmであることが特に好ましい。平均粒子径は、チタンブラックを適当な基板へ塗布し、走査型電子顕微鏡により観察することによって測定することができる。前記チタンブラックの比表面積は、特に限定がないが、チタンブラックを撥水化剤で表面処理した後の撥水性が所定の性能となるために、BET法にて測定した値が約5~150m/gであることが好ましく、約20~100m/gであることがより好ましい。
【0053】
(b)カーボンブラック
本発明では、黒着色剤として、チタンブラック単独での使用の他に、チタンブラックとカーボンブラックとを併用してもよい。カーボンブラックは、炭素の微粒子を含む黒色の微粒子であり、好ましい粒子は直径約3~1,000nmの炭素の微粒子を含んでなるものである。また、該微粒子の表面には様々な炭素原子、水素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン、無機原子などを含有する官能基を有することができる。また、カーボンブラックは目的とする用途に応じて、粒子径(粒の大きさ)、ストラクチャー(粒子のつながり)、表面性状(官能基)をさまざまに変えることにより特性を変化させることができる。黒度や樹脂との親和性を変えたり、導電性を持たせたりすることも可能である。
【0054】
前記カーボンブラックの具体例としては、例えば、三菱化学社製のカーボンブラック#2400、#2350、#2300、#2200、#1000、#980、#970、#960、#950、#900、#850、MCF88、#650、MA600、MA7、MA8、MA11、MA100、MA220、IL30B、IL31B、IL7B、IL11B、IL52B、#4000、#4010、#55、#52、#50、#47、#45、#44、#40、#33、#32、#30、#20、#10、#5、CF9、#3050、#3150、#3250、#3750、#3950、ダイヤブラックA、ダイヤブラックN220M、ダイヤブラックN234、ダイヤブラックI、ダイヤブラックLI、ダイヤブラックII、ダイヤブラックN339、ダイヤブラックSH、ダイヤブラックSHA、ダイヤブラックLH、ダイヤブラックH、ダイヤブラックHA、ダイヤブラックSF、ダイヤブラックN550M、ダイヤブラックE、ダイヤブラックG、ダイヤブラックR、ダイヤブラックN760M、ダイヤブラックLP、キャンカーブ社製のカーボンブラックサーマックスN990、N991、N907、N908、N990、N991、N908、旭カーボン社製のカーボンブラック旭#80、旭#70、旭#70L、旭F-200、旭#66、旭#66HN、旭#60H、旭#60U、旭#60、旭#55、旭#50H、旭#51、旭#50U、旭#50、旭#35、旭#15、アサヒサーマル、デグサ社製のカーボンブラックColorBlackFw200、ColorBlackFw2、ColorBlackFw2V、ColorBlackFw1、ColorBlackFw18、ColorBlackS170、ColorBlackS160、SpecialBlack6、SpecialBlack5、SpecialBlack4、SpecialBlack4A、PrintexU、PrintexV、Printex140U、Printex140V等を挙げることができる。
【0055】
本発明において、黒着色剤として、チタンブラック及びカーボンブラックに加えて、更にチタンブラック、カーボンブラック以外の黒着色剤を更に一種類を併用してもよい。併用できる黒着色剤としては、各種公知の黒色顔料や黒色染料を用いることができるが、特に、少量で高い光学濃度を実現できる観点から、酸化鉄、酸化マンガン、グラファイト等が好ましい。
【0056】
[製造方法]
本実施形態の表示装置1の製造方法について説明する。図5図11は、本実施形態の表示装置1の製造方法を説明する図である。
【0057】
本実施形態の表示装置1の製造方法は、回路層3を形成する工程と、封止層4を形成する工程と、カラーフィルタ層5を形成する工程と、を含む。以下、夫々について説明する。
【0058】
1.回路層を形成する工程
先ず、基板2の一表面上にトランジスタ層30を形成する。この工程では、材料の成膜、レジスト塗布、露光、現像、エッチングの工程を含む一般的なフォトリソグラフィ工程でトランジスタ層30を形成すればよく、ここでは詳細な説明は省略する。
【0059】
次いで、発光素子層31のうち、アノード電極310aを形成する(図5)。アノード電極310aの材料は、反射率の高い金属材料を含むことが好ましい。反射率の高い金属材料としては、例えば、アルミニウム、銀等を用いることができる。アノード電極310aは、スパッタリング法等によって材料を成膜した後、エッチングによって不要部分を除去することによって形成される。
【0060】
次いで、バンク層32を形成する(図6)。バンク層32の材料は、絶縁材料である。絶縁材料としては、無機絶縁材料、有機絶縁材料又はそれらの組み合わせを用いることができる。バンク層32の材料を成膜した後、不要部分を除去することによって開口部32aを形成する。
【0061】
バンク層32を形成した後、発光素子層31うち、発光層310e、カソード電極310cが、この順番で形成される(図7)。
【0062】
発光層310eは、基板2の表示領域2aに亘って有機材料を蒸着することで、アノード電極310aと、バンク層32を覆うように形成される。カソード電極310cは、基板2の表示領域2aに亘って形成される。カソード電極310cの材料としては、透光性を有し、且つ導電性を有する材料が用いられる。
【0063】
具体的には、カソード電極310cの材料として、ITO(酸化インジウムスズ)、IZO(酸化亜鉛スズ)等を用いることができる。又は、カソード電極310cの材料として、光が透過できる程度の膜厚を有する金属材料を用いてもよい。カソード電極310cは、スパッタリング法等によって材料を成膜した後、エッチングによって不要部分を除去することによって形成される。
【0064】
2.封止層を形成する工程
この工程では、回路層3の上方に封止層4を形成する(図8)。また、この工程は、後述するカラーフィルタ層5を形成する工程の前に実行される。
【0065】
前述のように本実施形態の封止層4は、基板2側から、無機絶縁層40と、有機絶縁層41と、無機絶縁層42との順番で積層された構造を有している。この工程では、無機絶縁層40と、有機絶縁層41と、無機絶縁層42とが、この順番で形成される。
【0066】
無機絶縁層40と、無機絶縁層42としては、窒化珪素、酸化珪素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム等の無機絶縁材料を用いることができる。無機絶縁層40と、無機絶縁層42とは、化学気相成長法、スパッタリング法等の成膜法を用いて無機絶縁材料を成膜することによって形成される。
【0067】
有機絶縁層41は、アクリルモノマー、エポキシモノマー、ビニルエーテルモノマー、オキセタンモノマー等のモノマーに感光性硬化剤を混合した材料をインクジェット等の塗布装置により平坦に塗布し、紫外光を照射することによって硬化させることにより成膜される。塗布膜をホットプレート上、オーブン等により加熱によって硬化することもできる。この場合、例えば、200℃以上高温で硬化すると発光層の酸化劣化を促進してしまう可能性があるため、比較的低温、例えば120℃以下で加熱することが好ましい。
【0068】
3.カラーフィルタ層を形成する工程
この工程では、封止層4の上方に、カラーフィルタ層5を形成する。カラーフィルタ層5を形成する工程は、複数のカラーフィルタ50を形成する工程と、黒色塗膜510を形成する工程と、ブラックマトリクス51を形成する工程と、を含む。以下、夫々について説明する。
【0069】
3-1.複数のカラーフィルタを形成する工程
この工程では、複数のカラーフィルタ50を、複数の画素Pの夫々に対応させて形成する(図9)。
【0070】
3-2.黒色塗膜を形成する工程
この工程では、基板2の一表面上に黒色組成物を含む分散液を塗布することによって、黒色塗膜510を形成する(図10)。このとき、黒色塗膜510は、複数のカラーフィルタ50の夫々を覆うように塗布される。分散液は、水や有機溶媒等の溶媒に、黒色組成物を分散させた溶液である。分散液の塗布後、溶媒を乾燥して除去することによって、黒色塗膜510が形成される。
【0071】
3-3.ブラックマトリクスを形成する工程
この工程では、基板の一表面の前面に亘って黒色塗膜510をエッチングする(図11)。このとき、複数のカラーフィルタ50が露出するまでエッチングする。これによって、ブラックマトリクス51を形成される。
【0072】
ここでのエッチングは、ドライエッチングを用いることができる。ここでのエッチングは、O、CF、SF、NF、Arのうち、少なくともいずれか一を含むエッチングガスを用いる。以上の工程により、本実施形態の表示装置1が完成する。
【0073】
<第2実施形態>
[表示領域の詳細な構成]
図12は、本実施形態の表示装置10が表示領域2aに備える複数の画素Pの内、隣接する3個の画素PR,PG及びPBの断面図である。本実施形態の表示装置10は、第1実施形態の表示装置1と比べると、カラーフィルタ層5が、光透過性を有する無機絶縁層52を更に有する点で異なっている。
【0074】
具体的には、無機絶縁層52は、複数のカラーフィルタ50の夫々と、アノード電極310aとを覆うように設けられている。無機絶縁層52の厚みは10nm以上2000nm以下である。好ましくは、無機絶縁層52の厚みは10nm以上200nm以下である。更に好ましくは、無機絶縁層52の厚みは30nm以上1000nm以下である。無機絶縁層52の材料としては、窒化珪素、酸化珪素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム等が用いられることができる。
【0075】
本実施形態では、複数のカラーフィルタ50の夫々は、下面が封止層4に接触し、側面と、上面とが無機絶縁層52に接触している。
【0076】
また、本実施形態では、ブラックマトリクス51は、無機絶縁層52によって覆われた複数のカラーフィルタ50の夫々を区画する。つまり、ブラックマトリクス51は、無機絶縁層52によって覆われた、隣接する2個のカラーフィルタ50の間の間隙を埋めるように設けられている。
【0077】
[製造方法]
本実施形態の表示装置10の製造方法について説明する。本実施形態の表示装置10の製造方法は、第1実施形態の表示装置10の製造方法と比べると、カラーフィルタ層5aを形成する工程が異なっている。
【0078】
本実施形態のカラーフィルタ層5aを形成する工程は、第1実施形態のカラーフィルタ層5を形成する工程と比べると、無機絶縁層52を形成する工程を更に含む点で異なっている。
【0079】
無機絶縁層52を形成する工程は、複数のカラーフィルタ50を形成する工程の後に実行される。複数のカラーフィルタ50を形成する工程までの工程は、第1実施形態で図5図9を用いて説明した工程と同様である。無機絶縁層52を形成する工程では、基板2の表示領域2aに亘って無機絶縁層52を形成する。
【0080】
無機絶縁層52としては、窒化珪素、酸化珪素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム等の無機絶縁材料を用いることができる。無機絶縁層52は、化学気相成長法、スパッタリング法等の成膜法を用いて無機絶縁材料を成膜することによって形成される。
【0081】
無機絶縁層52を形成する工程の後、第1実施形態と同様に、黒色塗膜510を構成する工程と、ブラックマトリクス51を形成する工程とが実行され、本実施形態の表示装置10が完成する。
【0082】
無機絶縁層52を設けることによって、ブラックマトリクス51を形成する工程において、複数のカラーフィルタ50が損傷を受けたり、過剰にエッチングされたりすることを防止することができる。
【0083】
<第3実施形態>
[表示領域の詳細な構成]
図13は、本実施形態の表示装置11が表示領域2aに備える複数の画素Pの内、隣接する3個の画素PR,PG及びPBの断面図である。本実施形態の表示装置11は、第1実施形態の表示装置1と比べると、平坦化層6を更に有する点で異なっている。
【0084】
また、本実施形態の表示装置11は、第1実施形態の表示装置1と比べると、カラーフィルタ層5bが表面に凹凸を有する点で異なっている。具体的には、複数のカラーフィルタ50の膜厚は、ブラックマトリクス51aの膜厚より大きいことによって、凹凸が形成されている。この凹凸形状は、ブラックマトリクス51を形成する工程において、黒色塗膜510のエッチングレートが、複数のカラーフィルタ50のエッチングレートよりも大きい場合に形成されやすい。
【0085】
平坦化層6は、カラーフィルタ層5bの上方に設けられている。平坦化層6は、カラーフィルタ層5bに起因する凹凸を平坦化するように設けられている。平坦化層6としては、有機絶縁材料を用いることができる。平坦化層6を設けることによって、表示装置11の視認性が向上し、更に表示装置11の表面を保護することができる。
【0086】
[製造方法]
本実施形態の表示装置11の製造方法について説明する。本実施形態の表示装置11の製造方法は、第1実施形態の表示装置1の製造方法と比べると、平坦化層6を形成する工程を更に含む点で異なっている。
【0087】
平坦化層6を形成する工程は、カラーフィルタ層5bを形成する工程の後に実行される。平坦化層6は、有機絶縁材料を用いることができる。
【0088】
<第4実施形態>
本実施形態の表示装置(図示せず)は、第1実施形態の表示装置1と比べると、複数のカラーフィルタ50と、ブラックマトリクス51とは、光透過性の無機粒子を含む点で異なっている。
【0089】
本実施形態の複数のカラーフィルタ50と、ブラックマトリクス51とは、無機粒子に起因して表面に微細な凹凸が形成される。無機粒子に起因する微細な凹凸によって、外光の反射方向が分散されるため、野外での視認性が向上した表示装置を製造することができる。
【0090】
<第5実施形態>
[表示領域の詳細な構成]
図14は、本実施形態の表示装置12が表示領域2aに備える複数の画素Pの内、隣接する3個の画素PR,PG及びPBの上面図である。図15は、図14のA-A´における3個の画素PR,PG,PBの断面図である。
【0091】
本実施形態の表示装置12は、第1実施形態の表示装置1と比べると、ブラックマトリクス51bは、導電性を有し、カソード電極310cと電気的に接続されている点で異なっている。
【0092】
具体的には、ブラックマトリクス51bは、金属微粒子を含むことによって、導電性を有する。金属微粒子としては、金、銀、銅、亜鉛、アルミニウム、スズ、ニッケル、パラジウム、白金、コバルト、鉄、マンガン、クロム、モリブデン、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、セリウム等の金属元素を含む粒子が挙げられる。これらの具体例としては、当該金属元素からなる金属単体;酸化銅、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化チタン、チタン酸バリウム、酸化ビスマス、酸化セリウム、酸化クロム、酸化コバルト、酸化インジウム、酸化インジウムスズ、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化スズ、酸化インジウム-酸化ガリウム-酸化亜鉛、酸化インジウム-酸化亜鉛、酸化インジウムスズ等の金属酸化物;炭化チタン等の金属炭化物;窒化チタン、酸窒化チタン(チタンブラック)、窒化アルミニウム等の金属窒化物、等が挙げられる。金属微粒子としては、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0093】
半金属粒子としては、ホウ素、ケイ素等の半金属元素を含む粒子が挙げられる。これらの具体例としては、当該半金属元素からなる半金属単体;二酸化ケイ素等の金属酸化物;炭化ホウ素、炭化ケイ素等の金属炭化物;窒化ホウ素、窒化ケイ素等の金属窒化物、等が挙げられる。半金属粒子としては、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0094】
本開示の分散組成物において1つの実施形態では、被分散体として、金属粒子及び半金属粒子よりなる群から選択される少なくとも1種を好ましく使用できる。
【0095】
また、封止層4には、開口部4aが形成されている。ブラックマトリクス51bは、封止層4に形成された開口部4aを介して、カソード電極310cと電気的に接続されている。開口部4aは、図15の断面視においてはバンク層32の上方に形成されている。また、開口部4aは、図14の上面視においては、バンク層32に重畳して、格子状に形成されている。
【0096】
このような構成によって、カソード電極310cの見かけ上の抵抗が低減し、カソード電極310cの抵抗に起因する電圧降下を抑制することができる。これよって、カソード電極310cの電圧降下に起因する表示ムラの発生を抑制することができる。
【0097】
[製造方法]
本実施形態の表示装置12の製造方法について説明する。本実施形態の表示装置12の製造方法は、第1実施形態の表示装置1の製造方法と比べると、封止層4に開口部4aを形成する工程(図16)を含む点で異なっている。封止層4に開口部4aを形成する工程は、一般的なフォトリソグラフィ工程を用いればよい。次いで、複数のカラーフィルタ50を、複数の画素Pの夫々に対応させて形成する(図17)。
【0098】
次いで、黒色塗膜510aを形成する工程において、本実施形態で用いる分散液は、金属微粒子を含む。黒色塗膜510aを形成する工程は、前述の封止層4に開口部4aを形成する工程によって、カソード電極310cの少なくとも一部を露出させた後に分散液を塗布する(図18)。このとき、開口部4aは黒色塗膜510aによって充填される。
【0099】
そして、第1実施形態と同様に黒色塗膜510aをエッチングすることによりブラックマトリクス51bが形成され、本実施形態の表示装置12が完成する。
【0100】
<まとめ>
以上から明らかなように、第1~第5実施形態の表示装置1,10,11,12の製造方法は、基板2の一表面上に、複数の画素Pを構成する回路層3を形成する工程と、回路層3の上方に、カラーフィルタ層5,5a,5b,5cを形成する工程と、を含み、カラーフィルタ層5,5a,5b,5cを形成する工程は、互いに間隔を置いて設けられる複数のカラーフィルタ50を、複数の画素Pの夫々に対応させて形成する工程と、一表面上に黒色組成物を含む分散液を塗布することによって、複数のカラーフィルタ50の夫々を覆う黒色塗膜510,510aを形成する工程と、複数のカラーフィルタ50が露出するまで黒色塗膜510,510aをエッチングすることによって、複数のカラーフィルタ50の夫々を区画するブラックマトリクス51,51a,51bを形成する工程と、を含む。
【0101】
つまり、ブラックマトリクス51,51a,51bを形成する工程において、フォトリソグラフィ工程を用いないため、黒色組成物は、フォトリソグラフィ工程に必要な感光性を有しなくてもよい。従って、黒色組成物の材料選択の制約が緩和される。これによって、発光層310eの耐熱温度を超えない範囲で、熱によって硬化させることが可能な黒色組成物を選択することができる。
【0102】
また、上記表示装置1,10,11,12の製造方法において、カラーフィルタ層5,5a,5b,5cを形成する工程の前に、回路層3の上方に封止層4を形成する工程を更に含む。これによって、上記表示装置1,10,11,12の製造工程中又は完成後において、水分や不純物が表示装置1,10,11,12の内部に侵入し、発光層310eを劣化されることを防止することができる。
【0103】
また、上記表示装置1,10,11,12の製造方法において、エッチングは、ドライエッチングである。これによって、黒色塗膜510と、複数のカラーフィルタ50とについて、好ましいエッチングレート比が得られる。
【0104】
また、第2実施形態の表示装置10の製造方法において、カラーフィルタ層5aを形成する工程は、黒色塗膜510を形成する工程の前に、複数のカラーフィルタ50の夫々を覆う無機絶縁層52を形成する工程を更に含む。これによって、複数のカラーフィルタ50が損傷を受けたり、過剰にエッチングされたりすることを防止することができる。
【0105】
また、第3実施形態の表示装置11の製造方法において、カラーフィルタ層5bを形成する工程の後に、一表面上に、平坦化層6を形成する工程を更に含む。これによって、表示装置11の視認性が向上し、更に表示装置11の表面を保護することができる。
【0106】
また、第4実施形態の表示装置の製造方法において、複数のカラーフィルタ50と、ブラックマトリクス51とは、無機粒子を含む。これによって、無機粒子に起因する微細な凹凸によって、外光の反射方向が分散されるため、野外での視認性が向上した表示装置を製造することができる。
【0107】
また、第5実施形態の表示装置12の製造方法において、複数の画素Pの夫々は、一表面側から、アノード電極310aと、発光層310eと、カソード電極310cとの順に積層された発光素子310を有し、分散液は、金属微粒子を含み、黒色塗膜510aを形成する工程は、カソード電極310cの少なくとも一部を露出させた後に分散液を塗布する。
【0108】
つまり、ブラックマトリクス51bに導電性が付与され、更にカソード電極310cと接続される。これによって、カソード電極310cの見かけ上の抵抗が低減し、カソード電極310cの抵抗に起因する電圧降下を抑制することができる。
【0109】
また、上記表示装置1,10,11,12の製造方法において、ブラックマトリクス51,51a,51bは、膜厚が2μm以上5μm以下の場合に、光学密度が2以上3以下である。これによって、隣接する画素Pから放出される光の混色を効果的に防止することができる。
【0110】
また、上記表示装置1,10,11,12の製造方法において、エッチングは、O、CF、SF、NF、Arのうち、少なくともいずれか一を含むエッチングガスを用いる。これによって、これによって、黒色塗膜510,510aと、複数のカラーフィルタ50とについて、好ましいエッチングレート比が得られる。
【0111】
また、上記表示装置1,10,11,12の製造方法において、カラーフィルタ50は、ノボラック系型エポキシアクリレート樹脂、カルド系ラジカル硬化樹脂、シロキサン樹脂を含む。これによって、発光層301eの耐熱温度を超えない範囲で黒色組成物に対してドライエッチング耐性の高い、カラーフィルタ50を熱によって硬化させることができる。
【0112】
また、上記表示装置1,10,11,12の製造方法において、黒色組成物は、チタンブラック、カーボンブラックを含む。これによって、発光層301eの耐熱温度を超えない範囲で、黒色塗膜510,510aを熱によって硬化させることができる。
【0113】
また、上記表示装置1,10,11,12の製造方法において、封止層4は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエーテル樹脂、オキセタン樹脂から選ばれる少なくとも一種の樹脂を含む。これによって、表示装置1,10,11,12の外部の不純物が発光層310eに侵入することにより、発光素子310が劣化することを効果的に防止することができる。
【符号の説明】
【0114】
1:表示装置
2:基板
2a:表示領域
2b:周辺領域
3:回路層
30:トランジスタ層
300:選択トランジスタ
301:駆動トランジスタ
302:駆動回路
302a:走査線駆動回路
302b:映像線駆動回路
303:走査信号線
304:映像信号線
305:電源電位線
306:共通電位線
31:発光素子層
310:発光素子
310a:アノード電極
310e:発光層
310c:カソード電極
32:バンク層
32a:開口部
4:封止層
4a:開口部
40:無機絶縁層
41:有機絶縁層
42:無機絶縁層
5:カラーフィルタ層
5a:カラーフィルタ層
5b:カラーフィルタ層
50:カラーフィルタ
50R:カラーフィルタ
50G:カラーフィルタ
50B:カラーフィルタ
51:ブラックマトリクス
51a:ブラックマトリクス
510:黒色塗膜
510a:黒色塗膜
52:無機絶縁層
6:平坦化層
7:LSIチップ
8:端子部
10:表示装置
11:表示装置
12:表示装置
P:画素
PR:画素
PG:画素
PB:画素
図1
図2
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図4
図5
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