(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035304
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】受信光学系、無線光受信装置、送信光学系、無線光送信装置、及び無線光通信システム
(51)【国際特許分類】
H04B 10/11 20130101AFI20220225BHJP
【FI】
H04B10/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020139527
(22)【出願日】2020-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】橋本 優介
(72)【発明者】
【氏名】安達 宣幸
(72)【発明者】
【氏名】川口 浩司
(72)【発明者】
【氏名】望月 宏文
(72)【発明者】
【氏名】阿部 啓二郎
(72)【発明者】
【氏名】今宮 悠一
(72)【発明者】
【氏名】田口 博規
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA21
5K102AL23
5K102AL28
5K102PB01
5K102PH31
(57)【要約】
【課題】受信光学系の口径を大きくしながら、感度の低下を抑制しつつ無線光通信装置の大きさの増加を少なくする受信光学系、その受信光学系に送信する送信光学系、並びにこれらを備える無線光受送信装置及び無線光通信システムを実現する。
【解決手段】信号光を受信する受信光学系は、主鏡(L3)と副鏡(L2)とを備え、主鏡(L3)は、受光した信号光を受信光学系の対物側へ反射し、副鏡(L2)は、主鏡(L3)で反射された信号光を、受信光学系の像面側へ反射し、以下の関係式を満たす。0.15<Ds/Dm<0.80・・・(1)。但し、Dsは副鏡(L2)の光学有効径、Dmは主鏡(L3)の光学有効径である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号光を受信する受信光学系であって、
主鏡と副鏡とを備え、
前記主鏡は、受光した前記信号光を前記受信光学系の対物側へ反射し、
前記副鏡は、前記主鏡で反射された前記信号光を、前記受信光学系の像面側へ反射し、
以下の関係式を満たす、受信光学系。
0.15<Ds/Dm<0.80・・・(1)
但し、
Ds:副鏡の光学有効径
Dm:主鏡の光学有効径
【請求項2】
以下の関係式を満たす、請求項1に記載の受信光学系。
0.10<L/f<0.80・・・(2)
但し、
L:無限遠合焦時における受信光学系の光学全長
f:受信光学系の焦点距離
【請求項3】
前記主鏡よりも像面側で、前記信号光の集光レンズよりも対物側に、前記信号光の光軸と垂直方向に移動可能な負の屈折力を有する光軸調整レンズ群を備え、
下記関係式を満たす、請求項1又は請求項2に記載の受信光学系。
0.01<|f’’/f|<2.00・・・(3)
但し、
f’’:光軸調整レンズ群の焦点距離
f:受信光学系の焦点距離
【請求項4】
前記主鏡の対物側に、前記主鏡よりも有効径の大きな正の屈折力を有するレンズを備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の受信光学系。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の受信光学系を有する無線光受信装置。
【請求項6】
信号光を送信する送信光学系であって、
光軸に直交する方向の前記信号光の強度プロファイルを、リング型又はトップハット型の強度プロファイルに変換する光学素子を備える、送信光学系。
【請求項7】
前記光学素子は、回折素子、ディフューザ、非球面レンズ、アキシコンレンズのうちの少なくともいずれかである、請求項6に記載の送信光学系。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の送信光学系を有する無線光送信装置。
【請求項9】
請求項5に記載の無線光受信装置と請求項8に記載の無線光送信装置とを有する無線光通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信光学系、及びこれを備えた無線光受信装置に関する。また、本発明は、送信光学系、及びこれを備えた無線光送信装置に関する。また、本発明は、そのような無線光受信装置及び無線光送信装置を含む無線光通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
第5世代などの電波による通信技術が劇的な高速化を遂げているが、その通信速度は上限に達しつつある。これ以上の高速化には、バンド数を増やす、周波数を高くするなどの方法がある。しかしながら、無線通信に利用可能な周波数帯域は、国際的にも逼迫しており、バンド数を増やすことは困難である。また、周波数を高くすると、電波の直進性が高まる。このため、建物の内または陰では電波が回り込まず通信品質が確保できないため、沢山の基地局を設置しなくはならない。そこで、無線光通信(空間光通信とも称する)が注目されている。無線光通信においては、送信側と受信側との間の光軸合せが課題の1つとして挙げられている。光軸合せは、通信距離が大きくなればなるほど難しくなる。
【0003】
例えば、特許文献1には、光学系をコリメート光学系と分離光学系とに分離し、分離光学系を軽い力で高速駆動することが出来るようにした光空間通信装置が開示されている。これによれば、低コストで高速な光軸ずれ補正を行うことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、無線光通信において、送信側と受信側との間の光軸合せを容易にする方法として、受信側における光学系の口径を大きくする方法が考えられる。受信側における光学系の口径を大きくすることにより、受信側における光軸のずれの検出とその後の光軸合せが容易となるからである。しかし、光学系の口径を大きくすると、光学系の大きさが増加し、ひいては無線光通信装置(無線光受信装置)の大きさが増加するという問題がある。
【0006】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、受信光学系の口径を大きくしながら、感度の低下を抑制しつつ無線光通信装置の大きさの増加を少なくする受信光学系、その受信光学系に送信する送信光学系、並びにこれらを備える無線光受送信装置及び無線光通信システムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る受信光学系は、信号光を受信する受信光学系であって、主鏡と副鏡とを備え、前記主鏡は、受光した前記信号光を前記受信光学系の対物側へ反射し、前記副鏡は、前記主鏡で反射された前記信号光を、前記受信光学系の像面側へ反射し、以下の関係式を満たす。
0.15<Ds/Dm<0.80 ・・・(1)
但し、
Ds:副鏡の光学有効径
Dm:主鏡の光学有効径
【0008】
また、本発明の一態様に係る送信光学系は、信号光を送信する送信光学系であって、光軸に直交する方向の前記信号光の強度プロファイルを、リング型又はトップハット型の強度プロファイルに変換する光学素子を備える。
【0009】
また、本発明の一態様に係る無線光受信装置は、上述の受信光学系を備える。
【0010】
また、本発明の一態様に係る無線光送信装置は、上述の送信光学系を備える。
【0011】
また、本発明の一態様に係る無線光通信システムは、上述の無線光送信装置と無線光受信装置とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、受信光学系の口径を大きくしながら、感度の低下を抑制しつつ無線光通信装置の大きさの増加を少なくする受信光学系、その受信光学系に送信する送信光学系、並びにこれらを備える無線光受送信装置及び無線光通信システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例1に係る受信光学系を示す図である。
【
図2】実施例1の受信光学系の無限遠合焦時における縦収差を示す図である。
【
図3】実施例1の受信光学系の、光軸調整前と光軸調整レンズ群を用いた光軸調整後の横収差図を示す図である。
【
図4】本発明の実施例2に係る受信光学系のレンズ断面図である。
【
図5】実施例2の受信光学系の無限遠合焦時における縦収差を示す図である。
【
図6】実施例2の受信光学系の、光軸調整前と光軸調整レンズ群を用いた光軸調整後の横収差図を示す図である。
【
図7】本発明の実施例3に係る受信光学系のレンズ断面図である。
【
図8】実施例3の受信光学系の無限遠合焦時における縦収差を示す図である。
【
図9】実施例3の受信光学系の、光軸調整前と光軸調整レンズ群を用いた光軸調整後の横収差図を示す図である。
【
図10】本発明の実施例4に係る受信光学系のレンズ断面図である。
【
図11】実施例4の受信光学系の無限遠合焦時における縦収差を示す図である。
【
図12】本発明の実施例5に係る受信光学系のレンズ断面図である。
【
図13】実施例5の受信光学系の無限遠合焦時における縦収差を示す図である。
【
図14】実施例5の受信光学系の、光軸調整前と光軸調整レンズ群を用いた光軸調整後の横収差図を示す図である。
【
図15】光源から出射される信号光の強度プロファイルの一例を、横軸を光軸と直交する方向とし、縦軸を信号光の相対強度として表した図である。
【
図16】リング型の信号光の強度プロファイルの一例を示した図である。
【
図17】トップハット型の信号光の強度プロファイルの一例を示した図である。
【
図18】外周側の信号光の強度が、光軸上の信号光の強度に比べて大きいトップハット型の強度プロファイルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔無線通信システム〕
本発明の一実施形態に係る無線通信システムについて説明する。本実施形態に係る無線光通信システムは、信号光を送信する無線光送信装置と、その信号光を受信する無線光受信装置とを含んで構成される、光によって情報を送受信する通信システムである。なお、本実施形態に係る無線光通信システムにおいて用いる信号光は、波長360nm以上760nm未満の可視光であってもよいし、波長760nm以上1mm以下の赤外光であってもよい。信号光の波長が1000nm以上1650nm以下(より好ましくは1290nm以上1610nm以下)であれば、YAGレーザなど光通信用の光源を利用して信号光を生成することが容易になる。
【0015】
〔無線光受信装置の受信光学系〕
以下、本発明の一実施形態に係る無線光受信装置が備える受信光学系について説明する。なお、以下に説明する受信光学系は、本発明に係る受信光学系の一態様であって、本発明に係る受信光学系は以下の態様に限定されない。
1.光学的構成
本実施形態に係る受信光学系は、正の屈折力を有するレンズ(例えば、凸レンズ)、副鏡、主鏡、光軸調整レンズ群、及び集光レンズを含む、反射望遠鏡型の光学系である。なお、正の屈折力を有するレンズ、光軸調整レンズ群、及び集光レンズは、省略可能である。正の屈折力を有するレンズは、送信光学系から送信された信号光が最初に入射するレンズであり、正の屈折力を有するレンズにより信号光が主鏡に集められる。主鏡は第1反射鏡であり、受光した信号光を受信光学系の対物側へ反射する。副鏡は第2反射鏡であり、主鏡で反射された信号光を、受信光学系の像面側へ反射する。反射された信号光は、光軸調整レンズ群を通過し、集光レンズによって集光される。正の屈折力を有するレンズ、副鏡、主鏡、光軸調整レンズ群、集光レンズは、対物側からこの順で1つの光軸上に配置されている。
【0016】
光軸調整レンズ群は、負の屈折力を有する。光軸調整レンズ群は、主鏡よりも像面側で、集光レンズよりも対物側に配置されることが好ましい。光軸調整レンズ群は、受信光学系を通過する信号光の光軸が受信光学系の光軸と一致しない場合に、信号光の光軸を受信光学系の光軸に近づけるためのレンズ群である。光軸調整レンズ群は、信号光の光軸のずれが検出された場合、信号光の光軸が受信光学系の光軸に近づくように、受信光学系の光軸に直交する方向に駆動される。また、当該受信光学系は、光軸調整レンズ群の像面側に集光レンズを備える。集光レンズは、信号光を例えば光ファイバの入射端に合焦させるためのレンズである。
【0017】
正の屈折力を有するレンズの有効径は、主鏡の有効径よりも大きい。主鏡の対物側に、主鏡よりも有効径の大きな正の屈折力を有するレンズを設けることにより、主鏡のサイズを拡大することなく、望遠レンズの大口径化を実現することができる。
【0018】
正の屈折力を有するレンズに入射した信号光は、中央部分が副鏡で遮蔽され、残りが主鏡に到達する。主鏡に到達した信号光は、受信光学系の対物側にある副鏡に向けて反射され、副鏡で再び主鏡の方向(受信光学系の像面側)に反射される。副鏡で反射された信号光は、主鏡を通過して光軸調整レンズ群を通過し、集光レンズで光ファイバの入射端に合焦される。光ファイバの入射端に入射した信号光は、光ファイバによって受光素子(光センサ)を含む受信回路に導かれて情報信号に変換され、処理される。あるいは、光ファイバを用いずに、集光レンズの焦点位置に受光素子を配置して、信号光を直接電気信号に変換して、受信回路で処理するように構成してもよい。なお、受信回路により取得された情報は、送信回路によって信号化処理され、次の無線光受信装置に向けて送信されてもよい。なお、本明細書では、光ファイバが配置される場合には光ファイバの入射端が像面となり、光ファイバを用いず受光素子が配置される場合には受光素子が像面となる。
【0019】
正の屈折力を有するレンズに入射する信号光のうち、中央部分の信号光は、副鏡によって遮蔽される。そのため、正の屈折力を有するレンズの、副鏡で信号光が遮蔽される中央部は開口部を有していてもよい。また、主鏡の中央部分は、副鏡から反射された信号光が通過する部分であるため、主鏡は中央部分に信号光が通過する開口部を有するか、又は主鏡の中央部分は反射機能を有さない透過レンズであることが好ましい。主鏡の中央部分が反射機能を有さない透過レンズである場合は、そのレンズの屈折率を考慮した光学設計とすることができる。
【0020】
主鏡は凹面反射鏡であり、レンズの背面(入射光学系の光路の像面側の面)に反射面を有する反射鏡でもよく、又はレンズの表面(入射光学系の光路の対物側の面)に反射面を有する反射鏡でもよい。レンズの背面に反射面を有する反射鏡の場合、主鏡のレンズの屈折を光学設計に含めることができ、光学設計の選択肢が増加する。また、レンズによって反射面を保護することができる。レンズの表面に反射面を有する反射鏡(単なる凹面鏡)の場合は、レンズの屈折による収差の影響を考慮する必要がなくなる。レンズの表面に形成された反射面は、コーティング等により保護することができる。
【0021】
副鏡は凸面反射鏡であり、レンズの背面(入射光学系の光路の像面側の面)に反射面を有する反射鏡でもよく、又はレンズの表面(入射光学系の光路の対物側の面)に反射面を有する反射鏡でもよい。本実施形態においては、副鏡で反射された信号光は、後述する光軸調整レンズ群を通過し、集光レンズによって合焦される。しかし、光軸調整レンズ群は用いなくてもよい。また、集光レンズを用いずに、副鏡により直接合焦させる方式でもよい。
【0022】
また、正の屈折力を有するレンズを設けずに、主鏡のみで信号光を受光してもよい。この場合、レンズ構成が簡易化されるとともに、正の屈折力を有するレンズの屈折による収差を低減することができる。正の屈折力を有するレンズを設けない場合、主鏡と副鏡を単なる凹面鏡の反射鏡とする構成(カセグレン方式)とすれば、全体構成がより簡易になるとともに、屈折による収差の影響をなくすことができる。
【0023】
なお、本明細書中において、「レンズ群」とは、一枚以上のレンズの集合を意味する。レンズ群は、一枚の単レンズにより構成されていてもよいし、複数の単レンズにより構成されていてもよい。例えば、レンズ群は、空気間隔を介することなく複数の単レンズを一体化した接合レンズを含んでいてもよいし、一枚の単レンズと樹脂とを、空気間隔を介することなく一体化した複合レンズを含んでいてもよい。
【0024】
本実施形態における受信光学系は、信号光を、いったん主鏡により受信光学系の対物方向に反射させ、副鏡により再び受信光学系の像面方向に反射させるため、受信光学系の口径(正の屈折力を有するレンズの口径)を大きくしながら、受信光学系の大きさ、ひいては無線光通信装置の大きさの増加を少なくすることができる。そのため、例えば、所望の場所に機材を搬入設置し、光軸合せすることが容易となる。
【0025】
2.光学的特徴
本実施形態に係る受信光学系は、主鏡の光学有効径をDm、副鏡の光学有効径をDsとした場合に、
0.15<Ds/Dm<0.80・・・(1)
という関係式を満たす。なお、下限値は、0.20であることが好ましく、0.25であることがさらに好ましい。また、上限値は、0.70であることが好ましく、0.60であることがさらに好ましい。なお、これらの下限値と上限値の組み合わせは任意である。Ds/Dmの値が0.15以下である場合、主鏡が副鏡に対して相対的に小さくなるため副鏡に遮蔽される信号光が多くなり、受信光学系の感度の低下を招くため好ましくない。一方、Ds/Dmの値が0.80以上である場合、主鏡が副鏡に対して相対的に大きくなるため感度は向上するが、バックフォーカス(BF)が長くなるために受信光学系の全長が長くなり、受信光学系、ひいては無線光通信装置が大型化するため好ましくない。Ds/Dmの値を上記関係式(1)の範囲内とすることにより、受信光学系の感度の低下を抑制するとともに、受信光学系、ひいては無線光通信装置の大きさの増加を少なくすることができるという効果を奏する。なお、正の屈折力を有するレンズで信号光を受光する場合は、正の屈折力を有するレンズの有効径が主鏡の光学有効径となり、主鏡のみで信号光を受光する場合は、主鏡の有効径が主鏡の光学有効径となる。光学有効径とは、レンズ光束を通過する光軸の中心とした最大径を意味する。
【0026】
また、本実施形態においては、無限遠合焦時における受信光学系の光学全長をL、受信光学系の焦点距離(無限遠合焦時における受信光学系の焦点距離)をfとすると、
0.10<L/f<0.80・・・(2)
という関係式を満たすことが好ましい。なお、下限値は、0.20であることが好ましく、0.25であることがさらに好ましい。また、上限値は、0.70であることが好ましく、0.60であることがさらに好ましい。なお、これらの下限値と上限値の組み合わせは任意である。L/fの値が0.10以下である場合、受信光学系の小型化には好ましいが、主鏡、副鏡等からなる反射部が小さくなりすぎて受光面積が小さくなり、受信光学系の感度の低下を招くため好ましくない。一方、L/fの値が0.80以上である場合、受信光学系の全長が長くなるため、受信光学系、ひいては無線光通信装置が大型化するため好ましくない。L/fの値を上記関係式(2)の範囲内とすることにより、受信光学系の感度の低下をできるだけ抑制するとともに、受信光学系、ひいては無線光通信装置の大きさの増加をできるだけ少なくすることができるという効果を奏する。ここで受信光学系の光学全長は、最も物体側に配置されるレンズの物体側面から像面までの長さであり、もっとも像側に配置されるレンズの像側面から像面までについては空気換算長とする。
【0027】
本実施形態の受信光学系は、光軸調整レンズ群を含んでいる。光軸調整レンズ群は、副鏡よりも像面側で、集光レンズよりも対物側に設けられており、信号光の光軸と垂直方向に移動可能である。光軸調整レンズ群は、負の屈折力を有する。
【0028】
無線光受信装置は、信号光を出射する無線光送信装置から遠く離れているため、無線光送信装置からの信号光の出射方向がわずかにずれても、無線光受信装置では大きくずれる。光軸調整レンズ群は、ずれた信号光の光軸を受信光学系の光軸に近づけるためのレンズ群である。
【0029】
光軸調整レンズ群は、例えば以下のように制御される。まず、受信光学系の任意の位置で信号光をビームスプリッタで分岐させる。分岐させた信号光を、複数のフォトダイオード等の光センサを備えた位置検出器で検出する。どの光センサでどの程度の信号光が検出されたかを解析することにより、信号光の光軸がどの方向にどの程度ずれているかを決定することができる。この情報に基づいて、信号光の光軸を受信光学系の光軸に近づけるように、アクチュエータを用いて光軸に直交する2次元方向に光軸調整レンズ群を駆動させる。このように制御することにより、信号光の光軸を受信光学系の光軸に近づけることができる。
【0030】
あるいは、受信光学系又は無線光受信装置の任意の位置に、加速度センサを配設してもよい。そして、加速度センサで検出された加速度の大きさと方向から受信光学系の移動量を計算し、信号光の光軸を受信光学系の光軸に近づけるように、アクチュエータを用いて光軸調整レンズ群を駆動させてもよい。信号光の光軸を受信光学系の光軸に近づけることにより、光ファイバの入射端で受信できる光量が増加するため、受信感度を向上させることができる。
【0031】
本実施形態においては、光軸調整レンズ群の焦点距離をf’’、受信光学系の焦点距離をfとすると、
0.01<|f’’/f|<2.00・・・(3)
という関係式を満たすことが好ましい。なお、下限値は、0.20であることが好ましく、0.25であることがさらに好ましい。また、上限値は、1.50であることが好ましく、1.20であることがさらに好ましい。なお、これらの下限値と上限値の組み合わせは任意である。
【0032】
|f’’/f|の値が0.01以下である場合、光軸調整に必要なストロークを小さくできるという点で好ましいが、バックフォーカスが長くなりすぎて受信光学系の全長が大きくなるために好ましくない。一方、|f’’/f|の値が2.00以上である場合、受信光学系の全長を小さくする観点では好ましいが、光軸調整ストロークが大きくなり過ぎ、光軸調整レンズ群を駆動するためのアクチュエータの大型化を招くため、好ましくない。|f’’/f|の値を上記関係式(3)の範囲内とすることにより、光軸調整に必要なストロークをできるだけ小さくすることができるとともに、受信光学系、ひいては無線光通信装置の大きさの増加をできるだけ少なくすることができるという効果を奏する。
【0033】
〔受信光学系の実施例〕
以下、本発明の一実施形態に係る無線光受信装置が備える受信光学系の実施例について説明する。
【0034】
[実施例1]
次に、本発明の実施例1について以下に説明する。
図1は、実施例1に係る受信光学系のレンズ断面図である。実施例1の受信光学系は、対物側から順に、正の屈折力を有するレンズL1、副鏡(反射鏡)L2、主鏡(反射鏡)L3、光軸調整レンズ群L4、集光レンズL5を有する。副鏡L2と主鏡L3との間には開口絞りSが配置されている。集光レンズL5よりも像面側には、カバーガラスCGが配置されている。表1は、実施例1の受信光学系の面データの表である。なお、以下の各表において、長さの単位は全て「mm」であり、画角の単位は全て「°」である。
【0035】
表1において、「No.」は対物側から数えたレンズ面の順番、「R」はレンズ面の曲率半径、「D」はレンズ面の光軸上の間隔、「Nd」はd線(波長λ=587.56nm)に対する屈折率、「ABV」はd線に対するアッベ数を示している。また、「No.」中の「STOP」は開口絞りを表している。ここでいう開口絞りは、当該受信光学系の光束径を規定する開口絞り、すなわち当該受信光学系のFnoを規定する開口絞りをいう。
【0036】
[表1]
No. R D Nd ABV
1 295.4252 9.0000 1.48749 70.44
2 1091.6854 79.0000 1.00000
3 -224.1973 11.0000 1.58913 61.25
4 -278.7805 -11.0000 -1.58913 61.25
5 -224.1973 -71.6384 -1.00000
6 -344.0568 -3.0000 -1.48749 70.44
7 -186.3418 3.0000 1.48749 70.44
8 -344.0568 0.0000 1.00000
9STOP 0.0000 71.6385 1.00000
10 -224.1973 11.0000 1.58913 61.25
11 -278.7805 1.3000 1.00000
12 1404.5415 3.0000 1.51680 64.20
13 -170.9826 1.4500 1.00000
14 1639.9052 2.6996 1.75520 27.53
15 -36.3014 0.0000 1.00000
16 -36.3014 1.2000 1.74400 44.72
17 34.1037 31.1345 1.00000
18 399.9891 3.2161 1.48749 70.44
19 -63.5679 42.0000 1.00000
20 0.0000 2.0000 1.51633 64.14
21 0.0000 0.9999 1.00000
【0037】
表2は、実施例1の受信光学系の諸元表を示す。当該諸元表では、当該諸元表中、「F」は、無限遠合焦時における受信光学系の焦点距離、「Fno」はFナンバー、「W」は半画角、Dmは主鏡の光学有効径、Dsは副鏡の光学有効径、Lは受信光学系の光学全長(空気換算長)、f’’は光軸調整レンズ群の焦点距離をそれぞれ表す。
【0038】
[表2]
F 670.00
Fno 7.27(実効FNO)
W 1.2139
Dm 92.41
Ds 32.38
L 187.32
f’’ -47.6
【0039】
表2から、実施例1における関係式(1)から(3)の数値は次のように計算される。即ち、関係式(1):Ds/Dm=0.35、関係式(2):L/f=0.280、関係式(3):|f’’/f|=0.07である。
【0040】
また、
図2は、実施例1の受信光学系の無限遠合焦時における縦収差を示す図である。図面に向かって左側から順に、「LOMGITUDINAL SPHERICAL ABER.」は球面収差(mm)を、「ASTIGMATIC FIELD CURVES」は非点収差(mm)を、「DISTORTION」は歪曲収差(%)をそれぞれ示す。
【0041】
球面収差を表す図では、縦軸を開放F値との割合とし、横軸をデフォーカス(mm)としている。球面収差を表す図では、実線がd線(波長λ=587.56nm)、点線がC線(波長λ=656.28nm)における縦収差を示している。
【0042】
非点収差を表す図では、縦軸を半画角(°)、横軸をデフォーカス(mm)としている。非点収差を表す図では、実線がd線に対するサジタル像面(S)、点線がd線に対するメリジオナル像面(T)を示す。
【0043】
歪曲収差を表す図では、縦軸を半画角(°)、横軸を%としている。
【0044】
図3は、実施例1の受信光学系の、光軸調整前と光軸調整レンズ群を用いた光軸調整後の横収差を示す図である。図中、「RELATIVE FIELD HEIGHT」は画角の割合を示し、上段の「(0.371)
0」は0.3割の横収差であり、下段の「(0.000)
0」は軸上の横収差である。また、「Y-FAN」はタンジェンシャル方向であり、縦軸は収差量、横軸は瞳の割合である。「X-FAN」はサジタル方向であり、縦軸は収差量、横軸は瞳の割合である。また、実線はd線を示し、点線はg線を示す。
【0045】
[実施例2]
次に、本発明の実施例2について以下に説明する。
図4は、実施例2に係る受信光学系のレンズ断面図である。実施例2の受信光学系は、対物側から順に、正の屈折力を有するレンズL1、副鏡(反射鏡)L2、主鏡(反射鏡)L3、光軸調整レンズ群L4を有する。副鏡L2と主鏡L3との間には開口絞りSが配置されている。光軸調整レンズ群L4よりも像面側には、カバーガラスCGが配置されている。表3は、実施例2の受信光学系の面データの表である。また、表4は、実施例2の受信光学系の諸元表を示す。表3、表4の符号の意味は、表1、表2で説明したとおりである。
【0046】
[表3]
No. R D Nd ABV
1 265.2704 9.0000 1.48749 70.44
2 737.1031 79.0000 1.00000
3 -225.1211 11.0000 1.58913 61.25
4 -283.0904 -11.0000 -1.58913 61.25
5 -225.1211 -72.9357 -1.00000
6 -334.2517 -3.0000 -1.48749 70.44
7 -179.8273 3.0000 1.48749 70.44
8 -334.2517 0.0000 1.00000
9STOP 0.0000 72.9358 1.00000
10 -225.1211 11.0000 1.58913 61.25
11 -283.0904 22.7350 1.00000
12 45.1681 2.5010 1.75520 27.53
13 382.9183 1.2000 1.74400 44.72
14 29.2822 59.5639 1.00000
15 0 2.0000 1.51633 64.14
16 0 1.0001 1.00000
【0047】
[表4]
F 670.00
Fno 7.37 (実効FNO)
W 1.2135
Dm 92.54
Ds 32.87
L 187.32
f’’ -127.9
【0048】
表4から、実施例2における関係式(1)から(3)の数値は次のように計算される。即ち、関係式(1):Ds/Dm=0.36、関係式(2):L/f=0.280、関係式(3):|f’’/f|=0.19である。
【0049】
図5は、実施例2の受信光学系の無限遠合焦時における縦収差を示す図である。図中の符号の意味は、
図2で説明したとおりである。
【0050】
図6は、実施例2の受信光学系の、光軸調整前と光軸調整レンズ群を用いた光軸調整後の横収差図を示す図である。図中の符号の意味は、
図3で説明したとおりである。
【0051】
[実施例3]
次に、本発明の実施例3について以下に説明する。
図7は、実施例3に係る受信光学系のレンズ断面図である。実施例3の受信光学系は、対物側から順に、正の屈折力を有するレンズL1、副鏡(反射鏡)L2、主鏡(反射鏡)L3を有する。副鏡L2と主鏡L3との間には開口絞りSが配置されている。主鏡L3よりも像面側には、カバーガラスCGが配置されている。表5は、実施例3の受信光学系の面データの表である。また、表6は、実施例3の受信光学系の諸元表を示す。表5、表6の符号の意味は、表1、表2で説明したとおりである。なお、実施例3では、副鏡L2が光軸調整レンズを兼ねている。副鏡L2が光軸調整レンズを兼ねることにより、専用の光軸調整レンズ群を備えることなく、光軸調整を行うことができる。
【0052】
[表5]
No. R D Nd ABV
1 245.4700 9.0000 1.48749 70.44
2 682.2044 96.9798 1.00000
3 -229.7706 11.0000 1.58913 61.25
4 -315.8073 -11.0000 -1.58913 61.25
5 -229.7706 -90.9797 -1.00000
6 -205.7677 -3.0000 -1.48749 70.44
7 -150.9993 3.0000 1.48749 70.44
8 -205.7677 0.0000 1.00000
9STOP 0.0000 90.9797 1.00000
10 -229.7706 11.0000 1.58913 61.25
11 -315.8073 89.1660 1.00000
12 0.0000 2.0000 1.51633 64.14
13 0.0000 0.9997 1.00000
【0053】
[表6]
F 700.00
Fno 7.13 (実効FNO)
W 1.1879
Dm 96.09
Ds 29.18
L 208.46
f’’ -
【0054】
表6から、実施例3における関係式(1)及び(2)の数値は次のように計算される。即ち、関係式(1):Ds/Dm=0.30、関係式(2):L/f=0.298である。なお、実施例3においては、光軸調整レンズは凸面鏡であるため、焦点距離f’’と関係式(3)は算出していない。
【0055】
図8は、実施例3の受信光学系の無限遠合焦時における縦収差を示す図である。図中の符号の意味は、
図2で説明したとおりである。
【0056】
図9は、実施例3の受信光学系の、光軸調整前と光軸調整レンズ(副鏡L2)を用いた光軸調整後の横収差図を示す図である。図中の符号の意味は、
図3で説明したとおりである。
【0057】
[実施例4]
次に、本発明の実施例4について以下に説明する。
図10は、実施例4に係る受信光学系のレンズ断面図である。実施例4の受信光学系は、対物側から順に、副鏡(反射鏡)L2、主鏡(反射鏡)L3を有する。副鏡L2と主鏡L3の間には開口絞りSが配置されている。表7は、実施例4の受信光学系の面データの表である。また、表8は、実施例4の受信光学系の諸元表を示す。表7、表8の符号の意味は、表1、表2で説明したとおりである。
【0058】
[表7]
No. R D Nd ABV
1 0.0000 308.3333 1.00000
2STOP -925.0000 -296.7708 -1.00000
3 -616.6667 358.3334 1.00000
4 0.0000 0.0000 1.00000
【0059】
[表8]
F 1000.00000
Fno 6.12
W 2.00000
Dm 185.00
Ds 86.94
L 369.90
f’’ -67.6
【0060】
表8から、実施例4における関係式(1)から(3)の数値は次のように計算される。即ち、関係式(1):Ds/Dm=0.47、関係式(2):L/f=0.370、関係式(3):|f’’/f|=0.07である。
【0061】
図11は、実施例4の受信光学系の無限遠合焦時における縦収差を示す図である。図中の符号の意味は、
図2で説明したとおりである。
【0062】
[実施例5]
次に、本発明の実施例5について以下に説明する。
図12は、実施例5に係る受信光学系のレンズ断面図である。実施例5の受信光学系は、対物側から順に、副鏡(反射鏡)L2、主鏡(反射鏡)L3、光軸調整レンズ群L4を有する。主鏡L3と光軸調整レンズ群L4の間には開口絞りSが配置されている。表9は、実施例5の受信光学系の面データの表である。また、表10は、実施例5の受信光学系の諸元表を示す。表9、表10の符号の意味は、表1、表2で説明したとおりである。
【0063】
[表9]
No. R D Nd ABV
1 0.0000 300.0000 1.00000
2 -650.0000 -210.0000 -1.00000
3STOP -450.0000 220.0000 1.00000
4 -100.0000 4.0000 1.51680 64.17
5 -140.0000 13.2133 1.00000
6 0.00000 0.0000 1.00000
【0064】
[表10]
F 686.3607
Fno 5.71(実効FNO)
W 2.0000
Dm 172.36
Ds 53.33
L 327.21
f’’ -701.1
【0065】
表10から、実施例5における関係式(1)から(3)の数値は次のように計算される。即ち、関係式(1):Ds/Dm=0.31、関係式(2):L/f=0.477、関係式(3):|f’’/f|=1.02である。
【0066】
図13は、実施例5の受信光学系の無限遠合焦時における縦収差を示す図である。図中の符号の意味は、
図2で説明したとおりである。
【0067】
図14は、実施例5の受信光学系の、光軸調整前と光軸調整レンズ群を用いた光軸調整後の横収差図を示す図である。図中の符号の意味は、
図3で説明したとおりである。
【0068】
〔無線光送信装置の送信光学系〕
次に、本発明の一実施形態に係る無線光送信装置が備える送信光学系について説明する。なお、以下に説明する送信光学系は、本発明に係る送信光学系の一態様であって、本発明に係る送信光学系は以下の態様に限定されない。
【0069】
1.光学的構成
本実施形態に係る送信光学系は、無線光通信に用いる信号光を受信光学系に送信する送信光学系である。送信光学系は、信号光を生成する光源と、光学素子と、を備える。光学素子は、送信光学系内に配置され、信号光における光軸に直交する方向の強度プロファイルを変換する。具体的には、光学素子は、光軸に直交する方向の信号光の強度プロファイルを、リング型又はトップハット型の強度プロファイルに変換する。
【0070】
光源から出射される信号光の強度プロファイルは、
図15に示すように、光軸Lに直交する方向において、光軸L部分が最も強度が強く、外周方向に向かって次第に強度が小さくなる、いわゆるガウシアン分布となっている。
図15は、横軸が光軸Lと直交する方向を表し、縦軸は信号光の相対強度を表す。以降の図も同様である。光学素子は、このような信号光の強度プロファイルを、例えば、
図16に示すように、信号光の中心部よりも外周側の強度が強いリング型の強度プロファイルに変換する。又は光学素子は、
図17に示すように、強度分布が全体的になだらかなトップハット型の強度プロファイルに変換する。
【0071】
言い換えれば、光学素子は、例えば信号光における光軸Lに直交する方向の強度プロファイルを、光軸L上よりも外周側のほうに強度の最大値が存在する強度プロファイルに変換することが好ましい。さらには、光軸L付近の信号光の強度が外周側の信号光の強度に比べて10%以下であるリング型であることが好ましい。
【0072】
代替的に、光学素子は、例えば強度分布が全体的になだらか(略均一)なトップハット状の強度プロファイルに変換することが好ましい。なお、強度分布が
図17に示すようにフラットではなく、高低差があってもよい。例えば、
図18に示すように、外周側の信号光の強度が、光軸L上の信号光の強度に比べて10%以上大きいことが好ましい。逆に、外周側の信号光の強度が、光軸L上の信号光の強度に比べて10%程度小さくてもよい(図示せず)。
【0073】
2.光学的特徴
本実施形態に係る送信光学系は、信号光における光軸に直交する方向の強度プロファイルを変換する光学素子を備える。強度プロファイルを変換した信号光を送信することにより、ガウシアン分布の強度プロファイルに比べて、送信光学系から送信した信号光を受信する受信光学系において、副鏡で遮蔽されて失われる信号光の損失エネルギー量を低減することができ、より高い効率で信号光を受信することができる。
【0074】
信号光の強度プロファイルを変換する機能を有する光学素子としては、例えば、回折素子(DOE,Diffractive Optical Element)、ディフューザ、非球面レンズ、アキシコンレンズ等がある。これらの配置としては、送信光学系では主鏡よりも光源側に、ディフューザ、アキシコンレンズがあることが好ましい。また、受信光学系でもこのような光学素子を用いてもよい。受信光学系では主鏡よりも受信側に、ディフューザ、アキシコンレンズがあることが好ましい。また、DOEや非球面レンズは光学系の中にあることが好ましい。
【0075】
以上説明したように、上記の実施形態に係る受信光学系は、口径を大きくしながら、感度の低下を抑制しつつ無線光通信装置の大きさの増加を少なくすることができる。また、上記の実施形態に係る送信光学系は、受信光学系において高い効率で受信できる信号光を送信することができる。このような構成を有する無線光受信装置と無線光送信装置を備える無線光通信システムは、所望の場所に無線光受信装置と無線光送信装置を搬入・設置して光軸合せをすることが容易となる。
【0076】
〔まとめ〕
本実施形態に係る受信光学系は、信号光を受信する受信光学系であって、主鏡と副鏡とを備え、前記主鏡は、受光した前記信号光を前記受信光学系の対物側へ反射し、前記副鏡は、前記主鏡で反射された前記信号光を、前記受信光学系の像面側へ反射し、以下の関係式を満たす。
0.15<Ds/Dm<0.80・・・(1)
但し、
Ds:副鏡の光学有効径
Dm:主鏡の光学有効径
【0077】
このような構成により、受信光学系の感度の低下をできるだけ抑制するとともに、受信光学系、ひいては無線光通信装置の大きさの増加をできるだけ少なくすることができるという効果が得られる。
【0078】
また、本実施形態に係る受信光学系は、以下の関係式を満たす。
0.10<L/f<0.80・・・(2)
但し、
L:無限遠合焦時における受信光学系の光学全長
f:受信光学系の焦点距離
【0079】
このような構成により、受信光学系の感度の低下をできるだけ抑制するとともに、受信光学系、ひいては無線光通信装置の大きさの増加をできるだけ少なくすることができるという効果が得られる。
【0080】
また、本実施形態に係る受信光学系は、前記主鏡よりも像面側で、前記信号光の集光レンズよりも対物側に、前記信号光の光軸と垂直方向に移動可能な負の屈折力を有する光軸調整レンズ群を備え、下記関係式を満たす。
0.01<|f’’/f|<2.00・・・(3)
但し、
f’’:光軸調整レンズ群の焦点距離
f:受信光学系の焦点距離
【0081】
このような構成により、光軸調整に必要なストロークをできるだけ小さくすることができるとともに、受信光学系、ひいては無線光通信装置の大きさの増加をできるだけ少なくすることができるという効果が得られる。
【0082】
また、本実施形態に係る受信光学系は、前記主鏡の対物側に、前記主鏡よりも有効径の大きな正の屈折力を有するレンズを備える。
【0083】
このような構成により、主鏡のサイズを拡大することなく、望遠レンズの大口径化を実現することができる。
【0084】
本実施形態に係る無線光受信装置は、上述の受信光学系を有する。
【0085】
このような構成により、受信光学系の口径を大きくしながら、無線光受信装置の大きさの増加を少なくすることができる。
【0086】
また、本実施形態に係る送信光学系は、信号光を送信する送信光学系であって、光軸に直交する方向の信号光の強度プロファイルを、リング型又はトップハット型の強度プロファイルに変換する光学素子を備える。
【0087】
このような構成により、ガウシアン分布の強度プロファイルに比べて、送信光学系から送信した信号光を受信する受信光学系において、副鏡で遮蔽されて失われる信号光の損失エネルギー量を低減することができ、より高い効率で信号光を受信することができる。
【0088】
また、本実施形態に係る送信光学系の前記光学素子は、回折素子、ディフューザ、非球面レンズ、アキシコンレンズのうちの少なくともいずれかである。
【0089】
このような光学素子を用いることにより、光軸に直交する方向の信号光の強度プロファイルを、リング型又はトップハット型の強度プロファイルに変換することができる。
【0090】
本実施形態に係る無線光送信装置は、上述の送信光学系を有する。
【0091】
このような構成により、送信光学系の口径を大きくしながら、無線光送信装置の大きさの増加を少なくすることができる。
【0092】
本実施形態に係る無線光通信システムは、上述の無線光受信装置と上述の無線光送信装置とを有する。
【0093】
このような構成により、受信光学系の口径を大きくしながら、無線光通信装置の大きさの増加を少なくする無線光通信システムを実現することができる。また、このような無線光通信システムは、所望の場所に搬入・設置して光軸合せをすることが容易となる。
【0094】
〔付記事項〕
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、上述した実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる他の実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0095】
L1 正の屈折力を有するレンズ
L2 副鏡(反射鏡)
L3 主鏡(反射鏡)
L4 光軸調整レンズ群
L5 集光レンズ
S 開口絞り
CG カバーガラス