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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035617
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】湿式集塵装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 47/02 20060101AFI20220225BHJP
【FI】
B01D47/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020140075
(22)【出願日】2020-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】310011114
【氏名又は名称】株式会社アフレアー
(74)【代理人】
【識別番号】100180976
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 一郎
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 明伸
【テーマコード(参考)】
4D032
【Fターム(参考)】
4D032AA21
4D032BB05
4D032BB20
(57)【要約】
【課題】装置構成の小型化および効率的な集塵を行うことができる湿式集塵装置を提供すること。
【解決手段】本発明の一形態は、液体を収容する容器と、容器の上下方向に延在し、容器の外部から内部の途中にかけて設けられる筒部と、容器内部において筒部の外周の外側を囲む領域で上下方向に延在し、筒部の径方向に筒部から離間して設けられ、下部に連通孔が設けられ、上部が開いている下側隔壁部と、容器内部において下側隔壁部の外周の外側を囲む領域で上下方向に延在し、径方向に下側隔壁部から離間して設けられ、上部が閉じ、下部が開いている上側隔壁部と、容器内部における上側隔壁部よりも外側の空間と連通する通気部と、を備え、上側隔壁部と下側隔壁部とは互いの一部が径方向に重なるように配置され、下側隔壁部の上端は筒部の下端よりも高い位置に設けられ、上側隔壁部の下端は筒部の下端よりも高く、下側隔壁部の上端よりも低い位置に設けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する容器と、
前記容器の上下方向に延在し、前記容器の外部から内部の途中にかけて設けられる筒部と、
前記容器の内部において前記筒部の外周の外側を囲む領域で上下方向に延在し、前記筒部の径方向に前記筒部から離間して設けられ、下部に連通孔が設けられ、上部が開いている下側隔壁部と、
前記容器の内部において前記下側隔壁部の外周の外側を囲む領域で前記上下方向に延在し、前記径方向に前記下側隔壁部から離間して設けられ、上部が閉じ、下部が開いている上側隔壁部と、
前記容器の内部における前記上側隔壁部よりも外側の空間と連通する通気部と、
を備え、
前記上側隔壁部と前記下側隔壁部とは互いの一部が前記径方向に重なるように配置され、
前記下側隔壁部の上端は、前記筒部の下端よりも高い位置に設けられ、
前記上側隔壁部の下端は、前記筒部の下端よりも高く、前記下側隔壁部の上端よりも低い位置に設けられる、湿式集塵装置。
【請求項2】
前記筒部、前記上側隔壁部および前記下側隔壁部は互いに同心で配置され、
前記筒部と前記下側隔壁部との隙間の空間を第1空間、前記下側隔壁部と前記上側隔壁部との隙間の空間を第2空間とした場合、左右方向における前記第1空間の断面積と前記第2空間の断面積とは互いに異なっている、請求項1記載の湿式集塵装置。
【請求項3】
前記上側隔壁部の下端の高さは、前記通気部から空気を吸引した際、前記筒部内の前記液体の水面の位置が前記筒部の下端に達するタイミングと、前記上側隔壁部の内側の前記液体の水面の位置が前記上側隔壁部の下端に達するタイミングとが実質的に等しくなる高さに設定された、請求項1または請求項2に記載の湿式集塵装置。
【請求項4】
前記上側隔壁部および前記下側隔壁部はそれぞれ多段に設けられ、
前記径方向の最も内側の前記下側隔壁部を前記筒部に近位として、多段の前記上側隔壁部と多段の前記下側隔壁部とが前記径方向に交互に配置され、
前記多段の上側隔壁部のそれぞれの下端は、前記径方向の外側ほど高い位置に設けられる、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の湿式集塵装置。
【請求項5】
前記多段の下側隔壁部のそれぞれの上端の高さは一定である、請求項4記載の湿式集塵装置。
【請求項6】
前記筒部の下端および前記上側隔壁部の下端の少なくともいずれかに前記液体の流れを乱す乱流生成部が設けられた、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の湿式集塵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉塵等を含む空気を液体と接触させて粉塵等を除去する湿式集塵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
湿式集塵装置(スクラバ)は、処理装置の排気や空気などに含まれる粉塵、ゴミ、臭気、不純物など(以下、単に粉塵等という。)を液体に接触させて除去する装置である。特許文献1には、被処理気体を臭気捕捉液中に導入する導入部と、被処理気体と臭気捕捉液との気液混合が行われて被処理気体中の臭気が除去される気液混合部と、臭気捕捉液を供給するための液体供給口と、臭気を捕捉した臭気捕捉液を流出させて排出する液体排出部とを備える脱臭装置が開示される。
【0003】
特許文献2には、洗浄液容器と、容器中に配置されたガス流入管と、隔壁を有し、ガス流入管は、複数の吹き出し孔を有し、かつ、複数の吹き出し孔は上下方向に異なる位置に設けられており、隔室の側面は隔壁により閉鎖されており、隔壁はその底辺近傍に洗浄液が流通する導通口を持つスクラバが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-196120号公報
【特許文献2】特開2004-113919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
湿式集塵装置においては、粉塵等を含む空気を吸入して液体に接触させ、攪拌しながら排出する。この際、粉塵等を含む空気と液体とを接触、撹拌させるスクラバ発生箇所を多くするほど集塵効果は高まる。一方、スクラバ発生箇所を多くしようとすると装置の大型化を招く。また、スクラバ発生箇所を多くすると空気と液体を封入する容器のサイズは大きくなり、スクラバを発生させるためには空気を吸入する(または空気を排出する)ための圧力を高くする必要がある。これにより、送風(または吸引)装置に高い能力が要求される。
【0006】
本発明は、装置構成を小型化できるとともに効率的な集塵を行うことができる湿式集塵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態は、液体を収容する容器と、容器の上下方向に延在し、容器の外部から内部の途中にかけて設けられる筒部と、容器の内部において筒部の外周の外側を囲む領域で上下方向に延在し、筒部の径方向に筒部から離間して設けられ、下部に連通孔が設けられ、上部が開いている下側隔壁部と、容器の内部において下側隔壁部の外周の外側を囲む領域で上下方向に延在し、径方向に下側隔壁部から離間して設けられ、上部が閉じ、下部が開いている上側隔壁部と、容器の内部における上側隔壁部よりも外側の空間と連通する通気部と、を備え、上側隔壁部と下側隔壁部とは互いの一部が径方向に重なるように配置され、下側隔壁部の上端は、筒部の下端よりも高い位置に設けられ、上側隔壁部の下端は、筒部の下端よりも高く、下側隔壁部の上端よりも低い位置に設けられる湿式集塵装置である。
【0008】
このような湿式集塵装置において、集塵を行う際には、容器に液体を収容した状態で、通気部と連通する容器の空間内の圧力を筒部内の圧力よりも低くする。これにより、筒部から容器内に吸入された粉塵等を含む空気は、筒部と下側隔壁部との間、および下側隔壁部と上側隔壁部との間を上下方向に往復しつつ外周方向に液体と接触しながら進み、通気部から排出される。この際、上側隔壁部の下端部分において空気と液体とが撹拌されるスクラバ現象が発生する。また、上側隔壁部の下端が、筒部の下端よりも高く、下側隔壁部の上端よりも低い位置に設けられることで、複数個所において同時にスクラバ現象を発生させることができる。
【0009】
上記湿式集塵装置において、筒部、上側隔壁部および下側隔壁部は互いに同心で配置され、筒部と下側隔壁部との隙間の空間を第1空間、下側隔壁部と上側隔壁部との隙間の空間を第2空間とした場合、左右方向における第1空間の断面積と第2空間の断面積とは互いに異なるように設けられる。空気の流量が同じ場合、面積が大きい空間での空気の流速は遅く、面積が小さい空間での流速は速くなる。これにより複数個所で発生するスクラバによる撹拌現象は均一なものではなくなり、それぞれが異なる状態で空気と液体を撹拌し、空気に含まれる多種多様な粉塵を液体で捕捉することができる。また、第1空間や第2空間の断面積を小さくすることで隔壁間の距離を小さくすることができ、容器サイズを変更することなく、より多くの隔壁壁を構築することが可能となり、接触経路を多段化することができる。
【0010】
上記湿式集塵装置において、上側隔壁部の下端の高さは、通気部から空気を吸引した際、筒部内の液体の水面の位置が筒部の下端に達するタイミングと、上側隔壁部の内側の液体の水面の位置が上側隔壁部の下端に達するタイミングとが実質的に等しくなる高さに設定されていることが好ましい。これにより、筒部の下端および上側隔壁部の下端のそれぞれで同時にスクラバ現象を発生させることができる。
【0011】
上記湿式集塵装置において、上側隔壁部および下側隔壁部はそれぞれ多段に設けられ、径方向の最も内側の下側隔壁部を筒部に近位として、多段の上側隔壁部と多段の下側隔壁部とが径方向に交互に配置され、多段の上側隔壁部のそれぞれの下端は、径方向の外側ほど高い位置に設けられるようにしてもよい。これにより、各経路下面において均一に空気と液体とを接触、撹拌させることが可能となる。また、上下往復の回数が増加することで上側隔壁部の下端において空気と液体との接触、撹拌させる回数を増やし、その結果、集塵効率を高めることができる。また、多段構成であっても、空気と液体との接触、撹拌回数を増やしながら装置の大型化を最小限に抑えることができる。
【0012】
上記湿式集塵装置において、多段の下側隔壁部のそれぞれの上端の高さを一定にしてもよい。これにより、多段の下側隔壁部における上端の高さが揃い、多段の上側隔壁部の高さによって空気と液体との接触の経路長や内圧の設定を行いやすくなる。また、スクラバ効果が発生していない経路において液体噴霧の機能が付加される。
【0013】
上記湿式集塵装置において、筒部の下端および上側隔壁部の下端の少なくともいずれかに液体の流れを乱す乱流生成部が設けられていてもよい。これにより、粉塵等が含まれる空気と液体とが接触する際に空気と液体との攪拌作用を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、装置構成を小型化できるとともに効率的な集塵を行うことができる湿式集塵装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る湿式集塵装置を例示する模式断面図である。
図2】第1実施形態に係る湿式集塵装置を例示する模式平面図である。
図3】第1実施形態に係る湿式集塵装置の要部を例示する模式斜視図である。
図4】第1実施形態に係る湿式集塵装置の動作を例示する模式断面図である。
図5】第2実施形態に係る湿式集塵装置を例示する模式断面図である。
図6】第2実施形態に係る湿式集塵装置の動作を例示する模式断面図である。
図7】本実施形態に係る湿式集塵装置の変形例(その1)を例示する模式図である。
図8】本実施形態に係る湿式集塵装置の変形例(その2)を例示する模式斜視図である。
図9】集塵システムを例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る湿式集塵装置を例示する模式断面図である。
図2は、第1実施形態に係る湿式集塵装置を例示する模式平面図である。
図3は、第1実施形態に係る湿式集塵装置の要部を例示する模式斜視図である。
本実施形態に係る湿式集塵装置1Aは、粉塵等を含む空気Aを吸引して液体Lと混合し、粉塵等が除去された空気Bを排出する装置である。湿式集塵装置1Aは、水などの液体Lを収容する容器10と、容器10の上下方向に延在して設けられる筒部20と、筒部20の外周の外側を囲む領域で上下方向に延在して設けられる下側隔壁部30と、下側隔壁部30の外周の外側を囲む領域で上下方向に延在して設けられる上側隔壁部40と、容器と連通する通気部50と、を備える。なお、本実施形態において、上下方向は縦方向ともいい、上下方向と直交する方向を左右方向または径方向ともいうことにする。
【0018】
容器10は、底部11、蓋部12および側壁部13を有する。筒部20は蓋部12を貫通して容器10の外部から容器10の内部の途中まで容器10の上下方向に延在するように設けられる。本実施形態では、筒部20は円筒型に設けられる。粉塵等を含む空気Aは、筒部20によって容器10の外部から内部に引き込まれる。
【0019】
下側隔壁部30は、容器10の内部において筒部20の外周20bの外側を囲む領域で上下方向に延在するように設けられる。下側隔壁部30は筒部20の径方向において筒部20と離間して設けられる。すなわち、下側隔壁部30は、筒部20の外周20bと径方向に離間しつつ一部が重なるように設けられる。
【0020】
また、下側隔壁部30の下部(下端302側)には連通孔30hが設けられる。例えば、下側隔壁部30の下端302の一部は容器10の底部11に接続され、底部11と接続されていない部分が連通孔30hとなっている。連通孔30hが設けられることで、容器10へ液体Lを注入する際や容器10から液体Lを排出する際に下側隔壁部30で遮られないようにしている。なお、連通孔30hの最も高い位置は、筒部20の下端202よりも低く設定される。また、連通孔30hは、下側隔壁部30の下部に設けられた複数の孔であってもよい。
【0021】
一方、下側隔壁部30の上部(上端301側)は開いている。本実施形態では、下側隔壁部30の下端302は底部11と接し、底部11の位置から上方に容器10の途中まで延在している。また、本実施形態では、下側隔壁部30は円筒型に設けられる。下側隔壁部30は、同じく円筒型に設けられた筒部20の外側で、筒部20と同心で設けられる。なお、下側隔壁部30は必ずしも容器10の底部11に接続されている必要はなく、筒部20や上側隔壁部40に支持されていてもよい。
【0022】
上側隔壁部40は、容器10の内部において下側隔壁部30の外周30bの外側の領域で上下方向に延在して設けられる。上側隔壁部40は筒部20の径方向において筒部20および下側隔壁部30と離間して設けられる。すなわち、上側隔壁部40は筒部20の外周20bおよび下側隔壁部30の外周30bと径方向に離間しつつ一部が重なるように設けられる。
【0023】
また、上側隔壁部40の上部(上端401側)は閉じている。例えば、上側隔壁部40の上部は容器10の蓋部12の一部によって閉じられていてもよいし、蓋部12以外の部材で閉じられていてもよい。
【0024】
一方、上側隔壁部40の下部(下端402側)は開いている。本実施形態では、上側隔壁部40の上端401は蓋部12と接し、蓋部12の位置から下方に容器10の途中まで延在している。また、本実施形態では、上側隔壁部40は円筒型に設けられる。上側隔壁部40は、同じく円筒型に設けられた筒部20および下側隔壁部30の外側に、筒部20および下側隔壁部30と同心で設けられる。
【0025】
通気部50は、容器10の内部における上側隔壁部40よりも外側の空間である排気室10Eと連通して設けられる。通気部50は排気室10Eの空気Aを容器10の外部に排出するための通路である。
【0026】
本実施形態に係る湿式集塵装置1Aにおいて、上側隔壁部40と下側隔壁部30とは互いの一部が径方向に重なるように配置される。また、下側隔壁部30の上端301は、筒部20の下端202よりも高い位置に設けられ、上側隔壁部40の下端402は、筒部20の下端202よりも高く、下側隔壁部30の上端301よりも低い位置に設けられる。
【0027】
これにより、容器10内には、筒部20、下側隔壁部30、上側隔壁部40および容器10の側壁部13のそれぞれによって区分けされる複数の空間(以下、スクラブ空間という。)が構成される。径方向に隣り合うスクラブ空間は上または下で連通する。連通する上下の位置は径方向に互い違いになっている。したがって、複数のスクラブ空間によって構成される流路は、上下に往復しながら径方向に延在するに設けられる。図2に示す例では、第1空間R1および第2空間R2がスクラブ空間の例である。
【0028】
図4は、第1実施形態に係る湿式集塵装置の動作を例示する模式断面図である。
本実施形態に係る湿式集塵装置1Aにおいて集塵を行う際には、先ず、容器10に液体Lを収容する。液体Lには例えば水が用いられる。液体Lは、水面が最外周の上側隔壁部40の下端402よりも高い位置Pに達するまで入れられる。
【0029】
次に、通気部50と連通する排気室10Eの圧力を筒部20内の圧力よりも低くする。例えば、通気部50に接続されたブロワ(図示せず)を動作させて、通気部50を介して排気室10Eの空気Bを吸引する。これにより、容器10内における各スクラブ空間で同一であった水位は、液体Lで遮断された箇所を境に、排気室10Eにおいて上昇し、相対的に遮断された内側のスクラブ空間において低下していく。
【0030】
ここで、容器10内の液体Lは下側隔壁部30の下部に設けられた連通孔30hによって繋がっている。このため、排気室10Eでの水位が上昇した場合、排気室10Eよりも内側のスクラブ空間の水位の低下は、各スクラブ空間の左右方向の断面積に応じて変化する(パスカルの原理)。本実施形態では、筒部20の左右方向の断面積が最も小さく、外側のスクラブ空間ほど大きくなる。したがって、排気室10Eの水位の上昇に伴い、筒部20の水位の低下が最も大きく、外側のスクラブ空間ほど水位の低下は小さくなる。
【0031】
さらに通気部50からの吸引を続けると、筒部20内の液体Lの水位が下端202に達し、上側隔壁部40の内側のスクラブ空間の水位が上側隔壁部40の下端402まで達する。これにより、筒部20内の空気Aが容器10内に引き込まれる。
【0032】
筒部20から引き込まれる空気Aには粉塵等が含まれている。筒部20から引き込まれた空気Aは筒部20の下端202から液体L内に引き込まれ、水面Cと水面D間に存在する液体Lとの間でスクラバ現象が発生し撹拌され、空気Aに含まれる粉塵等が液体Lに取り込まれる。
【0033】
次に、筒部20と下側隔壁部30との隙間から浮き上がった空気Aは、下側隔壁部30と上側隔壁部40との隙間に引き込まれ、上側隔壁部40の下端402に達した水面Eの位置から再び液体L内に引き込まれる。これにより、水面Eと水面Fとの間に存在する液体Lとの間でスクラバ現象が発生し撹拌される。ここでの液体Lとの接触でも、空気Aに含まれる粉塵等が液体Lに取り込まれることになる。そして、粉塵等が除去された空気Bは、排気室10Eから通気部50を介して外部に排出される。
【0034】
このように、本実施形態に係る湿式集塵装置1Aでは、筒部20から容器10内に吸入された粉塵等を含む空気Aが、筒部20と下側隔壁部30との間、および下側隔壁部30と上側隔壁部40との間を上下方向に往復しつつ外周方向に液体Lとの撹拌および接触(スクラバ現象)をしながら進み、通気部50から排出される。空気Aは上下に往復しながら液体Lとのスクラバ現象を繰り返すため、効果的に粉塵等を液体Lに取り込ませ、粉塵等が除去された空気Bを通気部50から排出することができる。
【0035】
この際、上側隔壁部40の下端402が、筒部20の下端202よりも高く、下側隔壁部30の上端301よりも低い位置に設けられることで、空気Aと液体Lとの接触経路を長く確保しながら複数個所の上側隔壁部40の下端402において効率良くスクラバ現象を発生されることができる。
【0036】
また、筒部20の下端202と上側隔壁部40の下端402との高さの差と、動作前の液体Lの水面の高さとの関係を、通気部50から空気Bを吸引した際、筒部20内の水面Cの位置が筒部20の下端202に達するタイミングと、水面Eが上側隔壁部40の下端402に達するタイミングとがほぼ(実質的に)等しくなるようにすることが好ましい。これにより、筒部20の下端202から空気Aが液体L内に引き込まれ、そして、空気Aと液体Lとの接触および撹拌が水面Cと水面Dとの間、水面Eと水面Fとの間に存在する僅かな空間でタイミングを合わせて行われる。したがって、最小限の圧力損失で複数個所同時に撹拌現象(スクラバ現象)を発生させることができる。
【0037】
また、図2に示すように、本実施形態に係る湿式集塵装置1Aでは、筒部20と下側隔壁部30との隙間の空間を第1空間R1、下側隔壁部30と上側隔壁部40との隙間の空間を第2空間R2とした場合、左右方向における第1空間R1の断面積S1と、第2空間R2の断面積S2とが互いに異なるようにしてもよい。これにより、複数個所で発生するスクラバによる撹拌現象は均一なものではなくなり、それぞれが異なる状態で空気と液体Lを撹拌し、空気に含まれる多種多様な粉塵を液体で捕捉することができる。
【0038】
また、所定の空気Aの流量を確保するため、第1空間R1の左右方向の隙間と、第2空間R2の左右方向の隙間とを同じにした場合、相対的に外側となる第2空間R2の断面積S2は、相対的に内側となる第1空間R1の断面積S1よりも大きくなる。第1空間R1の断面積S1および第2空間R2の断面積S2の大きさとしてS1<S2の関係にすることで、空気Aの通過する領域の確保とともに、中心に近い空間ほど吸引を行った際の水位低下を大きくすることができる。
【0039】
この原理を利用し、各空間の断面積と上側隔壁部40の下端402の位置とを最適化することにより、複数個所において意図する順序または同時にスクラバ現象を発生させることができる。例えば、筒部20の断面積S0、第1空間R1の断面積S1および第2空間R2の断面積S2において、S0<S1<S2の関係になっていると、筒部20の水位の低下が最も大きく、筒部20に近い第1空間R1から外側の第2空間R2にかけて水位の低下が小さくなる。この水位低下の大きさの差に応じて上側隔壁部40の下端402の位置を設定することで、筒部20の下端202に水位が到達するのと同時に上側隔壁部40の下端402に水位が到達するようにして、各空間で同時にスクラバ現象を発生させることができる。
【0040】
反対に、上側隔壁部40の下端402の位置を設定することで、各空間でのスクラバ現象の発生のタイミングを異にすることもできる。このように、第1空間R1および第2空間R2におけるスクラバ現象を発生させるタイミングおよび、水面CとD、EとFの水位差を変えることにより空気Aと液体Lとの撹拌比率を最適化することができる。ここで、攪拌比率とは、スクラバ現象が発生する際の発生箇所に存在する水の量と攪拌される空気の量との割合のことをいう。スクラブ空間での水位差が大きいほど水と空気との攪拌比率が高くなり、空気Aに含まれる粉塵等の捕獲作用を高めることができる。
【0041】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態に係る湿式集塵装置を例示する模式断面図である。
本実施形態に係る湿式集塵装置1Bでは、上側隔壁部40および下側隔壁部30がそれぞれ多段に設けられている。湿式集塵装置1Bにおいて、筒部20の径方向の最も内側となる下側隔壁部30を筒部20に近位として、多段の上側隔壁部40と多段の下側隔壁部30とが筒部20の径方向に交互に配置される。ここで、説明の便宜上、1つの上側隔壁部40とその内側に隣り合う1つの下側隔壁部30との組を上下隔壁部60といい、1つの上下隔壁部60の組を1段ということにする。また、複数段の上下隔壁部60において、最も内側の段を1段目とし、外側に向けて段の呼び数を増やすものとする。
【0042】
湿式集塵装置1Bにおいて、図5に示す例では、3段の上下隔壁部60が設けられる。なお、上下隔壁部60の段数は3段に限定されず、さらなる多段であってもよい。多段の上下隔壁部60においては、それぞれの上側隔壁部40と下側隔壁部30とが径方向に交互に隙間を開けて配置される。また、隣り合う上側隔壁部40と下側隔壁部30とは互いの一部が径方向で重なるように配置される。
【0043】
このような多段構成の湿式集塵装置1Bにおいて、多段の上下隔壁部60における上側隔壁部40のそれぞれの下端402は、径方向の外側ほど高い位置に設けられる。
【0044】
図6は、第2実施形態に係る湿式集塵装置の動作を例示する模式断面図である。
本実施形態に係る湿式集塵装置1Bにおいて集塵を行う際には、先ず、容器10に液体Lを収容する。液体Lには例えば水が用いられる。液体Lは、水面が筒部20の下端202よりも高い位置Pに達するまで入れられる。なお、上下隔壁部60が多段に設けられている場合、液体Lの初期の位置Pは、最も内側の上側隔壁部40の下端402よりも高い位置になっていればよい。
【0045】
次に、通気部50と連通する排気室10Eの圧力を筒部20内の圧力よりも低くする。例えば、通気部50に接続されたブロワ(図示せず)を動作させて、通気部50を介して排気室10Eの空気Bを吸引する。これにより、容器10内における各スクラブ空間で同一であった水位は、液体Lで遮断された箇所を境に、排気室10Eにおいて上昇し、相対的に遮断された内側のスクラブ空間において低下していく。
【0046】
さらに通気部50からの吸引を続けると、筒部20内の液体Lの水位が下端202に達し、上側隔壁部40の内側のスクラブ空間の水位が上側隔壁部40の下端402まで達する。これにより、筒部20内の空気Aが容器10内に引き込まれる。
【0047】
筒部20から引き込まれる空気Aには粉塵等が含まれている。筒部20から引き込まれた空気Aは筒部20の下端202から液体L内に引き込まれ、水面Cと水面D間に存在する液体Lと間でスクラバ現象が発生し撹拌され、空気Aに含まれる粉塵等が液体Lに取り込まれる。
【0048】
次に、水面Dから浮き上がった空気Aは、1段目の上下隔壁部60における下側隔壁部30と上側隔壁部40との隙間に引き込まれ、上側隔壁部40の下端402の水面Eから再び液体L内に引き込まれる。そして、水面Eと水面Fとの間に存在する液体Lとの間でスクラバ現象が発生し撹拌される。
【0049】
次に、水面Fから浮き上がった空気Aは、2段目の上下隔壁部60における下側隔壁部30と上側隔壁部40との隙間に引き込まれ、上側隔壁部40の下端402の水面Gから再び液体L内に引き込まれる。そして、水面Gと水面Hとの間に存在する液体Lとの間でスクラバ現象が発生し撹拌される。
【0050】
次に、水面Hから浮き上がった空気Aは、3段目の上下隔壁部60における下側隔壁部30と上側隔壁部40との隙間に引き込まれ、上側隔壁部40の下端402と水面Iとの隙間から排気室10Eに引き込まれる。そして、粉塵等が除去された空気Bは、排気室10Eから通気部50を介して外部に排出される。
【0051】
湿式集塵装置1Bでは、上下隔壁部60の段数が多いほど空気Aと液体Lとの接触における撹拌される回数が増加して、空気Aと液体Lとのスクラバ作用による集塵効果を高めることができる。また、上下隔壁部60を多段構成にすることにより装置の大型化を最小限にとどめながら集塵効果を高めることができる。
【0052】
また、湿式集塵装置1Bでは、多段の上下隔壁部60における上側隔壁部40のそれぞれの下端402は、径方向の外側ほど高い位置に設けられており、この位置を変えることによりスクラバ作用を発生させるタイミングおよび、空気Aと液体Lとの撹拌比率を制御することができる。
【0053】
ここで、湿式集塵装置1Bにおいて、多段の上下隔壁部60における下側隔壁部30のそれぞれの上端301の高さを一定にしてもよい。これにより、多段の下側隔壁部30の上端301の高さが揃い、多段の上側隔壁部40の高さによって空気と液体との接触の経路長や内圧の設定を行いやすくなる。また、スクラバ効果が発生していない経路においては液体噴霧の機能が効果的に付加される。
【0054】
(変形例)
次に、本実施形態に係る湿式集塵装置の変形例について説明する。
図7は、本実施形態に係る湿式集塵装置の変形例(その1)を例示する模式図である。
図7に示す湿式集塵装置1Cでは、筒部20、上側隔壁部40および下側隔壁部30の筒の形状が矩形となっている。筒部20、上側隔壁部40および下側隔壁部30の少なくともいずれかは円筒型以外であってもよい。すなわち、矩形以外の多角柱型であってもよい。多角柱型では、空気Aと液体Lとが混合される際、円筒型に比べて液体Lに乱流が発生しやすく、攪拌効率が高まる。
【0055】
図8は、本実施形態に係る湿式集塵装置の変形例(その2)を例示する模式斜視図である。
図8に示す湿式集塵装置1Dでは、上側隔壁部40の下端302に液体Lの流れを乱す乱流生成部80が設けられている。乱流生成部80の一例として、図9に示す例では下端302をジグザグ形状にしている。これにより、粉塵等が含まれる空気と液体とが接触する際に空気と液体との攪拌作用を高めることができる。
【0056】
なお、乱流生成部80は、筒部20の下端202に設けてもよい。また、乱流生成部80は下端202、302に設けるジグザグ形状のほか、流路途中に設けた網や突起など、流れの抵抗を生じさせるものであればよい。また、乱流生成部80として、筒部20の下部や上側隔壁部40の下部に微小な孔を多数設けてもよい。微小な孔は同径であってもよいし、ランダムな径であってもよい。微小な孔を多数設けることで、空気Aや液体Lの一部が微小な孔を通過する際に乱流を起こし、攪拌効果を高めることができる。
【0057】
(適用例)
次に、本実施形態に係る湿式集塵装置を適用した集塵システムについて説明する。
図9は、集塵システムを例示する模式図である。
集塵システム100は、筐体110に本実施形態に係る湿式集塵装置1Bを備えている。なお、図9に示す集塵システム100では湿式集塵装置1Bを適用しているが、湿式集塵装置1A、1Cおよび1Dを適用してもよい。
【0058】
筐体110には通気部50から容器10の排気室10Eの空気Aを吸引するためのブロワ120が設けられる。容器10の下部には容器10内の液体Lを排出するためのドレン130が設けられる。通気部50から空気Bを吸引する際、液体Lと空気Bとの分離を行いやすくするため、排気室10E内に分離板55を設けてもよい。
【0059】
本実施形態に係る湿式集塵装置1Bでは、筒部20に対して同心状に下側隔壁部30および上側隔壁部40が設けられているため、筒部20から引き込んだ空気Aを下側隔壁部30および上側隔壁部40によって上下方向に往復させながら液体Lに接触させることができる。すなわち、下側隔壁部30および上側隔壁部40を多段構成にした場合、空気Aと液体Lとの接触経路は上下方向に伸び、多段の分だけ径方向へ拡がるのみで高さは変わらない。これにより、空気Aと液体Lとの接触経路を長くしつつ、装置構成の大型化を抑制することができる。また、多段になっても吸引抵抗の増加を抑制できるため、ブロワ120への負荷を抑制でき、ブロワ120の小型化にも寄与できる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態に係る湿式集塵装置1A、1B、1Cおよび1Dによれば、装置構成を小型化できるとともに効率的な集塵を行うことが可能となる。
【0061】
なお、上記に本実施形態およびその具体例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、筒部20、下側隔壁部30および上側隔壁部40が互いに同心に設けられている例を示したが、必ずしも同心でなくてもよく、一部の中心位置がずれていたり、一方向に偏心したりしていてもよい。また、本実施形態では通気部50から容器10内の空気Aを吸引したが、筒部20から空気Aを送り込むようにしてもよい。また、前述の各実施形態またはその具体例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本実施形態に係る湿式集塵装置1A、1B、1Cおよび1Dは、レーザ処理装置などの各種の加工装置や処理装置に適用できるほか、空気清浄機としても好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1A,1B,1C,1D…湿式集塵装置
10…容器
10E…排気室
11…底部
12…蓋部
13…側壁部
20…筒部
20b…外周
30…下側隔壁部
30b…外周
30h…連通孔
40…上側隔壁部
50…通気部
55…分離板
60…上下隔壁部
80…乱流生成部
100…集塵システム
110…筐体
120…ブロワ
130…ドレン
202…下端
301…上端
302…下端
401…上端
402…下端
A,B…空気
C,D,E,F,G,H,I…水面
L…液体
P…位置
R1…第1空間
R2…第2空間
S0,S1,S2…断面積
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9