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特開2022-35670培養容器およびこれを備えた培養測定装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035670
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】培養容器およびこれを備えた培養測定装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20220225BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20220225BHJP
   C12M 3/00 20060101ALN20220225BHJP
【FI】
C12M1/00 D
C12M1/34 D
C12M3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020140159
(22)【出願日】2020-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】314005768
【氏名又は名称】PHCホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】西山 雅人
(72)【発明者】
【氏名】白井 彰人
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA07
4B029AA08
4B029BB01
4B029CC01
4B029CC02
4B029DF02
4B029DF03
4B029DF04
4B029FA12
4B029GA01
4B029GB10
(57)【要約】
【課題】センサを効率よく使用することで、従来よりもコストダウンを図ることが可能な培養容器を提供する。
【解決手段】培養容器5は、培地が入れられる内底面5aと、内底面5aの反対側の面から構成される外底面5bと、内底面5aに設けられた貫通孔11と、センサ装着部5aaとを備えている。センサ装着部5aaは、センサ部10が取り付けられ、貫通孔11に設けられている。センサ部10は、培養物の測定を行う測定電極6と、測定電極6の上に設けられた試薬層8aと、測定電極6と試薬層8aとを覆うように設けられた保護膜8bと、を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培地が入れられる内面と、
前記内面の反対側の面から構成される外面と、
前記内面に設けられた凹部と、
培養物の測定を行う測定電極と前記測定電極の上に設けられた試薬層と前記測定電極と前記試薬層とを覆うように設けられた保護膜とを含むセンサ部が取り付けられ、前記凹部に設けられているセンサ装着部と、
を備えた培養容器。
【請求項2】
前記センサ装着部には、前記センサ部が着脱自在に取り付けられている、
請求項1に記載の培養容器。
【請求項3】
前記凹部は、前記内面と前記外面とを連通させる貫通穴の一部である、
請求項1に記載の培養容器。
【請求項4】
前記センサ部と前記凹部との間に液密構造を形成する液密形成部をさらに備えている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の培養容器。
【請求項5】
前記液密形成部は、互いに対向する前記センサ部の外側面と前記凹部の内側面との間に配置された弾性変形可能なリング部材を含む、
請求項4に記載の培養容器。
【請求項6】
前記液密形成部は、互いに対向する前記センサ部の外側面および前記凹部の内側面の少なくとも一方に形成された第1溝部と、前記溝部に充填された接着剤と、を含む、
請求項4に記載の培養容器。
【請求項7】
前記液密形成部は、前記センサ部と前記凹部との間に充填された導電性接着剤を含む、請求項4に記載の培養容器。
【請求項8】
前記センサ部は、外側面から突出するように設けられたフランジ部を有しており、
前記センサ部は、前記フランジ部の一部が溶融されて前記凹部に溶着されている、
請求項4に記載の培養容器。
【請求項9】
前記フランジ部は、溶着機によって溶融される溶着用リブを端部に有している、
請求項8に記載の培養容器。
【請求項10】
前記センサ部は、外側面の一部に設けられた被係止部を有しており、
前記凹部の縁部分に設けられており、前記センサ部が前記凹部へ取り付けられた状態において前記被係止部に係止される固定爪を有している、
請求項1から9のいずれか1項に記載の培養容器。
【請求項11】
前記センサ部は、外周面に形成された第1ネジ部を有しており、
前記凹部は、内周面に形成され前記第1ネジ部と螺合する第2ネジ部を有している、
請求項1から10のいずれか1項に記載の培養容器。
【請求項12】
前記培養容器の前記外面側に露出し、前記測定電極と電気的に接続されており、外部配線を介して測定器と接続される配線接続部を、さらに備えている、
請求項1から11のいずれか1項に記載の培養容器。
【請求項13】
前記配線接続部は、外側面に形成された第2溝部を有しており、
前記センサ部は、前記配線接続部に向かって延伸し前記第2溝部への係合時に弾性変形する第1爪部を有している、
請求項12に記載の培養容器。
【請求項14】
前記センサ部は、前記配線接続部に向かって突出するとともに外周面に形成された第3ネジ部を有しており、
前記配線接続部は、前記第3ネジ部と螺合する第4ネジ部を有している、
請求項12に記載の培養容器。
【請求項15】
前記センサ部は、前記配線接続部に向かって延伸し弾性変形する第2爪部を有しており、
前記配線接続部は、前記センサ部が前記凹部に取り付けられた状態において、前記第2爪部が係止される係止部を有している、
請求項12に記載の培養容器。
【請求項16】
前記センサ部と前記配線接続部との電気的な接続を形成する接続部を、さらに備えている、
請求項12から15のいずれか1項に記載の培養容器。
【請求項17】
前記接続部は、前記センサ部を前記配線接続部から離間する方向に付勢する板バネ、コンタクトプローブのいずれか1つを含む、
請求項16に記載の培養容器。
【請求項18】
前記接続部は、上面に前記測定電極が配置され、前記配線接続部と電気的に接続される基板を含む、
請求項16に記載の培養容器。
【請求項19】
前記配線接続部は、前記接続部とイオン化傾向が同じ、あるいは近い材料によって形成されている、
請求項16から18のいずれか1つに記載の培養容器。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか1項に記載の培養容器と、
前記センサ部と、
を備えた培養測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、細胞培養の測定に使用される培養容器およびこれを備えた培養測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の培養測定装置は、培養のための培養物と培地とが入れられる容器を備えており、この容器の底面内には、光学式のセンサが設けられていた。そして、このセンサが光学的に読み取られ、培地内のCO2(二酸化炭素)や、溶存酸素、pHが測定されていた(例えば、特許文献1参照)。
また、培地の状態をモニターする電気化学式センサが培養容器内に挿入され、そのセンサに設けられた電気的な接続端子に繋がれたリード配線が外部の制御部に接続されていた(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-205851号公報
【特許文献2】特開2004-113092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の構成では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記従来例において、培養容器の底面にセンサが埋め込まれているため、測定対象が異なる場合には、別の培養容器を用いる必要があり、センサだけでなく培養容器ごと交換する必要がある。
また、複数のウェルを含む培養容器において、測定が不要なウェルにはセンサも不要であるが、埋め込まれたセンサを含む培養容器では、測定が不要なウェルのセンサが無駄になってしまう。
【0005】
さらに、測定が終了した培養容器は、センサが埋め込まれている場合には、センサの再利用はできないため、培養容器ごと廃棄することになり、コストがかかってしまう。
そこで、本発明は、センサを効率よく使用することで、従来よりもコストダウンを図ることが可能な培養容器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そしてこの目的を達成するために、本発明の培養容器は、培地が入れられる内面と、内面の反対側の面から構成される外面と、内面に設けられた凹部と、センサ装着部と、を備えている。センサ装着部は、センサ部が取り付けられ、凹部に設けられている。センサ部は、培養物の測定を行う測定電極と、測定電極の上に設けられた試薬層と、測定電極と試薬層とを覆うように設けられた保護膜と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明の培養容器によれば、交換可能なセンサを効率よく使用することで、従来よりもコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る培養容器を含む細胞培養測定装置の構成を示す全体斜視図。
図2図1の細胞培養測定装置の上面図。
図3図2のA1-A2線断面図。
図4】(a)および(b)は、図3のセンサ部を培養容器のセンサ装着部へ装着する前後の状態を示す拡大図。
図5】(a)は、図3のセンサ部の上面側を示す斜視図。(b)は、図3のセンサ部の下面側の構成を示す斜視図。
図6】(a)および(b)は、取付け工具を用いて、図3のセンサ部を培養容器のセンサ装着部へ装着する前後の状態を示す断面斜視図。
図7】(a)は、本発明の他の実施形態に係るセンサ部の上面側の構成を示す斜視図。(b)は、その下面側の構成を示す斜視図。
図8】(a)および(b)は、図7(a)のセンサ部を培養容器のセンサ装着部へ装着する前後の状態を示す拡大断面図。
図9】(a)および(b)は、図8(a)の変形例であって、センサ部を培養容器のセンサ装着部へ装着する前後の状態を示す拡大断面図。
図10】(a)および(b)は、図8(a)の別の変形例であって、センサ部を培養容器のセンサ装着部へ装着する前後の状態を示す拡大断面図。
図11】(a)および(b)は、図9(a)の変形例であって、センサ部を培養容器のセンサ装着部へ装着する前後の状態を示す拡大断面図。
図12】(a)および(b)は、本発明のさらに他の実施形態に係るセンサ部を培養容器のセンサ装着部へ装着する前後の状態を示す拡大断面図。
図13図12(a)の変形例であって、センサ部が培養容器のセンサ装着部へ装着された状態を示す拡大断面図。
図14】(a)および(b)は、本発明のさらに他の実施形態に係るセンサ部を培養容器のセンサ装着部へ装着する前後の状態を示す拡大断面図。
図15】(a)および(b)は、本発明のさらに他の実施形態に係るセンサ部を培養容器のセンサ装着部へ装着する前後の状態を示す拡大断面図。
図16】(a)および(b)は、図15(a)の変形例であって、センサ部を培養容器のセンサ装着部へ装着する前後の状態を示す拡大断面図。
図17】(a)および(b)は、本発明のさらに他の実施形態に係るセンサ部を培養容器のセンサ装着部へ装着する前後の状態を示す拡大断面図。
図18】測定電極を含むセンサ部が装着されるセンサ装着部の配置の変形例を示す平面図。
図19】(a)および(b)は、測定電極を含むセンサ部が装着されるセンサ装着部の配置の他の変形例を示す平面図。
図20】フラスコ状の矩形の培養容器内に設けられた測定電極を含むセンサ部が装着されるセンサ装着部の配置の変形例を示す平面図。
図21】複数のウェルを含むマルチウェル形状を有する測定容器を含む細胞培養測定装置の構成を示す斜視図。
図22】フラスコ形状を有する測定容器を含む細胞培養測定装置の構成を示す斜視図。
図23】(a)は、フラスコ形状を有する培養容器を含む細胞培養測定装置の構成を示す斜視図。(b)は、フラスコ形状を有する培養容器の内底面と側壁とを連通させる貫通孔を示す断面図。
図24】(a)~(d)は、本発明の他の実施形態に係るセンサ部が培養容器に形成された貫通孔(センサ装着部)へ装着する前後の状態を示す拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態1)
以下、本発明の一実施形態に係る培養容器5を含む細胞培養測定装置(培養測定装置)1について、添付図面を用いて説明する。
<細胞培養測定装置1の概要説明>
図1に、細胞培養測定装置1を含む細胞培養装置50の構成を示す。
【0010】
細胞培養装置50は、図1に示すように、細胞培養測定装置1と、制御部3aとを備えている。
細胞培養測定装置1は、配線基板2と、配線基板2上に配置された測定器3と、測定端子4と、培養容器5と、センサ部10とを備えている。測定器3および測定端子4は、配線基板2に設けられた配線(外部配線)4aによって電気的に接続されている。そして、培養容器5は、測定端子4に対して、電気的に接続されるように配置される。
【0011】
制御部3aは、細胞培養測定装置1に含まれる測定器3を制御する。
培養容器5は、図1に示すように、円筒状の側面と底面とによって形成される有底状のディッシュ形状を有している。培養容器5は、例えば、細胞を培養するための容器であって、細胞とその栄養源を含んだ培地とが入れられる。
培養容器5には、例えば、測定対象ごとに適切なものが選択されたセンサ部10が、培養容器5の内底面(内面)5aに設けられたセンサ装着部5aa対して着脱自在な状態で取り付けられる。培養容器5は、装着されたセンサ部10に含まれる測定電極6と電気的に接続された配線接続部9が、配線基板2の上面に設けられた測定端子4に対して電気的に接続されるように、配線基板2の上面に配置される。
【0012】
センサ部10が装着されるセンサ装着部5aaは、培養容器5の内底面5aと外底面(外面)5bとを連通させる貫通孔(凹部)11a,11b,11cの上部に設けられている。
測定器3は、培養容器5に装着されたセンサ部10に含まれる測定電極6に対して所定の電圧を印加して検出される電流値に基づいて、培養容器5内の培地に含まれる培養物の測定を行う。そして、測定器3は、制御部3aによって制御される。
【0013】
図2は、細胞培養測定装置1の上面図を示す。
培養容器5の内底面5aには、図2に示すように、3つのセンサ部10a,10b,10cが着脱可能な状態で装着されている。これらの3つのセンサ部10に含まれる測定電極6は、それぞれ、参照極6a、作用極6b、対極6cとして使用される。すなわち、センサ部10aに含まれる測定電極6は、参照極6aとして使用される。センサ部10bに含まれる測定電極6は、作用極6bとして使用される。センサ部10cに含まれる測定電極6は、対極6cとして使用される。
【0014】
図3は、図2のA1-A2線断面図であって、作用極6bとして機能する測定電極6を含むセンサ部10bの部分の断面図である。
センサ部10は、図1に示すように、培養容器5の内底面5aに形成されたセンサ装着部5aaに着脱可能な状態で取り付けられている。
ここで、センサ部10は、測定対象に応じて必要な種類(例えば、乳酸測定用あるいはグルコース測定用)が選択されて取り付けられる。そして、センサ部10は、培養容器5の内底面5aに設けられたセンサ装着部5aaに対して着脱可能な状態で装着されているため、測定が終了した使用済みのセンサ部10が取り外されて新たなセンサ部10と交換される。
【0015】
これにより、測定対象に応じて適切なセンサ部10を選択して装着し、かつ測定終了後には使用済みのセンサ部10と新たなセンサ部10とを交換することができるため、培養容器5を再利用することができる。
また、センサ部10が培養容器5に着脱自在であるため、例えば、測定を行わないウェルには不要なセンサを取り付けないという選択が可能となる。よって、細胞培養に関する各種測定を行う際のコストを削減することができる。
【0016】
図4(a)および図4(b)は、センサ部10が培養容器5の内底面5aに設けられたセンサ装着部5aaに装着される前後の状態を示している。
なお、ここでは、説明の便宜上、センサ部10bが培養容器5のセンサ装着部5aaに装着される例を挙げて説明するが、他の2つのセンサ部10a,10cについても同様の構成を備えており、同じ操作によって培養容器5のセンサ装着部5aaに装着されるものとする。
【0017】
センサ部10bは、図5(a)および図5(b)に示すように、略円柱状の本体部20a、溝20b、Oリング(液密形成部、リング部材)20c、雄ネジ部20d、測定電極6(作用極6b)、接続部(弾性部材)7、試薬層8a、保護膜8bを有している。
本体部20aは、図5(a)に示すように、略円柱状の中心部分に貫通穴が形成されている。貫通穴の部分には、接続部7、測定電極6(作用極6b)、試薬層8a、保護膜8bが配置されている。また、本体部20aの上面には、後述する取付け工具T1(図6(a)参照)の先端部分が挿入される工具穴20aaが2つ設けられている。
【0018】
溝20bは、略円柱状の本体部20aの外周面に形成された凹部であって、Oリング20cが嵌るように配置されている。
Oリング20cは、弾性を有するゴム製のリング部材であって、センサ部10bの外周部分と培養容器5のセンサ装着部5aaの内周面との間に液密構造を形成するために、センサ部10bの外周面に取り付けられている。
【0019】
これにより、センサ部10bがセンサ装着部5aaに装着されると、Oリング20cはセンサ部10bの外周面とセンサ装着部5aa(貫通孔11b)の内周面との間において押しつぶされて弾性変形する。
この結果、弾性変形したOリング20cによって、センサ部10bの外周部分と培養容器5のセンサ装着部5aaの内周面との間に、センサ部10bの上面側からの液体の浸入を防ぐ液密構造を形成することができる。
【0020】
なお、Oリング20cは、例えば、ニトリルゴム、シリコンゴム、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等のように、培養容器5に入れられた培地に含まれる細胞に対して毒性のない材料によって成形されていることが好ましい。
雄ネジ部20dは、本体部20aと一体的に成形されており、略円柱状の本体部20aの外周面におけるOリング20cよりも上方に設けられている。そして、雄ネジ部20dは、培養容器5のセンサ装着部5aaが設けられた貫通孔11bの上部に形成された雌ネジ部5abに螺合することで、センサ部10bが培養容器5のセンサ装着部5aaに対して装着される。
【0021】
本体部20aの貫通穴の内部には、図4(a)および図4(b)に示すように、測定電極6(作用極6b)、接続部7、試薬層8aおよび保護膜8bが配置されている。
測定電極6(作用極6b)は、導電体の板バネのような部材(接続部7)の一部(上面)に形成されている。
ここで、培養容器5の外底面(外面)5b寄りの部分には、センサ部10に含まれる測定電極6と、接続部7を介して電気的に接続される配線接続部9(図4(a)等参照)が設けられている。
【0022】
接続部7は、導電性を有し弾性変形可能な板バネ状の部材であって、センサ部10bの測定電極6(作用極6b)と配線接続部9との間における電気的接続を確保するために設けられている。接続部7は、例えば、ステンレス等の金属によって形成されている。そして、接続部7は、図4(b)に示すように、センサ部10bがセンサ装着部5aaに装着された状態になると、縮められたバネの反発力によって、センサ部10bを配線接続部9側から離間させる方向に付勢力を付与する。
【0023】
なお、接続部7の材料として一般的な導電体材料(SUS、鉄、銅等)が用いられた場合には、試薬層8aの試薬と反応してノイズが大きくなり、測定精度が低下するおそれがある。このため、接続部7の最表面には、上記のような電気化学的に不活性な導電体材料(例えば、金、白金、パラジウム、炭素等)が用いられることが好ましい。
また、例えば、接続部7と接続部7の最表面の成膜層との間に中間層が設けられた構成であってもよい。これは、最表面の成膜層の密着性を向上させるためである。例えば、ステンレスの下地材料に対して、中間層としてニッケルを成膜することで最表面の成膜層の密着性を向上することができる。
【0024】
さらに、最表面の成膜層の膜厚は1.0μm以上であることが好ましい。これは、例えば、1.0μm未満の薄い膜厚では、成膜層の表面にピンホールが残り易く、下地材料と試薬とが反応するおそれがあるためである。
ここで、接続部7と配線接続部9とが異なる金属によって形成されている場合には、金属同士の標準電位の差による腐食のおそれがある。このため、接続部7および配線接続部9には、イオン化傾向の近い材料を用いて形成されていることが好ましい。具体的には、例えば、銅とステンレスとの組み合わせのように、イオン化傾向が近い、あるいは、銅と銅、あるいはステンレスとステンレスのように、同じ種類の金属を用いて、接続部7および配線接続部9が形成されていることが望ましい。
【0025】
接続部7上に設けられた作用極6bの上面には、図4(a)に示すように、試薬層8aが設けられている。そして、試薬層8aの上面には、保護膜8bが設けられている。
板バネ状の接続部7の下部は、培養容器5の外底面(外面)5b側に露出し配線基板2に設けられた測定端子4(図1参照)が接続される配線接続部9の上面と当接するように設けられている。
【0026】
つまり、培養容器5内の測定電極6(作用極6b)は、接続部7、配線接続部9および測定端子4を介して、配線基板2と直接接続され、測定器3と電気的に接続される。
これにより、培養容器5の測定電極6と、測定器3とを接続する配線が、培養容器5内の培地を通ることはない。
よって、培養容器5内の測定電極6と電気的な接続をするための配線4aが、培養容器5の外底面5bから直接、測定電極6に接続されるため、配線4aを培養容器5内の培地内に通さないで、測定電極6と配線4aとを電気的に接続することができる。その結果、細胞培養測定装置1内におけるコンタミネーションを低減し、培養環境を向上することができる。
【0027】
また、培養容器5の上方に配線、測定電極の支持体等が存在しないため、培養容器5の視認性や培養容器5に培地を入れる作業等の作業性を向上させることができる。
<培養容器へのセンサ部の取付け>
ここで、培養容器5に対して着脱可能な状態で装着されるセンサ部10を、培養容器5へ取り付けおよび取り外しする際の操作について説明すれば以下の通りである。
【0028】
具体的には、図4(a)および図6(a)に示すように、培養容器5のセンサ装着部5aaへセンサ部10bが装着される際には、センサ装着部5aaが設けられた貫通孔11bの直上へセンサ部10bが置かれる。
そして、図6(a)に示すように、貫通孔11bの上部へ置かれたセンサ部10bの上面に設けられた工具穴20aaに取付け工具T1の先端が挿入された状態で、取付け工具T1を用いて、上面視においてセンサ部10bを時計回りに回転させる。
【0029】
このとき、センサ部10b側の雄ネジ部20dと、センサ装着部5aa側の雌ネジ部5abとが螺合して、センサ部10bは培養容器5の内底面5a内へねじ込まれる。
これにより、図6(b)に示すように、培養容器5のセンサ装着部5aaに対して着脱可能な状態でセンサ部10bを取り付けることができる。
ここで、装着されたセンサ部10bの外周面と、培養容器5のセンサ装着部5aaの内周面との間の隙間には、弾性変形した状態でOリング20cが設けられている。
【0030】
これにより、センサ部10bの外周面と培養容器5のセンサ装着部5aaの内周面との間の隙間には、Oリング20cによって液密構造が形成される。よって、センサ部10bの外周面とセンサ装着部5aaの内周面の間の隙間から、配線接続部9の方へ水等の液体が浸入することを効果的に防止することができる。
さらに、図6(b)に示すように、培養容器5のセンサ装着部5aaに対してセンサ部10bが装着されると、センサ部10bの下面側、つまり、センサ部10bが配線接続部9と対向する面側に設けられた板バネ状の接続部7が押圧される。
【0031】
これは、図4(a)に示すように、センサ部10bの本体部20aの下面側の端面よりも接続部7の先端部が下向きに突出した状態となっていることで、図4(b)に示すセンサ部10bがセンサ装着部5aaに装着された状態では、板バネ状の接続部7の先端部が配線接続部9の上面に当接して縮んだ状態となるからである。
これにより、導電性を有する板バネ状の接続部7を介して、接続部7の上面に形成された測定電極6(作用極6b)と、配線接続部9とが電気的に接続することができる。
【0032】
本実施形態の構成では、特に、接続部7として、センサ部10aを配線接続部9から離間する方向に付勢する板バネを用いていることで、測定電極6(作用極6b)と配線接続部9との電気的接続をより確実に確保することができる。
一方、センサ部10b等を用いた測定が終了した場合には、図6(b)に示すように、センサ装着部5aaへ取り付けられたセンサ部10bの上面に設けられた工具穴20aaに取付け工具T1の先端が挿入された状態で、取付け工具T1を用いて、上面視においてセンサ部10bを反時計回りに回転させる。
【0033】
このとき、センサ部10b側の雄ネジ部20dと、センサ装着部5aa側の雌ネジ部5abとが螺合しているため、センサ部10bは培養容器5の内底面5a内から上方へと持ち上げられる。
これにより、培養容器5のセンサ装着部5aaから、使用済みのセンサ部10bを容易に取り外すことができる。よって、使用済みのセンサ部10bが取り外された培養容器5は、使用済みのセンサ部10ごと廃棄されることなく、新たなセンサ部10が取り付けられることで、再利用することができる。
【0034】
なお、センサ部10bを取り付けるために設けられた雄ネジ部20dと雌ネジ部5abとは、センサ部10bを1回転以内でセンサ装着部5aaに固定できるような構成であることが好ましい。さらに、例えば、多条ねじを用いて、半回転以内でセンサ部10bを固定できる構成であることがより好ましい。
また、本実施形態の培養容器5は、内底面5aと外底面5bとを連通させる貫通孔11a~11c内に配線接続部9が設けられている。
【0035】
これにより、配線接続部9を介して培養容器5の内部と外部とを電気的に接続することができる。すなわち、センサ部10に含まれる測定電極6と外部に設けられた測定器3とを、培養容器5に入れられた培地を介すことなく、電気的に接続することができる。
さらに、センサ部10が装着される貫通孔11a~11cは、Oリング20cによって液密構造によって塞がれているので、貫通孔11a~11cから培地が漏れだすことなく、センサ部10を自在に着脱することができる。
【0036】
<細胞培養測定装置による培地の測定原理>
次に、本実施形態の細胞培養測定装置1において、センサ部10に含まれる測定電極6(参照極6a、作用極6bおよび対極6c)を用いた培地の測定原理について、以下で説明する。
センサ部10aに含まれる参照極6aの表面には、銀層(銀層と塩化銀層の少なくとも一方)が設けられている。また、センサ部10bに含まれる作用極6bの表面には、酵素とメディエータ等を含む試薬層8aが設けられている。そして、これらの測定電極6の表面は、保護膜8bによって覆われている。
【0037】
例えば、培養容器5に入れられた培地に測定電極6(作用極6b、対極6c、参照極6a)を浸漬させた状態で、測定電極6に所定の電圧を印加することで、電気化学的に培地の特定の成分の濃度を測定する。
例えば、培地のグルコース成分の濃度を測定する場合には、作用極6bの表面に固定化された試薬層8aには、酵素(例えば、GOx)、レドックスメディエータが含まれる。
【0038】
グルコースの測定原理は、保護膜8bを通して培地から透過してきたグルコースが、試薬層8aの酵素(例えば、GOx)との酵素反応で酸化されてグルコノラクトンとなり、同時に試薬層のレドックスメディエータが還元されて生成される還元体が酸化体に戻る際に発生する電子を電流値として測定することで、培地のグルコース濃度を測定することができる。
【0039】
そして、保護膜8bは、培地中のグルコースを透過制限しながら作用極6b部分に浸透させるとともに、作用極6bに固定化された試薬層8aの成分(酵素およびメディエータ)を保護膜8bの外側への流出を防止するために設けられている。
酵素およびメディエータは、架橋されて電極に固定されている。そのため、試薬層8aは、高分子化され、分子量は大きくなる。よって、グルコースは保護膜8bを透過する一方、酵素およびメディエータが保護膜8bから流出することを防止することができる(より詳細には、国際公開第2019/146788号参照)。
【0040】
(実施形態2)
本発明の他の実施形態に係る培養容器5に対して装着されるセンサ部110の構成について説明すれば以下の通りである。
なお、本実施形態の構成のうち、上記実施形態で説明した構成と同一の形状・機能を有する構成については、上記実施形態と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0041】
すなわち、上記実施形態1では、センサ部10が、培養容器5の内底面5aに形成されたセンサ装着部5aaに対して雄ネジ部20dと雌ネジ部5abとの螺合によって装着される例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、図7(a)および図7(b)に示すように、下面側から下向き(配線接続部109側へ)に突出するように形成された3つの爪部(第2爪部)120dと、図8(a)および図8(b)に示すように、配線接続部109側に設けられた係止部109aとの係合によって、センサ装着部5aaに取り付けられるセンサ部110であってもよい。
【0042】
本実施形態のセンサ部110は、図7(a)および図7(b)に示すように、略円柱状の本体部120aと、3つの爪部120dとを有している。
本体部120aの中心部分に形成された貫通孔内には、上記実施形態1のセンサ部10と同様に、測定電極6、接続部7、試薬層8a、保護膜8bが配置されている。また、本体部120aの外周面に形成された溝20bには、Oリング20cが嵌るように配置されている。
【0043】
爪部120dは、図8(a)に示すように、培養容器5への装着方向(図中下向き)に延伸するように形成されている。3つの爪部120dは、図7(b)に示すように、略120度の角度間隔で本体部120aの外周面に沿って形成されている。そして、3つの爪部120dは、センサ部110が培養容器5のセンサ装着部5aaに装着されると、配線接続部109に設けられた係止部109aに係止される。
【0044】
配線接続部109は、略円柱状の外周面に設けられた凹部であって、培養容器5の内底面5aと外底面5bとを連通させる貫通孔11b内に配置されている。そして、配線接続部109には、センサ部110に設けられた爪部120dの先端部分が係合した状態で係止される。
本実施形態では、培養容器5のセンサ装着部5aaに対して、センサ部110が装着される際には、図8(a)に示すように、センサ装着部5aaの直上からセンサ部110が押し込まれる。
【0045】
そして、センサ部110側の爪部120dが、配線接続部109側の係止部109aに係止されることで、センサ部110の装着が完了する。
このとき、板バネ状の接続部7が押圧された状態でセンサ部110が固定されているため、センサ部110には、接続部7の弾性によって、配線接続部109から離間する方向(図8(b)中上向き)の付勢力が付与される。
【0046】
これにより、センサ部110の測定電極6に接続された接続部7は、配線接続部109の上面に対して確実に当接し、センサ部110(測定電極6)と配線接続部109との電気的な接続を確保することができる。
また、接続部7によって付勢力が付与されたセンサ部110は、上述した爪部120dと係止部109aとの係合によって、配線接続部109から離間する方向(図8(b)中の上向き)への移動が規制される。
【0047】
なお、本実施形態では、センサ部110と配線接続部109との接続に用いられる爪部120dが、センサ部110側に設けられている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、図9(a)および図9(b)に示すように、培養容器205側に設けられた爪部(固定爪)205aと、センサ部210の外周面に形成された被係止部210aとを用いて、センサ部210が培養容器205のセンサ装着部5aaに装着されてもよい。
【0048】
ここで、板バネ状の接続部7についても同様に、板バネ状に限らず、図9(a)に示すように、下向きに突出した突出部207aを含む平板状の基板(接続部)207であってもよい。
この場合には、図9(b)に示すように、突出部207aが配線接続部209の上面に当接した状態となることで、センサ部210と配線接続部209との電気的な接続を確保することができる。さらに、爪部205aと係止部220aとの係合により、センサ部210が配線接続部209から離間する方向へ移動しないように、規制することができる。
【0049】
また、図10(a)および図10(b)に示すように、センサ部310の本体部320aから下向きに突出するように設けられた爪部(第1爪部)310aと、培養容器5側に設けられた配線接続部に形成された係止部(第2溝部)309aとを用いて、センサ部310が培養容器5のセンサ装着部5aaに装着されてもよい。
この場合には、爪部310aの先端部分が径方向外側に向かって突出しており、この先端部分が、配線接続部309の径方向外側に向かって形成された凹状の係止部309aに係合することで、センサ部310を配線接続部309(培養容器5のセンサ装着部5aa)に対して装着することができる。
【0050】
このとき、平板状の基板207から図中下向きに突出した突出部207aが、配線接続部309の上面と当接することで、センサ部310と配線接続部309との電気的な接続を確保することができる。
さらに、平板状の基板207を含むセンサ部410を、培養容器5のセンサ装着部5aaに装着する構成として、図11(a)および図11(b)に示すように、上記実施形態1で説明したOリング20cを用いてもよい。
【0051】
この場合には、センサ部410をセンサ装着部5aaが設けられた貫通孔11b内へしっかりと押し込むことで、基板207の突出部207aと、配線接続部109の上面との間における電気的な接続を確保することができる。さらに、本体部420aの外周面に形成された溝20bに嵌められたOリング20cと貫通孔11bの内周面との間に生じる摩擦力によって、センサ部410が貫通孔11bから抜けることを防止することができる。
【0052】
(実施形態3)
本発明のさらに他の実施形態に係る培養容器5に対して装着されるセンサ部510の構成について説明すれば以下の通りである。
なお、本実施形態の構成のうち、上記実施形態で説明した構成と同一の形状・機能を有する構成については、上記実施形態と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0053】
すなわち、上記実施形態1では、センサ部10が、培養容器5の内底面5aに形成されたセンサ装着部5aaに対してネジ式で着脱可能な状態で取り付けられている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、図12(a)および図12(b)に示すように、センサ部510の本体部520aの外周面に形成された溝部(第1溝部)510aに充填された接着剤530を用いて、センサ部510がセンサ装着部5aaに取り付けられた構成であってもよい。
【0054】
溝部510aは、略円柱状の本体部520aの外周面に沿って所定の深さで形成されている。
これにより、センサ部510を培養容器5のセンサ装着部5aaに対して取り付けることができる。さらに、接着剤530によって貫通孔11bが封止されるため、培養容器5に入れられた培地の水分等が貫通孔11bから外底面5b側へ漏れ出すことを防止して液密性を確保することができる。
【0055】
ここで、接着剤530として、接着力が比較的小さいもの(例えば、アクリル系接着剤等)を用いた場合には、使用後のセンサ部510をセンサ装着部5aaから取り外して、培養容器5を再利用することができる。
なお、接着力が大きい接着剤530を用いた場合には、センサ部510が培養容器5から取り外し困難になるものの、取付け時に、測定対象に応じた適切なセンサ部510が選択されて取り付けられることで、測定対象ごとに専用の培養容器5を用意する必要がなく、培養容器5を共通で用いることができる。
【0056】
なお、例えば、図13に示すように、接着剤として、導電性を有する接着剤630が用いられることが好ましい。
この場合には、平板状の基板(接続部)607と配線接続部9との間に、導電性を有する接着剤630が充填されることで、センサ部610をセンサ装着部5aaに装着することができるとともに貫通孔11bにおける液密性を確保しつつ、接続部607と配線接続部9との間の電気的な接続を確保することができる。
【0057】
(実施形態4)
本発明のさらに他の実施形態に係る培養容器705に対して装着されるセンサ部710の構成について説明すれば以下の通りである。
なお、本実施形態の構成のうち、上記実施形態で説明した構成と同一の形状・機能を有する構成については、上記実施形態と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0058】
すなわち、上記実施形態1では、センサ部10が、培養容器5の内底面5aに形成されたセンサ装着部5aaに対して、雄ネジ部20dと雌ネジ部5abとの螺合によって装着される例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、図14(a)および図14(b)に示すように、本体部720aの外周面から径方向外側に突出するフランジ部720bが設けられたセンサ部710であってもよい。
【0059】
この構成では、図14(a)に示すように、本体部720aと一体成形された熱可塑性樹脂製のフランジ部720bの下面側からセンサ装着部705aaへの装着方向(図中下向きに)へ突出するように形成された溶着用のリブ720cが形成されている。
また、培養容器705には、図14(a)に示すように、貫通孔711bの上部に、センサ部710のフランジ部720bが嵌合するセンサ装着部705aaが設けられている。
【0060】
センサ装着部705aaは、フランジ部720bの大きさに合わせて、貫通孔711bよりも大きな内径を有している。
そして、センサ部710が培養容器705に形成された貫通孔711bのセンサ装着部705aaに装着されると、図14(b)に示すように、センサ部710の本体部720aが培養容器705の貫通孔711bに挿入されると同時に、センサ部710のフランジ部720bが培養容器705のセンサ装着部705aaに嵌合する。
【0061】
ここで、センサ部710のフランジ部720bの下面側に設けられた溶着用のリブ720cの部分に、例えば、微小振動を付与してリブ720cを溶融させるために、超音波が当てられる。
これにより、図14(b)に示すフランジ部720bのリブ720cがあったX部分において、センサ部710を培養容器705のセンサ装着部705aaに溶着させることができる。
【0062】
なお、リブ720cを溶着させる溶着方法としては、超音波溶着以外に、溶着部分にレーザ光を照射するレーザ溶着、溶着部分に熱を付与する熱溶着等であってもよい。
ただし、本実施形態のように、フランジ部720bに予め溶着用のリブ720cが設けられた構成では、微小振動を付与して細かい部分だけを溶融させる超音波溶着を採用することが好ましい。
【0063】
これにより、培養容器705のセンサ装着部705aaに対して、センサ部710を固定することができる。
さらに、溶着用のリブ720cがない構成であってもよい。
この場合には、フランジ部における溶着させたい箇所に、レーザ、熱、超音波等を付与することで溶着部分を形成することで、センサ部を培養容器に対して固定することができる。
【0064】
(実施形態5)
本発明のさらに他の実施形態に係る培養容器805に対して装着されるセンサ部810の構成について説明すれば以下の通りである。
なお、本実施形態の構成のうち、上記実施形態で説明した構成と同一の形状・機能を有する構成については、上記実施形態と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0065】
すなわち、上記実施形態1では、センサ部10が、培養容器5の内底面5aに形成されたセンサ装着部5aaに対して雄ネジ部20dと雌ネジ部5abとの螺合によって装着されるとともに、板バネ状の接続部7によってセンサ部10を図中上向きに付勢する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、図15(a)および図15(b)に示すように、板バネ状の接続部7の代わりに、平板状の基板(接続部)207を含み、センサ部810の本体部820aの外周面に形成された雄ネジ部(第1ネジ部)820bと、培養容器805の貫通孔811b内に形成された雌ネジ部(第2ネジ部)805aとを螺合させて固定する構成であってもよい。
【0066】
この場合には、ネジ式でセンサ部810が培養容器805のセンサ装着部805aaに装着されるため、センサ部810をしっかりねじ込むことで、平板状の基板207の下面から突出する突出部207aが、配線接続部9の上面に当接される。
これにより、センサ部810の測定電極6と配線接続部9との電気的な接続を確保することができる。
【0067】
また、センサ部810の本体部820aの側面に卷回されたシールテープによって、センサ部810の外周面と培養容器805のセンサ装着部805aaとの間に形成される隙間を封止して液密性を確保してもよい。
なお、本実施形態のように、雄ネジ部と雌ネジ部の螺合によってセンサ部810を培養容器805に装着する構成において、雄ネジ部と雌ネジ部とが設けられる部品は、センサ部810の本体部820aと培養容器805とに限定されるものではない。
【0068】
例えば、図16(a)に示すように、センサ部860の本体部860aの貫通孔内に配置された接続部857の下面側から突出する突出部857aの外周面に設けられた雄ネジ部(第3ネジ部)857aaと、培養容器855側の配線接続部859の上面に形成された穴859aの内周面に形成された雌ネジ部(第4ネジ部)859aaとを螺合させる構成であってもよい。
【0069】
この場合には、図16(b)に示すように、センサ部860の本体部860aを、培養容器855の貫通孔811b内に設けられたセンサ装着部855aaに挿入した後、雄ネジ部857aaと雌ネジ部859aaとを螺合させるように、取付け工具等を用いて、センサ部860を時計回りに回転させる。
これにより、センサ部860を培養容器855のセンサ装着部855aaに装着することができる。
【0070】
(実施形態6)
本発明のさらに他の実施形態に係る培養容器5に対して装着されるセンサ部710の構成について説明すれば以下の通りである。
なお、本実施形態の構成のうち、上記実施形態で説明した構成と同一の形状・機能を有する構成については、上記実施形態と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0071】
すなわち、上記実施形態1では、板バネ状の接続部7によって、センサ部10側の測定電極6と配線接続部9との電気的な接続を確保する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、図17(a)に示すように、板バネ状の接続部7の代わりに、バネ907aを内蔵するコンタクトプローブ(接続部、弾性部材)907が基板907cに固定されたセンサ部910であってもよい。
【0072】
この場合には、板バネ状の接続部7を用いた実施形態1の構成と同様に、センサ部910の本体部920aに形成された貫通孔内に設けられたコンタクトプローブ907が、センサ部910の装着方向(図中下向き)において弾性力を付与する。
これにより、図17(b)に示すように、培養容器5のセンサ装着部5aa内に、センサ部910が装着されると、コンタクトプローブ907に内蔵されたバネ907aが縮んだ状態となることで、センサ部910の基板907cの上面に形成された測定電極6と、配線接続部9の上面との間の電気的な接続を確実に確保することができる。
【0073】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態1では、測定電極6、接続部7、試薬層8aおよび保護膜8bを含むセンサ部10が、培養容器5の内底面5aに形成された貫通孔11bの上部に設けられたセンサ装着部5aaに装着される例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、センサ装着部が培養容器の内壁面等の内底面以外の面に設けられた培養容器であってもよい。
【0074】
(B)
上記実施形態1では、培養容器5の内底面5aに、センサ部10が装着されるセンサ装着部5aaが3つ設けられた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0075】
例えば、図18に示すように、培養容器5の内底面5aに、測定電極6を含む4つのセンサ部10が装着されるセンサ装着部5aaが略直線状に配置された構成であってもよい。
具体的には、この構成では、図中の左から、作用極6b1、参照極6a、対極6c、作用極6b2を含むセンサ部10が装着される。
【0076】
ここで、複数の作用極6b1,6b2を含むセンサ部10が設けられている場合には、例えば、作用極6b1はグルコース検出用の試薬層8a、作用極6b2は乳酸検出用の試薬層8aを形成し、異なる物質を検出してもよい。
このように、複数の作用極6b1,6b2を含むセンサ部10が配置されていることで、培養容器5の培地に含まれる複数種類の物質を測定することができる。
【0077】
あるいは、複数の作用極6b1,6b2を含むセンサ部10を配置して、グルコース等の同一の物質を検出してもよい。
すなわち、培地は、局部的にグルコース等の特定物質が攪拌されずに偏って滞留している場合がある。このため、作用極6b1,6b2を含むセンサ部10の配置場所によって測定濃度が異なる場合がある。
これにより、複数の作用極6b1,6b2を含むセンサ部10を異なる位置に配置して同一の物質を検出することで、培地内における特定物質の濃度分布を俯瞰的に把握することができる。
【0078】
(C)
上記実施形態1では、測定電極6を含む3つのセンサ部10が、培養容器5の内底面5aに略直線状に配置された例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0079】
例えば、図19(a)および図19(b)に示すように、複数の作用極6b1,6b2,6b3を含むセンサ部10が装着されるセンサ装着部5aaが、培養容器5の内底面5aにおいて、略同一円周上に略等間隔で配置された構成であってもよい。
これは、例えば、培地に添加されたグルコースが培養容器5の周縁に沿って徐々に攪拌される場合には、略円周上にグルコース濃度が変化していくためである。
【0080】
これにより、複数の作用極6b1,6b2,6b3を含むセンサ部10を、略同一円周上に配置することで、略円筒状の培養容器5内の培地に含まれる特定物質の濃度分布を俯瞰的に把握することができる。
図19(b)は、複数(例えば、12個)の作用極6bを含むセンサ部10が、培養容器5の内底面5aにおいて、放射状、もしくは半径方向に略等間隔で配置されている。
【0081】
これは、例えば、培地に添加されたグルコースが培養容器5の周縁に沿って外周から内周に向けて徐々に攪拌されるので、略放射状、もしくは半径方向に沿って段階的にグルコース濃度が変化していくためである。
これにより、複数の作用極6bを含むセンサ部10、略放射状、もしくは半径方向に沿って配置することで、略円筒状の培養容器5内の培地に含まれる特定物質の濃度分布を俯瞰的に把握することができる。
【0082】
よって、複数の作用極6bを含むセンサ部10を培養容器5の内底面5aに配置し、例えば、グルコース等の同一の物質を検出するようにすることで、より大きな略円筒状の培養容器5内の培地に含まれる特定物質の濃度分布を俯瞰的に把握することができる。
なお、放射状の配置は、図19(a)および図19(b)に示すように、略円筒状の培養容器5の中心から放射状に配置してもよいし、培養中に補充される培養液の滴下ポイントを中心に放射状に配置してもよい。
【0083】
(D)
上記実施形態では、略円筒状の有底の培養容器5を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、図20に示すように、複数(例えば9個)の作用極6bを含むセンサ部10が等間隔で並列に配置されたフラスコ形状を有する培養容器1020であってもよい。
【0084】
フラスコ形状の培養容器1020は、図20に示すように、培地を貯留する内部空間に対して小さい口1020aの部分を開閉するためのキャップ1020bが取り付けられており、内部空間において、細胞培養を行う。
このように、等間隔で並列に配置された複数の作用極6bを含むセンサ部10を用いてグルコース等の同一の物質を検出することで、矩形の培養容器1020内の培地に含まれる特定物質の濃度分布を俯瞰的に把握することができる。
【0085】
(E)
上記実施形態では、略円筒状の有底の培養容器5を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、図21は、複数(例えば6個)のウェル16aを含むマルチウェル形状を有する培養容器16を備えた細胞培養測定装置1aの構成を示す。
【0086】
マルチウェル形状の培養容器16の各ウェル16aの内底面5aには、それぞれ測定電極6を含むセンサ部10が装着されている。そして、各測定電極6の下方には、貫通孔11を介して配線接続部9が設けられている。
細胞培養測定装置1aの配線基板17上に設けられた複数の測定端子18は、培養容器16側の配線接続部9と接続される。培養容器16が配線基板17上に設置されると、配線接続部9が、配線基板17上に設けられた測定端子18を介して測定器19と電気的に接続される。
【0087】
これにより、培養容器5に装着されたセンサ部10に含まれる測定電極6を、測定器19に対して電気的に接続することができる。
また、図22は、キャップによって開閉可能な小さい口を有するフラスコ形状の培養容器20を含む細胞培養測定装置1bの構成を示す。
フラスコ形状の培養容器1020の内底面(内面)1020cには、複数の測定電極6を含むセンサ部10が装着されている。そして、各測定電極6の下方には、貫通孔11を介して配線接続部9が設けられている。
【0088】
培養容器5側の配線接続部9と接続される測定端子18は、配線基板17上に設けられている。そして、培養容器5が配線基板17上に設置されると、配線接続部9が、配線基板17上に設けられた測定端子18を介して測定器19と電気的に接続される。
さらに、図23(a)は、フラスコ形状を有する培養容器1020を含む細胞培養測定装置1cの構成を示す。
【0089】
フラスコ形状の培養容器1020内には測定電極6を含むセンサ部10が埋め込まれており、各測定電極6は、フラスコ形状の培養容器1020の側壁の内面と外面とを連通させる貫通孔1011を介して接続電極1021に接続される。
図23(b)は、フラスコ形状の培養容器1020の内底面1020cと側壁1022とを連通させる貫通孔1023を示す。
【0090】
貫通孔1023内には、配線基板(配線)1024が設けられている。そして、測定電極6を含むセンサ部10は、フラスコ形状の培養容器1020の内底面1020cに形成された凹部内に設けられている。
これにより、貫通孔1023の端部に形成された凹部内に設けられたセンサ部10に含まれる測定電極6が、貫通孔1023内に設けられた配線基板1024を介して、接続電極1021に接続される。
以上のように、上述した培養物の測定を行うセンサとして機能する測定電極6を含むセンサ部10が装着された培養容器を用いることで、測定電極6を用いて測定した結果に基づいて、培地交換または細胞播種または細胞回収を自動で行う細胞培養装置を形成することができる。
【0091】
(F)
上記実施形態では、培養容器の内底面に設けられた凹部(センサ装着部)に、センサ部が着脱可能な状態で取り付けられた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0092】
例えば、図24(a)に示すように、配線接続部1009がセンサ部1010の底面側に埋め込まれた構成であれば、培養容器1005の内底面5aと外底面5bとを連通させる貫通孔1005aにセンサ部1010が着脱可能な状態で装着される構成であってもよい。
この場合には、図24(b)に示すように、培養容器1005側に設けられた雌ネジ部5abに、センサ部1010の外周面に設けられた雄ネジ部20dが螺合することで、培養容器1005に設けられた貫通孔1005aに、センサ部1010を着脱可能な状態で取り付けることができる。
【0093】
また、図24(c)に示すように、センサ部1110が、培養容器1105の外底面5b側から貫通孔1105aに装着される構成であってもよい。
この場合には、図24(d)に示すように、培養容器1005側に設けられた雌ネジ部5abに、センサ部1110の外周面に設けられた雄ネジ部20dが螺合することで、培養容器1105に設けられた貫通孔1105aに、センサ部1110を着脱可能な状態で取り付けることができる。
【0094】
(G)
上記実施形態では、培養容器5内において培養された細胞を含む培地の測定を行う細胞培養測定装置に本発明を適用した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、細胞培養に限らず、細菌等の各種培養物の測定を行う培養測定装置に本発明が適用されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の培養測定装置は、センサを効率よく使用することで、従来よりもコストダウンを図ることができるという効果を奏することから、細胞や細菌等の各種培養物の測定を行う培養測定装置に対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0096】
1,1a,1b,1c 細胞培養測定装置(培養測定装置)
2 配線基板
3 測定器
3a 制御部
4 測定端子
4a 配線
5 培養容器
5a 内底面(内面)
5aa センサ装着部
5ab 雌ネジ部
5b 外底面(外面)
6 測定電極
6a 参照極
6b,6b1,6b2 作用極
6c 対極
7 接続部(弾性部材)
8a 試薬層
8b 保護膜
9 配線接続部
10,10a,10b,10c センサ部
11,11a,11b,11c 貫通孔(凹部)
16 培養容器
16a ウェル
17 配線基板
18 測定端子
19 測定器
20 培養容器
20a 本体部
20aa 工具穴
20b 溝
20c Oリング(液密形成部、リング部材)
20d 雄ネジ部
21 接続電極
25 測定電極
50 細胞培養装置
109 配線接続部
109a 係止部(係止部)
110 センサ部
120a 本体部
120d 爪部(第2爪部)
205 培養容器
205a 爪部(固定爪)
207 基板(接続部)
207a 突出部
209 配線接続部
210 センサ部
210a 被係止部
220a 本体部
309 配線接続部
309a 係止部(第2溝部)
310 センサ部
310a 爪部(第1爪部)
320a 本体部
410 センサ部
420a 本体部
510 センサ部
510a 溝部(第1溝部)
520a 本体部
530 接着剤
607 基板(接続部)
610 センサ部
630 接着剤(導電性接着剤)
705 培養容器
705aa センサ装着部
710 センサ部
711b 貫通孔
720a 本体部
720b フランジ部
720c リブ
805 培養容器
805a 雌ネジ部(第2ネジ部)
805aa センサ装着部
810 センサ部
811b 貫通孔
820a 本体部
820b 雄ネジ部(第1ネジ部)
855 培養容器
855aa センサ装着部
857 接続部
857a 突出部
857aa 雄ネジ部(第3ネジ部)
859 配線接続部
859a 穴
859aa 雌ネジ部(第4ネジ部)
860 センサ部
860a 本体部
907 コンタクトプローブ(接続部、弾性部材)
907a バネ
907c 基板
910 センサ部
920a 本体部
1020 培養容器
1020a 口
1020b キャップ
1020c 内底面(内面)
1022 側壁
1023 貫通孔
1024 配線基板
T1 取付け工具
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