(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035506
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】破断面検査方法及び破断面検査装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20220225BHJP
G01B 11/30 20060101ALI20220225BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20220225BHJP
【FI】
G01B11/24 K
G01B11/30 A
G06T7/00 610B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020139875
(22)【出願日】2020-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】000139687
【氏名又は名称】株式会社安永
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 僚祐
【テーマコード(参考)】
2F065
5L096
【Fターム(参考)】
2F065AA52
2F065BB05
2F065CC11
2F065DD03
2F065DD06
2F065EE00
2F065FF04
2F065JJ03
2F065QQ03
2F065QQ21
2F065QQ24
2F065QQ25
2F065QQ31
2F065QQ41
2F065UU05
5L096AA09
5L096BA03
5L096DA01
5L096FA06
5L096FA25
5L096GA08
(57)【要約】
【課題】破断部品の破断面同士の適合性の検査において、検査を高効率化させつつ検査精度を向上させる。
【解決手段】第1破断面の輪郭である第1輪郭(ロッド側輪郭31)及び第2破断面の輪郭である第2輪郭(キャップ側輪郭32)の各画像データを、各破断面の各二次元画像データからそれぞれ取得し、第1及び第2輪郭の各画像データが、所定の基準輪郭の画像データに適合するように、各画像データをそれぞれ補正する補正量を算出し、各補正量に基づいて、各破断面の各三次元画像データをそれぞれ補正して、第1及び第2補正画像データ(ロッド側及びキャップ側補正画像41,42)を取得し、第1補正画像データと第2補正画像データとを比較して、各破断面の良品判定をする。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
破断分割により生じた第1破断部品と第2破断部品のそれぞれの破断面を検査する破断面検査方法であって、
前記第1破断部品の破断面である第1破断面の二次元画像データと三次元画像データとを取得する第1破断面画像取得工程と、
前記第1破断面に対応する前記第2破断部品の破断面である第2破断面の二次元画像データと三次元画像データとを取得する第2破断面画像取得工程と、
前記第1破断面の輪郭である第1輪郭及び第2破断面の輪郭である第2輪郭に関する画像データを、前記第1及び第2破断面の各二次元画像データからそれぞれ取得する破断面輪郭取得工程と、
前記第1及び第2輪郭の各画像データが、所定の基準輪郭を示す画像データに適合するように、前記第1及び第2輪郭の各画像データをそれぞれ補正する際の補正量を算出する補正量算出工程と、
前記補正量算出工程で取得した前記補正量に基づいて、前記第1及び第2破断面の各三次元画像データをそれぞれ補正して、第1及び第2補正画像データをそれぞれ取得する画像補正工程と、
前記第1補正画像データと前記第2補正画像データとを比較して、前記第1及び第2破断面が良品であるか否かを判定する判定工程と、を含むことを特徴とする破断面検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の破断面検査方法において、
前記補正量算出工程は、前記第1輪郭の画像データが前記基準輪郭の画像データに適合するように、前記第1輪郭の画像データをアフィン変換する際の第1アフィン変換量と、前記第2輪郭の画像データが前記基準輪郭の画像データに適合するように、前記第2輪郭の画像データをアフィン変換する際の第2アフィン変換量とをそれぞれ算出する工程であり、
前記画像補正工程は、前記第1アフィン変換量でもって前記第1破断面の三次元画像データを補正しかつ前記第2アフィン変換量でもって前記第2破断面の三次元画像データを補正する工程であることを特徴とする破断面検査方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の破断面検査方法において、
前記基準輪郭の画像データは、前記判定工程において良品と判定された破断面の輪郭の画像データ、又はコンピュータにより作成された破断部品の三次元モデルにおける破断面の輪郭の画像データであることを特徴とする破断面検査方法。
【請求項4】
破断分割により生じた第1破断部品と第2破断部品のそれぞれの破断面を検査する破断面検査装置であって、
前記第1破断部品の破断面である第1破断面及び該第1破断面に対応する前記第2破断部品の破断面である第2破断面の二次元画像データと三次元画像データとをそれぞれ取得する画像取得部と、
前記画像取得部が取得した前記第1及び第2破断面の各二次元画像データから、前記第1破断面の輪郭である第1輪郭及び第2破断面の輪郭である第2輪郭に関する画像データをそれぞれ取得する輪郭情報取得部と、
前記第1及び第2輪郭の各画像データが所定の基準輪郭の画像データに適合するように、前記第1及び第2輪郭の各画像データを補正する際の補正量をそれぞれ算出する補正量算出部と、
前記補正量算出部が算出した前記補正量に基づいて、前記第1及び第2破断面の各三次元画像データをそれぞれ補正して、第1及び第2補正画像データをそれぞれ取得する三次元画像補正部と、
前記第1補正画像データと前記第2補正画像データとを比較して、前記第1及び第2破断面が良品であるか否かを判定する判定部と、を備えることを特徴とする破断面検査装置。
【請求項5】
請求項4に記載の破断面検査装置において、
前記補正量算出部は、前記第1輪郭の画像データが前記基準輪郭の画像データに適合するように、前記第1輪郭の画像データをアフィン変換する際の第1アフィン変換量と、前記第2輪郭の画像データが前記基準輪郭の画像データに適合するように、前記第2輪郭の画像データをアフィン変換する際の第2アフィン変換量とをそれぞれ算出し、
前記三次元画像補正部は、前記第1アフィン変換量でもって前記第1破断面の三次元画像データを補正しかつ前記第2アフィン変換量でもって前記第2破断面の三次元画像データを補正することを特徴とする破断面検査装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の破断面検査装置において、
前記基準輪郭の画像データを記憶する記憶部を更に備え、
前記基準輪郭の画像データは、前記判定部が良品と判定した破断面の輪郭の画像データ、又はコンピュータにより作成された破断部品の三次元モデルにおける破断面の輪郭の画像データであることを特徴とする破断面検査装置。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか1つに記載の破断面検査装置において、
前記第1及び第2破断部品を保持する保持部を更に備え、
前記保持部は、前記第1破断面と前記第2破断面とが上下方向に相隣接しかつ前記画像取得部に対する距離が等しくなるように、前記第1及び第2破断部品をそれぞれ保持し、
前記画像取得部は、前記第1及び第2破断面の画像を同時に取得可能に構成されていることを特徴とする破断面検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、破断分割により生じた2つの破断部品のそれぞれの破断面を検査する破断面検査方法、及び破断面検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジン部品であるコネクティングロッドのように、延性金属製部品を破断方向に破断することにより分割して形成される半割の破断部品を再度組み合わせて1つの製品とする方法が知られている。例えば、コネクティングロッドの場合は、コネクティングロッドの大端部をロッド部とキャップ部とに破断分割し、大端部をクランクシャフトに取り付ける際に、それぞれの破断面を突き合わせた状態で再結合させる。
【0003】
このような方法で延性金属製部品を製造する場合、対応する破断面同士の適合性、すなわち破断面に形成された凹凸形状の適合性を検査する必要がある。破断面の適合性を検査する方法として、例えば、特許文献1には、対応する破断面の各三次元形状データをそれぞれ生成し、各三次元データを画像処理して、破断面上の各位置座標における高さに関するデータ値の相違に基づいて破断部品の合否判定を行う検査方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の検査方法では、比較する2つの画像の位置合わせを行うために、毎回、各三次元画像データに対して平面的な位置座標を設定して、一方の画像から比較用のモデルを作成して、他方の画像を該モデルと位置座標が合うように画像処理を行っている。このように、毎回モデルを作成して、位置合わせのための画像処理を行うと、処理に時間がかかってしまい、検査の効率が低下してしまう。
【0006】
また、特許文献1の検査方法では、破断面のエッジ部分に比較的大きな欠陥(特に欠け)があると、該欠陥部分を除いて座標が設定されてしまい、該欠陥部分については評価されないおそれがある。
【0007】
ここに開示された技術は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするとこは、破断部品の破断面同士の適合性の検査において、検査を高効率化させつつ検査精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、ここに開示された技術では、破断分割により生じた第1破断部品と第2破断部品のそれぞれの破断面を検査する破断面検査方法を対象として、前記第1破断部品の破断面である第1破断面の二次元画像データと三次元画像データとを取得する第1破断面画像取得工程と、前記第1破断面に対応する前記第2破断部品の破断面である第2破断面の二次元画像データと三次元画像データとを取得する第2破断面画像取得工程と、前記第1破断面の輪郭である第1輪郭及び第2破断面の輪郭である第2輪郭に関する画像データを、前記第1及び第2破断面の各二次元画像データからそれぞれ取得する破断面輪郭取得工程と、前記第1及び第2輪郭の各画像データが、所定の基準輪郭を示す画像データに適合するように、前記第1及び第2輪郭の各画像データをそれぞれ補正する際の補正量を算出する補正量算出工程と、前記補正量算出工程で取得した前記補正量に基づいて、前記第1及び第2破断面の各三次元画像データをそれぞれ補正して、第1及び第2補正画像データをそれぞれ取得する画像補正工程と、前記第1補正画像データと前記第2補正画像データとを比較して、前記第1及び第2破断面が良品であるか否かを判定する判定工程と、を含む、というものとした。
【0009】
この構成によると、第1及び第2輪郭の画像データは、第1及び第2破断面の各二次元画像データから取得される。二次元画像は、破断面のエッジ部分に欠陥があったとしても、該欠陥部分を含む平面画像となっている。このため、第1及び第2輪郭の画像データは、欠陥部分が排除されていない、第1及び第2破断面のそれぞれの輪郭を正確に表した画像データとなる。
【0010】
また、第1及び第2輪郭の画像データが、所定の基準輪郭を示す画像データに適合するように、第1及び第2輪郭の画像データを補正することで、第1及び第2輪郭の位置合わせが行われる。そして、そのときの補正量で第1及び第2破断面の各三次元画像データを補正することで、三次元画像データ間の位置合わせが自動的に行われる。このため、毎回モデルを作成する必要がなくなって、三次元画像データ間の位置合わせが高効率化される。
【0011】
そして、補正後の三次元画像データ同士を比較すれば、エッジ部分の欠陥も考慮した良品判定を行うことができる。
【0012】
したがって、破断部品の破断面同士の適合性の検査において、検査を高効率化させつつ検査精度を向上させることができる。
【0013】
前記破断面検査方法において、前記補正量算出工程は、前記第1輪郭の画像データが前記基準輪郭の画像データに適合するように、前記第1輪郭の画像データをアフィン変換する際の第1アフィン変換量と、前記第2輪郭の画像データが前記基準輪郭の画像データに適合するように、前記第2輪郭の画像データをアフィン変換する際の第2アフィン変換量とをそれぞれ算出する工程であり、前記画像補正工程は、前記第1アフィン変換量でもって前記第1破断面の三次元画像データを補正しかつ前記第2アフィン変換量でもって前記第2破断面の三次元画像データを補正する工程である、という構成でもよい。
【0014】
この構成によると、第1及び第2輪郭の各画像データを基準輪郭の画像データに適合するように、該各画像データをアフィン変換することで、第1及び第2輪郭の各画像データにおける位置合わせが効率的に行われる。第1及び第2破断面の三次元画像データの間の位置合わせの効率が向上するため、検査をより高効率化させることができる。
【0015】
前記破断面検査方法において、前記基準輪郭の画像データは、前記判定工程において良品と判定された破断面の輪郭の画像データ、又はコンピュータにより作成された破断部品の三次元モデルにおける破断面の輪郭の画像データである、という構成でもよい。
【0016】
この構成によると、良品の破断面の輪郭であれば、適切な輪郭を有しているため、適切な輪郭の画像データを得ることができる。また、コンピュータにより作成された破断部品の三次元モデルであれば、良品となる破断面を任意に作成することが可能であるため、これでも適切な輪郭の画像データを得ることができる。よって、このような輪郭の画像データを基準とすれば、検査精度をより向上させることができる。
【0017】
ここに開示された技術は、破断分割により生じた第1破断部品と第2破断部品のそれぞれの破断面を検査する破断面検査装置も対象とする。具体的には、破断面検査装置は、前記第1破断部品の破断面である第1破断面及び該第1破断面に対応する前記第2破断部品の破断面である第2破断面の二次元画像データと三次元画像データとをそれぞれ取得する画像取得部と、前記画像取得部が取得した前記第1及び第2破断面の各二次元画像データから、前記第1破断面の輪郭である第1輪郭及び第2破断面の輪郭である第2輪郭に関する画像データをそれぞれ取得する輪郭情報取得部と、前記第1及び第2輪郭の各画像データが所定の基準輪郭の画像データに適合するように、前記第1及び第2輪郭の各画像データを補正する際の補正量をそれぞれ算出する補正量算出部と、前記補正量算出部が算出した前記補正量に基づいて、前記第1及び第2破断面の各三次元画像データをそれぞれ補正して、第1及び第2補正画像データをそれぞれ取得する三次元画像補正部と、前記第1補正画像データと前記第2補正画像データとを比較して、前記第1及び第2破断面が良品であるか否かを判定する判定部と、を備える。
【0018】
この構成でも、第1及び第2輪郭の画像データは、第1及び第2破断面の各二次元画像データから取得されるため、第1及び第2破断面のそれぞれの輪郭を正確に表した画像データを取得できる。また、所定の基準輪郭を示す画像データを基準に補正量が算出されて、該補正量で第1及び第2破断面の各三次元画像データが補正されるため、三次元画像データ間の位置合わせが自動的に行われる。したがって、破断部品の破断面同士の適合性の検査において、検査を高効率化させつつ検査精度を向上させることができる。
【0019】
前記破断面検査装置において、前記補正量算出部は、前記第1輪郭の画像データが前記基準輪郭の画像データに適合するように、前記第1輪郭の画像データをアフィン変換する際の第1アフィン変換量と、前記第2輪郭の画像データが前記基準輪郭の画像データに適合するように、前記第2輪郭の画像データをアフィン変換する際の第2アフィン変換量とをそれぞれ算出し、前記三次元画像補正部は、前記第1アフィン変換量でもって前記第1破断面の三次元画像データを補正しかつ前記第2アフィン変換量でもって前記第2破断面の三次元画像データを補正する、という構成でもよい。
【0020】
この構成によると、第1及び第2輪郭の各画像データを基準輪郭の画像データに適合するように、該各画像データをアフィン変換することで、第1及び第2輪郭の各画像データにおける位置合わせが効率的に行われる。このため、検査をより高効率化させることができる。
【0021】
前記破断面検査装置において、前記基準輪郭の画像データを記憶する記憶部を更に備え、前記基準輪郭の画像データは、前記判定部が良品と判定した破断面の輪郭の画像データ、又はコンピュータにより作成された破断部品の三次元モデルにおける破断面の輪郭の画像データである、という構成でもよい。
【0022】
この構成によると、基準輪郭の画像データとして、適切な輪郭の画像データを用いることができる。よって、検査精度をより向上させることができる。
【0023】
前記破断面検査装置において、前記第1及び第2破断部品を保持する保持部を更に備え、前記保持部は、前記第1破断面と前記第2破断面とが上下方向に相隣接しかつ前記画像取得部に対する距離が等しくなるように、前記第1及び第2破断部品をそれぞれ保持し、前記画像取得部は、前記第1及び第2破断面の画像を同時に取得可能に構成されている、という構成でもよい。
【0024】
この構成によると、第1及び第2破断面の画像を効率的に取得することができる。これにより、検査をより高効率化させることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、ここに開示された技術によると、破断部品の破断面同士の適合性の検査において、検査を高効率化させつつ検査精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施形態1に係る破断面検査装置により検査される破断面を有するコネクティングロッドの正面図である。
【
図3】破断面検査装置を上側から見た平面図である。
【
図7】破断面検査における制御処理の処理の概念図である。
【
図8】ロッド側及びキャップ側破断面の各輪郭の画像データを取得する工程を示す模式図である。
【
図9】ロッド側及びキャップ側輪郭の各画像データをアフィン変換する工程を示す模式図である。
【
図11】実施形態2にかかる破断面検査装置を上側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
(実施形態1)
〈破断部品〉
図1は、破断部品を有するコネクティングロッド100(以下、コンロッド100という)と、該コンロッド100に取り付けられたピストン110とを示す。コンロッド100は、エンジンにおいて、ピストン110とクランク軸(図示省略)とを連結するものであって、ピストン110から前記クランク軸までの爆発荷重の伝達経路を構成する荷重伝達部材である。
【0029】
コンロッド100は、ピストン110が取り付けられる小端部101と、前記クランク軸に連結される大端部102と、小端部101と大端部102とを連結する棒状のロッド部103とを有する。小端部101には、小径ピン孔101aが形成されており、この小径ピン孔101aに挿入されるピストンピン(図示省略)を介して、ピストン110がコンロッド100に取り付けられる。大端部102には、大径ピン孔102aが形成されており、この大径ピン孔102aに前記クランク軸のクランクピンが挿通されることで、コンロッド100と前記クランク軸とが連結される。大端部102は、ロッド部103側のロッド側大端部102bとロッド部103とは反対側のキャップ側大端部102cとに分割されている。
【0030】
本実施形態1では、コンロッド100は、所謂かち割りコンロッドである。具体的には、コンロッド100の大端部102は、大径ピン孔102aが形成されるように一体で形成した後、破断してロッド側大端部102bとキャップ側大端部102cとに分割される。エンジンに配置する際には、エンジンのクランク軸が大径ピン孔102aに位置するように、ロッド側大端部102bとキャップ側大端部102cとが配置される。そして、大端部102は、ロッド側大端部102bの破断面(以下、ロッド側破断面102dという)とキャップ側大端部102cの破断面(以下、キャップ側破断面102eという)を突き合わせて、ロッド側大端部102bとキャップ側大端部102cとを2つのボルト104により締結固定することで一体化される。ロッド側大端部102bは、ボルト104が通るロッド側ボルト孔102fを有し、キャップ側大端部102cは、ボルト104が通るキャップ側ボルト孔102gを有する。
【0031】
このようなかち割りコンロッドの場合、破断面102d,102eにはそれぞれ細かな凹凸が形成されており、突き合わされたときに互いの凹凸形状がかみ合うようになっている。これにより、ロッド側大端部102bとキャップ側大端部102cとが高い締結強度でもって締結される。しかしながら、破断面に欠けや剥離が生じて破断面同士の適合性が大きく低下すると、ロッド側大端部102bとキャップ側大端部102cとの締結強度が低下するおそれがある。そのため、ロッド側破断面102d及びキャップ側破断面102eの欠陥を定量的に判断して、破断面102d,102e同士の適合性を精度良く判定することが求められている。尚、「破断面同士の適合性」とは、突き合わされる一対の破断面において、一方の破断面の凹凸の分布及び凹凸の量が、他方の破断面の凹凸の分布及び凹凸の量にどの程度対応しているか、すなわち、破断面同士が突き合わされたときの破断面間の隙間の分布及び隙間の量がどの程度であるかを表している。破断面同士の適合性が高い状態とは、破断面間の隙間の分布が狭くかつ隙間の量も小さい状態のことをいう。
【0032】
従来の検査方法では、対応する一対の破断面における一方の三次元データから破断面上の座標を抽出して、該座標に対応する他方の判断面の座標を選択する。そして、座標同士の高さ情報を比較して、破断面同士の適合性を評価していた。しかしながら、この方法では、一方の破断面のエッジ部分に欠けが生じていたときには、該欠けの部分が比較対象の座標として選択されずに、該欠けの部分を取り除いて検査をしてしまうおそれがある。また、従来の検査方法では、検査毎に一方の破断面の画像データから比較用のモデル(座標付きのモデル)を作成して、他方の破断面の画像データの位置座標が該モデルと位置座標が合うように、他方の破断面の画像データを画像処理する必要があった。このため、検査精度が悪化したり、検査時間が長くなったりするおそれがあった。
【0033】
そこで、本実施形態1では、破断面検査装置1による検査方法を工夫して、検査を高効率化させつつ検査精度を向上させるようにした。以下、
図2~
図10を参照しながら本実施形態1に係る破断面検査装置1(以下、単に検査装置1という)について説明する。
【0034】
〈破断面検査装置〉
図2及び
図3は、検査装置1を概略的に示す。この検査装置1は、ロッド側破断面102d及びキャップ側破断面102eの二次元画像データ及び三次元画像データを用いて、破断面102d,102e同士の適合性を検査する。
【0035】
検査装置1は、基台2と、基台2上に配置されかつロッド側及びキャップ側破断面102d,102eを撮像する画像取得部10と、ロッド側及びキャップ側大端部102b,102cをそれぞれ保持する保持部20とを有する。基台2にはコンベア3が設けられており、保持部20はコンベア3上に配置されている。保持部20はコンベア3により搬送される。以下の説明では、コンベア3の搬送方向と上下方向とに直交する方向を前後方向といい、画像取得部10側を前側、保持部20側を後側という。
【0036】
画像取得部10は、1つのカメラ11と、複数(ここでは4つ)の照明装置12とを有する。カメラ11は、箱状のケース13内に収容されている。具体的には、基台2には上側に向かって立設されたピラー14が設けられており、カメラ11は、後側を向くように、ピラー14における後側の側面に固定されている。ケース13は、ピラー14ごとカメラ11を収容している。カメラ11は、保持部20に保持されたロッド側及びキャップ側大端部102b,102cの各破断面102d,102eを同時に撮像可能な視野を有している。尚、カメラ11は、破断面102d,102eを撮像できるものであれば、特に種類は限定されない。カメラ11は後述する制御装置50により制御され、カメラ11により取得された画像データは制御装置50に送信される。
【0037】
図4に示すように、ケース13における後側の壁部には、矩形状の開口部13aが形成されている。開口部13aは、保持部20にロッド側及びキャップ側大端部102b,102cが保持された状態で、ロッド側及びキャップ側破断面102d,102eが同時にカメラ11の視野に含まれる程度の大きさを有している。開口部13aは、後側から見て、カメラ11が開口部13aの中央に位置するように形成されている。
【0038】
4つの照明装置12は、前後方向から見て、カメラ11を囲むようにそれぞれ配置されている。具体的には、
図4に示すように、4つの照明装置12は、開口部13aの4つの辺部に1つずつ取り付けられている。各照明装置12は、白色光、赤色光、青色光等の波長の異なる光を、単色で照射したり、組み合わせて照射したりできるように構成されている。詳しくは後述するが、各照明装置12が照射する光の破断面102d,102eへの入射角度、及び光量は、制御装置50により、それぞれ独立して調整される。すなわち、制御装置50により、一部の照明装置12のみを作動させかつ他の照明装置12を停止させたり、全ての照明装置12を作動させかつ各照明装置12の光量をそれぞれ異ならせたりすることができる。尚、照明装置12の数や配置は、照明装置12が2つ以上設けられるのであれば、特に限定されない。
【0039】
図2及び
図3に示すように、保持部20は、ロッド側及びキャップ側破断面102d,102eがそれぞれ開放された状態で、ロッド側及びキャップ側大端部102b,102cをそれぞれ保持する。保持部20はコンベア3上に配置される支持プレート21を有する。支持プレート21はコンベア3により搬送される。支持プレート21上には、小端部101を保持する小端部保持部22と、大端部102を保持する大端部保持部23とが設けられている。
【0040】
小端部保持部22は、支持プレート21における所定方向の中央よりもやや後側の部分に設けられている。小端部保持部22は、円柱状のステージ22aと、上側に向かって突出する柱状の突出部22bをと有する。小端部101は、小径ピン孔101aに突出部22bが挿入された状態で、ステージ22aに載置される。
【0041】
大端部保持部23は、支持プレート21における前側部分に設けられている。大端部保持部23は、
図5に示すように、ロッド側大端部102bが下側に位置しかつキャップ側大端部102cが上側に位置する状態で、ロッド側及びキャップ側大端部102b,102cをそれぞれ保持する。大端部保持部23は、ロッド側大端部102bが載置されるステージ24を有する。ステージ24に対して搬送方向の上流側及び下流側には、支持プレート21から上側に向かって立設された一対の支持壁25が設けられている。ステージ24の搬送方向の中央におけるやや前側には、上下方向に延びる中央ガイド部26が設けられている。
【0042】
各支持壁25は、
図2及び
図3に示すように、キャップ側大端部102cを支持する支持アーム25aをそれぞれ有する。上流側の支持アーム25aは、上流側の支持壁25の下流側の面部における上側かつ後側寄りの部分から下流側に向かって延びている。下流側の支持アーム25aは、下流側の支持壁25の上流側の面部における上側かつ後側寄りの部分から上流側に向かって延びている。各支持アーム25aの先端部には前後方向に貫通する孔部がそれぞれ形成されている。孔部にはピン25bが挿通されており、該ピン25bは、キャップ側大端部102cのキャップ側ボルト孔102g(
図1参照)に挿入される。これにより、キャップ側大端部102cが各ピン25bを介して各支持アーム25aに保持される。
【0043】
図5に示すように、各支持壁25のステージ24側の面には、下側ガイド部25cと上側ガイド部25dがそれぞれ設けられている。各下側ガイド部25cは、ステージ24に載置されたロッド側大端部102bに対応する高さ位置にそれぞれ形成されている。各下側ガイド部25cは、ロッド側破断面102dがカメラ11に対して正対できるように、ロッド側大端部102bの配置を案内する。各上側ガイド部25dは、各支持アーム25aと同じ高さ位置において該各支持アーム25aよりも前側に位置している。各上側ガイド部25dの搬送方向の長さは、各支持アーム25aの搬送方向の長さよりも短い。各上側ガイド部25dは、キャップ側破断面102eがカメラ11に対して正対できるように、キャップ側大端部102cの配置を案内する。また、下側及び上側ガイド部25c、25dは、ロッド側破断面102dの搬送方向の位置とキャップ側破断面102eの搬送方向の位置とをそろえるガイドとしても機能する。
【0044】
中央ガイド部26は、ステージ24から支持壁25の上面と同じ高さまで伸びている。中央ガイド部26は、ロッド側及びキャップ側大端部102b,102cにおける大径ピン孔102aの部分に接触する。中央ガイド部26は、ロッド側破断面102dの前後方向の位置とキャップ側破断面102eの前後方向の位置とをそろえるガイドとして機能する。
【0045】
ロッド側及びキャップ側大端部102b,102cを保持部20により保持するには、まず、ロッド側大端部102bを一対の下側ガイド部25cの間に位置するように配置する。このとき、小径ピン孔101aに小端部保持部22の突出部22bが挿入されるように、小端部101も配置する。ロッド側大端部102bは、一対の下側ガイド部25c及び中央ガイド部26に沿って上下方向に案内される。次に、キャップ側大端部102cを各支持アーム25aの高さ位置に配置する。このとき、キャップ側大端部102cを、対応する破断面(突き合わされる破断面)が上下方向に並ぶように配置する。キャップ側大端部102cは、一対の上側ガイド部25d及び中央ガイド部26に沿って上下方向に案内される。そして、各キャップ側ボルト孔102gと各支持アーム25aの孔部とを挿通させた状態で、ピン25bを、支持アーム25aの孔部を貫通させてキャップ側ボルト孔102gにそれぞれ締結させる。以上により、ロッド側及びキャップ側大端部102b,102cを保持部20に保持される。
【0046】
図2に示すように、ロッド側及びキャップ側大端部102b,102cを保持部20に保持された状態で、ロッド側破断面102dからカメラ11までの距離は、当該ロッド側破断面102dの直上に位置するキャップ側破断面102eからカメラ11までの距離と同じになる。具体的には、カメラ11の光軸LAからロッド側破断面102dの上端までの距離L1とカメラ11の光軸LAからキャップ側破断面102eの下端までの距離L2とが同じである。これにより、カメラ11により、ロッド側破断面102dとキャップ側破断面102eとが1つの画像に同時に撮像されたときの、ロッド側破断面102dの縮小比とキャップ側破断面102eの縮小比とを同じにすることができる。
【0047】
〈制御系〉
検査装置1は、制御装置50により作動制御される。制御装置50は、CPUを有するプロセッサ、複数のモジュールが格納されたメモリ等を有する。制御装置50は、カメラ11により撮像された画像に基づいて、ワークWの欠陥を検査する機能を有する。このような機能は、メモリのモジュールにソフトウェアとして格納されている。プロセッサ及びメモリの数は1つに限定されず、制御装置50が2つ以上のプロセッサ及びメモリを有していてもよい。
【0048】
図6に示すように、制御装置50は、光学系制御部51と、前処理部52と、輪郭情報取得部53と、補正量算出部54と、三次元画像補正部55と、判定部56と、記憶部57と、を有する。光学系制御部51、前処理部52、輪郭情報取得部53、補正量算出部54、三次元画像補正部55、判定部56、及び記憶部57は、それぞれ、前記モジュールの一例である。尚、
図6で図示する光学系制御部51等は、制御装置50の構成の一部であり、制御装置50が他の機能を有することを排除するものではない。
【0049】
光学系制御部51は、カメラ11のピント調整をしたり、各照明装置12の光の照射角度、光の色、光量等を調整したりする。カメラ11は、光学系制御部51からの制御信号に従って、各破断面の画像データを取得する。詳しくは後述するが、光学系制御部51は、各ロッド側破断面102d及び各キャップ側破断面102eについて、少なくとも1つの二次元画像データと少なくとも1つの三次元画像データとをそれぞれ取得するように、カメラ11及び各照明装置12をそれぞれ制御する。
【0050】
前処理部52は、カメラ11により取得した画像データに対して、シェーディング補正、暗レベル補正、ビット圧縮、座標設定等の前処理を行う。
【0051】
輪郭情報取得部53は、カメラ11が取得したロッド側及びキャップ側破断面102d,102eの二次元画像データから、ロッド側破断面102dの輪郭であるロッド側輪郭31(
図8参照)及びキャップ側破断面102eの輪郭であるキャップ側輪郭32(
図8参照)に関する画像データをそれぞれ取得する。輪郭情報取得部53による輪郭の取得方法については後述する。
【0052】
補正量算出部54は、ロッド側及びキャップ側輪郭31,32の各画像データが所定の基準輪郭BC(
図9参照)の画像データに適合するように、ロッド側及びキャップ側輪郭31,32の各画像データを補正する際の補正量をそれぞれ算出する。本実施形態1では、補正量算出部54が行う補正はアフィン変換である。つまり、補正量算出部54は、ロッド側及びキャップ側輪郭31,32の各画像データが、基準輪郭BCの画像データに適合するように、該各画像データに対して拡大、縮小、平行移動、回転、剪断等の処理を行う。補正量算出部54は、ロッド側輪郭31の画像データを基準輪郭BCの画像データに適合させるための補正量である第1アフィン変換量と、キャップ側輪郭32の画像データを基準輪郭BCの画像データに適合させるための補正量である第2アフィン変換量とをそれぞれ算出する。
【0053】
三次元画像補正部55は、補正量算出部54が算出した第1及び第2アフィン変換量に基づいて、ロッド側及びキャップ側破断面102d,102eの各三次元画像データをそれぞれ補正して、ロッド側補正画像41(
図7参照)の画像データ及びキャップ側補正画像42(
図7参照)の画像データをそれぞれ作成する。
【0054】
判定部56は、三次元画像補正部55により得られたロッド側補正画像41の画像データとキャップ側補正画像42の画像データとを比較して、ロッド側破断面102dとキャップ側破断面102eとの適合性をチェックする。判定部56は、ロッド側大端部102bの2つのロッド側破断面102dとキャップ側大端部102cの対応する2つのキャップ側破断面102eとの適合性が所定の基準(破断面間の隙間の分布及び隙間の量等)をそれぞれ満たしているときには、当該ロッド側破断面102d及び当該キャップ側破断面102eを良品と判定する。
【0055】
記憶部57は、基準輪郭BCの画像データ、アフィン変換前の各破断面102d,102eの画像データ、判定部56の判定結果等を記憶する。
【0056】
制御装置50は、判定部56の判定結果を表示するように表示装置60に制御信号を出力する。制御装置50は、判定部56が欠陥ありと判定したときには、欠陥箇所が分かるように表示装置60に表示させる。
【0057】
制御装置50は、コンベア3の動作を制御可能に構成されている。制御装置50は、支持プレート21の搬送速度を調整したり、画像取得部10が画像を取得できなかった際に、コンベア3を一時的に停止させたりする。
【0058】
〈制御装置による処理〉
図7は、検査装置1を用いてロッド側破断面102dとキャップ側破断面102eとの適合性を検査する際の制御装置50の処理を概念的に示している。
【0059】
制御装置50は、検査に先立って、基準輪郭BCの画像データを取得する。基準輪郭BCの画像データは、判定部56が良品と判定したロッド側破断面102d又はキャップ側破断面102eの輪郭の画像データである。基準輪郭BCの抽出方法は、後述するロッド側及びキャップ側輪郭31,32の抽出方法と同じであるため、ここでは省略する。抽出された基準輪郭BCは、記憶部57に記憶される。破断面検査の際には、基準輪郭BCは記憶部57から読み出される。基準輪郭BCの抽出は、大端部の1つの規格に対して一度だけ行えばよく、検査毎に行う必要はない。基準輪郭BCの抽出は、大端部の規格が変更されたときには、再度行われる。尚、基準輪郭BCの画像データは、コンピュータにより作成されたロッド側大端部102b又はキャップ側大端部102cの三次元モデルにおける破断面の輪郭の画像データであってもよい。特に、最初の検査においては、良品と判定されたロッド側破断面102dの画像データもキャップ側破断面102eの画像データも存在しないため、コンピュータにより作成された三次元モデルから輪郭の画像データを抽出するのが好ましい。また、基準輪郭BCの画像データとして、検査対象のコンロッドと同規格でかつ他の検査装置若しくは他の検査方法で良品と判断されたコンロッドから抽出した輪郭の画像データを採用してもよい。
【0060】
以下の説明では、判定部56が良品と判定したロッド側破断面102dから基準輪郭BCが抽出されたとして説明する。
【0061】
制御装置50は、画像取得部10によりロッド側及びキャップ側破断面102d,102eの二次元画像データと三次元画像データとを取得する。三次元画像を取得する方法は、既知の方法を採用することができ、例えば、位相シフト法を採用することができる。
【0062】
制御装置50は、ロッド側破断面102dの二次元画像データ及びキャップ側破断面102d,102eの二次元画像データから、ロッド側及びキャップ側輪郭31,32をそれぞれ抽出する。
【0063】
二次元画像データから輪郭の画像データを抽出するには、
図8に示すように、まず、画像取得部10が取得した二次元画像データから破断面102d,102eの部分に対してエッジ部分に点を設定する。次に、各点を線で結んで輪郭をそれぞれ形成する。そして、形成された輪郭を、ロッド側輪郭31及びキャップ側輪郭32の画像データとしてそれぞれ抽出する。抽出された各輪郭の画像データには、基準輪郭BCの画像データと比較する際に、エッジ部分の対応関係が分かるように座標がそれぞれ設定されている。前述したように、本実施形態1に係る検査装置1では、突き合わされる破断面102d,102eが上下に並ぶように保持部20に保持されている。このため、ロッド側輪郭31とキャップ側輪郭32とは、上下に反転した関係になっている。したがって、
図8に示すように、ロッド側輪郭31の画像データに座標A1~A4が付されたときには、キャップ側輪郭32の画像データには、座標A1に対応するエッジに座標B1が付され、座標A2に対応するエッジに座標B2が付され、座標A3に対応するエッジに座標B3が付され、座標A4に対応するエッジに座標B4が付される。これにより、抽出した輪郭と基準輪郭BCとを比較する際に、上、下、左、及び右の向きをそろえることができる。尚、ロッド側及びキャップ側輪郭31,32の抽出方法は、前述の方法に限定されない。
【0064】
二次元画像データでは、エッジ部分に欠けがあったとしても、母材の部分により輪郭の形状が確認できる。このため、前述のように、二次元画像データから輪郭の画像データを抽出すれば、破断面全体に対する輪郭を精度良く抽出することができる。
【0065】
制御装置50は、ロッド側輪郭31の画像データを基準輪郭BCの画像データに適合するようにアフィン変換して、アフィン変換したときのアフィン変換量(第1アフィン変換量)を抽出する。アフィン変換の際には、ロッド側輪郭31の座標と基準輪郭BCの座標との対応関係が考慮される。
図9(a)に示す例では、ロッド側輪郭31の座標A1が基準輪郭BCの座標M1に対応し、ロッド側輪郭31の座標A2が基準輪郭BCの座標M2に対応し、ロッド側輪郭31の座標A3が基準輪郭BCの座標M3に対応し、ロッド側輪郭31の座標A4が基準輪郭BCの座標M4に対応している。つまり、ロッド側輪郭31と基準輪郭BCとは、上下方向の向き及び左右方向の向きは対応しているものの大きさが異なる。このときには、制御装置50は、ロッド側輪郭31の画像データを縦方向及び横方向に拡大させるような変換量を第1アフィン変換量として算出する。
【0066】
制御装置50は、キャップ側輪郭32の画像データを基準輪郭BCの画像データに適合するようにアフィン変換して、アフィン変換したときのアフィン変換量(第2アフィン変換量)を抽出する。アフィン変換の際には、キャップ側輪郭32の座標と基準輪郭BCの座標との対応関係が考慮される。
図9(b)に示す例では、キャップ側輪郭32の座標B1が基準輪郭BCの座標M1に対応し、キャップ側輪郭32の座標B2が基準輪郭BCの座標M2に対応し、キャップ側輪郭32の座標B3が基準輪郭BCの座標M3に対応し、キャップ側輪郭32の座標B4が基準輪郭BCの座標M4に対応している。つまり、キャップ側輪郭32と基準輪郭BCとでは、左右方向の向きは対応しているものの、上下方向の向きが逆でかつ大きさが異なる。このときには、制御装置50は、キャップ側輪郭32を上下に反転させるように座標を移動させかつ縦方向及び横方向に拡大させるような変換量を第2アフィン変換量として算出する。
【0067】
制御装置50は、ロッド側破断面102dの三次元画像データを第1アフィン変換量でもって補正して、ロッド側補正画像41の画像データを作成する。また、キャップ側破断面102eの三次元画像データを第2アフィン変換量でもって補正して、キャップ側補正画像42の画像データを作成する。作成されたロッド側及びキャップ側補正画像41,42の画像データは、それぞれ高さに関するデータを有する三次元画像データである。第1及び第2アフィン変換量による補正は平面における補正であるため、ロッド側及びキャップ側補正画像41,42の画像データは、基となる三次元画像データに対して平面上の座標は変化しているが、高さに関する情報は変化していない。
【0068】
制御装置50は、ロッド側補正画像41の画像データとキャップ側補正画像42の画像データとを比較して、ロッド側破断面102dとキャップ側破断面102eとの適合性をチェックする。ロッド側補正画像41の画像データとキャップ側補正画像42の画像データとは、どちらも輪郭形状が基準輪郭BCに合わせられたものであるため、平面上の座標はそろっている。つまり、ロッド側補正画像41の画像データとキャップ側補正画像42の画像データとの間の平面上の位置合わせは、第1及び第2アフィン変換量でもって補正した時点で既に完了した状態となっている。このため、破断面上に形成されている凹凸の高さ情報の比較を容易に行うことができる。ロッド側補正画像41の画像データとキャップ側補正画像42の画像データとの比較では、例えば、キャップ側補正画像42の画像データにおける高さに関するデータを反転させて、ロッド側補正画像41の画像データにおける高さに関するデータとの差分を求める。そして、該差分の量及び該差分の分布からロッド側破断面102dとキャップ側破断面102eとの適合性をチェックすることができる。
【0069】
制御装置50は、ロッド側大端部102bの2つのロッド側破断面102dとキャップ側大端部102cの対応する2つのキャップ側破断面102eとについて、それぞれ前述の適合性チェックが行う。そして、制御装置50は、2組の破断面同士の適合性が所定の基準をそれぞれ満たしているときには、当該ロッド側大端部102b及び当該キャップ側大端部102cが良品と判定する。
【0070】
このように、各破断面102d,102eの各輪郭31,32を予め準備した基準輪郭BCにそれぞれ適合させて、そのときの補正量で各破断面102d,102eをそれぞれ補正することで、三次元画像データの間の位置合わせ(座標の対応)を効率的に行うことができる。また、検査毎に位置合わせ用のモデルを作成する必要がないため、検査速度を向上させることができる。また、各破断面102d,102eの各二次元画像データからロッド側輪郭31及びキャップ側輪郭32の画像データを抽出することで、破断面のエッジ部分に欠陥があったとしても、欠陥部分が排除されていない、各破断面102d,102eのそれぞれの輪郭31,32を正確に表した画像データを抽出することができる。これにより、検査精度を向上させることができる。尚、各破断面の各二次元画像データから輪郭の画像データを抽出する処理や、輪郭の画像データを基準輪郭BCの画像データに適合させる処理は、制御装置50への負荷が比較的低いため、検査速度にはほとんど影響しない。
【0071】
〈フローチャート〉
次に、破断面検査のフローチャートについて
図10を参照しながら説明する。尚、
図10に示すフローチャートでは、基準輪郭BCは、既に抽出されていて、記憶部57に記憶されていることを前提としている。
【0072】
ステップS1において、ユーザは、ロッド側大端部102b及びキャップ側大端部102cを保持部20にそれぞれセットする。このとき、ユーザは、各ロッド側破断面102dの上側に対応する各キャップ側破断面102eが位置するように、ロッド側及びキャップ側大端部102b,102cをセットする。
【0073】
次に、ステップS2において、制御装置50は、コンベア3を作動させて保持部20ごとロッド側及びキャップ側大端部102b,102cを搬送する。
【0074】
次いで、制御装置50は、ステップS3~S7の処理とステップS8~S12の処理とを併行して行う。特に、カメラ11は、ロッド側及びキャップ側破断面102d,102eを1つの画像に同時に撮像可能であるため、ステップS3とステップS8、及びステップS4とステップS9とは同時に行われる。
【0075】
前記ステップS3において、制御装置50は、画像取得部10により、ロッド側破断面102dの二次元画像データを取得する。
【0076】
次に、ステップS4において、制御装置50は、画像取得部10により、ロッド側破断面102dの三次元画像データを取得する。
【0077】
次いで、ステップS5において、制御装置50は、ロッド側破断面102dの二次元画像データから、ロッド側輪郭31の画像データを抽出する。
【0078】
続いて、ステップS6において、制御装置50は、ロッド側輪郭31の画像データを基準輪郭BCの画像データに適合させるための第1アフィン変換量を算出する。
【0079】
次に、ステップS7において、制御装置50は、ロッド側破断面102dの三次元画像データを第1アフィン変換量でもって補正して、ロッド側補正画像41の画像データを作成する。
【0080】
一方で、前記ステップS8において、制御装置50は、画像取得部10により、キャップ側破断面102eの二次元画像データを取得する。
【0081】
次に、ステップS9において、制御装置50は、画像取得部10により、キャップ側破断面102eの三次元画像データを取得する。
【0082】
次いで、ステップS10において、制御装置50は、キャップ側破断面102eの二次元画像データから、キャップ側輪郭32の画像データを抽出する。
【0083】
続いて、ステップS11において、制御装置50は、キャップ側輪郭32の画像データを基準輪郭BCの画像データに適合させるための第2アフィン変換量を算出する。
【0084】
次に、ステップS12において、制御装置50は、キャップ側破断面102eの三次元画像データを第2アフィン変換量でもって補正して、キャップ側補正画像42の画像データを作成する。
【0085】
そして、ステップS13において、制御装置50は、ロッド側補正画像41の画像データとキャップ側補正画像42の画像データとを比較して、ロッド側破断面102dとキャップ側破断面102eとの適合性を判定する。
【0086】
続いて、ステップS14において、制御装置50は、全ての破断面について検査が完了したか否か、すなわち、2組の破断面102d,102eの適合性の判定が2組とも完了したか否かについて判定する。制御装置50は、2組とも適合性の判定が完了しているYESのときには、破断面検査を終了する。一方で、制御装置50は、2組の破断面102d,102eのうち一方の組のみが適合性の判定が完了しているNOのときには、ステップS2に戻り、他方の組の破断面102d,102eについても適合性の判定を行う。
【0087】
尚、制御装置50は、前記ステップS13において、ロッド側破断面102dとキャップ側破断面102eとの適合性が基準を満たしているときには、表示装置60に基準を満たしていることを表示する。ロッド側破断面102dとキャップ側破断面102eとの適合性が基準を下回っているときには、表示装置60に基準を満たしていないことを、欠陥箇所と一緒に表示する。
【0088】
したがって、本実施形態1では、ロッド側破断面102dの二次元画像データと三次元画像データとを取得し(ステップS3,S4)、対応するキャップ側破断面102eの二次元画像データと三次元画像データとを取得し(ステップS8,S9)、ロッド側輪郭31及びキャップ側輪郭32に関する画像データを、ロッド側及びキャップ側破断面102d,102eの各二次元画像データからそれぞれ取得し(ステップS5,S10)、ロッド側及びキャップ側輪郭31,32の各画像データが、所定の基準輪郭BCを示す画像データに適合するように、ロッド側及びキャップ側輪郭31,32の各画像データをそれぞれ補正する際の補正量を算出し(ステップS6,S11)、算出した各補正量に基づいて、ロッド側及びキャップ側破断面102d,102eの各三次元画像データをそれぞれ補正して、ロッド側及びキャップ側補正画像41,42の画像データをそれぞれ取得し(ステップS7,S12)、ロッド側補正画像41の画像データとキャップ側補正画像42の画像データとを比較して、ロッド側及びキャップ側破断面102d,102eが良品であるか否かを判定する(ステップS13)。これにより、破断面のエッジ部分に欠けが生じていたとしても、該欠けの部分も破断面検査の検査領域に含めることができるため、検査精度を向上させることができる。また、三次元画像データの間の位置合わせが効率良く行われるため、検査を高効率化させることができる。
【0089】
特に、本実施形態1では、ロッド側輪郭31の画像データが基準輪郭BCの画像データに適合するように、ロッド側輪郭31の画像データをアフィン変換する際の第1アフィン変換量と、キャップ側輪郭32の画像データが基準輪郭BCの画像データに適合するように、キャップ側輪郭32の画像データをアフィン変換する際の第2アフィン変換量とをそれぞれ算出し、第1アフィン変換量でもってロッド側破断面102dの三次元画像データを補正しかつ第2アフィン変換量でもってキャップ側破断面102eの三次元画像データを補正する。これにより、ロッド側及びキャップ側輪郭31,32の各画像データにおける位置合わせが効率的に行われる。この結果、ロッド側及びキャップ側破断面102d,102eの三次元画像データの間の位置合わせの効率が向上するため、検査をより高効率化させることができる。
【0090】
また、本実施形態1において、検査装置1の保持部20は、ロッド側破断面102dとキャップ側破断面102eとが上下方向に相隣接しかつ画像取得部10に対する距離が等しくなるように、ロッド側及びキャップ側大端部102b,102cをそれぞれ保持し、画像取得部10は、ロッド側及びキャップ側破断面102d,102eの画像を同時に取得可能に構成されている。これにより、ロッド側及びキャップ側破断面102d,102eの画像データを効率的に取得することができるとともに、制御装置50の画像処理も高効率化される。これにより、検査をより高効率化させることができる。
【0091】
(実施形態2)
以下、実施形態2について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において前記実施形態1と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0092】
本実施形態2では、保持部220の構成が前述の実施形態1とは異なる。画像取得部10は、前述の実施形態1と同じ構成であるため詳細な説明を省略する。また、制御装置50を含む制御系の構成も、基本的には前述の実施形態1と同じであるため詳細な説明を省略する。
【0093】
本実施形態2に係る保持部220について
図11を参照しながら詳細に説明する。以下の説明では、前記実施形態1と同様に、コンベア3の搬送方向と上下方向とに直交する方向を前後方向といい、画像取得部10側を前側、保持部220側を後側という。
【0094】
本実施形態2において、保持部220は、
図11に示すように、ロッド側大端部102bを保持するロッド側保持部221と、キャップ側大端部102cを保持するキャップ側保持部222とを有する。ロッド側保持部221とキャップ側保持部222とはコンベア3の搬送方向に並んでいる。これにより、ロッド側大端部102bとキャップ側大端部102cとは前記搬送方向に並んだ状態でそれぞれ保持される。
【0095】
ロッド側保持部221は、ロッド側破断面102dの全体が前側に向かって解放された状態でロッド側大端部102bを支持するための複数(ここでは4つ)の支持ピン221aを有する。支持ピン221aは、ロッド側大端部102bの搬送方向の両側の位置と、ロッド側大端部102bとロッド部103との境界部分における搬送方向の両側の位置とにそれぞれ配置されている。また、ロッド側保持部221は、小端部101の位置決めをするためのガイドピン221bを有する。
【0096】
キャップ側保持部222は、キャップ側破断面102eの全体が前側に向かって解放された状態でキャップ側大端部102cを支持するための複数(ここでは2つ)の支持ピン222aとガイドピン222bとを有する。支持ピン222aは、キャップ側大端部102cの搬送方向の両側の位置にそれぞれ配置されている。ガイドピン222bは、キャップ側大端部102cにおける大径ピン孔102aの位置に配置されている。
【0097】
ロッド側及びキャップ側大端部102b,102cは、対応する破断面同士(突き合わされる破断面同士)が、搬送方向に順番に並ぶように配置されている。具体的には、2つのロッド側破断面102dの一方を第1ロッド側破断面102d-1とし、他方を第2ロッド側破断面102d-2とし、第1ロッド側破断面102d-1に対応するキャップ側破断面102eを第1キャップ側破断面102e-1とし、第2ロッド側破断面102d-2に対応するキャップ側破断面102eを第2キャップ側破断面102e-2とする。
図11に示すように、第1ロッド側破断面102d-1が搬送方向の下流側に位置しかつ第2ロッド側破断面102d-2が搬送方向の上流側に位置するようにロッド側大端部102bが配置されているときには、第1キャップ側破断面102e-1が搬送方向の下流側に位置しかつ第2キャップ側破断面102e-2が搬送方向の上流側に位置するようにキャップ側大端部102cが配置される。本実施形態2では、ロッド側及びキャップ側大端部102b,102cは、ユーザにより保持部220に配置される。
【0098】
画像取得部10は、前記実施形態1と同様に、各ロッド側及び各キャップ側破断面102d,102eの二次元画像データと三次元画像データとをそれぞれ取得する。画像取得部10により取得された破断面の各画像データは、制御装置50により対応する破断面同士を比較できるように仕分けられる。制御装置50は、前記実施形態1と同様に、ロッド側及びキャップ側破断面102d,102eの二次元画像データから、ロッド側及びキャップ側輪郭31,32の画像データを抽出し、各輪郭の画像データを基準輪郭BCと比較して第1及び第2アフィン変換量を算出し、該第1及び第2アフィン変換量でもってロッド側及びキャップ側破断面102d,102eの三次元画像データを補正して、ロッド側及びキャップ側補正画像41,42の画像データを取得する。そして、制御装置50は、ロッド側補正画像41の画像データとキャップ側補正画像42の画像データとを比較して、ロッド側及びキャップ側破断面102d,102eの適合性を判定する。
【0099】
したがって、本実施形態2の構成であっても、破断面のエッジ部分に欠けが生じていたとしても、該欠けの部分も破断面検査の検査領域に含めることができ、さらに三次元画像データの間の位置合わせを効率良く行うことができる。よって、検査を高効率化させつつ検査精度を向上させることができる。
【0100】
(その他の実施形態)
ここに開示された技術は、前述の実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0101】
例えば、前述の実施形態1及び2では、画像取得部10は、コンベア3の側方に位置しており、保持部20,220は、ロッド側及びキャップ側破断面102d,102eが側方(画像取得部10側)を向いた状態でロッド側及びキャップ側大端部102b,102cをそれぞれ保持していた。これに限らず、画像取得部10をコンベア3の上側に配置するようにしてもよい。このときには、保持部20,220は、ロッド側及びキャップ側破断面102d,102eが上側を向いた状態でロッド側及びキャップ側大端部102b,102cを保持するような構成にする必要がある。
【0102】
また、前述の実施形態1及び2では、ユーザが、ロッド側及びキャップ側大端部102b,102cを保持部20,220にそれぞれセットしていた。これに限らず、ロボットにより自動的にロッド側及びキャップ側大端部102b,102cを保持部20,220にセットするようにしてもよい。
【0103】
また、前述の実施形態1及び2では、破断部品として、かち割りコンロッドのロッド側大端部102bとキャップ側大端部102cを例示した。これに限らず、本開示にかかる破断面検査方法及び破断面検査装置は、破断分割により生じた第1破断部品と第2破断部品のそれぞれの破断面を検査する際には適用することが可能である。
【0104】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0105】
ここに開示された技術は、破断分割により生じた第1破断部品と第2破断部品のそれぞれの破断面を検査する際に有用である。
【符号の説明】
【0106】
1 破断面検査装置
10 画像取得部
20 保持部
31 ロッド側輪郭(第1輪郭)
32 キャップ側輪郭(第2輪郭)
41 ロッド側補正画像
42 キャップ側補正画像
53 輪郭情報取得部
54 補正量算出部
55 三次元画像補正部
56 判定部
57 記憶部
102b ロッド側大端部(第1破断部品)
102c キャップ側大端部(第2破断部品)
102d ロッド側破断面(第1破断部品の破断面)
102e キャップ側破断面(第2破断部品の破断面)
220 保持部
BC 基準輪郭