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特開2022-35369マクロモノマー、及び当該マクロモノマーを用いた重合体
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  • 特開-マクロモノマー、及び当該マクロモノマーを用いた重合体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035369
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】マクロモノマー、及び当該マクロモノマーを用いた重合体
(51)【国際特許分類】
   C08C 19/28 20060101AFI20220225BHJP
   C08F 290/04 20060101ALI20220225BHJP
   C08F 299/00 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
C08C19/28
C08F290/04
C08F299/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020139634
(22)【出願日】2020-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】500199479
【氏名又は名称】PSジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141601
【弁理士】
【氏名又は名称】貴志 浩充
(72)【発明者】
【氏名】上宮田 源
【テーマコード(参考)】
4J100
4J127
【Fターム(参考)】
4J100AS03P
4J100BA15H
4J100BA16H
4J100CA01
4J100CA27
4J100CA31
4J100FA03
4J100FA19
4J100HA35
4J100HA57
4J100HA62
4J100HC30
4J100JA03
4J100JA46
4J127AA01
4J127BB031
4J127BB111
4J127BB151
4J127BB251
4J127BC021
4J127BC051
4J127BC151
4J127BD041
4J127BD071
4J127BE151
4J127BE15X
4J127BE391
4J127BE39Y
4J127BF141
4J127BF14X
4J127BG161
4J127BG16Y
4J127BG171
4J127BG17Y
4J127CB061
4J127FA14
4J127FA41
(57)【要約】      (修正有)
【課題】芳香族ビニル化合物と共重合性が高いビニル基を有する新規なマクロモノマーを提供する。
【解決手段】2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を末端部に少なくとも1種有し、付加重合性単量体単位を主鎖として含むマクロモノマー。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を末端部に少なくとも1種有し、付加重合性単量体単位を主鎖として含むマクロモノマー。
【請求項2】
2~6価の結合手を有する有機基と、
前記有機基の結合手と直接結合する下記一般式(I)
【化1】
(上記一般式(I)中、Lは、単結合又は炭素原子数1~10のアルキレン基(但し、当該アルキレン基中の-CH2-は、隣り合わないよう、-O-、-S-、又は-NH-に置換されてもよく、さらに当該アルキレン基中の-CH2-CH2-は、-CH=CH-に置換されてもよい)を表し、
Mは、付加重合性単量体単位を表し、
Zは、単結合又は炭素原子数1~10のアルキレン基(但し、当該アルキレン基中の-CH2-は、-O-、-S-、-NH-に置換されてもよい)を表し、
nは、重合度を表し、
Xは、2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を表す。一般式(I)中の*は、前記有機基に含まれる原子との結合を表す。)
で表される基を最大6種有し、かつ前記2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を1分子中に1種以上有する、請求項1に記載のマクロモノマー。
【請求項3】
前記有機基は、芳香族環を有するメソゲン基又は炭素原子数3~15以下のアルキレン基(但し、当該アルキレン基中の-CH2-CH2-は、-CH=CH-に置換されてもよい)を表す、請求項1又は2に記載のマクロモノマー。
【請求項4】
下記一般式(1)で表される、請求項1~3のいずれか1項に記載のマクロモノマー。
【化2】
(上記一般式(1)中、
1は、2~6価の結合手を有する有機基を表し、
Lは、単結合又は炭素原子数1~10のアルキレン基(但し、当該アルキレン基中の-CH2-は、隣り合わないよう、-O-、-S-、又は-NH-に置換されてもよく、さらに当該アルキレン基中の-CH2-CH2-は、-CH=CH-に置換されてもよい)を表し、
Mは、付加重合性単量体単位を表し、
Zは、単結合又は炭素原子数1~10のアルキレン基(但し、当該アルキレン基中の-CH2-は、-O-、-S-、-NH-に置換されてもよい)を表し、
nは、0~10000の整数を表し、
Xは、水素原子又は2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を表わし、かつk個存在するXのうち少なくとも1つのXが前記2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基であり、
kは、2以上6以下の整数を表す。なお、一般式(1)中に複数存在する、L、M、Z及びXはそれぞれ独立して、互いに同一又は異なっていてもよい。)
【請求項5】
以下の一般式(2)で表される、請求項1~4のいずれか1項に記載のマクロモノマー。
【化3】
(上記一般式(2)中、B2は、2価の芳香族環を有するメソゲン基又は炭素原子数3~15以下のアルキレン基(但し、当該アルキレン基中の-CH2-CH2-は、-CH=CH-に置換されてもよい)を表し、
1及びL2はそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキレン基(但し、当該アルキレン基中の-CH2-は、-O-、-S-、-NH-に置換されてもよい)を表し、
1、M2はそれぞれ独立して、付加重合性単量体単位を表し、Z1~Z2はそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキレン基(但し、当該アルキレン基中の-CH2-は、-O-、-S-、-NH-に置換されてもよい)を表し、
1及びn2はそれぞれ独立して、1~10000の整数を表し、
1及びX2はそれぞれ独立して、水素原子又は2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を表わし、かつX1~X2のうち少なくとも1つが前記2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マクロモノマー、及び当該マクロモノマーを用いた重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
家電、事務機製品、雑貨、住宅設備等の成形材料又は食品包装材料に多く利用されている、ポリスチレン、ポリオレフィン及び(メタ)アクリル系ポリマー等は、ビニル系単量体を原料として、必要により種々の単量体と共重合させることにより、付加重合(連鎖重合)を用いて工業的に生産されているのが一般的である。このような付加重合は、カチオン重合、アニオン重合又はラジカル重合等と、その生長末端の属性とによって分類されており、特定の化学構造及びその性質の生長末端が単量体と生長反応を繰り返して重合が進行する。
【0003】
付加重合に関する技術としては、特許文献1及び2が挙げられる。当該特許文献1には、多官能ビニル共重合体とスチレンとを共重合した高分岐型超高分子量共重合体を含有させることにより、溶融張力と溶融延伸性のバランスに優れた高分岐型スチレン系樹脂組成物が開示されている。また、特許文献2には、所定の共役ジビニル化合物と所定のモノビニル化合物とを適切な含有比で構成するスチレン系共重合体が開示されており、これにより、成形加工性に優れ、かつゲル状物質の少ないスチレン系共重合体を提供できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-100432公報
【特許文献2】特開2017-218575公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている多官能ビニル共重合体中に存在するビニル基は芳香族ビニル基であり、分岐型ポリスチレンの製造でスチレンとの共重合の際に分岐ポリスチレンの生成速度が遅く生産性が低いという欠点があった。また、特許文献2に記載の共役ジビニル化合物中の共役ビニル基が(メタ)アクリレート基であるため、共重合性にさらなる改良の余地があることが分かった。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を解決するものであり、反応速度が速く、共重合にて分岐構造を効率的に付与することができ、分岐ポリマーの生産性を向上させる新規なマクロモノマーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を進めた結果、2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を末端部に少なくとも1種有し、付加重合性単量体単位を主鎖として含むマクロモノマーにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は下記に示すとおりである。
【0008】
[1]本実施形態は、2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を末端部に少なくとも1種有し、付加重合性単量体単位を主鎖として含むマクロモノマーである。
【0009】
[2]本実施形態において、2~6価の結合手を有する有機基と、
前記有機基の結合手と直接結合する下記一般式(I)
【化1】
(上記一般式(I)中、Lは、単結合又は炭素原子数1~10のアルキレン基(但し、当該アルキレン基中の-CH2-は隣り合わないよう、-O-、-S-、又は-NH-に置換されてもよく、さらに当該アルキレン基中の-CH2-CH2-は、-CH=CH-に置換されてもよい)を表し、
Mは、付加重合性単量体単位を表し、
Zは、単結合又は炭素原子数1~10のアルキレン基(但し、当該アルキレン基中の-CH2-は、-O-、-S-、-NH-に置換されてもよい)を表し、
nは、重合度を表し、
Xは、水素原子又は2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を表す。一般式(I)中の*は、前記有機基に含まれる原子との結合を表す。)
で表される基を最大6種有することが好ましい。
【0010】
[3]本実施形態において、前記有機基は、2~6価の芳香族環を有するメソゲン基又は炭素原子数3~15以下のアルキレン基(但し、当該アルキレン基中の-CH2-CH2-は、-CH=CH-に置換されてもよい)を表すことが好ましい。
【0011】
[4]本実施形態におけるマクロモノマーは、下記一般式(1)で表されることが好ましい。
【化2】
(上記一般式(1)中、
1は、2~6価の結合手を有する有機基を表し、
Lは、単結合又は炭素原子数1~10のアルキレン基(但し、当該アルキレン基中の-CH2-は、隣り合わないよう、-O-、-S-、又は-NH-に置換されてもよく、さらに当該アルキレン基中の-CH2-CH2-は、-CH=CH-に置換されてもよい)を表し、
Mは、付加重合性単量体単位を表し、
Zは、単結合又は炭素原子数1~10のアルキレン基(但し、当該アルキレン基中の-CH2-は、-O-、-S-、-NH-に置換されてもよい)を表し、
nは、0~10000の整数を表し、
Xは、水素原子又は2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を表わし、かつk個存在するXのうち少なくとも1種のXが前記2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基であり、
kは、2以上6以下の整数を表す。なお、一般式(1)中に複数存在する、L、M、Z及びXはそれぞれ独立して、互いに同一又は異なっていてもよい。)
【0012】
[5]本実施形態におけるマクロモノマーは、以下の一般式(2)で表されることが好ましい。
【化3】
(上記一般式(2)中、B2は、炭素原子数3~15以下のアルキレン基(但し、当該アルキレン基中の-CH2-CH2-は、-CH=CH-に置換されてもよい)を表し、
1及びL2はそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキレン基(但し、当該アルキレン基中の-CH2-は、-O-、-S-、-NH-に置換されてもよい)を表し、
1、M2はそれぞれ独立して、付加重合性単量体単位を表し、Z1~Z2はそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキレン基(但し、当該アルキレン基中の-CH2-は、-O-、-S-、-NH-に置換されてもよい)を表し、
1及びn2はそれぞれ独立して、1~10000の整数を表し、
1及びX2はそれぞれ独立して、水素原子又は2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を表わし、かつX1~X2のうち少なくとも1つが前記2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を表す。)
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、共重合にて分岐構造を効率的に付与することができ、分岐ポリマーの生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施例及び比較例における反応時間とMzとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0016】
本発明は、2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を末端部に少なくとも1種有し、付加重合性単量体単位を主鎖として含むマクロモノマーである。
2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を末端部に有することにより、ビニル系単量体、特にスチレン系単量体単位との共重合が進みやすい。特に、分岐ポリスチレンなどの分岐ポリマーを一般的に製造する場合、マクロモノマーをスチレンなどの芳香族ビニルモノマー中に少量添加し共重合を行うが、少量のマクロモノマーでも共重合を行うことができるようにするためには、特にスチレンの場合、交互共重合性の高い官能基を有することが有利となる。本明細書における共重合性が進みやすいとうことは、少量のマクロモノマーの添加の場合でも共重合が進行することをいう。
【0017】
本明細書における「付加重合性単量体単位」とは、不飽和結合を開裂して重合する単量体単位をいい、例えばラジカル、アニオン重合性単量体単位を含む。また、本明細書における「単量体単位」とは、単量体を重合して得られる高分子中の繰り返し単位を意味し、例えば、「スチレン系単量体単位」とは、スチレン系単量体が重合反応又は架橋反応により、当該単量体中の不飽和二重結合が単結合になった構造単位をいう。付加重合性単量体の具体例としては、ブタジエン、イソプレン、ミルセン、ファルネセン等の共役ジエン系単量体;スチレン、αメチルスチレン、パラメチルスチレン等のスチレン系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系単量体;が好ましい。また、付加重合性単量体は、これらのうち2種以上の単量体から構成されていてもよい。
【0018】
本明細書における「2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基」とは、炭素―炭素不飽和結合基を構成する炭素原子に、誘起効果又は共鳴効果により負の電荷を帯びやすい置換基が共有結合した基をいう。当該置換基としては、例えばエステル基、アミド基、カルボキシル基、ケトン基、シアノ基又はハロゲン原子が挙げられる。
【0019】
本発明において、2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基の具体例としては、例えばマレイン酸ジエステル、マレイン酸モノエステル、フマル酸ジエステル、フマル酸モノエステル、マレイン酸ジアミド、マレイン酸モノアミド、マレイミドが好ましい。スチレン系単量体との反応性の高さの観点で、マレイン酸ジエステル又はマレイン酸モノエステルが好ましい。また、当該不飽和結合基は、E体又はZ体のいずれであってもよい。
本発明において、2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基としては、以下の一般式(i)で表される不飽和結合基が好ましい。
【化4】
【0020】
(上記一般式(i)中、W1は、単結合、アミノ基、-NHRa基、-RaO基を表し(Raは、水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基を表す。)、W2は、-NH-、-NRb-、-N=、-O-(Rbqを表わす(Rbは炭素原子数1~10のアルキレン基を表し、qは0以上1以下の整数を表す。)。但し、W1が単結合の場合は、W2が-N=であり、かつW1とW2とが結合してマレイミドを形成してもよい。一般式(i)中の*は、主鎖である分子鎖との結合を表す。)
上記一般式(i)中、Raは、水素原子、メチル基、エチル基又は直鎖状若しくは分岐状プロピル基が好ましい。
【0021】
本発明において、2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基の好適な例としては、以下の式(i-1)~式(i-17)が挙げられ、なかでもビニル系単量体との反応性の高さの観点から(i-1)~(i-9)が好ましい。
【化5】
【化6】
【0022】
本明細書における「末端」とは、分子鎖の最も端となる位置とすることができるが、2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基は末端付近(又は末端近傍)に存在すれば、反応するために必要な、不飽和結合基とポリマーラジカルとの衝突の頻度が高くなるため、ビニル系単量体と効果的な反応性を有する。そのため、本実施形態における「末端」とは、分子鎖中であって、かつ当該分子鎖の最も端となる位置(原子)を含む、ある程度の範囲となる部分(端部分)とすることもできる(換言すれば、2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を末端付近に位置させることができる)。当該ある程度の範囲となる部分とは、限定されるものではないが、本マクロモノマーの中心から伸びる分子鎖の伸切り鎖長の10%以下であることが好ましく、5%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましく、1%以下がさらにより好ましい。
【0023】
本発明に係るマクロモノマーの数平均分子量(Mn)は、1000以上200000以下が好ましく、5000以上150000以下がより好ましく、10000以上10万以下がより好ましい。当該マクロモノマーの数平均分子量(Mn)の測定方法は、後述の実施例の欄の条件を用いた。
本発明に係るマクロモノマーは、2~6価の結合手を有する有機基と、前記有機基の結合手と直接結合する下記一般式(I):
【化7】
【0024】
(上記一般式(I)中、Lは、単結合又は炭素原子数1~10のアルキレン基(但し、当該アルキレン基中の-CH2-は、隣り合わないよう、-O-、-S-又は-NH-に置換されてもよく、さらに当該アルキレン基中の-CH2-CH2-は、-CH=CH-に置換されてもよい)を表し、
Mは、付加重合性単量体単位を表し、
Zは、単結合又は炭素原子数1~10のアルキレン基(但し、当該アルキレン基中の-CH2-は、-O-、-S-、-NH-に置換されてもよい)を表し、
nは、重合度を表し、
Xは、水素原子又は2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を表す。一般式(I)中の*は、有機基に含まれる原子との結合を表す。)
で表される基を最大6種有し、かつ前記2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を1分子中に1種以上有することが好ましい。
本発明に係るマクロモノマーにおいて、一般式(I)で表される基の数と、2~6価の結合手を有する有機基の価数とが同じある。また、本発明に係るマクロモノマーは、当該マクロモノマー1分子中に2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を少なくとも1種有し(換言すると、Xが2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基である条件を満たす上記一般式(I)で表される基を少なくとも1種有する)、かつ付加重合性単量体単位であるMを主鎖として含むことが好ましい。
【0025】
一般式(I)中の有機基とは、炭素原子同士が共有結合にて結合した炭化水素基をいい、前記2~6価の結合手を有する有機基は、2~6価の結合手を有する芳香族環を有するメソゲン基、炭素原子数3~15のアルキレン基(但し、当該アルキレン基中の-CH2-CH2-は、-CH=CH-に置換されてもよい)又は当該アルキレン基中の水素原子を0~4つ除いた基を表すことが好ましい。
【0026】
本実施形態において、「2~6価の結合手を有する有機基」とは、2価の有機基中の0~4つの水素原子を除いた原子団をいい、上述した芳香族環を有する2価のメソゲン基中の水素原子を0~4つ除いた基、又は、上述した炭素原子数3~15以下のアルキレン基中の水素原子を0~4つ除いた基であることが好ましい。
【0027】
芳香族環を有するメソゲン基とは、1つの芳香族環又は2以上の芳香族環が縮環した基である。2価の芳香族環を有するメソゲン基としては、例えば、置換若しくは無置換のフェニレン基、置換若しくは無置換のナフタレンジイル基、置換若しくは無置換のビナフタレンジイル基、置換若しくは無置換のアントラセンジイル基、置換若しくは無置換のフルオレンジイル基、置換若しくは無置換のトリフェニレンジイル基、置換若しくは無置換のフェナントレンジイル基、置換若しくは無置換のベンゾフェナントレンジイル基、置換若しくは無置換のジベンゾフェナントレンジイル基、置換若しくは無置換のクリセンジイル基、置換若しくは無置換のベンゾクリセンジイル基、置換若しくは無置換のピセンジイル基、及び置換若しくは無置換のピレンジイル基が好ましい。また、3価~6価の芳香族環を有するメソゲン基としては、上述した2価のメソゲン基から水素原子を1~4個取り除いた基であることが好ましい。
【0028】
上記炭素原子数3~15のアルキレン基(但し、当該アルキレン基中の-CH2-CH2-は、-CH=CH-に置換されてもよい)とは、一般式Cm2m(mは3以上15以下の整数)で表される2価の飽和炭化水素及び一般式Cm2m-2(mは3以上15以下の整数)などで表される2価の不飽和炭化水素を含む。当該アルキレン基は、例えば直鎖若しくは分岐プロピレン基、直鎖若しくは分岐ブチレン基、直鎖若しくは分岐ペンチレン基、直鎖若しくは分岐へキシレン基、直鎖若しくは分岐ヘプチレン基、直鎖若しくは分岐オクチレン基、直鎖若しくは分岐ノニレン基、及び直鎖若しくは分岐デシレン基からなる群から選択される飽和炭化水素基、並びに当該飽和炭化水素中の-CH2-CH2-を、-CH=CH-に置換した不飽和炭化水素基が好ましい。また、飽和炭化水素中の-CH2-CH2-は、隣接しない限り、1以上の-CH=CH-に置換されてもよい。
【0029】
本実施形態において、「2~6価の結合手を有する有機基」とは、2価の有機基中の0~4つの水素原子を除いた原子団をいい、上述した芳香族環を有する2価のメソゲン基中の水素原子を0~4つ除いた基、又は、上述した炭素原子数3~15以下のアルキレン基中の水素原子を0~4つ除いた基であることが好ましい。
【0030】
本明細書における炭素原子数1~10のアルキレン基は、直鎖状又は分岐状アルキレン基であることが好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、直鎖若しくは分岐プロピレン基、直鎖若しくは分岐ブチレン基、直鎖若しくは分岐ペンチレン基、直鎖若しくは分岐へキシレン基、直鎖若しくは分岐ヘプチレン基、直鎖若しくは分岐オクチレン基、直鎖若しくは分岐ノニレン基、又は直鎖若しくは分岐デシレン基が好ましい。
【0031】
上記一般式(I)中、Lは、メチレン基、エチレン基、直鎖若しくは分岐プロピレン基、直鎖若しくは分岐ブチレン基、直鎖若しくは分岐ペンチレン基、直鎖若しくは分岐へキシレン基、直鎖若しくは分岐ヘプチレン基、直鎖若しくは分岐オクチレン基、直鎖若しくは分岐ノニレン基、直鎖若しくは分岐デシレン基が好ましく、直鎖若しくは分岐プロピレン基、直鎖若しくは分岐ブチレン基、直鎖若しくは分岐ペンチレン基、直鎖若しくは分岐へキシレン基、直鎖若しくは分岐ヘプチレン基、直鎖若しくは分岐オクチレン基がより好ましい。
【0032】
上記一般式(I)中、Zは、直鎖状又は分岐状アルキレン基であることが好ましく、エチレン基、直鎖若しくは分岐プロピレン基、直鎖若しくは分岐ブチレン基、シクロブチレン基、直鎖若しくは分岐ペンチレン基、シクロペンチレン基、直鎖若しくは分岐へキシレン基、シクロヘキシレン基、直鎖若しくは分岐ヘプチレン基、シクロヘプチレン基、直鎖若しくは分岐オクチレン基、シクロオクチレン基、直鎖若しくは分岐ノニレン基、直鎖若しくは分岐デシレン基が好ましく、エチレン基、直鎖若しくは分岐プロピレン基、直鎖若しくは分岐ブチレン基、シクロブチレン基、直鎖若しくは分岐ペンチレン基、シクロペンチレン基、直鎖若しくは分岐へキシレン基、シクロヘキシレン基がより好ましい。
【0033】
上記一般式(I)中、Mは付加重合性単量体単位を表し、具体的には、共役ジエン系単量体単位、スチレン系単量体単位、又は(メタ)アクリレート系単量体単位が好ましい。より詳細には、上記一般式(I)中、Mは、以下の一般式(ii)で表される単量体単位を含むことが好ましい。
【化8】
【0034】
(上記一般式(ii)中、Rc、Rd、Re、Rf、Rg及びRhは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、Y1及びY2はそれぞれ独立して、-C(=O)-O-Ri又は置換若しくは無置換のフェニル基を表し、s、t及びrはそれぞれ独立して、0、又は1を表し、s+t+rは1以上の整数であり、Riは、水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基を表す。)
【0035】
上記一般式(ii)中、Rc、Rd、Re、Rf、Rg及びRhはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~7の直鎖又は分岐状のアルキル基が好ましく、水素原子又は炭素原子数1~5の直鎖状のアルキル基がより好ましい。
上記一般式(ii)中、Y1及びY2はそれぞれ独立して、-C(=O)-O-Ri又は無置換のフェニル基を表すことが好ましい。Riは、水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基を表す。
【0036】
上記一般式(I)中、Xは、水素原子又は以下の一般式(i)で表される不飽和結合基が好ましい。
【化9】
【0037】
(上記一般式(i)中、W1は、単結合、アミノ基、-NHRa基、-RaO基を表し(Raは、水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基を表す。)、W2は、-NH-、-NRb-、-N=、-O-(Rbqを表わす(Rbは炭素原子数1~10のアルキレン基を表し、qは0以上1以下の整数を表す。)。但し、W1が単結合の場合は、W2が-N=であり、かつW1とW2とが結合してマレイミドを形成してもよい。一般式(i)中の*は、主鎖である分子鎖との結合を表す。)
上記一般式(i)中、Raは、水素原子、メチル基、エチル基又は直鎖状若しくは分岐状プロピル基が好ましい。なかでも、上記一般式(ii)中のXは、ビニル系単量体との反応性の高さの観点から、上記式(i-1)~(i-9)が好ましい。
【0038】
上記一般式(I)中、nは重合度を表し、01~10000であることが好ましく、1~5000であることがより好ましい。
本発明に係るマクロモノマーは、以下の一般式(1):
【化10】
(上記一般式(1)中、
1は、2~6価の結合手を有する有機基を表し、
Lは、単結合又は炭素原子数1~10のアルキレン基(但し、当該アルキレン基中の-CH2-は、隣り合わないよう、-O-、-S-、又は-NH-に置換されてもよく、さらに当該アルキレン基中の-CH2-CH2-は、-CH=CH-に置換されてもよい)を表し、
Mは、単結合又は付加重合性単量体単位(好ましくは、共役ジエン系単量体単位)を表し、ただし、n個存在するMのうち少なくとも1つが付加重合性単量体単位であり
Zは、単結合又は炭素原子数1~10のアルキレン基(但し、当該アルキレン基中の-CH2-は、-O-、-S-、-NH-に置換されてもよい)を表し、
nは、重合度を表し、
Xは、水素原子又は2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を表し、ただし、k個存在するXのうち少なくとも1つが2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基である。
kは、2以上6以下の整数を表す。なお、一般式(I)中に複数存在する、L、M、Z及びXはそれぞれ独立して、互いに同一又は異なっていてもよい。)
上記一般式(I)で表されるマクロモノマーの構造により、ビニル系単量体、特にスチレン系単量体単位との共重合にて分岐構造を効率的に付与することができ、分岐ポリマーの生産性、特にポリスチレンの生産性を向上させることができる。
【0039】
上記一般式(1)中、L、M、Z及びXは、B1の結合手の数に対応して、それぞれ2~6存在する。この場合、例えば、Lは2~6存在するが、それぞれのLは、同一であっても、あるいは異なってもよい。他のM、Z及びXも同様である。
上記一般式(1)中、kは、2以上4以下の整数が好ましい。また、本実施形態のマクロモノマーにおいて、マクロモノマー1分子中に存在する2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基の数は、kの値以下であり、マクロモノマー1分子中に存在する2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基の数とkの値とが一致することが好ましい。
【0040】
また、上記一般式(1)中、L、M、Z及びX、並びにn及びB1の好ましい態様は、上記一般式(I)中のL、M、Z及びX、並びにn及びB1の好ましい態様と同様であるため、ここでは省略する。
【0041】
以下、本発明に係るマクロモノマーの好ましい形態を説明する。以下の一般式(2)~(6)で表される化合物は、いずれも一般式(1)で表されるマクロモノマーの好ましい形態である。
本実施形態において、2価の結合手を有する有機基を用いた場合は、マクロモノマーが2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を(最大)2箇所に有することにつながり、ビニル系単量体と共重合した場合に分岐構造を形成させることができる観点で好ましい。また、3~6価の結合手を有する有機基を用いた場合は、マクロモノマーが2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を(最大)それぞれ3~6箇所に有することにつながり、マクロモノマーとビニル系単量体との共重合を効率的に進行させることができるためより好ましい。一方、7価以上の結合手を有する有機基を用いた場合は、マクロモノマーが2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を(最大)それぞれ7箇所以上に有することにつながり、ビニル系単量体との共重合の際に局所的なゲル化につながりやすくなる。
本発明に係るマクロモノマーは以下の一般式(2)で表されることが好ましい。
【化11】
【0042】
(上記一般式(2)中、B2は、2価の芳香族環を有するメソゲン基又は炭素原子数3~15のアルキレン基(但し、当該アルキレン基中の-CH2-CH2-は、-CH=CH-に置換されてもよい)を表し、
1及びL2はそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキレン基(但し、当該アルキレン基中の-CH2-は、-O-、-S-、-NH-に置換されてもよい)を表し、
1、M2はそれぞれ独立して、付加重合性単量体単位を表し、Z1~Z2はそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキレン基(但し、当該アルキレン基中の-CH2-は、-O-、-S-、-NH-に置換されてもよい)を表し、
1及びn2はそれぞれ独立して、1~10000の整数を表し、
1及びX2はそれぞれ独立して、水素原子又は2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を表わし、かつX1及びX2のうち少なくとも1つが前記2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を表す)
【0043】
上記一般式(2)中、炭素原子数3~15のアルキレン基としては、例えば直鎖若しくは分岐プロピレン基、直鎖若しくは分岐ブチレン基、直鎖若しくは分岐ペンチレン基、直鎖若しくは分岐へキシレン基、直鎖若しくは分岐ヘプチレン基、直鎖若しくは分岐オクチレン基、直鎖若しくは分岐ノニレン基、直鎖若しくは分岐デシレン基が挙げられる。
【0044】
上記一般式(2)中、2価の芳香族環を有するメソゲン基としては、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基、1,8-ナフチレン基、1,2-ナフチレン基、1,3-ナフチレン基、1,2-ナフチレン基、1,4-ナフチレン基、1,5-ナフチレン基、1,6-ナフチレン基、1,7-ナフチレン基、2,7-ナフチレン基、2,3-ナフチレン基、2,5-ナフチレン基、2,6-ナフチレン基、1,8-フェナントレンジイル基、2,7-フェナントレンジイル基、3,6-フェナントレンジイル基、4,5-フェナントレンジイル基、1,8-アントラセンジイル基、1,5-アントラセンジイル基、1,4-アントラセンジイル基、2,3-アントラセンジイル基、又は2,6-アントラセンジイル基が好ましい。
【0045】
上記一般式(2)中、L1及びL2はそれぞれ独立して、メチレン基、エチレン基、直鎖若しくは分岐プロピレン基、直鎖若しくは分岐ブチレン基、直鎖若しくは分岐ペンチレン基、直鎖若しくは分岐へキシレン基、直鎖若しくは分岐ヘプチレン基、直鎖若しくは分岐オクチレン基、直鎖若しくは分岐ノニレン基、直鎖若しくは分岐デシレン基が好ましく、直鎖若しくは分岐プロピレン基、直鎖若しくは分岐ブチレン基、直鎖若しくは分岐ペンチレン基、直鎖若しくは分岐へキシレン基、直鎖若しくは分岐ヘプチレン基、直鎖若しくは分岐オクチレン基がより好ましく、直鎖若しくは分岐ブチレン基、直鎖若しくは分岐ペンチレン基、直鎖若しくは分岐へキシレン基、直鎖若しくは分岐ヘプチレン基がさらに好ましい。
【0046】
上記一般式(2)中、M1、M2はそれぞれ独立して、共役ジエン系単量体単位、スチレン系単量体単位、又は(メタ)アクリレート系単量体単位が好ましい。より詳細には、上記一般式(I)中、Mは、以下の一般式(ii)で表される単量体単位を含むことが好ましい。
【化12】
【0047】
(上記一般式(ii)中、Rc、Rd、Re、Rf、Rg及びRhは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、Y1及びY2はそれぞれ独立して、-C(=O)-O-Ri又は置換又は無置換のフェニル基を表し、s、t及びrはそれぞれ独立して、0、又は1を表し、s+t+rは1以上の整数であり、Riは、水素原子、又は炭素原子数1~10のアルキル基を表す。)
【0048】
上記一般式(ii)中、Rc、Rd、Re、Rf、Rg及びRhはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~7の直鎖又は分岐状のアルキル基が好ましく、水素原子又は炭素原子数1~5の直鎖状のアルキル基がより好ましい。
上記一般式(2)中、n1及びn2はそれぞれ独立して、5~10000が好ましく、25~750が好ましく、50~500が好ましい。
上記一般式(2)中、X1及びX2はそれぞれ独立して、以下の一般式(i)で表される不飽和結合基が好ましい。
【化13】
(上記一般式(i)中、W1は、単結合、アミノ基、-NHRa基、-RaO基を表し(Raは、水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基を表す。)、W2は、-NH-、-NRb-、-O-(Rbqを表わし(Rbは炭素原子数1~10のアルキレン基を表し、qは0以上1以下の整数を表す。)、W1が単結合の場合は、W2と結合してマレイミドを形成してもよい。)
当該不飽和結合基の好ましい形態としては、上記式(i-1)~(i-17)からなる群から選択される1種である。
【0049】
本実施形態において、一般式(2)で表されるマクロモノマーとしては、例えば、以下の式(2-1)~式(2-37)が挙げられる。また、以下の構造式は本発明の例を示したものである。また、本実施形態におけるマクロモノマーは、上記一般式(2)のMが共役ジエン系単量体単位の場合の例について、付加様式としてビニル付加、1,4-付加のものも含んでいると解釈されてよい。
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
(上記式(2-1)~(2-37)中、m1及びm2はそれぞれ独立して、5~10000が好ましい。)
上記式(2-1)~(2-37)で表わされる化合物のうち、特に式(2-1)~(2-14)が好ましい。 本実施形態において、3価の結合手を有する有機基を用いた場合は、マクロモノマーが2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基をそれぞれ(最大)3箇所に有することにつながり、マクロモノマーとビニル系単量体との共重合を効率的に進行させることができるため好ましい。
本発明に係るマクロモノマーは以下の一般式(3)で表されることが好ましい。
【化23】
【0050】
(上記一般式(3)中、B3は、3価の芳香族環を有するメソゲン基、炭素原子数3~15のアルキリジン基又は炭素原子数3~15以下のアルキレン基(但し、当該アルキレン基中の-CH2-CH2-は、-CH=CH-に置換されてもよい)から任意の水素原子1つを除去した有機基(1)を表し、
1、M2、及びM3はそれぞれ独立して、単結合又は付加重合性単量体単位(共役ジエン系単量体単位)を表し、Z1~Z3はそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキレン基(但し、当該アルキレン基中の-CH2-は、-O-、-S-、-NH-に置換されてもよい)を表し、
1、n2及びn3はそれぞれ独立して、1~10000の整数を表し、
1、X2及びX3はそれぞれ独立して、水素原子又は2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を表わし、かつX1~X3のうち少なくとも1つが前記2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を表す)
【0051】
上記一般式(3)中、3価の芳香族環を有するメソゲン基としては、例えば式(b-1)~(b-3)が挙げられる。
【化24】
本実施形態において、一般式(3)で表されるマクロモノマーとしては、例えば、以下の式(3-1)~式(3-8)が挙げられる。
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
(上記式(3-1)~(3-8)中、m1、m2及びm3はそれぞれ独立して、5~10000が好ましい。)
本実施形態において、4価の結合手を有する有機基を用いた場合は、マクロモノマーが2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を(最大)それぞれ4箇所に有することにつながり、マクロモノマーとビニル系単量体との共重合を効率的に進行させることができるため好ましい。
本発明に係るマクロモノマーは以下の一般式(4)で表されることが好ましい。
【化30】
【0052】
(上記一般式(4)中、B4は、4価の芳香族環を有するメソゲン基、炭素原子又は炭素原子数3~15のアルキレン基(但し、当該アルキレン基中の-CH2-CH2-は、-CH=CH-に置換されてもよい)から任意の水素原子を2つ除去した有機基(2)を表し、
1、M2、M3及びM4はそれぞれ独立して、単結合又は付加重合性単量体単位(共役ジエン系単量体単位)を表し、Z1~Z4はそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキレン基(但し、当該アルキレン基中の-CH2-は、-O-、-S-、-NH-に置換されてもよい)を表し、
1、n2、n3及びn4はそれぞれ独立して、1~10000の整数を表し、
1、X2、X3及びX4はそれぞれ独立して、水素原子又は2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を表わし、かつX1~X4のうち少なくとも1つが前記2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を表す)
【0053】
上記一般式(4)中、4価の芳香族環を有するメソゲン基としては、(c-1)~(c-3)が挙げられる。
【化31】
(上記一般式中、*はL1~L4に結合する結合手を表す)
【0054】
本実施形態において、一般式(4)で表されるマクロモノマーとしては、例えば、以下の式(4-1)~式(4-8)が挙げられる。
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
(上記式(4-1)~(4-8)中、m1、m2、m3及びm4はそれぞれ独立して、5~10000が好ましい。)
本実施形態において、5価の結合手を有する有機基を用いた場合は、マクロモノマーが2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を(最大)それぞれ5箇所に有することにつながり、マクロモノマーとビニル系単量体との共重合を効率的に進行させることができるためこのましい。
本発明に係るマクロモノマーは以下の一般式(5)で表されることが好ましい。
【化40】
(上記一般式(4)中、B5は、5価の有機基(3)を表し、
1、M2、M3、M4及びM5はそれぞれ独立して、単結合又は付加重合性単量体単位(共役ジエン系単量体単位)を表し、Z1~Z5はそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキレン基(但し、当該アルキレン基中の-CH2-は、-O-、-S-、-NH-に置換されてもよい)を表し、
1、n2、n3、n4及びn5はそれぞれ独立して、1~10000の整数を表し、
1、X2、X3、X3及びX5はそれぞれ独立して、水素原子又は2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を表わし、かつX1~X5のうち少なくとも1つが前記2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を表す。)
【0055】
上記一般式(5)中、5価の有機基(2)としては、(d-1)~(d-3)が挙げられる。
【化41】
(上記一般式中、*はL1~L5に結合する結合手を表す)
本発明に係るマクロモノマーとしては、下記一般式(6)で表されることが好ましい。
【化42】
(上記一般式(6)中、B6は、6価の芳香族環を有するメソゲン基を表し、
1~L6はそれぞれ独立して、単結合又は炭素原子数1~10のアルキレン基(但し、当該アルキレン基中の-CH2-は、-O-、-S-、-NH-に置換されてもよく、さらに当該アルキレン基中の-CH2-CH2-は、-CH=CH-に置換されてもよい)を表し、
1~M6はそれぞれ独立して、単結合又は付加重合性単量体単位を表し、
1~Z6はそれぞれ独立して、単結合又は炭素原子数1~10のアルキレン基(但し、当該アルキレン基中の-CH2-は、-O-、-S-、-NH-に置換されてもよい)を表し、
1~n6はそれぞれ独立して、0~10000の整数を表し、
1~X6はそれぞれ独立して、水素原子又は2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を表わし、かつX1~X6のうち少なくとも2つが前記2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を表す。)
【0056】
上記一般式(6)中、6価の芳香族環を有するメソゲン基としては、(e-1)~(e-3)が挙げられる。
【化43】
(上記一般式中、*はL1~L6に結合する結合手を表す)
【0057】
(マクロモノマーの製造方法)
以下、本発明に係るマクロモノマーの製造方法の一例について説明する。
本発明に係るマクロモノマーが、2~6価の芳香族環を有するメソゲン基を有する場合は、反応工程(1)を有することが好ましい。
【0058】
当該反応工程(1)としては、少なくとも2つのビニル基を有する芳香族化合物と、有機リチウムとを混合して反応混合物(1)を調製する工程(a)と、前記反応混合物(1)と付加重合性単量体とを混合して反応混合物(2)を調製する工程(b)と、ヘテロ三員環化合物と前記反応混合物(2)とを混合して反応混合物(3)を調製する工程(c)と、2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を含有する化合物と前記反応混合物(3)とを混合してマクロモノマーを調製する工程(d)とを有することが好ましい。
【0059】
本実施形態において、少なくとも2つのビニル基を有する芳香族化合物は、芳香族化合物中の2~6つの水素原子を、ビニル基(CH2=CRh-(Rhは、水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基)に置換した化合物をいう。
【0060】
本実施形態に使用可能な芳香族化合物としては特に制限されることはなく、ベンゼン、ナフタレン、アズレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、トリフェニレン、アセナフテン、コロネン、フルオレン、フルオランテン、ペンタセン、ペリレン、ペンタフェン、ピセン、ピラントレン、アンスラアントレン等が挙げられる。更に、前記芳香族化合物は、必要によりハロゲン又はアルキル基などの置換基を有していてもよい。したがって、少なくとも2つのビニル基を有する芳香族化合物とは、上記例示の芳香族化合物中の2~6つの水素原子を、ビニル基(CH2=CRh-(Rhは、水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基)に置換した化合物が好ましい。
【0061】
本実施形態において、有機リチウムは重合開始剤として用いることができれば特に制限されることはなく、例えば、低分子化合物又は可溶化したオリゴマーの有機リチウムが挙げられる。例えば、炭素-リチウム結合からなる有機リチウム、窒素-リチウム結合からなる有機リチウム、錫-リチウム結合からなる有機リチウム等が挙げられる。
【0062】
上記炭素-リチウム結合を有する有機リチウムとしては、例えば、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、n-ヘキシルリチウム、ベンジルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウム等が挙げられる。上記窒素-リチウム結合からなる有機リチウムとしては、例えば、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジ-n-ヘキシルアミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムモルホリド等が挙げられる。
【0063】
また、本実施形態において、有機リチウムは、上記のモノ有機リチウムだけでなく、多官能有機リチウムを使用してもよく、あるいは、モノ有機リチウムと多官能有機リチウムとを併用して重合させてもよい。
【0064】
上記多官能有機リチウムとしては、例えば1,4-ジリチオブタン、sec-ブチルリチウムとジイソプロペニルベンゼンの反応物、1,3,5-トリリチオベンゼン、n-ブチルリチウムと1,3-ブタジエン及びジビニルベンゼンの反応物、m-キシレンとn-ブチルリチウムとの反応物、n-ブチルリチウムとポリアセチレン化合物の反応物等が挙げられる。
【0065】
本実施形態において、付加重合性単量体は、ブタジエン、イソプレン、ミルセン、ファルネセン等の共役ジエン系単量体;スチレン、α-メチルスチレン、パラメチルスチレン等のスチレン系単量体単位;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系単量体が好ましい。また、付加重合性単量体は、これらのうち2種以上の単量体から構成されていてもよい。
【0066】
本実施形態において、ヘテロ三員環化合物としては、オキシラン環を有する化合物又はアジリジン環を有する化合物が好ましく、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エポキシ化大豆油、エポキシ化天然ゴム、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、N,N,N’,N’-テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、チイラン、メチルチイラン、フェニルチイラン、エチレンイミン、プロピレンイミン、N-フェニルエチレンイミン、N-(β-シアノエチル)エチレンイミン、2,5-ビス(1-アジリジニル)-p-ベンゾキノンが挙げられる。
【0067】
本実施形態において、2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を含有する化合物としては、例えば、無水マレイン酸、マレイン酸ジエステル、マレイン酸モノエステル、フマル酸ジエステル、フマル酸モノエステル、マレイン酸ジアミド、マレイン酸モノアミド、マレイミドが好ましい。また、当該2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を含有する化合物は、本発明に係るマクロモノマー中の2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基に対応する。
【0068】
本発明に係るマクロモノマーの合成方法の一例として第1反応スキーム(反応工程(1)の一例)を以下に示す。本実施形態の反応工程(1)において、工程(a)及び工程(b)が、第1反応スキーム中のステップ1に、工程(b)及び工程(c)がステップ2,3に、工程(d)がステップ4にそれぞれ対応する。
【化44】
【0069】
(上記ステップ4の化合物中、R1はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、m1及びm2はそれぞれ独立して、0~10000の整数を表す。)
【0070】
本発明に係るマクロモノマーが、炭素原子数3~15以下のアルキレン基(但し、当該アルキレン基中の-CH2-CH2-は、-CH=CH-に置換されてもよい)を有する場合は、反応工程(2)を有することが好ましい。
【0071】
当該反応工程(2)は、付加重合性単量体と重合開始剤とを混合して反応混合物(4)を調製する工程(f)と、2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を含有する化合物と前記反応混合物(4)とを混合してマクロモノマーを調製する工程(g)とを有することが好ましい。
上記反応工程(b)においてヘテロ三員環化合物と反応させることにより、炭素アニオンからヘテロ原子アニオンへと変換し、その後活性水素を有する官能基(例えば水酸基やアミノ基等)とすることにより、2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を含有する化合物と所望の形で反応させることができる。反応工程(b)を介さずに2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を含有する化合物と反応させようとすると、そのカルボニル基と炭素アニオンが反応することでケトン基が生じ、生成したケトンと未反応の炭素アニオンとの反応により3次元的な架橋構造が生成し得、所望のマクロモノマーの構造を得ることができなくなる。
【0072】
上記工程(f)において、反応条件が特に限定されるものではないが、例えば、付加重合性単量体とラジカル重合開始剤を用いて、溶媒中で重合することができる。
【0073】
本実施形態において、ラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化物系開始剤、アゾ系開始剤が挙げられる。水酸基若しくはアミノ基といった活性水素を有する過酸化物系化合物、アゾ系化合物が望ましい。たとえば、過酸化水素を使用することにより、水酸基を末端に有するポリマーを生成することができる。これにより、当該水酸基と2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を含有する化合物を反応させ、2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を末端部に導入することができる。
【0074】
上記ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス-(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシピバレート、t-ブチルパーオキシエチルヘキサノエイト、1,1’-ビス-(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、t-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート等の有機過酸化物及び過酸化水素等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0075】
上記工程(f)において、ラジカル重合に用いることができる溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル-n-アミルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジエチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、ジ-n-プロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ホロン等のケトン系溶媒;エチルエーテル、イソプロピルエーテル、n-ブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸-n-ブチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸-nーブチル、酢酸-n-アミル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート等のエステル系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール、3-メトキシ-1-プロパノール、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール等のアルコール系溶媒、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ビニルベンゼン、p-メチルビニルベンゼン等の芳香族系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0076】
本実施形態において、2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を含有する化合物としては、例えば、無水マレイン酸、マレイン酸ジエステル、マレイン酸モノエステル、フマル酸ジエステル、フマル酸モノエステル、マレイン酸ジアミド、マレイン酸モノアミド、マレイミドが好ましい。また、当該2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を含有する化合物は、本発明に係るマクロモノマー中の2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基に対応する。
本実施形態において、反応条件として空気雰囲気下、不活性ガス雰囲気下のいずれでもよい。
上記工程(g)において、2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を末端部に導入する手法としては特に制限はなく、酸無水物基を利用したエステル化反応、エステル基を利用したエステル交換反応、カルボキシル基を利用したエステル化反応、酸無水物基を利用したアミド化反応、酸無水物基を利用したマレイミド化反応等があげられる。
上記工程(g)において、反応を効率的に進行させる観点から、反応混合物中の水分量が0.1質量部以下となっていることが好ましい。
上記工程(g)において、反応の温度は0℃~150℃が好ましい。0℃より低い反応温度の場合は反応系の粘度が高くなり2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基を含有する化合物の拡散が遅くなり反応が進行しにくく、150℃より高い反応温度ではマクロモノマー中の2以上の電子吸引基が結合された不飽和結合基同士が反応し、所望の構造のマクロモノマーを得られなくなることがあり好ましくない。
上記工程(g)において、反応に利用することができる溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル-n-アミルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジエチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、ジ-n-プロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ホロン等のケトン系溶媒;エチルエーテル、イソプロピルエーテル、n-ブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸-n-ブチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸-nーブチル、酢酸-n-アミル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート等のエステル系溶媒、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ビニルベンゼン、p-メチルビニルベンゼン等の芳香族系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
上記反応工程(g)において、反応中のマクロモノマーの重合を防止する観点から、重合禁止剤を利用することができる。重合禁止剤の具体例としては、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-アセトアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-ベンゾオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシルなどのN-オキシラジカル系化合物; ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6-ジ- t-ブチル-4-メチルフェノール、2,2'-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,6-ジ-t-ブチル-N,N-ジメチルアミノ-p-クレゾール、2,4-メチル-6-t-ブチルフェノール、4-t-ブチルカテコール、4,4'-チオ-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4'-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)などのフェノール系化合物;ベンゾキノン、2,5-ジ-t-ブチルハイドロキノンなどのキノン系化合物; 塩化第一銅、ジメチルジチオカルバミン酸銅などの銅化合物などが挙げられる。これらは、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本実施形態において、ビニル系単量体とマクロモノマーとの共重合の際に用いることのできるラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化物系開始剤、アゾ系開始剤が挙げられる。上記ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス-(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシピバレート、t-ブチルパーオキシエチルヘキサノエイト、1,1’-ビス-(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、t-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート等の有機過酸化物及び過酸化水素等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0077】
本発明に係るマクロモノマーの合成方法の一例として第2反応スキーム(反応工程(2)の一例)を以下に示す。本実施形態の反応工程(2)において、工程(f)が、第2反応スキーム中のステップ1~3に、工程(g)がステップ4にそれぞれ対応する。
【化45】
(上記式(2-5)中、m0、m1及びm2はそれぞれ独立して、0~10000の整数を表す。)
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記例に限定されることは無く、適宜変更を加えることができる。
【実施例0078】
以下、本発明を実施例及び比較例に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されると解されるべきでない。
まず、実施例、比較例を評価するために用いた評価方法について以下説明する。
「評価方法」
(1)数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、z平均分子量Mzの測定
得られたマクロモノマーならびにビニル系単量体とマクロモノマーとの共重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、z平均分子量(Mz)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定した。
試料調製 :テトラヒドロフランにスチレン系共重合樹脂を約0.05質量%となるよう溶解
測定条件
機器 :TOSOH HLC-8220GPC
(ゲルパーミエイション・クロマトグラフィー)
カラム :super HZM-H
温度 :40℃
キャリア :THF 0.35mL/min
検出器 :RI 、UV:254nm
検量線 :TOSOH製の標準PS使用
【0079】
(2)マクロモノマーの末端官能基率の定量
マクロモノマーとその原料である両末端ジオールを有するポリマーの末端官能基率は、核磁気共鳴(1H-NMR)装置で測定したスペクトルの積分比から定量した。試料調製:マクロモノマー75mgをd3-クロロホルム 0.75mLに室温で溶解した。
測定機器:日本電子(株)製、JNM ECA-500
測定条件:測定温度60℃、観測核1H、積算回数256回、繰返し時間45秒
【0080】
「原料」
「実施例1」
ポリイソプレン主鎖マクロモノマー(マクロモノマーA)の合成
ポリイソプレンジオールpoly ipを200gフラスコにとり、そこに無水マレイン酸を20gと酸化防止剤ターシャリーブチルカテコールを0.1g加え、70℃に加熱したオイルバスにフラスコを浸漬し、撹拌した。反応時間が6時間経過後にオイルバスから取り出し反応を停止させた。ポリブタジエンジオールの水酸基の減少率を1H-NMRにより測定したところ、98%であり、ほぼ定量的に反応が進行していることを確認した。
【0081】
「実施例2」
水添ポリイソプレン主鎖マクロモノマー(マクロモノマーB)の合成
水添ポリイソプレンジオール エポールを200gフラスコにとり、そこに無水マレイン酸を20gと酸化防止剤ターシャリーブチルカテコールを0.1g加え、70℃に加熱したオイルバスにフラスコを浸漬し、撹拌した。反応時間が6時間経過後にオイルバスから取り出し反応を停止させた。水添ポリイソプレンジオールの水酸基の減少率を1H-NMRにより測定したところ、97%であり、ほぼ定量的に反応が進行していることを確認した。
【0082】
「実施例3」
ポリイソプレン主鎖マクロモノマー(アニオン重合による)(マクロモノマーC)の合成
<試薬の準備>
イソプレン(東京化成工業株式会社製)、シクロヘキサン(富士フィルム和光純薬株式会社製)、1,3-ジイソプロピルベンゼン(東京化成工業株式会社製)、テトラメチルエチレンジアミン(富士フィルム和光純薬株式会社製、以下TMEDA)、トリエチルアミン(東京化成工業株式会社製、以下TEA)、ブチレンオキシド(東京化成工業株式会社製)は、200℃にて加熱乾燥させたアルミナ顆粒(富士フィルム和光純薬株式会社製)を、デシケーター内で室温まで放冷したのち、それぞれの化合物の液量の1割以上の重合を加え脱水を行った。s-ブチルリチウム(1.3mol/L ヘキサン-シクロヘキサン溶液、富士フィルム和光純薬株式会社製)は購入したものをそのまま用いた。
<溶液調整>
重合のため、以下の溶液A~Eを調整した。
(溶液A)シクロヘキサン5.0mL、TEA1.5mLをフラスコに加え、撹拌子により撹拌し均一溶液とした。
(溶液B)シクロヘキサン6.0mL、ジイソプロピルベンゼン1.0mLをフラスコに加え、撹拌子により撹拌し均一溶液とした。
(溶液C)シクロヘキサン9.0mL、TMEDA0.30mLをフラスコに加え、撹拌子により撹拌し均一溶液とした。
(溶液D)シクロヘキサン45.0mL、イソプレン7.5mLをフラスコに加え、撹拌しにより撹拌し均一溶液とした。
(溶液E)シクロヘキサン5.0mL、エチレンオキシド(0.8mol/Lヘキサン溶液)5.0mLをフラスコに加え、撹拌しにより撹拌し均一溶液とした。
【0083】
「開始剤溶液の調製」
シクロヘキサン13.0mL、s-ブチルリチウム溶液3.0mLをフラスコに加え撹拌しにより撹拌し均一溶液とした。その後、溶液Aを2.0mL加え、さらに溶液Bを1.8mL加え、フラスコを加熱したオイルバスで50℃に昇温し、2時間反応させて開始剤溶液を調製した。
【0084】
「アニオン重合」
フラスコに開始剤溶液を0.41mL加え、溶液Cを0.157mL加え、撹拌しながら10分間反応させて混合液(1)(反応混合物(1))を調製した。その混合液(1)に溶液Dを10.0mL加え、25℃で2時間反応させた。その後、開始剤溶液を1.2mL加え、25℃にてさらに10分間反応させて混合液(2)(反応混合物(2))を調製した。そして、その混合液(2)に溶液Eを0.7mL加え、さらに10分間反応させた。その後、脱気したメタノール/テトラヒドロフラン=1/1(wt/wt)の混合溶媒を1.0mL加え反応を停止した。以下、本液を重合停止後溶液(反応混合物(3))と呼ぶ。
「回収工程」
【0085】
ビーカーに貧溶媒であるメタノールを300mLとり、ここにスポイトを用いて重合停止溶液を滴下した。滴下に伴い溶液が白濁した。滴下終了後、12時間静置したところ、沈殿物がビーカーの底に堆積した。上澄みを除去し、デシケーター内で乾燥させ、ポリイソプレン両末端ジオールを得た。GPCにて分子量測定を行ったところ、Mn=20000(PS換算)であることが分かった。また、1H-NMRでの解析によると水酸基導入率は98%であった。
【0086】
「マレイン酸エステル化反応工程(工程(g))」
上記ポリイソプレン両末端ジオールを0.10g、無水マレイン酸を0.5mg、パラメトキシフェノールを0.05mg、エチルベンゼンを0.90g量りとり、撹拌子を備えたフラスコに加えた。80℃に加熱したオイルバスに浸け、6時間反応させた。
GPCにて分子量測定を行ったところ、Mn=20200(PS換算)であることが分かった。また、1H-NMRでの解析によると水酸基は99%消費され、マレイン酸エステルの導入率は99%であった。
【0087】
「実施例4」
三方コックを備えたフラスコに開始剤として2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン(以下パーテトラAと称する。)を0.040g、スチレンを83.86g、エチルベンゼン16.00g、マクロモノマーAを0.10gとり撹拌子により溶液を均一にした。これを100℃に設定したオイルバスに浸漬し、6時間反応させた。本溶液を230℃に設定した真空乾燥機にて10分間、高真空下で揮発成分を除去すると、無色透明の樹脂が得られた。上述の製造法によって得られた評価結果を表1に示す。
【0088】
「実施例5」
三方コックを備えたフラスコにパーテトラAを0.040g、スチレンを83.86g、エチルベンゼン16.00g、マクロモノマーBを0.10gとり撹拌子により溶液を均一にした。これを100℃に設定したオイルバスに浸漬し、6時間反応させた。本溶液を230℃に設定した真空乾燥機にて10分間、高真空下で揮発成分を除去すると、無色透明の樹脂が得られた。上述の製造法によって得られた評価結果を表1に示す。
【0089】
「実施例6」
三方コックを備えたフラスコにパーテトラAを0.040g、スチレンを83.86g、エチルベンゼン16.00g、マクロモノマーCを0.10gとり撹拌子により溶液を均一にした。これを100℃に設定したオイルバスに浸漬し、6時間反応させた。本溶液を230℃に設定した真空乾燥機にて10分間、高真空下で揮発成分を除去すると、無色透明の樹脂が得られた。上述の製造法によって得られた評価結果を表1に示す。
【0090】
「実施例7」
三方コックを備えたフラスコに開始剤として1,1-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキサン(以下、パーヘキサCと称する。)を0.040g、スチレンを99.96g、マクロモノマーCを0.10gとり撹拌子により溶液を均一にした。これを100℃に設定したオイルバスに浸漬し、3時間反応させた。本溶液を230℃に設定した真空乾燥機にて10分間、高真空下で揮発成分を除去すると、無色透明の樹脂が得られた。上述の製造法によって得られた評価結果を表1に示す。
【0091】
「実施例8」
三方コックを備えたフラスコにパーヘキサCを0.040g、スチレンを99.96g、マクロモノマーCを0.10gとり撹拌子により溶液を均一にした。これを100℃に設定したオイルバスに浸漬し、6時間反応させた。本溶液を230℃に設定した真空乾燥機にて10分間、高真空下で揮発成分を除去すると、無色透明の樹脂が得られた。上述の製造法によって得られた評価結果を表1に示す。
【0092】
「比較例1」
三方コックを備えたフラスコにパーテトラAを0.040g、スチレンを83.86g、エチルベンゼン16.00gとり、撹拌子により溶液を均一にした。これを100℃に設定したオイルバスに浸漬し、6時間反応させた。本溶液を230℃に設定した真空乾燥機にて10分間、高真空化で揮発成分を除去すると、無色透明の樹脂が得られた。上述の製造法によって得られた評価結果を表1に示す。本比較例1を、マクロモノマーが存在しない基準となる実験結果とする。
【0093】
「比較例2」
三方コックを備えたフラスコにパーテトラAを0.040g、スチレンを83.86g、エチルベンゼン16.00g、ポリイソプレンジオールを0.10gとり、撹拌子により溶液を均一にした。これを100℃に設定したオイルバスに浸漬し、6時間反応させた。本溶液を230℃に設定した真空乾燥機にて10分間、高真空化で揮発成分を除去すると、無色透明の樹脂が得られた。上述の製造法によって得られた評価結果を表1に示す。末端にマレイン酸エステルが存在しないため添加物がスチレンと共重合せず、分子量は比較例1と同等であった。さらに、本条件下において、ポリイソプレン中の2重結合には共重合の進行が確認できなかった。
【0094】
「比較例3」
三方コックを備えたフラスコにパーテトラAを0.040g、スチレンを83.86g、エチルベンゼン16.60g、ポリイソプレンジアクリレートを0.10gとり、撹拌子により溶液を均一にした。これを100℃に設定したオイルバスに浸漬し、6時間反応させた。本溶液を230℃に設定した真空乾燥機にて10分間、高真空化で揮発成分を除去すると、無色透明の樹脂が得られた。上述の製造法によって得られた評価結果を表1に示す。
評価結果に示す通り、比較例3の樹脂のMw,Mzは比較例1,2より大きくなったが、実施例4よりも小さかった。この結果から、電子求引性置換基が2つ結合した二重結合を有するマクロモノマーの方がスチレンとの共重合が進行しやすく、同等の添加量で効率的にPS分子量を伸ばすことができることが示された。
【0095】
「比較例4」
三方コックを備えたフラスコにパーヘキサCを0.040g、スチレンを99.96g、ポリイソプレンジアクリレートを0.10gとり、撹拌子により溶液を均一にした。これを100℃に設定したオイルバスに浸漬し、3時間反応させた。本溶液を230℃に設定した真空乾燥機にて10分間、高真空下で揮発成分を除去すると、無色透明の樹脂が得られた。上述の製造法によって得られた評価結果を表1に示す。
評価結果に示す通り、実施例7と比較すると、比較例4のマクロモノマーを用いた共重合体のMw,Mzはともに小さくなっていた。
【0096】
「比較例5」
三方コックを備えたフラスコにパーヘキサCを0.040g、スチレンを99.96g、ポリイソプレンジアクリレートを0.10gとり、撹拌子により溶液を均一にした。これを100℃に設定したオイルバスに浸漬し、6時間反応させた。本溶液を230℃に設定した真空乾燥機にて10分間、高真空下で揮発成分を除去すると、無色透明の樹脂が得られた。上述の製造法によって得られた評価結果を表1に示す。
評価結果に示す通り、実施例8と比較すると、比較例5のマクロモノマーを用いた共重合体のMw,Mzともに小さくなっていた。
【0097】
(反応時間とMzとの関係)
さらに、実施例7、実施例8、比較例4、比較例5の実験結果に関して、反応時間を横軸に、Mzを縦軸にプロットしたグラフを図1に示す。
図1の実験結果に示す通り、比較例4及び5のポリイソプレンアクリレートを用いた場合、重合反応時間が4.2時間で到達する分子量(内挿値)が、80×104であった。一方、実施例7及び8のマクロモノマーCを使用すると、当該分子量に到達する反応時間が、3時間まで短縮されることが分かった(約1.2時間短縮)。すなわち、マクロモノマーCのスチレンとの共重合性が高く、生産速度を140%に増加させることができることが分かった。
【0098】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明に係るマクロモノマーは、付加重合性単量体との共重合における架橋剤、接着剤、電子材料用封止材などに幅広く利用することができる。
図1