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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035513
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】果肉食感様ソフトキャンディ
(51)【国際特許分類】
   A23G 3/34 20060101AFI20220225BHJP
【FI】
A23G3/34 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020139885
(22)【出願日】2020-08-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイト掲載日:2020年8月11日 ウェブサイトのアドレス:https://www.kracie.co.jp/release/10163814_3833.html
(71)【出願人】
【識別番号】393029974
【氏名又は名称】クラシエフーズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】初田 幸穂
(72)【発明者】
【氏名】濱崎 真一
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 和広
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GB07
4B014GG09
4B014GG12
4B014GK03
4B014GL11
(57)【要約】
【課題】
軟らかい果肉のような食感を有するソフトキャンディを提供する。
【解決手段】
下記(1)~(4)を満たすことを特徴とする果肉食感様ソフトキャンディにより上記課題を解決する。
(1)ゼリー強度250ブルーム以上のゼラチンを果肉食感様ソフトキャンディ全体重量中2~6重量%含有する
(2)ペクチンを果肉食感様ソフトキャンディ全体重量中0.1~1重量%含有する
(3)果肉食感様ソフトキャンディの厚み7mmに対し歯型プローブを150mm/分で10mm進入すると切断される破断特性を有する
(4)上記(3)の破断特性測定時の最大応力値が750~3,500g
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)~(4)を満たすことを特徴とする果肉食感様ソフトキャンディ。
(1)ゼリー強度250ブルーム以上のゼラチンを果肉食感様ソフトキャンディ全体重量中2~6重量%含有する
(2)ペクチンを果肉食感様ソフトキャンディ全体重量中0.1~1重量%含有する
(3)果肉食感様ソフトキャンディの厚み7mmに対し歯型プローブを150mm/分で10mm進入すると切断される破断特性を有する
(4)上記(3)の破断特性測定時の最大応力値が750~3,500gである
【請求項2】
果肉食感様ソフトキャンディ中の砂糖の結晶化度が50%以上である請求項1記載の果肉食感様ソフトキャンディ。
【請求項3】
果肉が、バナナ、メロン、桃、マンゴー、ラ・フランス、キウイ、イチジク、アボカド、焼き芋である請求項1又は2記載の果肉食感様ソフトキャンディ。
【請求項4】
前記砂糖の結晶化度は、砂糖の95℃未満の加温調製に因るものである請求項2又は3記載の果肉食感様ソフトキャンディ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟らかい果肉のような食感を有するソフトキャンディに関する。
【背景技術】
【0002】
ソフトキャンディの種類は多岐に渡るが、最近は、柔らかくチューイング性を有するチューイングソフトキャンディや、弾力性に富む食感を有するグミキャンディなどをよく見かける。
【0003】
チューイングソフトキャンディとしては、ゼラチンを含有し、噛み出しの柔らかさに優れ、歯に付着し難いソフトキャンディが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、該ソフトキャンディは、フレーバー、果汁、ピューレ等による果物様風味の設計は可能でも、果肉のような軟らかさや、果肉を想起するような食感ではなかった。
【0004】
グミキャンディとしては、ゼラチン及びペクチンを含有し、破断荷重が13Nよりおおきくかつ88N未満であり破断ひずみが56%より大きい咀嚼力向上用組成物が知られている(例えば、特許文献2参照)。該組成物は、咀嚼力向上のため弾力に富む物性に設計されていることから、軟らかい果肉を想起するような食感ではなかった。
【0005】
一方、弾力を極力抑え、ゼラチン及びペクチンを含有し、柔らかく歯切れのよいグミキャンディが提案されている(例えば、特許文献3参照)。該グミキャンディは、柔らかさのために120~200という比較的低いブルーム値のゼラチンを使用し、そのため問題となる夏場等の高温下での「なき」現象を防止するためにペクチンを併用している。しかしながら、該グミキャンディは、従来の噛み応えのあるグミキャンディほどの強い弾力はないものの、一定の弾力はあるため軟らかい果肉を想起するような食感ではなかった。
【0006】
他方、本発明者らは、非加熱であっても、加熱(煮詰め)工程を経て調製したソフトキャンディと同等の成形適性と粘弾性とを有するソフトキャンディ及びその製法を提案している(例えば、特許文献4参照)。該ソフトキャンディは、非加熱で調製することから、粉末原料中の結晶粒子がゼラチン等のつなぎ剤と油脂や乳化剤等の結着抑制剤とからなる連続層中に分散されつつ相互結着されている。したがって粘弾性のある食感となっていた。またその食感は、ペクチンを使用していないため、軟らかい果肉を想起するような食感ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2002/009530号
【特許文献2】特開2018-107号公報
【特許文献3】特開平10-257854号公報
【特許文献4】特開平9-23819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、軟らかい果肉のような食感を有するソフトキャンディを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記(1)~(4)を満たすことを特徴とする果肉食感様ソフトキャンディにより上記目的を達成する。
(1)ゼリー強度250ブルーム以上のゼラチンを果肉食感様ソフトキャンディ全体重量中2~6重量%含有する
(2)ペクチンを果肉食感様ソフトキャンディ全体重量中0.1~1重量%含有する
(3)果肉食感様ソフトキャンディの厚み7mmに対し歯型プローブを150mm/分で10mm進入すると切断される破断特性を有する
(4)上記(3)の破断特性測定時の最大応力値が750~3,500gである
【0010】
好ましくは、果肉食感様ソフトキャンディ中の砂糖の結晶化度が50%以上である。さらに好ましくは、果肉が、バナナ、メロン、桃、マンゴー、ラ・フランス、キウイ、イチジク、アボカド、焼き芋である。より好ましくは、前記砂糖の結晶化度は、砂糖の95℃未満の加温調製に因るものである。
【0011】
すなわち、本発明者らは、果物風味のソフトキャンディは多数上市されているものの、ソフトキャンディ特有のチューイング性や弾力性に富む食感は果物の食感とは異質の物性であるため、果物様の食感の再現という点で改良の余地が十分あると考えた。そこで、ソフトキャンディの食感を左右する要因に注目し、ソフトキャンディの弾力性や硬さに強く影響するゲル化剤について鋭意検討した。
【0012】
まず、ゼラチン由来の弾力性を抑制するために、ゼラチンの含有量やゼリー強度を下げて柔らかい物性とすると、保形性、付着性、成形性、生産性等の問題が発生した。加えて、一定の弾力は残るためやはり果物のような食感とは相違することが判明した。ところが、ゼラチンに別のゲル化剤であるペクチンを併用すると、弾力のあるソフトキャンディが軟らかいソフトキャンディに変化すること、また、伸長するような柔らかさではなく一噛み目で噛み切れる適度な軟らかさを有するソフトキャンディに変化することを見出した。
【0013】
上記検討の結果、ソフトキャンディに、通常使用するゼラチンの含有量やゼリー強度に変更を加えることなく、ペクチンを所定量併用することで、従来の保形性の向上やなき防止のような作用ではなく、軟らかい果肉を有する果物や加工野菜を想起できる食感のソフトキャンディを設計できることを見出し、本発明に到達した。
【0014】
さらに、ソフトキャンディの結晶性もまた軟らかさに影響を与えるのではないかと考察し、調製方法に着目して検討した。すなわち、ソフトキャンディの一般的な調製方法は、特許文献1~3に記載される「砂糖や水飴等の糖質甘味料を水に溶解後、煮詰めるなどして濃縮して得られる糖液を用いて調製する方法」と、特許文献4に記載される「水に溶解することなく砂糖等の粉末原料に他の原料を介在させる結着によって調製する方法」との2通りの方法が挙げられる。さらに、前者の応用としては、特許文献1のようにフォンダントのような結晶種を投入する方法も挙げられる。検討の結果、好ましくは、砂糖が特定の結晶性を有するソフトキャンディは軟らかく果肉のような食感となることを見出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0015】
本発明の果肉食感様ソフトキャンディは、適度な軟らかさを有するため、軟らかい果肉を想起するような食感を有する。さらに、上記ソフトキャンディの軟らかさは、伸長することなく一噛み切り目で噛み切ることのできる歯切れの良さを有することから、果肉のような食感を得ることができる。
【0016】
また、本発明の果肉食感様ソフトキャンディは、上記の軟らかさに加えて、弱い弾力、密な組織及びねっとり感を有することから、相乗的に軟らかい果肉のような果肉様食感を
得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る破断特性の測定方法の一例を示す図である。
図2】実施例2、参考例1、及び参考例2の破断特性の測定から得られた応力曲線を示す図である。
図3】実施例2のX線回折法による測定から得られた測定チャートである。
図4】参考例1のX線回折法による測定から得られた測定チャートである。
図5】参考例2のX線回折法による測定から得られた測定チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を詳しく説明する。本発明の果肉食感様ソフトキャンディは、下記(1)~(4)を満たすことが軟らかい果肉のような果肉様食感の点で重要である。
(1)ゼリー強度250ブルーム以上のゼラチンを果肉食感様ソフトキャンディ全体重量中2~6重量%含有する
(2)ペクチンを果肉食感様ソフトキャンディ全体重量中0.1~1重量%含有する
(3)果肉食感様ソフトキャンディの厚み7mmに対し歯型プローブを150mm/分で10mm進入すると切断される破断特性を有する
(4)上記(3)の破断特性測定時の最大応力値が750~3,500gである
【0019】
果肉食感様ソフトキャンディの「果肉」とは、果物や野菜の皮の内側にある食用部分を指す。また、本発明において「果肉食感様」或いは「果肉様食感」とは、果物や野菜を生食する場合、或いは加熱処理等の加工後に食する場合に軟らかい果肉として想起し得る食感であることを意味する。また、軟らかさ、該軟らかさによる歯切れの良さ、弱い弾力、密な組織及びねっとり感によって相乗的に、軟らかい果肉として想起し得る食感であることを意味する。なお、「密な組織」とはソフトキャンディ中のゼラチンネットワーク内に空気が取り込まれた含気状態の組織(いわゆる空気感のある組織)とは対極の状態を意味する。
【0020】
例えば、生食で想起するものは、バナナ、メロン、桃、マンゴー、ラ・フランス、キウイ、イチジク、アボカド等の食感が挙げられる。加熱加工後で想起するものは焼き芋等の食感が挙げられる。
【0021】
ゼラチンは、軟らかい果肉様食感を付与する点で重要である。また、由来、原料処理方法は特に問わず、牛、豚、鳥、魚等から得られたもの、酸処理、アルカリ処理されたもの等いずれを用いてもよい。
【0022】
ゼラチンのゼリー強度は、250ブルーム以上であることが適度な軟らかさを付与する点で重要である。250ブルーム未満では軟らかすぎることになる。また、軟らかすぎて伸長するため一噛み切り目の歯切れの良さが得られない。さらに、軟らかすぎると保形性が低下し歯への付着性が強くなる。
【0023】
さらに、果肉食感様ソフトキャンディ全体重量中2~6重量%含有することが軟らかい果肉様食感が得られる点で重要である。2重量%未満では軟らかすぎることになる。また、軟らかすぎると保形性が低下し歯への付着性が強くなる。一方、6重量%を超えると、弾力が強くなりかつ空気感のある組織となり、ねっとり感が低下する。
【0024】
ペクチンは、果肉食感様ソフトキャンディ全体重量中0.1~1重量%含有することが、軟らかい果肉様食感を付与する点で重要である。0.1重量%未満では硬さ又は弾力を強く発現しねっとり感を感じない。一方、1重量%を超えると軟らかすぎることになる。
さらに、軟らかすぎると保形性が著しく低下しソフトキャンディとしての形状を保つことができない。そして歯への付着性が強くなる。
【0025】
また、ハイメトキシルペクチン(HMペクチン)、及びローメトキシルペクチン(LMペクチン)の2種のうちどちらか1種以上が用いられる。好ましくは、HMペクチンを用いることが、ソフトキャンディに含まれる糖度(高糖度)の条件下でゲル化でき、かつゼラチンによる保形性や保水性を最大限に発揮できる点で好適である。
【0026】
次に、本発明の果肉食感様ソフトキャンディは、該ソフトキャンディの厚み7mmに対し歯型プローブを150mm/分で10mm進入すると切断される破断特性を有することが、果肉食感様の適度な軟らかさの点で重要である。
【0027】
本発明に係る破断特性とは、ソフトキャンディの軟らかさを示す指標であり、応力測定が可能な測定機器による切断可否にて判定することができる。上述の測定条件は比較的弱い応力を対象とするものであり、この条件で切断できるものは適度な軟らかさを有するため軟らかい果肉を想起できるような食感を有する。さらに、伸長することなく一噛み目で噛み切ることのできる歯切れの良さを有する。一方、硬さ又は弾力を強く発現する場合、反対に軟らかすぎて伸長する場合は切断できない。なお、応力測定が可能な測定機器としては、テクスチャーアナライザー、レオメーターなどが挙げられる。
【0028】
測定方法としては、下記に示すテクスチャーアナライザーを用いる方法が例示できる。例えば、下記テクスチャーアナライザーの台座に測定試料(厚み7mm)をセッティングし、歯型プローブを150mm/分の速度で押し込み深さ10mmまで進入させ切断可否を判定する。なお、台座は、測定試料を載置して支えることができ、かつ歯型プローブが目的の距離まで進入できるような隙間を有するものが用いられる。
・測定機器:英弘精機株式会社製テクスチャーアナライザーTA.XTplus
・測定ソフトウェア:Texture Exponent Lite
・測定試料:果肉食感様ソフトキャンディ(厚み7mm)
・測定温度:品温25℃
【0029】
破断特性の測定方法について図1を用いて説明する。図1は本発明に係る破断特性の測定方法の一例を示す図である。1は歯型プローブ、2は果肉食感様ソフトキャンディ、3は台座である。図1(a)は測定開始前のセッティング状況を示しており、厚み7mmの2を3に載置し、3は1の先端の位置に合わせて隙間を開けている。図1(b)は下降させた1の先端が2の表面に接する測定開始直前の状態を示しており、この地点から1を150mm/分の速度で下方に押し込み、深さ10mmまで進入させる。図1(c)は1が深さ10mm進入後の状態を示しており、図1(c)-1が切断された場合、図1(c)-2が非切断の場合を示している。
【0030】
本発明の果肉食感様ソフトキャンディは、図1(c)-1のように切断する適度な軟らかさを備えている。一方、硬さ又は弾力を強く発現するもの、さらに粘弾性が強いものは、図1(c)-2のように、3の表面位置で1の先端が留まり切断されない。反対に軟らかすぎて、チューイング性や柔軟性を有するものは、図1(c)-1のように1は10mm進入するものの、2は切断されることなく伸長する(伸長による非切断の状態は図示せず)。なお、上述の通り、測定条件が比較的弱い応力を対象とすることから、硬いもの及び軟らかく伸長するものが非切断となる。
【0031】
さらに、本発明の果肉食感様ソフトキャンディは、上記破断特性の測定時に得られる応力曲線における最大応力値(H1)が、750~3,500gであることが、適度な軟らかさを有し軟らかい果肉を想起できる食感である点で重要である。さらに、伸長すること
なく一噛み目で噛み切ることのできる歯切れの良さを有する点で重要である。750gより低いと軟らかすぎるため、3,500gより高いと硬すぎるため、果肉様食感を想起できない。
【0032】
最大応力値(H1)について、図2及び図1(c)-1を用いて説明する。図2は破断特性の測定から得られた応力曲線を示す図である。後述するように、図2中、(a)は実施例2、(b)は参考例1、(c)は参考例2の応力曲線である。縦軸が応力(g)を、横軸が時間(sec)を示し、応力曲線のうち応力の最も高い値がH1である。なお、本発明の果肉食感様ソフトキャンディを、上記破断特性の測定で切断すると図2(a)のように2つのピークを有する応力曲線が得られる。これは、果肉食感様ソフトキャンディの厚み以上に歯型プローブを侵入させるため、図1(c)-1のように、果肉食感様ソフトキャンディの切断後歯型プローブが台座に接触したまま押し込まれ台座の応力が2つ目の応力ピークとして示されたためである。したがって、測定時に目視で切断を確認した場合は、切断前の応力ピークよりH1を読み取る。他方、非切断の場合は図2(b)、図2(c)のように応力ピークは1つとなるため、この応力ピークからH1を読み取る。
【0033】
次に、本発明の果肉食感様ソフトキャンディは、砂糖を含有することが、果肉食感様ソフトキャンディの結晶性、及び軟らかい果肉様食感の点で好適である。より好ましくは、果肉食感様ソフトキャンディ中の砂糖の結晶化度が50%以上であることが、軟らかい果肉様食感の点で好適である。
【0034】
上記結晶化度とは、果肉食感様ソフトキャンディの結晶性を示す指標であり、結晶成分の割合(%)で表す。結晶化度が大きいほど結晶性が高いことを意味する。本発明では、好ましくは、砂糖の結晶化度が50%以上であると結晶性が高く、適度な軟らかさによる軟らかい果肉を想起できるような食感、一噛み目で噛み切ることのできる歯切れの良さ、ねっとり感等の果肉様食感を有する点で好適である。
【0035】
結晶性の測定方法の一例として、X線回折法が挙げられる。すなわち、果肉食感様ソフトキャンディ(品温25℃)をX線回折法により測定し、得られた測定チャートから、まず砂糖の回折ピークを抽出し、その砂糖の回折ピークを結晶成分と非結晶成分とに分け後述の式を用いて砂糖の結晶化度(%)を算出する。X線回折法による測定から得られた測定チャートを図3~5に示す。後述するように、図3は実施例2、図4は参考例1、図5は参考例2の測定チャートであり、縦軸が強度(cps)を、横軸が2θ(deg)を示している。
【0036】
【数1】
【0037】
また、本発明の果肉食感様ソフトキャンディには、本発明の目的を損なわない範囲であれば、適宜選択した副原料を用いてもよい。例えば、糖質甘味料(単糖類(ブドウ糖、果糖、キシロース等)、二糖類以上の多糖類(砂糖(上白糖、グラニュー糖、粉糖等)、乳糖、麦芽糖、異性化乳糖、トレハロース、オリゴ糖、デキストリン、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、水飴等)、糖アルコール(キシリトール、マルチトール、還元パラチノース(パラチニット)、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール、還元乳糖、還元水飴等)等)、油脂、酸味料(クエン酸、フマル酸、酒石酸等)、高甘味度甘味料(アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、ネオテーム等)、安定剤、乳化剤、着色料、香料、乾燥果実、種実類、各種風味原料(乳製品、茶類、コーヒー、
ココア、ハーブ類、蜂蜜、果汁、調味料、エキス)、ビタミン類(A、B1、B2、ナイアシン、B6、B12、C、D、E、K、葉酸、パントテン酸等)、ミネラル類(カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛、銅、マンガン等)、食物繊維、美肌成分(コラーゲン、ヒアルロン酸等)、グリセリン、増粘多糖類、澱粉等が挙げられる。これらは、単独でも複数組み合せて用いてもよい。好ましくは、上述したように砂糖を含有する。さらに好ましくは、砂糖を果肉食感様ソフトキャンディ全体重量中30~80重量%含有することが、適度な軟らかさ、歯切れの良さ、及び密な食感が得られる点で好適である。加えて、良好な保形性、歯への付着性及び風味の点で望ましい。
【0038】
次に、本発明の果肉食感様ソフトキャンディを製品化する場合は、適宜包装体で包装すればよい。なお、包装体の材質は特に制限するものではなく、例えば、軟質プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、紙、金属(アルミ、アルミ蒸着、ガラス蒸着など)等、適宜用いればよい。もしくはこれらの材質を組み合わせてラミネートしたものでもよい。また、包装体の形状も特に限定するものではなく、袋状、筒体、箱等適宜選択すればよい。
【0039】
次に、本発明の果肉食感様ソフトキャンディは、例えば、以下のように調製される。
【0040】
まず、ゼラチン及びペクチンを水性媒体で溶解し、ゼラチン及びペクチン溶液を調製する。ゼラチン及びペクチン溶液は、各々単独に調製しても、併せて調製してもどちらでもよい。該水性媒体としては、特に限定するものではなく、上水道水、シロップ等の各種水溶液等が挙げられる。
【0041】
また、水性媒体への溶解方法としては、例えば、膨潤溶解法及び直接溶解法が挙げられ、どちらを採用してもよい。膨潤溶解法とは、ゼラチン及びペクチンに予め室温程度の水性媒体を十分に吸水させて膨潤し、次に加温して溶解する方法である。例えば、1~25℃の水性媒体にゼラチン及びペクチンを加えて吸水膨潤し、次に60~80℃に加温して溶解することでゼラチン及びペクチン溶液を調製する方法が挙げられる。直接溶解法とは、ゼラチン及びペクチンを、加温した水性媒体に、攪拌しながら直接投入して溶解する方法である。なお、水性媒体の加温は、直接ゼラチン及びペクチンを投入して溶解できる、かつゼラチン及びペクチン投入後の温度が60℃~80℃となるように温度設定すればよく、例えば、90℃以上100℃未満が挙げられる。
【0042】
次に、副原料のうち砂糖等の糖質甘味料を混練機に投入し加温する。好ましくは95℃未満の加温温度で行うことが、さらに、糖質甘味料に過剰の水を加え加熱溶解後濃縮する煮詰め工程を採用しないことが、結晶性の点で好適である。95℃以上の加温、煮詰め工程があると、結晶性が低下し砂糖の結晶化度が50%未満となる。他に、果肉食感様ソフトキャンディの保形性や付着性が低下し、歯切れが悪くなる。混練機としては、粘性の高いゼラチン及びペクチン溶液を糖質甘味料に均一に分散させることができる点で、ニーダー、リボンミキサー等が好適に用いられる。なお、副原料は、後述するように、ゼラチン及びペクチン溶液を投入した後に添加してもよい。
【0043】
次に、上記加温した糖質甘味料に、上記ゼラチン及びペクチン溶液、必要に応じて副原料を添加後混合して果肉食感様ソフトキャンディ生地(以下、「生地」と記す)を調製する。なお、該生地はエージングすると、生地内の砂糖等の糖質甘味料の結晶状態が安定化し、良好な保存耐久性や安定した成形性が得られる点で好適である。
【0044】
次に、上記生地を成形し、本発明の果肉食感様ソフトキャンディを得る。成形方法は、例えば、シート成形、ロープ成形、モールド成形、スタンピング成形、押出し成形、カット成形などの公知の成形方法が挙げられる。好ましくは、特開2013-074874号
公報に記載の、押出し直後に切断する成形方法が好適である。この方法は、切断直後に目的形状に成形できることから、シート成形後の型抜きで生じるような無駄な残生地が発生せず、効率良く製造できる点で好適である。また、押出す吐出口がそのまま目的の果肉食感様ソフトキャンディの形状になることから、吐出口の形状を変更することで、自在に果肉食感様ソフトキャンディのデザインを設計できる点でも好適である。更に、複数の異なる形状の吐出口を備えることで、同時に異なる形状を量産成形することもできる。
【0045】
上記のようにして調製された果肉食感様ソフトキャンディは、適度な軟らかさ及び歯切れの良さを有し、また、その軟らかさに加えて、弱い弾力、密な組織及びねっとり感を有することから、相乗的に軟らかい果肉を想起するような食感を有する。
したがって、本発明の果肉食感様ソフトキャンディを設計する際、風味と食感の両方で実在する果物や野菜と近似するソフトキャンディを調製することができる。反対に、ソーダ味、コーラ味、硬い食感の果物風味など、軟らかい果肉食感にそぐわない風味にしたり、組み合わせることで、意外性のある新しいソフトキャンディとしても展開できる。
【実施例0046】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0047】
<実施例1~7、比較例1~6>
≪果肉食感様ソフトキャンディの調製≫
下記(1)~(4)の工程にて、表1に示す組成のソフトキャンディを調製した。風味原料としてバナナ香料を用いた。また、実施例7は風味原料としてバナナ香料と濃縮バナナ果汁を用いた。
(1)予めゼラチン及びペクチン溶液を直接溶解法にて調製した。すなわち、ゼラチン及びペクチンを90℃以上の上水道水に撹拌しながら直接投入して溶解した。得られたゼラチン及びペクチン溶液は65℃であった。
(2)副原料をニーダーに投入し、40℃に加温しながら混合した。
(3)上記ゼラチン及びペクチン溶液をニーダーに添加後混合してソフトキャンディ生地(以下、「生地」と記す)を調製した。
(4)上記生地を押出し成形し、ソフトキャンディ(縦20mm×横10mm×高さ(厚み)7mm)を得た。
【0048】
【表1】
【0049】
実施例及び比較例の食感、破断特性及び最大応力値について評価した結果を表1に示す。食感は、表2の評価基準を元に専門パネラー8名が評価した評点の平均値を示した。破断特性及び最大応力値は上述の記載に基づいて測定した。
【0050】
【表2】
【0051】
≪破断特性及び最大応力値の測定≫
図1(a)に示すように、下記テクスチャーアナライザーの台座3に実施例又は比較例
(厚み7mm)2をセッティング後、図1(b)に示すように、歯型プローブ1の先端を2の表面まで下降させた。次に、図1(c)に示すように、1を150mm/分の速度で押し込み深さ10mmまで進入させ切断可否を判定した。また、この測定時に得られた応力曲線から最大応力値(H1)を読み取った。これらの結果を表1に示す。なお、測定は3回行い、H1はその平均値を示した。
・測定機器:英弘精機株式会社製テクスチャーアナライザーTA.XTplus
・測定ソフトウェア:Texture Exponent Lite
・測定温度:品温25℃
・台座3:ガラス製の板2枚を3mmの隙間を開けて設置
【0052】
評価の結果、実施例は良好な総合評価が得られた。すなわち、破断特性及び最大応力値より、バナナ果肉のような軟らかさと一噛み目で噛み切ることのできる歯切れの良さを有していた。また、この軟らかさと食感評価(弾力、組織、ねっとり感)により、バナナ果肉を想起するような食感であった。
【0053】
一方比較例は、食感、破断特性、最大応力値の何れかが不良であった。比較例1は、切断はできるものの軟らかすぎてバナナ果肉を想起できなかった。比較例2は、弾力が強く空気感を感じる組織でねっとりとはしていなかったためバナナ果肉を想起できなかった。比較例3は全体的に評価が低くバナナ果肉とは程遠い食感であった。比較例4は破断特性の測定ができないほど軟らかかった。比較例5及び比較例6は、破断測定では伸長して切断できなかった。
【0054】
<実施例2、参考例1~2>
煮詰めて製造しその途中フォンダントを添加して製造したと推察される市販品のチューイングソフトキャンディ(参考例1)、煮詰めて製造したと推察される市販品のグミキャンディ(参考例2)について、実施例2と同様に、食感、破断特性及び最大応力値を評価した。その結果を実施例2の結果と一緒に表3に示す。破断特性の測定から得られた各々の応力曲線を図2に示す((a)が実施例2、(b)が参考例1、(c)が参考例2)。
【0055】
【表3】
【0056】
実施例2及び参考例1、2の結晶性について測定し、砂糖の結晶化度(%)を算出した。
【0057】
≪結晶性の測定≫
下記に示すX線回折装置を用いて、実施例2及び参考例1、2(品温25℃)をX線回折法により測定した。
・測定機器:株式会社リガク製Smart Lab
・X線の波長:1.54Å(Cu・Kα)
・測定範囲(2θ):5°~50°
・ステップサイズ(サンプリング幅):0.04°
・測定速度(スキャンスピード):4°/分
・X線出力:電圧45kv、電流200mA
・解析ソフトウェア:統合粉末X線解析ソフトウェア PDKL
・測定温度:品温25℃
【0058】
≪砂糖の結晶化度の算出≫
上記測定から得られた測定チャートを図3~5に示す(図3が実施例2、図4が参考例1、図5が参考例2)。この測定チャートから、まず砂糖の回折ピークを抽出し、その砂糖の回折ピークを結晶成分と非結晶成分に分け上記に示した式を用いて砂糖の結晶化度(%)を算出した。その結果を表3に示す。
【0059】
実施例2及び参考例1、2の評価及び測定の結果、実施例2は、バナナ果肉のような軟らかさと一噛み目で噛み切ることのできる歯切れの良さを有していた。また、この軟らかさと、全く感じることのない弾力、密な組織及びねっとり感とから、バナナ果肉を想起するような食感であった。
【0060】
参考例1は、弾力を少し感じ、密な組織でごく僅かにねっとり感を感じるものの、硬いため一噛み目では噛み切れず歯切れが悪く、バナナ果肉を想起することはなかった。破断特性の測定では、歯型プローブの10mm進入時に伸長して切断せず、高い最大応力値を示した。
【0061】
参考例2は、密な組織ではあったが、硬く、弾力が大変強いため一噛み目では噛み切れず、ねっとり感も全くなく、バナナ果肉を想起することはなかった。破断特性の測定では、弾力による反発のため切断できなかった。
【0062】
<比較例7>
実施例2と同じ組成で、実施例2の調製工程(2)の加温を100℃以上にして実施したところ、混合物に焦げが生じ、ソフトキャンディ生地の調製ができなかった。
【0063】
<比較例8>
上水道水を32.5重量部とする以外は、実施例2と同じ組成を準備し、下記(1)~(4)の工程にてグミキャンディを調製した。また、風味原料としてバナナ香料を用いた。
(1)予めゼラチン及びペクチン溶液を直接溶解法にて調製した。すなわち、ゼラチン及びペクチンを90℃以上の7.5重量部の上水道水に撹拌しながら直接投入して溶解した。得られたゼラチン及びペクチン溶液は65℃であった。
(2)副原料及び25重量部の上水道水をニーダーに投入し、100℃以上に加温しながら混合した。
(3)上記ゼラチン及びペクチン溶液をニーダーに添加後混合してグミキャンディ液を調製した。
(4)上記グミキャンディ液をスターチモールドに充填し乾燥させた。
【0064】
得られたグミキャンディは、求肥のような軟らかさと弾力を有することから、伸長して歯切れが悪く、軟らかい果肉と比較すると軟らかすぎるためバナナ果肉を想起する食感ではなかった。さらに、保形性が悪く、歯への付着も生じた。
【0065】
<実施例8>
風味原料として桃香料を用いる以外は、実施例2と同じ組成で、実施例2と同様に果肉食感様ソフトキャンディを調製したところ、桃果肉のような軟らかさと一噛み目で噛み切ることのできる歯切れの良さを有していた。また、この軟らかさと、弾力を全く感じることなく、密な組織とねっとり感とから、桃果肉を想起するような食感であった。
【0066】
<実施例9>
風味原料としてマンゴー香料を用いる以外は、実施例1と同じ組成で、実施例1と同様に果肉食感様ソフトキャンディを調製したところ、マンゴー果肉のような軟らかさと一噛み目で噛み切ることのできる歯切れの良さを有していた。また、この軟らかさと、弾力を全く感じることなく、密な組織とねっとり感とから、マンゴー果肉を想起するような食感であった。
【0067】
<実施例10>
風味原料としてブドウ香料を用いる以外は、実施例2と同じ組成で、実施例2と同様に果肉食感様ソフトキャンディを調製した。ブドウ果肉とは異なる軟らかくねっとりとした食感は、意外性があり楽しみながら食べることができた。
【符号の説明】
【0068】
1 歯型プローブ
2 果肉食感様ソフトキャンディ
3 台座
図1
図2
図3
図4
図5