(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035570
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】ヒンジ
(51)【国際特許分類】
E05F 1/06 20060101AFI20220225BHJP
E05D 5/12 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
E05F1/06 B
E05D5/12 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020139999
(22)【出願日】2020-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】000107572
【氏名又は名称】スガツネ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(74)【代理人】
【識別番号】100119297
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 正男
(72)【発明者】
【氏名】内山 太地
(57)【要約】
【課題】扉の閉じ位置又は開き位置を安定して保持することができると共に、耐久性を向上させることができるヒンジを提供する。
【解決手段】下ヒンジ要素6の端面に、第1急斜面23、第1急斜面23に連続する緩斜面24、緩斜面24に連続する第2急斜面25を形成する。上ヒンジ要素7の端面に、第1急斜面33、第1急斜面33に連続する緩斜面34、緩斜面34に連続する第2急斜面35を形成する。初期位置において、上ヒンジ要素7の凸部31が下ヒンジ要素6の凹部21の第1急斜面23に接触すると共に、下ヒンジ要素6の凸部22が上ヒンジ要素の7凹部32の第2急斜面35に接触する(
図12(a))。上ヒンジ要素7が初期位置から回転する際、上ヒンジ要素7の凸部31が下ヒンジ要素6の緩斜面24に接触すると共に、下ヒンジ要素6の凸部22が上ヒンジ要素7の緩斜面34に接触する(
図12(b-1)(b-2))。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下ヒンジ要素と、下ヒンジ要素に対して枢軸を中心に回転可能な上ヒンジ要素と、を備え、前記下ヒンジ要素の端面と前記上ヒンジ要素の端面とが対面するヒンジにおいて、
前記下ヒンジ要素の前記端面には、凹部から凸部にかけて前記凹部の壁面を構成する第1急斜面と、前記第1急斜面に連続し、前記第1急斜面よりも勾配が緩やかな緩斜面と、前記緩斜面に連続し、前記緩斜面よりも勾配が急で前記凸部の壁面を構成する第2急斜面と、が形成され、
前記上ヒンジ要素の前記端面には、凸部から凹部にかけて前記凸部の壁面を構成する第1急斜面と、前記第1急斜面に連続し、前記第1急斜面よりも勾配が緩やかな緩斜面と、前記緩斜面に連続し、前記緩斜面よりも勾配が急で前記凹部の壁面を構成する第2急斜面と、が形成され、
初期位置において、前記上ヒンジ要素の前記凸部が前記下ヒンジ要素の前記凹部の前記第1急斜面に接触すると共に、前記下ヒンジ要素の前記凸部が前記上ヒンジ要素の前記凹部の前記第2急斜面に接触し、
前記上ヒンジ要素が前記初期位置から回転する際、前記上ヒンジ要素の前記凸部が前記下ヒンジ要素の前記緩斜面に接触すると共に、前記下ヒンジ要素の前記凸部が前記上ヒンジ要素の前記緩斜面に接触するヒンジ。
【請求項2】
前記初期位置において、前記上ヒンジ要素の前記凸部の前記第1急斜面が前記下ヒンジ要素の前記凹部の前記第1急斜面に面接触すると共に、前記下ヒンジ要素の前記凸部の前記第2急斜面が前記上ヒンジ要素の前記凹部の前記第2急斜面に面接触することを特徴とする請求項1に記載のヒンジ。
【請求項3】
前記上ヒンジ要素がさらに回転する際、前記上ヒンジ要素の前記凸部の前記第1急斜面が前記下ヒンジ要素の前記凸部の前記第2急斜面に面接触することを特徴とする請求項1又は2に記載のヒンジ。
【請求項4】
前記下ヒンジ要素の前記凹部と前記凸部を180°離れた位置に設け、
前記上ヒンジ要素の前記凸部と前記凹部を180°離れた位置に設けることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のヒンジ。
【請求項5】
前記下ヒンジ要素の前記凹部の両側に一対の前記第1急斜面、一対の前記緩斜面、一対の前記第2急斜面を設け、
前記上ヒンジ要素の前記凸部の両側に一対の前記第1急斜面、一対の前記緩斜面、一対の前記第2急斜面を設けることを特徴とする請求項4に記載のヒンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開いた扉が自動的に閉じ、又は閉じた扉が自動的に開くようにするヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のヒンジとして扉がその自重により自動的に閉じ又は開くようにするグラビティヒンジが知られている(特許文献1参照)。グラビティヒンジは、枠等の扉支持体に取り付けられる下ヒンジ要素と、扉に取り付けられる上ヒンジ要素と、を備える。上ヒンジ要素は下ヒンジ要素に対して枢軸を中心に回転可能であり、上ヒンジ要素の端面と下ヒンジ要素の端面とが対面する。下ヒンジ要素の端面には、勾配が一定の傾斜面が形成される。上ヒンジ要素の端面にも、勾配が一定の傾斜面が形成される。これらの傾斜面は、例えば扉を開く際、上ヒンジ要素が下ヒンジ要素の傾斜面に沿ってせり上がり、逆に扉を閉める際、扉の自重によって上ヒンジ要素が下ヒンジ要素の傾斜面に沿って滑り落ちるように構成される。なお、扉の自重の代わりに、コイルばねのばね力を利用して扉が自動的に閉じ又は開くようにするばね式のヒンジも知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-17940号公報
【特許文献2】特開2004-300693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のヒンジにおいては、下ヒンジ要素と上ヒンジ要素の端面に勾配が一定の傾斜面を形成するので、扉の閉じ位置又は開き位置において、閉じ方向又は開き方向の力を大きくすることができず、扉の閉じ位置又は開き位置を安定して保持することができないという問題がある。
【0005】
この問題を解決するために、下ヒンジ要素と上ヒンジ要素それぞれに緩斜面と急斜面を形成し、扉の閉じ位置又は開き位置において、下ヒンジ要素と上ヒンジ要素の急斜面同士を接触させることが考えられる。
【0006】
しかし、下ヒンジ要素と上ヒンジ要素それぞれに緩斜面と急斜面を形成すると、扉を閉じ位置又は開き位置から回転させる際、上ヒンジ要素と下ヒンジ要素とが1箇所で接触するようになり、ヒンジの耐久性が低下するという問題が発生する。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、扉の閉じ位置又は開き位置を安定して保持することができると共に、耐久性を向上させることができるヒンジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、下ヒンジ要素と、下ヒンジ要素に対して枢軸を中心に回転可能な上ヒンジ要素と、を備え、前記下ヒンジ要素の端面と前記上ヒンジ要素の端面とが対面するヒンジにおいて、前記下ヒンジ要素の前記端面には、凹部から凸部にかけて前記凹部の壁面を構成する第1急斜面と、前記第1急斜面に連続し、前記第1急斜面よりも勾配が緩やかな緩斜面と、前記緩斜面に連続し、前記緩斜面よりも勾配が急で前記凸部の壁面を構成する第2急斜面と、が形成され、前記上ヒンジ要素の前記端面には、凸部から凹部にかけて前記凸部の壁面を構成する第1急斜面と、前記第1急斜面に連続し、前記第1急斜面よりも勾配が緩やかな緩斜面と、前記緩斜面に連続し、前記緩斜面よりも勾配が急で前記凹部の壁面を構成する第2急斜面と、が形成され、初期位置において、前記上ヒンジ要素の前記凸部が前記下ヒンジ要素の前記凹部の前記第1急斜面に接触すると共に、前記下ヒンジ要素の前記凸部が前記上ヒンジ要素の前記凹部の前記第2急斜面に接触し、前記上ヒンジ要素が前記初期位置から回転する際、前記上ヒンジ要素の前記凸部が前記下ヒンジ要素の前記緩斜面に接触すると共に、前記下ヒンジ要素の前記凸部が前記上ヒンジ要素の前記緩斜面に接触するヒンジである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、初期位置において、上ヒンジ要素の凸部が下ヒンジ要素の第1急斜面に接触すると共に、下ヒンジ要素の凸部が上ヒンジ要素の第2急斜面に接触するので、扉の閉じ位置又は開き位置を安定して保持することができる。また、上ヒンジ要素が初期位置から回転する際にも、上ヒンジ要素と下ヒンジ要素とが少なくとも2箇所で接触するので、ヒンジの耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態のヒンジを扉と扉支持体に取り付けた例を示す正面図である。
【
図4】
図3とは異なる方向から見た本実施形態のヒンジの分解斜視図である。
【
図5】本実施形態のヒンジの下取付け板と下ヒンジ要素の斜視図である。
【
図6】本実施形態のヒンジの上取付け板と上ヒンジ要素の斜視図である。
【
図7】本実施形態のヒンジの下ヒンジ要素の斜視図である。
【
図8】
図8(a)は本実施形態のヒンジの下ヒンジ要素の正面図、
図8(b)は側面図である。
【
図9】本実施形態のヒンジの上ヒンジ要素の斜視図である。
【
図10】
図10(a)は本実施形態のヒンジの上ヒンジ要素の正面図、
図10(b)は側面図である。
【
図11】扉の上面図である(
図11(a)は扉の閉じ位置を示し、
図11(b)は扉の90°開き位置を示し、
図11(c)は扉の140°開き位置を示す)。
【
図12】本実施形態のヒンジの上ヒンジ要素及び下ヒンジ要素のカム展開図である(
図12(a)は上ヒンジ要素の初期位置を示し、
図12(b-1)は上ヒンジ要素の凸部が下ヒンジ要素の緩斜面に接触する位置を示し、
図12(b-2)は上ヒンジ要素の90°回転位置を示し、
図12(c)は上ヒンジ要素の140°回転位置を示す)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態のヒンジを詳細に説明する。ただし、本発明のヒンジは種々の形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態のヒンジ1を扉と扉支持体に取り付けた例を示す図である。2は扉、3は枠等の扉支持体である。本実施形態のヒンジ1は、開いた扉2がその自重により自動的に閉じるようにするグラビティヒンジである。ヒンジ1の個数は特に限定されるものではなく、例えば扉2の上下に2つ設けられる。ヒンジ1の用途も、特に限定されるものではなく、例えば浴室の扉、カウンター扉、トイレの扉等に適用することができる。
【0013】
図2は組立てた状態のヒンジ1の斜視図を示す。ヒンジ1は、扉支持体3に取り付けられる下取付け板4と、扉2に取り付けられる上取付け板5と、を備える。下取付け板4は、板状の本体部4aと、本体部4aに一体に形成される筒部4bと、を備える。板状の本体部4aには、扉支持体3に取り付けるためねじの通し穴4a1が形成される。筒部4bは、上端が開口し、下端が閉塞する。
【0014】
上取付け板5は、板状の本体部5aと、本体部5aに一体に形成される筒部5bと、本体部5aに取り付けられる扉固定部材5cと、を備える。板状の本体部5aと扉固定部材5cとの間で図示しない扉2を挟む。筒部5bは、下端が開口し、上端が閉塞する。
【0015】
図3はヒンジ1の分解斜視図を示す。
図4は
図3とは異なる方向から見たヒンジ1の分解斜視図である。ヒンジ1は、下取付け板4、上取付け板5、枢軸8、下ヒンジ要素6、上ヒンジ要素7を組み合わせて構成される。
【0016】
下取付け板4と上取付け板5の筒部4b,5bには、軸方向に延びる穴9,10が形成される。穴9は、開口側穴部9a、奥側穴部9bの2段に形成されていて、開口側穴部9aの内径は奥側穴部9bの内径よりも大きい。穴10も同様に、開口側穴部、奥側穴部の2段に形成されていて、開口側穴部の内径は奥側穴部の内径よりも大きい。
【0017】
下ヒンジ要素6と上ヒンジ要素7には、枢軸8が回転可能に軸方向に移動可能に嵌まる穴11,12(
図5、
図6参照)が形成される。上ヒンジ要素7は、下ヒンジ要素6に対して枢軸8を中心に回転可能であり、軸方向に移動可能である。
【0018】
下ヒンジ要素6は、下取付け板4の筒部4bの穴9に嵌められる(
図5参照)。下ヒンジ要素6は、下取付け板4の筒部4bの開口側穴部9aに嵌まる大径軸部6aと、下取付け板4の筒部4bの奥側穴部9bに嵌まる小径軸部6bと、を備える。下ヒンジ要素6の小径軸部6bには、軸方向に延びる複数の突条6cが形成される。下取付け板4の奥側穴部9bには、突条6cが入りこむ溝条が形成される。これにより、下ヒンジ要素6が下取付け板4に回転不可能に固定される。なお、下ヒンジ要素6と下取付け板4を一体に形成してもよい。
【0019】
上ヒンジ要素7は、上取付け板5の筒部5bの穴10に嵌められる(
図6参照)。上ヒンジ要素7は、上取付け板5の筒部5bの開口側穴部に嵌まる大径軸部7aと、上取付け板5の筒部5bの奥側穴部に嵌まる小径軸部7bと、を備える。上ヒンジ要素7の小径軸部7bには、軸方向に延びる複数の突条7cが形成される。上取付け板5の奥側穴部には、突条7cが入りこむ溝条が形成される。これにより、上ヒンジ要素7が上取付け板5に回転不可能に固定される。なお、上ヒンジ要素7と上取付け板5を一体に形成してもよい。
【0020】
図7は下ヒンジ要素6の斜視図を示す。
図8(a)は下ヒンジ要素6の正面図、
図8(b)は側面図を示す。
図7に示すように、下ヒンジ要素6の端面には、180°離れた位置に凹部21と凸部22が設けられる。下ヒンジ要素6の端面には、凹部21から凸部22にかけて凹部21の壁面を構成する第1急斜面23と、第1急斜面23に連続する緩斜面24と、緩斜面24に連続し、凸部22の壁面を構成する第2急斜面25と、が形成される。緩斜面24は、第1急斜面23よりも勾配が緩やかである。第2急斜面25は、緩斜面24よりも勾配が急である。第2急斜面25は、第1急斜面23と同一の勾配である。26はグリース溜まりである。
【0021】
第1急斜面23、緩斜面24、第2急斜面25は、凹部21の両側に形成される。
図8(a)の正面視において、第1急斜面23、緩斜面24、第2急斜面25は左右対称に形成される。凹部21には、第1急斜面23の間に水平な底面21aが設けられる。水平な底面21aを設けることで、凹部21の底面21aにおける大径軸部6aの厚さを確保することができる。
【0022】
第1急斜面23、緩斜面24、第2急斜面25は、螺旋状の傾斜面に形成される。螺旋状の傾斜面とは、枢軸8を中心とした円周方向の移動量と軸方向の移動量が比例する傾斜面であり、
図12に示す下ヒンジ要素6の展開図において、勾配が直線状の傾斜面である。また、傾斜面の円周方向の任意位置における半径方向線が枢軸8の中心と直交する傾斜面である。
【0023】
図9は上ヒンジ要素7の斜視図を示す。
図10(a)は上ヒンジ要素7の正面図、
図10(b)は側面図を示す。上ヒンジ要素7の端面には、180°離れた位置に凸部31と凹部32(
図10(a)参照)とが設けられる。上ヒンジ要素7の端面には、凸部31から凹部32にかけて凸部31の壁面を構成する第1急斜面33と、第1急斜面33に連続する緩斜面34と、緩斜面34に連続し、凹部32の壁面を構成する第2急斜面35と、が形成される。緩斜面34は、第1急斜面33よりも勾配が緩やかである。第2急斜面35は、緩斜面34よりも勾配が急である。第2急斜面35は、第1急斜面33と同一の勾配である。36はグリース溜まりである。
【0024】
第1急斜面33、緩斜面34、第2急斜面35は、螺旋状の傾斜面に形成される。螺旋状の傾斜面とは、上述のとおりである。第1急斜面33、緩斜面34、第2急斜面35は、凸部31の両側に形成される。
図10(a)の正面視において、第1急斜面33、緩斜面34、第2急斜面35は左右対称に形成される。凹部32には、第2急斜面35の間に水平な底面32aが形成される。上ヒンジ要素7の端面は、下ヒンジ要素6の端面と同一形状である。
【0025】
図3に示す扉固定部材5cは、ガラス製の扉2を板状の本体部5aに固定するための部材である。扉固定部材5cは、扉2の正面と裏面にあてがわれる2枚の板状パッキン41,42と、扉2に設けた貫通穴に内嵌すると共に本体部5aのねじ筒部5a1(
図4参照)に外嵌する筒状パッキン43と、本体部5aと扉2を挟んで反対側に配置される挟持片44と、本体部5aのねじ筒部5a1に螺合し、本体部5aと挟持片44との間で扉2を挟むようにするねじ45と、挟持片44に着脱可能に係合し、ねじ45を覆うカバー46と、を備える。なお、扉2はガラス製に限られることはなく、木製又は金属製等でもよい。扉2が木製又は金属製の場合、板状の本体部5aにねじの通し穴を形成し、ねじによって扉2を本体部5aに取り付けるようにしてもよい。
【0026】
図11及び
図12を参照して、本実施形態のヒンジ1の動作を説明する。
図11は扉2の上面図を示す。
図11(a)は扉2の閉じ位置、
図11(b)は扉2の90°開き位置、
図11(c)は扉2の140°開き位置を示す。
図11(a)に示す扉2の閉じ位置は、扉2を図示しないストッパに当接させることで保持される。
【0027】
図12は下ヒンジ要素6と上ヒンジ要素7の展開図を示す。21は下ヒンジ要素6の凹部、22は下ヒンジ要素6の凸部である。31は上ヒンジ要素7の凸部、32は上ヒンジ要素7の凹部である。
【0028】
図12(a)は初期位置、すなわち扉2の閉じ位置を示し、
図11(a)に対応する。
図12(a)に示すように、初期位置において、上ヒンジ要素7の凸部31の第1急斜面33が下ヒンジ要素6の凹部21の第1急斜面23に面接触すると共に、下ヒンジ要素6の凸部22の第2急斜面25が上ヒンジ要素7の凹部32の第2急斜面35に面接触する。第1急斜面23,33同士及び第2急斜面25,35同士を面接触させることで、閉じ位置にある扉2に閉じ方向の大きな力を働かせることができ、扉2の閉じ位置を安定して保持することができる。また、使用者が扉2の収まり具合を調整するため図示しないストッパの初期位置をマイナス方向にずらしても、上ヒンジ要素7の凸部31と下ヒンジ要素6の凸部22が第1急斜面23,33に接するので、扉2の閉じ位置を安定して保持することができる。
【0029】
図12(b-1)に示すように、上ヒンジ要素7を初期位置から開き方向に回転させると、上ヒンジ要素7の凸部31が下ヒンジ要素6の第1急斜面23を乗り越えて、緩斜面24に接触する。これと同時に、下ヒンジ要素6の凸部22が上ヒンジ要素7の緩斜面34に接触する。こうすることで、人が扉2を開く力が小さくて済む。
【0030】
図12(b-2)は上ヒンジ要素7を初期位置から開き方向に90°回転させた状態を示し、扉2が90°開いた
図11(b)に対応する。上ヒンジ要素7を初期位置から開き方向に90°回転させた状態でも、上ヒンジ要素7の凸部31が下ヒンジ要素6の緩斜面24に接触すると共に、下ヒンジ要素6の凸部22が上ヒンジ要素7の緩斜面34に接触する。
【0031】
図12(c)は上ヒンジ要素7を初期位置から開き方向に140°回転させた状態を示し、扉2が140°開いた
図11(c)に対応する。
図11(c)の扉2の140°開き位置は、扉2が図示しないストッパに当接することにより定められる。
【0032】
図12(c)に示すように、上ヒンジ要素7をさらに回転させると、上ヒンジ要素7の凸部31の第1急斜面33が下ヒンジ要素6の凸部22の第2急斜面25に面接触する。第1急斜面33と第2急斜面25を面接触させることで、140°開いた位置にある扉2に閉じ方向の大きな力を働かせることができる。
【0033】
以下に本実施形態のヒンジ1の効果を説明する。
【0034】
初期位置において、上ヒンジ要素7の凸部31が下ヒンジ要素6の凹部21の第1急斜面23に接触すると共に、下ヒンジ要素6の凸部22が上ヒンジ要素7の第2急斜面35に接触するので、扉2の閉じ位置を安定して保持することができる。また、上ヒンジ要素7が初期位置から回転する際にも、上ヒンジ要素7と下ヒンジ要素6とが2箇所で接触するので、ヒンジの耐久性を向上させることができる。
【0035】
初期位置において、上ヒンジ要素7の凸部31の第1急斜面33が下ヒンジ要素6の凹部21の第1急斜面23に面接触すると共に、下ヒンジ要素6の凸部22の第2急斜面25が上ヒンジ要素7の凹部32の第2急斜面35に面接触するので、ヒンジ1の耐久性をより向上させることができる。
【0036】
上ヒンジ要素7がさらに回転する際、上ヒンジ要素7の凸部31の第1急斜面33が下ヒンジ要素6の凸部22の第2急斜面25に面接触するので、開いた位置にある扉2に閉じ方向の大きな力を働かせることができると共に、ヒンジ1の耐久性を向上させることができる。
【0037】
下ヒンジ要素6の凹部21と凸部22を180°離れた位置に設け、上ヒンジ要素7の凸部31と凹部32を180°離れた位置に設けるので、扉2の開き角度を大きくすることができる。
【0038】
下ヒンジ要素6の凹部21の両側に一対の第1急斜面23、一対の緩斜面24、一対の第2急斜面25を設け、上ヒンジ要素7の凸部31の両側に一対の第1急斜面33、一対の緩斜面34、一対の第2急斜面35を設けるので、閉じ位置から時計方向に回転する扉2にも反時計方向に回転する扉2にも本実施形態のヒンジ1を適用することができる。
【0039】
なお、本発明は上記実施形態に具現化されるのに限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で他の実施形態に具現化できる。
【0040】
上記実施形態では、初期位置において、上ヒンジ要素の凸部の第1急斜面と下ヒンジ要素の凹部の第1急斜面とが面接触し、下ヒンジ要素の凸部が上ヒンジ要素の凹部の第2急斜面に面接触しているが、これらが点接触してもよい。
【0041】
上記実施形態では、下ヒンジ要素と上ヒンジ要素の展開図において、下ヒンジ要素と上ヒンジ要素の傾斜面を直線状に形成しているが、曲線状に形成してもよい。また、扉を一時的に停止させるために下ヒンジ要素及び/又は上ヒンジ要素の緩斜面の途中に切欠きを設けてもよい。
【0042】
上記実施形態では、上ヒンジ要素と下ヒンジ要素それぞれの端面に180°離れた位置に1つの凸部と1つの凹部を設けているが、上ヒンジ要素と下ヒンジ要素それぞれの端面に90°離れた位置に凸部と凹部を設け、合計で2つの凸部と2つの凹部を設けてもよい。
【0043】
上記実施形態では、グラビティヒンジの例を説明したが、本発明はばね式のヒンジ(扉の自重の代わりにコイルばねのばね力を利用して扉が自動的に閉じ又は開くようにするヒンジ)にも適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1…ヒンジ
2…扉
3…扉支持体
6…下ヒンジ要素
7…上ヒンジ要素
8…枢軸
21…下ヒンジ要素の凹部
22…下ヒンジ要素の凸部
23…第1急斜面
24…緩斜面
25…第2急斜面
31…上ヒンジ要素の凸部
32…上ヒンジ要素の凹部
33…第1急斜面
34…緩斜面
35…第2急斜面