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特開2022-35624キャリブレーション装置、測定装置、キャリブレーション方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035624
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】キャリブレーション装置、測定装置、キャリブレーション方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 22/00 20060101AFI20220225BHJP
【FI】
G01N22/00 S
G01N22/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020140086
(22)【出願日】2020-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】302069930
【氏名又は名称】NECエンベデッドプロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】杉田 迅
(57)【要約】
【課題】より精度の高い受信電波の調整を行うキャリブレーション装置を提供する。
【解決手段】一つまたは複数の送信アンテナから測定対象物に送信した一つまたは複数の周波数の電波の反射波の送信アンテナに対応する一つまたは複数の受信アンテナにおける受信値をそれぞれ取得する。受信値それぞれと受信値の最小値と最大値の間に設けた当該受信値に関する複数の異なる基準値とを比較し、受信値と複数の基準値との関係に基づいて受信値それぞれを複数の基準値のうちの最も値の大きい基準値または受信値の最小値の何れかに合わせる調整値を、複数の受信アンテナにおける所定の数の異なる周波数の各受信値、または、一つまたは複数の受信アンテナにおける一つの周波数の各受信値の少なくとも一方についてそれぞれ算出する。受信値を調整する調整値を記録する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つまたは複数の送信アンテナから測定対象物に送信した一つまたは複数の周波数の電波の反射波の前記送信アンテナに対応する一つまたは複数の受信アンテナにおける受信値をそれぞれ取得する受信値取得手段と、
前記受信値それぞれと前記受信値の最小値と最大値の間に設けた当該受信値に関する複数の異なる基準値とを比較し、前記受信値と前記複数の基準値との関係に基づいて前記受信値それぞれを前記複数の基準値のうちの最も値の大きい基準値または前記受信値の最小値の何れかに合わせる調整値を、前記複数の受信アンテナにおける所定の数の異なる周波数の各受信値、または、一つまたは複数の前記受信アンテナにおける一つの周波数の各受信値の少なくとも一方についてそれぞれ算出する調整値算出手段と、
前記受信値を調整する前記調整値を記録する記録手段と、
を備えるキャリブレーション装置。
【請求項2】
前記受信値は前記受信アンテナにおける前記反射波の振幅の大きさを表す値であり、
前記調整値算出手段は、前記振幅の大きさを表す前記受信値それぞれを前記振幅の大きさを表す前記複数の基準値のうちの最も値の大きい基準値または前記受信値の最小値の何れかに合わせる前記調整値を、前記複数の受信アンテナにおける所定の数の異なる周波数の各受信値、または、一つまたは複数の前記受信アンテナにおける一つの周波数の各受信値の少なくとも一方についてそれぞれ算出し、
前記記録手段は、前記振幅の大きさを表す前記受信値を調整する前記調整値を記録する
請求項1に記載のキャリブレーション装置。
【請求項3】
前記受信値は前記受信アンテナにおける前記反射波の位相のずれを表す値であり、
前記調整値算出手段は、前記位相のずれを表す前記受信値それぞれを前記位相のずれを表す前記複数の基準値のうちの最も値の大きい基準値または前記受信値の最小値の何れかに合わせる前記調整値を、前記複数の受信アンテナにおける所定の数の異なる周波数の各受信値、または、一つまたは複数の前記受信アンテナにおける一つの周波数の各受信値の少なくとも一方についてそれぞれ算出し、
前記記録手段は、前記位相のずれを表す前記受信値を調整する前記調整値を記録する
請求項1に記載のキャリブレーション装置。
【請求項4】
前記調整値算出手段は、前記複数の異なる基準値である第一基準値と当該第一基準値より大きい第二基準値と前記複数の受信値とを比較し、当該複数の受信値の全てが前記第二基準値以上の場合には、それら受信値それぞれを前記第二基準値に合わせる前記調整値を算出する
請求項1から請求項3の何れか一項に記載のキャリブレーション装置。
【請求項5】
前記調整値算出手段は、前記複数の異なる基準値である第一基準値と当該第一基準値より大きい第二基準値と前記複数の受信値とを比較し、当該複数の受信値のうち最も値の小さい受信値が前記第一基準値と前記第二基準値の間の値である場合には、前記複数の受信値を前記最も値の小さい受信値に合わせる前記調整値を算出する
請求項1から請求項3の何れか一項に記載のキャリブレーション装置。
【請求項6】
工場出荷時の前記受信アンテナごとの前記調整値を示す出荷時調整値データを記憶し、
前記調整値算出手段は、前記複数の異なる基準値である第一基準値と当該第一基準値より大きい第二基準値と前記複数の受信値とを比較し、当該複数の受信値のうちの少なくとも一つの受信値が前記第一基準値未満である場合には、前記出荷時補正用データが示す工場出荷時の前記受信アンテナごとの前記調整値を利用すると調整値として記録する
請求項1から請求項3の何れか一項に記載のキャリブレーション装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか一項に記載のキャリブレーション装置の記録した前記受信アンテナごとの前記調整値を用いて前記反射波の受信信号の前記受信値を調整する調整手段と、
前記調整した前記反射波の受信信号の前記受信値を用いて前記測定対象物の状態を検出する検出手段と、
を備えるキャリブレーション装置。
【請求項8】
一つまたは複数の送信アンテナから測定対象物に送信した一つまたは複数の周波数の電波の反射波の前記送信アンテナに対応する一つまたは複数の受信アンテナにおける受信値をそれぞれ取得する受信値取得手段と、
前記受信値それぞれと前記受信値の最小値と最大値の間に設けた当該受信値に関する複数の異なる基準値とを比較し、前記受信値と前記複数の基準値との関係に基づいて前記受信値それぞれを前記複数の基準値のうちの最も値の大きい基準値または前記受信値の最小値の何れかに合わせる調整値を、前記複数の受信アンテナにおける所定の数の異なる周波数の各受信値、または、一つまたは複数の前記受信アンテナにおける一つの周波数の各受信値の少なくとも一方についてそれぞれ算出する調整値算出手段と、
前記受信値を調整する前記調整値を記録する記録手段と、
を備える測定装置。
【請求項9】
一つまたは複数の送信アンテナから測定対象物に送信した一つまたは複数の周波数の電波の反射波の前記送信アンテナに対応する一つまたは複数の受信アンテナにおける受信値をそれぞれ取得し、
前記受信値それぞれと前記受信値の最小値と最大値の間に設けた当該受信値に関する複数の異なる基準値とを比較し、前記受信値と前記複数の基準値との関係に基づいて前記受信値それぞれを前記複数の基準値のうちの最も値の大きい基準値または前記受信値の最小値の何れかに合わせる調整値を、前記複数の受信アンテナにおける所定の数の異なる周波数の各受信値、または、一つまたは複数の前記受信アンテナにおける一つの周波数の各受信値の少なくとも一方についてそれぞれ算出し、
前記受信値を調整する前記調整値を記録する
キャリブレーション方法。
【請求項10】
キャリブレーション装置のコンピュータを、
一つまたは複数の送信アンテナから測定対象物に送信した一つまたは複数の周波数の電波の反射波の前記送信アンテナに対応する一つまたは複数の受信アンテナにおける受信値をそれぞれ取得する受信値取得手段、
前記受信値それぞれと前記受信値の最小値と最大値の間に設けた当該受信値に関する複数の異なる基準値とを比較し、前記受信値と前記複数の基準値との関係に基づいて前記受信値それぞれを前記複数の基準値のうちの最も値の大きい基準値または前記受信値の最小値の何れかに合わせる調整値を、前記複数の受信アンテナにおける所定の数の異なる周波数の各受信値、または、一つまたは複数の前記受信アンテナにおける一つの周波数の各受信値の少なくとも一方についてそれぞれ算出する調整値算出手段、
前記受信値を調整する前記調整値を記録する記録手段、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリブレーション装置、測定装置、キャリブレーション方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電波を検出する装置においては受信電波の増幅や減衰の調整を行うことがある。この調整を適切に行うことで、受信電波に応じた処理を行う装置が様々存在する。例えば、非破壊検査装置においては、電波を送信アンテナから出力し、測定対象に反射した電波を受信アンテナで受信する。非破壊検査装置においては、このような受信アンテナにおける受信電波の増幅や減衰の調整を行い、検査対象の検査結果の精度を保つことが行われる。
【0003】
関連技術として、送信用アンテナアレイと受信用アンテナアレイを用いて得られる受信データの較正方法の技術が、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-106859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような技術において、より精度の高い受信電波の調整を行う技術が求められている。
【0006】
そこでこの発明は、上述の課題を解決するキャリブレーション装置、測定装置、キャリブレーション方法、プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、キャリブレーション装置が、一つまたは複数の送信アンテナから測定対象物に送信した一つまたは複数の周波数の電波の反射波の前記送信アンテナに対応する一つまたは複数の受信アンテナにおける受信値をそれぞれ取得する受信値取得手段と、前記受信値それぞれと前記受信値の最小値と最大値の間に設けた当該受信値に関する複数の異なる基準値とを比較し、前記受信値と前記複数の基準値との関係に基づいて前記受信値それぞれを前記複数の基準値のうちの最も値の大きい基準値または前記受信値の最小値の何れかに合わせる調整値を、前記複数の受信アンテナにおける所定の数の異なる周波数の各受信値、または、一つまたは複数の前記受信アンテナにおける一つの周波数の各受信値の少なくとも一方についてそれぞれ算出する調整値算出手段と、前記受信値を調整する前記調整値を記録する記録手段と、を備える。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、測定装置は、一つまたは複数の送信アンテナから測定対象物に送信した一つまたは複数の周波数の電波の反射波の前記送信アンテナに対応する一つまたは複数の受信アンテナにおける受信値をそれぞれ取得する受信値取得手段と、前記受信値それぞれと前記受信値の最小値と最大値の間に設けた当該受信値に関する複数の異なる基準値とを比較し、前記受信値と前記複数の基準値との関係に基づいて前記受信値それぞれを前記複数の基準値のうちの最も値の大きい基準値または前記受信値の最小値の何れかに合わせる調整値を、前記複数の受信アンテナにおける所定の数の異なる周波数の各受信値、または、一つまたは複数の前記受信アンテナにおける一つの周波数の各受信値の少なくとも一方についてそれぞれ算出する調整値算出手段と、前記受信値を調整する前記調整値を記録する記録手段と、を備える。
【0009】
本発明の第3の態様によれば、キャリブレーション方法は、一つまたは複数の送信アンテナから測定対象物に送信した一つまたは複数の周波数の電波の反射波の前記送信アンテナに対応する一つまたは複数の受信アンテナにおける受信値をそれぞれ取得し、前記受信値それぞれと前記受信値の最小値と最大値の間に設けた当該受信値に関する複数の異なる基準値とを比較し、前記受信値と前記複数の基準値との関係に基づいて前記受信値それぞれを前記複数の基準値のうちの最も値の大きい基準値または前記受信値の最小値の何れかに合わせる調整値を、前記複数の受信アンテナにおける所定の数の異なる周波数の各受信値、または、一つまたは複数の前記受信アンテナにおける一つの周波数の各受信値の少なくとも一方についてそれぞれ算出し、前記受信値を調整する前記調整値を記録する。
【0010】
本発明の第4の態様によれば、プログラムは、キャリブレーション装置のコンピュータを、一つまたは複数の送信アンテナから測定対象物に送信した一つまたは複数の周波数の電波の反射波の前記送信アンテナに対応する一つまたは複数の受信アンテナにおける受信値をそれぞれ取得する受信値取得手段、前記受信値それぞれと前記受信値の最小値と最大値の間に設けた当該受信値に関する複数の異なる基準値とを比較し、前記受信値と前記複数の基準値との関係に基づいて前記受信値それぞれを前記複数の基準値のうちの最も値の大きい基準値または前記受信値の最小値の何れかに合わせる調整値を、前記複数の受信アンテナにおける所定の数の異なる周波数の各受信値、または、一つまたは複数の前記受信アンテナにおける一つの周波数の各受信値の少なくとも一方についてそれぞれ算出する調整値算出手段、前記受信値を調整する前記調整値を記録する記録手段、として機能させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、より精度の高い受信電波の調整を行うキャリブレーション装置、測定装置、キャリブレーション方法、プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態による測定装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態による制御回路の機能ブロック図である。
図3】本発明の一実施形態による受信回路と制御回路の関係を示す図である。
図4】本発明の一実施形態による測定装置の記憶する調整値テーブルを示す図である。
図5】本発明の一実施形態による第一のキャリブレーション処理の概要を示す図である。
図6】本発明の一実施形態による第二のキャリブレーション処理の概要を示す図である。
図7】本発明の一実施形態による第三のキャリブレーション処理の概要を示す図である。
図8】本発明の一実施形態による測定装置の処理フローを示す第一の図である。
図9】本発明の一実施形態による測定装置の処理フローを示す第二の図である。
図10】本発明の一実施形態によるキャリブレーション装置の最小構成を示す図である。
図11】本発明の一実施形態による最小構成のキャリブレーション装置の処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態による測定装置を図面を参照して説明する。
図1は同実施形態による測定装置の構成を示すブロック図である。
この図で示すように、測定装置1は、少なくとも制御回路11、電源回路12、送信回路13、受信回路14、送信アンテナアレイ15、受信アンテナアレイ16、測定ボタン17、キャリブレーションボタン18を備えている。測定装置1は電力供給元4、PCなどの端末2と接続されていてよい。測定装置1は測定対象物3に送信電波を送信し、その反射波である受信電波を解析することにより、測定対象物3を測定する。より具体的には、測定対象物3は、測定対象である壁、床、天井、地面などであり、その材質は、コンクリート、木材、金属などであってよい。一例として、測定装置1は受信電波を解析して、受信電波による受信値の変化に基づいて、壁の内部の状態を検出する。
【0014】
制御回路11は、演算や各種指示(プログラム)を実施可能なCPUを備えて構成される。制御回路11は、送信する電波の周波数の指示や、各種制御回路の動作指示、受信した電波の解析、および調整値の算出を行う。
電源回路12は、商用電源やバッテリなどの電力供給元4から電源の供給を受けて、各回路に電力を供給する。
送信回路13は、デジタルデータを電波に変換し、送信する電波の周波数や電力レベルを制御する。
受信回路14は、受信電波を増幅または減衰したり、受信電波の所定の周波数帯をカットしたり、受信電波をデジタルデータに変換する制御を行う。
送信アンテナアレイ15は、1以上の送信アンテナを備え、制御回路によって指示された送信アンテナが送信電波を送出する。
受信アンテナアレイ16は、送信アンテナに対応する1以上の受信アンテナを備え、制御回路によって指示された受信アンテナが受信電波を受信する。
測定ボタン17は、ユーザが測定を開始または停止を指示するためのボタンである。
キャリブレーションボタン18は、ユーザがキャリブレーションの開始または停止を指示するためのボタンである。
【0015】
図2は制御回路の機能ブロック図である。
図2の制御回路11は、CPUがプログラムを実行することにより、または回路の機能によって、制御部111、受信値取得部112、調整値算出部113、記録部114、調整部115、解析部116の各機能を発揮する。測定装置1は、さらに、ROM(Read Only Memory)162、RAM(Random Access Memory)163、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置を備えてよい。
【0016】
制御部111は、各種回路を制御する。
受信値取得部112は、複数の送信アンテナから測定対象物3に送信した一つまたは複数の周波数の電波の反射波の、各送信アンテナに対応する複数の受信アンテナにおける受信値をそれぞれ取得する。
調整値算出部113は、受信値それぞれと受信値の最小値と最大値の間に設けた当該受信値に関する複数の異なる基準値とを比較し、受信値と複数の基準値との関係に基づいて受信値それぞれを所定の値に合わせる調整値を、複数の受信アンテナにおける所定の数の異なる周波数の各受信値、または、一つまたは複数の受信アンテナにおける一つの周波数の各受信値の少なくとも一方についてそれぞれ算出する。
記録部114は、調整値算出部113の算出した調整値を記憶部に記録する。
調整部115は、調整値を用いて測定対象物3における反射波の受信信号の値を調整する。解析部116は、調整した反射波の受信信号を用いて測定対象物3の状態を検出する。
【0017】
図3は受信回路と制御回路の関係を示す図である。
受信回路14は、増幅回路41、減衰回路42、フィルタ回路43、ADC44などの回路を備える。
増幅回路41は、アナログ信号を増幅する。
減衰回路42は、アナログ信号を減衰させる。
フィルタ回路43は、所定の周波数帯の信号をカットする。
ADC44は、アナログ信号をデジタル信号に変換する。
図4において回路間の実線はアナログ信号が通る信号線を示し、点線はデジタル信号が通る信号線を示す。制御回路11の受信値取得部112は、ADC44の出力した信号を取得する。調整部115は、調整値算出部113において算出され記録部114に記録された振幅に関する受信値の調整値を、増幅回路41または減衰回路42へ出力して、受信信号の増幅または減衰を制御する。または受信回路14には図示しなし位相調整回路45が備わり、調整部115は位相に関する受信値の調整値を、位相調整回路45に出力して、受信信号の位相の調整を制御するようにしてもよい。
【0018】
図4は測定装置の記憶する調整値テーブルを示す図である。
測定装置1は調整値テーブルを記憶する。調整値テーブルには、測定装置1の工場出荷時に記憶した調整値を記憶する第一調整値テーブル(出荷時調整値データ)と、キャリブレーションにより新たに生成される第二調整値テーブルとがある。また第一調整値テーブル、第二調整値テーブルは、それぞれ、受信電波の振幅の調整を行うための調整値を記憶する調整値テーブルと、受信電波の位相の調整を行うための調整値を記憶する調整値テーブルが含まれる。受信電波の振幅の調整を行うための調整値を記憶する工場出荷時の調整値テーブルを第一振幅調整値テーブルと呼び、受信電波の振幅の調整を行うための調整値を記憶するキャリブレーション後の調整値テーブルを第二振幅調整値テーブルと呼ぶこととする。受信電波の位相の調整を行うための調整値を記憶する工場出荷時の調整値テーブルを第一位相調整値テーブルと呼び、受信電波の位相の調整を行うための調整値を記憶するキャリブレーション後の調整値テーブルを第二位相調整値テーブルと呼ぶこととする。
【0019】
測定装置1は、送信アンテナと受信アンテナの対が予め決められており、当該対に含まれる送信アンテナから送信した送信電波の測定対象物3における反射波を、その対に含まれる対応する受信アンテナで受信する。送信アンテナと受信アンテナの対は、測定装置1の筐体の測定対象物3の面に対向する面側に、所定の距離離れてそれぞれ設置されている。送信アンテナと受信アンテナの対を、ANT1,ANT2,・・・ANTnと呼ぶこととする。測定装置1は、測定対象物3の測定を行うにあたり、f1~fnまでの複数の周波数の送信電波を送出して、その受信電波を解析する。従って、第一振幅調整値テーブル、第一位相調整値テーブル、第二振幅調整値テーブル、第二位相調整値テーブルは、各アンテナの対ANTnについて、異なる複数の周波数ごとの調整値を記憶する。
【0020】
つまり、第一振幅調整値テーブルは、第一の送信アンテナと第一の受信アンテナの対を示すANT1についてf1~fnまでの各調整値(01-1),(01-2),・・・(01-n)を記憶し、第二の送信アンテナと第二の受信アンテナの対を示すANT2についてf1~fnまでの各調整値(02-1),(02-2),・・・(02-n)を記憶し、同様に第xの送信アンテナと第xの受信アンテナの対を示すANTxについてf1~fnまでの各調整値(0x-1),(0x-2),・・・(0x-n)を記憶する。第一振幅調整値テーブルは、測定装置1の工場出荷時に予め測定装置1の記憶装置に記録される。
【0021】
同様に、第一位相調整値テーブルは、第一の送信アンテナと第一の受信アンテナの対を示すANT1についてf1~fnまでの各調整値(11-1),(11-2),・・・(11-n)を記憶し、第二の送信アンテナと第二の受信アンテナの対を示すANT2についてf1~fnまでの各調整値(12-1),(12-2),・・・(12-n)を記憶し、同様に第xの送信アンテナと第xの受信アンテナの対を示すANTxについてf1~fnまでの各調整値(1x-1),(1x-2),・・・(1x-n)を記憶する。第一位相調整値テーブルは、測定装置1の工場出荷時に予め測定装置1の記憶装置に記録される。
【0022】
同様に、第二振幅調整値テーブルは、第一の送信アンテナと第一の受信アンテナの対を示すANT1についてf1~fnまでの各調整値(21-1),(21-2),・・・(21-n)を記憶し、第二の送信アンテナと第二の受信アンテナの対を示すANT2についてf1~fnまでの各調整値(22-1),(22-2),・・・(22-n)を記憶し、同様に第xの送信アンテナと第xの受信アンテナの対を示すANTxについてf1~fnまでの各調整値(2x-1),(2x-2),・・・(2x-n)を記憶する。第二振幅調整値テーブルは、測定装置1の工場出荷時に予め測定装置1の記憶装置に記録される。
【0023】
同様に、第二位相調整値テーブルは、第一の送信アンテナと第一の受信アンテナの対を示すANT1についてf1~fnまでの各調整値(31-1),(31-2),・・・(31-n)を記憶し、第二の送信アンテナと第二の受信アンテナの対を示すANT2についてf1~fnまでの各調整値(32-1),(32-2),・・・(32-n)を記憶し、同様に第xの送信アンテナと第xの受信アンテナの対を示すANTxについてf1~fnまでの各調整値(3x-1),(3x-2),・・・(3x-n)を記憶する。
【0024】
図5は第一のキャリブレーション処理の概要を示す図である。
図5において、ADC MAXは、受信回路14に含まれるアナログデジタルコンバータから出力される信号の値の最大値を示す。図5において、0は、受信回路14に含まれるアナログデジタルコンバータから出力される信号の値の最小値を示す。第一基準値と第二基準値は、ADC MAXの値と0の値との間に設けられた2つの基準値であり、第一基準値よりも第二基準値の値が大きい(第一基準値<第二基準値)。一例としては、第一基準値と第二基準値は、アナログデジタルコンバータの出力する0~ADC MAXまでの値の範囲を3等分する各基準値であってよい。
【0025】
測定装置1は、キャリブレーションを行うことの指示を検出すると、送信アンテナと受信アンテナの各アンテナ対ANT1~ANTxのそれぞれについて受信信号に基づいて、アナログデジタルコンバータの出力した受信値を取得する。測定装置1は各受信値の示す振幅または位相が、図5で示すように第二基準値からADC MAXの間(例えば第二基準値以上、ADC MAX以下)である場合には、各アンテナ対ANT1~ANTxの受信値の示す振幅または位相が第二基準値と補正されるための調整値を、複数の受信アンテナにおける所定の数の異なる周波数の各受信値、または、一つまたは複数の受信アンテナにおける一つの周波数の各受信値の少なくとも一方についてそれぞれ算出して、測定に利用する。
具体的には測定装置1は、各受信値が、図5で示すように第二基準値からADC MAXの間(例えば第二基準値以上、ADC MAX以下)である場合であって、調整値が振幅に関する調整値である場合には、受信電波の信号が受信回路14において増幅または減衰されて、デジタルコンバータからの出力値に基づく振幅が、振幅に関する第二基準値となるよう各受信回路14の機能を調整するための調整値を、複数の受信アンテナにおける所定の数の異なる周波数の各受信値、または、一つまたは複数の受信アンテナにおける一つの周波数の各受信値の少なくとも一方についてそれぞれ算出して、測定に利用する。
また測定装置1は、各受信値が、図5で示すように第二基準値からADC MAXの間(例えば第二基準値以上、ADC MAX以下)である場合であって、調整値が位相に関する調整値である場合には、受信電波の信号が受信回路14において増幅または減衰されて、デジタルコンバータからの出力値に基づく位相のずれが、位相に関する第二基準値となるよう各受信回路14の機能を調整するための調整値を、複数の受信アンテナにおける所定の数の異なる周波数の各受信値、または、一つまたは複数の受信アンテナにおける一つの周波数の各受信値の少なくとも一方についてそれぞれ算出して、測定に利用する。
【0026】
図6は第二のキャリブレーション処理の概要を示す図である。
ADC MAX、第一基準値、第二基準値は、図5における説明と同様である。
測定装置1は、キャリブレーションを行うことの指示を検出すると、送信アンテナと受信アンテナの各アンテナ対ANT1~ANTxのそれぞれについて受信信号に基づいて、アナログデジタルコンバータの出力した受信値を取得する。測定装置1は各受信値のうちの最も低い受信値の示す振幅または位相が、図6で示すように第一基準値以上、第二基準値未満である場合には、各アンテナ対ANT1~ANTxの受信値の示す振幅または位相が、第一基準値から第二基準値の間の値の最も低い値の受信値の示す振幅または位相の値となるための調整値を、複数の受信アンテナにおける所定の数の異なる周波数の各受信値、または、一つまたは複数の受信アンテナにおける一つの周波数の各受信値の少なくとも一方についてそれぞれ算出して、測定に利用する。
具体的には測定装置1は、受信値のうちの何れかの最も低い受信値が、図6で示すように第一基準値から第二基準値の間の値である場合であって、調整値が振幅に関する調整値である場合には、受信電波の信号が受信回路14において減衰されて、デジタルコンバータからの出力値に基づく振幅が、第一基準値から第二基準値の間の最も低い値の受信値の示す振幅の値と一致するよう各受信回路14の機能を調整するための調整値を、複数の受信アンテナにおける所定の数の異なる周波数の各受信値、または、一つまたは複数の受信アンテナにおける一つの周波数の各受信値の少なくとも一方についてそれぞれ算出して、測定に利用する。
また測定装置1は、受信値のうちの何れかの最も低い受信値が、図6で示すように第一基準値から第二基準値の間の値である場合であって、調整値が位相に関する調整値である場合には、受信電波の信号が受信回路14において減衰されて、デジタルコンバータからの出力値に基づく位相が、第一基準値から第二基準値の間の最も低い値の受信値の示す位相の値と一致するよう各受信回路14の機能を調整するための調整値を、複数の受信アンテナにおける所定の数の異なる周波数の各受信値、または、一つまたは複数の受信アンテナにおける一つの周波数の各受信値の少なくとも一方についてそれぞれ算出して、測定に利用する。
【0027】
図7は第三のキャリブレーション処理の概要を示す図である。
ADC MAX、第一基準値、第二基準値は、図5における説明と同様である。
測定装置1は、キャリブレーションを行うことの指示を検出すると、送信アンテナと受信アンテナの各アンテナ対ANT1~ANTxのそれぞれについて受信信号に基づいて、アナログデジタルコンバータの出力した受信値を取得する。測定装置1は各受信値のうち何れかの受信値の示す振幅または位相が、図7で示すように第二基準値未満の値である場合には、工場出荷時の調整値テーブルに記録されている調整値を測定に利用する。
【0028】
測定装置1は、キャリブレーション処理において、第二振幅調整値テーブルまたは第二位相調整値テーブルいずれかを生成する場合がある。このとき測定装置1は、キャリブレーション処理において、アンテナ対ANT1~アンテナ対ANTxに含まれる受信アンテナで受信した1つの周波数についての各受信値を図5図7のように比較して、それら受信値の調整値を生成する処理を、複数の周波数について行う。または測定装置1はキャリブレーション処理において、一つのアンテナ対ANTxに含まれる受信アンテナで受信した複数の周波数についての各受信値を図5図7のように比較して、それら受信値の調整値を生成する処理を、複数のアンテナ対xについて行う。つまり、測定装置1は、各受信値と複数の基準値との関係に基づいて受信値それぞれを複数の基準値のうちの最も値の大きい基準値または受信値の最小値の何れかに合わせる調整値を、複数の受信アンテナにおける所定の数の異なる周波数の各受信値、または、一つまたは複数の受信アンテナにおける一つの周波数の各受信値の少なくとも一方についてそれぞれ算出する。
【0029】
<第一実施形態>
図8は測定装置の処理フローを示す第一の図である。
図9は測定装置の処理フローを示す第二の図である。
次に、測定装置の処理フローについて順を追って説明する。
測定装置1の制御部111は、測定装置1の電源ONを検出する(ステップS101)。その後、制御部111はキャリブレーションボタン18のONを検出する(ステップS102)。すると制御部111は、キャリブレーション処理を開始する。この時、測定装置1のユーザは、測定装置1の送信アンテナアレイ15や受信アンテナアレイ16の備わる面を、測定対象物3に近づける。一例として、送信アンテナアレイ15や受信アンテナアレイ16の備わる面と、測定対象物3の面との距離は数ミリメートル程度であってよい。ユーザは一例として、キャリブレーション処理の間、測定装置1と測定対象物3の面の所定範囲から動かすことなく待機しているものとする。制御部111は、キャリブレーション処理を開始すると、過去のキャリブレーション処理において生成された第二振幅調整値テーブルと第二位相調整値テーブルが記憶装置に記録されているかを判定する。制御部111は、過去のキャリブレーション処理において生成された第二振幅調整値テーブルと第二位相調整値テーブルが記憶装置に記録されている場合、それらの調整値テーブルを削除する(ステップS103)。
【0030】
制御部111は送信回路13に送信電波の周波数fnを設定する(ステップS104)。制御部111は周波数fnによる送信電波の出力を送信回路13に指示する(ステップS105)。送信アンテナアレイ15に含まれる各送信アンテナは、送信電波を送出する。なお、測定装置1の送信する送信電波は数ヘルツ~数十ギガヘルツ等であってよい。送信電波は測定対象物3で反射し、その反射波である受信電波を受信アンテナアレイ16に含まれる各受信アンテナで受信する(ステップS106)。なお上述したように送信アンテナと受信アンテナの対は定まっており、当該対の送信アンテナが送信した電波をその対の受信アンテナが受信するように構成されている。異なる対の送信アンテナから送出された信号の受信信号は信号処理によって除去等されていてよい。測定装置1における当該信号処理は公知の技術を用いてよい。
【0031】
受信電波は受信回路14へ入力し、受信回路14は各受信アンテナの受信電波をデジタル変換して制御回路11へ出力する。制御回路11の受信値取得部112は、各アンテナ対ANTxに含まれる受信アンテナの受信電波に関する振幅と位相の受信値を取得する。受信値取得部112は調整値算出部113へ振幅と位相の各受信値を出力する。調整値算出部113は、各受信値と第一基準値と第二基準値とを比較する(ステップS107)。つまり、調整値算出部113は、振幅に関する各受信値と、振幅に関する第一基準値と、振幅に関する第二基準値とを比較する。調整値算出部113は、位相に関する各受信値と、位相に関する第一基準値と、位相に関する第二基準値とを比較する。
【0032】
調整値算出部113は、各受信値の全てが第二基準値以上である場合には、第一のキャリブレーション処理(図5)を行うと判定する(ステップS108)。つまり調整値算出部113は、各受信値が示す振幅の全てが、振幅に関する第二基準値以上である場合には、振幅に関して第一のキャリブレーション処理(図5)を行うと判定する。調整値算出部113は、各受信値が示す位相の全てが、位相に関する第二基準値以上であるには、位相に関して第一のキャリブレーション処理(図5)を行うと判定する。
【0033】
そして調整値算出部113は、各受信値が示す振幅と、各受信値が示す位相とを、振幅、位相、それぞれに関する第二基準値に調整するための調整値を、各アンテナ対ANTxそれぞれについて算出する(ステップS109)。記録部114は、アンテナ対ANTxの識別子と、アンテナ対ANTxの調整値と、設定した周波数fnとを紐づけて第二振幅調整値テーブルに記録する(ステップS110)。つまり記録部114は、アンテナ対ANTxの識別子と、振幅に関する調整値と、設定した周波数fnとを紐づけて第二振幅調整値テーブルに記録する。また記録部114は、アンテナ対ANTxの識別子と、位相に関する調整値と、設定した周波数fnとを紐づけて第二位相調整値テーブルに記録する。そして調整値算出部113は、実際の測定時に第二振幅調整値テーブルと第二位相調整値テーブルとを利用することを示すテーブル利用フラグを記憶装置に記録する。
【0034】
調整値算出部113は、各受信値のうち最も小さい値が、第一基準値以上、第二基準値未満である場合には、第二のキャリブレーション処理(図6)を行うと判定する(ステップS111)。つまり、調整値算出部113は、各受信値が示す振幅のうち最も小さい値が、第一基準値以上、第二基準値未満である場合には、振幅に関して第二のキャリブレーション処理(図6)を行うと判定する。調整値算出部113は、各受信値が示す位相のうち最も小さい値が、第一基準値以上、第二基準値未満である場合には、位相に関して第二のキャリブレーション処理(図6)を行うと判定する。
【0035】
そして調整値算出部113は、各受信値が示す振幅を最も小さい値に調整するための調整値と、各受信値が示す位相を最も小さい値に調整するための調整値とを、各アンテナ対ANTxそれぞれについて算出する(ステップS112)。記録部114は、アンテナ対ANTxの識別子と、調整値と、設定した周波数fnとを紐づけて第二振幅調整値テーブルに記録する(ステップS113)。つまり記録部114は、アンテナ対ANTxの識別子と、振幅に関する調整値と、設定した周波数fnとを紐づけて第二振幅調整値テーブルに記録する。記録部114は、アンテナ対ANTxの識別子と、位相に関する調整値と、設定した周波数fnとを紐づけて第二位相調整値テーブルに記録する。そして調整値算出部113は、実際の測定時に第二振幅調整値テーブルと第二位相調整値テーブルとを利用することを示すテーブル利用フラグを記憶装置に記録する。
【0036】
調整値算出部113は、各受信値のうち最も小さい値が、第一基準値未満である場合には、第三のキャリブレーション処理(図7)を行うと判定する(ステップS114)。つまり、調整値算出部113は、各受信値が示す振幅のうち最も小さい値が、第一基準値未満である場合には、振幅に関して第三のキャリブレーション処理(図7)を行うと判定する。また調整値算出部113は、各受信値が示す位相のうち最も小さい値が、第一基準値未満である場合には、位相に関して第三のキャリブレーション処理(図7)を行うと判定する。そして調整値算出部113は、実際の測定時に、工場出荷時に記録された第一振幅調整値テーブルと第一位相調整値テーブルとを利用することを示すテーブル利用フラグを記憶装置に記録する。
【0037】
なお調整値算出部113の処理を補足説明すると、調整値算出部113は、各受信値が示す振幅と位相と、それらに対応する基準値とをそれぞれ比較して、振幅と位相とで、それぞれ第一のキャリブレーション処理、第二のキャリブレーション処理、第三のキャリブレーション処理の何れによるキャリブレーション処理を行うかを別々に判定する。
【0038】
制御部111は全ての周波数fnについて同じ処理を行ったかを判定する(ステップS115)。制御部111は全ての周波数fnについて同じ処理を行っていない場合には、ステップS104に戻り次の周波数fnを設定して、その後の処理を繰り返す。また制御部111は全ての周波数fnについて同じ処理を行った場合にはキャリブレーション処理を終了する(ステップS116)。制御部111はキャリブレーション処理を終了すると、ユーザに終了を報知する。例えば制御部111は所定のランプを光らせてもよいし、またはディスプレイにキャリブレーション処理が終了したことを示す情報を出力してもよい。ユーザはキャリブレーションボタン18をOFFに操作する。
【0039】
その後、制御部111は測定ボタン17のONを検出する(ステップS121)。すると制御部111は、テーブル利用フラグを読み取る。制御部111は調整部115へテーブル利用フラグを出力する。調整部115は、テーブル利用フラグに基づいて調整値テーブルを特定する(ステップS122)。つまり、調整部115は、テーブル利用フラグが第一振幅調整値テーブルと第一位相調整値テーブルとを利用することを示すか、第二振幅調整値テーブルと第二位相調整値テーブルとを利用することを示すかを判定する。調整部115は、テーブル利用フラグが第一振幅調整値テーブルと第一位相調整値テーブルとを利用することを示す場合、記憶装置から第一振幅調整値テーブルと第一位相調整値テーブルとを読み取る(ステップS123)。調整部115は、テーブル利用フラグが第二振幅調整値テーブルと第二位相調整値テーブルとを利用することを示す場合、記憶装置から第二振幅調整値テーブルと第二位相調整値テーブルとを読み取る(ステップS124)。調整部115は、読み取った調整値テーブルに記録されている各アンテナ対ANTxの調整値を用いて、受信回路14を調整する(ステップS125)。一例としては、調整部115は、調整値を増幅回路41に出力して信号の増幅量を調整するか、または調整値を減衰回路42に出力して信号の減衰量を調整する。または調整部115は、調整値を図示しない位相調整回路45に出力して位相を調整する。これにより、実際の測定時に、各受信アンテナで受信した受信電波による受信値が調整される。制御回路11の解析部116は、受信回路14の出力した受信値を用いて、測定対象物3を解析する(ステップS126)。当該受信値を用いた測定対象物3の解析は、公知の非破壊検査等で用いる解析手法を用いてよい。この時、解析部116は、受信回路14から取得した信号に基づいて、材質の変化(例えば、金属、木材、コンクリートなどうちの一つの材質から、それらのうちの他の材質への変化)を判定し、当該判定結果を示す測定対象物3の位置に応じた測定結果を示す色の情報をモニタ等に出力する。例えば、壁を測定している間に、木材から金属への変化を信号の強度の変化によって判定し、その測定結果をモニタ等に出力することができる。
【0040】
制御部111は測定ボタン17がOFFに操作されたかを判定する(ステップS127)。すると制御部111は測定処理を終了する。また制御部111は電源をOFFに制御する。
【0041】
以上の処理によれば、測定装置1は複数の受信アンテナにおける所定の数の異なる周波数の各受信値、または、一つまたは複数の受信アンテナにおける一つの周波数の各受信値の示す振幅または位相が、図5で示すように第二基準値以上、ADC MAX以下の間である場合には、各アンテナ対ANT1~ANTxの受信値の示す振幅または位相が第二基準値と補正されるための調整値を算出して、測定に利用する。これにより、測定対象物3における反射が大きく、受信値が飽和してしまうような値の場合は、受信値を減衰して飽和しない様にし、かつ振幅や位相の変化量が最適で取れる様な受信値に調整することができる。また、図5で示す処理により、複数の受信アンテナにおける所定の数の異なる周波数の各受信値、または、一つまたは複数の受信アンテナにおける一つの周波数の各受信値の何れか一方または両方について算出した調整値に基づいて、それら各受信値を第二基準値に合わせることができる。これにより当該各受信値が第二基準値に合わさり、できるだけ高い受信値により材質の変化を精度高く解析することができる。
【0042】
また上述の処理によれば、測定装置1は複数の受信アンテナにおける所定の数の異なる周波数の各受信値、または、一つまたは複数の受信アンテナにおける一つの周波数の各受信値のうちの最も低い受信値の示す振幅または位相が、図6で示すように第一基準値以上、第二基準値未満である場合には、各アンテナ対ANT1~ANTxの受信値の示す振幅または位相が、第一基準値から第二基準値の間の値の最も低い値の受信値の示す振幅または位相の値となるための調整値を算出して、測定に利用する。これにより、測定対象物3における反射が小さく、増幅しても受信値の最小値が第一基準値以上、第二基準値未満であるような場合に、それ以上増幅できない最小の受信値に、他の受信値を合わせることで、材質の変化を精度高く解析することができる。
【0043】
また上述の処理によれば、測定装置1は各受信値のうち何れかの受信値の示す振幅または位相が、図7で示すように第二基準値未満の値である場合には、工場出荷時の調整値テーブルに記録されている調整値を測定に利用する。これにより、測定対象物3における反射が小さく何れかの受信値が第一基準値未満であるような場合、工場出荷時に記録された信頼性がある調整値を使用して測定を行うことができる。
【0044】
また上述の処理によれば、各アンテナ対ANTxの受信値を基準に合わせるため、アンテナ対ANTxごとの測定誤差が少ない精度の良い測定を実施することができる。
【0045】
上述の処理においては、複数のアンテナ対ANT1~ANTxの各受信アンテナで受信したある特定の周波数の電波の受信値を第一基準値および第二基準値と比較して、第一から第三のキャリブレーション処理の何れを行うかを判定している。しかしながら、一つのアンテナ対ANTxの受信アンテナで受信したf1~fnの各周波数の受信値を第一基準値および第二基準値と比較して、第一から第三のキャリブレーション処理の何れを行うかを判定してもよい。
【0046】
<第二実施形態>
上述の処理においては、測定装置1の制御回路11が内部で各調整値を算出している。しかしながら、測定装置1に通信接続された端末2において上述の処理と同様に調整値を算出して、各調整値テーブルの生成や、テーブル利用フラグの記録を行うようにしてもよい。この場合、制御回路11は、ステップS106で受信した各受信アンテナの受信電波の信号を、端末へ出力する。端末は各受信アンテナの受信電波の信号を取得し、ステップS107からステップS112の処理を行って、各受信値が示す振幅を最も小さい値に調整するための調整値と、各受信値が示す位相を最も小さい値に調整するための調整値とを、各アンテナ対ANTxそれぞれについて算出する。そして端末は、算出した各調整値を、制御回路11へ出力する。制御回路11は、上述のステップS113以降の処理を行う。
【0047】
<他の実施形態>
上述の実施形態においては、測定装置1は、複数の送信アンテナから測定対象物3に送信した電波の反射波の送信アンテナに対応する複数の受信アンテナにおける受信値をそれぞれ取得する。そして測定装置1は、受信値それぞれと受信値の最小値と最大値の間に設けた当該受信値に関する複数の異なる基準値とを比較し、受信値と複数の基準値との関係に基づいて受信値それぞれを複数の基準値のうちの最も値の大きい基準値または受信値の最小値の何れかに合わせる増幅量または減衰量を示す調整値を受信アンテナごとに算出する。そして測定装置1は、受信値を調整する調整値を受信アンテナごとに算出した調整値を記録する。
【0048】
当該実施形態において、受信値は受信アンテナにおける反射波の振幅の大きさを表す値であり、測定装置1は、送信アンテナが送信する電波の周波数ごとに、振幅の大きさを表す受信値それぞれを振幅の大きさを表す複数の基準値のうちの最も値の大きい基準値または受信値の最小値の何れかに合わせる前記調整値を算出している。そして、測定装置1は、振幅の大きさを表す受信値を調整する調整値を受信アンテナごとに算出して記録している。
【0049】
または当該実施形態において、受信値は受信アンテナにおける反射波の位相のずれを表す値である。測定装置1は、送信アンテナが送信する電波の周波数ごとに、位相のずれを表す受信値それぞれを位相のずれを表す複数の基準値のうちの最も値の大きい基準値または受信値の最小値の何れかに合わせる調整値を算出している。そして、測定装置1は、位相のずれを表す受信値を調整する調整値を受信アンテナごとに算出して記録している。
【0050】
上述の実施形態において、基準値は第一基準値と、それよりも大きい第二基準値とを、アナログデジタルコンバータの出力する0~ADC MAXまでの値の範囲を3等分するように設定している。そして、測定装置1は、第一キャリブレーション処理においては最も値の大きい第二基準値に各アンテナ対ANTxの受信値を合わせる調整値を算出している。また測定装置1は第二キャリブレーション処理においては各アンテナ対ANTxの受信値のうちの最小値の値に各アンテナ対ANTxの受信値を合わせる調整値を算出している。
【0051】
しかしながら、測定装置1は、アナログデジタルコンバータの出力する0~ADC MAXまでの値の範囲を4等分以上に分けるような3つ以上の基準値を設定し、それらの基準値と、各アンテナ対ANTxの受信値とを比較して、受信値と複数の基準値との関係に基づいて受信値それぞれを複数の基準値のうちの最も値の大きい基準値または受信値の最小値の何れかに合わせる増幅量または減衰量を示す調整値を受信アンテナごとに算出するようにしてもよい。
【0052】
図10はキャリブレーション装置の最小構成を示す図である。
図11は最小構成のキャリブレーション装置の処理フローを示す図である。
キャリブレーション装置100は、受信値取得手段、調整値算出手段、記録手段の各機能を備える。
そして受信値取得手段は、一つまたは複数の送信アンテナから測定対象物3に送信した一つまたは複数の周波数の電波の反射波の送信アンテナに対応する一つまたは複数の受信アンテナにおける受信値をそれぞれ取得する(ステップS201)。
調整値算出手段は、受信値それぞれと受信値の最小値と最大値の間に設けた当該受信値に関する複数の異なる基準値とを比較し、受信値と複数の基準値との関係に基づいて受信値それぞれを複数の基準値のうちの最も値の大きい基準値または受信値の最小値の何れかに合わせる増幅量または減衰量を示す調整値を、複数の受信アンテナにおける所定の数の異なる周波数の各受信値、または、一つまたは複数の受信アンテナにおける一つの周波数の各受信値の少なくとも一方についてそれぞれ算出する(ステップS202)。
記録手段は、算出された調整値を記録する(ステップS203)。
【0053】
上述の各測定は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0054】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0055】
1・・・測定装置
2・・・端末
3・・・測定対象物
4・・・電力供給元
11・・・制御回路
12・・・電源回路
13・・・送信回路
14・・・受信回路
15・・・送信アンテナアレイ
16・・・受信アンテナアレイ
17・・・測定ボタン
18・・・キャリブレーションボタン
100・・・キャリブレーション装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11