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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035515
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】着香物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61Q 13/00 20060101AFI20220225BHJP
   C11B 9/00 20060101ALI20220225BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20220225BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220225BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20220225BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20220225BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20220225BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20220225BHJP
   A61L 9/01 20060101ALN20220225BHJP
【FI】
A61Q13/00 100
C11B9/00 Z
A23L27/00 Z
A61K8/34
A61K8/35
A61K8/31
A61K8/37
A61K8/19
A61L9/01 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020139897
(22)【出願日】2020-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】390015853
【氏名又は名称】理研香料ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002136
【氏名又は名称】特許業務法人たかはし国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高原浩二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤なつみ
(72)【発明者】
【氏名】古田倫子
(72)【発明者】
【氏名】平井啓介
【テーマコード(参考)】
4B047
4C083
4C180
4H059
【Fターム(参考)】
4B047LB09
4B047LE01
4B047LF10
4B047LG02
4B047LG05
4B047LG06
4B047LG07
4B047LG10
4B047LP20
4C083AB061
4C083AB081
4C083AB131
4C083AB501
4C083AC011
4C083AC101
4C083AC121
4C083AC211
4C083AC391
4C083BB41
4C083DD08
4C083EE18
4C083KK01
4C180AA03
4C180EA52Y
4C180EB02X
4C180EB02Y
4C180EB03X
4C180EB04X
4C180EB04Y
4C180EB06X
4C180EB06Y
4C180EB07X
4C180EB08X
4C180EB14X
4C180EB15X
4C180EB30Y
4H059DA09
4H059EA35
(57)【要約】
【課題】公知の香料を使用した場合とは異なる独特の香りを着香対象物に付与することができ、独特の香り付けにより、着香物に新たな付加価値を与えることのできる着香方法(着香物の製造方法)を提供する。
【解決手段】香気成分2を含むキャリアガスGを、着香対象物1に導入することによって、着香対象物1に着香する。着香対象物1としては、食品、日用品、液化ガス、繊維類、紙類、医薬品類、樹脂類、防錆剤、抗菌・除菌剤、有害生物駆除・忌避剤、空間・空調システム、等が例示できる。また、着香対象物1として、通常の液体香料に使用されている溶媒(液体)を適用することにより、従来の液体香料とは異なる着香液体を製造することができる。かかる着香液体は、香気成分を含み、食品製造用や日用品製造用の液体として使用することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
香気成分を含むキャリアガスを、着香対象物にバブリングにより導入することによって、該着香対象物に着香する工程を含むことを特徴とする着香物の製造方法。
【請求項2】
前記キャリアガスが、窒素、炭酸ガス、空気、酸素、アルゴン、水素、ヘリウム、エチレン及び冷媒ガスからなる群より選ばれる1種以上のガスである請求項1に記載の着香物の製造方法。
【請求項3】
前記着香物が着香液体である請求項1又は請求項2に記載の着香物の製造方法。
【請求項4】
前記着香対象物が、水、エチルアルコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリアセチン、イソプロパノール、ヘキサン、アセトン及び油脂類からなる群より選ばれる1種以上の液体である請求項3に記載の着香物の製造方法。
【請求項5】
前記着香対象物が、化粧品、石鹸、洗剤、芳香剤、浴剤、液化ガス、繊維類、紙類、医薬品類、樹脂類、防錆剤、抗菌・除菌剤、有害生物駆除・忌避剤又は空間・空調システムである請求項1に記載の着香物の製造方法。
【請求項6】
請求項3又は請求項4に記載の着香物の製造方法により製造した着香液体を原料として香料を製造することを特徴とする香料の製造方法。
【請求項7】
前記香料が粉末香料である請求項6に記載の香料の製造方法。
【請求項8】
前記香料が食品製造用の香料である請求項6又は請求項7に記載の香料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着香物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や、化粧品、石鹸、洗剤、芳香剤、浴剤等の日用品には、嗜好性を高めたり、快適に使用したりするために、様々な香料(フレーバー、フレグランス)が添加されている。このような香料として、液体香料、粉末香料、カプセル香料、乳化香料等が種々市販されている。
【0003】
香料の効果を十分に発揮させるためには、香料を添加する対象物(食品、日用品、ガス事業製品、工業用製品)や、その容器の中に、香料を効率的に導入する必要がある。
【0004】
食品香料ないし食品香料を構成する指定添加物、香辛料抽出物、香辛料を効率的に食品や容器の中に導入する方法が種々提案されている(特許文献1~特許文献4)。
【0005】
特許文献1には、コーヒー香気吸着材の入った容器を加熱ジャケットにより加熱した状態で、窒素ボンベから、窒素をキャリアガスとして送り込み、コーヒー香気吸着材から離脱したコーヒー香気成分を、冷却ジャケットにより冷却した容器中において低温状態に保持した被吸着製品に接触させて吸着させる方法が開示されており、生理的に活性な被吸着製品表面に効率良くコーヒー香気成分を付与することができるとされている。
【0006】
特許文献2には、包装体の中に設けられる食料品の香気処理方法が開示されている。特許文献2の方法では、開いた状態の包装体の上部空間に、保護ガスが、香料と酸化防止剤を含む液体と共に入れられる。特許文献2においては、酸化防止剤の作用により、包装された食料品の香気を、比較的狭い空間に保持できる、とされている。
【0007】
特許文献3には、鶏卵を、密閉された領域内で着香物質と保持し、密閉された領域内で、冷風を循環させ、着香物質の発散する香りを鶏卵に着香させる香り卵の製造方法が開示されている。特許文献3では、鶏卵の呼吸作用によって着香しており、鶏卵の賞味期限の間は香りが持続する、とされている。
【0008】
特許文献4には、飲料を、大きな比表面積を有する、溶剤不活性で芳香物質が負荷された固体の粒子状担持材料によって付香する方法が開示されており、特に、熱い飲料に安定して付香することができるとされている。
【0009】
また、洗剤や香水等の日用品についても、香りの持続性の観点等から、様々な改良が提案されている。
【0010】
特許文献5には、融点が40℃以上の油脂成分と香料とを含有する水中油型エマルジョンと、HLBが13以上のノニオン界面活性剤とを含有し、嵩密度が0.6kg/L以上である粒状洗剤組成物が開示されている。特許文献5の粒状洗剤組成物は、被洗物に対する香気の持続性に優れる、とされている。
【0011】
特許文献6には、特定の組成の化合物から構成される、長時間持続する芳香性効果を有する香料組成物を使用した香水等が開示されている。
【0012】
しかしながら、これらの公知技術は、対象物に安定的に香料を導入するのが困難である、といった問題が残っており、着香した対象物の品質の点においてまだまだ課題がある。
また、対象物に添加される香りは、多種多様な香気成分からなるものであるところ、揮発しやすい成分(トップ香成分)とそうでない成分があることから、安定した香りが持続するようにするのは困難であり、更なる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平4-108344号公報
【特許文献2】特表2012-527250号公報
【特許文献3】特開2015-023862号公報
【特許文献4】特表2007-501604号公報
【特許文献5】特開2010-180284号公報
【特許文献6】特表2001-522392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、公知の香料を使用した場合とは異なる独特の香りを着香対象物に付与することができ、独特の香り付けにより、着香物に新たな付加価値を与えることのできる着香方法(着香物の製造方法)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、香気成分をキャリアガス中に添加し、かかるキャリアガスを着香対象物に導入することにより、着香対象物の中に香気成分を効果的に導入することができることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は、香気成分を含むキャリアガスを、着香対象物に導入することによって、該着香対象物に着香する工程を含むことを特徴とする着香物の製造方法を提供するものである。
【0017】
また、本発明は、前記着香物が着香液体である前記の着香物の製造方法を提供するものである。
【0018】
また、本発明は、前記着香対象物が、化粧品、石鹸、洗剤、芳香剤、浴剤、液化ガス、繊維類、紙類、医薬品類、樹脂類、防錆剤、抗菌・除菌剤、有害生物駆除・忌避剤又は空間・空調システムである前記の着香物の製造方法を提供するものである。
【0019】
また、本発明は、前記の着香物の製造方法により製造した着香液体を原料として香料を製造することを特徴とする香料の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、同一の香気成分を含む公知の香料を使用した場合とは異なる独特の香りを着香対象物に付与することができ、独特の香り付けにより、着香物に新たな付加価値を与えることができる。
【0021】
本発明によれば、香気成分を、安定的かつ簡便にガスに着香することができる。これにより、本発明では、着香対象物の中に目的とする香気成分を効果的に導入することができる。
【0022】
本発明によれば、着香対象物に導入するキャリアガスに香気成分を添加することにより、香気成分を含有するキャリアガスが、着香対象物又はその容器に封入されるので、従来の方法(例えば、液体香料を直接添加する方法)と比較して、独特の香りを楽しむことができる。
【0023】
本発明においては、着香対象物として、通常の液体香料に使用されている溶媒(液体)を選択することができる。言い換えれば、本発明は、着香液体の製造に適用することもできる。本発明によって製造した着香液体は、原料となる液体に、香気成分をキャリアガスに添加した状態で導入しているので、使用している香気成分や原料となる液体が同一であったとしても、従来の方法(例えば、液体香料を直接添加する方法)で製造した液体香料とは異なる。例えば、従来の製造方法で製造した液体香料では、トップ香成分が抜けやすいのに対して、本発明で製造した着香液体では、香気成分のうち、トップ香成分が抜けにくい。
すなわち、本発明によれば、従来の液体香料とは異なる、新たな着香液体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明において、香気成分を含むキャリアガスを着香対象物に導入する方法の一例(ガス貯蔵容器にキャリアガスと共に香気成分を添加する方法)を示す模式図である。
図2】本発明において、香気成分を含むキャリアガスを着香対象物に導入する方法の一例(キャリアガスを香気成分が担持された香気成分担持体に通過させる方法)を示す模式図である。
図3】本発明において、香気成分を含むキャリアガスを着香対象物に導入する方法の一例(キャリアガスを香気成分が充填された香気成分容器に通過させる方法)を示す模式図である。
図4】本発明において、香気成分を含むキャリアガスを着香対象物に導入する方法の一例(キャリアガスを香気成分が充填された香気成分容器に通過させる方法;キャリアガスの供給路が分岐を有する場合)を示す模式図である。
図5】本発明において、香気成分を含むキャリアガスを着香対象物に導入する方法の一例(ガス供給管、液体供給管及びノズルを有する気液混合機構を通じて供給する方法)を示す模式図である。
図6】本発明の方法における気液混合機構の一例を示す模式図である。
図7】本発明の方法における気液混合機構の一例を示す模式図である。
図8】本発明の方法における気液混合機構の一例を示す模式図である。
図9】本発明の方法における気液混合機構において、細孔を有するガス供給管の一例を示す模式図である。
図10】本発明の方法における気液混合機構の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、任意に変形して実施することができる。
【0026】
本発明は、香気成分を含むキャリアガスを、着香対象物に導入することによって、該着香対象物に着香する工程を含むことを特徴とする着香物の製造方法(着香方法)である。
【0027】
「着香対象物」とは、本発明の方法によって、着香する(香り付けする)対象となる物のことをいい、「着香物」とは、「着香対象物」を本発明の方法によって着香した後の物をいう。
【0028】
本明細書において、「着香」とは、元々香りのない対象物(食品又は食品原料)に香りを付与することのみならず、香りの弱くなった対象物の香りを強化したり(補香)、香りが既についている対象物の香りを別の香りに変化させたりする場合も含まれる。
【0029】
「バブリングにより導入する」とは、着香対象物(食品又は食品原料)に直接、香気成分を含んだキャリアガスを吹き付けることを意味する。例えば、特許文献2のように、包装体の上部空間にガスを導入するのは、「バブリングにより導入する」とは言わない。
【0030】
着香対象物としては、具体的には、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、ソフトクリーム、シャーベット、ジェラート、フローズンヨーグルト、ムース、プリン、マシュマロ、スナック、キャンディ、グミ、チョコレート、パン、乾麺、パスタ、プレミックスパウダー、飲料、バター、マーガリン、乳製品、乳性飲料、畜産加工品、調味料等の食品;化粧品、石鹸、洗剤、芳香剤、浴剤等の日用品;LNG(液化天然ガス)、LPG(液化石油ガス)、水素ガス、エチレンガス等の液化ガス;繊維類;紙類;医薬品類;樹脂類;防錆剤;抗菌・除菌剤;有害生物駆除・忌避剤;オフィスや映画館等の空間・空調システム;等が例示できる。
【0031】
これらの物は、様々な香料が添加され着香されていることが通常であるところ、本発明の方法によってこれらの物を着香することで、従来の方法で着香した場合とは異なる香りを付けることができる。
【0032】
また、これらの物は、製造の際に、ガスを導入する工程が含まれる場合がある(例えば、アイスクリームの製造においては、ガスを導入させながら原料を撹拌しながら凍結させる「フリージング工程」が含まれる)。
かかる工程において使用するガスに香気成分を添加することによって、従来方法における市販の香料等を別途添加する工程が不要になるのみならず、市販の香料等を別途添加した場合と異なる香りを持つ着香物を製造することができる。
【0033】
従来使用されている、オフィスや映画館等の室内に香りを供給する空間・空調システムは、担持体に香気成分を担持させたり、香気成分を含んだ液体を滴下し蒸散・拡散させたりしている。このため、香りの質が一定しない(特に、経時により香りが減衰する)という課題がある。
本発明では、キャリアガスに香気成分を添加するので、香りの質を一定に保ちやすく、また、担持体を使用した方法や滴下式の方法と異なり部品の劣化の問題が無く、カートリッジ式にて対応することができる。
特に、レモン等のシトラス系の香気成分や、エステル系の香気成分は、香りが揮散しやすく変質しやすいため、従来の空間・空調システムには適用が困難であるところ、本発明によれば、これらの香気成分を安定して供給することができる。
【0034】
本発明における着香物は、着香液体であってもよい。すなわち、本発明における着香対象物は、液体であってもよい。本発明の方法によって製造した着香液体は、他の対象物を着香するための香料として使用することができる。
すなわち、本発明は、本明細書に記載の着香物の製造方法により製造した着香液体を原料として香料を製造することを特徴とする香料の製造方法にも関する。
【0035】
本発明における着香物が着香液体である場合、着香対象物である液体の具体例としては、水、有機溶剤等が挙げられる。
有機溶剤としては、エチルアルコール、プロピレングリコール、グリセリン、イソプロパノール等のアルコール系溶剤;ヘキサン、ヘプタン、パラフィン等の炭化水素系溶剤;エーテル系溶剤;トリアセチン(グリセリン脂肪酸エステル)、油脂類等のエステル系溶剤;石油系溶剤;リモネン、テルペン等の天然系溶剤;高沸点溶剤(概ね沸点150℃以上の溶剤);等が挙げられる。
また、上記の溶剤のうち、任意の2種類以上の混合溶剤も、着香対象物である液体として使用できる。
【0036】
本発明の着香物の製造方法により着香した着香液体は、そのまま香料(液体香料)として使用してもよいし、着香液体を希釈・濃縮して液体香料として使用してもよい。また、着香液体に、更に香気成分を添加したものを液体香料として使用してもよい。
【0037】
本発明の香料の製造方法により製造した液体香料は、使用している香気成分や原料となる液体が同一であったとしても、従来の方法(例えば、香気成分を直接添加する方法)で製造した液体香料とは異なる特徴を持つ(例えば、トップ香成分が抜けにくい)。
【0038】
本発明の香料の製造方法により製造される香料は、粉末香料であってもよい。
粉末香料は、通常、液体香料を粉末基材と混合したり、噴霧乾燥させたり、吸着させたりすることにより製造される。本発明の着香物の製造方法により着香した着香液体を、粉末香料を製造するための原料として使用することができる。
本発明の方法で着香した着香液体を原料として使用することで、従来の液体香料を原料とした粉末香料とは、異なる特徴を持つ粉末香料を製造することができる。
【0039】
本発明における着香物が着香液体である場合、着香対象物である液体は、香気成分を既に含んでいる液体であってもよい。この場合、製造される着香液体が、着香対象物とは香調の異なるものとなる。換言すれば、本発明の着香対象物として、市販の液体香料等の、元々香気成分を含んだ(香りの付与された)液体を適用し、該着香対象物(元々香りの付与された液体)の香りを変化させたり、力価を強化させたりすることができる。
例えば、市販の液体香料を着香対象物として適用し、本発明の方法により、トップ香成分をキャリアガスに添加した状態で導入することで、トップ香成分が抜けにくい着香液体に変化させることができる。
【0040】
また、後述の実施例(試験例B)で示すように、着香対象物と、香気成分の供給源(図3又は図4における香気成分容器12に充填する溶液)として、同一の液体香料を適用することができる。
この場合、着香物の製造方法により着香した着香液体は、香気成分の供給源とした液体香料と、同一の香気成分が使用されているものの、例えば、トップ香成分が強く感じられる等、元の液体香料と異なる特徴を持つ。
【0041】
本発明の香料の製造方法により製造される香料(液体香料や粉末香料)は、食品製造用、日用品製造用等の用途に使用することができる。本発明の方法により製造した香料は、例えば、トップ香成分を多く含む等、従来の香料とは異なることから、独特の香りを食品や日用品等に付与することができる。
【0042】
本発明の方法により製造した液体香料を使用して、食品や日用品(の原料)を着香する際には、直接原料に該液体香料を添加してもよいし、本発明の着香物の製造方法を使用して食品や日用品(の原料)を着香してもよい。
【0043】
本発明における香気成分について、特に限定はなく、公知の香料において使用されている成分を使用目的に応じて適宜使用することができる。
【0044】
具体的な香気成分としては、イソチオシアネート類、チオエーテル類、チオール類等の硫黄化合物;脂肪族高級炭化水素類、テルペン系炭化水素類等の炭化水素類;脂肪族高級アルコール類、芳香族アルコール類等のアルコール類;脂肪族高級アルデヒド類、芳香族アルデヒド類等のアルデヒド類;フェノールエーテル類等のエーテル類;エーテル類;エステル類;ケトン類;脂肪酸類;フェノール類;インドール及びその誘導体;フルフラール及びその誘導体;ラクトン類;等が例示できる。
【0045】
また、アイスランドモス、アカヤジオウ、アケビ、アサ、アサフェチダ、アジアンタム、アジョワン、アズキ、アスパラサスリネアリス、アップルミント、アーティチョーク、アニス、アボカド、アマチャ、アマチャズル、アミガサユリ、アミリス、アーモンド、アリタソウ、アルカンナ、アルテミシア、アルニカ、アルファルファ、アロエ、アンゴスツラ、アンゴラウィード、アンズ、アンズタケ、アンゼリカ、アンバー、アンバーグリス、アンブレット、イカ、イカリソウ、イグサ、イースト、イタドリ、イチゴ、イチジク、イチョウ、イノコヅチ、イランイラン、イワオウギ、インペラトリア、インモルテル、ウィンターグリーン、ウォータークレス、ウコギ、ウコン、ウスバサイシン、ウッドラフ、ウニ、ウメ、ウーロンチャ、エゴマ、エノキダケ、エビ、エビスグサ、エリゲロン、エルダー、エレウテロコック、エレカンペン、エレミ、エンゴサク、エンジュ、エンダイブ、欧州アザミ、オウレン、オオバコ、オカゼリ、オキアミ、オーク、オークモス、オケラ、オスマンサス、オポポナックス、オミナエシ、オモダカ、オランダセンニチ、オリガナム、オリス、オリバナム、オリーブ、オールスパイス、オレンジ、オレンジフラワー、カイ、海藻、カイニンソウ、カカオ、カキ、カサイ、カシューナッツ、カスカラ、カスカリラ、カストリウム、カタクリ、カツオブシ、カッシー、カッシャフィスチュラ、カテキュ、カニ、カーネーション、カノコソウ、カモミル、カヤプテ、カラシ、カラスウリ、カラスビシャク、ガラナ、カラムス、ガランガ、カーラント、カリッサ、カリン、カルダモン、ガルバナム、カレー、カワミドリ、カンゾウ、ガンビア、カンラン、キウィーフルーツ、キカイガラタケ、キキョウ、キク、キクラゲ、キササゲ、ギシギシ、キダチアロエ、キナ、キハダ、キバナオウギ、ギボウシ、ギムネマシルベスタ、キャットニップ、キャラウェー、キャロップ、キュウリ、キラヤ、キンミズヒキ、グァバ、グァヤク、クコ、クサスギカズラ、クサボケ、クズ、クスノキ、クスノハガシワ、グーズベリー、クチナシ、クベバ、クマコケモモ、グミ、クミン、グラウンドアイビー、クララ、クラリセージ、クランベリー、クリ、クルミ、クリーム、グレインオブパラダイス、クレタディタニー、グレープフルーツ、クローバー、クローブ、クロモジ、クワ、クワッシャ、ケイパー、ゲットウ、ケード、ケブラコ、ゲルマンダー、ケンチュール、ケンポナシ、ゲンノショウコ、コウジ、コウダケ、コウチャ、コウホネ、コカ、コガネバナ、コクトウ、コクルイ、ココナッツ、ゴシュユ、コショウ、コスタス、コストマリー、コパイパ、コーヒー、コブシ、ゴボウ、ゴマ、コーラ、コリアンダー、コルツフート、ゴールデンロッド、コロンボ、コンサイ、コンズランゴ、コンフリー、サイプレス、魚、サクラ、サクランボ、ザクロ、サケカス、ササ、ササクサ、サーチ、サッサフラス、サフラン、サポジラ、サボテン、サラシナショウマ、サルサパリラ、サルシファイ、サルノコシカケ、サンザシ、サンシュユ、サンショウ、サンタハーブ、サンダラック、サンダルウッド、サンダルレッド、シイタケ、ジェネ、シソ、シダー、シトラス、シトロネラ、シヌス、シベット、シマルーバ、シメジ、シャクヤク、ジャスミン、ジャノヒゲ、ジャボランジ、シャロット、シュクシャ、ジュニパーベリー、ショウガ、ショウユ、ショウユカス、ジョウリュウシュ、ショウロ、シロタモギタケ、ジンセン、シンナモン、酢、スイカ、スイセン、スギ、スターアニス、スターフルーツ、スチラックス、スッポン、スッポンタケ、ズドラベッツ、スネークルート、スパイクナード、スプルース、スペアミント、スベリヒユ、スローベリー、セイボリー、セキショウ、セージ、ゼドアリー、セネガ、ゼラニウム、セロリー、センキュウ、センタウリア、センゲン、セントジョーンズウォルト、センナ、ソース、ダイオウ、ダイズ、タイム、タケノコ、タコ、タデ、ダバナ、タマゴ、タマゴタケ、タマネギ、タマリンド、ダミアナ、タモギタケ、タラゴン、タラノキ、タンジー、タンジェリン、タンポポ、チェリモラ、チェリーローレル、チェリーワイルド、チガヤ、チコリ、チーズ、チチタケ、チャイブ、チャービル、チャンパカ、チュベローズ、チョウセンゴミシ、チラータ、ツクシ、ツケモノ、ツタ、ツバキ、ツユクサ、ツリガネニンジン、ツルドクダミ、ディアタング、ティスル、ディタニー、ディル、デーツ、テンダイウヤク、テンマ、トウガラシ、トウキ、ドウショクブツタンパクシツ、ドウショクブツユ、トウミツ、トウモロコシ、ドクダミ、トチュウ、ドッググラス、トマト、ドラゴンブラッド、ドリアン、トリュフ、トルーバルサム、トンカ、ナギナタコウジュ、ナシ、ナスターシャム、ナッツ、ナットウ、ナツメ、ナツメグ、ナデシコ、ナメコ、ナラタケ、ニアウリ、ニュウサンキンバイヨウエキ、ニンジン、ニンニク、ネズミモチ、ネットル、ネムノキ、ノットグラス、バイオレット、パイナップル、ハイビスカス、麦芽、ハコベ、バジル、ハス、ハスカップ、パースカップ、パセリ、バター、バターオイル、バターミルク、バーチ、ハチミツ、パチュリー、ハッカ、バックビーン、ハッコウシュ、ハッコウニュウ、ハッコウミエキ、パッションフルーツ、ハツタケ、バッファローベリー、ハトムギ、ハナスゲ、バナナ、バニラ、ハネーサックル、パパイヤ、バーベリー、ハマゴウ、ハマスゲ、ハマナス、ハマボウフウ、ハマメリス、バラ、パルマローザ、バンレイシ、ヒキオコシ、ヒシ、ピスタチオ、ヒソップ、ヒッコリー、ピーナッツ、ヒノキ、ヒバ、ピプシシワ、ヒメハギ、ヒヤシンス、ヒラタケ、ビワ、ビンロウ、フェイジョア、フェネグリーク、フェンネル、フジバカマ、フジモドキ、フスマ、フーゼルユ、プチグレイン、ブチュ、ブドウ、ブドウサケカス、フトモモ、ブナ、ブナハリタケ、ブラックキャラウェイ、ブラックベリー、プラム、ブリオニア、プリックリーアッシュ、プリムローズ、プルネラ、ブルーベリー、ブレッドフルーツ、ヘイ、ベイ、ヘーゼルナッツ、ベチバー、ベーテル、ベニバナ、ペニーロイヤル、ペパーミント、ヘビ、ペピーノ、ペプトン、ベルガモット、ベルガモットミント、ペルーバルサム、ベルベナ、ベロニカ、ベンゾイン、ボアドローズ、ホアハウンド、ホウ、ホウキタケ、ホウショウ、ボウフウ、ホエイ、ホオノキ、ホースミント、ホースラディッシュ、ボタン、ホップ、ポピー、ポプラ、ポポー、ホホバ、ホヤ、ボルドー、ボロニア、マイタケ、マグウォルト、マシュマロー、マジョラム、マスティック、マソイ、マタタビ、マチコ、マツ、マツオウジ、マッシュルーム、マツタケ、マツブサ、マツホド、マテチャ、マメ、マリーゴールド、マルバダイオウ、マルメロ、マレイン、マロー、マンゴー、マンゴスチン、ミカン、ミシマサイコ、ミソ、ミツマタ、ミツロウ、ミート、ミモザ、ミョウガ、ミルク、ミルテ、ミルフォイル、ミルラ、ミロバラン、ムギチャ、ムスク、ムラサキ、メスキート、メドウスィート、メハジキ、メープル、メリッサ、メリロット、メロン、モウセンゴケ、モニリアバイヨウエキ、モミノキ、モモ、モロヘイヤ、ヤクチ、ヤマモモ、ユーカリ、ユキノシタ、ユズ、ユッカ、ユリ、ヨウサイ、ヨロイグサ、ライオンズフート、ライチ、ライフエバーラスティングフラワー、ライム、ライラック、ラカンカ、ラカンショウ、ラズベリー、ラタニア、ラディッシュ、ラブダナム、ラベンダー、ラングウォルト、ラングモス、ランブータン、リキュール、リーク、リツェア、リナロエ、リュウガン、リョウフンソウ、リョクチャ、リンゴ、リンデン、リンドウ、ルー、ルリジサ、レセダ、レモン、レモングラス、レンギョウ、レンゲ、レンブ、ローズマリー、ロベージ、ローレル、ロンゴザ、ワサビ、ワタフジウツギ、ワームウッド、ワームシード、ワラビ、ワレモコウ等の天然素材から得られる香気成分も、本発明における香気成分として使用することができる。
【0046】
本発明において、香気成分を添加するキャリアガスの種類について、特に限定はなく、窒素(N)、炭酸ガス(CO)、空気、酸素(O)、アルゴン(Ar)、水素(H)、ヘリウム(He)、エチレン(C)、アセチレン(C)、冷媒ガス、LNG(液化天然ガス)、LPG(液化石油ガス)、DME(ジメチルエーテル、CHOCH)等が挙げられる。また、これらのガスを2種類以上混合してキャリアガスとして使用してもよい。
【0047】
上記したキャリアガスは、着香対象物の使用目的等に応じて、適宜選択することができる。例えば、着香対象物が、酸化によって劣化する食品の場合、窒素、アルゴン、ヘリウム等を使用するのが好ましい。一方、着香対象物の種類によっては、あえて酸化を起こさせることが有用なケースもあり、そのような場合、空気等、酸素を含有するキャリアガスを使用してもよい。
【0048】
本発明の方法で供給された香気成分は、キャリアガスによって着香対象物に導入される。香気成分を含んだキャリアガスを着香対象物に導入する際には、着香対象物を冷却した状態で行ってもよいし、加熱した状態で行ってもよいし、冷却も加熱もせずに行ってもよい。また、減圧した状態で行ってもよいし、加圧した状態で行ってもよいし、減圧も加圧もせずに行ってもよい。
【0049】
本発明において、香気成分を含むキャリアガスを作製する方法(キャリアガスへの香気成分の添加方法)は、特に限定はないが、以下に示す(1)~(4)の方法が例示できる。
【0050】
<(1)ガス貯蔵容器にキャリアガスと共に香気成分を添加する方法>
図1に模式図を示す。この方法では、ガス貯蔵容器10の中に、キャリアガスとともに、香気成分2を充填しておき、ガス貯蔵容器に接続された配管(キャリアガス供給路13)を通じて、香気成分を含んだキャリアガスGを、着香対象物1にバブリングにより導入する。
着香対象物1の種類によっては(例えば、アイスクリームの場合)、着香対象物1に気泡3が発生するとともに、キャリアガス中の香気成分が、着香対象物1に固定される。
【0051】
ガス貯蔵容器10としては、市販の高圧ガスボンベ等を適宜使用することができる。通常は、溶媒に溶解させた香気成分を、ガス貯蔵容器10の中に充填する(ただし、ガス貯蔵容器10の中に、香気成分を溶媒に溶解させないで充填する場合が、本発明の範囲外となるわけではない)。
香気成分には、一般に、蒸気圧が低いものが多いため、十分な量を供給できるようにするために、溶媒に溶解させてガス貯蔵容器10の中に充填するのが望ましい。
【0052】
香気成分を溶解させる溶媒としては、水、エチルアルコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリアセチン(グリセリン脂肪酸エステル)、イソプロパノール、ヘキサン、アセトン、油脂類等が例示できる。
これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0053】
ガス貯蔵容器10内の圧力は、大気圧以上であることが好ましく、0.3MPa以上であることが特に好ましい。また、30MPa以下であることが好ましく、15MPa以下であることが特に好ましい。
【0054】
ガス貯蔵容器10を開放すると、香気成分を含んだキャリアガスGが流出する。香気成分を含んだキャリアガスGの圧力や流量は、圧力調整器(図示せず)や流量計(図示せず)等を使用して適宜調節することができる。
香気成分を含んだキャリアガスGが通過するキャリアガス供給路13は、香気成分の吸着を防止するために、適宜加熱してもよい。
【0055】
着香対象物1に導入される際の香気成分を含んだキャリアガスGの圧力は、0.01MPa以上8MPa以下にすることが好ましく、0.05MPa以上5MPa以下にすることが特に好ましい。
上記範囲内であると、気泡を発生させる必要がある着香対象物の場合に、気泡が十分に形成されやすい。
【0056】
香気成分を、着香対象物1に導入する際には、0.1μg/(kg・s)以上となるようにするのが好ましく、1μg/(kg・s)以上となるようにするのが特に好ましい。また、100g/(kg・s)以下となるようにするのが好ましく、10g/(kg・s)以下となるようにするのが特に好ましい(なお、「g/(kg・s)」とは、着香対象物1kg当たりに、1秒(1s)間に導入される香気成分の量(g)である)。
上記下限以上であると、十分な量の香気成分を着香対象物1に供給しやすい。また、上記上限以下であると、コスト的に有利である。
【0057】
<(2)キャリアガスを香気成分が担持された香気成分担持体に通過させる方法>
図2に模式図を示す。この方法では、ガス貯蔵容器10の中には、キャリアガスのみが充填されており、ガス貯蔵容器10から流出するキャリアガスは、香気成分を含まないキャリアガスGである。
【0058】
香気成分を含まないキャリアガスGは、キャリアガス供給路13の途中に設けられた香気成分担持体11を通過する際に、香気成分担持体11から香気成分を供給され、香気成分を含んだキャリアガスGとなって、着香対象物1にバブリングにより導入される。
【0059】
香気成分担持体11について、香気成分を十分に担持できるものであれば特に限定はないが、多数の細孔を有する多孔質材料、繊維材料からなるシート、樹脂類や保留剤を用いた徐放コントロール可能な担持体、樹脂類や保留剤の単体又は混合物、等が例示できる。
【0060】
香気成分担持体11は、例えば、密閉可能な容器内に設置されている。また、容器の内壁が香気成分担持体11になっていてもよい。かかる容器は、キャリアガス供給路13の途中に設けられている。容器は、開閉可能となっており(図示せず)、香気成分を担持した香気成分担持体11を適宜交換できるようになっていてもよい。
容器は、加熱機構を有しており、加熱温度を変更することによって、香気成分の揮散速度を調整することができるようになっているのが望ましい。
【0061】
香気成分を含まないガス貯蔵容器10内の圧力の好ましい範囲は、前記(1)の方法の場合と同様である。
【0062】
ガス貯蔵容器10から流出する香気成分を含まないキャリアガスGの圧力や流量は、圧力調整器(図示せず)や流量計(図示せず)等を使用して適宜調節することができる。また、香気成分担持体11を通過し、香気成分を含んだキャリアガスGについても、同様に、圧力や流量を適宜調節することができる。
キャリアガス供給路13は、香気成分の吸着を防止するために、適宜加熱してもよい。
【0063】
着香対象物1に導入される際の香気成分を含んだキャリアガスGの圧力や、着香対象物1に導入する際の香気成分の導入速度の好ましい範囲は、前記(1)の方法の場合と同様である。
【0064】
<(3)キャリアガスを香気成分が充填された香気成分容器に通過させる方法>
図3及び図4に模式図を示す。前記(2)の方法と同様に、この方法では、ガス貯蔵容器10の中には、キャリアガスのみが充填されており、ガス貯蔵容器10から流出するキャリアガスは、香気成分を含まないキャリアガスGである。
【0065】
ガス貯蔵容器10から流出する香気成分を含まないキャリアガスGは、キャリアガス供給路13の途中に設けられた香気成分容器12を通過する際に、香気成分を供給され、香気成分を含んだキャリアガスGとなって、着香対象物1にバブリングにより導入される。
【0066】
香気成分容器12の中には、香気成分2が充填されている。前記(1)の方法におけるガス貯蔵容器の場合と同様に、香気成分2は、溶媒に溶解した状態で、香気成分容器12に充填されているのが望ましい(ただし、溶媒に溶解していない状態で充填されている場合が、本発明の範囲外となるわけではない)。
【0067】
香気成分容器12内において、香気成分を溶解させる溶媒としては、前記(1)の方法におけるガス貯蔵容器内における溶媒と同様のものが例示できる。
【0068】
香気成分2が溶媒に溶解している場合、香気成分容器12内において、香気成分を含まないキャリアガスGの供給路13(配管)の先端が、溶媒の液面より下方に位置しているのが望ましい。言い換えれば、香気成分容器12内において、香気成分を含まないキャリアガスGを、溶媒に吹き込んで導入する(バブリングする)ことができるようになっているのが望ましい。
このようになっていると、香気成分容器12から流出するキャリアガスに、十分な量の香気成分が含まれるようにしやすい。
【0069】
キャリアガス13の流路は、図3のように、一本道となっていてもよいが、図4のように、途中で、香気成分容器12を経由しない主流路13aと、香気成分容器12を経由するバイパス流路13bとに分岐していてもよい。図4のようにすることで、着香対象物1に供給される香気成分の濃度を調整しやすくなる。
【0070】
香気成分容器12は、開閉部12aを有しており、開閉部12aを閉じることで、キャリアガスの配管はそのままで、香気成分容器12のみを取り外すことができるようになっているのが望ましい。
このようになっていると、複数の香気成分容器を用意し、香気成分容器12を交換することにより、着香の対象となる香気成分を、容易に変更することが可能となり、種々の香りを持つ着香食品を製造する場合の生産性が向上する。
また、香気成分容器12は、加熱機構(図示せず)を有しており、加熱温度を変更することによって、香気成分の揮散速度を調整することができるようになっていてもよい。
【0071】
香気成分を含まないガス貯蔵容器10内の圧力の好ましい範囲は、前記(1)の方法の場合と同様である。
【0072】
ガス貯蔵容器10から流出する香気成分を含まないキャリアガスGの圧力や流量は、圧力調整器(図示せず)や流量計(図示せず)等を使用して適宜調節することができる。また、香気成分容器12を通過し、香気成分を含んだキャリアガスGについても、同様に、圧力や流量を適宜調節することができる。
キャリアガス供給路13は、香気成分の吸着を防止するために、適宜加熱してもよい。
【0073】
着香対象物1に導入される際の香気成分を含んだキャリアガスGの圧力や、着香対象物1に導入する際の香気成分の導入速度の好ましい範囲は、前記(1)の方法の場合と同様である。
【0074】
<(4)ノズルを活用した気液混合機構を通じて香気成分を含んだキャリアガスを生成させる方法>
図5に模式図を示す。この方法では、香気成分を含むキャリアガスGが、ノズルを活用した気液混合機構20を通じて供給される。気液混合機構20は、キャリアガスを供給するガス供給管40、香気成分を含んだ液体を供給する液体供給管50、及び、該キャリアガスと該液体を混合された状態で噴出するノズルを有している(ノズルは、図5においては図示していない)。
【0075】
ガス供給管40は、キャリアガスの供給源に接続されており、気液混合機構20にキャリアガスを供給する。キャリアガスの供給源について、特に限定は無く、前記(2)の方法の場合と同様に、市販の高圧ガスボンベ等のガス貯蔵容器10を使用することができる。
【0076】
液体供給管50は、香気成分2を含んだ液体の供給源に接続されており、気液混合機構20に該液体を供給する。香気成分2を含んだ液体の供給源について、特に限定は無く、例えば、通常の液体保存用タンク等を使用することができる。香気成分2を含んだ液体は、該供給源において、加圧された状態となっていてもよい。
香気成分2を含んだ液体は、香気成分2を溶媒に溶解した溶液であってもよいし、液体である香気成分2自体であってもよい。
なお、以下、「香気成分2を含んだ液体」を、単に「液体」という場合がある。
【0077】
気液混合機構20において、香気成分を含まないキャリアガスと、香気成分を含んだ液体とが混合され、気液混合機構20のノズルにおいて、香気成分を含んだキャリアガスGが生成する。
【0078】
香気成分を含まないガス貯蔵容器10内の圧力の好ましい範囲は、前記(1)の方法の場合と同様である。
【0079】
ガス貯蔵容器10から流出する香気成分を含まないキャリアガスGの圧力や流量は、圧力調整器(図示せず)や流量計(図示せず)等を使用して適宜調節することができる。また、香気成分容器12を通過し、香気成分を含んだキャリアガスGについても、同様に、圧力や流量を適宜調節することができる。
キャリアガス供給路13は、香気成分の吸着を防止するために、適宜加熱してもよい。
【0080】
着香対象物1にバブリングにより導入される際の香気成分を含んだキャリアガスGの圧力や、着香対象物1に導入する際の香気成分の導入速度の好ましい範囲は、前記(1)の方法の場合と同様である。
【0081】
気液混合機構20については、種々の機構があり得る。例えば、下記(4-1)~(4-4)で述べるような機構が例示できる。
【0082】
[(4-1)ノズルの内部でキャリアガスと液体を混合する気液混合機構を使用した方法]
図6に模式図を示す。この方法では、気液混合機構20のノズル30の内部31において、ガス供給管40から供給されたキャリアガスGと、液体供給管50から供給された液体を混合する。混合により生成した香気成分を含んだキャリアガスGは、ノズル30の出口から吐出され、キャリアガス供給路13を通じて、着香対象物1に、バブリングにより導入される。
【0083】
[(4-2)ガス供給管に設けられたバイパス菅を通じて、液体供給管にキャリアガスを供給することのできる気液混合機構を使用した方法]
図7に模式図を示す。この方法は、ガス供給管40が、途中で分岐している点以外は、前記(4-1)の方法と同様である。
【0084】
ガス供給管40は、バイパス管42を有し、バイパス管の出口42aは、液体供給管50に接続されており、出口42aから、キャリアガスGが液体供給管50の内部に流入するようになっている。
すなわち、キャリアガスGのうちの一部は、液体供給管50の内部に供給され、キャリアガスGの残部は、主流路管41を通過してノズル30の内部31に供給される。
【0085】
ノズル30の内部31において、主流路管41から供給されたキャリアガスGと、液体供給管50から供給された液体及びキャリアガスGは混合され、混合により生成した香気成分を含んだキャリアガスGは、ノズル30の出口から吐出される。
【0086】
[(4-3)ガス供給管の細孔から液体を流入させるようになっている気液混合機構を使用した方法]
図8及び図9に模式図を示す。この方法では、細孔43を有するガス供給管40が、ノズル30に接続されている(なお、ガス供給管40における細孔43の配置は、図9に示したものに限定されるものではない)。
【0087】
ノズル30に接続されたガス供給管40は、液体供給管50に包囲されている。ガス供給管40の側面に設けられた細孔43から、ガス供給管40の内部に流入するようになっている。
【0088】
キャリアガスG、及び、ガス供給管40の細孔43からガス供給管に流入した液体は、ノズル30の内部31に送られ、ノズル30の出口から香気成分を含んだキャリアガスGが吐出される。
【0089】
[(4-4)液体供給管にガス供給管からキャリアガスを供給する気液混合機構を使用した方法]
図10に模式図を示す。この方法ではノズル30に接続された液体供給管50に、ガス供給管40からキャリアガスGが供給されるようになっている。液体供給管50を通過した液体には、キャリアガスの気泡が含まれており、この状態で液体はノズル30の内部31に送られ、ノズル30の出口から、香気成分を含んだキャリアガスGが吐出される。
【実施例0090】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
【0091】
<試験例A:着香対象物が食品の場合>
実施例1
理研香料工業株式会社製の香料(液体香料)であるバニラフレーバー189051(WS)を三角フラスコに入れ、密閉した後に窒素を充填し、バブリングさせながら、アイスミルクの原液500gに香料を添加し、アイスクリームメーカーを使用してエアレーションを行った(30分間)。香料の添加量は、0.75gであった。完成したアイスミルク(以下、「アイスミルク1」という。)を業務用冷凍庫にて保管した。
【0092】
比較例1
実施例1で使用したのと同様のアイスミルクの原液500gに対し、バニラフレーバー189051(WS)を直接注ぐことにより0.75g添加し、アイスクリームメーカーを使用してエアレーションを行った(30分間)。完成したアイスミルク(以下、「アイスミルク2」という。)を業務用冷凍庫にて保管した。
【0093】
[評価]
実施例1で作製したアイスミルク1と比較例1で作製したアイスミルク2について、被験者10名による官能評価を実施した。
官能評価は、全体的な香り、トップ香、ミドル香、ラスト香のそれぞれについて、アイスミルク2の香りを1とした場合に、アイスミルク1の香りをどの程度の強さで感じるかを試食しながら評価してもらった。
【0094】
10名の評価を平均した結果、アイスミルク1は、アイスミルク2に対して、全体的な香りについては1.8倍、トップ香については1.68倍、ミドル香については1.69倍、ラスト香については1.72倍、という結果となった。
【0095】
また、各被験者から、次のようなコメントを得た。
【0096】
・アイスミルク1については、フレーバーそのものが移っていてリアルな感じがした。
・アイスミルク1については、バニラのいやみを感じるほど強く出ている。
・アイスミルク2よりアイスミルク1のほうがバニラの香りを自然に感じられ美味しい。口に入れた後も持続し食べた満足感がある。
・アイスミルク2のほうがミドルからラストにかけてベターッと重い感じ。ミルククリームぽい。アイスミルク1はトップに軽い広がりがある。アイスミルク1のほうがアッサリ軽い感じ。しつこくなく食べられる。フレーバーの瓶香に近い。
・トップに出ていて、口の中に広がり後味の切れが良い。
・断然アイスミルク1に香り・味が出ている。ラストにカカオっぽさがあった。
・全体的に厚み、ミドル~ラストの印象が劇的に変わった。もう少しナチュラルな感じがあれば尚良い(少し粉っぽさを感じる)。
・アイスミルク2は、トップのバニラ感がアイスミルク1に比べて弱い。鼻でかいだ印象と食べた印象がかなり違う。
・香調が全然違う。アイスミルク1はバニラの甘さ。アイスミルク2はフレッシュな香りが強い。
・アイスミルク1の方が、バニリン的な甘さが強くなった。
・アイスミルク1の方が、バニラのエグみを感じるぐらい強くでていた。
【0097】
官能評価の結果から、同一の香料を同一の量で使用しても、本発明の方法によって着香したアイスミルクと、液体香料を直接注いで着香したアイスミルクとは、香調が全く異なることが示された。
本発明の方法で着香したアイスミルクは、直接香料を添加することで着香したアイスミルクと比べて、よりバニラ味を強く感じられる結果となった。
【0098】
<試験例B:着香対象物が液体香料の場合>
実施例2
前記(B-2)の方法を使用して、市販の液体香料を着香した(香りを変化させた)。
図3において、ガス貯蔵容器10として、窒素ボンベを使用し、香気成分容器12の中には、理研香料工業株式会社製の香料(液体香料)であるイチゴフレーバー(141844(WS))を充填した。着香対象物1は、香気成分容器12の中に充填したものと同一のイチゴフレーバーとした。
【0099】
開閉部12aを開放した状態でキャリアガスGである窒素を香気成分容器12に通過させることにより、香気成分を含むキャリアガスGを生成させ、バブリングにより着香対象物1のイチゴフレーバーを着香した(香りを変化させた)。
【0100】
着香した(香りを変化させた)イチゴフレーバーを、市販の牛乳に0.02%添加し、乳飲料を作製した。この乳飲料を「乳飲料1」という。
【0101】
比較例2
実施例2で使用したのと同じ市販の牛乳に、イチゴフレーバー(141844(WS))を、0.02%添加し、乳飲料を作製した。この乳飲料を「乳飲料2」という。
【0102】
実施例3
実施例2において、使用した市販の香料(香気成分容器12の中に充填した香料、及び、着香対象物とした香料)を理研香料工業株式会社製のミルクフレーバー(153001(OS))に変更して同様の操作を行い、バブリングによりミルクフレーバーを着香した(香りを変化させた)。
【0103】
着香した(香りを変化させた)ミルクフレーバーを、市販のホイップクリームに0.1%添加した。このホイップクリームを「ホイップクリーム1」という。
【0104】
比較例3
実施例3で使用したのと同じホイップクリームに、ミルクフレーバー(153001(OS))を、0.1%添加した。このホイップクリームを「ホイップクリーム2」という。
【0105】
[評価]
実施例2で作製した乳飲料1、比較例2で作製した乳飲料2、実施例3で作製したホイップクリーム1、比較例3で作製したホイップクリーム2について、官能評価を実施したところ、次のようなコメントを得た。
【0106】
(乳飲料について)
・乳飲料1はトップの立ちが良い。
・乳飲料1はエステル臭を感じ、軽いトップノート。
・乳飲料1の方がトップ香が軽やか。乳飲料2は全体的に重い。
・乳飲料1はトップが少し強く感じる。他のものに比べてフレッシュさがある。
・乳飲料1は口に青っぽい感じが残った。
・乳飲料1の方が甘さを強く感じた。
【0107】
(ホイップクリームについて)
・ホイップクリーム1の方が甘い感じが強い。
・ホイップクリーム1はラストに甘さが強く残る。
・ホイップクリーム1はシャープなトップ立ち、濃厚なミルク感があるが、ホイップクリーム2は少し薄い。
・ホイップクリーム2はトップが軽やかで、ホイップクリーム1は香りが重く乳のグリーン感が後半に持続する。
・ホイップクリーム1はコクがある。
・ホイップクリーム2はクリーミーさがやや弱い。
【0108】
本発明の方法により着香した(変化させた)香料を添加した乳飲料1は、通常の香料を同量添加した乳飲料2よりも、フレッシュ感やトップ立ちがよくなったと感じた人が多くみられた。
ホイップクリームにおいても、通常の香料を添加したホイップクリーム2よりも、本発明の方法により着香した(変化させた)香料を添加したホイップクリーム1の方が、ボディ感や濃厚感を付与できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の着香物の製造方法(着香方法)は、同一の香気成分を使用したとしても、従来の着香方法とは異なる香りを着香対象物に与えることができるので、食品や日用品等の製造に適用することができる。また、本発明の着香物の製造方法は、これらの製品を着香するために使用される着香液体の製造にも適用することができる。
【0110】
1 着香対象物
2 香気成分
3 気泡
10 ガス貯蔵容器
11 香気成分担持体
12 香気成分容器
12a 開閉部
13 キャリアガス供給路
13a 主流路
13b バイパス流路
20 気液混合機構
30 ノズル
31 ノズルの内部
40 ガス供給管
41 主流路管
42 バイパス管
42a バイパス管の出口
43 細孔
50 液体供給管
G 香気成分を含んだキャリアガス
香気成分を含まないキャリアガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10