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  • 特開-光軸調整用ネジ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035625
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】光軸調整用ネジ
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/068 20060101AFI20220225BHJP
   F16B 35/00 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
B60Q1/068 100
F16B35/00 J
F16B35/00 Q
F16B35/00 Y
F16B35/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020140087
(22)【出願日】2020-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100116942
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 雅信
(74)【代理人】
【識別番号】100167704
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 裕人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼須 良平
(72)【発明者】
【氏名】大石 和民
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339BA01
3K339BA13
3K339BA18
3K339BA26
3K339BA28
3K339CA01
3K339GA14
3K339GB01
3K339GC04
3K339GC05
3K339HA09
3K339HA12
3K339HA13
3K339HA14
3K339HA15
3K339HA16
3K339LA02
3K339LA03
(57)【要約】
【課題】 製造コストの高騰を来すことなくギヤ部の強度の向上を図る。
【解決手段】 ランプハウジングとカバーによって構成された灯具外筐の内部に配置されたランプユニットの光源から出射される光の照射方向を調整する光軸調整用ネジにおいて、ランプユニットに設けられたナットに螺合されるネジ部とランプハウジングに回転可能に支持される被支持軸部とを有するシャフト部と、シャフト部の軸方向における一端に連続され径がシャフト部の径より大きくされた被操作部とを備え、シャフト部と被操作部が樹脂材料によって一体に形成され、被操作部には軸方向における一方の面側にギヤ部が形成され、ギヤ部は周方向において交互に連続された複数の凸部と複数の凹部とによって形成され、凸部と凹部は径方向における幅が周方向における幅より大きくされている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプハウジングとカバーによって構成された灯具外筐の内部に配置されたランプユニットの光源から出射される光の照射方向を調整する光軸調整用ネジであって、
前記ランプユニットに設けられたナットに螺合されるネジ部と前記ランプハウジングに回転可能に支持される被支持軸部とを有するシャフト部と、
前記シャフト部の軸方向における一端に連続され径が前記シャフト部の径より大きくされた被操作部とを備え、
前記シャフト部と前記被操作部が樹脂材料によって一体に形成され、
前記被操作部には軸方向における一方の面側にギヤ部が形成され、
前記ギヤ部は周方向において交互に連続された複数の凸部と複数の凹部とによって形成され、
前記凸部と前記凹部は径方向における幅が周方向における幅より大きくされた
光軸調整用ネジ。
【請求項2】
前記被操作部には軸方向における他方の面側に被操作用突部が設けられ、
前記被操作部における前記被操作用突部の周囲には前記被操作用突部が突出された側に開口された凹状部が形成された
請求項1に記載の光軸調整用ネジ。
【請求項3】
少なくとも前記被操作部はセルロースナノファイバーが含有された樹脂材料によって形成された
請求項1又は請求項2に記載の光軸調整用ネジ。
【請求項4】
前記シャフト部には前記ランプハウジングの一部に係合され前記シャフト部の前記ランプハウジングに対する軸方向への移動を規制する弾性係合部が設けられ、
前記シャフト部はセルロースナノファイバーが含有されない樹脂材料によって形成された
請求項3に記載の光軸調整用ネジ。
【請求項5】
前記ギヤ部は軸方向において前記一方の面に近付くに従って外径が大きくなる形状に形成された
請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載の光軸調整用ネジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランプユニットの光源から出射される光の照射方向を調整する光軸調整用ネジについての技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌用前照灯には、例えば、カバーとランプハウジングによって構成された灯具外筐の内部に光源を有するランプユニットが配置されたものがある。
【0003】
このようなランプユニットを備えた車輌用前照灯には、光軸調整機構によって光源から出射される光の照射方向の調整である光軸調整(エイミング調整)が可能にされたものがあり、光軸調整機構は少なくとも一つずつの光軸調整用ネジとピボット部材を有している(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
光軸調整用ネジは、ネジ部と被支持軸部と弾性係合部を有し前後に延びるシャフト部とシャフト部の後端に連続されギヤ部を有する被操作部とを備え、ネジ部がランプユニットに設けられたナットに螺合され、被支持軸部がランプハウジングに回転可能に支持され、弾性係合部がランプハウジングの一部に係合され、被操作部がランプハウジングの後側に位置される。光軸調整用ネジはギヤ部が周方向において交互に連続された複数の凸部と複数の凹部とによって形成され、金属材料又は樹脂材料によって形成されている。ピボット部材は前後両端部がそれぞれランプユニットとランプハウジングに連結され、ランプハウジングに対して任意の方向へ回転可能にされている。
【0005】
光軸調整用ネジは弾性係合部がランプハウジングの一部に係合されることによりランプハウジングに対して軸方向への移動が規制された状態でドライバー等の治具によって軸回り方向へ回転される。光軸調整用ネジの軸回り方向への回転は、ランプハウジングの外側においてドライバー等の治具が、例えば、上方側からギヤ部の凹部に挿入されて凸部に係合され治具の回転によってギヤ部が操作されることにより行われる。
【0006】
ギヤ部が操作されて光軸調整用ネジが軸回り方向へ回転されると、ネジ部に螺合されているナットが光軸調整用ネジの回転方向に応じて前後方向へ送られ、ランプユニットがピボット部材を支点としてランプハウジングに対して傾動され光源から出射される光の照射方向の調整が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-139140号公報
【特許文献2】特開2008-243604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記したように、光軸調整用ネジのギヤ部は金属材料又は樹脂材料によって形成されており、光軸調整が行われるときには金属材料又は樹脂材料によって形成されたギヤ部にドライバー等の治具が係合される。
【0009】
金属材料は樹脂材料より強度が高いが厚みが薄くなり易いため、治具が上方側からギヤ部に係合されるときに治具の先端部が誤って凸部に接触してしまうと、凸部が変形するおそれがある。また、シャフト部は樹脂材料によって形成されることが多いが、ギヤ部を含む被操作部が金属材料によって形成される構成にされた場合には、光軸調整用ネジをインサート成形等によって形成する必要があり、製造コストが高くなる可能性がある。
【0010】
一方、被操作部が樹脂材料によって形成される場合には製造コストの低減を図ることが可能であるが、金属材料によって形成された場合に比し強度が低くなり易いため、治具が上方側からギヤ部に係合されて操作されるときに、削れや破損が生じるおそれがある。
【0011】
そこで、本発明光軸調整用ネジは、製造コストの高騰を来すことなくギヤ部の強度の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1に、本発明に係る光軸調整用ネジは、ランプハウジングとカバーによって構成された灯具外筐の内部に配置されたランプユニットの光源から出射される光の照射方向を調整する光軸調整用ネジであって、前記ランプユニットに設けられたナットに螺合されるネジ部と前記ランプハウジングに回転可能に支持される被支持軸部とを有するシャフト部と、前記シャフト部の軸方向における一端に連続され径が前記シャフト部の径より大きくされた被操作部とを備え、前記シャフト部と前記被操作部が樹脂材料によって一体に形成され、前記被操作部には軸方向における一方の面側にギヤ部が形成され、前記ギヤ部は周方向において交互に連続された複数の凸部と複数の凹部とによって形成され、前記凸部と前記凹部は径方向における幅が周方向における幅より大きくされたものである。
【0013】
これにより、ギヤ部を有する被操作部が樹脂材料によってシャフト部と一体に形成されると共に凸部と凹部は径方向における幅が周方向における幅より大きくされて径方向に延びる形状にされる。
【0014】
第2に、上記した本発明に係る光軸調整用ネジにおいては、前記被操作部には軸方向における他方の面側に被操作用突部が設けられ、前記被操作部における前記被操作用突部の周囲には前記被操作用突部が突出された側に開口された凹状部が形成されることが望ましい。
【0015】
これにより、被操作用突部の突出量が大きくなり、治具の被操作用突部に対する係合面積を大きくすることが可能になる。
【0016】
第3に、上記した本発明に係る光軸調整用ネジにおいては、少なくとも前記被操作部はセルロースナノファイバーが含有された樹脂材料によって形成されることが望ましい。
【0017】
これにより、セルロースナノファイバーによって被操作部の強度が高くなる。
【0018】
第4に、上記した本発明に係る光軸調整用ネジにおいては、前記シャフト部には前記ランプハウジングの一部に係合され前記シャフト部の前記ランプハウジングに対する軸方向への移動を規制する弾性係合部が設けられ、前記シャフト部はセルロースナノファイバーが含有されない樹脂材料によって形成されることが望ましい。
【0019】
これにより、被操作部にセルロースナノファイバーが含有されることにより被操作部の強度が高くなると共にシャフト部にセルロースナノファイバーが含有されないことにより弾性係合部が弾性変形し易くなる。
【0020】
第5に、上記した本発明に係る光軸調整用ネジにおいては、前記ギヤ部は軸方向において前記一方の面に近付くに従って外径が大きくなる形状に形成されることが望ましい。
【0021】
これにより、治具をランプハウジングから離隔させた状態で光軸調整作業を行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ギヤ部を有する被操作部が樹脂材料によってシャフト部と一体に形成されると共に凸部と凹部は径方向における幅が周方向における幅より大きくされて径方向に延びる形状にされるため、製造コストの高騰を来すことなくギヤ部の強度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図2乃至図5と共に本発明光軸調整用ネジの実施の形態を示すものであり、本図は、光軸調整用ネジが用いられる車輌用前照灯の一例を示す縦断面図である。
図2】光軸調整用ネジの側面図である。
図3】光軸調整用ネジの斜視図である。
図4図3とは異なる方向から見た状態で示す光軸調整用ネジの斜視図である。
図5】治具によって被操作部が操作されている状態を一部を断面にして示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明光軸調整用ネジを実施するための形態について添付図面を参照して説明する。
【0025】
まず、光軸調整用ネジが用いられる車輌用前照灯の概略構成について説明する(図1参照)。
【0026】
車輌用前照灯1は、それぞれ車体の前端部における左右両端部に取り付けられて配置されている。
【0027】
車輌用前照灯1は前方に開口する凹部を有するランプハウジング2とランプハウジング2の開口を閉塞するカバー3とを備えている。ランプハウジング2とカバー3によって灯具外筐4が構成され、灯具外筐4の内部空間が灯室4aとして形成されている。灯室4aの前端部にはエクステンション5が配置されている。エクステンション5によって灯室4aに配置される構造の一部が前方から遮蔽される。
【0028】
ランプハウジング2の後端部には前後に貫通されたネジ支持孔2a、2aが上下に離隔して形成されている(図1に上側のネジ支持孔のみ示す。)。ランプハウジング2の後端部にはネジ支持孔2aの近傍にそれぞれ後方に突出されたガイド壁部6、6が設けられている(図1に一方のガイド壁部のみ示す。)。ガイド壁部6は左右に離隔して位置された一対の傾斜部6a、6aを有し、傾斜部6a、6aは下方へ行くに従って互いに近付くように傾斜されている。
【0029】
ランプハウジング2の下端部にはピボット連結部7が設けられている。ピボット連結部7は前後に延び前方に開口された形状に形成され、前端寄りの位置に球面支持部7aを有している。
【0030】
灯室4aにはランプユニット8が配置されている。ランプユニット8は前方に開口された形状のリフレクター9とリフレクター9の後端側に配置された光源10とを有し、ランプハウジング2に光軸調整機構11によって傾動可能に支持されている。尚、ランプユニット8は投影レンズ等を有するプロジェクタータイプであってもよい。
【0031】
リフレクター9はエクステンション5の後側において前端部がエクステンション5の近傍に位置された状態で配置されている。リフレクター9には上下に離隔して位置されたナット連結部12、12(図1に一方のナット連結部のみ示す。)と下端側に位置されたピボット連結部13とが設けられている。ナット連結部12には前後に貫通された連結孔12aが形成されている。ピボット連結部13は一方のナット連結部12の真下に位置されている。
【0032】
ナット連結部12、12にはそれぞれナット14、14が連結されている。ナット14は前後に貫通された筒状に形成され、内面に螺合部14aを有している。ナット14は連結孔12aに挿通された状態でナット連結部12に連結され、ナット連結部12に対して任意の方向へ傾動可能にされている。
【0033】
光軸調整機構11はピボット部材15と二つの光軸調整用ネジ16、16とによって構成されている。
【0034】
ピボット部材15は軸部15aと軸部15aの前端部に設けられた連結部15bと軸部15aの後端部に設けられた球状部15cとを有している。ピボット部材15は連結部15bがリフレクター9のピボット連結部13に連結され球状部15cがランプハウジング2におけるピボット連結部7の球面支持部7aに回転可能な状態で支持されている。
【0035】
光軸調整用ネジ16は、前後に延びる軸状に形成されたシャフト部17とシャフト部17の後端に連続する被操作部18とから成り、シャフト部17と被操作部18が樹脂材料によって一体に形成されて成る(図2乃至図4参照)。
【0036】
シャフト部17は前側から順にネジ部19と中間部20と弾性係合部21と被支持軸部22が連続して設けられている。
【0037】
弾性係合部21は軸方向において中間部20から離隔するに従って径が大きくなる形状に形成されている。中間部20から弾性係合部21に亘る位置には径方向に開口された溝部23、23、・・・が周方向に等間隔に離隔して形成されている。弾性係合部21の後面は被規制面21aとして形成されている。
【0038】
被支持軸部22には、弾性係合部21側の端部に周方向に延びる被支持溝22aが形成され、被支持溝22aの後側に連続してリング取付溝22bが形成され、被支持溝22aの深さがリング取付溝22bの深さより深くされている。
【0039】
被操作部18はシャフト部17に対して外方(径方向)へ張り出された形状に形成されている。被操作部18は略円板状のベース部24とベース部24の前面側に形成されたギヤ部25とベース部24の後面から後方に突出された被操作用突部26とから成る。
【0040】
ベース部24には外周部を除く部分に後方に開口された凹状部24aが形成されている。
【0041】
ギヤ部25は周方向において交互に連続された凸部25a、25a、・・・と凹部25b、25b、・・・によって形成されている。凸部25aと凹部25bはそれぞれ径方向における幅H1、H3が周方向における幅H2、H4より大きくされている(図3参照)。凸部25aの先端面は緩やかな曲面に形成され、凹部25bを形成する底面も緩やかな曲面に形成されている。
【0042】
ギヤ部25は軸方向においてシャフト部17に近付くに従って外径が大きくなる形状に形成されている(図2参照)。従って、ギヤ部25は基端25cの外径R1より先端25dの外径R2が大きくされ、凸部25aと凹部25bが径方向に対して稍後下がりに傾斜する方向に延びる状態にされている。
【0043】
被操作用突部26はベース部24の中央部から後方に突出されている。従って、被操作用突部26の周囲にはベース部24に形成された凹状部24aが位置されている(図4参照)。被操作用突部26は外形状が、例えば、六角形状に形成され、スパナーやレンチ等の治具が係合される部分である。
【0044】
上記のように構成された光軸調整用ネジ16を形成する樹脂としては、例えば、ナイロン等のポリアミド系の合成樹脂が用いられている。光軸調整用ネジ16において、例えば、被操作部18はセルロースナノファイバーが含有された樹脂材料によって形成され、シャフト部17はセルロースナノファイバーが含有されない樹脂材料によって形成されている。但し、光軸調整用ネジ16は全体がセルロースナノファイバーが含有された樹脂材料によって形成されていてもよい。
【0045】
セルロースナノファイバーは軽量かつ高強度で環境性能に優れる他、熱変形が小さい等の特性を有する植物繊維由来のバイオマス素材である。特に、セルロースナノファイバーがナイロン等の熱可塑性樹脂に含有されることにより、成形品の高い強度が確保され耐衝撃性の向上が図られる。
【0046】
光軸調整用ネジ16、16はそれぞれランプハウジング2に回転可能に支持される(図1及び図5参照)。光軸調整用ネジ16はシャフト部17がネジ支持孔2aに後方から挿入されてランプハウジング2に支持される。光軸調整用ネジ16のリング取付溝22bにはオーリング27が外嵌状に取り付けられる。
【0047】
ネジ支持孔2aに弾性係合部21が挿入されるときには、弾性係合部21がネジ支持孔2aの開口縁に摺接してシャフト部17に近付く方向へ弾性変形される。弾性係合部21は全体がネジ支持孔2aを挿通されたときに弾性復帰して規制面21aがネジ支持孔2aの前側開口縁に接する。また、弾性係合部21の規制面21aがネジ支持孔2aの前側開口縁に接した状態において、オーリング27がネジ支持孔2aの後側開口縁に密着される。従って、光軸調整用ネジ16のランプハウジング2に対する軸方向への移動が規制されると共にオーリング27がランプハウジング2の後面に密着されてネジ支持孔2aからの灯室4aへの水分の侵入が防止される。
【0048】
光軸調整用ネジ16はネジ部19がリフレクター9のナット連結部12に連結されたナット14の螺合部14aに螺合される(図1参照)。
【0049】
車輌用前照灯1において、光軸調整用ネジ16が操作されて回転されると、光軸調整用ネジ16の回転方向に応じた方向(前後方向)へナット14が送られてナット14の移動に伴ってランプユニット8がランプハウジング2に対して傾動される。光軸調整用ネジ16の回転は、例えば、ドライバー等の治具50によって被操作部18のギヤ部19が回転操作されることにより行われる(図5参照)。
【0050】
上側に位置する光軸調整用ネジ16が回転されると、下側に位置するナット14とピボット部材15の球状部15cとを支点としてランプユニット8がランプハウジング2に対して上下方向へ傾動され上下方向における光軸調整(エイミング調整)が行われる。
【0051】
一方、下側に位置する光軸調整用ネジ16が回転されると、上側に位置するナット14とピボット部材15の球状部15cとを支点としてランプユニット8がランプハウジング2に対して左右方向へ傾動され左右方向における光軸調整(エイミング調整)が行われる。
【0052】
上記のように光軸調整が行われるときには、ドライバー等の治具50がランプハウジング2のガイド壁部6、6に案内されてギヤ部19に係合される。このときギヤ部25は基端25cの外径R1より先端25dの外径R2が大きくされて凸部25aと凹部25bが径方向に対して稍後下がりに傾斜する方向に延びる状態にされているため、治具50を凸部25aと凹部25bに沿って稍後下がりに傾斜した状態で凹部25bに挿入することが可能にされている。
【0053】
このように、光軸調整用ネジ16はギヤ部19が径方向に対して傾斜されているため、ギヤ部19に治具50を傾斜した状態で係合させたときに治具50のギヤ部19に対する良好な係合状態が確保される。従って、治具50をランプハウジング2から離隔させた状態で光軸調整作業を行うことが可能になり、治具50のランプハウジング2との接触を回避して作業性の向上を図ることができると共にランプハウジング2の傷付きを防止することができる。
【0054】
尚、車輌用前照灯1においては、被操作用突部26にスパナーやレンチ等の治具を係合し治具によって光軸調整用ネジ16を回転して光軸調整が行われてもよい。
【0055】
以上に記載した通り、光軸調整用ネジ16にあっては、シャフト部17と被操作部18が樹脂材料によって一体に形成され、被操作部18にはギヤ部25が形成され、ギヤ部25は周方向において交互に連続された凸部25a、25a、・・・と凹部25b、25b、・・・によって形成され、凸部25aと凹部25bは径方向における幅H1、H3が周方向における幅H2、H4より大きくされている。
【0056】
従って、ギヤ部25を有する被操作部18が樹脂材料によってシャフト部17と一体に形成されると共に凸部25aと凹部25bは径方向における幅H1、H3が周方向における幅H2、H4より大きくされて径方向に延びる形状にされるため、製造コストの高騰を来すことなくギヤ部25の強度の向上を図ることができる。
【0057】
特に、ギヤ部が金属材料によって形成されている場合にはギヤ部の厚みが薄くなり易いため、治具50が上方側からギヤ部に係合されるときに治具50の先端部が誤って凸部に接触したときに凸部が変形するおそれがあるが、光軸調整用ネジ16のように凸部25aが径方向に延びる形状に形成されることにより、治具50の先端部が誤って凸部25aに接触した場合にも凸部25aが変形し難い。
【0058】
また、シャフト部が樹脂材料によって形成され被操作部が金属材料によって形成される構成にされた場合には、光軸調整用ネジをインサート成形等によって形成する必要があり、製造コストが高くなる可能性があるが、光軸調整用ネジ16のようにシャフト部17と被操作部18が樹脂材料によって一体に形成されることにより製造コストの低減を図ることが可能になる。
【0059】
さらに、光軸調整用ネジ16においては、被操作部18に被操作用突部26が設けられ、被操作部18における被操作用突部26の周囲に凹状部24aが形成されている。
【0060】
従って、被操作用突部26の突出量が大きくなり、スパナーやレンチ等の治具の被操作用突部26に対する係合面積を大きくすることが可能になり、光軸調整用ネジ16の軸方向における長さを短縮化した上で光軸調整作業における作業性の向上を図ることができる。
【0061】
さらにまた、光軸調整用ネジ16において、少なくとも被操作部18はセルロースナノファイバーが含有された樹脂材料によって形成されている。
【0062】
従って、セルロースナノファイバーによって被操作部18の強度が高くなり、ギヤ部25に治具50が係合されたときのギヤ部25の破損が防止され、光軸調整作業において適正な作業性を確保することができる。
【0063】
加えて、シャフト部17にはランプハウジング2の一部に係合されシャフト部17のランプハウジング2に対する軸方向への移動を規制する弾性係合部21が設けられ、シャフト部17はセルロースナノファイバーが含有されない樹脂材料によって形成されている。
【0064】
従って、被操作部18にセルロースナノファイバーが含有されることにより被操作部18の強度が高くなると共にシャフト部17にセルロースナノファイバーが含有されないことにより弾性係合部21が弾性変形し易くなり、ギヤ部25の高い強度を確保した上で弾性係合部21の変形時における破損を防止することができる。
【符号の説明】
【0065】
1…車輌用前照灯、2…ランプハウジング、3…カバー、4…灯具外筐、10…光源、14…ナット、16…光軸調整用ネジ、17…シャフト部、18…被操作部、19…ネジ部、20…中間部、21…弾性係合部、22…被支持軸部、24a…凹状部、25…ギヤ部、25a…凸部、25b…凹部、26…被操作用突部
図1
図2
図3
図4
図5