(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035636
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】ホース用継手の締付ホルダー、ホース用継手のニップルおよびホース用継手
(51)【国際特許分類】
F16L 33/22 20060101AFI20220225BHJP
F16L 33/00 20060101ALI20220225BHJP
F16L 33/28 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
F16L33/22
F16L33/00 B
F16L33/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020140102
(22)【出願日】2020-08-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 送付年月日 令和2年6月8日、兼松エンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000221502
【氏名又は名称】東拓工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南 一行
(72)【発明者】
【氏名】宇賀 寛文
(72)【発明者】
【氏名】織邊 健一
【テーマコード(参考)】
3H017
【Fターム(参考)】
3H017BA01
3H017CA03
3H017HA09
(57)【要約】
【課題】耐圧性能を高めたホース用継手用の締付ホルダーを提供する。
【解決手段】螺旋波形ホース10の端部に挿入されるニップル20と、そのニップル20を挿入した螺旋波形ホース10の外周面を締め付ける締付ホルダー30とを備えたホース用継手1の締付ホルダー30。締付ホルダー30は、周方向に複数に分割された一組の分割体から構成されている筒状の本体部31と、前記本体部31の外周に各分割体同士を結合するための連結部32とを有する。本体部31の内面には、その先端を閉じるように設けられた内フランジ部36と、螺旋溝37と、内フランジ部36から螺旋溝37に向かって延びる複数の補強リブ38とを備えている。各分割体30aは少なくとも1つの補強リブ38を備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋波形ホースの端部に挿入されるニップルと、そのニップルを挿入した螺旋波形ホースの外周面を締め付ける締付ホルダーとを備えたホース用継手の締付ホルダーであって、
周方向に複数に分割された一組の分割体から構成されている筒状の本体部と、前記本体部の外周に各分割体同士を結合するための連結部とを有し、
前記本体部の内面には、その先端を閉じるように設けられた内フランジ部と、螺旋溝と、前記内フランジ部から前記螺旋溝に向かって延びる複数の補強リブとを備えており、
前記分割体が少なくとも1つの補強リブを備えている、
締付ホルダー。
【請求項2】
前記補強リブは、前記分割体の内面に周方向に間隔を空けて複数設けられている、
請求項1記載の締付ホルダー。
【請求項3】
前記本体部が、3つまたは4つに分割された一組の分割体から構成されている、
請求項1または2記載の締付ホルダー。
【請求項4】
前記螺旋波形ホースの外径が50mmより大きい、
請求項1または2記載の締付ホルダー。
【請求項5】
軽金属製である、
請求項1から4のいずれかに記載の締付ホルダー。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の締付ホルダーと、螺旋波形ホースの端部に挿入されるニップルとを有する、
ホース用継手。
【請求項7】
螺旋波形ホースの端部に挿入されるニップルと、そのニップルを挿入した螺旋波形ホースの外周面を締め付ける締付ホルダーとを備えたホース用継手のニップルであって、
前記螺旋波形ホースの端部に挿入される筒状部と、
他の接続体と接続するための接続部と、
前記筒状部の基部の外周面に設けられる係止部とを有し、
前記係止部は、前記筒状体の基部の外周面に周方向に間隔を空けて設けられた複数の突起部から構成されている、
ニップル。
【請求項8】
金属製である、
請求項7記載のニップル。
【請求項9】
請求項7または8記載のニップルと、そのニップルを挿入した螺旋波形ホースの外周面を締め付ける締付ホルダーとを備えた、
ホース用継手。
【請求項10】
螺旋波形ホースの端部に挿入されるニップルと、そのニップルを挿入した螺旋波形ホースの外周面を締め付ける締付ホルダーとを備えたホース用継手であって、
前記ニップルは、前記螺旋波形ホースの端部に挿入される筒状部と、他の接続体と接続するための接続部と、前記筒状部の基部の外周面に設けられる係止部とを有し、
前記係止部は、前記筒状体の基部の外周面に周方向に間隔を空けて設けられた複数の突起部から構成されており、
前記締付ホルダーは、周方向に複数に分割された一組の分割体から構成されている筒状の本体部と、前記本体部の外周に各分割体同士を結合するための連結部とを有し、
前記本体部の内面は、その先端を閉じるように設けられた内フランジ部と、螺旋溝と、前記内フランジ部から前記螺旋溝に向かって延びる複数の補強リブとを備えており、
前記分割体が少なくとも1つの補強リブを備えている、
ホース用継手。
【請求項11】
前記締付ホルダーを締め付ける前の状態において、
前記ニップルを中心軸周りに5度~45度回転することができる、
請求項10記載のホース用継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホース用継手の締付ホルダー、ホース用継手のニップルおよびホース用継手に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、本出願人は、特許文献1に示すように、螺旋波形ホースと、その端部に挿入されるニップルと、そのニップルを挿入した螺旋波形ホースを締め付ける締付ホルダーとを有する管端連結継手を開示している。このニップルは、軸線方向一端側に管端内に挿入される筒状部を備え、他端側に他の継手への連結部を備え、中間部に外方に突出する外フランジ部を備えている。このホルダーは、軸線方向に沿って2分割された分割体で構成され、その内周面に螺旋波形ホースの外周面に沿う螺旋溝部と、ニップルの外フランジ部と嵌合する環状溝とを有する。このように構成されているため、この管端連結継手は、接続した螺旋波形ホースの内圧が高くなっても、水漏れやホースの破裂が生じることを阻止でき、内圧の高い配管用継手として使用できる。
さらに、本出願人は、特許文献2および3に示すように、径が大きい螺旋波形ホースに対しては、ホルダーを3割体または4割体としたホース締付具を開示している。このようにホルダーを3割体または4割体とすることにより、大きな径の螺旋波形ホースであっても半径方向内側の締付力を均等にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-074281号公報
【特許文献2】意願2019-011371号
【特許文献3】意願2019-011372号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さらなる継手構造の品質を求められる中、本出願人は、ホルダーの環状溝を構成する先端側の係止壁(内フランジ部)の強度が他の部位より弱いことを見出した。例えば、接続状態で螺旋波形ホース内をホースの保証された圧力よりも極めて高圧とすることにより、アルミニウム合金製のホルダーの係止壁が変形することがあることに気づいた。特に、螺旋波形ホースの径を大きくした場合、そのような変形が顕著に表れることを見出した。
本出願は、このような課題に鑑みており、一層耐圧性能を高めた締付ホルダー、金属製ニップルおよびホース用継手を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の締付ホルダーは、螺旋波形ホースの端部に挿入されるニップルと、そのニップルを挿入した螺旋波形ホースの外周面を締め付ける締付ホルダーとを備えたホース用継手の締付ホルダーであって、周方向に複数に分割された一組の分割体から構成されている筒状の本体部と、前記本体部の外周に各分割体同士を結合するための連結部とを有し、前記本体部の内面には、その先端を閉じるように設けられた内フランジ部と、螺旋溝と、前記内フランジ部から前記螺旋溝に向かって延びる複数の補強リブとを備えており、前記分割体が少なくとも1つの補強リブを備えていることを特徴としている。
本発明の締付ホルダーは、各分割体が内フランジ部から延びる補強リブを備えているため、螺旋波形ホース内の圧力が異常に高くなっても変形したり、破壊しにくい。
【0006】
本発明の締付ホルダーであって、前記補強リブは、前記分割体の内面に周方向に間隔を空けて複数設けられているものが好ましい。この場合、一層強度が向上する。
本発明の締付ホルダーであって、前記本体部が3つまたは4つに分割された一組の分割体から構成されているものが好ましい。この場合、径が大きい螺旋波形ホースに対しても半径方向内側の押力を均等にすることができる。また現場における作業も煩雑にならない。
本発明の締付ホルダーであって、前記螺旋波形ホースの外径が50mmより大きいものが好ましい。
本発明の締付ホルダーは、軽金属製であることが好ましい。これにより締付ホルダーを軽量化でき、現場での作業性を向上させることができる。特に、径が大きくなると顕著である。
本発明のホース用継手の第1の態様は、本発明の締付ホルダーと、螺旋波形ホースの端部に挿入されるニップルとを有することを特徴としている。
【0007】
本発明のニップルは、螺旋波形ホースの端部に挿入されるニップルと、そのニップルを挿入した螺旋波形ホースの外周面を締め付ける締付ホルダーとを備えたホース用継手のニップルであって、前記螺旋波形ホースの端部に挿入される筒状部と、他の接続体と接続するための接続部と、前記筒状部の基部の外周面に設けられる係止部とを有し、前記係止部は、前記筒状体の基部の外周面に周方向に間隔を空けて設けられた複数の突起部から構成されていることを特徴としている。
本発明のニップルは、係止部が複数の突起部から構成されているため、筒状部の全周に係止部を設けるのに比べて資材の効率化を図ることができる。特に、径が大きくなると顕著である。
本発明のニップルは、金属製であることが好ましい。
本発明のホース用継手の第2の態様は、本発明のニップルと、そのニップルを挿入した螺旋波形ホースの外周面を締め付ける締付ホルダーとを備えたことを特徴としている。
【0008】
本発明のホース用継手の第3の態様は、螺旋波形ホースの端部に挿入されるニップルと、そのニップルを挿入した螺旋波形ホースの外周面を締め付ける締付ホルダーとを備えたホース用継手であって、前記ニップルは、前記螺旋波形ホースの端部に挿入される筒状部と、他の接続体と接続するための接続部と、前記筒状部の基部の外周面に設けられる係止部とを有し、前記係止部は、前記筒状体の基部の外周面に周方向に間隔を空けて設けられた複数の突起部から構成されており、前記締付ホルダーは、周方向に複数に分割された一組の分割体から構成されている筒状の本体部と、前記本体部の外周に各分割体同士を結合するための連結部とを有し、前記本体部の内面は、その先端を閉じるように設けられた内フランジ部と、螺旋溝と、前記内フランジ部から前記螺旋溝に向かって延びる複数の補強リブとを備えており、前記分割体が少なくとも1つの補強リブを備えていることを特徴としている。ホース用継手の第3の態様では、ニップルの突起部は、締付ホルダーの補強リブの間に位置する。
本発明のホース用継手の第3の態様であって、前記締付ホルダーを締め付ける前の状態において、前記ニップルを中心軸周りに5度~45度回転することができるものが好ましい。このように空間的余裕を設けることにより、現場で取付作業を行うとき、ニップルと締付ホルダーの位置調整が容易である。またニップルの接続部を他の装置に接続するときも位置調整が容易である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の締付ホルダーは、各分割体が内フランジ部から延びる補強リブを備えているため、内フランジ部に軸方向の力を受けても、内フランジ部が変形することがなく、耐圧性能が高い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1aは螺旋波形ホースに本発明のホース用継手を取り付けた状態を示す断面図であり、
図1bはそのニップルを示す斜視図であり、
図1cはその締付ホルダーを示す斜視図である。
【
図2】
図2a、bはそれぞれ
図1bのニップルを示す側面図、正面図であり、
図2cはニップルに螺旋波形ホースを取り付けた状態を示す側面図である。
【
図3】
図3a、bはそれぞれ
図1cの締付ホルダーを示す正面図、側面図であり、
図3c、dはそれぞれA-A線断面図、B―B線断面図である。
【
図4】
図4aは締付ホルダーとニップルとの関係を示す断面図であり、
図4b、
図4cはそれぞれ本発明の締付ホルダーの他の形態を示す断面図である。
【
図5】
図5a、bはそれぞれ締付ホルダーの他の形態を示す断面図であり、
図5cはその締付ホルダーとニップルとの関係を示す断面図である。
【
図6】
図6aは締付ホルダーの他の形態を示す断面図であり、
図6bはその締付ホルダーを用いたホース用継手を螺旋波形ホースに取り付けた状態を示す断面図である。
【
図7】
図1bのニップルを従来公知の他の締付ホルダーと使用したときのホース用継手と螺旋波形ホースとの接続状態を示す一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、螺旋波形ホース10にホース用継手1を取り付けた状態を示す。ホース用継手1は、螺旋波形ホース10の端部に挿入されるニップル20と、そのニップル20を挿入した螺旋波形ホース10の外周面を締め付ける締付ホルダー30とを備えている。
【0012】
[螺旋波形ホース10]
初めに、このホース用継手1が用いられる螺旋波形ホース10について説明する。
螺旋波形ホース10は、合成樹脂製のホース本体11と、その外周に設けられる螺旋状の補強芯12とを有し、全体として可撓性を有するものである。螺旋波形ホース10は、外面が補強芯12による山部(突条)とホース本体11による谷部とが交互に螺旋状に形成された波形となっている。内面は、平滑になっている。しかし、内面に微小な凹凸等が形成されていてもよい。
【0013】
ホース本体11は、本体内層11aと、本体外層11bと、その間に設けられた補強層11cとを一体化させたものである。
本体内層11aとしては、耐摩耗性に優れている材質が好ましい。例えば、耐摩耗性の熱硬化性エラストマーが好ましい。
本体外層11bとしては、熱可塑性樹脂が好ましい。例えば、軟質ポリ塩化ビニル(PVC)が好ましい。
補強層11cは、合成樹脂繊維をメッシュ状にしたものである。このような補強層11cの合成樹脂繊維としては、ポリエステル撚り糸が挙げられる。補強層11cは、流体輸送に使用されるホースとしての可撓性を保持しつつ、内圧が上昇したときのホース本体11への負荷を軽減する。
このようなホース本体11は、例えば、押出成形によって成形した本体内層11a用の帯状体を螺旋状に巻回し、その上から補強層11cを設け、さらにその上から押出成形によって成形した本体外層11b用の帯状体を巻回し、それらを溶着することによって製造することができる。
しかし、ホース本体11は、可撓性を有するものであれば、特にその構造は限定されるものではない。例えば、単層、2層構造であってもよく、4層以上であってもよい。また材質も用途に応じて適宜選択することができる。
【0014】
螺旋波形ホース10の山部(突条)を形成する補強芯12の断面形状は、外側が円弧で、内側が矩形となっている。
補強芯12の幅Wは、3~20mm、好ましくは5~15mm、特に好ましくは8~12mmである。
補強芯12の熱可塑性樹脂としては、硬質の合成樹脂が好ましい。例えば、硬質塩化ビニルや、硬質ポリエチレン、硬質ポリプロピレン等の硬質ポリオレフィンや、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル等が挙げられる。特に、ホース本体11の外層の材質とを溶着したときに接着性が良いものが好ましく、同質の合成樹脂が好ましい。例えば、ホース本体11の外層が軟質ポリ塩化ビニル(PVC)である場合、補強芯12としては硬質塩化ビニルが好ましい。なお、補強芯12とホース本体11とを強く接着させるべく、補強芯12とホース本体11との両側の境界線に沿って、一対の熱可塑性樹脂製(特に、軟質ポリ塩化ビニル)の帯状体を覆うように設けてもよい。
【0015】
螺旋波形ホース10の外径Xは、50mm~400mm、好ましくは、90mm以上、さらに好ましくは120mm以上、特に好ましくは150mm以上である。大きな外径であるほど、本発明のホース用継手の効果は高くなる。
螺旋波形ホース10の内径Yは、30~380mm、好ましくは70mm以上、さらに好ましくは100mm以上、特に好ましくは120mm以上である。
螺旋波形ホース10の山部の高さhは、3~20mm、好ましくは6~17mm、特に好ましくは8~13mmである。
螺旋波形ホース10の山部のピッチは、3~50mm、好ましくは10mm以上、さらに好ましくは15mm以上、特に好ましくは20mm以上である。
螺旋波形ホース10の常温(23℃)における耐圧性は、2MPa~10MPa、好ましくは3MPa以上、特に好ましくは4MPa以上である。ここでホースの耐圧とは、螺旋波形ホース10の開口端部を金具で閉じるように固定した状態で所定の圧力を加え、破裂することなく5分間耐えた圧力をいう。
【0016】
[ニップル20]
ニップル20は、
図2aに示すように、螺旋波形ホース10の端部に挿入される筒状部21と、他の接続体と接続するための接続部22と、筒状部21の基部の外周面に設けられる環状の係止部23とを有する。
このニップル20は、鉄、ステンレス鋼等の金属の剛性材料から成形される。
【0017】
筒状部21は、円筒形状を有し、先端部分がテーパ形状となっている。筒状部21の外周面は、滑らかに面一となっている。なお、周期的に凹凸形状が形成されていてもよいが、滑らかな面一とするのが好ましい。筒状部21の外径は、螺旋波形ホース10の内径Yと同じ、または、わずかに小さく形成されている。
接続部22は、後方に向かって拡径する傾斜部22aと、筒状の拡径部22bとを有する。この接続部22は、取付金具として、他の接続体に接続される。他の各種装置の取付部や他のホースなどが挙げられる。なお、接続部22の構造は、接続する他の接続体に応じて適宜選択される。
【0018】
係止部23は、筒状体の基部の外周面から半径方向外側に突出している複数の突起部23aから構成されている。詳しくは、
図2bに示すように、6個の突起部23aが、筒状部21の外周面に等間隔に設けられている。しかし、その数は特に限定されるものではない。なお、少なくとも対応する締付ホルダーの分割体30aの数だけ有し、それぞれの突起部23aが各分割体の内フランジ部36と対応するように設けるのが好ましい。この係止部23は、
図2cに示すように、ニップル20を螺旋波形ホース10に挿入したとき、ニップル20が所定量以上に挿入されないように、螺旋波形ホース10の先端を係止する。
突起部23aの軸方向の厚み(t)は、6~20mm、好ましくは8~16mm、特に好ましくは10~12mmである。
この突起部23aは、例えば、筒状部21の基端部分の外周面に金属製の棒材を切断しながら溶接することにより設けられる。しかし、金型によってニップル20を一体に成形してもよい。
このように突起部23aを、所定の間隔を空けて設けることにより、環状に設ける場合に比べて材料を節約することができる。なお、係止部を有さない既存のニップルに、連続した環状の係止部を設ける場合、平板をドーナツ状に切り抜いてリングを形成し、そのリングを筒状部の基部の外周面に溶接することによって形成しなければならず、径が大きくなると共に資材の歩留りが悪くなる。しかし、このように金属製の棒材を切断しながら溶接することにより、係止部を有さない既存のニップルに溶着で設ける場合でも資材の効率化を図ることができる。
【0019】
[締付ホルダー30]
締付ホルダー30は、
図3a、bに示すように、周方向に3つに分割された一組の分割体30aから構成されている筒状の本体部31と、前記本体部の外周に各分割体同士を結合するための連結部32とを有する。分割体30aは、
図3dに示すように、その内面に少なくとも一つの補強リブ38を有する。
この締付ホルダー30は、アルミニウムやアルミニウム合金、チタン合金等の軽金属やステンレス鋼等の金属の剛性材料から成形されるが、軽金属とするのが好ましい。特に、アルミニウム合金が好ましい。軽金属とすることにより、締付ホルダー30を軽量化でき、現場での作業性を向上させることができる。この効果は、締付ホルダー30の径が大きいほど顕著になる。
【0020】
本体部31は、
図3cに示すように、その先端を閉じるように設けられた内フランジ部36と、内面に設けられた螺旋溝37と、内フランジ部36から螺旋溝37に向かって延びる複数の補強リブ38とを備えている。また本体部31の外周面には、外リブ31aが形成されている(
図3b参照)。
【0021】
内フランジ部36は、ニップル20の係止部23を係止する。これにより、締付ホルダー30を取り付けたとき、ニップル20が抜けるのを防止する。内フランジ部36の厚みとしては、3~20mm、好ましくは5~15mm、特に好ましくは7~12mmである。
螺旋溝37は、螺旋波形ホース10の山部を収容する。これにより、螺旋波形ホース10の取り付け部分の全体を均等に押圧することができる。また螺旋溝37は、螺旋波形ホース10の山部との間で係止することにより、軸方向の外力に対する抜け防止としても作用する。
【0022】
補強リブ38は、
図3cに示すように、本体部31の内面に、内フランジ部36から螺旋溝37に向かって締付ホルダー30の軸方向に延びている。つまり、内フランジ部36と螺旋溝37との間に設けられている。そして、補強リブ38は、
図3dに示すように、分割体30aの内面に周方向に間隔を空けて複数設けられている。詳しくは、分割体30aの周方向の両端およびそれらの間に2つ設けられており、合計4つが周方向に間隔を空けて設けられている。なお、分割体30a同士を連結したとき、分割体30aの周方向の一端にある補強リブ38は、隣接した分割体30aの周方向の他端にある補強リブ38は当接する。このように本体部31の内面において、複数の補強リブ38は環状に配置されている。そして、隣接する補強リブ38によって同じ大きさの凹部38Aが6個等間隔に形成されている。このように配列された凹部38Aは、締付ホルダー30を取り付けたとき、
図4aに示すように、ニップル20の係止部23の突起部23aを収容する。なおここでは、一つの凹部38Aに対して一つの突起部23aが収容されているが、一つの凹部38Aに対して複数の突起部23aが収容されてもよい。また、この締付ホルダー30は、隣接する補強リブ38によって形成される小さな凹部38Bも有するが、これは突起部23と関係を有さない。
また
図4aの角度αに示すように、ニップル20と締付ホルダー30とを接続した状態のホース用継手1において、ホース用継手1の中心軸周りに、ニップル20が5度~45度、好ましくは10度以上回転できるように、凹部38Aの大きさを設けるのが好ましい。このように空間的余裕を補強リブ38の間の凹部38Aに設けることにより、現場で取付作業を行うとき、位置調整が容易である。またニップル20の接続部22等を他の装置と接続するときの微調整ができる。
なお、補強リブ38は、少なくとも軸方向成分を有するように内フランジ部から延びていれば、その形状は特に限定されず、また、その数や配置構造も限定されるものではない。例えば、
図4bのように、補強リブ38の半径方向の長さは内フランジ部36の半分であってもよい。しかし、補強リブ38の半径方向の長さは内フランジ部36と実質的に同じであるのが好ましい。また例えば、
図4cに示すように各分割体30aに一つの補強リブ38を設けるようにしてもよい。各分割体30aに設けられる補強リブ38の数は、特に限定されないが1~20であり、好ましくは3つ以上、特に好ましくは4つ以上である。そして、本体部31に設けられる凹部38Aも特に限定されないが、3~20であり、好ましくは15以下、特に、好ましくは10以下である。
【0023】
図3に戻って、連結部32は、本体部31の分割体の合わせ面に沿って設けられる合わせ部32aと、その合わせ部32aを連結する連結具32bとを有する。連結具32bはボルト32b1、ナット32b2およびワッシャ32b3とからなる。隣接する分割体の合わせ部32aを重ね、両合わせ部32aの貫通孔にボルト32b1を挿入してナット32b2で固定することによって、隣接する分割体30aを連結する。しかし、連結部32は、分割体を強固に接続できるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、本体部31の周りにバンドを強固に巻回して固定してもよい。
【0024】
次に現場におけるホース用継手1の取り付けについて説明する。
初めに、螺旋波形ホース10にニップル20を挿入する。このとき、螺旋波形ホース10の端部がニップル20の係止部23に接触するまで挿入する(
図2c参照)。
次いで、ニップル20が挿入された螺旋波形ホース10を覆うように締付ホルダー30をかぶせる。このとき、螺旋波形ホース10の山部を締付ホルダー30の螺旋溝に収容させ、かつ、ニップル20の係止部23の各突起部23aが締付ホルダー30の補強リブ38の間に配置されるようにする。そして、締付ホルダー30の連結部32を軽く連結させる。また
図4aに示すように、ニップル20を中心軸周りに5度~45度回転、好ましくは10度回転させることができるため、ニップル20と締付ホルダー30の位置合わせが容易にできる。さらにこの状態で、ニップル20の接続部22を他の接続体を接続させるとき、ニップル20を動かすことができるため、微調整ができる。
ニップル20と締付ホルダー30の調整後、締付ホルダー30の連結部32をきつく締め付けて固定することにより、螺旋波形ホース10とニップル20とを強固に連結させることができる。
【0025】
このように構成されているため、ホース用継手1は、螺旋波形ホース10に取り付けた後、螺旋波形ホース10の内圧が異常に高くなっても変形や破壊しにくい。特に、締付ホルダー30の内フランジ部36に補強リブ38が形成されているため、内フランジ部36が軸方向に変形することがない。このようなホース用継手1は、外径が大きい螺旋波形ホースの継手として好ましい。
【0026】
図5a、
図5bの締付ホルダー30Aは、本体部31が4つの分割体30aから構成されたものである。この締付ホルダー30Aには、各分割体30aが補強リブ38を3個ずつ備えており、本体部31は等間隔に設けられた凹部38Aを8つ備えている。なお、
図5cは、この締付ホルダー30Aとニップル20Aとを接続したときの断面図である。このような締付ホルダー30Aは、外径Xが150mm以上、さらに、180mm以上、特に200mm以上の螺旋波形ホース10に好ましく用いられる。
このように本体部は、複数に分けることができれば特に限定されず、2個に分割されていても、5個以上に分割されてもよい。他の構成は、
図3の締付ホルダー30と実質的に同じである。
【0027】
図6aの締付ホルダー30Bは、補強リブ38と螺旋溝37との間に、環状溝39が形成されているものである。この締付ホルダー30Bは、
図6bに示すように、従来の連続した環状の係止部51が形成されたニップル50と連結させることができる。つまり、環状の係止部51を環状溝39に収容させる。
図3の締付ホルダー30に比べて外寸が大きくなるが、
図1の締付ホルダー30と同様に、螺旋波形ホース10の内圧が異常に高くなっても変形や破壊しにくい。
【0028】
図7は、
図2のニップル20を、補強リブを有さない締付ホルダー60と連結させている。このように、ニップル20は、本発明の締付ホルダー以外の補強リブの無いホルダーに用いることができる。
【実施例0029】
[実施例]
内径が127mm、外径が159.5mm、ピッチが22mmである螺旋波形ホース10(呼び径125)を準備し、この呼び径125の螺旋波形ホース10に対応した鉄製のニップル20およびアルミ製の締付ホルダー30からなるホース用継手1を準備した。
「比較例」
呼び径125の螺旋波形ホース1に対応する連続した環状の係止部51が形成された従来公知の鉄製のニップル50(
図6のニップル50)と、補強リブ38を有さない従来公知の同形状でアルミ製の締付ホルダー60(
図7の締付ホルダー60)とからなるホース用継手を準備した。
【0030】
これら実施例および比較例のホース用継手に、螺旋波形ホース10を取り付けて温度23℃、湿度50%の環境下で、23℃の常温水を4MPaで2分間循環させた。
比較例のホース用継手は、破壊こそしなかったが、締付ホルダーの内フランジ部分が明確に歪み、繰り返しの使用に耐えうるものではなかった。一方、実施例のホース用継手は、高い圧力をかけても歪みは生じなかった。