IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニチカ株式会社の特許一覧 ▶ ユニチカグラスファイバー株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-不織布 図1
  • 特開-不織布 図2
  • 特開-不織布 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035408
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】不織布
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/04 20120101AFI20220225BHJP
   D04H 3/004 20120101ALI20220225BHJP
【FI】
D04H3/04
D04H3/004
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020139720
(22)【出願日】2020-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】305040569
【氏名又は名称】ユニチカグラスファイバー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】秋山 芳広
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 崇治
(72)【発明者】
【氏名】野木 崇志
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AA05
4L047AB03
4L047BA12
4L047BA15
4L047BD02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複数の糸が一方向に沿って配列された第1糸群、複数の糸が一方向に沿って配列された第2糸群、を含み、これらが直交するように積層されている不織布において、柔軟性に優れ、かつ、当該不織布をロール製品として巻き出す際に糸が交点において剥離しにくい、不織布の提供。
【解決手段】複数の糸が一方向に沿って配列された第1糸群2a~2dと、複数の糸が一方向に沿って配列された第2糸群3と、を含み、これらが直交するように積層されている、不織布1であって、第1糸群に含まれる糸と第2糸群に含まれる糸とが交点4において熱可塑性樹脂により固定されており、熱可塑性樹脂が、ガラス転移点が15℃以下である熱可塑性樹脂A、及び、ガラス転移点が35℃以上である熱可塑性樹脂Bを含み、熱可塑性樹脂B100質量部に対する熱可塑性樹脂Aの比率が750~2500質量部である、不織布1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の糸が一方向に沿って配列された第1糸群と、
複数の糸が一方向に沿って配列された第2糸群と、を含み、
前記第1糸群を構成する糸と前記第2糸群を構成する糸とが直交するように積層されている、不織布であって、
前記第1糸群に含まれる糸と前記第2糸群に含まれる糸とが交点において熱可塑性樹脂により固定されており、
前記熱可塑性樹脂が、ガラス転移点が15℃以下である熱可塑性樹脂A、及び、ガラス転移点が35℃以上である熱可塑性樹脂Bを含み、
前記熱可塑性樹脂B100質量部に対する前記熱可塑性樹脂Aの比率が750~2500質量部である、不織布。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂Bがアクリル酸エステル-スチレン共重合体である、請求項1に記載の不織布。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂Aが、ガラス転移点が0~15℃である熱可塑性樹脂Aaと、ガラス転移点が-10~0℃である熱可塑性樹脂Abとを含む、請求項1又は2に記載の不織布。
【請求項4】
前記不織布全体の質量に対する、前記第1糸群を構成する糸及び前記第2糸群を構成する糸以外、の成分の合計質量の割合が9~16質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の不織布。
【請求項5】
前記第1糸群を構成する糸及び前記第2糸群を構成する糸の少なくとも一方がガラス糸である、請求項1~4のいずれか1項に記載の不織布。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の不織布が巻かれた不織布ロール製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の糸が一方向に沿って配列された第1糸群と、複数の糸が一方向に沿って配列された第2糸群と、を含み、前記第1糸群を構成する糸と前記第2糸群を構成する糸とが直交するように積層されている、不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の糸が一方向に沿って配列された第1糸群と、複数の糸が一方向に沿って配列された第2糸群と、を含み、前記第1糸群を構成する糸と前記第2糸群を構成する糸とが直交するように積層されている、不織布が知られている。例えば、シート状に配列された経糸群とシート状に配列された緯糸群を二層以上交互に積層して基布状に一体化し、接着剤を含浸後加熱乾燥する工程を含む接着基布の製造において、エチレン-アクリル酸エステル共重合樹脂(a)、エチレン-アクリル酸エステル-マレイン酸共重合樹脂(b)、エチレン成分を70モル%以上含有するエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(c)からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂または樹脂混合物(A)100重量部とアクリル酸エステル樹脂(d)、エチレン-酢酸ビニル樹脂(e)、エチレン-酢酸ビニル-アクリル酸エステル樹脂(f)から選ばれるガラス転移点が10℃以下の樹脂の少なくとも1種の樹脂または樹脂混合物(B)10~900重量部を含む接着剤を用いることを特徴とする接着基布の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。該製造方法によれば、従来の塩化ビニル用接着基布の製造方法と同様に問題なくポリオレフィン用の接着基布の製造が可能であり、得られた接着基布は、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィンとよく接着し、これらの補強用として有用であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-328423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、実施可能な具体的な例として、実施例1では、樹脂または樹脂混合物(A)100重量部に対して、ガラス転移点が10℃以下の樹脂または樹脂混合物(B)を100質量部、実施例2では、樹脂または樹脂混合物(A)100重量部に対して、ガラス転移点が10℃以下の樹脂または樹脂混合物(B)を150質量部、実施例3では、樹脂または樹脂混合物(A)100重量部に対して、ガラス転移点が10℃以下の樹脂または樹脂混合物(B)を79.7質量部、としたことが開示されている。
【0005】
ここで、本発明者は、上記特許文献1においてその発明を実施し得る程度に記載されている実施例1~3の接着基布は、柔軟性に劣り、これをポリカーボネート樹脂等をマトリックス樹脂とする波板等の強化繊維として加工する際、当該接着基布等が変形した場合に修正することが困難であるという問題があることを知得した。
【0006】
そこで、本発明者は、上記特許文献1の接着基布の柔軟性を高めるべく、ガラス転移点が10℃以下の樹脂または樹脂混合物(B)の量を多くすることを想起した。しかしながら、本発明者が検討したところ、特許文献1の接着基布において、単に、ガラス転移点が10℃以下の樹脂または樹脂混合物(B)の量を多くするのみでは、接着基布をロール製品として、当該ロール製品から接着基布を巻き出す際に、接着基布を構成する経糸と緯糸が交点において剥離する場合があることを知得した。
【0007】
本発明は、上記問題を解決し、複数の糸が一方向に沿って配列された第1糸群と、複数の糸が一方向に沿って配列された第2糸群と、を含み、前記第1糸群を構成する糸と前記第2糸群を構成する糸とが直交するように積層されている、不織布において、柔軟性に優れ、かつ、当該不織布をロール製品として巻き出す際に第1糸群を構成する糸と第2糸群を構成する糸とが交点において剥離しにくい、不織布の提供を主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、特許文献1の接着基布において、単に、ガラス転移点が10℃以下の樹脂または樹脂混合物(B)の量を多くするのみでは、接着基布をロール製品として、当該ロール製品から接着基布を巻き出す際に、接着基布を構成する経糸と緯糸が交点において剥離する原因について検討した。
【0009】
本発明者が検討したところ、特許文献1の接着基布のような不織布をロール製品としたとき、当該ロール製品は、波板等の補強繊維として加工するまで、一旦、倉庫等に保管される。そして、通常、倉庫等は温度調整されていないことが多く、当該ロール製品が保管される温度としては夏場であれば35℃以上になることがある。
【0010】
ここで、本発明者は、特許文献1の接着基布において、単に、ガラス転移点が10℃以下の樹脂または樹脂混合物(B)の量を多くしたのみである接着基布をロール製品とし、これを夏場に温度調整されていない倉庫等に保管した場合、ロール製品中で接着基布同士が接触する部分において、接着基布に含まれる接着剤によりブロッキングが生じ、ロール製品から接着基布を巻き出す際、接着基布を構成する経糸と緯糸が交点において剥離することを知得した。
【0011】
そこで、本発明者がさらに検討を重ね、複数の糸が一方向に沿って配列された第1糸群と、複数の糸が一方向に沿って配列された第2糸群と、を含み、前記第1糸群を構成する糸と前記第2糸群を構成する糸とが直交するように積層されている、不織布であって、前記第1糸群に含まれる糸と前記第2糸群に含まれる糸とが交点において熱可塑性樹脂により固定されており、前記熱可塑性樹脂が、ガラス転移点が15℃以下である熱可塑性樹脂A、及び、ガラス転移点が35℃以上である熱可塑性樹脂Bを含み、前記熱可塑性樹脂B100質量部に対する前記熱可塑性樹脂Aの比率が750~2500質量部であるものとすることにより、柔軟性に優れ、かつ、当該不織布をロール製品として巻き出す際に第1糸群を構成する糸と第2糸群を構成する糸とが交点において剥離しにくくなることを突きとめた。
【0012】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.複数の糸が一方向に沿って配列された第1糸群と、複数の糸が一方向に沿って配列された第2糸群と、を含み、前記第1糸群を構成する糸と前記第2糸群を構成する糸とが直交するように積層されている、不織布であって、前記第1糸群に含まれる糸と前記第2糸群に含まれる糸とが交点において熱可塑性樹脂により固定されており、前記熱可塑性樹脂が、ガラス転移点が15℃以下である熱可塑性樹脂A、及び、ガラス転移点が35℃以上である熱可塑性樹脂Bを含み、前記熱可塑性樹脂B100質量部に対する前記熱可塑性樹脂Aの比率が750~2500質量部である、不織布。
項2.前記熱可塑性樹脂Bがアクリル酸エステル-スチレン共重合体である、項1に記載の不織布。
項3.前記熱可塑性樹脂Aが、ガラス転移点が0~15℃である熱可塑性樹脂Aaと、ガラス転移点が-10~0℃である熱可塑性樹脂Abとを含む、項1又は2に記載の不織布。
項4.前記不織布全体の質量に対する、前記第1糸群を構成する糸及び前記第2糸群を構成する糸以外、の成分の合計質量の割合が9~16質量%である、項1~3のいずれか1項に記載の不織布。
項5.前記第1糸群を構成する糸及び前記第2糸群を構成する糸の少なくとも一方がガラス糸である、項1~4のいずれか1項に記載の不織布。
項6.項1~5のいずれか1項に記載の不織布が巻かれた不織布ロール製品。
【発明の効果】
【0013】
本発明の不織布によれば、複数の糸が一方向に沿って配列された第1糸群と、複数の糸が一方向に沿って配列された第2糸群と、を含み、前記第1糸群を構成する糸と前記第2糸群を構成する糸とが直交するように積層されている、不織布であって、前記第1糸群に含まれる糸と前記第2糸群に含まれる糸とが交点において熱可塑性樹脂により固定されており、前記熱可塑性樹脂が、ガラス転移点が15℃以下である熱可塑性樹脂A、及び、ガラス転移点が35℃以上である熱可塑性樹脂Bを含み、前記熱可塑性樹脂B100質量部に対する前記熱可塑性樹脂Aの比率が750~2500質量部であることから、柔軟性に優れ、かつ、当該不織布をロール製品として巻き出す際に第1糸群を構成する糸と第2糸群を構成する糸とが交点において剥離しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】複数の糸が一方向に沿って配列された第1糸群と、複数の糸が一方向に沿って配列された第2糸群と、を含み、前記第1糸群を構成する糸と前記第2糸群を構成する糸とが直交するように積層されている、不織布の一例を示す模式図である。
図2】不織布の柔軟性の測定方法を説明する模式図である。
図3】不織布の柔軟性の測定のサンプルを説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の不織布は、複数の糸が一方向に沿って配列された第1糸群と、複数の糸が一方向に沿って配列された第2糸群と、を含み、前記第1糸群を構成する糸と前記第2糸群を構成する糸とが直交するように積層されている、不織布であって、前記第1糸群に含まれる糸と前記第2糸群に含まれる糸とが交点において熱可塑性樹脂により固定されており、前記熱可塑性樹脂が、ガラス転移点が15℃以下である熱可塑性樹脂A、及び、ガラス転移点が35℃以上である熱可塑性樹脂Bを含み、前記熱可塑性樹脂B100質量部に対する前記熱可塑性樹脂Aの比率が750~2500質量部である。以下、詳述する。
【0016】
<不織布の構成>
本発明の不織布は、複数の糸が一方向に沿って配列された第1糸群と、複数の糸が一方向に沿って配列された第2糸群と、を含み、前記第1糸群を構成する糸と前記第2糸群を構成する糸とが直交するように積層されている。図1は、複数の糸が一方向に沿って配列された第1糸群と、複数の糸が一方向に沿って配列された第2糸群と、を含み、前記第1糸群を構成する糸と前記第2糸群を構成する糸とが直交するように積層されている不織布の一例を示す模式図である。
【0017】
具体的には、図1(a)は、複数の糸2a及び2bが一方向に沿って配列された第1糸群と、複数の糸3が一方向に沿って配列された第2糸群と、を含み、第1糸群を構成する糸2a及び糸2bと第2糸群を構成する糸3とが直交するように積層されており、糸2b、糸3、糸2aがこの順で含まれるように積層されている不織布1の一例を示す模式図である。図1(a)では、第1糸群に含まれる糸2a及び糸2bと第2糸群に含まれる糸3とが交点4において後述する熱可塑性樹脂により固定されている。
【0018】
また、図1(b)は、複数の糸2c及び2dが一方向に沿って配列された第1糸群と、複数の糸3が一方向に沿って配列された第2糸群と、を含み、第1糸群を構成する糸2c及び糸2dと第2糸群を構成する糸3とが直交するように積層されており、糸2cが糸3の上下方向のいずれか一方側に含まれるように積層され、糸2dが糸3の上下方向のうち糸2cとは反対側に含まれるように積層されており、糸2cと糸3との交点4cと、糸2dと糸3との交点4dと、が、糸3の上下方向において互いに重ならないように配置されている不織布1の一例を示す模式図である。図1(b)では、第1糸群に含まれる糸2cと第2糸群に含まれる糸3とが交点4cにおいて後述する熱可塑性樹脂により固定されており、第1糸群に含まれる糸2dと第2糸群に含まれる糸3とが交点4dにおいて後述する熱可塑性樹脂により固定されている。
【0019】
不織布1を構成する糸2及び糸3としては、ガラス糸、炭素繊維糸、セラミック繊維糸、鉱物繊維糸等の無機繊維糸、ポリアミド繊維糸、アラミド繊維糸、ビニロン繊維糸、ポリエステル繊維糸等の有機繊維糸が挙げられる。中でも、本発明の効果がより奏しやすくなるという観点から、無機繊維糸が好ましく、ガラス糸が好ましい。また、上記の糸を組み合わせて使用することができ、例えば、糸2を無機繊維糸、糸3を有機繊維糸、糸2を有機繊維糸、糸3を無機繊維糸、等することができる。
【0020】
不織布1を構成する糸2及び糸3の形態としては特に制限されないが、モノフィラメント糸、またはマルチフィラメント糸が挙げられ、糸2と糸3との接着性により優れるという観点からマルチフィラメント糸が好ましく挙げられる。
【0021】
上記マルチフィラメント糸を構成する単繊維の平均繊維直径としては特に制限されないが、例えば、4.5~10μmが挙げられ、6~9μmが好ましく挙げられる。本発明において、平均繊維直径は、不織布をエポキシ樹脂(丸本ストルアス株式会社製商品名3091)に包埋して硬化させ、糸断面が観察可能な程度に研磨し、SEM(日本電子株式会社製商品名JSM-6390A)を用い、倍率500倍で観察、測定をおこなう。糸を無作為に20本選び、該糸20本の単繊維の直径(最も大きい部分)を測定して平均値を算出し、単繊維の平均繊維直径とする。また、上記マルチフィラメント糸を構成する単繊維の本数としては特に制限されないが、例えば、100~800本が挙げられ、150~450本が好ましく挙げられる。
【0022】
糸2及び糸3の番手としては特に制限されないが、例えば、4~150texが挙げられ、20~75texが好ましく挙げられる。なお、本発明において上記番手は、JIS R 3420 2013 7.1に準じて、測定、算出する。
【0023】
本発明の不織布1において、平面方向視から見た第1糸群に含まれる糸2の密度(例えば、図1(a)では互いに積層される糸2aと糸2bはまとめて1本と数え、図1(b)では糸2c及び糸2dをそれぞれ1本として数える。)、及び第2糸群に含まれる糸3の密度としては、特に制限されないが、例えば、1.25~10本/25mmが挙げられる。中でも、図1(a)に示す態様とする場合、第1糸群に含まれる糸2の密度として2.5~10本/25mmが好ましく挙げられる。また、図1(a)に示す態様とする場合、第2糸群に含まれる糸3の密度として2.5~10本/25mmが好ましく挙げられる。また、図1(b)に示す態様とする場合、第1糸群に含まれる糸2の密度として2.5~10本/25mmが好ましく挙げられる。また、図1(b)に示す態様とする場合、第2糸群に含まれる糸3の密度として2.5~10本/25mmが好ましく挙げられる。本発明において、平面方向視から見た第1糸群に含まれる糸2の密度及び第2糸群に含まれる糸3の密度は、JIS R 3420 7.9密度に準じて測定、算出される。具体的に、測定間隔を100mmとし、校正された定規のゼロ点又は目印となる点が糸2又は糸3の右端にくるように不織布1の上にメモリの向きが右向きであるmm定規を糸2または糸3と直交方向するように置き、100mm間にある全部の糸2又は糸3の本数を測定する(前述した校正された定規のゼロ点又は目印となる点が右端にくる糸2又は糸3、及び、100mmの目盛りの地点が糸2又は糸3のと重なる当該糸2又は糸3は数えない)。これを1回の測定とし、前に測定した糸2又は糸3が含まれない他の位置に移して、更に4回測定する。5回の測定毎に、不織布1の25mm当たりの糸2又は糸3の糸本数を、次の式(1)によって計算する。
密度=(測定した糸本数×25)/100 ・・・(1)
【0024】
<熱可塑性樹脂>
本発明の不織布1は、第1糸群に含まれる糸2と前記第2糸群に含まれる糸3とが交点4において熱可塑性樹脂により固定されており、熱可塑性樹脂が、ガラス転移点が15℃以下である熱可塑性樹脂A、及び、ガラス転移点が35℃以上である熱可塑性樹脂Bを含む。熱可塑性樹脂A及び熱可塑性樹脂Bは、少なくとも交点4において含まれればよいが、不織布1の交点4以外の部分にも含まれていてもよい。すなわち、熱可塑性樹脂A及び熱可塑性樹脂Bは、不織布1の交点4及び交点4以外の部分において、糸2及び糸3の少なくとも一部に含まれており、交点4において、糸2及び糸3が熱可塑性樹脂A及び熱可塑性樹脂Bにより接着固定されている不織布とすることができる。
【0025】
(熱可塑性樹脂A)
本発明の不織布1において、熱可塑性樹脂Aは、ガラス転移点が15℃以下である。当該ガラス転移点である熱可塑性樹脂Aを含むことにより、不織布1に柔軟性を与えることができる。上記ガラス転移点としては12℃以下が好ましい。なお、本発明において、熱可塑性樹脂のガラス転移点は、TAインスツルメント製RSA-G2 DMAにより周波数1Hz、昇温速度2℃/分にて測定される。上記ガラス転移点の下限値としては特に制限されないが、例えば、-10℃以上とすることが挙げられる。
【0026】
さらに、上記熱可塑性樹脂Aは、ガラス転移点が0~15℃である熱可塑性樹脂Aaと、ガラス転移点が-10~0℃である熱可塑性樹脂Abとを含むことがより好ましい。これにより、得られる不織布の、柔軟性と、当該不織布をロール製品として巻き出す際に第1糸群を構成する糸と第2糸群を構成する糸とが交点において剥離しにくくすることとを、より一層両立させやすくなる。
【0027】
熱可塑性樹脂Aの種類としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、アクリル酸エステル共重合体、ウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、SBR、(スチレン・ブタジエンゴムラテックス)、MBR(メチルメタクリレート・ブタジエンゴムラテックス)、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴムラテックス)等のラテックスが挙げられる。また、熱可塑性樹脂Aaとしては、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、アクリル酸エステル共重合体、ウレタン系樹脂が挙げられ、不織布をロール製品として巻き出す際に第1糸群を構成する糸と第2糸群を構成する糸とが交点においてより一層剥離しにくくする観点から、エチレン-酢酸ビニル共重合体が好ましい。また、熱可塑性樹脂Abとしては、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、アクリル酸エステル共重合体、ウレタン系樹脂等が挙げられる。
【0028】
上記熱可塑性樹脂Aaと熱可塑性樹脂Abとを含むものとする場合、熱可塑性樹脂Aaの不揮発性成分の含有量(g/m2)と熱可塑性樹脂Abの不揮発性成分の含有量(g/m2)との比率(熱可塑性樹脂Aaの不揮発性成分の含有量/熱可塑性樹脂Abの不揮発性成分の含有量)としては、例えば、0.25~1.0が挙げられ、0.5~0.8がより好ましく挙げられる。なお、本発明において、不揮発性成分とは、常圧下、110℃で熱処理して溶媒等を除去し、恒量に達した時の絶乾成分をいう。
【0029】
本発明の不織布1において、上記熱可塑性樹脂Aの質量としては、例えば、1.9~5.4g/m2が挙げられ、2.2~5.3g/m2が好ましく挙げられる。
【0030】
(熱可塑性樹脂B)
本発明の不織布1において、熱可塑性樹脂Bは、ガラス転移点が35℃以上であり、50℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。当該ガラス転移点である熱可塑性樹脂Bを含むことにより、不織布をロール製品としこれを例えば夏場に温度調整されていない倉庫等に保管した場合に、ブロッキングが生じにくくなり、当該ロール製品から不織布を巻き出す際に第1糸群を構成する糸と第2糸群を構成する糸とが交点において剥離しにくくすることができる。上記ガラス転移点の上限値としては特に制限されないが、例えば、150℃以下とすることが挙げられる。
【0031】
熱可塑性樹脂Bの種類としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、アクリル酸エステル共重合体、ウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、SBR、(スチレン・ブタジエンゴムラテックス)、MBR(メチルメタクリレート・ブタジエンゴムラテックス)、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴムラテックス)等のラテックスが挙げられ、不織布をロール製品として巻き出す際に第1糸群を構成する糸と第2糸群を構成する糸とが交点においてより一層剥離しにくくする観点及び樹脂価格の観点から、アクリル酸-スチレン共重合体が好ましく挙げられる。
【0032】
アクリル酸-スチレン共重合体としては、アクリル酸2-エチルヘキシル・スチレン共重合体、アクリル酸メチル・スチレン共重合体、アクリル酸エチル・スチレン共重合体、アクリル酸ブチル・スチレン共重合体、スチレン・α-メチルスチレン・アクリル酸共重合体、アクリル酸・アクリル酸ブチル・スチレン共重合体、アクリル酸・アクリル酸ブチル・スチレン共重合体(CAS:25586-20-3)、下記化学式(1)に示すもの、及び下記化学式(2)に示すものからなる群より選ばれる1種以上が好ましく挙げられる。
【0033】
【化1】
【0034】
【化2】
【0035】
本発明の不織布1において、上記熱可塑性樹脂Bの質量としては、例えば、0.09~0.44g/m2が挙げられ、0.10~0.43g/m2が好ましく挙げられ、0.10~0.23g/m2がより好ましく挙げられる。
【0036】
(熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bとの比率)
本発明の不織布1において、前記熱可塑性樹脂B100質量部に対する前記熱可塑性樹脂Aの比率が750~2500質量部である。当該比率とすることにより、得られる不織布は、柔軟性に優れ、かつ、当該不織布をロール製品として巻き出す際に糸2と糸3とが交点において剥離しにくくなる。柔軟性をより一層高める観点から、前記熱可塑性樹脂B100質量部に対する前記熱可塑性樹脂Aの比率が2000~2400質量部とすることが好ましい。なお、上記質量部は不揮発性成分の質量部である。
【0037】
また、本発明の不織布は、第1糸群に含まれる糸2と前記第2糸群に含まれる糸3とを交点4において固定する熱可塑性樹脂が、ガラス転移点が15℃以下の熱可塑性樹脂Aと、ガラス転移点が80℃以上の熱可塑性樹脂B´とを含み、前記熱可塑性樹脂B´100質量部に対する前記熱可塑性樹脂Aの比率が750~2500質量部であり、かつ、前記熱可塑性樹脂B´100質量部に対するガラス転移点が16~60℃の熱可塑性樹脂Cの比率が0~10質量部であるものとすることが好ましい。この場合、前記熱可塑性樹脂B´100質量部に対するガラス転移点が16~60℃の熱可塑性樹脂Cの比率は、0~5質量部がより好ましく、0~2質量部とすることがさらに好ましく、熱可塑性樹脂Cを含まないものとすることが特に好ましい。
【0038】
(本発明の不織布の物性)
本発明の不織布は、不織布1全体の質量に対する、熱可塑性樹脂A及び熱可塑性樹脂Bの合計質量の割合としては、例えば、5~30質量%が挙げられ、9~20質量%が好ましく挙げられる。とりわけ、不織布1をロール製品として不織布1を巻き出す場合に、第1糸群を構成する糸と第2糸群を構成する糸とが交点においてより剥離しにくくする観点から、上記割合は7~15質量%とすることが特に好ましい。また、本発明の不織布1は、不織布1全体の質量に対する、第1糸群を構成する糸2及び第2糸群を構成する糸3以外、の成分の合計質量の割合としては、例えば、5~30質量%が挙げられ、7~18質量%が好ましく挙げられ、9~16質量%がより好ましく挙げられ、11~13質量%が特に好ましく挙げられる。また、本発明の不織布1において、第1糸群を構成する糸2及び第2糸群を構成する糸3以外、の成分の合計質量に対する、熱可塑性樹脂A及び熱可塑性樹脂Bの合計質量の割合としては、85~100質量%が挙げられ、90~100質量%が好ましく挙げられる。
【0039】
また、本発明の不織布1全体の質量(g/m)に対する、第1糸群を構成する糸2と第2糸群を構成する糸3との合計質量(g/m)の割合としては、70~95質量%が挙げられ、80~95質量%が好ましく挙げられ、87~89質量%がより好ましく挙げられる。
【0040】
本発明の不織布の厚さとしては特に制限されないが、0.10~0.24mmが挙げられ、0.13~0.20mmが好ましく挙げられ、0.14~0.20mmがより好ましく挙げられる。本発明において、上記厚さは、次のように測定することができる。すなわち、JISR3420 の7.10に準じてマイクロメーターで測定する。
【0041】
また、本発明の不織布の質量としては、27~38g/mが挙げられ、29~36g/mが好ましく挙げられる。
【0042】
本発明の不織布が備える好ましい柔軟性としては、例えば、140mm以下が好ましく、130mm以下がより好ましい。本発明において、不織布の柔軟性は次のように測定する。すなわち、JIS L 1096:2010 8.21A法で示す図2のような一端が45°の斜面をもつ表面の滑らかな水平台の上に試験片の短辺をスケール基線に合わせて置く。次に、試験片を斜面の方向に緩やかに滑らせて、試験片の一端が斜面Aと接したときに他端の位置をスケールによって、滑らした試験片の長さを測定する。試験片はまず、不織布から、第1糸群を構成する糸2a及び2bの長手方向(図1(b)の場合は糸2c及び2dの長手方向)に糸3が2本分となるようにカットし、第2糸群を構成する糸3について長手方向に250mmとなるようにカットした試験片(図3参照)を5枚準備し、試験片5枚の裏表の剛軟度をそれぞれ測定する。試験片5枚の裏表の剛軟度の算術平均値を算出し、試験片の柔軟性とする。なお、測定は、不織布試験片を机に静置し、当該試験片の上から質量5kg、1辺の長さが250mmの立方体形状の荷重を置き、そのまま24時間放置した後に測定する。上記柔軟性の下限値については特に制限されないが、例えば、50mm以上が挙げられる。
【0043】
<本発明の不織布の製造方法>
本発明の不織布の製造方法としては特に制限されず、公知の方法を適用すればよい。例えば、特開2002-20961号公報に開示されている不織網状布の製造装置を用いて製造することができる。この場合、特開2002-20961号公報における経糸としては、第1糸群を構成する糸2とし、特開2002-20961号公報における緯糸としては、第2糸群を構成する糸3とすることができる。そして、ガラス転移点が15℃以下である熱可塑性樹脂A、及び、ガラス転移点が35℃以上である熱可塑性樹脂Bを、熱可塑性樹脂B100質量部に対する前記熱可塑性樹脂Aの比率が750~2500質量部となるように混合し、これを特開2002-20961号公報における接着剤塗布装置(5)に供給し、接着剤とする。
【0044】
上記接着剤塗布装置(5)に供給する接着剤液中における、ガラス転移点が15℃以下である熱可塑性樹脂A、及び、ガラス転移点が35℃以上である熱可塑性樹脂Bの合計濃度としては、例えば、6~18質量%とすることが挙げられる。また、特開2002-20961号公報における加熱装置(6)の加熱ロール(17)の温度としては、100~130℃とすることが挙げられる。
【0045】
そして、特開2002-20961号公報に開示されている不織網状布の製造装置で得られた不織布を連続的に巻き取れば、本発明の不織布ロール製品を得ることができる。
【0046】
<本発明の不織布の用途>
本発明の不織布は、熱可塑性樹脂シートと積層されることで床材や防水シート等に使用される。なお熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリレート共重合体、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂等の熱可塑性樹脂、天然ゴム、ネオプレン、イソプレン、ポリブタジエン、NBR、SBR等のゴム、スチレン系、ポリエステル系、ポリウレタン系等の熱可塑性エラストマーなどに各種添加剤を混合し、カレンダー加工や押出加工等でシート状に加工したものが挙げられる。
【実施例0047】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0048】
<実施例1>
第1糸群を構成する糸2a及び2b、並びに第2糸群を構成する糸3として、複数のガラス長繊維が撚り集められたマルチフィラメント糸であるガラスヤーン(単繊維の平均繊維直径が9μm、単繊維の本数が200本、番手33.7tex)を準備した。
【0049】
第1糸群を構成する糸2a及び2bと、第2糸群を構成する糸3とを交点で接着固定する接着剤として、以下の配合1とした接着剤を準備した。
【0050】
(配合1)
・ガラス転移点が15℃以下である熱可塑性樹脂A
(1)エチレン-酢酸ビニル共重合体エマルジョン(ガラス転移点(Tg)10℃、不揮発性成分56質量%):11.1質量部
(2)アクリル酸エステル共重合体(ブチルアクリレート・メチルアクリレート・プロピルアクリレート共重合体)エマルジョン(ガラス転移点(Tg)-7℃、不揮発性成分50質量%):18.8質量部
・ガラス転移点が35℃以上である熱可塑性樹脂B
(3)アクリル酸・アクリル酸ブチル・スチレン共重合体エマルジョン(ガラス転移点(Tg)96℃、不揮発性成分49質量%):1.5質量部
(4)純水:63.2質量部
合計:94.6質量部
【0051】
特開2002-20961号公報で開示されている不織網状布の製造装置を用い、上記準備したガラスヤーンを経糸及び緯糸とし、上記準備した接着剤を特開2002-20961の接着剤塗布装置(5)に供給し、加熱ロール(17)の温度を120℃として、図1(a)に示す態様である本発明の不織布1とし、これを長さ2000m巻き取って不織布ロール製品とした。得られた不織布における接着剤の不揮発性成分の組成について、表1に示す。
【0052】
<実施例2>
第1糸群を構成する糸2a及び2b、並びに第2糸群を構成する糸3として、複数のガラス長繊維が撚り集められたマルチフィラメント糸であるガラスヤーン(単繊維の平均繊維直径が9μm、単繊維の本数が200本、番手33.7tex)を準備した。
【0053】
第1糸群を構成する糸2a及び2bと、第2糸群を構成する糸3とを交点で接着固定する接着剤として、以下の配合2とした接着剤を準備した。
【0054】
(配合2)
・ガラス転移点が15℃以下である熱可塑性樹脂A
(1)アクリル樹脂エマルジョン(ガラス転移点(Tg)12℃、不揮発性成分47質量%):13.3質量部
(2)アクリル酸エステル共重合体(ブチルアクリレート・メチルアクリレート・プロピルアクリレート共重合体)エマルジョン(ガラス転移点(Tg)-7℃、不揮発性成分50質量%):18.7質量部
・ガラス転移点が35℃以上である熱可塑性樹脂B
(3)アクリル酸・アクリル酸ブチル・スチレン共重合体エマルジョン(ガラス転移点(Tg)96℃、不揮発性成分49質量%):1.5質量部
(4)純水:61.1質量部
合計:94.6質量部
【0055】
特開2002-20961号公報で開示されている不織網状布の製造装置を用い、上記準備したガラスヤーンを経糸及び緯糸とし、上記準備した接着剤を特開2002-20961の接着剤塗布装置(5)に供給し、加熱ロール(17)の温度を120℃として、図1(a)に示す態様である本発明の不織布1とし、これを長さ2000m巻き取って不織布ロール製品とした。得られた不織布における接着剤の不揮発性成分の組成について、表1に示す。
【0056】
<実施例3>
第1糸群を構成する糸2a及び2b、並びに第2糸群を構成する糸3として、複数のガラス長繊維が撚り集められたマルチフィラメント糸であるガラスヤーン(単繊維の平均繊維直径が9μm、単繊維の本数が200本、番手33.7tex)を準備した。
【0057】
第1糸群を構成する糸2a及び2bと、第2糸群を構成する糸3とを交点で接着固定する接着剤として、以下の配合3とした接着剤を準備した。
【0058】
(配合3)
・ガラス転移点が15℃以下である熱可塑性樹脂A
(1)エチレン-酢酸ビニル共重合体エマルジョン(ガラス転移点(Tg)10℃、不揮発性成分56質量%):10.4質量部
(2)アクリル酸エステル共重合体(ブチルアクリレート・メチルアクリレート・プロピルアクリレート共重合体)エマルジョン(ガラス転移点(Tg)-7℃、不揮発性成分50質量%):17.6質量部
・ガラス転移点が35℃以上である熱可塑性樹脂B
(3)アクリル酸・アクリル酸ブチル・スチレン共重合体エマルジョン(ガラス転移点(Tg)96℃、不揮発性成分49質量%):3.7質量部
(4)純水:63.2質量部
合計:94.9質量部
【0059】
特開2002-20961号公報で開示されている不織網状布の製造装置を用い、上記準備したガラスヤーンを経糸及び緯糸とし、上記準備した接着剤を特開2002-20961の接着剤塗布装置(5)に供給し、加熱ロール(17)の温度を120℃として、図1(a)に示す態様である本発明の不織布1とし、これを長さ2000m巻き取って不織布ロール製品とした。得られた不織布における接着剤の不揮発性成分の組成について、表1に示す。
【0060】
<実施例4>
第1糸群を構成する糸2a及び2b、並びに第2糸群を構成する糸3として、複数のガラス長繊維が撚り集められたマルチフィラメント糸であるガラスヤーン(単繊維の平均繊維直径が9μm、単繊維の本数が200本、番手33.7tex)を準備した。
【0061】
第1糸群を構成する糸2a及び2bと、第2糸群を構成する糸3とを交点で接着固定する接着剤として、以下の配合4とした接着剤を準備した。
【0062】
(配合4)
・ガラス転移点が15℃以下である熱可塑性樹脂A
(1)エチレン-酢酸ビニル共重合体エマルジョン(ガラス転移点(Tg)10℃、不揮発性成分56質量%):8.8質量部
(2)アクリル酸エステル共重合体(ブチルアクリレート・メチルアクリレート・プロピルアクリレート共重合体)エマルジョン(ガラス転移点(Tg)-7℃、不揮発性成分50質量%):15.0質量部
・ガラス転移点が35℃以上である熱可塑性樹脂B
(3)アクリル酸・アクリル酸ブチル・スチレン共重合体エマルジョン(ガラス転移点(Tg)96℃、不揮発性成分49質量%):1.2質量部
(4)純水:70.5質量部
合計:95.5質量部
【0063】
特開2002-20961号公報で開示されている不織網状布の製造装置を用い、上記準備したガラスヤーンを経糸及び緯糸とし、上記準備した接着剤を特開2002-20961の接着剤塗布装置(5)に供給し、加熱ロール(17)の温度を120℃として、図1(a)に示す態様である本発明の不織布1とし、これを長さ2000m巻き取って不織布ロール製品とした。得られた不織布における接着剤の不揮発性成分の組成について、表1に示す。
【0064】
<実施例5>
第1糸群を構成する糸2a及び2b、並びに第2糸群を構成する糸3として、複数のガラス長繊維が撚り集められたマルチフィラメント糸であるガラスヤーン(単繊維の平均繊維直径が9μm、単繊維の本数が200本、番手33.7tex)を準備した。
【0065】
第1糸群を構成する糸2a及び2bと、第2糸群を構成する糸3とを交点で接着固定する接着剤として、以下の配合5とした接着剤を準備した。
【0066】
(配合5)
・ガラス転移点が15℃以下である熱可塑性樹脂A
(1)エチレン-酢酸ビニル共重合体エマルジョン(ガラス転移点(Tg)10℃、不揮発性成分56質量%):13.7質量部
(2)アクリル酸エステル共重合体(ブチルアクリレート・メチルアクリレート・プロピルアクリレート共重合体)エマルジョン(ガラス転移点(Tg)-7℃、不揮発性成分50質量%):23.2質量部
・ガラス転移点が35℃以上である熱可塑性樹脂B
(3)アクリル酸・アクリル酸ブチル・スチレン共重合体エマルジョン(ガラス転移点(Tg)96℃、不揮発性成分49質量%):1.9質量部
(4)純水:54.6質量部
合計:93.4質量部
【0067】
特開2002-20961号公報で開示されている不織網状布の製造装置を用い、上記準備したガラスヤーンを経糸及び緯糸とし、上記準備した接着剤を特開2002-20961の接着剤塗布装置(5)に供給し、加熱ロール(17)の温度を120℃として、図1(a)に示す態様である本発明の不織布1とし、これを長さ2000m巻き取って不織布ロール製品とした。得られた不織布における接着剤の不揮発性成分の組成について、表1に示す。
【0068】
<比較例1>
第1糸群を構成する糸2a及び2b、並びに第2糸群を構成する糸3として、複数のガラス長繊維が撚り集められたマルチフィラメント糸であるガラスヤーン(単繊維の平均繊維直径が9μm、単繊維の本数が200本、番手33.7tex)を準備した。
【0069】
第1糸群を構成する糸2a及び2bと、第2糸群を構成する糸3とを交点で接着固定する接着剤として、以下の配合6とした接着剤を準備した。
【0070】
(配合6)
・ガラス転移点が15℃以下である熱可塑性樹脂A
(1)エチレン-酢酸ビニル共重合体エマルジョン(ガラス転移点(Tg)10℃、不揮発性成分56質量%):11.1質量部
(2)アクリル酸エステル共重合体(ブチルアクリレート・メチルアクリレート・プロピルアクリレート共重合体)エマルジョン(ガラス転移点(Tg)-7℃、不揮発性成分50質量%):18.8質量部
(3)アクリル樹脂エマルジョン(ガラス転移点(Tg)12℃、不揮発性成分47質量%):1.5質量部
(4)純水:63.2質量部
合計:94.6質量部
【0071】
特開2002-20961号公報で開示されている不織網状布の製造装置を用い、上記準備したガラスヤーンを経糸及び緯糸とし、上記準備した接着剤を特開2002-20961の接着剤塗布装置(5)に供給し、加熱ロール(17)の温度を120℃として、図1(a)に示す態様である本発明の不織布1とし、これを長さ2000m巻き取って不織布ロール製品とした。得られた不織布における接着剤の不揮発性成分の組成について、表1に示す。
【0072】
<比較例2>
第1糸群を構成する糸2a及び2b、並びに第2糸群を構成する糸3として、複数のガラス長繊維が撚り集められたマルチフィラメント糸であるガラスヤーン(単繊維の平均繊維直径が9μm、単繊維の本数が200本、番手33.7tex)を準備した。
【0073】
第1糸群を構成する糸2a及び2bと、第2糸群を構成する糸3とを交点で接着固定する接着剤として、以下の配合7とした接着剤を準備した。
【0074】
(配合7)
・ガラス転移点が15℃以下である熱可塑性樹脂A
(1)エチレン-酢酸ビニル共重合体エマルジョン(ガラス転移点(Tg)10℃、不揮発性成分56質量%):9.9質量部
(2)アクリル酸エステル共重合体(ブチルアクリレート・メチルアクリレート・プロピルアクリレート共重合体)エマルジョン(ガラス転移点(Tg)-7℃、不揮発性成分50質量%):16.7質量部
・ガラス転移点が35℃以上である熱可塑性樹脂B
(3)アクリル酸・アクリル酸ブチル・スチレン共重合体エマルジョン(ガラス転移点(Tg)96℃、不揮発性成分49質量%):5.3質量部
(4)純水:63.1質量部
合計:95.1質量部
【0075】
特開2002-20961号公報で開示されている不織網状布の製造装置を用い、上記準備したガラスヤーンを経糸及び緯糸とし、上記準備した接着剤を特開2002-20961の接着剤塗布装置(5)に供給し、加熱ロール(17)の温度を120℃として、図1(a)に示す態様である本発明の不織布1とし、これを長さ2000m巻き取って不織布ロール製品とした。得られた不織布における接着剤の不揮発性成分の組成について、表1に示す。
【0076】
<比較例3>
第1糸群を構成する糸2a及び2b、並びに第2糸群を構成する糸3として、複数のガラス長繊維が撚り集められたマルチフィラメント糸であるガラスヤーン(単繊維の平均繊維直径が9μm、単繊維の本数が200本、番手33.7tex)を準備した。
【0077】
第1糸群を構成する糸2a及び2bと、第2糸群を構成する糸3とを交点で接着固定する接着剤として、以下の配合8とした接着剤を準備した。
【0078】
(配合8)
・ガラス転移点が15℃以下である熱可塑性樹脂A
(1)アクリル酸エステル共重合体(ブチルアクリレート・メチルアクリレート・プロピルアクリレート共重合体)エマルジョン(ガラス転移点(Tg)-7℃、不揮発性成分50質量%):18.8質量部
・ガラス転移点が35℃以上である熱可塑性樹脂B
(2)アクリル酸・アクリル酸ブチル・スチレン共重合体エマルジョン(ガラス転移点(Tg)90℃、不揮発性成分49質量%):1.5質量部
(3)アクリル樹脂エマルジョン(ガラス転移点(Tg)39℃、不揮発性成分56質量%):15.5質量部
(4)純水:58.7質量部
合計:94.5質量部
【0079】
特開2002-20961号公報で開示されている不織網状布の製造装置を用い、上記準備したガラスヤーンを経糸及び緯糸とし、上記準備した接着剤を特開2002-20961の接着剤塗布装置(5)に供給し、加熱ロール(17)の温度を120℃として、図1(a)に示す態様である本発明の不織布1とし、これを長さ2000m巻き取って不織布ロール製品とした。得られた不織布における接着剤の不揮発性成分の組成について、表1に示す。
【0080】
<評価方法>
1.平面方向視から見た、第1糸群に含まれる糸2の密度及び第2糸群に含まれる糸3の密度
前述の方法にて測定、算出した。結果を表1に示す。
【0081】
2.不織布1全体の質量に対する、第1糸群を構成する糸2及び第2糸群を構成する糸3以外、の成分の合計質量の割合(質量%)
JIS R 3420:2013 7.3.2に準じて強熱減量を測定し、当該強熱減量を不織布1全体の質量に対する、第1糸群を構成する糸2及び第2糸群を構成する糸3以外、の成分の合計質量の割合とした。結果を表1に示す。
【0082】
3.不織布の柔軟性
得られた不織布の柔軟性について、以下のように評価した。すなわち、JIS L 1096:2010 8.21A法で示す図2のような一端が45°の斜面をもつ表面の滑らかな水平台の上に試験片の短辺をスケール基線に合わせて置いた。次に、試験片を斜面の方向に緩やかに滑らせて、試験片の一端が斜面Aと接したときに他端の位置をスケールによって、滑らした試験片の長さを測定した。試験片はまず、不織布から、第1糸群を構成する糸2a及び2bの長手方向(図1(b)の場合は糸2c及び2dの長手方向)に糸3が2本分となるようにカットし、第2糸群を構成する糸3について長手方向に250mmとなるようにカットした試験片(図3参照)を5枚準備し、試験片5枚の裏表の剛軟度をそれぞれ測定した。試験片5枚の裏表の剛軟度の算術平均値を算出し、不織布の柔軟性とした。なお、測定は、不織布試験片を机に静置し、当該試験片の上から質量5kg、1辺の長さが250mmの立方体形状の荷重を置き、そのまま24時間放置した後に測定した。140mm以下を合格とした。結果を表1に示す。
【0083】
4.不織布をロール製品として巻き出す際の、第1糸群を構成する糸と第2糸群を構成する糸との交点における剥離のしにくさ
得られた不織布を10cm×10cmにカットし、カットした不織布サンプルを20枚積層しその上に1辺の長さが10mmである立方体形状で、質量10kgの荷重を乗せ、温度40℃、湿度80%の恒温高湿環境下に、7日間静置した。その後、荷重を取り除いて積層したサンプルをまとめてとりだし、一番上に積層されている不織布サンプルから積層されている不織布サンプルを順に1枚ずつ同じ力、同じ速度となるように手で引き剥がしていき、引き剥がしのしやすさについて下記基準により評価した。3点以上を合格とした。結果を表1に示す。
5点:引き剥がした不織布の交点が1つも剥離されること無く、20枚の積層体から4枚以上に引き剥がすことができた。
4点:引き剥がした不織布の交点が1つも剥離されること無く、20枚の積層体から2~3枚引き剥がすことができた。
3点:引き剥がした不織布の交点が1つも剥離されること無く、20枚の積層体から1枚引き剥がすことができた。
2点:20枚の積層体から1枚引き剥がすことができたが、引き剥がした不織布は交点が1つ以上剥離されていた。
1点:20枚が一体化しており、1枚も引き剥がしが出来なかった。
【0084】
【表1】
【0085】
実施例1~5の不織布は、複数の糸が一方向に沿って配列された第1糸群と、複数の糸が一方向に沿って配列された第2糸群と、を含み、前記第1糸群を構成する糸と前記第2糸群を構成する糸とが直交するように積層されている、不織布であって、前記第1糸群に含まれる糸と前記第2糸群に含まれる糸とが交点において熱可塑性樹脂により固定されており、前記熱可塑性樹脂が、ガラス転移点が15℃以下である熱可塑性樹脂A、及び、ガラス転移点が35℃以上である熱可塑性樹脂Bを含み、前記熱可塑性樹脂B100質量部に対する前記熱可塑性樹脂Aの比率が750~2500質量部であることから、柔軟性に優れ、かつ、当該不織布をロール製品として巻き出す際に第1糸群を構成する糸と第2糸群を構成する糸とが交点において剥離しにくくなるものであった。
【0086】
実施例1~3で比較すると、実施例1及び2は、熱可塑性樹脂B100質量部に対する熱可塑性樹脂Aの比率が2000~2400質量部であったことから、柔軟性がより一層優れたものであった。
【0087】
また、実施例1、4及び5を比較すると、実施例1は、不織布1全体の質量に対する、第1糸群を構成する糸2及び第2糸群を構成する糸3以外、の成分の合計質量の割合が11~13質量%であったことから、不織布をロール製品として巻き出す際に第1糸群を構成する糸と第2糸群を構成する糸とが交点においてより剥離しにくくなるものであった。
【0088】
一方、比較例1は、ガラス転移点が35℃以上である熱可塑性樹脂Bを含まなかったことから、当該不織布をロール製品として巻き出す際に第1糸群を構成する糸と第2糸群を構成する糸とが交点において剥離してしまうものであった。
【0089】
また、比較例2及び3は、熱可塑性樹脂B100質量部に対する熱可塑性樹脂Aの比率が750質量部未満であったことから、柔軟性に劣るものであった。
【符号の説明】
【0090】
1 不織布
2 第1糸群を構成する糸
3 第2糸群を構成する糸
4 交点
図1
図2
図3