(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035697
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】評価システム、評価方法、および評価プログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20220225BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20220225BHJP
G01N 21/59 20060101ALN20220225BHJP
【FI】
G06T7/00 610Z
G01N21/27 Z
G01N21/59 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020140196
(22)【出願日】2020-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100144440
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 一之
(72)【発明者】
【氏名】山下 智弘
(72)【発明者】
【氏名】西村 裕章
【テーマコード(参考)】
2G059
5L096
【Fターム(参考)】
2G059AA02
2G059AA10
2G059BB10
2G059EE01
2G059EE13
2G059KK04
2G059MM09
2G059MM10
5L096AA02
5L096AA06
5L096BA03
5L096CA24
5L096DA01
5L096DA02
5L096EA43
5L096FA32
5L096FA33
5L096GA40
5L096GA51
(57)【要約】
【課題】コンクリート表面に適用された被覆体の透過度を評価すること。
【解決手段】一実施形態に係る評価システムは、光透過性を有する被覆体が適用されたコンクリート表面を写す撮影画像を取得する画像取得部と、撮影画像内に対象領域を設定し、該対象領域を構成する複数の画素のそれぞれに対応する画素値を取得する画素値取得部と、複数の画素のそれぞれの画素基準値を設定する基準設定部と、複数の画素のそれぞれについて画素値と画素基準値との差を算出する算出部と、複数の画素のそれぞれの差に基づいてコンクリート表面上の被覆体の透過度を評価する評価部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有する被覆体が適用されたコンクリート表面を写す撮影画像を取得する画像取得部と、
前記撮影画像内に対象領域を設定し、該対象領域を構成する複数の画素のそれぞれに対応する画素値を取得する画素値取得部と、
前記複数の画素のそれぞれの画素基準値を設定する基準設定部と、
前記複数の画素のそれぞれについて前記画素値と前記画素基準値との差を算出する算出部と、
前記複数の画素のそれぞれの前記差に基づいて前記コンクリート表面上の前記被覆体の透過度を評価する評価部と、
を備える評価システム。
【請求項2】
前記評価部が、前記複数の画素のうち前記差が所与の閾値以下である画素の割合に基づいて前記透過度を評価する、
請求項1に記載の評価システム。
【請求項3】
前記評価部が、前記割合が所与の評価基準値以上であるか否かに基づいて前記透過度を評価する、
請求項2に記載の評価システム。
【請求項4】
前記評価部が、
前記対象領域を複数の小領域に分割し、
前記複数の小領域のそれぞれについて前記割合を算出し、
前記複数の小領域に対応する複数の前記割合についての平均値および分散の少なくとも一方に基づいて前記透過度を評価する、
請求項2に記載の評価システム。
【請求項5】
前記評価部が、前記平均値が所与の第1評価基準値未満であり且つ前記分散が所与の第2評価基準値未満である場合には、前記透過度が良好であると評価し、それ以外の場合には前記透過度が不良であると評価する、
請求項4に記載の評価システム。
【請求項6】
前記基準設定部が、
前記被覆体が適用される前の前記コンクリート表面を写す基準画像を取得し、
前記対象領域と同じ部分を写す基準領域を前記基準画像内に設定し、
前記基準領域を構成する前記複数の画素のそれぞれについて前記画素基準値を設定する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の評価システム。
【請求項7】
前記画素値取得部が、前記複数の画素のオリジナル画素値のそれぞれを、境界値に基づいて第1画素値および第2画素値のいずれか一方に変換し、
前記基準設定部が、前記複数の画素の前記画素基準値のそれぞれを、前記第1画素値および前記第2画素値のいずれか一方に設定する、
請求項1~6のいずれか一項に記載の評価システム。
【請求項8】
少なくとも一つのプロセッサを備える評価システムにより実行される評価方法であって、
光透過性を有する被覆体が適用されたコンクリート表面を写す撮影画像を取得するステップと、
前記撮影画像内に対象領域を設定し、該対象領域を構成する複数の画素のそれぞれに対応する画素値を取得するステップと、
前記複数の画素のそれぞれの画素基準値を設定するステップと、
前記複数の画素のそれぞれについて前記画素値と前記画素基準値との差を算出するステップと、
前記複数の画素のそれぞれの前記差に基づいて前記コンクリート表面上の前記被覆体の透過度を評価するステップと、
を含む評価方法。
【請求項9】
光透過性を有する被覆体が適用されたコンクリート表面を写す撮影画像を取得するステップと、
前記撮影画像内に対象領域を設定し、該対象領域を構成する複数の画素のそれぞれに対応する画素値を取得するステップと、
前記複数の画素のそれぞれの画素基準値を設定するステップと、
前記複数の画素のそれぞれについて前記画素値と前記画素基準値との差を算出するステップと、
前記複数の画素のそれぞれの前記差に基づいて前記コンクリート表面上の前記被覆体の透過度を評価するステップと、
をコンピュータに実行させる評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一側面は、評価システム、評価方法、および評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート表面を評価する技術が知られている。例えば、特許文献1には、構造物の表面に発現された凹状の変状部を検出する方法が記載されている。特許文献2には、波長360~750nmの可視光透過率が50%以上であり且つヘーズ(haze)が70以下である水系塗料を用いることで、施工後のコンクリート面の目視確認を容易にする方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-211314号公報
【特許文献2】特開2019-7312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンクリート表面に適用された被覆体を評価するための仕組みが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る評価システムは、光透過性を有する被覆体が適用されたコンクリート表面を写す撮影画像を取得する画像取得部と、撮影画像内に対象領域を設定し、該対象領域を構成する複数の画素のそれぞれに対応する画素値を取得する画素値取得部と、複数の画素のそれぞれの画素基準値を設定する基準設定部と、複数の画素のそれぞれについて画素値と画素基準値との差を算出する算出部と、複数の画素のそれぞれの差に基づいてコンクリート表面上の被覆体の透過度を評価する評価部とを備える。
【0006】
このような側面においては、撮影画像内に設定された対象領域内の個々の画素について画素値と画素基準値との差が算出され、その差に基づいてコンクリート表面上の被覆体の透過度が評価される。複数の画素のそれぞれについての画素値の差を考慮することでその被覆体を適切に評価できる。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一側面によれば、コンクリート表面に適用された被覆体を評価できる。例えば、被覆体の透過度を評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る評価システムの機能構成の一例を示す図である。
【
図2】実施形態に係る評価システムのために用いられるコンピュータの一般的なハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】実施形態に係る評価システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図9】複数の対象領域を用いて透過度を評価する例を示す図である。
【
図10】複数の対象領域を用いて透過度を評価する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本開示での実施形態を詳細に説明する。図面の説明において同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
[システムの概要]
実施形態に係る評価システム1は、コンクリート表面上の被覆体の透過度を評価するコンピュータシステムである。評価システム1は任意の構造物のコンクリート表面についてその評価を実行してよい。例えば、その構造物は試験体でもよいし、一般に利用されている工作物(例えば、建物、橋梁など)でもよい。本開示の一側面では、コンクリート表面に適用された被覆体の透過度を評価できる。
【0011】
本開示において、被覆体とは、コンクリート表面を覆うように該表面に適用される材料をいう。コンクリート表面に適用された被覆体は該表面に固着する。例えば、被覆体はコンクリートの剥落を防止したり、コンクリート表面を補強したりするために用いられる。しかし、被覆体の目的はこれに限定されない。本開示では、被覆体は光透過性を有する。光透過性とは光を通す性質をいう。コンクリート表面上の被覆体が光透過性を有するので、該被覆体に入射した光の少なくとも一部はコンクリート表面で反射して該被覆体から出射する。したがって、人は被覆体に覆われたコンクリート表面を視認できる。光透過性を有する被覆体を構成する成分または成分の組合せは何ら限定されない。例えば、被覆体はエポキシ化合物および繊維強化プラスチック(FRP)を含んでもよい。
【0012】
被覆体の透過度とは、被覆体の光透過性の強さまたは高さを示す指数をいう。光透過性が強いほどまたは高いほど、透過度が高い。被覆体の透過度が高いほど、被覆体がより透明に近くなり、被覆体で覆われたコンクリート表面を人がより明確に視認できる。すなわち、透過度が高いほど、コンクリート表面の視認性が上がる。以下では、被覆体の透過度を単に「透過度」ともいう。「被覆体の透過度を評価する」とは、その透過度がどのくらい高いかを判定する処理をいう。言い換えると、透過度の評価は、被覆体に覆われたコンクリート表面の視認性の程度(すなわち、該コンクリート表面をどのくらい明確に視認できるか)を判定する処理である。
【0013】
評価システム1は、被覆体が適用されたコンクリート表面を写す撮影画像(以下では単に「撮影画像」ともいう)を解析して透過度を評価する。撮影画像はカメラなどの撮像装置によって得られる。撮影画像は静止画でもよいし、動画像を構成するフレーム画像でもよい。評価システム1は、その撮影画像内に対象領域を設定し、この対象領域を構成する複数の画素のそれぞれに対応する画素値と、該複数の画素のそれぞれの画素基準値との差に基づいて透過度を評価する。対象領域とは撮影画像の少なくとも一部を構成する部分をいう。画素値とは撮影画像の画素の色に対応する物性値をいう。一方、画素基準値とは画素値と比較するために用いられる基準値をいう。より具体的には、画素基準値は、被覆体が適用されていないコンクリート表面を撮影した場合に、またはその撮影を実施したと仮定した場合に得られる画素値である。
【0014】
[システムの構成]
図1は評価システム1の機能構成の一例を示す図である。評価システム1は機能的構成要素として画像取得部11、画素値取得部12、基準設定部13、算出部14、および評価部15を備える。画像取得部11は撮影画像を取得する機能モジュールである。画素値取得部12は撮影画像の対象領域を構成する複数の画素に対応する複数の画素値を取得する機能モジュールである。基準設定部13はその複数の画素に対応する複数の画素基準値を設定する機能モジュールである。算出部14は複数の画素のそれぞれについて画素値と画素基準値との差を算出する機能モジュールである。評価部15は複数の画素のそれぞれの差に基づいて透過度を評価する機能モジュールである。
【0015】
図2は、評価システム1のために用いられるコンピュータ100の一般的なハードウェア構成の一例を示す図である。例えば、コンピュータ100はプロセッサ101、主記憶部102、補助記憶部103、通信制御部104、入力装置105、および出力装置106を備える。プロセッサ101はオペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムを実行する。主記憶部102は例えばROMおよびRAMで構成される。補助記憶部103は例えばハードディスクまたはフラッシュメモリで構成され、一般に主記憶部102よりも大量のデータを記憶する。通信制御部104は例えばネットワークカードまたは無線通信モジュールで構成される。入力装置105は例えばキーボード、マウスなどで構成される。出力装置106は例えばモニタおよびスピーカで構成される。
【0016】
評価システム1の各機能モジュールは、補助記憶部103に予め記憶される評価プログラム110により実現される。プロセッサ101または主記憶部102の上に評価プログラム110を読み込ませてその評価プログラム110を実行させることで実現される。プロセッサ101はその評価プログラム110に従って、通信制御部104、入力装置105、または出力装置106を動作させ、主記憶部102または補助記憶部103におけるデータの読み出しおよび書き込みを行う。処理に必要なデータまたはデータベースは主記憶部102または補助記憶部103内に格納される。
【0017】
評価プログラム110は、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどの非一時的な記録媒体に固定的に記録された上で提供されてもよい。あるいは、評価プログラム110は、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。
【0018】
評価システム1は1台のコンピュータ100で構成されてもよいし、複数台のコンピュータ100で構成されてもよい。複数台のコンピュータ100を用いる場合には、これらのコンピュータ100がインターネットやイントラネットなどの通信ネットワークを介して接続されることで、論理的に一つの評価システム1が構築される。評価システム1はクライアント-サーバ型のシステムとして構築されてもよいし、スタンドアロンのコンピュータ上に構築されてもよい。
【0019】
[システムの動作]
図3を参照しながら評価システム1の動作の一例を説明する。
図3は評価システム1の動作の一例を処理フローS1として示すフローチャートである。
【0020】
ステップS11では、画像取得部11が撮影画像を取得する。撮影画像の取得方法は限定されない。例えば、画像取得部11は撮像装置または他のコンピュータから撮影画像を受信してもよい。あるいは、画像取得部11は所与のデータベースまたはファイルシステムにアクセスして撮影画像を読み出してもよい。あるいは、画像取得部11は評価システム1のユーザにより入力された撮影画像を取得してもよい。取得される撮影画像は、カラー画像でもよいしグレースケール画像でもよい。
【0021】
ステップS12では、画素値取得部12が、その撮影画像内に一または複数の対象領域を設定する。画素値取得部12は連続して並ぶ複数の画素の集合から成る部分を対象領域として設定する。対象領域の形状および寸法は限定されず、任意の方針で設定されてよい。例えば、画素値取得部12は撮影画像の全体を対象領域として設定してもよいし、撮影画像の一部のみを対象領域として設定してもよい。対象領域の形状は、例えば、矩形、他の多角形、円、楕円、または線でもよい。
【0022】
一例では、画素値取得部12はコンクリート表面上の模様を写す部分を対象領域として設定してもよい。コンクリート表面上の模様とは、人が視認可能な任意の形をいう。模様はコンクリート表面上に自然に発生する物理的現象の結果であってもよく、例えばひび割れ、凹み、または穴でもよい。あるいは、模様は人為的に施された形状でもよく、例えば、塗料または印刷による印(例えば、図形、文字など)でもよい。
【0023】
図4は対象領域の設定のいくつかの例を示す図である。
図4は、横線、斜め線、および黒の矩形が印刷されたコンクリート表面を写す撮影画像200を示す。画素値取得部12は撮影画像200の全体を対象領域として設定してもよく、対象領域201はその一例である。あるいは、画素値取得部12は撮影画像200の一部であり且つ一部のみが模様と重なる対象領域を設定してもよく、対象領域202はその一例である。あるいは、画素値取得部12は撮影画像200の一部であり且つ全体が模様と重なる対象領域を設定してもよく、対象領域203,204はその一例である。対象領域203の全体は黒の矩形と重なり、対象領域204の全体は斜め線と重なる。
【0024】
図5も対象領域の設定のいくつかの例を示す図である。
図5は、クラックスケール(crack scale)が印刷されたコンクリート表面を写す撮影画像210を示す。画素値取得部12は撮影画像210の全体を対象領域として設定してもよく、対象領域211はその一例である。あるいは、画素値取得部12は撮影画像210の一部であり且つ一部のみが模様と重なる対象領域を設定してもよく、対象領域212はその一例である。あるいは、画素値取得部12は撮影画像210の一部であり且つ全体が模様と重なる対象領域を設定してもよく、対象領域213はその一例である。
【0025】
図3に戻って、ステップS13では、画素値取得部12が対象領域内の個々の画素の画素値を取得する。より具体的には、画素値取得部12は該複数の画素のそれぞれに対応する画素値を取得する。
【0026】
画素値取得部12は対象領域を構成する個々の画素について、明度を示すグレースケール画素値を取得してもよい。グレースケール画素値は8ビットで表現され、したがって、0(黒)から255(白)の間のいずれかの整数値を取る。一例では、画素値取得部12は対象領域を写すカラー画像をグレースケール画像に変換し、変換された対象領域内の複数の画素のそれぞれの画素値(すなわち、グレースケール画素値)を取得してもよい。すなわち、画素値取得部12は対象領域内の複数の画素のそれぞれについて、オリジナル画素値であるRGB値をグレースケール画素値に変換してもよい。撮影画像がグレースケール画像である場合には、画素値取得部12はその撮影画像から直接に、対象領域内の複数の画素のそれぞれのグレースケール画素値を取得する。
【0027】
あるいは、画素値取得部12は対象領域を構成する個々の画素についてオリジナル画素値を二値に変換し、その変換された画素値(バイナリ画素値)を取得してもよい。すなわち、画素値取得部12は対象領域を写す画像を二値画像に変換してもよい。一例では、画素値取得部12は対象領域を写すグレースケール画像の個々の画素値(グレースケール画素値)を二値に変換する。例えば、画素値取得部12は個々のグレースケール画素値を、所与の境界値Vbに基づいて第1画素値Px1および第2画素値Px2のいずれか一方に変換する。一例では、画素値取得部12は境界値Vb未満であるグレースケール画素値を第1画素値Px1に変換し、その境界値Vb以上であるグレースケール画素値を第2画素値Px2に変換する。境界値Vbの設定方法は限定されない。例えば、境界値Vbは128などの固定値でもよいし、動的に設定されてもよい。第1画素値Px1および第2画素値Px2の設定方法も限定されず、任意の方針で設定されてよい。一例では、境界値Vbが128であり、第1画素値Px1が0(黒)であり、第2画素値Px2が255(白)であってもよい。あるいは、第1画素値Px1および第2画素値Px2が、より簡易な二値である0および1によって表されてもよい。
【0028】
あるいは、画素値取得部12は対象領域を構成する個々の画素についてカラー画素のRGB値を画素値として取得してもよい。
【0029】
ステップS14では、基準設定部13が対象領域内の個々の画素について画素基準値を設定する。画素基準値の設定方法は限定されず、任意の方針で設計されてよい。
【0030】
一例では、基準設定部13は被覆体が適用される前のコンクリート表面を写す基準画像に基づいて画素基準値を設定してもよい。基準設定部13は基準画像を取得し、対象領域と同じ部分を写す基準領域を該基準画像内に設定し、基準領域を構成する複数の画素のそれぞれについて画素基準値を設定する。
【0031】
基準設定部13は任意の手法で基準画像を取得してよい。例えば、基準設定部13は撮像装置または他のコンピュータから基準画像を受信してもよい。あるいは、基準設定部13は所与のデータベースまたはファイルシステムにアクセスして基準画像を読み出してもよい。あるいは、基準設定部13は評価システム1のユーザにより入力された基準画像を取得してもよい。
【0032】
基準設定部13は基準領域を基準画像内に設定する。例えば、
図4に示す対象領域201が設定されている場合には、基準設定部13はその対象領域201と同じ部分を写す基準領域を設定する。
図4に示す対象領域203が設定されている場合には、基準設定部13はその対象領域203と同じ部分を写す基準領域を設定する。
図5に示す対象領域212が設定されている場合には、基準設定部13はその対象領域212と同じ部分を写す基準領域を設定する。対象領域を構成する複数の画素のそれぞれについて画素値を画素基準値に対応付けるために、基準設定部13は必要に応じて、基準領域のサイズおよび向きを対象領域に合わせる処理(基準領域と対象領域との間で画素の個数および配列を一致させる処理)を実行する。
【0033】
基準設定部13は基準領域内の個々の画素について画素基準値を設定する。例えば、基準設定部13は対象領域を構成する個々の画素値を取得する場合と同様の手法を用いて画素基準値を設定してもよい。対象領域がグレースケール画素値の集合で表される場合には、基準設定部13はグレースケール画素値によって個々の画素基準値を設定する。一例では、基準設定部13は基準領域を写すカラー画像をグレースケール画像に変換し、変換された基準領域内の複数の画素のそれぞれのグレースケール画素値を取得してもよい。取得された基準画像がグレースケール画像である場合には、基準設定部13はその基準画像から直接に、基準領域内の複数の画素のそれぞれのグレースケール画素値を取得する。
【0034】
対象領域の画素値がバイナリ画素値の集合で表される場合には、基準設定部13はバイナリ画素値によって個々の画素基準値を設定する。基準設定部13は基準領域を構成する個々の画素について画素値を二値に変換し、その変換された画素値を取得する。一例では、基準設定部13は基準領域を写すグレースケール画像の個々のグレースケール画素値を二値に変換する。例えば、基準設定部13は個々のグレースケール画素値を境界値Vbに基づいて第1画素値Px1および第2画素値Px2のいずれか一方に変換する。この変換は、対象領域内の個々の画素についてバイナリ画素値を取得する手法と同様である。境界値Vb、第1画素値Px1、および第2画素値Px2の具体的な値は、対象領域のバイナリ画素値を取得する場合と同じように設定される。
【0035】
対象領域の画素値がRGB値で表される場合には、基準設定部13はRGB値によって個々の画素基準値を設定する。基準設定部13は基準領域を写すカラー画像から個々の画素のRGB値を取得する。
【0036】
基準設定部13は基準画像を用いることなく、対象領域を構成する複数の画素のそれぞれについて画素基準値を設定してもよい。例えば、基準設定部13はユーザ入力に従って個々の画素基準値を設定してもよい。この場合も、画素基準値はグレースケール画素値により設定されてもよいし、第1画素値Px1および第2画素値Px2から成る二値によって設定されてもよいし、RGB値によって設定されてもよい。
【0037】
ステップS15では、算出部14が対象領域内の個々の画素について画素値と画素基準値との差を算出する。一例では、この差は絶対値により表現される。画素値および画素基準値が二値で表される場合には、算出部14は双方の二値の差を求める。画素値および画素基準値がグレースケール画素値で表される場合には、算出部14は双方のグレースケール画素値の差(すなわち、明度の差)を求める。画素値および画素基準値がRGB値で表される場合には、算出部14は双方のカラー画素の色差ΔE*を求める。画素値のRGB値を(R1,G1,B1)と表し、画素基準値のRGB値を(R2,G2,B2)と表すとすると、色差ΔE*は下記式(1)により得られる。
【0038】
【0039】
ステップS16では、評価部15が算出された複数の差に基づいて被覆体の透過度を評価する。この評価手法は限定されず、評価部15は任意の手法によって透過度を評価してよい。
【0040】
一例では、評価部15は対象領域を構成する複数の画素のうち、画素値と画素基準値との差が所与の閾値Th以下である画素の割合Rに基づいて透過度を評価してもよい。評価部15は割合Rをそのまま、透過度に関する評価結果として用いてもよい。あるいは、評価部15は割合Rが所与の評価基準値Ea以上であるか否かに基づいて透過度を評価してもよい。
【0041】
例えば、評価部15は割合Rが評価基準値Ea以上であれば透過度が良好であると評価し、割合Rが評価基準値Ea未満であれば透過度が不良であると評価する。評価基準値Eaの具体的な値は限定されず、任意の方針に基づいて設定されてよい。或る画素において画素値と画素基準値との差が相対的に低いということは、被覆体が適用される前と後との間でコンクリート表面の見え方が同じかまたは似ていることを意味する。したがって、差が相対的に低いということは、被覆体の透過度が相対的に高いことを意味する。一方、或る画素においてその差が相対的に高いということは、被覆体の適用によってコンクリート表面の見え方が変わったことを意味する。この見え方の変化は被覆体の透過度が相対的に低いことに起因する。したがって、割合Rが相対的に高いということは、対象領域の全体において被覆体の透過度が相対的に高いことを意味する。一方、割合Rが相対的に低いということは、対象領域の全体において被覆体の透過度が相対的に低いことを意味する。
【0042】
あるいは、評価部15は対象領域を複数の小領域に分割し、それぞれの小領域について、画素値と画素基準値との差が所与の閾値Th以下である画素の割合Rsを算出する。そして、評価部15は複数の小領域について得られた複数の割合Rsの平均値Avおよび分散Vrの少なくとも一方を求める。評価部15は平均値Avおよび分散Vrの少なくとも一方をそのまま、透過度に関する評価結果として用いてもよい。あるいは、評価部15は平均値Avおよび分散Vrをそれぞれ所与の評価基準値Ebおよび評価基準値Ecと比較して透過度を評価してもよい。評価基準値Eb,Ecの具体的な値は限定されず、任意の方針に基づいて設定されてよい。
【0043】
例えば、評価部15は、平均値Avが評価基準値Eb未満であり且つ分散Vrが評価基準値Ec未満であれば透過度が良好であると評価し、それ以外の場合には透過度が不良であると評価してもよい。分散Vrにかかわらず平均値Avが相対的に大きいということは、被覆体の適用によって対象領域の見え方が全体的に変わったことを意味する。すなわち、この場合は被覆体の透過度が全体的に低いということができる。また、平均値Avにかかわらず分散Vrが相対的に大きいということは、被覆体の適用によって対象領域の見え方が変わった小領域が存在することを意味する。すなわち、対象領域の一部において被覆体の透過度が相対的に低いということができる。一方、平均値Avおよび分散Vrの双方が相対的に小さいということは、被覆体が適用される前と後との間で対象領域の見え方が全体として同じかまたは似ていることを意味する。すなわち、この場合には、対象領域の全体にわたって被覆体の透過度が相対的に高いといえる。
【0044】
図6は、画素値と画素基準値との差に基づいて透過度を評価する例を示す図である。この例では、
図4に示す対象領域204が30画素で表され。対象領域204の個々の画素について画素値が黒および白の二値で表されるとする。そのような画素値の取得に対応して、個々の基準画素値はすべて黒であるとし、
図6ではその画素基準値の集合を基準領域221として表す。したがって、対象領域204の或る画素について、画素値が黒であれば画素値と画素基準値との差は0であり、画素値が白であればその差は0より大きい。閾値Thは0であるとする。一例として、対象領域204から得られる画素値の集合としてデータ231が得られたとする。このデータ231は21個の黒画素と9個の白画素とを示すので、差が閾値Th(=0)以下である画素の割合Rは0.7(70%)である。別の例として、対象領域204からデータ232が得られたとする。このデータ232は15個の黒画素と15個の白画素とを示すので、R=15/30=0.5(50%)である。
【0045】
図7は、画素値と画素基準値との差に基づいて透過度を評価する別の例を示す図である。この例では、
図5に示す対象領域213が40画素で表され。対象領域213の個々の画素について画素値が黒および白の二値で表されるとする。そのような画素値の取得に対応して、個々の基準画素値はすべて黒であるとし、
図7ではその画素基準値の集合を基準領域241として表す。したがって、対象領域213の或る画素について、画素値が黒であれば画素値と画素基準値との差は0であり、画素値が白であればその差は0より大きい。閾値Thは0であるとする。一例として、対象領域213から得られる画素値の集合としてデータ251が得られたとする。このデータ251は32個の黒画素と8個の白画素とを示すので、差が閾値Th(=0)以下である画素の割合Rは0.8(80%)である。別の例として、対象領域213からデータB252が得られたとする。このデータ252は12個の黒画素と28個の白画素とを示すので、R=12/40=0.3(30%)である。さらに別の例として、対象領域213からデータ253が得られたとする。このデータ253は8個の黒画素と32個の白画素とを示すので、R=8/40=0.2(20%)である。
【0046】
図6および
図7の例において評価基準値Eaが0.3(30%)であるとすると、評価部15は、データ231,232,251,252の場合には透過度が良好であると評価し、データ253が得られた場合には透過度が不良であると評価する。
【0047】
図8は、画素値と画素基準値との差に基づいて透過度を評価するさらに別の例を示す図である。この例では、
図5に示す対象領域212の個々の画素について画素値が黒および白の二値で表されるとする。また、対象領域212に対応する基準領域261の個々の画素についても画素基準値が黒および白の二値で表されるとする。
図8では個々の画素は微細な点で表される。この例では、評価部15は透過度を評価するために、対象領域212を15個の小領域212aに分割し、その小領域212aに対応させて、基準領域261を15個の小領域261aに分割する。対象領域212の或る画素について、画素値が画素基準値と同じであれば差は0であり、画素値が画素基準値と異なればその差は0より大きい。閾値Thは0であるとする。一例として、対象領域212から得られる画素値の集合としてデータ271が得られたとする。この場合には、評価部15は、個々の小領域212aに対応する複数の割合Rsの平均値Avが評価基準値Eb未満であり、且つ該複数の割合Rsの分散Vrが評価基準値Ec未満であると判定して、透過度が良好であると評価してもよい。別の例として、対象領域212からデータ272が得られたとする。この場合には、評価部15は平均値Avが評価基準値Eb以上であると判定して、透過度が不良であると評価してもよい。あるいは、評価部15は分散Vrが評価基準値Ec以上であると判定して、透過度が不良であると評価してもよい。
【0048】
図3に戻って、ステップS17では、評価部15が評価結果を出力する。評価結果の出力方法は限定されない。例えば、評価部15は評価結果を、モニタ上に表示してもよいし、所定のデータベースに格納してもよいし、他のコンピュータシステムに送信してもよい。あるいは、評価システム1はその評価結果を用いてさらなる処理を実行してもよい。評価結果の表現方法も限定されない。例えば、評価部15は、透過度を数値で示す評価結果を出力してもよいし、透過度が良好であるか不良であるかを示す評価結果を出力してもよい。
【0049】
上述したように、ステップS12では複数の対象領域が設定されてもよい。この場合には、該複数の対象領域のそれぞれについてステップS13~S17の処理が実行されてもよく、被覆体の透過度がそれぞれの対象領域において評価されてもよい。あるいは、ステップS16において、複数の対象領域のそれぞれの割合Rに基づいて、被覆体全体としての一つの透過度が評価されてもよい。
【0050】
図9は、複数の対象領域を用いて透過度を評価する一例を示す図である。この例では、ステップS12において、画素値取得部12が撮影画像300内に矩形の対象領域301~305を設定する。対象領域301~305は長さが同じであるが、幅が互いに異なる。例えば、対象領域301~305の幅は、コンクリート表面に発生し得るひびの典型的な幅を考慮して設定されてもよい。
【0051】
ステップS13では、画素値取得部12が対象領域301~305のそれぞれについて、該対象領域内の個々の画素値を取得する。この例では、画素値取得部12は個々の画素値をバイナリ画素値(0(黒)または255(白))で取得する。
【0052】
ステップS14では、基準設定部13が、対象領域301~305に対応する基準領域311~315を設定する。基準領域311,312,313,314,315はそれぞれ、対象領域301,302,303,304,305に対応する。
図9の例では、基準設定部13は基準領域311~315のそれぞれについて、該基準領域の個々の画素値を0(黒)に設定する。
【0053】
ステップS15では、算出部14が個々の対象領域について画素値と画素基準値との差を算出する。算出部14はこの計算を、対象領域301と基準領域311との間、対象領域302と基準領域312との間、対象領域303と基準領域313との間、対象領域304と基準領域314との間、および対象領域305と基準領域315との間で実行する。
【0054】
ステップS16では、評価部15が、算出された複数の差に基づいて被覆体の透過度を評価する。評価部15は対象領域301~305のそれぞれについて割合Rを算出し、それぞれの割合Rが評価基準値Ea以上であるか否かを判定する。一例では、評価部15は割合Rと対象領域の幅との組合せに基づいて透過度を評価してもよい。例えば、幅0.5mm未満の対象領域について割合Rが評価基準値Ea未満であり、幅0.5mm以上の対象領域について割合Rが評価基準値Ea以上である場合には、評価部15は「幅0.5mm以上の模様を検出できる程度の透過度」という評価を行ってもよい。
【0055】
図10は、複数の対象領域を用いて透過度を評価する別の例を示す図である。この例では、ステップS12において、画素値取得部12が同じ形状および寸法の対象領域321~325を撮影画像320内に設定する。
【0056】
ステップS13では、画素値取得部12が対象領域321~325のそれぞれについて、該対象領域内の個々の画素値を取得する。この例では、画素値取得部12は個々の画素値をグレースケール画素値で取得する。
【0057】
ステップS14では、基準設定部13が、対象領域321~325に対応する基準領域331~335を設定する。基準領域331,332,333,334,335はそれぞれ、対象領域321,322,323,324,325に対応する。
図10の例では、基準設定部13は基準領域331~335のそれぞれについて、該基準領域の個々の画素値を0(黒)に設定する。
【0058】
ステップS15では、算出部14が個々の対象領域について画素値と画素基準値との差を算出する。算出部14はこの計算を、対象領域321と基準領域331との間、対象領域322と基準領域332との間、対象領域323と基準領域333との間、対象領域324と基準領域334との間、および対象領域325と基準領域335との間で実行する。
【0059】
ステップS16では、評価部15が、算出された複数の差に基づいて被覆体の透過度を評価する。評価部15は対象領域321~325のそれぞれについて割合Rを算出し、それぞれの割合Rが評価基準値Ea以上であるか否かを判定する。一例では、評価部15は割合Rと明度との組合せに基づいて透過度を評価してもよい。例えば、評価部15は「対象領域323~325に対応する明度またはコントラストを検出できる程度の透過度」という評価を行ってもよい。
【0060】
[効果]
以上説明したように、本開示の一側面に係る評価システムは、光透過性を有する被覆体が適用されたコンクリート表面を写す撮影画像を取得する画像取得部と、撮影画像内に対象領域を設定し、該対象領域を構成する複数の画素のそれぞれに対応する画素値を取得する画素値取得部と、複数の画素のそれぞれの画素基準値を設定する基準設定部と、複数の画素のそれぞれについて画素値と画素基準値との差を算出する算出部と、複数の画素のそれぞれの差に基づいてコンクリート表面上の被覆体の透過度を評価する評価部とを備える。
【0061】
本開示の一側面に係る評価方法は、少なくとも一つのプロセッサを備える評価システムにより実行される。この評価方法は、光透過性を有する被覆体が適用されたコンクリート表面を写す撮影画像を取得するステップと、撮影画像内に対象領域を設定し、該対象領域を構成する複数の画素のそれぞれに対応する画素値を取得するステップと、複数の画素のそれぞれの画素基準値を設定するステップと、複数の画素のそれぞれについて画素値と画素基準値との差を算出するステップと、複数の画素のそれぞれの差に基づいてコンクリート表面上の被覆体の透過度を評価するステップとを含む。
【0062】
本開示の一側面に係る評価プログラムは、光透過性を有する被覆体が適用されたコンクリート表面を写す撮影画像を取得するステップと、撮影画像内に対象領域を設定し、該対象領域を構成する複数の画素のそれぞれに対応する画素値を取得するステップと、複数の画素のそれぞれの画素基準値を設定するステップと、複数の画素のそれぞれについて画素値と画素基準値との差を算出するステップと、複数の画素のそれぞれの差に基づいてコンクリート表面上の被覆体の透過度を評価するステップとをコンピュータに実行させる。
【0063】
このような側面においては、撮影画像内に設定された対象領域内の個々の画素について画素値と画素基準値との差が算出され、その差に基づいてコンクリート表面上の被覆体の透過度が評価される。複数の画素のそれぞれについての画素値の差を考慮することでその被覆体を適切に評価できる。例えば、複数の画素に対応する複数の差を考慮することで、特定の一点ではなく二次元状に広がる領域における透過度を一度に評価できる。
【0064】
他の側面に係る評価システムでは、評価部が、複数の画素のうち差が所与の閾値以下である画素の割合に基づいて透過度を評価してもよい。このような割合を考慮することで被覆体の透過度を定量的に評価できる。
【0065】
他の側面に係る評価システムでは、評価部が、割合が所与の評価基準値以上であるか否かに基づいて透過度を評価してもよい。その割合が高いほど、対象領域における透過度が高いといえる。その割合を評価基準値と比べることで、透過度に関する評価結果を分かりやすく示すことができる。
【0066】
他の側面に係る評価システムでは、評価部が、対象領域を複数の小領域に分割し、複数の小領域のそれぞれについて割合を算出し、複数の小領域に対応する複数の割合についての平均値および分散の少なくとも一方に基づいて透過度を評価してもよい。対象領域を構成する複数の小領域に対応する複数の割合の平均値および分散を採用することで、対象領域における透過度の分布またはばらつきを考慮してその透過度を評価できる。
【0067】
他の側面に係る評価システムでは、評価部が、平均値が所与の第1評価基準値未満であり且つ分散が所与の第2評価基準値未満である場合には、透過度が良好であると評価し、それ以外の場合には透過度が不良であると評価してもよい。平均値および分散の双方について基準値と比較することで、透過度に関する評価結果を分かりやすく示すことができる。
【0068】
他の側面に係る評価システムでは、基準設定部が、被覆体が適用される前のコンクリート表面を写す基準画像を取得し、対象領域と同じ部分を写す基準領域を基準画像内に設定し、基準領域を構成する複数の画素のそれぞれについて画素基準値を設定してもよい。このような基準画像を用いることで、被覆体が適用される前と後との間で実際に生じたコンクリート表面の見え方の変化を、画素値と画素基準値との差として得ることができる。したがって、被覆体の透過度をより正確に評価できる。
【0069】
他の側面に係る評価システムでは、画素値取得部が、複数の画素のオリジナル画素値のそれぞれを、境界値に基づいて第1画素値および第2画素値のいずれか一方に変換し、基準設定部が、複数の画素の画素基準値のそれぞれを、第1画素値および第2画素値のいずれか一方に設定してもよい。画素値および画素基準値を二値化することで、画素値と画素基準値との差が単純化される。したがって、より単純な計算および判定によって被覆体の透過度を評価できる。
【0070】
[変形例]
以上、本開示の実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。本開示は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0071】
コンピュータ内で二つの数値の大小関係を比較する際には、「以上」および「よりも大きい」という二つの基準のどちらを用いてもよく、「以下」および「未満」という二つの基準のうちのどちらを用いてもよい。このような基準の選択は、二つの数値の大小関係を比較する処理についての技術的意義を変更するものではない。
【0072】
本開示において、「少なくとも一つのプロセッサが、第1の処理を実行し、第2の処理を実行し、…第nの処理を実行する。」との表現、またはこれに対応する表現は、第1の処理から第nの処理までのn個の処理の実行主体(すなわちプロセッサ)が途中で変わる場合を含む概念である。すなわち、この表現は、n個の処理のすべてが同じプロセッサで実行される場合と、n個の処理においてプロセッサが任意の方針で変わる場合との双方を含む概念である。
【0073】
少なくとも一つのプロセッサにより実行される方法の処理手順は上記実施形態での例に限定されない。例えば、上述したステップ(処理)の一部が省略されてもよいし、別の順序で各ステップが実行されてもよい。また、上述したステップのうちの任意の2以上のステップが組み合わされてもよいし、ステップの一部が修正又は削除されてもよい。あるいは、上記の各ステップに加えて他のステップが実行されてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…評価システム、11…画像取得部、12…画素値取得部、13…基準設定部、14…算出部、15…評価部、100…コンピュータ、101…プロセッサ、102…主記憶部、103…補助記憶部、104…通信制御部、105…入力装置、106…出力装置、110…評価プログラム、200…撮影画像、201~204…対象領域、210…撮影画像、211~213…対象領域、212a…小領域、221…基準領域、231、232…データ、241…基準領域、251~253…データ、261…基準領域、261a…小領域、271、272…データ、300…撮影画像、301~305…対象領域、311~315…基準領域、320…撮影画像、321~325…対象領域、331~335…基準領域、S1…処理フロー、S11~S17…ステップ。